【国連IDN=タリフ・ディーン】
国連が10回目の「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」を迎える中、デニス・フランシス国連総会議長は目標達成に必死の姿勢を見せた。核による集団殺戮のリスクは「過去の歴史の1ページではなく、現在進行形でつきまとっている現実だ。」と警告したのである。
フランシス議長は9月26日、「核のアルマゲドンを回避する道は一つしかありません。すなわち、核兵器の完全かつ全面的な廃絶です。」と各国代表らに語った。
国連によれば、世界には1万2500発以上の核兵器があり、その数は増えているという。
米国の平和活動家で「平和・軍縮・共通安全保障キャンペーン」の議長を務めるジョセフ・ガーソン氏は、「『核兵器の全面的廃絶のための国際デー』の制定は、核兵器が人類と文明に対して脅威を与え続けている存亡の危機に対する人類の認識を反映したものである。」と語った。
原爆・水爆被害者を意味する日本語の「ヒバクシャ」は、彼らの経験がいかに恐怖と苦しみに満ちたものであるかを教えてくれる。「人類と核兵器は共存できない」のだ。
「核兵器の指揮・管制の仕組みを見ればわかるように、核兵器と民主主義もまた共存はできません。」とガーソン氏は語った。
「国際平和ビューロー」の元副代表でもあるガーソン氏はまた、「今日、核兵器禁止条約と、核軍縮に対する民衆からの継続的な要求が、黙示録的な核戦争を行おうという9つの核兵器国の態勢に対する最も強力な対抗力となっているが、まだ不十分ではある。」と語った。
実際、「原子科学者紀要の『世界終末時計』が真夜中まで90秒に設定されていることからもわかるように、核戦争の危険は、国際デーが設定された2013年当時よりもはるかに高まっている。
「この原稿を書いている今も、私はロシアの国家安全保障エリートが、ジョン・F・ケネディ大統領の顧問が核戦争の可能性は3分の1から2分の1だと考えていた1962年のキューバ危機以来、国際関係において最も危険な瞬間だと述べているのを聞いたところです。私たちが今日生きているのは、偶然と力強い外交のお陰だが、後者については今日、危険なまでにその姿が見えなくなっています。」とガーソン氏は語った。
国連のアントニオ・グテーレス事務総長は9月26日の加盟国代表団に対する演説で「これは緊急の事態です。憂慮すべき新たな軍拡競争が発生しつつあります。核兵器の数も、この数十年で初めて増加基調に転じる可能性があります。」と語った。
グテーレス事務総長は、核兵器の使用、拡散、実験を防ぐために苦労して勝ち取った規範が損なわれていると指摘した。世界的な軍縮・不拡散の枠組みは侵食されつつある。核兵器は近代化され、より速く、より正確に、よりステルスになりつつある。核使用の脅威が再び顕在化しつつある。
「これは狂気です。事態を反転させねばならなりません。」とグテーレス事務総長は語った。
そして第一に、「核保有国が先頭を切るべきだ。」と指摘したうえで、「核兵器国に対して、核軍縮義務を守り、いかなる状況下においても核兵器を使わないことを約束するよう求めます。」と語った。
また第二に、「数十年にわたって構築されてきた核軍縮・不拡散体制を強化し、改めにその体制に従うよう求めなければなりません。」と語った。ちなみにここで言う体制とは、核不拡散条約(NPT)や核兵器禁止条約のことである。
また、包括的核実験禁止条約(CTBT)もここに含まれる。同条約は未発効だが、核兵器による集団殺戮の影をこの世界から抹消しようとする人類の意志の強い表現となっている。
「私は、核実験のすべての被害者の名において、CTBT未批准国に対して条約を速やかに批准するように呼びかけ、核兵器保有国に対して、すべての核実験の一時停止(モラトリアム)を継続するよう呼びかけます。」と語った。
