【東京/アスタナINPS Japan=浅霧勝浩】
核紛争の脅威がますます影を落とす中、カザフスタンは世界的な軍縮運動への取り組みを強化している。2024年8月27-28日、国連軍縮局(UNODA)と共同で、カザフスタンはアスタナで重要なワークショップを開催する。5年ぶりの開催となるこの会合は、既存の5つの非核兵器地帯(NWFZ)を活性化し、非核兵器地帯間の協力と協議を強化することを目的としている。
このイニシアチブは、アントニオ・グテーレス国連事務総長の「軍縮のためのアジェンダ」、特にアクション5に沿ったもので、各非核兵器地帯間の協力強化を通じて非核兵器地帯全体を強化し、核保有国に対して関連条約の尊重を促し、中東などでの新たな非核兵器地帯の設立を支援することを強調している。この取り組みは、核の脅威を削減し、地域と世界の平和を促進するという国際社会の継続的な取り組みを反映したものである。
カザフスタンの軍縮への歴史的コミットメント
核兵器のない世界に向けたカザフスタンのビジョンは、世界的な軍縮努力における同国のリーダーシップに深く根ざしている。このビジョンは単なる願望ではなく、核兵器がもたらす壊滅的な影響に関する同国の実体験に基づくものである。カザフスタン北東部にあるセミパラチンスク核実験場は、しばしば「ポリゴン」と呼ばれ、1949年から89年にかけてソ連が456回の核実験を行った場所である。これらの核実験によって150万人以上が被曝し、ガンや先天性異常などの深刻な健康被害や環境悪化がもたらされた。
被害の全容が明らかになったのは、ソ連崩壊後にカザフスタンが独立してからである。1991年、カザフスタンは当時世界第4位だった核兵器を放棄し、セミパラチンスク核施設を閉鎖するという歴史的な決定を下した。この行動により、カザフスタンは世界的な軍縮・不拡散の強力な擁護者となり、その辛い歴史を核兵器のない世界へのコミットメントへと変えた。
カザフスタンの軍縮への献身は、8月29日を国連が認定する「核実験に反対する国際デー」とするイニシアチブをとったことでさらに強調されている。この日は、1949年にセミパラチンスクで行われたソ連初の核実験と、91年の核実験場閉鎖を記念するもので、核実験の恐ろしさを想起させるとともに、国際社会に行動を呼びかける日となっている。
世界の安全保障における非核兵器地帯の役割
非核兵器地帯(NWFZ)は、世界の核不拡散・核軍縮体制の重要な構成要素である。条約によって設立されたNWFZは5つある:トラテロルコ条約(ラテンアメリカ・カリブ海地域)、ラロトンガ条約(南太平洋地域)、バンコク条約(東南アジア地域)、ペリンダバ条約(アフリカ地域)、セメイ条約(中央アジア地域)。さらに、自国の宣言に基づいて国連総会決議で承認された一国非核兵器地帯というモンゴルのユニークな地位は、核不拡散に対する国家のコミットメントを例証している。
非核兵器地帯は、国際的な検証・管理システムによって強化され、領土内での核兵器の存在を禁止している。NWFZは、地域の安定を維持し、核紛争のリスクを軽減し、世界的な軍縮を推進する上で極めて重要な役割を果たしている。
アスタナワークショップ :軍縮のための重要な集まり
アスタナで開催されるワークショップは、5つのNWFZ条約の締約国が、国際機関の代表者とともに、これらの地帯が直面する課題の克服を目指す議論に参加するための重要な機会である。核戦力が国家安全保障の中心であり続ける地域において、地政学的緊張が高まっていることを考えると、今回の会合は特に時宜を得たものといえる。
ワークショップでは、国連事務総長の軍縮アジェンダにあるように、非核兵器地帯間の協力強化に重点が置かれる。これには、地帯間の協議を促進し、核保有国がこれらの条約の議定書を遵守するよう促すことが含まれる。このワークショップは、2019年にヌルスルタン(現在のアスタナ)でUNODAとカザフスタンが共催した「非核兵器地帯とモンゴル間の協力」と題するセミナーを基礎とするもので、非核兵器地帯間の協力を活性化することを目的とした重要な勧告が出された。
