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|バングラデシュ|コミュニティーラジオが切り開くジェンダー平等

人口1億5700万人のバングラデシュは、その49%が女性である。あるメディアの調べによると、女性たちは、その声が「聞かれる」よりも新聞のイラスト入りの記事で「見られる」ことの方が多いという。女性の多くはテレビを持たず、新聞を読むこともできないが、コミュニティーラジオがこの状況を変えようとしている。バングラデシュ北西部チャパイ・ナワバンジ県出身の学生のモメナ・フェルドゥシさん(24)は、有望なラジオ専門家の一人である。声なき人々、貧しい人々、読み書きができない女性たちに声を与え、彼女たちの関心を世界と共有するための第一歩にしたいと決意を固めている。

【ダッカIPS=ナイムル・ハク

どれだけ新聞の見出しを飾ったかという基準から言えば、バングラデシュの女性は国の中で主要な役割を果たしていないと考えたくもなる。

非政府組織「バングラデシュ・ナリ・プロガティ・サンガ」(BNPS)によるメディア調査によると、2か月間の3361本の報道のうち、「女性をテーマとしているか、女性にインタビューしたもの」は新聞記事の16%の新聞記事、テレビニュースの14%、ラジオニュースの20%に過ぎなかったという。

すべての項目のうち、女性を中心的に取り扱ったのは8%弱であった。テレビに登場する数少ない女性のうち、97%がニュースの読み手であり、わずか3%だけが「記者」であった。

署名入りニュースのうち、女性の署名入りのものはわずか0.03%だけだった。

調査では、写真の場合は男性よりも女性が多く登場するのに、女性ははるかに少ない回数しか言及されない、としている。人口1億5700万人のバングラデシュには、女性は「聞かれるよりも見られるもの」ということわざがあるが、それが証明されているようなものだ。

こうした調査結果を見ると気落ちしてしまうが、座視して状況が変わるのを待ってはいられないと決意した女性たちが、自らの手で事態を切り開こうとしている。彼女たちは、ラジオを利用して、女性の声を伝え地域の問題に焦点をあてる道具にしようとしている。

女性はバングラデシュの人口の49%を占めている。同国の人口の大部分と同じく、女性たちも農村部に固まっている。農村部には、人口の72%にあたる1億1120万人が住んでいる。

政策決定にあずかる都市中心部から離れていることは、女性をますます「見えにくい」存在にしている。BNPSの調査から得られたデータによると、農村部あるいは遠隔地に焦点をあてたニュースは、新聞記事の12%、テレビニュースの7%、ラジオニュースの5%だけだという。しかし都市部は、バングラデシュの面積のわずか8%、人口の28%を占めるにすぎないのである。

女性と女性問題がメディアに不在であることは、国連開発計画(UNDP)のジェンダー不平等指標(GII)で187か国中142位であり、アジア太平洋地域でももっとも状況が悪い国のひとつであるバングラデシュの危険な傾向である。

しかし、このこと自体もメディアでは触れられない。BNPSの調査では、調査されたニュース3000本のうちジェンダー平等に触れたのは1%以下であり、一般的なジェンダーのステレオタイプを問題視したの記事はわずか11本だけであったことが判明している。

国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)によれば、世界の平均識字率84.3%に比較するとバングラデシュのそれは59%ときわめて低い。こうした国では、ラジオの重要性は過小評価できない。

貧困線以下で暮らしている人びとが24%にも上るバングラデシュにおいても、ラジオは外の世界とつながれる比較的手軽な手段として、人口の大部分を占める農村部の人々の間で人気を博している。

農村女性の声を広める

バングラデシュ北西部チャパイ・ナワバンジ県出身の学生モメナ・フェルドゥシさん(24歳)は、有望なラジオ専門家の一人である。2011年に立ち上げられたコミュニティーラジオ局「ラジオ・マハナンダ」のシニアプロデューサーを務めている。このラジオ局の主な目的は、7780平方キロ(=ほぼ静岡県の大きさ)のバリンド地域の一部を成すこの農村地帯の農家に奉仕することだ。

フェルドゥシさんはIPSの取材に対して「私や将来への希望を持った多くの女性ラジオ局スタッフが『ラジオ・通信のためのバングラデシュNGOネットワーク』(BNNRC)から受けた支援と訓練がなければ、今の自分はなかったと思います。」と語った。

More and more women in Bangladesh are turning to community radio as a means of spreading awareness on women’s issues. Credit: Naimul Haq/IPS

BNNRCの行っている奨学生・能力開発プログラムによって、バングラデシュ全土にある14のコミュニティーラジオでプロデューサーや番組司会、キャスター、記者、局の管理者などのポストを数多くの女性が占めることになった。

フェルドゥシさんは、「雇われるまでの道のりは険しいものだった」と振り返りながら、「でも、BNNRCは、私や他の女性ジャーナリストたちに可能性を見いだしてくれました。私たちも、情報に対する女性の権利が立ち遅れている状況に対処することで、かなりの変化を起こせたと考えています。」と語った。

さて、別の場所では、シャルミン・スルターナさんの自信に満ちた声が「ラジオ・ポリコント」で響いていた。このコミュニティーラジオ局は、モウルビバザールの北東部で放送され、半径17kmの約40万人に聴取されている。

ラジオ・ポリコントは、主に農村女性の抱える問題に焦点を当てた毎日5時間の番組で、この地域における大きな格差を埋めてきた。

スルターナさんは、「番組を作って、ゲストと直接生放送話をし、健康や女性の権利、社会的不正、教育、農業といった問題でラジオを聞いてくれている人々のリクエストに応えるのは、本当に楽しいです。」と語った。

「私たちが始めた時には、女性問題についての番組はひとつしかありませんでした。しかし今では、女性だけの問題を扱った番組を週に5本も放送しています。」

「私たちの番組を聞いてくれている人々のほとんどが貧困層の女性です。テレビもなければ、新聞も読めません。粗末な携帯電話でも聞くことができるFMラジオは非常に人気があり、双方向的なライブ放送を求める声は日増しに強まっています。」とスルターナさんは語った。

バングラデシュで女性が直面している問題はきわめて多い。

公的部門で雇用されている女性は1680万人に過ぎない。大多数の女性は、農場での仕事に加えて、賃金の発生しない家内労働に従事している。

経済的に自立を果たしていないということは、家庭内暴力に対してきわめて脆弱になるということでもある。バングラデシュ統計局(BBS)副局長が最近行った調査によると、現在結婚している女性の87%が夫からの暴力を受けた経験があり、98%の女性が結婚している間のいずれかの時点において配偶者から性的に「虐待された」と語っている。

またこの調査では、すべての婚姻女性のうち3分の1が「経済的な人権侵害」を受けていることも明らかになった。つまり、暴力をふるう夫が妻を自分に経済的に従属させ続ける目的で、その女性の資産を強制的に取り上げるのだ。

2011年には、330人の女性がダウリー(婚姻に伴う持参金)関連の暴力によって殺害されている。

児童婚のようなその他の問題も、女性向けコミュニティーラジオにとっての喫緊の課題となっている。国連のデータによると、バングラデシュの少女の66%が18歳の誕生日を迎える前に結婚するという。

状況は依然として厳しいものだが、専門家らは、女性が教育を受け自分の権利を自覚するようになるにつれ、流れは不可避的に良い方に向かうであろうとみている。

Radio Mahananda, a local station, helps farming communities in Bangladesh to share research and best practices on crop production. Credit: Naimul Haq/IPS

バングラデシュ全土にコミュニティーラジオ放送を広める取り組みを主導してきたBNNRCのA・H・M・バズルール・ラーマン事務局長は、IPSの取材に対して、「政策立案者らは、予算の分配、適切な衛生政策の欠如、女性への暴力、汚職との闘い、女児教育といった問題を(しばしば)無視する傾向にあります。しかし、女性に発言権を与えることができるならば、こうした問題は徐々に消えてなくなるだろう。」と語った。