そして第三に、「私たちは、緊張を緩和し、核の脅威に終止符を打つためには、対話や外交、交渉というツールを弛みなく用い続けねばなりません。この対話はすべてのカテゴリーの核兵器に及ぶものでなければならず、また、戦略兵器と通常兵器との相互作用の増大や、核兵器と人工知能のような新興技術との結びつきにも対処しなければなりません。」と語った。
「人間は核兵器使用のいかなる決定も制御し、それに責任を持たねばなりません。」とグテーレス事務総長は主張した。
ガーソン氏はこの議論をさらに広げて、ロシアのウラジーミル・プーチン大統領やその顧問らは、ほとんどの米国大統領が実践してきたように、核兵器先行使用の威嚇をしており、とりわけ、ロシアによるクリミア半島支配が脅威にさらされた場合に核兵器を使用するとしている。
ウクライナ戦争や西側・ロシア間の緊張関係の高まりのなかで、核不拡散条約に違反して、米国の新型核兵器が北大西洋条約機構(NATO)の同盟国に配備され、ロシアはベラルーシに核兵器を配備する途上にある。
東アジアでは、米国が再び核兵器搭載艦船を韓国の海域や港湾に展開し、台湾をめぐる緊張が、バイデン政権が国家安全保障戦略において核兵器先行不使用政策の採用を拒絶する主な原因となっている。
ガーソン氏は、「台湾をめぐる戦争で戦術核兵器を使用する計画は、米政府の政策関係者の間では当たり前のこととなっています。」と語った。米ロ間および米中間で戦略的安定と軍備管理を巡る外交が存在しないことで、事故や事件、計算違いが核戦争へのエスカレーションの引き金となる危険が極めて大きくなっている。
「すべての核大国が核戦力を拡大あるいは『近代化』しています。イランと日本は核保有に近づき、韓国とサウジアラビアでは、核の恐怖に対する公正を欠く不均衡と彼らが見る状況を是正するよう、国内外からの圧力に直面しています。」
「『核兵器の全面的廃絶のための国際デー』は、核兵器の完全廃絶に向けた交渉を誠実に行うことを呼びかけた核不拡散条約第6条の中心的な役割を強調し、我々に警告を与える機会を提供するだろう。最も重要なことは、この国際デーが、私たちは将来世代が手にするに値する非核兵器世界に向けた私たちのコミットメントや組織、運動を強化するよう促す機会になるということです。」とガーソン氏は語った。
他方、反核活動家の連合である「UNFOLD ZERO」は、核の脅威を終わらせ、核兵器を廃絶し、核兵器予算と投資を市民の健康やコロナ対策、気候や持続可能な開発といった分野に回すよう求める世界的なアピール文を発表した。
「9カ国が保有する核兵器は私たちすべてを脅かしている。事故や計算違い、あるいは悪意によって使用された核兵器は、人間や経済、環境にいずれにせよ重大な被害を与えることになる。」
「世界で備蓄されている1万4000発の核兵器のごく一部でも使用されれば、私たちが知る文明は終末を迎えることになるだろう。加えて、核兵器に投じられている年間1000億ドルの予算は、コロナ対策や気候の保護、持続可能な開発目標実施など、環境や経済、人間のニーズに応えるために切実に望まれている。」
「私たち署名者は、都市や議会、政府に対して次のことを呼びかける。」
1.核戦争に勝者はなく、決して戦われてはならないと認めること。したがって、核保有国は核戦力を取り下げ、核戦争を決して自ら起こさない(すなわち核先行不使用政策)と確認すること。
2.国連創設100周年にあたる2045年までに核兵器を廃棄すると約束すること。
3.(核保有国の場合)核兵器関連予算を削減し、(すべての国家に関して)核兵器産業への投資をやめ、それらの投資や予算を、国連やコロナ感染拡大の抑制と復興、炭素排出の大幅削減による気候の保護、持続可能な開発目標の達成といった分野に振り向けること。」(原文へ)
INPS Japan
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