【ティンドゥフ/ロンドンLondon Post=アリ・アウイェシュ・ティンドゥフ、ラザ・サイード】
権力、恐怖、技術的偉業—これらは核兵器を象徴する言葉である。「抑止力と安全のための措置」として提示されることが多いが、その裏には政治的支配と植民地的野心が深層に隠されている。
その最も顕著な例の一つが、かつての宗主国であるフランスがアルジェリアで行った一連の核実験だ。これらの実験は単なる「科学実験」ではなく、植民地の抑圧を継続させ、環境破壊を引き起こし、地元住民に長期的な健康被害をもたらす行為であった。
核実験の歴史:何があったのか?
1960年から66年にかけて、フランスは19世紀に植民地化したアルジェリアのサハラ砂漠で核実験を繰り返した。1962年にアルジェリアが独立を果たしたにもかかわらず、フランスはサハラ砂漠を核実験場として利用し続けた。この時期、大気圏内と地下の両方で合計17回の核実験が行われた。
1960年2月13日、フランスはサハラ砂漠の核実験場で初の原子爆弾による核実験(爆発力は当時世界最大の70キロトンに達し、長崎に投下された原爆の3倍以上の規模だった)を実施し、米ソ英に続いて4番目に「核クラブ」の仲間入りを果たした。
植民地主義の関連性
アルジェリアを核実験場として選んだことは偶然ではなく、「支配と搾取」を核心とする植民地主義を反映したものだった。アルジェリアでの核実験は、同国国民の主権と福祉を無視した植民地主義の露骨な例である。
実験中および実験後、放射性降下物によって広大な地域が汚染され、地元のコミュニティはその危険性について知らされることも、保護されることもなかった。その結果、発ガン率の増加、遺伝子の突然変異、その他の深刻な健康問題が世代を超えて報告されている。
フランスは、これらの核実験をアルジェリア独立後も継続することで、フランスが依然として旧植民地に対して重要な権力を持っていることを誇示する狙いがあった。こうした行為は、植民地主義に内在する人種差別と非人間性を浮き彫りにしている。
核実験の結果に対処するための様々な条約や国際的な圧力にもかかわらず、フランスは被害の全貌を認めず、被害を受けた人々に十分な補償と修復を提供することも怠ってきた。このような責任回避の姿勢は、かつて植民地支配した国々が歴史的過ちを認め、是正することにしばしば抵抗する、植民地主義的な態度の延長線上にある。
フランスの行為は「完全な戦争犯罪」
アルジェリアのアドラール大学の法学教授であるアブデル・ファタ・ベラルーシ博士は、「アルジェリア南西部アドラール県レガーヌ地域で行われた核実験は、国際法の下で「戦争犯罪」とみなすことができる。国際基準によれば、国際人道法で罰せられる人道に対する罪に該当します。」と、ロンドンポストの取材に対して語った。
ベラルーシ博士はさらに、「これらの核実験は人間と自然に害をもたらすもので、1946年12月11日に国連総会が国際法上の犯罪と確認した『ジェノサイド(大量虐殺)』とみなすことができる行為に相当する。」と説明した。
「モルモット」にされた市民たち
核実験場があったレガーヌ地域では、住民の間でガン、早産、奇形、知的障害、流産が報告され、実験場周辺から多くの自然植生や様々な種類の野生生物が広範囲にわたって消失した。
安全保障と戦略問題の専門家であるアーメド・ミザブ氏は、レガーヌ核実験場での実験は、標的の絶滅を企図した核爆発の強度を測定するための実験過程であったとコメントした。
これらの実験は人間の生命、野生生物、環境全体に広範かつ取り返しのつかない被害をもたらした。これらは法の下での犯罪であり、国際条約や協定に違反している。フランスは核爆発に使用された地域の浄化を行わなかった。
核犯罪の影響は今も続いており、爆発地域の浄化と補償をフランス政府に求める強力な市民社会の行動が必要である。
被害者らはフランス政府を訴える権利があり、アルジェリア政府はそれを支援すべきである。
これらの実験による環境破壊は甚大である。すでに厳しい環境であるサハラ砂漠は、放射性汚染によりさらに過酷で人を寄せ付けないものとなった。