今後より多くの女性の声がコミュニティーラジオで取り上げられることで、はたしてエンパワーメントを必要としているバングラデシュ国民の半数の人々(=女性)の地位を引き上げられることにつながるかどうかは未知数だ。しかし、女性の声がラジオ番組で生き生きと発せられるたびに、また別の女性がその話に耳を傾け、自分の権利について学び、平等へとまた一歩近づくことになるのだ。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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核実験の後遺症に悩まされる太平洋島嶼諸国

【スバ(フィジー)IDN=シャイレンドラ・シン】

太平洋島嶼諸国の著名な反核活動家らは、「核保有主義」(nuclearism)と闘う国際的な取り組みを支援するかつては強力だった運動の再興を目指している。彼らの呼びかけは、4月27日から5月22日までニューヨークの国連本部で開催中の2015年核不拡散条約(NPT)運用検討会議という大きな国際会議と時期を同じくしている。

NPTは、核兵器と兵器技術の拡散を防ぐ一方で核エネルギーの平和利用協力を促進する重要な国際条約である。

しかし、2015年運用検討会議に向けて毎年開かれてきた準備委員会会合のどれか一つでも参加していたNPT加盟国148か国の中に、パラオ以外の太平洋島嶼諸国の姿はなかった。

核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)によれば、かつて太平洋地域の国々は核軍縮運動に大きな貢献を成したにもかかわらず、このような状況になっている。米ソの軍拡競争が厳しかった時代、「南太平洋フォーラム」の加盟国南太平洋非核地帯条約(SPNFZ)に署名・批准した。さらに、太平洋島嶼諸国は、国連やさまざまな国際的軍縮会合の場で、核兵器を禁じる国際条約を求める決議に賛成票を投じてきた。

今回のNPT運用検討会議は、NPTの規範を強化し軍縮教育を促進するうえでどのように市民社会との関与を深めていけばよいかについて検討することになるだろう。しかし、太平洋島嶼諸国からの市民団体の参加はきわめて少ない。

太平洋島嶼協会(PIANGO)のエミール・ドゥイトゥトゥラガ事務局長によると、同協会の全国規模の連絡団体は2015年運用検討会議にどこも参加しないという。また、太平洋島嶼地域を代表するような他のNGOが参加することも把握していない。

NPT運用検討会議のような重要会議に太平洋島嶼地域からNGOの参加がないことは、同地域における反核運動が全般的に勢いを失ってきている現状を浮き彫りにするものであり、対策を必要とする憂慮すべき傾向だという意見もある。

かつてフィジーを基盤に活動していた地域圧力団体「太平洋問題資料センター」のスタンリー・シンプソン元副代表はIDNの取材に対して、「『核保有主義』は、一見衰退したように見えても、依然として脅威でありつづけています。」と語った。

「危険は去っていません。」「私たちは依然として、核実験・核活動の後遺症とともに生きているのです。」とシンプソン氏は語った。太平洋島嶼地域では、1946年から1996年の間に、かつての植民地宗主国である米国・英国・フランスがあわせて315回の核爆発実験を行っている。

しかしこうした国々が今日に至っても核実験が及ぼした被害に対する責任を認めず、被害者への補償を行っていないことから、太平洋島嶼地域の人々は不公平感を募らせている。

今年2月、フィジー政府は、1950年代末に英国が核実験をクリスマス島(現在のキリバス)で行った際に現地にいた24人のフィジー人元兵士に対する金銭的な支援を表明した。フィジーのフランク・バイニマラマ首相は「私たちには、英国の政治家や官僚からの支援を待つのではなく、今こそ彼らに救いの手を差し伸べる責任があります。私たちは自らの歴史に刺さったままの棘を取り除かねばなりません。」と述べた。

Christopher Loeak/ Wikimedia Commons

マーシャル諸島のクリストファー・ロヤック大統領は最近の文章で、米国が同国をいかに冷淡に取り扱ってきたかについて書いている。これは、ICANが2014年に発行した『核兵器を禁止する―太平洋の見方』に掲載されている文章だ。ロヤック大統領は、広島型原爆の1000倍強力だった「ブラボー」実験以外にも、マーシャル諸島で計17回のメガトン級実験が行われたと指摘している。マーシャル諸島で行われた核実験の爆発力の合計は、米国による大気圏核爆発実験の爆発力全体の8割にも及んでいた。

フランス領ポリネシアの人々もまた、ムルロアファンガタウファ両環礁で193回もの大気圏・地下核実験を行ったフランスによって同じような取り扱いを受けてきた。ICANの本は、1966年9月に行われた核実験の後でムルロア環礁の核実験場で作業していた地元のマオヒ人(ポリネシア)労働者のことについて紹介している。この労働者は、道路に散乱している瓦礫を全て片付けるよう指示された作業員の一人だ。「大丈夫。(爆心地に)行っても問題ない。」と上の人間から言われたという。

ニュージーランド・オークランドにあるAUT大学のデイビッド・ロビー教授(ジャーナリズム)は、太平洋島嶼地域における反核運動は、「自らの『裏庭』で核実験を行うことを好まない英国・フランス・米国が核実験を実施するために弱い立場の太平洋島嶼の領域をまるで将棋の『歩』のように利用したことへの怒りから生まれてきたものです。」と語った。

Eyes of Fire

独立のジャーナリストとして反核問題を取材してきたロビー氏は1986年、その前年にフランスの国家諜報機関が引き起こした[環境NGOグリーンピースの核実験抗議船]「虹の戦士(レインボウ・ウォーリア―)号」爆破事件に関する著作『炎に燃える眼』(Eyes of Fire)を上梓している。「『北(=先進国)』の傲慢さは太平洋地域の多くの人々を当惑させました。」「バヌアツのような新興国家は、故ウォルター・リニ首相や、(ファア近郊のパペーテ市長だった)オスカー・テマル氏のような政治指導者に率いられて、独立の意思を表明するために『非核』宣言を行ったのです。」と、ロビー氏はIDNの取材に対して語った。

太平洋島嶼地域一帯に広がった抗議活動が1996年のフランスによる核実験を停止に追い込んだ後、反核運動の中心にいた市民団体は縮小するか、活動停止にいたった。なかには地球温暖化問題のような、喫緊の課題だと考えられる問題に焦点を移していった団体もあった。

Catherine Wilson/IPS

ロビー氏は、「たしかにフランスは太平洋で核実験を行いましたが、大国による鬼畜のような所業は他にもあります。」と語った。これらの核実験が終了すると、太平洋島嶼国の関心は他の問題に目が向けられるようになった。「1980年代のキーワードは『核の難民』でしたが、いまやそれは『地球温暖化難民』にとって替わられました。」とロビー氏は語った。

80年代には反核運動の最前線にいた「フィジー反核グループ」(FANG)は、今では活動を停止している。同団体は、タヒチにおけるフランスによる核実験と、原子力艦船や核兵器搭載艦船がフィジーに入港することを認めたフィジー政府の方針に反対していた。「非核独立太平洋」(NFIP)運動の事務局として機能した「太平洋問題資料センター」(PCRC、スバ)も、活動を停止している。

PIANGOのドゥイトゥトゥラガ事務局長は、PCRCの閉鎖とともに核問題は「人々の注目から外れていった。」と語る。「それでは太平洋島嶼地域では核の危機は去ったのか?」という問いに対して、ドゥイトゥトゥラガ氏は、「もちろん、そんなことはありません。核兵器は、私たちが直接それに巻き込まれているかどうかは別として、全ての人々にとって破壊的なものです。」と語った。

David Robie/ Wikimeida Commons

ロビー氏もまた、太平洋島嶼諸国は依然として核の危険に晒されていると考えている。特定の脅威とは、例えば、核実験由来の放射性残留物質による汚染、福島第一原発事故によるあらたな放射性降下物、米中間の対立、とりわけ核紛争の可能性を高める、台湾に対する中国の最終計画に関する推測などである。

