ニュース視点・論点核兵器のない世界への道筋(池田大作創価学会インタナショナル会長)

核兵器のない世界への道筋(池田大作創価学会インタナショナル会長)

【IPSコラム=池田大作】

「核兵器の人道的影響」をテーマにした国際会議が、昨年のオスロでの会議に続いて、2月にメキシコで行われた。

科学的検証に基づき、そこで出されたのが次の結論である。

「核兵器爆発の場合に、適切に対処し、または必要とされる短期的、長期的人道支援と保護を提供できる能力を持つ国や国際機関は存在しない」広島と長崎への原爆投下から来年で70年を迎えるが、今もって、核兵器の使用がもたらす壊滅的な結果から、人々の生命と尊厳を守る手段など、世界のどこにもありはしないのだ。

2012年5月以来、「核兵器の人道的影響に関する共同声明」の発表が4回にわたって重ねられる中、共同声明に賛同する国々の輪が広がりをみせている。

だがメキシコの会議には、国連安保理の常任理事国である核保有5カ国は参加しなかった。今、最も必要なのは、共同声明に賛同する国々と保有国とをつなぐ、“共通言語”を見出すことだと言えよう。

共同声明の背景には、「核兵器がもたらす惨劇を誰にも味わわせてはならない」と訴え続けてきた広島と長崎の被爆者をはじめ、核兵器廃絶を求める人々の力強い支持があった。

146カ国の代表が出席したメキシコ会議でも、議長総括において、人間の尊厳に反する核兵器を禁じる法的枠組みが必要であるとし、「この目標に資する外交プロセスを立ち上げる時が到来した」との認識が示された。国連加盟国の4分の3にあたる国々が、核兵器のない世界を求める意思を共有した意義は大きい。

一方で保有国の間でも、他の兵器とは異なる核兵器の性質を、多くの指導者が核のボタンの責任を背負う中で感じ取ってきたことが、〝核不使用の楔〟になってきたのではないかと思われる。

その意味で、双方をつなぎうるものは、「誰も核兵器がもたらす壊滅的な人道的結果を望んでいない」との思いではないだろうか。

私はかねてより、原爆投下から70年となる来年に「核廃絶サミット」を広島と長崎で開催することを提唱してきた。

その参加者として、共同声明に賛同する国々や、NGOの代表をはじめ、保有国を含む各国の青年たちを主軸に据えることで、「世界青年核廃絶サミット」と銘打って開催してはどうだろうか。

そこで、核時代に終止符を打つ誓いの宣言を青年が中心となって取りまとめ、核兵器に安全保障を依存する状況からの脱却を図る出発点とすることを呼び掛けたい。

さらに関連して、私は二つの提案を行いたい。

第一の提案は、来年の核不拡散条約(NPT)運用検討会議で「核兵器の壊滅的な人道的結果」を中心議題の一つに取り上げ、核軍縮の誠実な追求を定めたNPT第6条の履行を確保する措置として、「核兵器の不使用協定」の制定に向けた協議を立ち上げることである。

そして、この協議を突破口に、北東アジアや中東など非核兵器地帯が実現していない地域で、その前段階としての「核不使用地帯」の設置を目指すべきではないだろうか。“核の傘”の下にありながら共同声明に賛同した日本は、被爆国としての原点に立ち返って、「不使用協定」の成立とともに、「核不使用地帯」の設置に向け、積極的に貢献することを強く望みたい。

第二の提案は、このNPTに基づく枠組みと並行させる形で、共同声明の取り組みなどを軸としながら、国際世論を幅広く喚起し、核兵器の全面禁止に向けての条約交渉を開始することである。

例えば、条約には「核兵器による壊滅的な人道的結果に鑑み、安全保障の手段として核兵器に依存することを将来にわたって放棄する」との趣旨の条文だけを設けて、具体的な禁止事項や廃棄と検証に関する内容は議定書で定めるという方式も考えられよう。

かりに議定書の発効に時間がかかったとしても、条約の締結をもって、“核兵器は世界にあるべき存在ではない”との国際社会の意思を決定づけることが何よりも重要だと思われる。

4月11日から12日に、軍縮・不拡散イニシアティブ(NPDI)の12ヵ国外相会議が広島市で行われる。また4月28日からは、ニューヨークの国連本部でNPT再検討会議の第3回準備委員会も始まる。

この機を逃さず、市民社会の力強い後押しで世論を喚起し、核兵器の禁止と廃絶に向けた挑戦を加速させることが急務である。

「核兵器のない世界」の建設は、核兵器の脅威を取り除くことだけが目標ではない。平和と共生に基づく時代への道を、民衆自身の手で切り開く挑戦に他ならない。そしてそれは、将来の世代を含めて、すべての人々が尊厳を輝かせて生きていくことのできる「持続可能な地球社会」の必須の前提となるものだ。(原文へ

※池田大作氏は日本の仏教哲学者・平和活動家で、創価学会インタナショナル(SGI)会長。池田会長による寄稿記事一覧はこちらへ。

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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