ニュース視点・論点「核時代」を離れ、平和な緑の地球を創るとき

「核時代」を離れ、平和な緑の地球を創るとき

【ニューヨークIDN=メディア・ベンジャミン、アリス・スレイター】

シリアから米軍を撤退させ、アフガニスタン駐留米軍を半減させるとのドナルド・トランプ大統領の決定に対して、米国の左派・右派・中道から激しい不満の大合唱が起こっている。これにより米軍を本国に帰還させようとする大統領の試みは減速することになるかもしれない。

しかし、新年になって、米外交政策の脱軍事化が、議会の最優先事項になりそうだ。時代を先取りした「グリーン・ニューディール」への動きが強まる中、終わりなき戦争と、破滅的な気候変動と並んで地球の生存そのものを危機にさらす核戦争の脅威を否定する「ニュー・ピースディール」の時代がやってきた。

「狂犬」ジェームズ・マティス国防長官と他のタカ派軍人らが突然辞任した機会を、私たちは大いに利用し、行動に移さねばならない。また、イエメン内戦に介入するサウジアラビアを軍事支援しているトランプ政権を議会が前例のない形で批判しているが、これも脱軍事化に向けた、もうひとつの動きである。さらにトランプ大統領が、実績のある核軍備管理協定からの離脱を提案しているが、こうした新たな危機は同時に好機でもある。

Trump ending U.S. participation in Iran Nuclear Deal. Credit: White House.
Trump ending U.S. participation in Iran Nuclear Deal. Credit: White House.

トランプ大統領は、1987年にロナルド・レーガン大統領(当時)とミハイル・ゴルバチョフ書記長(当時)が交渉した中距離核戦力(INF)全廃条約からの離脱を発表し、バラク・オバマ大統領とドミトリ・メドベージェフ大統領が交渉した穏健的な新戦略兵器削減条約(新START)を更新することに関心はないと警告している。

オバマ大統領は、新STARTへの議会の批准を得るために、大きな代償を払った。つまり、30年にわたって1兆ドル規模を投資する核近代化事業(核爆弾工場2カ所の新設、新型核弾頭の開発、核の運搬手段であるミサイルや航空機、潜水艦の開発)を承認し、その事業計画は、トランプ政権下でも継続されている

新STARTは、米国とロシアがその巨大な核戦力の中から物理的に配備できる弾頭上限合計数を米露双方で1550発に制限したものだが、米国が1970年の核不拡散条約(NPT)において核兵器を廃絶するとした約束を違えるものだ。NPTでの約束がなされてから50年近くが経つ現在ですら、米国とロシアは依然として、地球上に存在する核爆弾1万5000発のうち、実に1万4000発を保有している。

明らかに混乱状態にあるトランプ政権下の米国の軍事態勢をみれば、軍縮に向けた大胆な新しい行動を起こす数十年に一度の機会が訪れていると言えるだろう。核軍縮に向けてもっとも可能性のある突破口は、2017年に国連で交渉され122カ国の賛成で採択された核兵器禁止条約(核禁条約)である。

この前例なき条約は、生物兵器・化学兵器と同じく、ついに核兵器を禁止したものであり、その推進者である核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)はノーベル平和賞を受賞した。核禁条約が発効するには50カ国の批准が必要である。

ICAN
ICAN

しかし私たちは、米議会が核禁条約を支持したり、1970年のNPTにおいて核軍縮に向けた行動を「誠実」に行うとした約束を認める姿ではなく、旧態依然とした不十分な提案をしている実態を目の当たりにしている。

懸念されるのは、下院軍事委員会の新委員長に就任したアダム・スミス議員が、大規模な核戦力削減の実行や、大統領が核兵器を使用できるケースの制限に関してのみ関心を持ち、核禁条約を支持したり、核兵器の放棄を約束したNPTの順守に目を向けるそぶりもないことだ。

米国や北大西洋条約機構(NATO)諸国、太平洋の同盟国(オーストラリア・日本・韓国)はこれまでのところ、核禁条約の支持を拒否しているが、ICANが組織化した世界的な取り組みによって、これまでに同条約には69カ国が署名し、19か国が批准している。

