【ブラチスラバIPS=エド・ホルト】

ロシアによる全面侵攻が続く中、各国政府、援助機関、NGO、開発銀行、企業の代表らがポーランド・グダニスクに集まり、ウクライナ復興について議論した。すでに数十億ユーロ規模の復興支援が約束されている一方で、その復興をいかに効果的かつ透明性をもって、公平に進めるかという課題は依然として残されている。|英語版|
戦争は、とりわけ社会的に脆弱な立場に置かれてきた人々に深刻な影響を及ぼしている。なかでもロマ(Roma)の人々は、住宅、医療、教育、雇用へのアクセスに以前から多くの障壁を抱えており、復興政策に特別な配慮がなければ、既存の格差がさらに固定化される恐れがあると、ロマ人権団体は警鐘を鳴らしている。
IPSは、ロマ・ヨーロッパ財団(Roma Foundation for Europe)で分析・成果担当副代表を務めるネダ・コルノフスカ(Neda Korunovska)氏に、なぜロマの声を復興計画に反映させることが不可欠なのか話を聞いた。
IPS:戦後のウクライナでは、どの程度の復興が必要になるのでしょうか。どのような復興が求められると考えますか。
コルノフスカ氏(以下NK):考えなければならないのは二つの側面です。
一つは、道路や住宅、インフラなど物理的な復興。もう一つは、社会そのものの再建です。
世界銀行や国連機関、EU、ウクライナ政府は毎年、今後約10年間を見据えた復興ニーズ評価を公表しています。キーウ経済研究所も復興費用を試算していますが、これらはいずれも経済モデルに基づくものです。
しかし、包摂的(インクルーシブ)な社会を築くために何が必要かを数値化することは、はるかに難しい課題です。現在の試算では、そのために必要な資金や政治的意思が十分に考慮されているとは言えません。
私たちの活動を通じて分かっているのは、復興を真に包摂的なものにすることは非常に難しいということです。
ウクライナ社会はもともと様々な分断を抱えていました。そして戦争によって、その分断はさらに深まりました。軍に従軍している人としていない人、国内避難民、国外避難民など、多様な立場の人々が存在しています。社会的結束を再構築する議論では、こうした違いを十分考慮しなければなりません。
さらに、戦争が長期化し続けていることも大きな障害です。新たな被害は今も毎年発生しており、政府の最優先事項は安全保障と防衛です。緊急対応に必要な資金すら毎年不足している状況であり、本格的な復興は極めて複雑なものになっています。
IPS:社会の分断について触れられましたが、戦後復興では「ある集団を他より優先すべきだ」という考え方がすでに存在しているのでしょうか。
NK:公式にはありません。しかし、実際には非公式な形で起きています。
私たちの最近の調査では、住宅被害に対する補償制度などで、その実態を確認しました。
例えば国内避難民(IDP)として登録するには、占領地域や戦闘地域に居住していたことを示す有効な身分証明書が必要です。身分証を持っていなかったり、登録住所が一致しなかったりすると、実際にそこに住んでいても支援を受けられません。行政機関も人手不足のため、結局は「誰を知っているか」という人間関係が大きく影響します。
これはウクライナだけでなく旧ソ連諸国では珍しくありません。病院の予約一つ取るにも、知人のつながりが役立つことがあります。現在のウクライナでも同じです。限られた資源しかないため、誰を優先するかは形式上ではなく、非公式なネットワークによって左右される場合があります。
その結果、社会的なつながり(ソーシャル・キャピタル)が乏しい人々ほど後回しにされてしまうのです。
IPS:ロマの場合、身分証明書を持たない人や土地・住宅の所有を証明できない人も少なくありません。戦後復興から取り残されることを特に懸念していますか。
NK:はい。非常に懸念しています。
戦争中に実施された社会的結束に関する調査でも、ロマとその他の住民との間には依然として大きな格差があることが示されています。唯一改善が見られたのは、ロマと非ロマが共に戦火を経験し、困難を共有した地域だけです。
しかし、それはウクライナ全土には広がっていません。これが私たちにとって大きな懸念です。
IPS:ロマだけでなく、他の少数民族も取り残される可能性がありますか。
NK:あります。ただし、その危険性が最も高いのはロマです。
ウクライナ社会には「ロマはこの国に属していない」「国外へ出ていくべきだ」と考える人が少なくありません。もちろん、ロシア系住民を含め、他の少数民族も戦後には様々な困難に直面するでしょう。
IPS:しかし、その中でもロマが最も深刻な課題を抱えているということですね。

