【国連IPS=マクシミリアン・マラウィスタ】
世界の財貿易額は2026年上半期に約13兆7000億ドルに達し、前年同期比12.5%増加した。サービス貿易も10.5%伸び、両者を合わせた世界貿易額は2兆ドル増えた。これらの数字は貿易の拡大が続いていることを示すようにみえるが、増加の多くは取引量の伸びではなく価格上昇によるものである。|英語版|
国連貿易開発会議(UNCTAD)の国際貿易・一次産品部によると、ホルムズ海峡における海上輸送の混乱がエネルギー供給を圧迫し、燃料費を高騰させ、海上物流を混乱させるとともに、幅広い産業で生産コストを押し上げている。貿易財の価格は2026年第1四半期に前年同期比3.6%上昇し、第2四半期には5.1%へと加速した。財貿易そのものは拡大を続けているものの、データとモデルに基づいて世界貿易の短期的な動向を予測するUNCTADの「ナウキャスト」は、第3四半期の世界貿易額が前年同期比4.2%増になると見込んでいる。これは、貿易額の伸びの相当部分を価格上昇が占める状況が続いていることを示している。
こうしたインフレを引き起こしているのが、約160日間に及ぶホルムズ海峡の混乱である。同海峡では、世界の海上石油貿易の25%、液化天然ガス(LNG)貿易の20%、海上輸送される肥料貿易のおよそ3分の1、さらに重要な石油化学製品のサプライチェーンが、海上貿易の流れからほぼ完全に遮断されている。「ホルムズ海峡トラッカー」によると、8月7日に同海峡を通過した船舶は約7隻で、危機前の通常時と比べて11.7%にすぎなかった。1日当たりの輸送量も、危機前の1030万に対し120万にとどまっている。
国際貨物運賃情報を提供するFreightosによると、中国・東アジア発―北米東岸向け航路における40フィートコンテナ換算単位(FEU)1個当たりの運賃は、5月の約4300ドルから7月には約9100ドルへと上昇した。同様に、中国・東アジア発―北米西岸向け航路でも、5月の2828ドルから7月には7550ドルへと跳ね上がった。
FEU運賃のこうした激しい変動は、燃料費高騰の影響を映し出している。前述のいずれの航路もホルムズ海峡付近を通らず、同海峡から数千マイルも離れている。それでも、海峡の混乱による影響は世界の海運網全体へと波及する。物流はあらゆる産業を支える基盤である。複数の航路でFEU1個当たりの輸送費が2倍を超える水準に上昇すれば、追加費用を賄うため、コンテナに積まれた商品の価格も引き上げざるを得ない。
その影響がとりわけ鮮明に表れているのが東アジアである。東アジアは世界の製造業の一大拠点であり、半導体と人工知能(AI)のグローバル・サプライチェーンの中核を担っている。この地域では、AIインフラ、デジタル技術、電動モビリティーへの需要が引き続き急速に拡大している。UNCTADによると、2026年第1四半期の重要鉱物の貿易額は前年同期比38%増加した。半導体は25%、蓄電池は15%、情報通信技術(ICT)製品は14%、電気自動車は11%それぞれ増加した。
しかし、ホルムズ海峡から地理的に離れているにもかかわらず、台湾や韓国の半導体製造施設は、安定した世界の海運網、適正な価格のエネルギー、石油化学原料に大きく依存している。燃料価格の高騰によって供給業者とメーカー間の部品輸送費が上昇し、電力、天然ガス、石油化学製品の値上がりによって生産コストも増大する。このため、取引数量の伸びがはるかに鈍くても、こうしたハイテク製品の輸出額は膨らみ続ける。
ホルムズ海峡の混乱は、世界の海上輸送システムがいかに密接につながっているかを示している。この戦略的な海上交通の要衝で通航が滞れば、石油とLNGの価格が上昇し、輸送費や産業用エネルギーコストが増大する。それが製造コストを押し上げ、最終的には国際的に取引される商品の価格上昇につながる。
その結果、東アジアのメーカー、北米の輸入業者、そして世界各地の消費者が、数千マイル離れた場所で起きた混乱の影響を受けることになる。相互依存を深めるサプライチェーンの各段階でこうした費用が積み重なるにつれ、実際の貿易量や実質的な経済生産の伸びがはるかに鈍くても、世界貿易の名目額は増加する。貿易額の増大が、必ずしも経済の力強さを意味するわけではないのである。
INPS Japan/ IPS UN Bureau Report
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