INPS Japan/ IPS UN Bureau Report南太平洋諸国で核実験が世代を超えてもたらした影響

南太平洋諸国で核実験が世代を超えてもたらした影響

【国連IPS=ナウリーン・ホセイン】

核兵器禁止条約(TPNW)の文言は、核兵器がもたらす深刻な人道的影響について明確に焦点を当てている。TPNWはまた、「核兵器の全面的な廃絶の要請に示された人道の諸原則の推進における公共の良心の役割」を認めている。

この公共の良心は、核実験がもたらす結果について私たちがすでに知っている知識によって形成されてきた。第二次世界大戦末期の広島と長崎への原爆投下は、核軍縮を主張する歴史的な理由である。それから数十年が経過したが、原爆投下を生き延びた日本の被爆者(HIBAKUSHA)たちは、核兵器の拡散を止めるよう世界の指導者たちに訴え続けている。一方、広島・長崎にとどまらず、世界各地で行われた核実験の影響を受けた被爆2世、3世の体験は、核実験が世代を超えて及ぼす影響を明確に思い起こさせるものである。

第2回TPNW締約国会議は、加盟国やNGOが条約を支持し、被害を受けたコミュニティーとの連帯を表明する機会であったが、被害を受けた人々が自らの経験を直接証言できるのは、市民社会が主催するサイドイベントを通じてであった。このようなサイドイベントを開催することで、核被爆者を巡るナラティブを拡大し、議論をより包括的なものにすることができる。

11月30日、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、ピースボートや核時代平和財団などのパートナー団体とともに、核被爆者フォーラムを開催した。国連教会センターで開催されたこのサイドイベントでは、世界各地の被爆コミュニティーから集まった人々が、核実験の体験や今日に続く核実験がもたらした影響について語り合った。

キリバス政府代表とともにこのサイドイベントに参加した青年代表のタラエム・タウカロさんによれば、このフォーラムは、とりわけ「このような機会がめったにない」コミュニティーにとって、核実験に関する共通の経験や意見、アイデアを共有できる場となった。キリバス共和国は、20世紀半ばに英米軍によって実施された核実験の影響を受けた太平洋の島嶼国の一つである。同共和国の一部であるキリスィマスィ島では、1956年から62年にかけて、複数回の核実験が行われたことがある。

Taraem Taukaro, nuclear survivors forum. Credit: Katsuhiro Asagiri

核実験を生き抜いたタウカロさんの母親は、放射性降下物による被曝が原因と思われる健康問題に苦しんでいる。また被爆の影響は次世代に及んでおり、タウカロさんの妹は生まれつき耳が聞こえない。このような影響を受けたことは、タウカロさんの家族にとって大きな試練である。直接的な影響のひとつは、核実験を生き抜いたキリバス先住民が健康問題に悩まされ、環境と生物多様性に損失を被ったことだ。彼らの子孫は現在、同じ問題に直面している。

太平洋教会会議の活動家であるベディ・ラクレさんは、核実験がマーシャル諸島と南太平洋地域に与えた影響について見解を述べた。米軍は1946年から58年にかけて、ビキニ環礁を中心にこの地域で核実験を行った。ラクレさんが指摘したように、多くの太平洋地域コミュニティーでは、癌、移住、生態系汚染など、核実験の影響が今も続いている。

「私たちの健康や 生活の質、土地や祖先、文化とのつながりが失われており、多くの痛みとトラウマがあります。」とラクレさんは語った。

フォーラムに参加した被爆者について、ラクレさんこう付け加えた。「私はまた、彼らのレジリエンス(回復力)や強さを強調したいのです。脆弱性を持つことは弱さではありません。核兵器のないより良い世界のために、今も昔も立ち上がっている人たちを称賛したい。具体的には、非核兵器地帯を持ち、初の非核憲法(パラオ共和国)を制定したことです。」

若者たちに対しては、核実験の影響について教育し、歴史と文化との結びつきがどのように変化してきたかを、失われたものも含めて文脈的に説明する、より大きな責任がある。

Bedi Racule, nuclear survivors forum. Filmed and Edited by Katsuhiro Asagiri, President of INPS Japan

ラクレさんは、「フォーラムの中で、被害を受けたコミュニティーから諮問グループの設立を求める声が上がった。」と指摘したうえで、「TPNWの核心は、核兵器に対する人道的な対応であり、過去に何が起こったかを知り、それに対する正義を求め、このような経験を二度と誰にもさせないようにすることにあります。」と語った。

タウカロさんは、「英国政府を含む国際社会は、キリスィマスィとその近隣の島々で被害を受けたコミュニティーに対する補償の一環として、医療資源や環境浄化のための資金提供や支援をもっと行うべきだ。」と語った。

ラクレさんは異なる見解を示した。「核の正義を訴える私たちのネットワークでは、核の問題が植民地化や自決の問題と本質的に結びついていることはよく知られています。自由で独立した主権国家である太平洋の国々でさえ、地政学的な利害関係や援助ドナーの資金提供のために、自分たちの要求を表明することが難しいのです。開発援助は、政治的な自由を奪うだけでなく、経済的、財政的、社会的な自由を奪い、何が起こっているのかを左右するものだと私たちは考えています。」と語った。

 核兵器廃絶は、私たちの未来の世代が平和に暮らし、まともな生活を送れるようにするため、早急に実現されなければならない。核実験によって不釣り合いな影響を受け、その放射性降下物の中で生きてきた先住民族の声を、新しいミレニアムを超えて、尊重し、高めていかなければならない。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau

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