12月には、オーストラリア労働党が、同国が現在、米国の核同盟の一員であるにもかかわらず、次の総選挙に勝利したら核禁条約に署名・批准することを誓約した。また、NATO同盟の加盟国であるスペインでも核禁条約署名に向けた動きがみられる。

世界各地の都市や州、議会が、核禁条約を支持するよう政府に求めるキャンペーンにますます加わるようになってきている。しかし、米議会では、米国に核禁条約支持を求めるICANの誓約に署名しているのは、これまでのところわずか4人の議員(エレノア・ホルムズ・ノートン、ベティー・マッカラム、ジム・マクガバン、バーバラ・リー)にとどまっている。

米議会は、世界を核の惨禍から救う新しいこの画期的な機会を無視していているほか、米国の電力を今後10年で持続可能なエネルギー源のみで完全に賄うという「グリーン・ニューディール」(アレクサンドリア・オカシオ=コルテス下院議員が主導)を求めるキャンペーンにもマイナスの影響を及ぼしている。

US Capitol, west side By Martin Falbisoner - Own work, CC BY-SA 3.0
US Capitol, west side By Martin Falbisoner – Own work, CC BY-SA 3.0

ナンシー・ペロシ下院議長は、議会に「グリーン・ニューディール特別委員会」の設置を求める多数の若者たちによる提案を拒絶した。ペロシ議長は代わりに「気候危機に関する特別委員会」を設置したが、同委員会には召喚の権限がない。また、委員長のキャシー・キャスター下院議員は、化石燃料関連企業から献金を得ている議員を委員に指名することを禁止せよとの「グリーンディール・キャンペーン」の要求も拒絶している。

「ニュー・ピースディール」は、上下両院の軍事委員会の委員に対して同様の要求をすることになるだろう。同委員会の委員長であるアダム・スミス下院議員(民主)やジェームズ・インホーフ上院議員(共和)が兵器業界から25万ドル以上の献金を得てきたというのに、彼らに公正中立を期待することなどできようか。

兵器から金融資産を引き揚げろ」という連合体は、米議会の議員らが毎年新兵器に数千億ドルを配分する国防総省の予算を承認していることから、全議員に対して、兵器業界からの献金を拒否するよう強く求めている。

Divest from the War Machine
Divest from the War Machine

献金拒否の誓約は、軍事委員会の委員にとって特に重要だ。兵器産業から相当の献金を受け取っている議員は誰も、軍事委員会の委員になるべきではない。とりわけ、国防総省が昨年の監査を通す能力がなかったというスキャンダラスな報告書と、これまでにもそうした能力を欠いていたという発言を議会が検証しようとしているのだから、なおさらだ。

私たちは、民主党主導の下院議会が、気候変動への対策資金の確保に四苦八苦する一方で、7000億ドルの年間軍事予算と今後30年で1兆ドルにのぼる新型核兵器開発計画に予算配分を維持するという、これまでのやり方を続けることを、容認できない。

パリ気候変動協定とイラン核合意からの離脱をトランプ大統領が表明したことで、異例の混乱が生み出されている。だからこそ私たちは、破滅的な気候の破壊と核による絶滅という二つの存続に関わる脅威から地球を救うための緊急の行動を開始しなくてはならない。

今こそ、核時代から離脱し、兵器産業から金融資本を引き上げて、今後10年間で大量の無駄な資金を別の方面に回すべきだ。破滅的なエネルギーシステムから持続可能なそれへと転換し、自然や人類すべてを平和に保つ真の国家・国際安全保障を創り出すべきだ。(原文へ

※メディア・ベンジャミン氏は「コード・ピンク:平和を求める女性」共同代表で、『イランの内側:イスラム共和国の本当の歴史と政治』など著作多数。アリス・スレイター氏は「ワールド・ビヨンド・ウォー」調整委員会委員、「核時代平和財団」ニューヨーク支部長。

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