INPS Japan/ IPS UN Bureau Report原子力供給国グループの新ルールに動じないインド

原子力供給国グループの新ルールに動じないインド

【ニューデリーIPS=ランジット・デブラジ】

インドは、世界の原子力供給国に対して自らが提供できる巨大なマーケットに自信たっぷりである。軍事用に転用されかねないウラン濃縮と使用済み燃料再処理の技術移転に関して、46ヶ国のグループが定めた新しい規則を無視することにしたことにそれは現れている。

差別的だという理由で核不拡散条約(NPT)への署名を拒否してきたインドは、2008年、46ヶ国から成る原子力供給国グループ(NSG)からの特別措置を勝ち取るという外交的クーデターを成し遂げた。

公的に認められた5つの核兵器国以外は、すべての国家が、国連の核監視機関である国際原子力機関(IAEA)の保障措置下に核施設を置くことが義務づけられている。

 NSGは6月24日、オランダ・ノールドワイクでの総会で、「機微の濃縮・再処理技術の移転に関するガイドラインを強化する」ことを決定し、インドをフルスコープ保障措置の例外扱いにすることを認めた従前の決定の効力は弱められることになった。

インドの原子力専門家は、IPSの取材に応じて「NSGの動きは、福島第一原発事故を受けて急速にしぼむ市場の中でインドになんとか原子力器機を購入させようという商業的な関心から出たものであるかもしれない。」と語った。

「福島第一原発事故以前から、インドと中国は原子力発電を拡大しようという大きな計画を持つ唯一の国でした。しかし今では中国は再生可能エネルギーに目を向けるようになり、結果としてインドだけが唯一残った主要なバイヤーなのです。」と語るのは、プラフル・ビドワイ氏。「拡散に反対する技術者・科学者国際ネットワーク」のメンバーでもある。

ビドワイ氏は、「最近CEOのアンヌ・ロベルジョン氏が退任したばかりのフランスのアレバ社が多くの失敗を積み重ねているにも関わらず、インドは、6基の欧州加圧水型炉(EPR)を世界最大のジャイタプール原子力施設(マハラシュトラ州:今年着工し2018年稼働予定)用に購入する交渉を進めている。しかし、インドのためにアレバは業務停止に追い込まれるかもしれない。」と語った。

「核分裂性物質ワーキンググループ」の国際パートナーであり、インド国立防衛分析研究所(IDSA、ニューデリー)の上級研究員でもあるラジブ・ナヤン氏によると、NSGによる新たな拘束はアレバとの取引を危うくする可能性がある、という。

「国際的な原子力ガバナンス・管理の利益に奉仕するようにインドを導くのがNSGの使命です。また、原子力をめぐる現在の情勢からすると、インドとすでに商業的取り決めを結んでいるフランスやロシア、米国のような国が後退することはないでしょう。」とナヤン氏は語った。

インドは、2020年までに原子力による発電量を現在の4.7ギガワットから20ギガワットまで増やす野心的な計画を描いている。アレバ以外には、ロシアのロスアトム(Rosatom)、米国のGE(General Electric)が、1000億ドル以上にも上るインドとの契約獲得をめぐって競争している。
 
インドのニルパマ・ラオ外相は7月3日、テレビのインタビューに答えて、「インドとの取引に入ることに消極的な国に使えるような『テコ』を我々は持っている。」と語った。これは明らかに、NSGに対する警告だった。

ラオ外務次官は、「NSGが新政策を発表して以来、米国もロシアもフランスもインドとの協力を続ける意図を明確にしています。」と語った。

フランスのジェローム・ボナフォン駐インド大使は、7月1日の報道発表で、「このNSGの決定によってわれわれの二国間協力が制限されることはなく、フランスは2008年9月30日に署名された原子力の平和利用開発に関する協力協定の完全なる利用に向けて努力していく。」と語った。

さらに発表では、「フルスコープ保障措置条項からインドを免除するという2008年9月の決定があったのだから、これ[今回のNSG決定]はこの免除の原則からはずれるものではない」としている。

インドは、30年間の国際的孤立を経て、世界との原子力取引を再開した。自国の核兵器開発を続けることを容認した米国との2008年の民生核取引がまとまったことがきっかけである。

ナヤン氏は、「米印原子力協力協定とNSGによる例外扱いは、米印両国内での平和運動や反核運動からの強いプレッシャーにも関わらず推し進められました。」と語った。

NSG内では、オーストリアやアイルランド、オランダ、ニュージーランド、ノルウェー、スイスが、インドとの濃縮・再処理技術貿易は認められないとの論陣を張ったが、不成功に終わった。

ナヤン氏は、「しかし、NSGは濃縮・再処理技術をインドに移転することを明示的に保証したわけではありません。」と語った。

さらに、インド議会は2010年8月、いくつかの二国間協定がすでに結ばれていたにもかかわらず、原子力事故に関する厳格な責任を規定した法律を制定した。国際的な原子力供給主体にとってはマイナスの影響がある。

インドが、NPTに署名しないまま核保有を宣言した国として、NPT加盟国から核技術・核器機の移転を受けることは、いかなる場合においても困難であろう。

インドは、譲り受けた施設や技術を戦略的目的のために利用しないとの保証を一度も与えたことはない。実際、米印原子力協力協定では、軍事用だと申告された施設に対して国際的な監視や保障措置を適用する必要はない、とされている。

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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