植民地化された地域の天然資源と環境が、現地の人々のことを考えずに搾取された環境破壊に対する説明責任は果たされていない。
フランスの新聞『ル・パリジャン』は2014年、フランス政府の秘密文書を引用し、同政府が従来伝えていたよりもはるかに広い地域がこれらの核実験によって影響を受けていたことを明らかにした。
フランスの説明責任と行動に注目
レガーヌ地域の市民活動家の一人で、核実験の被害者の権利を擁護する活動をしているシド・アマール・アル=ハメル氏は、「フランスがこの地域で犯した罪は、今日でも目に見える深刻な被害を残しています。」と語った。
ハメル氏は、「核放射線の影響が自然に消えるまでの時間を計算すると、この地域はまだ災害の最初の数秒間にすぎません。」と強調した。
胎児の先天性奇形は現在も続いており、この地域に蔓延した病気に対する根本的な治療法がないため、多くの家族が障害児を抱えて生活することに困難を感じている。レガーヌの市民は、フランスが置き去りにした核廃棄物をいまだに発見し、それが引き起こすかもしれない危険に気づいていない。
ハメル氏は、「フランスは核実験場の消毒はおろか、実験対象となった機器を住宅地から撤去することさえしなかった。」と指摘した。
ハメル氏は、「核爆発の悪影響は特定の期間や地理的空間に限定されるものではないことから、金銭的補償の問題は、誰が補償を受ける権利を持つのかという問題に道を開くことになるだろう。」と語った。また、「レガーヌ地域の住民は今日、フランスに対してこの犯罪行為の責任を負うよう要求すると共に、癌や核放射線による様々な病気を治療するための専門医療施設を求めています。」と指摘した。
そしてハメル氏は、「フランスが行動を起こすべき時が来ています。それは、核爆発の存在を認め、その残留廃棄物を処理し、被害者を特定することです。」と語った。
次はどうするのか?
核兵器は単なる戦争の道具ではなく、歴史に根ざした権力の不均衡の象徴でもある。真の廃絶とは、単に核兵器を廃絶するだけでなく、それらの開発と実験の遺産に取り組みことである。
国際社会は核拡散防止においては進展を遂げてきたが、こうした取り組みに関する物語はしばしば植民地時代の歴史や社会から疎外されたコミュニティへの不釣り合いな影響をしばしば見過ごしてきた。
世界が核軍縮に向かう中で、歴史的な不正義に対処し、植民地主義的搾取の遺産が忘れ去られないようにすることが極めて重要である。真の意味での核廃絶は、単に核兵器を廃絶することにとどまらず、過去の歴史を認識し、これらの大量破壊兵器によって最も悲惨な被害を受けた人々のために、正義と賠償への確固たるコミットメントが必要なのである。
TPNWの規定
核兵器禁止条約(TPNW)の第1回締約国会議(1MSP)は、被害者支援と環境修復を優先するよう各国に求めている。
同条約は、各締約国が、国際人道法および人権基準に従って、核兵器の使用または実験によって被害を受けた個人に対して、医療、リハビリテーション、心理的支援を含む年齢および性別に配慮した援助を提供することを義務付けている。
さらに、各締約国に対して、自国の管轄または管理下にある核活動によって汚染された地域の環境修復(これには、汚染の除去や土地の再生が含まれる)に必要な措置を講じるよう義務付けている。そしてこれらの義務は、国際法や二国間協定のもとで、予断なく履行されなければならないとしている。
次回のTPNW締約国会議は、カザフスタンを議長国に2025年3月3日から7日までニューヨークの国連本部で開催される予定である。(原文へ)
INPS Japan/London Times
This article is brought to you by London Post, in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.
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