宗教や文化の違いを超えて対話の架け橋を築いてきたカザフスタン。アスタナに集まった宗教リーダーや国際機関の関係者たちは今、その対話を具体的な行動と成果につなげる必要性を強調している。
【アスタナINPS Japan=浅霧勝浩】

戦争や政治的不信、価値観の対立によって世界の分断が深まるなか、カザフスタンは20年以上にわたり、独自の外交的取り組みを続けてきた。異なる宗教の代表者たちが対話を継続できる場を維持することである。今週アスタナで開かれた会合で、エルラン・カリン副大統領は、そうした対話を続けるだけでは、もはや十分ではないことを明確にした。
「スピリチュアル外交は、特別な役割を果たすことができます。政治的な交渉に取って代わるものではありませんが、それを補完し、外交対話が困難な状況でも意思疎通の経路を維持することができるのです。」とカリン副大統領は参加者に語った。
この発言があったのは、10月7日に「平和と和解の宮殿」で開催された第24回「世界伝統宗教リーダー会議」事務局会合でのことだった。
公式参加者名簿には、宗教共同体、国際機関、カザフスタン政府機関などから計38人が記載されており、会議の宗教的・地理的な多様性を示していた。
この会議は、2003年にカザフスタンの初代大統領ヌルスルタン・ナザルバエフ氏の提唱によって創設された。第1回会議には、13か国から17の代表団が集まった。
以来、3年ごとに主要な大会を開催するとともに、事務局を通じて継続的な交流を維持する国際的な枠組みへと発展してきた。
2022年の第7回会議には、ローマ教皇フランシスコとイスラム教スンニ派の最高学府アズハルのアフマド・アルタイーブ総長が参加した。2025年9月の第8回会議では、宗教界や国際機関の代表者らが集い、「アスタナ平和宣言」を採択した。

ロシアと中国に挟まれ、複数の大国との関係を重視する外交政策を進めるカザフスタンにとって、この会議は、政治的な利害が必ずしも一致しない政府、宗教、文明が出会う場を提供するという、同国の幅広い外交姿勢を体現する取り組みの一つとなっている。
しかし、参加者たちは今、こうした交流が会議場の外の現実にどのような影響を及ぼし得るのか、という問いを強く意識するようになっている。

会議が終わっても続く対話
ローマ教皇庁宗教間対話省を代表して出席したロラン・バサネーゼ神父は、バチカンが2003年の創設以来、この取り組みを支援してきたことを振り返った。
同神父は、2022年の教皇フランシスコの参加に言及するとともに、宣言を採択した後も取り組みを続けることの重要性を強調した。
宣言が信頼に値するものとなるかどうかは、最終的には、それに賛同した人々が採択後も協力を続ける意思を持っているかにかかっているという。

同様の問題意識は、イスラム長老評議会のムハンマド・アブデルサラム事務総長からも示された。実行に移されない原則は、結局、紙の上の言葉にとどまってしまう危険があると警告したのである。
「実行されない宣言は、その機能を失ってしまいます」と同事務総長は述べた。これは会議の議事録に記録されている発言である。
対話の継続と具体的な協力の重要性は、国連側からも強調された。
国連文明の同盟(UNAOC)のニハル・サード・ディレクターは、文化や宗教の違いを超えた協力を促進するため、カザフスタンが長年にわたり取り組んできたことに謝意を表明した。
サード氏は、気候変動への対応や人工知能(AI)がもたらす倫理的課題に宗教指導者が果たし得る役割を指摘した。政府や技術専門家による取り組みに加え、地域社会に働きかける宗教共同体の影響力を生かすことができるという。
AIについてサード氏は、倫理を「後から付け加えるのではなく、AIシステムの設計段階から組み込む」ことが必要だと強調した。