シンプソン氏によれば、「太平洋島嶼諸国は、当然ながら核軍縮運動の一部でなければならなりません。」と指摘したうえで、その理由として、「核実験は太平洋の島々に住まう人々にとって、感情を揺り動かす問題です。太平洋地域の民衆は反核運動の核心部分を強化することができるのです。」と語った。

残念なことに、太平洋島嶼国の存在感は、核軍縮や保障措置の促進・強化といった重要問題を議論することになる2015年NPT運用検討会議では示せそうもない。(原文へ

※シャイレンドラ・シンは、南太平洋大学(フィジー・スバ)芸術・法・教育学部言語・芸術・メディア校のコーディネーターで上級講師(ジャーナリズム)。

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【ベルリンIDN=ラメシュ・ジャウラ

5年に一度の核不拡散条約(NPT)運用検討会議が4週間にわたって間もなく開催されるが、大量破壊兵器(WMD)その運搬手段を中東地域から廃絶するという目標は、依然として遠い夢のままだ。そして、2012年12月にヘルシンキで招集される予定だった「中東非核・非大量破壊兵器地帯化に関する会議」(中東会議)もまた然りである。

G7(カナダ、フランス、ドイツ、英国、イタリア、日本、米国)外相会合もまた、この中東会議構想の行く末に一条の光を見出すことはできなかった。G7外相会合は、6月7日・8日にドイツ南部のエルマウで開催されるG7首脳会会議に先立って開かれたものである。

G7外相らは、4月15日に発表した共同声明のなかで「G7は、ファシリテーター及び1995年中東決議の共同提案国(ロシア、英国、米国)によって現在行われている努力、特に地域国の間で5回も開催された協議を歓迎する。」としたうえで、「これらの努力に関わらず、中東会議がこれまで開催されていない事を遺憾に思う」と述べている。

ドイツ北部の港町リューベックで開催されたG7外相会合で出された共同声明は、さらに、「地域の関係国は、可及的速やかに中東会議開催の日付及びアジェンダについてコンセンサスに至るよう相互に活発に取り組まなければならない。私たちは、すべての参加国の利害が考慮された場合にのみ,本会議は意味あるプロセスに通ずることを強調する。」と述べている。

NPT運用検討会議で採択された1995年の中東決議は、「大量破壊兵器、すなわち、核兵器、化学兵器、生物兵器、並びに、それらの運搬手段を効果的に検証可能な形で中東から廃絶した地帯を創設すること」を呼びかけている。

NPTは1970年に発効し、190か国が加盟している。

中東における非大量破壊兵器地帯(WMDFZ)は、1990年にエジプトが初めて提案した。それは、中東非核兵器地帯(NWFZ)を創設すべきとの長年に及ぶ提案を基礎としたものである。並行して追求されることを意図したこれら2つの構想には広範な国際的支持が集まったが、実際の進展をどう評価するかは難しい。

実際、[2012年]11月23日、米国は同年12月が期限であった中東会議を延期するとの声明を発している。会議の日程は改めて設定されていない。会議の共同招集者らは、いつ会議を開くべきか、遅延の理由は何かといった点について、意見が食い違っている。

先の米国による声明は、延期の理由として「中東の政治状況」と、「中東会議に関して容認可能な条件について参加国間の合意がないこと」を挙げている。

一方ロシアは、2012年11月24日の声明で、会議に向けた準備は既に「かなりの段階」に達しており、(米国による)延期理由は、「『中東の全ての国家が会議参加を了承したわけではない』というものにすぎない」として、2013年4月よりも前に会議を開催すべきだと呼びかけた。

この発表の時点で、フィンランドの外交官で会議のファシリテーターであるヤッコ・ラーヤバ氏は、イスラエルの参加確約を取り付けていなかった。イランは[12年]11月7日に参加を発表したが、会議でイスラエルと関わり合いになるつもりはないとも述べていた。イランは、中東会議が12年12月には開催されないであろうことを見越して会議参加を発表したのではないかという識者もいた。

こうしたなか、エジプトは長らく待ち望まれていた中東会議の延期に抗議して、13年4月29日、ジュネーブで開かれていたNPT運用検討会議準備委員会会合をボイコットし、中東会議の日程をできるだけ早く決めることを要求した。

米国の「軍備管理協会」がファクトシートで指摘しているように、NPT条約加盟国は2010年のNPT運用検討会議で初めて、1995年運用検討会議中東決議の履行に向けた進展をもたらすための5つの実際的措置に合意することに成功した。

具体的には、①NPTの寄託国でかつ中東決議の提案者である米国・ロシア・英国が、潘基文国連事務総長と協力して、「中東非核兵器地帯の創設について議論する国際会議」を2012年に開催すること、②「中東非核兵器地帯を創設するための国際会議」のファシリテーターを任命すること、③同国際会議の主催国となる政府を選定すること等が合意された。NPT加盟国は、来る2015年運用検討会議でこれらの合意事項に関する履行状況について取り上げることになるだろう。しかし、G7外相会合共同声明が示唆するように、中東会議の開催日程が改めて見直される可能性は低い。

にもかかわらず、国連安保理常任理事国のメンバーでもあるフランス・英国・米国を含むG7の外相らは、「我々は、国際社会の安定を推進する形で、すべての人にとってより安全な世界を追求し、核兵器のない世界に向けた環境を醸成することにコミットしており、この目的を達成するために、不拡散が極めて重要であることを強調する。」と述べている。

さらに共同声明は、「大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散防止は、それが国際社会の平和と安全に対する主要な脅威を与えるものであることから、最優先課題であり続けている。制御されていない通常兵器の拡散が世界のいくつかの地域の安定を弱体化させている事実は、G7 がこの分野においても行動を取るための強い理由である。」と述べている。

NPT発効から45年、そして広島・長崎への原爆投下と第二次世界大戦終結から70年となる2015年に開催される第9回NPT運用検討会議に関してG7は、「核軍縮」「不拡散」「原子力の平和利用」という「相互に補強し合うNPTの三本柱への無条件の支持」を「再確認」した。

G7の外相らはこう指摘する。「NPTは核不拡散体制の礎石であり、第6条に従った核軍縮と、原子力の平和利用を追求するうえでの根本的な土台である。NPTは、世界をより安全な場所にするための死活的で永続的な貢献をなしている。NPTは加盟国の人々に日々利益を与えている。」(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【国連IPS=タリフ・ディーン

3年の任期を経てまもなく職を離れるアンゲラ・ケイン国連軍縮問題担当上級代表が、「(この3年間は)軍縮にとって最良の時期とはいえませんでした。」と述べ、紛争に満ちた近年の世界情勢について暗い見方を示した。

こうした警告の背景には、核紛争のリスクを伴う新たな冷戦状況の登場や、シリアやイラク、リビアイエメンなど、政治的に不安定な中東地域で軍事紛争が拡大している現状がある。

「さらなる核兵器削減が実現する見通しは暗く、この25年でようやく勝ち取った軍縮の成果さえ後退局面にあるのかもしれません。」とケイン上級代表は今月6日に開催した国連軍縮委員会において語った。

まもなく国連事務次長の職を辞すケイン上級代表は、国連における最後の演説の一つのなかで、「核軍縮の規模とペースに関して、核を『持つ者』と『持たざる者』の間でこれほどの分断がある状況を私は見たことがありません。」と語った。

ケイン上級代表の警告は、核軍縮を巡る現状の行き詰まりを現実的に評価したものである。反核活動家らによれば、米ロ二国間の核兵器削減も事実上停滞状態にあるという。

たとえば、長い歴史のある米ロ間の中距離核戦力全廃条約のような、すでに得られている成果についてすら、反転の兆しがある。

一方で核戦力の削減・廃棄に関する多国間交渉の見通しはたっておらず、今後数十年にわたり、すべての核保有国が核戦力の近代化計画を推し進めている。

また、2010年の核不拡散条約(NPT)運用検討会議での約束に違反して、中東非大量破壊兵器(WMD)地帯に関する国際会議は、依然として開催されていない。

「核政策法律家委員会」(LNCP)のジョン・バローズ事務局長はIPSの取材に対して、「国際社会は(まもなく5年ぶりに)NPT運用検討会議(4月27日~5月22日)に臨みますが、核軍縮は失敗する運命にある、あるいは少なくとも無期限に一時停止することになるでしょうか?」と問いかけたうえで、「私は必ずしもそうなるとは思っていません。」と語った。

