SDGsGoal5(ジェンダー平等を実現しよう)国連の2030年期限までに児童婚がなくなる可能性は低い

国連の2030年期限までに児童婚がなくなる可能性は低い

【国連IPS=ナイェマ・ヌサラット】

「今は結婚したくありません。私には長い人生と夢が目の前にあるのだから…。」バングラデシュに暮らす14歳の少女は、結婚する準備ができていないことを両親に告げた。

国連の持続可能な開発目標(SDG5.3)は、2030年までに児童婚をなくすことを目標としている。国連児童機関(ユニセフ)が昨年6月に発表した報告書によると、世界では現在生存している6億5000万人の少女と女性が18歳になる前に結婚している。

ユニセフの上級顧問兼有害文化的慣行防止コーディネーターのナンカリ・マクスード氏はIPSの取材に対して、「証拠によれば、児童婚は特定の集団や文化的規範に限定されるものではなく、むしろ構造的・社会文化的要因(貧困、教育的・経済的機会の欠如、社会的期待、少女や女性に対する差別、制限的な性別役割分担、少女の保護に関する信念、代替手段に対する認識やアクセスの低さ等)の幅広い組み合わせなのです。」と語った。

また、多くの家庭では、女児は家計の重荷と認識されており、児童婚は、貧しい家庭にとって最良の選択肢と見なされることが少なくない。「状況によっては、児童婚は女児を守りながら家族の負担を減らし、名誉を守る道とみなされています。児童婚の原動力となっている構造的・社会文化的な根本原因が取り除かれれば、児童婚は減少し、最終的にはこの慣習も終わることを、様々な証拠が示唆しています。」とマクスード氏は語った。

ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを目的とする国連機関UN Womenの広報担当者はIPSの取材に対して、人道危機が発生している環境では、治安の悪化により児童婚がさらに悪化する可能性があると語った。

「例えば、中東・北アフリカ地域における児童婚の普及率は世界平均に近く、若い女性の約5人に1人が18歳になる前に結婚しています。これは、過去25年間における進展を示していますが、減少の速度は過去10年間で停滞しているように見えます。」

また、特定の紛争地域では、進展が逆転している。「(内戦が続く)シリアやイエメンなどでは、特に悲惨な経済状況において、紛争が否定的な対処メカニズムを生み出すことが多く、それが子どもの結婚率を高める可能性があるため、(進展が)大幅に逆転しています。」

ユニセフによると、近年、児童婚の減少率は世界的に進展を見せているが、南アジアでは、インドでの減少が大きく寄与し、50%近くから30%まで減少している。

ユニセフのマクスード氏は、 「子どもの頃に結婚した女性の割合は、この10年間で15%減少し、4人に1人から5人に1人になりました。」と指摘した。

世界全体では、「子ども時代に結婚する女児の総数は、現在、年間1200万人と推定されている。ユニセフとUN Womenは、「これは、10年前の世界的な水準で予想されていたよりも、2500万件減少していることを意味します」と指摘した。

Credit: United Nations
Credit: United Nations

マクスード氏は、アフリカにおける子どもの花嫁率の進展について語る一方で、「データはアフリカ大陸における進展の可能性も示している」と指摘した。「例えば、かつてサハラ以南のアフリカで児童婚が多い国のトップ5に入っていたエチオピアでは、過去10年間で児童婚率が3分の1に減少しています。」

児童婚のような有害な慣行がある国々は、2030年までに児童婚をなくすというSDGsの目標(SDGs 5.3)に沿うために、責任を優先する必要がある。

マクスード氏は、「SDGs達成の説明責任は各国にあり、児童婚のような有害な慣行を終わらせることを優先する責任があります。適切な投資と加速度的な進展があれば、SDGsの目標は達成可能です。」と語った。

一方、ヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)のヘザー・バー氏は、「2030年までにすべての児童婚を終わらせるという国連の目標が達成できる可能性はおそらく低い。」と指摘したうえで、「この目標はすでに児童婚の削減に大きく貢献しており、今後もそうなると思います。しかし、2030年までにすべての児童婚を終わらせるという目標は、おそらく完全には達成できないでしょう。まだ道半ばであり、児童婚を合法的または違法に容認し続けている国が多すぎるからです。」と語った。

UN Womenの広報担当者は、SDGsの目標達成の可能性についての見解を語った。過去10年間に大きな進展が見られたにもかかわらず、どの地域も2030年までに児童婚を根絶するめどが立っていないようだ。

「現在の児童婚の減少率は、SDGsの野心的な目標を達成するには不十分であるため、大幅な加速が必要です。」「過去10年間の児童婚の減少率は年率1.9%であったが、2030年までに児童婚をなくすというSDGsの目標を達成するには、23%でなければなりません。1990年からの進展率が改善されなければ、全世界で児童婚をなくすには100年近くかかり、2030年までに1億5000万人以上の女児が結婚することになります。」

