【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】
英国のハロルド・マクミラン首相がかつて、「変化の風がアフリカ大陸を通じて吹いている。我々がそれを好むかどうかに関わらず、このナショナリズムの高まりは政治的な事実である。」と語った。
この発言は1960年代のことで、当時アフリカ大陸各地で英国の国旗が降ろされ、代わって新たに独立した国々の国旗が掲げられた。
「今でもあの旗を見ていたのを覚えています。英国の国旗が降ろされ、続いてナイジェリアの国旗が揚げられました。」と、ネットフリックスが新たに公開したドキュメンタリー番組「アフリカ植民地の旅」に収録されているフランチェスカ・エマニュエル事務次官は述べている。
「その光景はなんとも美しいものでした。ついに、素晴らしい日が私たちに訪れたのです。…この時の気持ちは、なんとも例えようがありません。」
しかしそれから40年が経過し、独立時の国民に対する約束は、憲法が規定する任期を遵守しょうとしないアフリカ各地の政治指導者らの挑戦を受けている。これに焦燥感を募らせてきた若者らが再び「国旗を掲げる」よう要求したことを契機に、コートジボワール、ギニア、カメルーン等、アフリカの十数カ国の街々で暴動が発生した。
ギニアでは、現職のアルファ・コンデ大統領(82歳)が3期目を目指して憲法改正を行った自身に対するデモに対して弾圧を指示している。アムネスティ・インターナショナルによると、憲法改正に抗議するデモ隊に治安機関が発砲するなどして、この1年で50人以上が死亡した。大統領選挙は10月18日に実施されたが、野党支持者と治安機関との衝突が広がり、混乱が懸念されている。
コートジボワールでも、憲法の規定に反して3期目の出馬を表明したアラサン・ワタラ大統領(78歳)に抗議する数千人の群衆が首都アビジャンの通りを埋め尽くした。ワタラ大統領は5カ月前、大統領選へは立候補しないとして「指導者の世代交代」を宣言していたが、与党連合の統一候補が死亡したことを理由に前言を撤回した。大統領選挙は10月末に予定されている。
ナイジェリアのムハンマド・ブハリ大統領は、9月に開催された西アフリカ諸国経済共同体(ECOWAS)の会議で(コンデ、ワタラ両大統領に対して)、「私たちは各々の国の憲法の条項、とりわけ大統領の任期に関する規定を順守する義務があります。」「まさに大統領の任期問題が、私たちの国が加盟している西アフリカ地域に危機と政治的緊張をもたらしている分野に他なりません。」と語った。
「アフリカ大陸を通じて、現職の大統領が権力に固執する傾向が強まっており、そのことが失業、紛争、腐敗、経済不況、人権侵害を引き起こす原因となっています。欧米諸国から、アフリカの優れた指導者として高く評価されているルワンダのポール・カガメ大統領(62歳)でさえ、自らの権力を維持するための憲法の改正(3選を認めその後も最長2034年までの続投を可能にした)を行っています。事実、エコノミスト誌が発表した2019年版民主主義指数によると、55カ国あるアフリカ諸国のうち、半数以上が終身大統領か(エコノミスト誌が言うところの)独裁政権により統治されています。」と、コンゴ人フリージャーナリストのヴァヴァ・タンパ氏は語った。
アフリカでは向こう数カ月のうちに、タンザニア、ブルキナファソ、ガーナ、ニジェール、ウガンダ、中央アフリカ共和国で総選挙が予定されている。はたして、アフリカ各地で広がりつつある民衆運動は、再び「変化の風」をもたらすだろうか。(原文へ)
INPS Japan
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