民主主義国家に優位性をもたらしてきた「開放性」が、逆にその衰退の原因となるのだろうか。
【カトマンズINPS Japan/Nepali Times=イアン・ブレマー】

デジタル技術は本来、権力を分散させるはずだった。初期のインターネットの先駆者たちは、自らが引き起こした革命によって個人が力を得て、無知や貧困、圧政から解放されることを期待していた。そして実際、少なくとも一時期はその通りになった。
しかし今日では、ますます高度化するアルゴリズムが私たちのあらゆる選択を予測し、さらには誘導するようになっている。その結果、中央集権的で説明責任を伴わない監視と統制が、かつてないほど効果的な形で実現されつつある。
これは、到来しつつあるAI革命によって、閉鎖的な政治体制の方が開放的な体制よりも安定的になる可能性を意味する。急速な変化の時代においては、透明性、多元主義、抑制と均衡といった民主主義の中核的特徴が、むしろ弱点となり得る。長年にわたり民主主義国家の強みであった開放性が、その没落の原因となるのだろうか。
私は約20年前、国家の開放性と安定性の関係を説明するために「Jカーブ」という概念を提示した。要するに、成熟した民主主義国家は開放性ゆえに安定し、強固な独裁体制は閉鎖性ゆえに安定している一方、その中間の不安定な領域に位置する国家は、圧力にさらされると崩壊しやすいという考え方である。

しかし、この関係は固定的なものではない。技術の進歩によって形を変える。私がこの理論を提唱した当時、世界は分散化の波に乗っていた。情報通信技術(ICT)とインターネットは世界中の人々を結び付け、かつてない量の情報へのアクセスを可能にし、市民と開放的な政治体制に有利な方向へと力の均衡を傾けていた。ベルリンの壁崩壊やソ連の解体、東欧の「カラー革命」、中東の「アラブの春」などを経て、自由化の流れは不可逆的に見えた。
しかし、その進展はその後逆転した。分散化を促したICT革命は、ネットワーク効果、デジタル監視、アルゴリズムによる行動誘導を基盤とする中央集権的なデータ革命へと姿を変えた。技術は権力を分散するどころか集中させ、最大規模のデータを保有する政府や巨大テクノロジー企業に対し、何十億人もの人々が何を見て、何をし、何を信じるかを左右する力を与えたのである。
市民は主体的な行為者から、技術的フィルターやデータ収集の対象へと変えられた。その結果、閉鎖的な体制が優位に立つようになった。カラー革命やアラブの春による成果は後退し、ハンガリーやトルコでは報道の自由が制限され、司法の政治化が進んだ。中国では習近平政権の下で中国共産党が権力を一層集中させ、約20年間続いた経済的開放の流れを逆転させた。そして最も劇的なのは、米国が民主主義の最大の輸出国から、それを弱体化させる技術の最大の輸出国へと変貌したことである。もちろん、その民主主義推進は一貫性や偽善の問題を抱えていたが。
AIの普及は、こうした傾向をさらに加速させるだろう。私たちの個人データで訓練されたモデルは、まもなく私たち自身よりも私たちを深く理解するようになる。そして、人間がAIをプログラムする以上の速度でAIが人間を「プログラム」し、データとアルゴリズムを支配する少数の主体へ、さらに大きな権力を移転させることになる。
その結果、Jカーブは変形し、むしろ浅い「U字型」に近づく。AIの普及によって、極端に閉鎖的な社会も極端に開放的な社会も、以前より脆弱になる。しかし長期的には、技術の進歩と最先端モデルの支配権の集中が進むことで、AIは独裁体制を強固にし、民主主義を弱体化させる可能性がある。そしてカーブは再び反転し、今度は閉鎖的体制に有利な「逆J字型」へと変化するかもしれない。
そのような世界では、中国共産党は膨大なデータ資産、国家による経済統制、既存の監視体制を活用し、さらに強力な抑圧装置を構築できるだろう。一方、米国は少数のテクノロジー界の大富豪が私的利益のために公共空間への影響力を強める、よりトップダウン型で寡頭支配的な体制へと向かうかもしれない。両国の体制は市民の利益を犠牲にしながら、同様に中央集権化され、支配的な存在となるだろう。

インドや湾岸諸国も同様の方向へ進む可能性がある。一方、欧州や日本はAI覇権競争で後れを取ることで、地政学的な影響力を失うか、あるいは国内不安定化に直面する恐れがある。
もっとも、こうしたディストピア的な未来は避けられるかもしれない。その条件は、分散型のオープンソースAIモデルが主流となることである。台湾では、技術者や市民活動家たちがDeepSeekを基盤とするオープンソースモデルの開発を進めており、高度なAIを企業や国家ではなく市民社会の手に残そうとしている。皮肉なことに、そのDeepSeek自体は権威主義国家である中国で開発されたものである。
もし台湾の取り組みが成功すれば、初期インターネットが約束した分散化の理念を部分的に取り戻せるかもしれない。しかし同時に、悪意ある主体が有害な能力を利用するための障壁を下げる危険もある。少なくとも現時点では、権力を集中させる閉鎖型モデルが優勢である。

歴史はわずかな希望も示している。印刷機から鉄道、放送メディアに至るまで、これまでのあらゆる技術革命は政治を不安定化させた。しかし最終的には、新たな規範や制度が生まれ、開放性と安定性の均衡が回復されてきた。
問題は、民主主義国家が今回も再び適応できるのか、そしてAIが民主主義を歴史の舞台から消し去ってしまう前に、それを成し遂げられるのかということである。
© Project Syndicate
イアン・ブレマーは、ユーラシア・グループおよびGZERO Mediaの創設者兼社長。国連AI高級諮問機関(UN High-level Advisory Body on Artificial Intelligence)執行委員会メンバー。
INPS Japan
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