【ニューヨークINPS Japan/The Other News=メディア・ベンジャミン】
フランス全土で、高校生たちが教育への投資拡大を求め、3週連続で街頭に繰り出している。彼らが求めているのは、教員の増員、少人数学級の実現、適切な校舎設備の整備、そして貧困層や労働者階級の子どもたちにも十分な教育機会を保障する公教育制度だ。
しかし、この抗議運動は、フランス政府が公共支出の削減を迫られる一方、軍事予算の大幅な増額を求められている時期に起きている。
この運動が突きつけている問いは、教育問題にとどまらない。フランスは若者の未来に投資するのか。それとも、ミサイルや兵器、戦争に資金を注ぎ込むのか。
本か、それとも爆弾か。
9月中旬にパリ郊外で始まった抗議運動は全国に拡大し、これまでに累計1000校以上の高校で授業の中断や封鎖が発生した。
10月6日には、高校生たちを支持する全国規模のデモが行われ、内務省によれば25万6000人が参加した。主催者側は参加者数を45万人と発表している。
政府の対応は、学生たちの怒りをさらに増幅させている。当局は彼らの要求に耳を傾ける代わりに、機動隊を投入し、催涙ガスやグレネード弾を使用して、多数の若者の身柄を拘束してきた。
法務省が10月9日に公表した集計によれば、8日時点で6877人が警察での留置措置を受け、そのうち5890人が未成年者だった。ただし、留置された全員が訴追されたわけではない。
一部の若者は深刻な負傷を負っている。10月5日には、フランス北部ランス(Lens)の高校付近で、警察が使用したグレネード弾の爆発により15歳の少年が片手を失った。
少年がグレネード弾を拾ったかどうかなど、爆発に至る詳しい経緯については証言が食い違っており、警察監察総監室(IGPN)が調査を進めている。この事件を受け、内相は高校生の抗議活動における閃光音響弾の使用を停止した。
アムネスティ・インターナショナルは、教育を受ける権利を訴える若者たちに対して警察が「不均衡な」武力を行使していると非難し、平和的な集会の権利を保障するよう当局に求めている。
その対照は鮮明だ。
生徒たちが求めているのは、教員の増員とまともな学校教育である。ところが政府は、彼らに機動隊を差し向ける一方で、軍事費にはさらに数十億ユーロを上積みしようとしている。
こうした学生運動が広がっているのは、北大西洋条約機構(NATO)が欧州各国に対し、防衛・安全保障関連支出の大幅な増額を求めているさなかのことだ。
2025年、ワシントンからの強い圧力を受け、NATO加盟国の首脳たちは、2035年までに各国の国内総生産(GDP)の5%を防衛・安全保障関連支出に充てるという、驚くべき新たな目標に合意した。
そのうち少なくとも3.5%を直接的な軍事支出に、残り最大1.5%を防衛関連インフラ、サイバーセキュリティー、危機への対応力を意味する「レジリエンス」などに充てるというものだ。
これは、従来のGDP比2%という目標からの大幅な引き上げを意味する。しかも、従来の目標ですら、達成に苦労してきた加盟国は少なくなかった。
財政赤字の拡大、多額の政府債務、公共サービスの劣化に直面する国々にとって、これほどの軍事費増額は極めて大きな代償を伴う。
フランスは、その典型的な事例である。
同国の公的債務は約4兆ドルに達し、2026年末にはGDP比119.3%、2027年には121.7%に上昇すると予測されている。これは欧州でも特に高い水準だ。
財政赤字を削減するため、政府は2027年度に総額540億ユーロ規模の財政改善を目指しており、歳出抑制や税制措置を通じて、すでに厳しい状況に置かれている公共サービスにもさらなる負担を求めようとしている。
ところが、国民に緊縮財政への協力を求める一方、政府が提案する2027年度予算では、国防費を前年比約64億ユーロ増額する計画だ。これに対し、教育予算の増額は12億ユーロにとどまる。
