INPS Japan/ IPS UN Bureau Report政治・治安危機の深刻化で、イエメンの人道アクセスが崩壊

政治・治安危機の深刻化で、イエメンの人道アクセスが崩壊

【国連IPS=オリトロ・カリム】

ここ数週間、イエメンの人道危機は再び悪化の兆しを強めている。食料不安の深刻化に加え、南部を中心とする武装勢力間の衝突が拡大し、国連当局者は「危機が重大な破局点に近づいている」と警告している。暴力の激化は、命を救う人道支援の実施を妨げ、経済・政治の不安定化は保健、給水、教育など必須サービスへのアクセスをさらに侵食している。その結果、数百万人が生存に不可欠な支援を失いかねない局面に直面し、とりわけ子どもへの影響が深刻化している。

治安面では、昨年12月に南部で緊張が急上昇した。報道によれば、UAEの支援を受ける南部暫定評議会(STC)がハドラマウト州(ワーディ・ハドラマウト)やマフラ州へ攻勢を強め、一部地域で主導権を握った。これに対し、サウジアラビアが支援する側は空爆を含む軍事行動で対抗し、南部の拠点都市ムカッラも攻撃対象となったとされる。

その後、短期的な緊張緩和が取り沙汰された局面があっても、人道専門家は、政治・経済の持続的な解決が伴わない限り、治安は極めて脆弱なままだとみる。国連側は、長年の政治的混乱が経済を弱体化させ、通貨安とインフレを通じて食料・燃料価格を押し上げ、公務員の賃金未払いも拡大させてきたと指摘する。

1月14日、国連イエメン担当特使のハンス・グルントベルグ氏は国連安全保障理事会で説明を行い、信頼でき、透明で、包摂的な政治プロセスを確立する緊急を訴えた。グルントベルグ氏は「南部イエメンでの最近の展開は、この脆い均衡がいかに速やかに崩れ得るかを示している」と述べ、「信頼性ある政治的道筋の中にプロセスを再びしっかりと位置づけ直す」ことが不可欠だと強調した。

さらに同氏は、「イエメンが抱える多様な課題を個別ではなく統合的に扱う包括的アプローチが欠けたままであれば、不安定化の連鎖がこの国の進路における恒常的特徴となりかねない」と警告した。

グルントベルグ氏はまた、イエメンの経済機関、なかでも中央銀行を政治・治安上の対立から守る重要性に言及し、短期の不安定化であっても通貨安を招き、財政赤字を拡大させ、喫緊の経済改革を妨げ得ると指摘した。

イエメン当局によれば、南部暫定評議会(STC)、フーシ運動、サウジ支援の政府勢力の衝突は避難を拡大させ、数千人の民間人が必須サービスへのアクセスを断たれている。1月19日、国連イエメン常駐・人道調整官のジュリアン・ハーネイス副事務総長補は、2026年の人道状況はさらに悪化する見通しで、人道支援を必要とする人は推計2100万人に上ると述べた。これは前年の1950万人から増加する。

このうち1800万人超(人口の約半数)が、2月に深刻な食料不安に直面すると見込まれている。さらに、十分な介入がなければ、数万人が「破局的」水準の飢餓に陥り、飢饉同然の状況に追い込まれかねないと推計されている。

飢餓危機は子どもに最も深刻な影響を及ぼす見通しで、5歳未満の子どもの約半数が急性栄養不良にある。昨年は資金不足が続き、栄養支援の対象とされた800万人の子どものうち、命を救うケアを受けられたのは4分の1にとどまった。補助給食プログラムと外来の治療的栄養プログラムも2500件超が閉鎖に追い込まれた。

「端的に言えば、子どもたちは亡くなっている。状況はさらに悪化する。私が恐れるのは、来年になって死亡と罹患が大幅に増えるまで、この危機が十分に可視化されないことだ」と、ハーネイス氏は述べた。

またイエメン当局は、最近の戦闘により、学校や病院を含む主要な民間インフラが閉鎖されるか、稼働が大きく制限されていると強調した。国連人道問題調整事務所(OCHA)の人道局ディレクター、ラメシュ・ラジャシンガム氏は、ここ数か月で450以上の保健施設が閉鎖され、さらに数千の施設が資金不足に陥る恐れに直面していると指摘した。予防接種キャンペーンも妨げられ、北部では子どもたちへの支援アクセスが著しく困難になっている。このため、麻疹、ジフテリア、コレラ、ポリオなど予防可能な感染症への脆弱性が高まっているという。

ラジャシンガム氏は、暴力の激化により支援活動への制約が強まっているとも警告した。国連によれば、フーシ派の事実上の当局は2021年以降、国連職員73人を恣意的に拘束しており、人道ニーズの約70%が集中する地域での支援活動を妨げている。

「人道機関は、安全かつ効果的に、原則に基づいて活動でき、必要な資源が確保されて初めて機能する。そうしてこそ飢餓を減らし、疾病を防ぎ、命を救うことができる。しかしアクセスが阻まれ、資金が途絶えれば、こうした成果はたちまち失われてしまう」と同氏は述べた。

1月29日、世界食糧計画(WFP)は、北部イエメンで深刻化する活動制限や嫌がらせ、フーシ関係者による職員の恣意的拘束を受け、同地域での活動停止を発表した。国連当局者は記者団に対し、北部に残るWFP職員約365人が、治安悪化と資金難の影響で3月末までに職を失う見通しだと説明した。

2025年、イエメンの国連「人道ニーズ・対応計画」は、必要資金の充足率が25%にとどまり、人道関係者は重要サービスの縮小や、特定の住民層や分野の優先度引き下げ、さらには命を救う活動の停止を余儀なくされた。その結果、数百万人が支援を受けられず、さらなる危機にさらされた。

「厳しい現実として、国連はイエメン国内の(フーシ派)事実上の当局が支配する地域における人道活動を、継続的に見直し、再編せざるを得ない。そこは、国内の人道ニーズの約70%が集中する地域でもある」とラジャシンガム氏は述べた。

同氏はまた、安全保障理事会に対し、拘束されている73人の国連職員の解放に向けて国際社会の圧力を強めるとともに、拡大するニーズに見合った資金拠出を促すよう求めた。(原文へ)

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