この発言は、急速に進む技術革新をいかに人間の価値観に基づく責任あるものにするかという国際的な議論の中に、世界伝統宗教リーダー会議の取り組みを位置づけるものだった。
理念を具体的な取り組みへ
宗教間対話により実践的な役割を持たせようとするカザフスタンの最新の取り組みは、今回の会合で採択された2つの文書に結実した。一つは、気候変動への対応における宗教の役割を示した文書。もう一つは、宗教的な場面でのAI利用に関する11の倫理原則を定めた文書である。
いずれも、2025年の世界伝統宗教リーダー会議でカシムジョマルト・トカエフ大統領が提唱した構想を具体化したものだ。
国際宗教間・宗派間対話センターのグルサナ・コジャバイ理事長は、気候変動に関する文書が、宗教関係者、外交官、専門家ら26人の協力を得て策定されたことを説明した。
この文書には、カザフスタンの文化的遺産に根ざす「アマナト(Amanat)」という考え方が取り入れられている。それは、ある世代が託されたものを守り、次の世代へ責任を持って引き継ぐという倫理観である。
一方、宗教関係者、研究者、技術専門家ら24人による宗教間委員会で内容が練り上げられたAI倫理規範は、人間の尊厳、信教・良心の自由、宗教に関する個人情報の保護、アルゴリズムによる心理的操作の危険などを扱っている。
策定作業には、日本の神道関係者や中国の道教指導者をはじめ、中央アジアをはるかに超える地域のさまざまな宗教的伝統の代表者が参加した。
今回の会合では、これとは異なる形の協力も取り上げられた。

カザフスタンのイェルジャン・アシクバエフ外務第一次官は、ローマ教皇庁との共同イニシアティブとして、治癒困難な病気を抱える子どもの権利と尊厳を守るための憲章を紹介した。
カザフスタンと教皇庁は、10月2日から3日にかけてアスタナで開かれた別の会合で、この憲章の文案について合意していた。今回の事務局会合では、その国際的な推進に向けた今後の取り組みが支持された。
「医学の力が限界に達しても、私たち人間の責任がそこで終わるわけではありません」とアシクバエフ外務第一次官は発表原稿の中で述べている。
憲章は、緩和ケア、苦痛の軽減、保護者の意思決定への参加、子どもと家族への支援を重視している。
医療や生命倫理の専門的な知見も取り入れた憲章の策定は、宗教間で築かれた関係が、人道分野での協力へと発展し得ることを示している。
スピリチュアル外交の次なる課題
もっとも、こうした取り組みによって、国際協力を阻む政治的な困難が解消されるわけではない。
採択された2つの倫理文書はいずれも勧告的な性格を持ち、法的拘束力はない。その影響力は、宗教団体、政府、技術企業などが提言を実際の行動に移すかどうかにかかっている。|英語版|
こうした取り組みの背景には、中央アジアが直面する安全保障上の課題もある。アフガニスタン情勢が周辺地域の安定に影響を及ぼすなか、カザフスタンは国連との協力を通じて、テロ対策や暴力的過激主義の防止に取り組んできた。
安全保障と宗教的多様性の尊重という課題に向き合いながら、異なる宗教の指導者たちが対話を続けられる国際的な枠組みを20年以上にわたって維持してきたことは、カザフスタン外交の重要な特徴の一つである。

会合の閉幕に際し、カリン副大統領は、宗教指導者間の協力を強化し、スピリチュアル外交により実践的な国際的役割を持たせることを目指す「平和のためのグローバル運動」構想について、作業を進めるよう呼びかけた。
構想案と段階的な実施計画は、2028年の第9回世界伝統宗教リーダー会議に先立ち、2027年に検討される予定である。
ただし、これはまだ提案段階にあり、確立された平和構築の仕組みではない。それでも、この構想はカザフスタンの取り組みが重要な転換点を迎えていることを示している。
異なる宗教の指導者たちが、立場の違いを超えて一堂に会することができると示す段階から、共に何を成し遂げられるのかを問う段階へと移ろうとしているのである。
23年にわたり、カザフスタンは対話を継続する力を示してきた。これから問われるのは、その対話がアスタナの外の世界を変える力となり得るかどうかである。
This article is brought to you by INPS Japan in collaboration with Soka Gakkai International in consultative status with UN ECOSOC.

INPS Japan
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