教育予算自体は増額されるものの、教員の定数は常勤換算で差し引き1588人分削減される見通しだ。ただし政府は、研修中の教員や生徒の支援に携わる職員などを含めれば、教育省全体の雇用枠は3257人分増加すると説明している。
想像してみてほしい。
雨漏りする教室で、大勢の同級生と肩を寄せ合いながら授業を受ける16歳の生徒がいる。常勤の教員すら確保されていない。
その生徒は、政府から「学校を改善するための予算はない」と聞かされる一方で、兵器の購入には何十億ユーロもの追加予算が確保されるという現実を目の当たりにしているのだ。
フランスの独立した財政監視機関である高等財政評議会(HCFP)も、2027年度の中央政府支出の増加が、主として国債の利払い、欧州連合(EU)への拠出金、軍事費の増加によって生じていると指摘している。
NATO当局者は、こうした大規模な軍備増強は、ロシアをはじめとする脅威から欧州を守るために必要だと主張する。
しかし、ロシアが今にもフランスへ侵攻しようとしているかのような見方は、ばかげている。
そして、軍事費の際限ない増額を求める動きは、根本的な疑問を投げかける。
学校や病院をはじめとする公共サービスが荒廃するまま放置されているとすれば、フランス政府はいったい何を守ろうとしているのだろうか。
こうした状況は、フランスだけの問題ではない。
ベルギー、スペイン、ポルトガルでも、教育予算や労働条件の改善を求めて、学生や教員が街頭で抗議活動を展開している。
その背景には、基本的な公共サービスを維持する予算がないと繰り返す欧州各国政府に対する、不満の高まりがある。
欧州が冷戦終結以来、最大規模ともいえる軍備増強に乗り出す一方で、若い世代全体が緊縮財政を受け入れるよう求められているのだ。
政治指導者たちは、教育予算と軍事費は別々の問題だと主張するかもしれない。
しかし、両者が限られた公的資源を奪い合っていることに変わりはない。
そして、フランスの高校生たちの中には、すでにこの問題のつながりを明確に認識している者もいる。
抗議デモでは、「戦争ではなく学校に予算を」「ジェノサイドではなく高校教育に資金を」と書かれたプラカードが掲げられている。
彼らは、教育環境の改善という身近な要求を、政府が何に、そして誰のために公的資金を使うのかという、より大きな問題と結びつけているのである。
こうした若者たちは、「安全保障」とは何かという、その定義そのものに異議を唱えている。
NATOは、安全保障を戦車、ミサイル、ドローン、弾薬などの軍事力によって測ろうとする。
これに対し、学生たちが求めているのは、まったく別の安全保障だ。
それは、十分な教育を受けられる学校、平等な機会、そして終わりの見えない軍備増強のために若者の未来を犠牲にするのではなく、その未来に投資する社会である。
彼らの訴えは、米国を含むNATO加盟国全体に響き渡るべきものだ。
米国でも、公共サービスが削減の圧力にさられる一方、トランプ政権は2027会計年度の国防関連予算を前年度比44%増の総額1兆5000億ドルに引き上げるよう求めている。
だからこそ、私たちCODEPINKと連携団体は、11月10日から12日にかけて、ワシントンD.C.で「納税者の決起行動(Taxpayer Uprising)」を組織している。
市民が連邦議会に足を運び、国家の優先課題を根本から見直すよう議員たちに求める取り組みだ。
戦争や兵器製造企業に、際限なく税金を注ぎ込むのではなく、医療、教育、手頃な価格の住宅、再生可能エネルギー、そして持続可能な未来にこそ投資すべきである。
フランスの教室から米国連邦議会の議場まで、問われていることは同じだ。
私たちの政府は、人々の命と暮らしに投資するのか。それとも戦争に投資するのか。
本か、それとも爆弾か。
メディア・ベンジャミン(Medea Benjamin)は、米国の平和運動団体CODEPINKおよび人権団体グローバル・エクスチェンジ(Global Exchange)の共同創設者。
INPS Japan
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