「過去10年間の減少速度が速まったとしても、児童婚をなくすには50年かかります。したがって、進展を大幅に加速させなければならなりません。」

「しかし、持続可能な開発目標で定められた目標である2030年までに児童婚をなくすためには、過去10年間の12倍のスピードで進展を加速させなければなりません。進展を加速させなければ、人口増加により、2030年までにさらに1億5000万人以上の女子が18歳の誕生日を迎える前に結婚することになります。」

UN Womenは、様々な調査によると、ジェンダー平等の改善が最大の原動力の一つであることを強調している。「残っている主な課題の中には、この有害な慣習に取り組む上で、ジェンダーを変革するアプローチが欠けていることがあります。証拠は、結婚の年齢を遅らせるだけでは不十分であることを示しています。」

「ジェンダー平等は、少女や女性の主体性を促進し、結婚や社会に受け継がれるパワー・ダイナミクスに対処し、ジェンダーの役割をめぐる態度、規範、行動を転換することに重点を置くなど、総合的に推進される必要があります。」

ジェンダー平等を促進することの重要性については、バー氏も同意見である。「世界各国における児童婚に関する私たちの調査から、児童婚の主な原因は単にジェンダーの不平等であると確信しました。」とバー氏は語った。

UN Womenのスポークスパーソンは、さらに重要な要因を指摘した。「伝統的な児童婚や強制結婚の理解と並んで、同性婚、同棲、結婚につながる思春期の妊娠が存在することを示す、結婚パターンの変化が増えています。」「適切なジェンダー・アプローチでは、早期結婚や自発的な結婚も、それが女児に与える不釣り合いな影響や、教育的・経済的機会に対する障壁を考えると、有害な慣行であることを認識する必要があります。」

UN Womenによれば、児童婚に対応する教育的介入には、女性の経済的エンパワーメント・アプローチを統合することが極めて重要である。貧困は唯一の要因ではないが、貧困は依然として児童婚、早期結婚、強制結婚の主要な要因であり、少女や若い女性に不釣り合いな影響を与え、ジェンダーに深く影響された慣行であり続けている。

「少女と若い女性が自らの声を上げ、自らの選択をし、自らの主体性を発揮できるようにするためには、児童婚、早期結婚、強制結婚のリスクに晒されている少女と若い女性のための技能や社会的保護を促進することによって、若い女性の経済的機会を広げることを支援する、システム全体とライフサイクル全体のアプローチを確実に実施することが極めて重要である。」

SDGs Goal No. 5
SDGs Goal No. 5

UN Womenの広報担当者は、さらに重要な要因を指摘して、「伝統的な児童婚や強制結婚の理解と並んで、同性婚、同棲、結婚につながる思春期の妊娠が存在することを示す、結婚パターンの変化が増えています。適切なジェンダー・アプローチでは、早期結婚や自発的な結婚も、それが女児に与える不釣り合いな影響や、教育的・経済的機会に対する障壁を考えると、有害な慣行であることを認識する必要があります。」と語った。

UN Womenによれば、児童婚に対応する教育的介入には、女性の経済的エンパワーメント・アプローチを統合することが極めて重要である。貧困は唯一の要因ではないが、貧困は依然として児童婚、早期結婚、強制結婚の主要な要因であり、少女や若い女性に不釣り合いな影響を与え、ジェンダーに深く影響された慣行であり続けている。

「少女と若い女性が自らの声を上げ、自らの選択をし、自らの主体性を発揮できるようにするためには、児童婚、早期結婚、強制結婚のリスクにさらされている少女と若い女性のための技能や社会的保護を促進することによって、若い女性の経済的機会を広げることを支援する、システム全体とライフサイクル全体のアプローチを確実に実施することが極めて重要である。」(原文へ

INPS Japan/ IPS UN Bureau

関連記事:

|視点|全ての少女に学籍を認めることが児童婚に歯止めをかける一つの方法(アグネス・オジャンボ『人権擁護団体ヒューマン・ライツ・ウォッチ』研究員)

|バングラデシュ|コミュニティーラジオが切り開くジェンダー平等戦場となる身体:紛争下の女性が直面する危険

最新情報

中央アジア地域会議(カザフスタン)

アジア太平洋女性連盟(FAWA)日本大会

2026年NPT運用検討会議第1回準備委員会 

パートナー

client-image
client-image
client-image
client-image
Toda Peace Institute
IPS Logo
The Nepali Times
London Post News
ATN

書籍紹介

client-image
client-image
seijikanojoken