参加者は、加盟国の安全保障上の利益を強化し、より強固な協議メカニズムを育成することに重点を置きながら、NWFZの目的を推進するための戦略について議論する。ワークショップではまた、特定の核保有国、特に米国が、いくつかのNWFZ条約に関連する議定書の批准に消極的であることがもたらす課題についても議論する。米国は核拡散防止条約(NPT)の締約国であるにもかかわらず、南太平洋(ラロトンガ条約)、アフリカ(ペリンダバ条約)、中央アジア(セメイ条約)を対象とする条約の議定書をまだ批准していない。このような消極的な姿勢が、これらの地域が提供しうる安全保障上の利益を完全に実現することを妨げている。
核兵器禁止条約(TPNW)におけるカザフスタンのリーダーシップ
核軍縮におけるカザフスタンの役割は、NWFZにとどまらず、核兵器禁止条約(TPNW)におけるリーダーシップにも及んでいる。2025年3月、カザフスタンは国連で第3回TPNW締約国会議を主催し、核軍縮の擁護者としての地位をさらに強固なものにするだろう。
カザフスタンはTPNWを協力に支持しており、同条約の第6条と第7条に沿って、核実験の被害者を支援し、影響を受けた環境を修復するための国際信託基金の設立を積極的に推進してきた。
TPNW第1回締約国会議で策定された「ウィーン行動計画」は、国際信託基金の実現可能性を検討し、影響を受ける締約国に対し、核兵器の使用や核実験の影響を評価し、実施のための国家計画を策定するよう促すなど、これらの条文を実施するための行動を概説している。
カザフスタンとキリバスが共同議長を務めたTPNW第2回締約国会議(2MSP)では、進展が見られたが、課題も残っている。被害者支援、環境修復、国際協力に関する非公式作業部会は報告書を提出し、第3回締約国会議(3MSP)で国際信託基金の設立に関する勧告を提出することを目標に、そのマンデートが更新された。この分野におけるカザフスタンのリーダーシップは、セミパラチンスクでの核実験がもたらした壊滅的な影響に関する自国の経験から、核兵器の人道的影響に取り組むという同国のコミットメントを強調するものである。
市民社会の重要な役割
この2日間のイベントの一環として、創価学会インタナショナル(SGI)と国際安全保障政策センター(CISP)は、9月28日の夜にサイドイベントを開催し、ドキュメンタリー映画「私は生きぬく:語られざるセミパラチンスク」を上映する。このドキュメンタリーは、SGIの支援を受けてCISPが制作したもので、昨年のTPNW第2回締約国会議の際に国連で初めて上映された。このサイドイベントは、SGIとカザフスタンが共同で取り組んできた広範なイニシアチブの一環であり、近年、国連、ウィーン、アスタナで核兵器の人道的影響に焦点を当てたいくつかのイベントを共催してきた。
また、アスタナでのワークショップと同時に、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、いくつかの国の被爆者を含む市民社会団体や活動家を招集して会議を開催する予定だ。アスタナで政府と市民社会の取り組みが融合するこの瞬間は、世界的な軍縮運動において重要な意味を持つだろう。外交官や国家代表が公式ワークショップで政策や協力について議論する一方で、市民社会が並行して開催する活動は、人道的メッセージを増幅し、核兵器のない世界の緊急の必要性を強調するものとなるだろう。
世界的な緊張が高まる中、アスタナでのワークショップは希望の光であり、軍縮に向けた世界的な旅路における重要な瞬間である。協力、対話、そして平和への共通のコミットメントを通じて、核兵器のない世界という夢は、依然として手の届くところにある。カザフスタンは、国際社会の支援を得て、この重要な取り組みの最前線にいる。(原文へ)
INPS Japan
This article is brought to you by INPS Japan in partnership with Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.
The Astana Times, Inter Press Service, London Post,
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