地域アジア・太平洋|視点|米国は今こそ北朝鮮と平和条約を結ぶべき(アリス・スレーター核時代平和財団ニューヨーク支部長)

|視点|米国は今こそ北朝鮮と平和条約を結ぶべき(アリス・スレーター核時代平和財団ニューヨーク支部長)

【ニューヨークIDN=アリス・スレイター】

米国が、核兵器搭載可能な大陸間弾道ミサイルを運用する3つのミサイル航空団を擁する地球規模攻撃軍団(3万3700人以上の軍人・軍属が所属)を誇る一方で、米国とその同盟国が北朝鮮の長距離ミサイル実験を非難するのは、欺瞞以外の何ものでもない。

実際、米国の大陸間弾道ミサイル「ミニットマン」の実験がこの2月に行われており、次は8月の予定だ。

Korean Peninsular/ By Gringer - Own work, CC0
Korean Peninsular/ By Gringer – Own work, CC0

1950年から53年にかけての朝鮮戦争は、米国が最も長期にわたって関与している紛争である。実際には戦争は終わっておらず、朝鮮人民軍と中国人民義勇軍を代表とする北朝鮮と、多国籍の国連軍司令部を代表とする米国との間の休戦協定によって一時中断されただけである。

この無期限の休戦協定の間、米軍は韓国に駐留している。北朝鮮国境付近に展開する米軍は、重武装した北朝鮮に対して長年にわたり継続的に脅威を与えるべく韓国軍と「軍事演習」を行っている。

さまざまな和平構想が取りざたされたが、米国はそのいずれからも撤退し、後追いの動きもなされなかった。この間、北朝鮮は長きにわたって和平条約を求めてきた。北朝鮮の人々に多大なる苦難と貧困をもたらしてきた制裁の解除と引き換えに、兵器級核物質を生産する「平和的」原子炉の稼働を停止することも北朝鮮は提案してきた。

ビル・クリントン政権との間で、核開発を停止する合意もなされたが、ジョージ・W・ブッシュ政権が2002年にこの合意を尊重せず北朝鮮を「悪の枢軸」と呼ぶに及んで、核開発は再開された。

2017年、韓国では、「太陽政策」と平和的な朝鮮半島統一を公約とした文在寅が新たに大統領に就任した。

The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras
The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras

皮肉なことに、2017年に国連総会第一委員会(軍縮)では、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)の10年にも及ぶ運動が功を奏して、核兵器禁止条約の採択に至った。しかし、米国・英国・フランス・ロシア・イスラエルはこれに反対票を投じた。

中国・パキスタン・インドは棄権したが、北朝鮮は核保有国として唯一、核兵器禁止条約案に賛成した。核禁条約は同年の国連の特別交渉会期において採択された。

北朝鮮が、核兵器禁止条約の交渉に前向きな唯一の核保有国として世界にあるシグナルを送ったことは明白だった。しかし、西側のメディアは、欧米の植民地大国とその同盟国によって北朝鮮が受けている挑発を認識することもしなかったし、北朝鮮がそのような驚きの投票行動をしたことも主流のメディアでは報じられなかった。

ドナルド・トランプ政権時、米朝交渉には一定程度の進展がみられ、韓国ではより平和的な大統領が誕生した。しかし、北朝鮮が核開発を放棄することと引き換えに和平協定を北朝鮮と結ぶパッケージの一環として、韓国から米軍部隊の一部を撤収するという金正恩に対するトランプの約束を、米議会は否定した。

米国では「非武装地帯を超える女性たち」の活動に刺激を受けた運動が始まっている。彼女らは、南北朝鮮を分ける非武装地帯を徒歩で超えるという前代未聞の取り組みを2015年に行った。ノーベル平和賞受賞者やフェミニストのリーダーである女性ら30人が、韓国女性1万人とともに国境の両側から非武装地帯を徒歩で超えたのである。

彼女らの努力を通じて、そして、依然として恒久的な交戦状態にある南北朝鮮間を家族訪問のために行き来することができずにいる推定10万人の朝鮮人のために、米国では法案1369号(朝鮮半島和平法案)が提出されている。法案は、朝鮮戦争を公式に終結させる和平条約の締結を呼びかけているが、同時に、北朝鮮国民に対する渡航制限の見直しと、両国間における連絡事務所の設置も求めている。

今こそ、北朝鮮に対する私たちの見方を見直し、北朝鮮を、核兵器によって私たちを攻撃しようとしている国としてではなく、76年間にわたって耐え忍んできた制裁と孤立からの脱却を求めている国として取り扱わねばならない。

Alice Slater
Alice Slater

帝国のありようがいかにして北朝鮮の「悪の行い」に寄与しているのかを理解すれば、本当の安全を私たちは手に入れることができるのである。1950年代の「赤の恐怖」の時代に私たちを楽しませたウォルト・ケリーの漫画のキャラクター「ポゴ・ポッサム」の懐かしい言葉を借りてこう言おう。「我々は敵に出会った、そしてそれは自分たちのことだった!」

※アリス・スレイター氏は、「ワールド・ビヨンド・ウォー」「宇宙の兵器利用と原子力に反対するグローバルネットワーク」の理事。「核時代平和財団」ニューヨーク支部長。(原文へ

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