国際反核法律家協会(IALANA)国連事務所の所長でもあるバローズ氏は、「ウクライナ危機から起こった核紛争の可能性も孕んだ緊張は、現在の傾向を冷静に見直してみるきっかけを与えるものになるかもしれません。」としたうえで、「(過去においても核戦争寸前まで達した)1962年のキューバミサイル危機が、その後の様々な軍縮合意、つまり、1963年の部分的核実験禁止条約、1967年の宇宙条約、1967年のラテンアメリカ及びカリブ核兵器禁止条約(トラテロルコ条約)、1968年の核不拡散条約、1972年の米ロ間の戦略兵器削減合意と弾道弾迎撃ミサイル制限条約等につながりました。」と指摘した。

ジャヤンタ・ダナパラ元国連事務次長(軍縮問題担当)は、「2000年NPT運用検討会議で合意された「(NPT第6条「核軍縮義務」履行のための)13の実効的措置」や、2010年NPT運用検討会議で合意された64項目の行動計画と中東非WMD地帯化提案に関する合意、さらには、核兵器問題を人道的な影響の側面から捉えるという発想の転換が幅広く支持されるようになったことは、NPTの再検討プロセスを強化する良い兆候となりました。」と語った。

「しかしながら、実際の成果について市民社会が詳細に行っている評価によれば、米ロ間において冷戦思考が復活し、全ての核保有国が軍縮への取り組みを停滞させるなか、核兵器なき世界という目標が幻影と化しつつあります。」

「来たるNPT運用検討会議において、国際社会がこうした不吉な傾向を断ち切ることができなければ、2015年NPT運用検討会議は失敗に終わるでしょう。そうなればNPTの将来が危機に晒されることとなります。」とダナパラ氏は警告した。

「私たちに必要なのは、状況(核軍縮の推移)を冷静に把握することです。」とダナパラ氏は語った。

「1995年当時、(NPTによって核保有が認められていた)公式核保有国が5ヵ国、NPT未加盟の核保有国が1カ国(=イスラエル)でした。ところが今日では、核保有国は9か国となり、その内の4か国(=インド、パキスタン、北朝鮮、イスラエル)はNPTに加盟していません。」

「NPTが発効した1970年当時、世界における核弾頭の数は合計で3万8153発でした。それから40年以上経過した今日、核弾頭の総数は当時よりも2万1853発少ない1万6300発に減り、その内4000発以上が配備されています。そして世界の(核弾頭の9割以上を保有する)米国とロシアは、第四次戦略兵器削減条約(新START)発効から7年以内に配備核を3割削減して各自1550発までとすることを約束しています。」

また、NPT上のもう一つの核保有国である英国は、潜水艦発射弾道ミサイル「トライデント」を更新しようとしています。」とダナパラ氏は指摘した。

ケイン上級代表は次に通常兵器の問題を取り上げて、「私たちの周りには、地球を苦しめる残虐で共倒れ的な地域紛争のイメージが日々溢れています。これらの紛争は、野放図で違法な武器の流れによって悪化しているのです。」と語った。

毎年武力紛争で、74万人を超える男や女や子どもが命を落としていると推定されている。

「しかし、このような厚い暗雲の中にあっても、私はこの(国連軍縮担当)上級代表としての任期の間に、真の光明も見てきました。」とケイン上級代表は語った。

シリアの悲惨な内戦は、潘基文国連事務総長の言葉を借りれば、包括的でシリア人主導の政治プロセスなしに終わらせることはできないでしょう。しかし、ロシアと米国が「シリア化学兵器廃棄に向けた枠組み」に合意し、シリア政府を説得して化学兵器禁止条約に加盟させたことは、この血塗られた内戦にあって、一つの素晴らしい成果でした。」とケイン上級代表は付け加えた。

「シリアの加盟により、同国内の全ての申告された化学兵器は完全に除去され、さらに化学兵器生産施設の破壊プロセスが始まっています。」

「いわゆる『軍縮の停滞』から生まれ出てきた、人道主義を基盤とした核軍縮へのアプローチは、ニュージーランドが昨年国連第一委員会で発表した声明に155か国が賛同したことにも表れているように、圧倒的多数の国家によって支持されており、勢いを増しています。」とケイン上級代表は各国代表に語りかけた。

「このような人道的なアプローチは、核軍縮のいわゆる『現実主義的』な政治からの逸脱を意味するものではありません。むしろ、人道主義を基盤としたアプローチは、核兵器の使用がもたらす壊滅的な人道的影響を強調し、それを国際人道法の中に位置づけようとするものです。」

「この動きは約8割の国連加盟国によって支持されています。(核保有国も)この数を無視することはできないでしょう。」

さらにケイン上級代表は、「昨年軍縮に関して、国際社会で得られた主要な成果の一つは、武器貿易条約が交渉開始からわずか1年半で発効に至ったことでした。」と指摘したうえで、「この真に歴史的な条約は、武器貿易に関わるすべての主体に責任を持たせ、国際的に合意された基準の遵守を義務付けるという、極めて重要な役割を果たすことになります。」と語った。

「このことは、武器輸出が武器禁輸に違反したり紛争を悪化させたりすることがないよう徹底するとともに、無許可のユーザーへの武器の流出や再移転を予防するために、武器・弾薬の輸入に一層厳しい規制をかけることで、実現が可能です。」

「私の考えでは、これらの成果は、もっとも厳しい国際環境下においても、軍縮・不拡散分野で私たちは依然として大きな前進を得られる可能性があることを示しています。」とケイン上級代表は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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イラン核合意に中東からさまざまな反応

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【ラマラIDN=メル・フリクバーグ】

イラン核計画に関する4月2日の枠組み合意に対する中東地域での反応は、イスラエルでも近隣のアラブ諸国でも複雑なものであった。こうした反応の背景には、地政学的野望や経済的競争、宗教的イデオロギー、個人的な政治野心、戦略的連携などの様々な利害関係が作用していた。

「P5+1」(国連安保理の五大国である中・仏・露・英・米にドイツを加えた6か国)とイランとの間のいかなる合意にも反対してきたイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相の反応は予想されたものであった。イスラエルに対して批判的な人びとは、ネタニヤフ首相の反応を「ヒステリック」だとか「右派反動」などと論じている。

枠組み合意がなされる数日前、ネタニヤフ首相は、イランはイスラエルに対する生存上の脅威であり、ホロコースト否認問題まで同時に持ち出して、いかなる合意も結ばないように米国政府に圧力をかけ続けていた。

しかしひとたび合意がまとまると、ネタニヤフ政権の閣僚のほとんどが、結ばれた合意の中心的問題がまるでイスラエルであったかのように、米国のバラク・オバマ大統領がイスラエルを裏切ったという見解で一致した。

高邁な使命を担っていると確信しているネタニヤフ首相は、いかなる合意を結ぶにしても、イスラエルの存在する権利がその前提条件であることをイランに認めさせるようオバマ大統領に要求していたが、成功しなかった。

イスラエルの評論家アレックス・フィッシュマン氏は、イスラエルの右派ウェブサイト「Ynet News」において、次のように多くのイスラエル国民の感情を代弁した。

「我々のワシントンの友人は、僅かな成果のために、中東の他の同盟国とともに我々を売ったのだ。」―フィッシュマン氏はイラン核合意をこのように評した。

フィッシュマン氏は、暫定合意はイランが軍事的な核計画に持たせている戦略的重要性の証左となるものだと論じた。

しかし、すべてのイスラエル国民が政府の見方に同調しているわけではない。

イスラエルのベングリオン大学中東研究学部長でイラン専門家であるハガイ・ラム教授は、「イランが生存上の脅威だという主張はイスラエルの(パレスチナ)占領の実態を覆い隠すためのものに過ぎません。」「イスラエル政府は長年にわたって、アラブとの和平は不可能であると主張してきました、その主張に無理があることがわかると、次はイランというあらたな対象を見出したのです。」と語り、ネタニヤフ首相の見方に異議を唱えた。

