2023年に撤収したマリの国連ミッションは、ドイツによる最後の大規模な平和維持関与だった。
【ベルリンIPS=パトリック・ローゼナウ、キルステン・ハルトマン】
国連の平和維持活動大臣級会合(PKM)が、2025年5月13日から14日にかけて、初めてドイツ・ベルリンで開催される。この会合は、国連の平和維持活動の将来について議論することを目的としている。PKMは隔年で開催され、紛争対応における政治的支援の継続性を測る機会となっている。国連の平和維持活動は、紛争予防、調停、平和構築措置などと並ぶ包括的な紛争対応ツールの一つである。
しかし、平和維持活動の計画・実行・完了には依然として多くの課題がある。2014年に中央アフリカ共和国で設立されたMINUSCAを最後に、大規模な新規ミッションは開始されていない。既存のミッションは延長される一方で、地域・準地域機関の役割が増大している。世界の紛争数が増加するなか、国連ミッションの成功は依然として限定的だ。
偽情報といった新たな脅威による紛争の性質の変化も、平和維持活動の遂行を一層困難にしている。それでもなお、国連の平和維持活動は、民間人に対する直接的な暴力を減少させる効果が証明されており、最も費用対効果が高く、効果的な国際的紛争管理手段とされ、今もなお代替不可能である。
こうした課題の高まりを受け、ベルリン会合ではより柔軟な新たな平和維持モデルが議論される予定だ。2024年9月の「未来のための協約(Pact for the Future)」において、国連加盟国はアントニオ・グテーレス事務総長に対し、平和維持改革に向けた提案を策定するよう要請しており、現在、平和維持は大きな関心を集めるテーマである。ドイツの役割に注目が集まっている。
■ 重要な役割
2023年に発表された初の「国家安全保障戦略(NSS)」は、国際的な危機対応において責任を担うというドイツの意志を明確にしている。しかし、実際の関与はとくに人員面で限定的なままだ。ロシアによるウクライナ侵攻は、ドイツの安全保障政策の焦点を自国および同盟防衛へと移行させた。
しかし、ドイツが国連平和維持活動への実質的な貢献を欠けば、重大な結果を招く。訓練された要員や輸送・後方支援、専門的能力の提供に加え、政治的信頼性の観点からも、ドイツの参加は極めて重要である。
平和ミッションの将来に関与したいのであれば、現場での責任を引き受ける必要がある。アフガニスタン調査委員会の最終報告書では、国連体制の強化のためには、より優れた危機対応、増加した資金、現実的で優先順位の明確な任務が必要だと指摘された。そこには「ドイツが物的・人的両面で平和ミッションを支援することが不可欠である」と明記されている。
とはいえ、現地に派遣されているドイツ要員は依然として限られている。2023年に撤収したマリの国連ミッションは、ドイツによる最後の大規模な平和維持関与だった。現在では、レバノンのUNIFILミッションの海上部門への関与が中心だ。
ドイツは国連の資金面では伝統的に信頼されてきたが、現場での存在感は常に限定的であり、その結果として政治的影響力も低下している。皮肉なことに、ドイツが国連安全保障理事会の非常任理事国を務めていた期間中に、軍の現地参加はむしろ減少していた。
このように、長年にわたり「言葉」と「現実」のギャップが存在してきた。この矛盾は国家安全保障戦略にも表れている。一方では、「軍の中核任務は自国と同盟の防衛であり、その他の任務はこれに従属する」としながらも、他方では「国連平和維持ミッションには明確な政治的任務と必要な資源を提供する」とも述べている。こうした外交通信は曖昧であり、政治的意思決定にはさらなる明確化が求められる。
■ 3つの主要課題
ドイツの国連平和維持への関与を妨げているのは、主に以下の3つの課題である。
第一に、ドイツ国民の多くは、国際的な危機対応における積極的な役割に対して根本的に懐疑的である。「より多くの責任を担う」という決まり文句にもかかわらず、新政権はそのような展開を正当化する説得力ある理由を提供する必要がある。
多くのミッションが国民の生活実感からかけ離れた場所で行われているため、多国間主義の重要性について率直で明確な説明が求められる。ただし、批判的な声を無視してはならない。常に、ドイツの参加は慎重に評価され、国内外のパートナーとともに成功の可能性を見極める必要がある。
第二に、「ツァイテンヴェンデ(時代の転換)」と憲法改正にもかかわらず、軍への予算配分は不十分なままだ。持続可能な改善には、安定した財政的約束と構造改革が必要である。そのためには国防予算の長期的な拡大と、徴兵制度停止を踏まえた体制の再編が求められる。
新政権は、国家・同盟の防衛と危機地域での展開を並行して考慮すべきだ。国家安全保障戦略は、「ドイツの安全は、他地域の安定と結びついている」と明記している。
第三に、市民部門には政治的意思も、より積極的な役割を担うための体制も整っていない。2021年の連立協定では「危機予防と民間による危機対応の強化」がうたわれたが、実際にはほとんど実現していない。たとえば、2025年3月時点で国連平和ミッションに派遣されているドイツの警察官はわずか12人である。これは長年掲げられてきた拡充目標に遠く及ばない数字だ。
連邦政府と州政府の利害不一致に加え、国際派遣に向けたキャリア上のインセンティブも不十分である。比較例として、現在280人以上のドイツ人警察官が欧州国境警備機関(フロンテックス)に派遣されており、政治的優先順位が明らかに異なることがうかがえる。
国連平和維持のグローバルな変化を踏まえ、ドイツは今後の改革議論に積極的に参加し、自国の提案を提示し、具体的な資源の提供を行うべきである。5月のPKMは、ドイツの政治的関与を可視化し、国連の平和維持の未来を形成し、拘束力ある貢献を誓約する絶好の機会となる。
2026年に2027〜2028年の安保理非常任理事国入りを目指すのであれば、ドイツは国連平和維持への真剣な関与を証明しなければならない。
だが、持続的な支援は、閣僚会合や安保理だけにとどまってはならない。ドイツは、現在議長を務める平和構築委員会(PBC)や、9月から就任する国連総会議長職など、国連の枠組み全体を通じて平和と安全保障への関与を一貫して推進すべきである。
また、平和構築と平和維持の一層の統合を、政治的・構造的・運用面のいずれにおいても主導すべきである。関係省庁は、国連主導の平和活動に対するドイツの関与の目標を、具体的なスケジュールと人員・財政面の約束を伴って定義する必要がある。
これらの目標は、NATOやEUの戦略プロセスとも連携させ、国際的な整合性と役割分担を確保すべきだ。また、このような自発的な貢献は、2017年に策定された危機対応ガイドラインの改訂版にも盛り込むことが可能だろう。
新政権には迅速な行動が求められている。それは平和維持活動の危機だけでなく、国境を越えた安全保障上の脅威の増加に起因する。多重的な危機の時代にあって、ドイツは安全保障政策で後れを取る余裕はない。現在進行中の紛争の影響は、遅かれ早かれ自国にも及ぶのである。(原文へ)
パトリック・ローゼナウ博士は、ドイツ国連協会(UNA-Germany, DGVN)が発行する雑誌『Vereinte Nationen』の編集長。国連、多国間主義、国際安全保障に関する執筆多数。 キルステン・ハルトマン氏は、ヘルムート・シュミット連邦首相財団の「欧州・国際政治」プログラムの政策担当官。エアフルト、カリ、テュービンゲン、ハイファで国際関係と平和学を学ぶ。
INPS Japan/IPS UN Bureau Report
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