この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています
トランプ氏と習近平氏による首脳外交は、台湾海峡に平和をもたらせるのか。
【Global Outlook=ヒュー・マイアル】
2026年9月23日から25日にかけて、中国の習近平国家主席をワシントンに迎えたトランプ米大統領は、習主席との関係について「これほど良好だったことはない」と語った。米大統領が中国にふさわしい敬意を払い、さらには自分を立てる姿勢まで示したことを、習主席は喜ばしく受け止めたに違いない。|英語版|
両国は、「尊重、公平、平等に基づく、建設的、戦略的かつ安定した米中関係」を築くことで合意した。表面上、今回の首脳会談は世界の二大国の関係にとって前向きな節目となり、11月のアジア太平洋経済協力会議(APEC)首脳会議と12月のG20首脳会議に向けても、好ましい先例となり得るものだった。
しかし、ワシントンでの会談から生まれた具体的な合意は限られていた。貿易戦争の休戦措置が延長され、人工知能(AI)をめぐる対話を行うことで合意した。ジャイアントパンダ2頭がアトランタ動物園に貸与されることにもなった。
おそらく最も重要だったのは、両国軍が「危機に関する意思疎通と危機予防を改善するための覚書を、できるだけ早期に締結する」ことで合意した点だろう。実現すれば、危機の拡大を防ぐ重要な安全装置となる。習主席は、米中関係が「歴史的な節目」を迎えたことを歓迎した。おそらく、両国の相対的な力関係の変化を指していたのだろう。そして、両国は「トゥキディデスの罠」を回避しなければならないと、トランプ大統領に改めて指摘した。
だが、その罠に陥る危険が最も高い台湾問題では、具体的な進展はなかった。中国側が最初に公表した会談概要によると、習主席は台湾問題を取り上げ、米国が「『台湾独立』に反対する正しい立場を堅持し、台湾問題を慎重に扱う」ことに期待を示した。一方、米国側の会談概要には、台湾への言及が一切なかった。
トランプ大統領の台湾に関する発言は、前任者のものとは大きく異なる。バイデン前大統領は、中国が侵攻した場合には台湾を防衛すると4度にわたって述べ、米国の公式の立場を踏み越えた。これに対して、トランプ大統領はこう語っている。
「私は誰かが独立することを望んでいるわけではない。それに、われわれは戦争をするために9500マイルも移動しなければならないという。そんなことは望んでいない」
トランプ氏はまた、400億ドル規模の台湾向け武器売却案件を、有用な交渉材料とみて保留している。
米国の公式政策は、依然として「戦略的曖昧さ」である。米国は台湾の独立を支持せず、台湾の防衛に駆けつけることも保証していない。ただし、台湾関係法は、武器売却を通じて台湾の自衛を支援することを米国に求め、台湾の将来を武力で変えようとするいかなる試みも、米国にとって重大な懸念事項になると定めている。
トランプ政権の公式声明は従来の立場から逸脱していないが、大統領自身は、台湾をめぐる問題に巻き込まれることへの消極的な姿勢を明らかにしている。同政権の2025年国家安全保障戦略は、第一列島線の防衛に言及し、「台湾を奪取しようとする試み、あるいは台湾防衛を不可能にするほど米国側に不利な戦力バランスを生み出そうとする試みを、いずれも阻止できるよう、米国と同盟国の能力を強化する」としている。
では、今回の首脳会談を踏まえ、安心供与と抑止にはどのような展望が開けるのだろうか。昨年、戸田記念国際平和研究所は、中国社会科学院と共同で、台湾問題に関する複数の国際ワークショップを開催した。参加者たちは、台湾有事を回避するため、米国、中国、台湾当局が、抑止を補完する安心供与措置を講じる可能性を検討した。
台湾当局は、トランプ大統領の発言や「米国第一主義」政策によって、抑止力が弱まったのではないかと懸念している。西半球における米国の優位性の主張、同盟国に対する扱い、イランへの攻撃と封鎖、そしてウクライナ支援への消極的な姿勢は、いずれも台湾の人々に安心感を与える先例とはいえない。
紛争が起きた場合、トランプ政権下の米国が台湾の支援に駆けつけるという信頼は、大幅に低下している。トランプ大統領の一貫性を欠く姿勢は、抑止力を損なうだけではない。一貫した安心供与政策を進める可能性も損なっているように見える。
トランプ大統領は、中華民国(台湾)の頼清徳総統の訪米を阻止し、武器供給も保留してきた。しかし、こうした措置には、関係当事者に対し、台湾海峡の緊張を平和的に解決する道を探るよう促す、持続的な外交努力が伴っていない。
一方、米中関係という枠組みの外では、この方向を目指す地域内の取り組みもある。中国当局は、台湾の政治学者リー・ツーザー(Li Ci-ze)氏の論文を歓迎した。同氏は、「一国二制度」の枠組みを中華人民共和国の憲法に明記し、台湾の立法上の自治、司法の独立、市民的自由を保障することを提案している。
国民党(KMT)の鄭麗文主席も、両岸の意思疎通を改善し、関係を制度化することで、北京に対して平和的な将来への信頼できる道筋を示すべきだと主張している。その構想は、「一つの国」という現状を国際社会が認め、中国が台湾の特別な地位を承認することを基盤に、ワシントンと北京の双方との良好な関係を支えるというものだ。
他方、中国政府は、福建省と広東省の地方当局に対し、両岸の発展に向けた取り組みを試行するよう促す一方、より強圧的な介入やグレーゾーン戦術の準備も続けている。
かつては、2027年が台湾有事の起こり得る年と考えられていた。習主席が人民解放軍に対し、その年までに準備を整えるよう求めていたためだ。しかし現在、一部の識者は2028年の方が、その可能性が高いとみている。具体的には、2028年1月の台湾の選挙から、2029年1月の次期米政権発足までの期間である。
頼清徳総統が再選され、民主進歩党(民進党)が立法院で過半数を獲得すれば、習主席は、平和的な統一の選択肢は尽き、武力行使に踏み切るうえで、これ以上好都合な機会はないと判断するかもしれない。それでも、中国と世界経済に及び得る影響を考えれば、慎重であるべき理由はなお十分にある。
一方、2028年1月の選挙で国民党が勝利すれば、中国と台湾の緊張は和らぐ可能性が高く、両岸の貿易と交流は拡大し、中国による侵攻の危険性はごく小さいだろう。
AIを支える先端半導体の98%を製造・輸出する台湾の重要性は、紛争が双方に損失をもたらす可能性と、平和的な解決が双方に利益をもたらす可能性を、いっそう際立たせている。
現状維持は、台湾の人々が望み、多くの識者が支持する選択肢である。しかし、中国政府にとって現状は依然として受け入れ難い。そのため、米中関係が再び悪化し、台湾当局が中国を刺激するような行動を取れば、台湾海峡をめぐる対立が、より広範な紛争の引き金となる危険は残る。
現在の機会を生かし、この危険を回避するための平和的な手段を探ることは、すべての関係当事者の利益にかなう。戸田記念国際平和研究所のこれまでの論考が示してきたように、継続的な安心供与措置を追求することは、その取り組みを前進させるための不可欠な手段であり続ける。
Original URL: Taiwan After the Summit | Toda Peace Institute
INPS Japan
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