ラム教授はまた、左派紙『ハアレツ』の取材に対して、次のように語った。「イスラエルは、1996年以来毎年のように『イランは1年以内に核武装化する』と主張してきました。」

「仮にイランがその目的に向かっていると想定してみましょう。はたしてイランはイスラエルを攻撃するためにその核能力を使う意図を持っているでしょうか?」

「私の見方では、答えは間違いなく、どうみても『ノー』です。1979年以降イラン・イスラム共和国を研究してきた歴史家らの大半は、イランの政策は、救世主的、あるいは宗教的な考慮ではなく、国益を基盤としたもっと実利的なものに動かされているとみています。」

「イランがイスラエルにとっての生存上の脅威だという主張は、ごまかしだとまでは言えないとしても、間違ったものです。イスラエルにはより大きくより危険な敵がいます。イランは、イスラエルの運命に真の危険をもたらす、すなわち、イスラエル・パレスチナ紛争を覆い隠すための手段となっているのです。」

しかし、イランの地域的な政治野心に懸念を示している中東の国々はイスラエル政府だけではない。

奇妙な仲間

実際イスラエルは、対イラン合意に対して疑念を示しているアラブ諸国という「奇妙な仲間」を見出している。

調査・リスクアドバイス企業「中東ブリーフィング」(MEB)のサミール・アルタキ氏とエサム・アジズ氏は、アラブ諸国にはイランの動機を疑うに足る理由があると考えている。両氏は、「イラン核合意後、アラブに期待できること」という記事の中で「中東の指導者らは、原則的に対イラン核合意を拒絶しているわけではありません。しかし彼らは、イランの核計画全体を、米国政府とは異なる観点からみているのです。」と指摘したうえで、「彼らは、ある国が核兵器の保有を目指す場合、その意図は次の2つのいずれかを意味すると見なしている。つまり一つは、軍事的に決定的な報復打撃能力を手に入れようとすることであり、もう一つは、核の脅しを通じて国境を越えた影響力を拡大しようとすることである。」と述べている。

記事はさらに、イランが(イスラム教シーア派の)フーシを支援して分裂に追いこまれたイエメンを例に挙げて、地域の分断について指摘している。イラク、アフガン、レバノン、シリア、バーレーンもまた、イランによる介入のさらなる例として挙げられている。

「ここでの問題は、核兵器を持ってはいないが、制裁を解除され、弾道ミサイル能力への重大な制限も解かれたイランが、中東地域では依然としてより攻撃的な国になるということだ。」と両氏は指摘している。

イエメンでフーシと戦闘状態にあるスンニ派のサウジアラビアもまた、敵対するシーア派勢力と対イラン合意に警戒感を示すとともに、イランが中央政府の弱体化と宗派対立がもたらす政情不安利用して影響力を拡大しようとしているとみている。

サウジアラビア政府は、対イラン合意に関して宥和的な声明を発しているが、同時にまた、「善隣、アラブ諸国内政への不干渉と主権尊重の原則」を呼び掛けてもいる。もっとも、サウジアラビアもイランも、シリアやイラク、イエメンにおいてそれぞれが対立する勢力に支援を行なっている。

アラブ首長国連邦(UAE)の研究者ナセル・アフメド・ビンガイブ氏は「アルジャジーラ」の取材に対して、「経済的な苦境に立たされているペルシャ湾岸諸国は、西側諸国がイランを容認した場合、同国の安価な石油がすでに飽和状態の国際石油市場に流れ込み、価格を更に押し下げる可能性があるため、経済競争の点で懸念を持っています。」と指摘した。

しかし、湾岸諸国では対イラン合意に対して複雑な反応がある。

この点についてビンガイブ氏は、「合意支持派は、今後包括合意が実現すれば全ての人々にとってマイナスになる破壊的な核軍拡競争に中東が陥る可能性を回避できると論じている。しかし一方で、イランとの包括合意は、中東に多くの悪影響をもたらすだろうとの意見もあります。」と語った。

エジプトの政治評論家アフメド・アブド=ラボ氏は同国の日刊紙『アル・アフラム』の取材に対して、「スンニ派とシーア派の対立が深まれば中東で宗派対立が強まるというのが、もっとも可能性の高いシナリオです。」「シーア派のリーダーであるイランと西側諸国との間で枠組み合意がまとまったことで、サウジアラビアが主導するスンニ派の間では不安が高まっています。」と指摘した。

トルコ国内の意見もイラン問題に関して割れている。イスタンブールのカディル・ハス大学のアキン・ウンベル准教授(国際関係)は、トルコの対イラン政策は「アラブの春」以降変わってきていると語る。

トルコは、2011年にはイランの地域的野望を警戒して、北大西洋条約機構(NATO)のミサイル防衛計画に与した。

「しかしトルコは一方で、イラン核計画が国際社会の注目を浴びる陰で、欧州連合の南部ガス回廊構想に関して、最終的にはイランからの協力を取り付けるという戦略を進めています。最初はナブッコ・パイプライン計画の形で、それが頓挫すると、次にアナトリア横断天然ガスパイプライン(TANAP)の形で貢献させようとしているのです。」とウンベル氏は語った。

従って、対イラン協議の間、外交的に外されてしまったことは、トルコにとって痛手ではあったが、イランが南部ガス回廊に接続することができれば、依然としてイランから利益を引き出すことができる立場にある。

ほとんどのイラン国民は、現在のイラン指導部が米国という「大悪魔」と手を結んだと考える一部の強硬派の人々を除けば、イランが再び尊重される一員として国際社会に迎え入れられる可能性を歓迎している。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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政治的な美辞麗句を超えてエスカレートする核の脅威

【国連IPS=タリフ・ディーン】

米ロの新たな冷戦状況が生まれるなか、核の脅威が(恐らくは政治的な美辞麗句を超えて)エスカレートし始めている。

元国連軍縮局上級政務官のランディ・ライデル博士は、核を巡る現状に関する現実的な評価として、「一般大衆は、気の毒に思います。なぜなら、大衆は核に関して、2つの全く異なる説を聞かされているからです。」と語った。

つまり一方の説は、「誰もが急いで核兵器の取得に向っている、或いは、それら(=保有核兵器)の(近代化措置を通じて)完全なものにしようとしている。」というものである。

Randy Rydell/ Abolition 2000

「そしてもう一つの説は、核兵器の非人道性に焦点をあてた核軍縮を目指す動きが勢いを増すなか、核軍縮が大幅に進展するだろうというものです。」と、「大量破壊兵器(WMD)委員会」の元主任顧問で、報告書執筆の責任者でもあるライデル博士は語った。

またライデル博士は、「皮肉なのは、もし後者の説が間違っているとすれば、前者の説がこの論争に勝ち、その結果我々人類すべてが敗者になるということです。」と述べ、核兵器が使用される恐ろしいシナリオを予見した。

ロンドンに本拠を置く『エコノミスト』誌は最近、「冷戦終結から四半世紀を経た今、世界が直面する核戦争の脅威は拡大しつつある。」という非常に悲観的なトップ記事を掲載した。

ソビエト連邦崩壊から25年が経ち、世界は今、新たな核の時代に突入しつつある。」「核戦略は、ならず者国家や地域の敵対勢力が当初の5つの核大国(米国、英国、フランス、中国、ロシア)と争う闘技場となっている。さらに、核大国自身が取り決めた協定も、疑念と対抗心に冒されている。」と記事は述べている。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)軍備管理・軍縮・不拡散プログラムのシャノン・カイル上席研究員はIPSの取材に対して、「世界が『新たな核の時代』に突入しつつあるかもしれないとする『エコノミスト』誌の論評に同意します。」と語った。

