国連人道問題事務所は、カホフカ水力発電所のダム崩壊によって被災した地域を支援するための3段階の計画を策定した。当面は、もっぱら人命救助と人々の避難にあたっている。一方で、ウクライナのロシア占領地域に暮らす被災者へのアクセスを得るため、ロシア政府とも交渉中である。グリフィス国連緊急援助調整官兼人道問題担当事務次長は、国連ニュースサービスのナルギス・シェキンスカヤの独占インタビューに応じ、次のように語った。
【国連ニュース/INPSJ=ナルギス・シェキンスカヤ】
シェキンスカヤ: この3日間、報道によると、ウクライナの国連は、ゼレンスキー大統領自身(=「国際機関が災害地域にいないのであれば、それは存在しないか、あるいは能力がないことを意味する」と語った。)を含め、批判されています。こうした批判はどこまで妥当だとお考えですか?
グリフィス:こうした批判は理解できます。現在ウクライナが置かれている状況下では、危機対応活動を組織することは、国連のみならず、すべての人道支援団体にとって困難なのが実情です。しかし、ゼレンスキー大統領の反応はよく理解できます。彼は国民に寄り添った人物で何が起こっているのかをよく理解しているからこその批判だと思います。だから、私たちはそのことにこだわってはいません。私たちは、できるだけ早く人々を助けることに集中しています。
シェキンスカヤ:このような批判が、現地にいる国連職員を困難にさせていると思いますか?
グリフィス:過去数ヶ月間、私たちはウクライナ政府と地方当局の両方と強い絆を築いてきました。私自身もクリスマスイブにへルソンとミコライウを訪れ、地元当局と面会しました。私たちはこれまでずっと、現地で人道支援を続けてきましたし、今も続けています。
例えば、昨日、人道支援物資を積んだ2つの輸送隊がへルソンに送られましたし、今日も1隊が向かっています。つまり、国連の人道支援メカニズムは機能しているのです。
シェキンスカヤ:今、短期的、長期的に優先すべきことは何でしょうか?
グリフィス:今は、緊急救援活動を行っている段階です。まずは、浸水した地域から人々を脱出させる必要があります。一両日中にボートで全ての被災者のところへ行けるようにしたい。それが今、最も重要なことです。次に、清潔な水、医療品、食料を提供し、人々が立ち直るのを支援する必要があります。
そして、次の段階に進みます。大型ダムを決壊させるという衝撃的な行為がもたらす人道的な結果を検証し始めるのです。約70万人の人々が清潔な飲み水を失っているという事実、そして世界で最も地雷が多い地域で起こった水害で地雷が漂流している現実を検証しなければなりません。また、被災住民、とりわけ子供たちの生活、水供給、医療サービスに配慮しなければなりません。
第3段階では、経済的、環境的な影響に対処することになりますが、これは衝撃的なものになると思います。なぜなら、その影響はウクライナだけにとどまらないからです。例えば、ウクライナは穀倉地帯であり、被災地域の大部分で、すぐに作物を生産できないことを鑑みれば、世界の食料価格にも悪影響を与えるでしょう。
シェキンスカヤ:そのような長期的な影響の規模を何とか小さくするために、今日何かできることはないでしょうか?
グリフィス:今大切なことは、人々を救助し、安全な場所に移動させることです。特に子どものいる家族には、病気にならないよう、食料ときれいな水を提供しなければなりません。それが現時点での最優先事項です。
しかし、その後、中長期的な被害状況を把握することができれば、これまで世界の他の地域について国連が行ってきたように、緊急アピールを開始することになるでしょう。
シェキンスカヤ:緊急作戦といえば。ヘルソンの地元当局は、被災者を救助するためにモーターボート、ドローン、その他の高度な機器が必要だと述べています。国連にそれを支援する能力はあるのでしょうか?
