【ニューヨークIPS=アリス・スレーター】
今年の夏、ロシアと北朝鮮が相互防衛を約束する協定を中国の支持を得て発表したことに続き、韓国では米国の安全保障政策の見直し、有事に韓国のために米軍の核使用を補償する「核の傘」に依存するのをやめるべきとする、衝撃的な提案がなされている。
「核の傘」は、日本、オーストラリア、韓国の太平洋諸国だけでなく、すべての北大西洋条約機構(NATO)諸国にも提供されている。韓国で上がっている疑念は、核不拡散条約(NPT)で法的に義務付けられている「誠実な軍縮努力義務」を米国が果たさないことから、世界が混乱に直面している現状を反映したものである。
「核の傘」は、NATO5カ国(ドイツ、イタリア、オランダ、ベルギー、トルコ)への核兵器配備を含むが、それ自体が1968年の核拡散防止条約(NPT)に対する違反である。NPTでは、米国、ロシア、英国、フランス、中国の核保有5カ国が核軍縮のための「誠実な軍縮努力」を約束し、他のすべての国々は核兵器を保有しないことに合意した。
イスラエル、パキスタン、インドを除いて、韓国を含むすべての国がNPTに署名したが、これら3カ国は独自の核兵器を開発した。NPTは、核兵器を放棄する代わりに核エネルギーを「平和的に利用する不可侵の権利」を与えるというファウスト的な取引(ここでは一見すると有利に見えるが、結果的に核拡散のリスクと伴うという意味:INPSJ)を提供した。
すべての「平和的な」原子力発電所が核兵器を作るために必要な物質を生成するため、NPTはそれらの国々に爆弾工場の鍵を与えたことになる。北朝鮮はNPTを脱退し、原発施設を利用して核兵器を製造した。イランは核物質を濃縮しているが、まだ核爆弾を作ってはいない。
ロシアがこの時期に北朝鮮や中国と同盟を結んでいるのは、米国の外交が失敗した結果であり、米国の軍産・議会・メディア・学術・シンクタンク複合体(MICIMATT)が、887カ国にある800の米軍基地を超えて、影響力の拡大を図った結果である。
米国は現在、太平洋に最近設置した新しい基地で中国を取り囲み、オーストラリア、英国との新しい軍事同盟であるAUKUSを形成している。米国はまた、リチャード・ニクソン大統領とヘンリー・キッシンジャー国務長官が1972年に中国の共産党政権を承認し、(国共内戦に敗れて大陸から逃れた国民党政権が樹立した)台湾の将来問題については中立を保つと約束したにもかかわらず、台湾の武装を支援している。
1989年の冷戦終結後、米国は弾道弾迎撃ミサイル制限条約を脱退し、ポーランドとルーマニアにミサイル基地を置いた。また、ドナルド・レーガン大統領とミハイル・ゴルバチョフ書記長が交渉した1987年の中距離核戦力全廃条約からも脱退し、北太平洋条約機構(NATO)の国境をドイツ統一後は東に拡大しないというゴルバチョフとの約束にもかかわらず、ロシア国境に向けて加盟国を東方に拡大させた。
実際、NATOの拡大に危機感を抱いたウラジーミル・プーチン大統領は、ロシアをNATOに招待できないかとビル・クリントン大統領に尋ねたが拒否され、ウクライナ戦争に至るまでの数年間、ウクライナをNATOに加盟させることはロシアにとって「レッドライン」であると、繰り返し強調した。
西側軍事同盟はロシアの懸念を無視して我々が今経験しているこの危険な瞬間に至るまで拡大を続けた。報復として、プーチン政権はロシアの核兵器をベラルーシに配備した。これはロシアが他国と核共有した初めての事例である。
皮肉なことに、ニクソンとキッシンジャーが中国と和平を結んだ根本的な理由は、ロシアと中国のより強力な同盟関係を防ぐためだった。
米国が核軍縮義務を遵守し、平和への道を歩まなければ、韓国のように核武装を志向する国が増える可能性がある。サウジアラビアは現在、保障措置のない「平和的な」核エネルギーの使用を求めている。
既に疲弊した地球が核兵器による消滅か、気候変動による激変による苦境に立たされている今こそ、私たちは戦争ではなく他国と協力し、平和を実現する時です。 (原文へ)
※アリス・スレイター氏は、「ワールド・ビヨンド・ウォー」「宇宙の兵器利用と原子力に反対するグローバルネットワーク」の理事を務め、核時代平和財団の国連NGO代表を務めている。
INPS Japan/ IPS UN Bureau
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