「しかし私は、『新たな核の時代』の意味合いについて、核保有国による核兵器への新たな支出という狭い観点から定義するのではなく、むしろ、冷戦期の二極秩序に替わるような多極の核世界が登場したというより広い観点から定義されるべきだと思います。」とカイル氏は付け加えた。

Shannon Kyle/ SIPRI

カイル氏はまた、「核兵器が東アジアや南アジア、中東の国々における防衛・国家安全保障政策の中心的要素になりつつある。」と指摘したうえで、「こうした国々では、核兵器が地域の安定や抑止に関する計算を複雑にし、予測不能なものにしているのです。」と語った。

そのために、地域の敵対構造が、核クラブが小さかった頃にはあり得なかった、核拡散や、軍事衝突にさえも、つながるリスクが高まっている。

他方、不吉な前触れもある。イランの核武装を防ぐための交渉は、依然として包括的な合意に至っていない(枠組み合意に達したものの、引き続き6月末までの最終合意を目指している:IPSJ)。

サウジアラビアは、「平和目的のため」だとして、韓国と新たな核協力協定を結んだ。一方、北朝鮮は核戦力を誇示しようとしている。

先週、北朝鮮の玄鶴峰駐英大使が、米国の核攻撃に対して北朝鮮は自らの核兵器を使用すると発言したと「スカイニュース」が報じた。

玄大使は「米国のみが核兵器攻撃というオプションを独占しているわけではない。」と指摘したうえで、「もし米国が我々(=北朝鮮)に攻撃を加えれば、我々は反撃するだろう。我々は、通常戦争に対しては通常戦争で、核戦争に対しては核戦争で応じる用意ができている。我々は戦争を望まないが、戦争を恐れてはいない。」と語った。

『エコノミスト』誌はまた、すべての核保有国が「その核戦力の近代化をはかるために多額の」支出を行っている、と指摘している。

ロシアの国防予算は2007年以降で5割以上も増加している。このうち3分の1が核兵器向けだが、この割合はフランスのそれの2倍である。

中国は潜水艦や移動ミサイル部隊に投資し、米国は核戦力の近代化予算として3500億ドルの支出を議会に認めさせようとしている。

カイル氏は、「『新たな核の時代』の副次的な側面はより技術的な性格を持っており、核戦力と通常戦力との間の作戦上の壁が低くなりつつあることと関係しています。」と指摘した。

「とりわけ、技術的進歩が著しい衛星を利用した偵察・監視システムと組み合わせた、新型かつ先進的な長距離・精密誘導ミサイルシステムの開発は、従来核兵器に割り当てられていた役割と任務が、通常兵器に対して与えられつつあることを意味します。」とカイル氏は語った。

「この傾向は特に米国において顕著だが、南アジアの文脈においても見ることができます。インドは、新たな限定戦争ドクトリンの一環として、パキスタンの核戦力を標的とした通常戦力による攻撃システムを採用しています。」

カイル氏はまた、「多くの専門家らが、こうした技術的な傾向から、危機の際に不安定性が増し、核兵器使用のリスクを拡大しかねないドクトリン上の変化が生じている、と指摘しています。」と語った。

「こうした現状が示すものは、(ベルリンの壁が1989年11月に崩壊して)冷戦が終結して以来、世界の核弾頭の数は大幅に減少しているものの、核兵器によって生起するリスクと危険の幅は実際には拡大しているということです。」

Image: The United States conducted the first in a series of high-yield thermonuclear weapon design tests, the Castle Bravo test, at Bikini Atoll, Marshall Islands, as part of Operation Castle on 1 March 1954. Credit: U.S. Department of Energy. Credit: U.S. Department of Energy
Image: The United States conducted the first in a series of high-yield thermonuclear weapon design tests, the Castle Bravo test, at Bikini Atoll, Marshall Islands, as part of Operation Castle on 1 March 1954. Credit: U.S. Department of Energy. Credit: U.S. Department of Energy

「その特異な破壊力から核兵器が極めて危険な兵器でありつづけているとすれば、核兵器が危険なものとみなされ、最終的には禁止されるような世界に到達するための集団的な取組みを強化しなくてはならないということに反対する者は誰もいないでしょう。」とカイル氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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【ワシントンIPS=ジャスミン・ラムジー】

イランの核問題をめぐる「枠組合意」妥結期限から2日が過ぎ、交渉担当者らは成果なく手ぶらで帰国するかに見えた。しかし、4月2日、スイスのローザンヌとワシントンにおいて驚きの詳細な枠組みが発表された。それと時を同じくして米国のバラク・オバマ大統領の頭の中にあったのは、米議会との対決であった。

ホワイトハウスの中庭でこの「イランとの歴史的な合意」について発表したオバマ大統領は、「ここで問題になっているのは、政治よりももっと大きな問題です。」と指摘したうえで、「(この枠組合意は)もし完全に履行されれば、イランの核兵器取得を防ぐことができるものです。」「しかしもし議会が、専門家による分析を無視し、何らの合理的な対案も示さないままこの取引を壊してしまうなら、外交の失敗に関して非難されるのは米国ということになります。そうなれば国際社会の結束は壊れ、紛争への道が広がってしまうでしょう。」と語った。

イランと「P5+1」(米・英・仏・中・露プラス独)は、6月30日までに懸案のイラン核問題に関して包括的な最終合意に達しなくてはならない。つまり、オバマ大統領が米議会に望んでいる「建設的な監視役割」を議会が受け入れるには、あと3ヶ月もないということになる。

ワシントンに本拠を置く「軍備管理・不拡散センター」のレイシー・ヒーリー政策ディレクターは、IPSの取材に対して、「議会はこの交渉において複数の役割を演じてきました。」「議員の中には自分たちはあえて(イランから譲歩を引き出すために同国に対して)厳しい立場をとる役回りを演じてきたと考えたい人たちもいるようだが、それがどれほど効果的だったかは不明です。…これは危険なゲームと言わざるを得ません。」と語った。

もし外交交渉の当事者らが手ぶらで帰国することになっていたとしたら、マーク・カーク上院議員(共和党)とボブ・メネンデス上院議員(民主党)が提出した「2013年新イラン制裁法(カーク=メネンデス法案)」(追加制裁とイランのすべての核濃縮能力の解体を規定したもので、イランには到底受け入れられない内容であった)のような、タカ派的な措置が、オバマ大統領の拒否権発動を覆せる多数の賛成票を得る可能性が高まっていたであろう。

しかし、今や対イラン合意が見えてきたことから、共和党が、イランとの合意を壊しかねない法案に十分な数の民主党議員を切り崩して賛成にまわらせることは難しくなるだろう。

Officials at the Iran talks in Lausanne, Switzerland. Credit: European External Action Service/CC-BY-NC-ND-2.0

カーク=メネンデス法案の審議が立ち行かなくなり、オバマ大統領が目下のところ直面している脅威は、上院外交委員会ボブ・コーカー委員長(共和党)が提案している「2015年イラン核合意再検討法案(コーカー法案)」であろう。

コーカー法案は、オバマ大統領の対イラン交渉を一貫して批判してきた共和党が多数を占める議会に対して、イランとの包括的合意妥結後60日以内に、合意を承認する権限を与えるものである。この期間中、大統領はイランに対するいかなる制裁の解除も一時停止も許されなくなる。

コーカー議員は枠組み合意が発表された2日に声明を出し、議員らが春期休会から戻ってくる14日から上院外交委員会で同法案の審議を始めるとの意向を示したうえで、「最終合意がまとまったら、アメリカ国民は、選出された議員を通じて、合意が本当にイランの核の脅威を除去することになるのか、本当にイランの体制に責任を取らせることができるのかについて検討する機会を持たねばならない。」と語った。