グリフィス:はい、そうした経験はあります。例えば、世界食糧計画には、被災者を水上で安全な場所に運ぶための船が用意されています。
ジュネーブにある国連人道問題調整事務所は、トルコ・シリア地震の後、同様のオペレーションを行いました。救助隊は、最も助けが必要な場所で活動し、捜索と救助活動を調整しました。ウクライナでも、間違いなく、そのような支援を動員する準備が整っています。
シェキンスカヤ: 既にそのような依頼は来ているのでしょうか?
グリフィス:まだですが、デニス・ブラウン ウクライナ人道支援調整官が既にこのテーマで交渉しているとしても私は驚かないでしょう。彼女は、ウクライナにおける国連の最高位の代表者で、現在へルソンとミコライウを訪れています。彼女はきっと、このテーマで地元当局と話をすることでしょう。
シェキンスカヤ:ユニセフの報告によると、ダム破壊の結果、川を挟んだ対岸のロシア占領地には、支援を必要とする人々が約2万5千人いるとのことです。これらの地域への国連のアクセスについて、何かニュースはありますか?
グリフィス:ダムが決壊して以来、私たちはロシア当局と連絡を取り合っています。私自身、国連常駐代表部の人たちと会いましたが、文字通りこの30分(金曜日の夕方、編集部注)、彼らと連絡を取り合い、前線を越えて安全にアクセスする許可を求めています。
これは人道支援機関にとっては標準的な手続きです。シリアでもスーダンでも、他の国でもそうでしたし、ウクライナでも戦争が始まって以来、この方式で活動しています。いつ、どこに、何人、どんな荷物を運ぶのか、計画を双方に伝える。合意できることを期待しています。
シェキンスカヤ:今、洪水について、大きな誤報キャンペーンが行われています。このキャンペーンへの対策を緊急対応計画に盛り込むべきだとお考えでしょうか?
グリフィス:私は、人道主義者は情報戦に巻き込まれることなく、もっと大きな仕事をするべきだと確信しています。私たちは、人々のニーズについて真実を伝え、そのニーズを満たすための方法について明確な考えを持つ。これが私たちの義務です。私たちは、戦争がもたらす他の結果には関与しません。
シェキンスカヤ:ウクライナの被災地の人々に伝えたいことは?
グリフィス: 私は彼らに連帯と共感の言葉をかけたい。あなた方は、もう1年以上も続いている戦争を経験しなければなりませんでした。そして今回の大洪水。あなた方は夜中に爆発で起こされた。洪水は、あなた方が望んでいた未来を奪っていく。生活を破壊し、生計を奪う。このような状況において、メッセージは非常にシンプルです:私たちは、この困難な時にあなた方と共にいます。そして、神様がこの悪夢を止めてくださることを願っています。
シェキンスカヤ:次にスーダン情勢についてですが、これも今日、国連が対処しなければならない危機的状況です。 スーダンの国連事務所長がペルソナ・ノン・グラータとなった場合、現地での人道支援活動にどのような影響があるのでしょうか?
MG:今、スーダンで私たちが優先しているのは、人道的アクセスの確保です。ご存知のように、最近、24時間の敵対行為停止計画が策定されました。停戦は6月10日(土)に開始されます。私たちは、これがうまくいくことで、人道支援を提供する機会が得られることを望んでいます。住民はこの援助を切実に必要としています。私たちは現在、スーダン国軍と即応支援部隊双方と連絡を取っています。彼らは輸送隊の自由な移動のための手配を約束しました。私たちは、チャドから西ダルフールまでの国境を越えた作戦に合意したのです。内戦勃発以来5、6週間何も物資が届かなかった人々にとって、これはとても重要なことです。
それ以上に、この内戦を終わらせ、スーダンを民政に戻すプロセスを開始することが根本的に重要なのです。 紛争が最終的に解決され、支援が必要なくなること、それが、援助に携わる者たちの願いです。(原文へ)
UN News Service/ INPS Japan
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