NK:その通りです。教育、就労機会、言語、識字能力、居住地域など、あらゆる面で複合的な不利を抱えています。
農村部や孤立した地域、非公式居住地に暮らす人も多くいます。もちろん地域差はありますが、戦争によってこうした問題はさらに悪化しました。
しかも現在、それらに本格的に取り組もうという能力も政治的意思も十分ではありません。復興ではエネルギー、地雷除去、交通、住宅が優先されます。当然、多数派に関わる課題が優先されるでしょう。だからこそ、少数派であるロマは後回しになってしまうのです。
何世紀にもわたり、多くの人々はロマに対して否定的なイメージを抱いてきました。教師や技術者、電気技師として社会に貢献する存在ではなく、周縁化された集団として見られてきたのです。この固定観念こそが、今日の差別の根底にあります。
IPS:ロマの居住地も戦争で被害を受けています。戦後、補償も受けられず、そのまま放置される危険性がありますか。
NK:残念ながら、その危険性は十分あります。現在の補償制度では、多くのロマが正式な住宅所有者として認められていません。相続手続きが複雑だったり、不動産登記がされていなかったり、税金や行政手数料を支払えなかったりするからです。
彼らは怠けていたわけではありません。限られた収入の中で、書類手続きよりも食料や暖房を優先せざるを得なかったのです。
さらに住宅自体も簡易な材料で建てられている場合が多く、損壊しやすいという問題があります。しかし、こうした脆弱性は現在の補償制度では十分認識されていません。
IPS:では、ロマが復興から取り残されないためには何が必要でしょうか。
NK:私たちはロマの政治参加の拡大を求めています。しかし、それ以上に重要なのは、ロマ自身から直接話を聞き、彼らが直面している障壁を理解し、その知見を復興制度の設計に反映することです。
新しいウクライナは包摂的な国家でなければなりません。その理念を政治指導者自身が明確に示し、優先課題として位置付ける必要があります。
他国の戦後復興では、社会的結束を軽視した結果、さまざまな問題が起きました。戦時には愛国心やナショナリズムが強まります。戦前にロマを襲撃していた一部の準軍事組織のメンバーが、戦争では英雄視されるようになった例もあります。

彼らの価値観は本当に変わったのでしょうか。私は戦後にロマへの大量虐殺が起こると言っているわけではありません。しかし、他国の経験では、戦後には家庭内暴力、女性殺害(フェミサイド)、民族・人種を理由とする暴力が増える傾向があることが分かっています。
一方で、多くのロマも祖国を守るために戦っています。小さな子どもがいる、あるいは識字能力の問題から兵役免除の対象となる人もいますが、それでも多くが志願して祖国防衛に参加しています。
彼らの貢献が、戦後に忘れ去られてはなりません。
コソボでも、ボスニア・ヘルツェゴビナでも、同じことが起きました。
IPS:政府関係者はこうした危険性を理解しているのでしょうか。
NK:率直に言えば、理解しています。ただ、今は戦争を戦いながら国家を維持しなければならないため、優先順位が極めて限られているのです。
IPS:戦後復興については、すでに議論が始まっていますか。
NK:議論そのものは適切な方向に進んでいます。問題は、それを実際の社会政策へどう落とし込むかです。ウクライナは地方分権が進んでいるため、地方自治体ごとの行政能力には大きな差があります。
ロマへの対応も地域によって大きく異なります。政策だけでなく、地方行政がそれを実行できるかどうかが重要です。現状では、例えば非公式住宅について代替的な所有証明を認める制度は整備されていません。
しかも被害があまりにも大きく、予算が不足しているため、行政はまず「手続きが簡単な案件」を優先せざるを得ない状況です。
IPS:最後に、なぜロマを戦後復興に包摂することが、ウクライナ全体にとって重要なのでしょうか。

NK:「国民全体が甚大な被害を受けたのだから、なぜロマだけ特別扱いする必要があるのか」と考える人もいるでしょう。しかし、本当に問うべきなのは、新しいウクライナをどのような国として築くのかということです。
ロマを非公式経済へ追いやり、学校教育から排除してきた構造的な問題を放置することは、ウクライナ自身の利益にもなりません。この戦争で、ウクライナは多くのものを失いました。
だからこそ、これからは国民一人ひとりの力を最大限に生かすことが必要です。
誰もが自分らしく生き、それぞれの能力を経済、政治、文化の発展に生かせる社会を実現すること。それこそが、真の復興なのです。
INPS Japan/IPS UN BUREAU Report
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