Santer Bob Corker/ Wikimedia Commons

しかし、米政府関係者は同日の記者会見で、「大統領は、(イランとの包括合意に向けた)協議中に議会を通過する新たな制裁法案や既存のコーカー法案に拒否権を発動する考えを明らかにしています。」「包括合意をとりまとめるオバマ政権の能力を本質的に削いでしまうような法的措置は、建設的なものではありません。」と述べ、オバマ大統領がイランとの最終合意の見通しに悪影響を及ぼすようないかなる法案にも反対する意向である旨を伝えた。

オバマ政権の(イランとの)いかなる合意に関しても議会が発言権を保つべきだという考え方は、2年前にジュネーブで予備的合意がまとまってからとりわけ強くなり、特に右派からの数多くの議会行動に道を開くことになった。しかし、最終合意がまとめられようとしている今、タカ派議員らは民主党議員からの必要不可欠な支持の獲得に、これまでよりも苦労するだろう。

「2日の枠組み合意以前は、コーカー上院議員も、大統領の拒否権を覆せる多数(両院の3分の2以上)の支持を得ることに大いに自信を持っていましたが、イランとの合意が出来あがりつつある今、民主党議員から十分な支持票を獲得するのは難しくなりつつあります。」と議会の動向をモニターしているヒーリー氏は語った。

主要な民主党議員が2日に発した声明は、いつも通り慎重な言い回しのものだったが、オバマ政権の立場を支持することになるかもしれないと示唆する議員も既に現れている。

民主党のハリー・リード院内総務は、「深呼吸をして、(枠組み合意の)内容を精査し、この極めて重要なプロセスが展開する時間を与えようではないか。」と同党の議員に呼びかけている。

Senator Harry Mason Reid/ Wikimedia Commons
Senator Harry Mason Reid/ Wikimedia Commons

リード院内総務は「イランが核兵器を取得しないように常に目を光らせていなくてはならないが、外交的解決がその他の方法よりもずっと望ましいことに間違いありません。」と、2日の声明で述べている。

しかし、対イラン合意の賛成派・反対派がそれぞれ議会に対して圧力を強める中、これからの2週間、オバマ大統領は議会への困難な対応を強いられるだろう。

「私たちは、P5+1によって2日に発表された新枠組みは、イランを核兵器取得に手が届く位置に残したままの最終合意につながりかねないとの懸念を持っています。」と主要な親イスラエル・ロビー団体の一つである「アメリカ・イスラエル公共問題委員会」(AIPAC)は、その声明の中で述べている。

ワシントンに本拠を置く著名なタカ派シンクタンク「民主主義防衛財団」(FDD)もまた、イランに核インフラの維持を認めるようないかなる合意にも反対するとの立場を改めて表明した。

FDDのマーク・デュボビッツ事務局長アニー・フィクスラー(政策アナリスト)氏は、ウェブサイト「クウォーツ」に掲載した寄稿文「オバマ政権の対イラン核合意は世界の安全を危険に晒す」のなかで、「発表された枠組み合意の内容を見ると、きわめて欠陥の多い合意に向かっているように感じる。」と述べている。

3月に(ホワイトハウスの反対を押し切って)米議会でイランに関する演説を行い、何度もスタンディング・オベーションを受けたイスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は、合意枠組みについて、「イスラエルの生存そのものを脅かす重大な危険」だとコメントした。

イスラエル、そして程度は劣るがサウジアラビアも、イランとの協議に反対を明確にしてきており、今後数か月、懸念の声を強めるであろうと予想される。

しかし、オバマ政権の取り組みは、単に同盟国を安心させ、あるいは自国の反対派と闘うことだけに専心する余裕はない。現段階では何ら内容が保証されていないイランとの包括合意そのものの詳細をまとめあげるという仕事があるのだ。

Ali Vaez/ International Crisis Group

「今後3ヶ月でいくつもの困難な課題を解決しなくてはなりません。その中でも大きなものは、①対イラン制裁解除への正確なロードマップ、②国連安保理決議に盛り込む文言の内容、③イランのPMD(軍事的側面の可能性)問題を解決する措置、④合意違反認定のメカニズムの決定、があります。」と「国際危機グループ」のイラン問題アナリストであるアリ・バエズ氏は、IPSの取材に対して語った。

「今後3ヶ月の交渉は生易しいものではないでしょう。それどころか、当事国が残った難題を解決し、合意を守ろうとするにつれて、交渉は難しくなってくると思われます。」と、枠組合意がまとまった際にはローザンヌに滞在していたバエズ氏は語った。

「成功は保証されていません。しかし、今回の合意妥結で、今後決裂した場合のコストはより高いものになったと言えます。」とバエズ氏は付け加えた。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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米国のイラン核武装説は「危険な幻想」(ピーター・ジェンキンス元英国IAEA大使)

イラン核問題「共同包括的行動計画」枠組みからの抜粋

「イラン・イスラム共和国の核計画に関する共同包括的行動計画のパラメーター」文書の内容は、以下のとおり。


イランは、10年にわたり、設置された遠心分離器の約3分の2を削減し、現状の1万9000基から6104基(全てイランの第1世代分離器である「IR-1」型)とし、そのうち5060基のみでウラン濃縮をすることに同意した。

イランは、少なくとも15年にわたり、少なくとも3.67%を超えるウラン濃縮をしないことに合意した。

イランは、15年にわたって、現在の低濃縮ウラン(LEU)の備蓄1万キログラムを、3.67%の低濃縮ウラン300キログラムにまで削減することに合意した。

すべての余剰の遠心分離器と濃縮インフラはIAEA(国際原子力機関)が監視する貯蔵庫に置かれ、運転される遠心分離器および装置の取り替えにのみ使用する。

イランは、15年にわたって、ウラン濃縮目的のいかなる新しい施設も建設しないことに合意した。

IAEAは、ナタンツにおけるイランの濃縮施設、フォルドウにおけるかつての濃縮施設を含むイランのすべての核施設へのアクセスを有する(最新の監視技術を含む)。

査察官は、イランの核計画を支えるサプライ・チェーンへのアクセスを有する。新しい透明性・査察メカニズムは、秘密計画への転用を防止するために物質や構成部品を緊密に監視する。

イランは、検証可能な形でコミットメントを守れば制裁緩和を受けられる。

米国とEUの核関連制裁は、イランがすべての重要な核関連措置をとっているとIAEAが検証した後に、停止される。他方で、イランがコミットメントを実施しない場合は、いつでもこれらの制裁はすぐに元に戻される。

核関連問題に係る米国の対イラン制裁アーキテクチャは、相当の期間にわたって存続し、イランによる重大な不履行の際には制裁措置が元に戻される。

|視点|核兵器のない世界へ 行動の連帯を」(池田大作創価学会インタナショナル会長)

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【IPS東京=池田大作

いよいよ今月末からNPT再検討会議が始まる。広島・長崎への原爆投下から70年となる節目に行われる同会議で、「核兵器のない世界」を現実のものとするための誓約と成果が導き出されることを、強く呼び掛けたい。

近年、核兵器をめぐる論議の潮目は、大きく変わりつつある。

昨年10月には「核兵器の人道的影響に関する共同声明」に、国連加盟国の約8割にあたる国が賛同し、いかなる状況下でも核兵器が使用されないことを求める、共通の意思を明確に示すまでになってきたからだ。

昨年12月、ウィーンで開催された「核兵器の人道的影響に関する国際会議」でも、同会議に初めて参加したアメリカとイギリスからも、核兵器のもつ非人道性をめぐるさまざまな議論が行われてきたこと自体は理解するとの立場が示された。

取り返しのつかない惨害が、“すべての国”で生じないようにするために、どのような構想が必要かを見つめ直すのが焦眉の課題だ。

ウィーンで開催された「核兵器の人道的影響に関する国際会議」/IPPNW Deutschland

核兵器をめぐる長年の膠着状況を打ち破るには、核兵器が本質的に帯びている「より広い意味での非人道性」に目を向けることが、出発点となる。

その視座に基づいて、次の二つの具体的な提案を行いたい。

一つめは、NPTに基づいて核軍縮に関する制度づくりを進めることだ。

そこでまず、できるだけ多くの首脳が再検討会議に出席することを呼び掛けたい。そして、各国の首脳らを前に「核兵器の人道的影響に関する国際会議」の総括報告を行う場を設けることを提案したい。

また、各国の首脳もしくは代表がスピーチする際、2010年の再検討会議で全加盟国が一致して懸念を表明した「核兵器のもたらす壊滅的な人道的結果」を引き起こさないために、自国としてどのように行動するかについて、言及することを望むものである。

Photo: The UN General Assembly Hall. Credit: Manuel Elias/UN.
Photo: The UN General Assembly Hall. Credit: Manuel Elias/UN.

