ニュース国連、包括的核実験禁止条約発効へ圧力

国連、包括的核実験禁止条約発効へ圧力

【ニューヨークIDN=J・ナストラニス】

サイバー技術や核技術の近代化競争が勢いを増す中、国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、包括的核実験禁止条約(CTBT)を「核実験を完全に終わらせる世界の取り組みの中心」と呼んだ。事務総長の代理で中満泉・国連軍縮問題上級代表が読み上げた声明では、核実験が人間に引き起こす苦しみと環境への災害から将来世代を守る力がCTBTにはあると述べている。

グテーレス事務総長によれば、CTBTは核不拡散に対する貴重な貢献ともなっている。「核軍拡競争に歯止めをかけ、新兵器の開発に対する強力なバリアとなるものだ。」

声明は、9月8日の「核実験に反対する国際デー(IDANT)」を記念し促進するハイレベル総会において出された。国連総会はまた、国際的な核軍備管理枠組みにおけるCTBTの重要な役割を強調した。

UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri

CTBTは、誰がいつどこで行う核爆発についても完全に禁止している。1996年9月24日に署名開放されたCTBTへの支持はほぼ普遍的な支持を得ているが、まだ条約は発効していない。こうした中、グテーレス事務総長は「条約を批准していない国は、速やかに批准するよう」求めた。

185カ国が条約に署名し、そのうち核保有国のフランス・ロシア・英国を含む170カ国が批准している。しかし、核技術を持った特定44カ国の署名・批准がCTBT発効の要件となっており、そのうち中国・エジプト・インド・イラン・イスラエル・北朝鮮・パキスタン・米国がまだ批准していない。インド・北朝鮮・パキスタンは署名すらしていない。「附属書2」記載の国で最後に条約を批准したのはインドネシアである(2012年2月6日)。

CTBTは国際監視システム(IMS)という独自の検証制度を備えている。これは、地震波・水中音響・微気圧・放射性核種という4つの技術を用いて、核爆発が探知されることなく実施されることがないようにするものであり、現在、302の認証施設が世界中で稼働している(システムが完成すると337施設になる)。

包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)の事務局長として初めて国連総会で演説したロバート・フロイド博士は、CTBTは、署名開放以来25年間、核実験に反対するほぼ普遍的な規範を打ち立てることに成功してきたと述べた。

Robert Floyd, CTBTO Executive Secretary/ CTBTO

フロイド氏は、ドイツのウォルフガング・ホフマン氏(在任1997~2005)、ハンガリーのティボール・トート氏(在任2005~2013)、ラッシーナ・ゼルボ氏(在任2013~2021)につづく、CTBTO4代目の事務局長である。今年5月にCTBT加盟国によって選出され、8月1日に任期が始まった。

フロイド氏はかつて、大量破壊兵器を規制する様々な条約を履行する豪州の国家機関である保障措置・不拡散局の局長を務めていた。核爆発を探知するCTBTの国際監視システムの23施設を監督する任務も含まれていた。

「核実験に反対する国際デー」は、核爆発の影響を想起し、CTBTへの支持を表明するために2009年に国連総会によって創設された。カザフスタンが旧ソ連のセミパラチンスク核実験場を1991年に閉鎖した日であり、ソ連が1949年に初めて核実験を行った日でもある。

フロイド氏は、ハイレベル会合に対する9月8日の声明で「この重要な日を記念するにあたって、核実験により悲劇的な影響を被った人々の声に耳を傾け続けることが重要だ。」と語った。

フロイド氏はまた、カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ初代大統領が30年前、「大胆かつ先見性のある行動で」、ポリゴンの名称で知られるセミパラチンスク核実験場の閉鎖を決める大統領令に署名したと語った。

Nursultan Nazarbayev, president of Kazakhstan in Brasilia 2007.

その2週間前、フロイド氏は旧セミパラチンスク核実験場の爆心地に立ったばかりであった。フロイド氏は、「ポリゴンで450回以上の核実験が行われ、爆発力の総量は広島原爆2500発分にもなった。人間の健康と環境に及ぼした影響の規模が完全に理解されることはないかもしれない。」と指摘したうえで、「セミパラチンスクや私の国(=オーストラリア)を含む世界各地の核実験場周辺で被爆したコミュニティーにとって、その痛みと苦しみは、野放図な核実験の時代の悲しい遺産となっている。」「しかし、核戦争によって引き起こされるであろう、もっと大きい苦しみと損失を見失ってはならない。それは人類という集団のあらゆる層を引き裂くことになる。」と語った。

そのうえでフロイド氏は、次のようなことを求めた。

・核実験の破壊的な帰結を世界が再び被ることがないようにすること。

・核のリスクを低減し、核戦争を予防すること。

・核不拡散・軍縮を前進させる具体的な行動を起こすことによって、将来世代のためにより安全な世界を構築すること。

カザフスタンのムフタル・トレウベルディ副首相兼外相とフロイドCTBTO事務局長の共同声明は、すべての国々に対して、核爆発のモラトリアム(凍結)を続けるよう求めた。

CTBTO

声明はまた、「条約をまだ署名あるいは批准をしていない国々に対して、すみやかに署名・批准するよう求める。その批准が条約発効要件となっている附属書2の残り8カ国に対して、国際の平和と安全を支持するこの重要な措置を取ることによって、核不拡散・軍縮へのコミットメントを示すよう求める。」「私たちは、核軍縮を前進させ、将来世代のためのより安全な世界を構築するために、今こそ包括的核実験禁止条約を発効させるべき時だと訴える。」と述べている。(原文へ

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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