ニュース|視点|核兵器は常に違法だった:とっくに廃絶されてしかるべきものだ(ジャクリーン・カバッソ西部諸州法律財団事務局長)

|視点|核兵器は常に違法だった:とっくに廃絶されてしかるべきものだ(ジャクリーン・カバッソ西部諸州法律財団事務局長)

「歴史は勝者によって記され、この(=広島への原爆投下)ような悲惨で残酷な大量虐殺の行為でさえも歴史の中で正当化されます。…市民を大量無差別に殺傷し、しかも、今日に至るまで放射線障害による苦痛を人間に与え続ける核兵器の使用が国際法に違反することは明らかであります。」1995年国際司法裁判所における平岡敬広島市長の陳述より。

【オークランドIDN=ジャクリーン・カバッソ】

 2021年7月8日は、国際司法裁判所が刻兵器の法的位置づけに関して勧告的意見を出してから25周年にあたる。

国際司法裁判所では「徹底的かつ効果的な国際管理の下、全面的な核軍縮へと導く交渉を締結させることを誠実に追及する義務が存在する」という点で全ての裁判官が一致同意した。

同裁判所はまた、核兵器の使用と威嚇は、民間人や自然環境に無差別かつ不相応な被害をもたらすことを禁じた国際法に「一般的に」違反するという判断を下した。しかし、核兵器が国際法の下で審議されたのはこの時が初めてではない。

Photo: Wide view of the General Assembly Hall. UN Photo/Manuel Elias
Photo: Wide view of the General Assembly Hall. UN Photo/Manuel Elias

国連総会は1946年1月24日に全会一致で採択した第一号決議で、国連原子力委員会の設置と、核兵器および大量破壊が可能なすべての兵器の廃絶を目指す事を定めた。

1961年に米国・英国・フランス・中国が反対したものの、ソ連を含む国連総会加盟国の3分の2が採択した「核兵器使用禁止宣言」は、核兵器の使用は「戦争の枠さえ超えて人類と文明に無差別な苦しみと破壊をもたらすものであり、国際法とりわけ人道法に違反すると宣言している。」

1970年に発効した核不拡散条約(NPT)には、「各締約国は、核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき…誠実に交渉を行うことを約束する。」と明記した条項があり、5つの核兵器国(米国、英国、ロシア、フランス、中国)に軍縮義務を課している。

NPTの軍縮義務は、同条約の無期限延長が決められた1995年の再検討・延長会議、1996年の国際司法裁判所の勧告的意見、そして2000年及び2010年のNPT再検討会議における合意を通じて、繰り返し確認・強化されてきた。

1984年、国連人権委員会は、「核兵器の設計、実験、製造、保有及び配備が、生命に対する権利にとって、今日人類の直面する最大の脅威であることは明白である。」と決議した。生命に対する権利は、中国(署名したが批准していない)を除いて核兵器国9カ国が加盟している市民的及び政治的権利に関する国際規約(ICCPR)に明記されている。

2018年、国連の人権委員会はこの問題を再び取り上げ、「大量破壊兵器、特に核兵器による威嚇または使用は、その効果が無差別的であり、壊滅的な規模で人間の生命を破壊する性質のものであり、生命の権利の尊重とは相容れず、国際法の下で犯罪に該当する。」と宣言した。

同委員会は国際司法裁判所の勧告的意見を引用して、ICCPRの全ての加盟国は「徹底的かつ効果的な国際管理の下、全面的な核軍縮へと導く交渉を締結させることを誠実に追及する義務が存在することを尊重しなければならない。」との判断を下した。

最近幅広く称賛されたもう一つの進展は2017年に国連総会で採択された核兵器禁止(核禁)条約である。この条約は2021年1月22日に発効した。核禁条約は締約国に対して核兵器の開発、取得、保有、使用及び使用の威嚇を禁じている。この条約は、核兵器の使用や使用の威嚇を違法とする従来の規範を全ての国にあてはめ強化するとともに、NPTや各地域における非核兵器地帯条約で明記されている核兵器の開発と所有も禁止するもう一つの法的規範を付け加えた。

The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras
The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras

核禁条約は、核兵器を保有しない世界の大半の国々が核兵器を完全否定する姿勢を示して発効したのに対して、米国と核兵器を保有する8カ国、さらに米国の核の傘のもとにあるほとんどの国が、条約交渉そのものを拒否した。2017年7月7日に条約が採択された直後、米国、フランス、英国は、「我々は(核禁条約に対する)署名も批准も、あるいは締約国になるつもりもない。」と宣言した。

国際司法裁判所が、誠実な交渉を通じて核軍縮を追及する義務が存在するという判断を下してから25年、今世界はどこに位置しているのだろうか。2021年1月27日、原子力科学者会報は、地球滅亡までの時間を示す「世界終末時計」の針が残り100秒だと発表し、「世界が核戦争に遭遇する可能性は、2020年の間に増加した」と述べた。

米国とロシア、そして米国と中国の間の緊張関係は危険水域にまで増しており、ウクライナや台湾という紛争の火種が、核兵器を使用する衝突に発展する可能性がある。

米国の新政権に対する期待をよそに、バイデン政権は2022年度予算要求で、トランプ政権下で含まれていた全ての核弾頭及び運搬手段のアップグレードをはじめ、今世紀後半まで続く核兵器の研究、開発、製造、配備計画を網羅する核兵器のインフラ開発への莫大な投資を求めた。

全ての核兵器国が、質の面で核戦力の近代化を推進しており、中には量的にも核戦力の増強を図っているケースもある。核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)が発表した最近の報告書によると、2020年の間、新型コロナウィルス感染症のパンデミックの最中で、9つの核兵器保有国は合計で726億ドルを核兵器に支出していた。最大の支出国である米国の支出額は実に374億ドルに上り、この額は1分当たり7万881ドルを核兵器に支出している計算となる。

6月21日の共同声明で「核戦争には勝者はなく、絶対に始めてはいけない」という原則を再確認したバイデン大統領とプーチン大統領は、米国・ロシア・中国が中心となって集中的な外交努力を行う新時代の始まりを告げるべきだ。米ロ間が核兵器を大幅に削減できれば、他の核保有国との包括的な軍縮交渉に繋がる可能性がある。

世界終末時計の針は時を刻んでいる。核保有国と核依存国は、核禁条約に対する反対姿勢を転換すべきだ。それどころか、核禁条約が発効する数十年も前から国際法が示してきた規範や国際司法裁判所の勧告的意見に準拠する形で、長年の懸案であった「核兵器なき世界」を実現し永続的に維持する包括的な合意に向けた、前向きなステップとして歓迎すべきである。(原文へ

INPS Japan

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