SDGsGoal12(作る責任 使う責任)AIは、今すぐ対策を講じなければ、雇用・中間層・福祉国家を揺るがす

AIは、今すぐ対策を講じなければ、雇用・中間層・福祉国家を揺るがす

【ニューヨークIPS=イザベル・オルティス、ビル・ショルダー

人工知能(AI)は、生産性や科学、医療、教育に飛躍的な進歩をもたらす可能性を秘めている。しかしその一方で、数百万もの雇用を失わせ、中間層を空洞化させ、病院や学校、年金制度を支える税収を減少させる危険性も抱えている。その変化はすでに始まっており、対策を講じるために残された時間は多くない。|英語版

国際通貨基金(IMF)は、AIが世界全体の約40%の雇用に影響を及ぼすと予測している。先進国では約60%の職種がAIの影響を受け、そのうち最大で3分の1(33%)がAIに代替されるリスクが高い。新興国では約40%の職種が影響を受け、その約4分の1(24%)が代替される危険性がある。低所得国では約26%の職種がAIの影響を受け、そのうち約5分の1(18%)はAIによって代替される可能性がある。

雇用喪失が中間層を縮小させる

AIの影響を最も受けやすいのは、これまで中間層の安定を支えてきた職種である。事務職、カスタマーサービス、翻訳、ジャーナリズム、法務補助、金融分析、マーケティング・コンテンツ制作、さらにはソフトウェア開発やデータ関連業務の一部も含まれる。これらの仕事は中間層の所得を支え、消費を生み出し、税収の基盤となってきた。しかしIMFは、こうした職種こそAIの影響を最も受けやすいと指摘している。

Isabel Ortiz

AIによって新たな仕事も生まれるだろう。しかしIMFによれば、それ以上に多くの仕事が消滅する可能性が高い。

その影響は職を失う人々だけにとどまらない。賃金は低下し、不安定な雇用が増え、企業が「AIに置き換えることができる」と労働者に示せるようになることで、労働者の交渉力は大きく低下する。所得はAI技術を保有する企業や一握りの巨大企業へ集中し、一般の労働者に配分される所得の割合は縮小していく。

中間層の家計は経済を支える最大の消費者である。その所得が減少すれば、小売店や中小企業の売り上げは落ち込み、投資は停滞し、廃業が相次ぐようになる。その結果、経済は需要不足、低賃金、慢性的な不完全雇用に苦しむ低成長の悪循環へと陥る恐れがある。

税収の減少が福祉国家を弱体化させる

その圧力はやがて財政にも及ぶ。

多くの政府歳入は中間層に依存している。所得税、消費税、社会保険料はいずれも安定した雇用と賃金によって支えられている。賃金所得が減少し、安定した雇用が縮小すれば、政府の税収も減少する。

一方で、失業給付、職業訓練、医療、所得支援を必要とする人々は増加する。政府は「税収は減る一方で支出は増える」という財政的な板挟みに直面することになる。IMFは2026年のAI・労働市場・公共政策に関する分析で、このリスクを警告している。

公的年金制度は、現役世代が納める保険料によって高齢者を支える賦課方式に依存している。医療制度もまた、健康な人々の拠出によって病気の人々を支えている。こうした制度では、負担する人の数が減れば持続可能性は失われる。その結果、政府は給付の削減や利用者負担の引き上げ、家計への負担転嫁を余儀なくされる可能性がある。これは国連社会開発研究所(UNRISD)の報告書『AIと社会契約の未来』でも指摘されている。

公共サービスと民主主義への圧力

歴史が示しているように、その次に訪れるのは緊縮財政政策である場合が少なくない。

Bill Shoulder

財政圧力を受けた政府は、消費税を引き上げ、公共サービスの利用料を値上げし、給付の対象を厳格化し、公共支出を削減する傾向がある。

財政が悪化すると、教育、医療、介護、社会保障は「合理化すべき予算項目」として扱われがちになる。しかし、これらは本来、人権であり、社会を支える不可欠な公共サービスである。

その結果、富裕層だけが質の高い民間サービスを利用でき、多くの人々は質の低下した公共サービスに頼らざるを得ない「二層社会」が生まれる。

経済的不安は民主主義への信頼も損なう。

働いても生活が安定せず、公的機関も自分たちを守ってくれず、技術革新の恩恵が一部の富裕層や巨大企業だけに集中していると人々が感じれば、不満は蓄積し、社会の分断は深まる。

その結果、特定の集団をスケープゴートに仕立てる動きが強まり、監視や情報操作、より権威主義的な統治への支持も広がりやすくなる。とりわけAIそのものが情報空間や世論形成を操作する手段として利用されれば、その危険性はさらに増す。

AIによる雇用の減少は税収基盤を弱体化させ、年金や医療、教育など福祉国家を支える社会保障制度の持続可能性に深刻な影響を及ぼす恐れがある。画像:INPS japan
AIによる雇用の減少は税収基盤を弱体化させ、年金や医療、教育など福祉国家を支える社会保障制度の持続可能性に深刻な影響を及ぼす恐れがある。画像:INPS japan

未来は私たちの選択にかかっている

しかし、こうした未来は決して避けられない運命ではない。

ノーベル経済学賞受賞者のダロン・アセモグル氏とサイモン・ジョンソン氏が指摘するように、AIが社会にもたらす影響は、技術そのものよりも、それをどのような政治的・経済的選択のもとで活用するかによって決まる。

政府はAIによって生み出される巨額の超過利益や市場支配力に課税することができる。その財源を活用して、需要を維持し、人々の所得を保障しながら社会の移行を支えることも可能である。

また、教育、医療、社会保障などの公共サービスを、人権としてさらに充実させるべきである。

さらに政府は、AIの導入方法について、労働者や市民が実質的に意思決定に参加できる仕組みを整えなければならない。同時に、AIが偽情報や監視を通じて民主主義への信頼を損なうことがないよう、適切な規制を整備する必要がある。

AIはすでに社会を大きく変え始めている。

今問われているのは、その莫大な恩恵を社会全体で公平に分かち合い、すべての人々の繁栄につなげることができるかどうかである。そして、安定と尊厳ある社会を支えてきた「社会契約」を維持できるかどうかである。

その選択は、まだ私たちの手に委ねられている。

しかし、その猶予は決して長くはない。

イザベル・オルティスは、「グローバル・ソーシャル・ジャスティス」代表。国際労働機関(ILO)およびユニセフの局長を務めたほか、国連およびアジア開発銀行(ADB)の上級職員を歴任した。ビル・ショルダーはAIソフトウェアエンジニア・研究者。人工知能および国際プロジェクト・マネジメントを専門としている。
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https://www.sdgsforall.net/

INPS Japan/ IPS UN Bureau Report

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