その上で、今一度、2000年の再検討会議で「核兵器の全廃を達成するという保有国による明確な約束」が行われたことを想起し、その約束を具体的かつ速やかに実行に移すための「NPT核軍縮委員会」ともいうべき条約の補助機関を新設してはどうか。

二つめの提案は、「核兵器禁止条約」の締結に関するものである。

そのために、NPT再検討会議の成果なども見定めた上で、条約交渉のためのプラットフォームを立ち上げることを提案したい。例えば、国連総会の決議で2018年までの開催が要請されている、「核軍縮に関する国連ハイレベル会合」を明年に行い、条約案をまとめることを目指していってはどうか。日本が、他の国や市民社会と力を合わせて、「核兵器のない世界」を築く挑戦を加速させることを強く望みたい。

広島平和記念公園/ Wikimedia Commons

広島では、8月に国連軍縮会議が、11月に世界核被害者フォーラムが行われるほか、長崎ではパグウォッシュ会議の世界大会が11月に開催される。SGI(創価学会インタナショナル)でも、他の団体と協力して「核兵器廃絶のための世界青年サミット」を8月末に広島で開催することを検討しており、世界の青年の名において核時代との決別を誓う宣言を採択し、「核兵器禁止条約」を求める青年の連帯を強めていきたい。

先のウィーン会議では、オーストリアが「核兵器のない世界」を実現するために、あらゆる人々や団体と協力していくとの誓いを表明した。

また昨年、FBO(信仰を基盤とする団体)等とSGIは、ワシントンとウィーンで宗教間対話パネルを共催し、「核兵器のない世界」を実現するために共に行動する誓いを共同声明として発表してきた。

未来は、今この瞬間に生きる人々の誓いの深さでこそ決まる――。

核時代に終止符を打つための鍵となるのは、まさに各国や国際機関、市民社会などの、あらゆる人々や団体が、自らの誓いを立てながら、グローバルな“行動の連帯”を力強く広げていくことではないだろうか。(英訳版へ

INPS Japan

池田大作氏は日本の仏教哲学者・平和活動家で、創価学会インタナショナル(SGI)会長である。池田会長による寄稿記事一覧はこちらへ。

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【ヘブロンIDN=メル・フリクバーグ

ヨルダン川西岸地区(ウエストバンク)南部の中心都市で聖書にも登場する古都ヘブロンは、ユダヤ教、キリスト教、イスラム教のいずれにとっても聖地であり、歴史的、考古学的、宗教的に重要な遺跡が街の至る所に点在している。

しかし、絵のように美しい丘陵地に細い路地が縦横に巡るこの街の佇まいを一見しただけでは、この街が抱える辛く血塗られた歴史や緊張感は伝わってこないだろう。

City of Hebron/ Wikimedia Commons

この預言者アブラハムの街には現在25万人以上のパレスチナ人が暮らしている。一方、1000人足らずのユダヤ人入植者が、この街の中心部で数百人のイスラエル軍の兵に守られながら、極めて険悪な雰囲気の中で暮らしている。

この数十年の間、両者間の憎悪はしばしば暴力と流血の惨事を引き起こしてきた。

1994年にはユダヤ人入植者で医師のバールーフ・カッペル・ゴールドシュテインがアブラハムモスクで礼拝中のパレスチナ人29人を殺害する乱射事件を引き起こし、その後起こった暴動や襲撃でユダヤ人入植者、パレスチナ人双方で多数の死傷者がでた。

イスラエル軍による占領の影響で、ヘブロン中心街の市場周辺で暮らしていた多数のパレスチナ人が職場と家を失ったほか、かつて賑わっていたシュハダ通りも封鎖され、パレスチナ人の通行が禁止されている。

City of Hebron/ Wikimedia Commons

またイスラエル軍治安部隊は、様々な人権擁護団体から、パレスチナ人を虐待し無益に殺害しているとして非難されている。

ここヘブロンで、パレスチナ人とイスラエル人による2つの平和団体が正義のために協力し合い、イスラエル人と外国人を対象に占領下の人々の生活について情報を伝える活動を始めたのはこうした背景からである。

BTS(Breaking the Silence:沈黙を破る)は、2000年10月に始まった第二次インティファーダ以降に占領地パレスチナで軍務経験をしたイスラエル人の若者達が結成した平和団体である。

BTSでは、メンバーの元イスラエル軍兵士たちが、イスラエル市民や観光客を対象にヘブロンの街を案内し、占領下の(パレスチナ人の)人々が直面している現場の現実について説明している。

BTS
BTS

「私たちは、若い兵士たちが日々占領地の民間人と対峙し、住民の日常生活を支配する任務に従事しなければならない現実と引き換えに、どのような代償を払わされているかについて、国民的な議論を促したいと努力しています。」とBTS広報担当のアキヤ・シャッツ氏はIDNの取材に対して語った。

「私たちはツアー参加者に対して、占領政策の被害者はイスラエル人ではなくパレスチナ人だと説明しています。」

元兵士であるBTSメンバーの多くが、占領軍として任務に従事していた頃にパレスチナ人に対して行われた数々の虐待を覚えている。

「ある時、私たちの部隊は『テロリスト』と考えていたパレスチナ人の家をめちゃくちゃに壊し、容疑者とその妻を痛めつけたうえ、通りに引きずり出したことがあります。」をシャッツ氏は当時を思い出しながら語った。

「しかしあとになって、相手を間違えていたことが分かったのです。私たちが探していた容疑者はその2軒先の住民でした。」

シャッツ氏はまた、当時の部隊長がシャッツ氏のチームが「テロリスト」を殺害できなかったことに失望していたのを覚えている。

BTSに集った元兵士達の証言内容には、シャッツ氏の経験よりも遥かに酷いものも少なくない。シャッツ氏は、「私の経験はヘブロンに駐留している占領軍兵士に限ったことではありません。ウエストバンクの占領地全域を通じて、一部のイスラエル軍兵士がパレスチナ人住民に対し示す普段の態度なのです。」と語った。

またBTSのメンバーらは、イスラエル市民に対して占領の現実を知らしめる活動のほか、パレスチナ人、とりわけパレスチナ人活動家との懸け橋となることを重視している。

「私たちはパレスチナ人にイスラエル人を紹介することを重視しています。なぜなら、こうすることが、固定観念を打破するのに役立つからです。こうしたイスラエル人にとって、個人的に直接パレスチナ人と会うのは、(BTSが仲介したこうした機会が)初めてという場合が少なくないのです。」

BTSでは、こうした観点からパレスチナ人の平和団体「入植地に反対する若者たち(Youth Against the Settlements:YAS)」と協力して活動している。

YASはパレスチナにおけるイスラエルによる植民活動(ユダヤ人入植地の建設・拡張政策)を、非暴力による民衆闘争と市民的不服従を通じてやめさせようと活動しているパレスチナ人による無党派組織である。

「私たちは、多くの活動について、イスラエル人団体(BTS)と協力し合っています。例えば、ツアーや抗議活動等のコミュニティアクション、人権侵害に関する啓蒙活動やイスラエル人にパレスチナ住民の生活の実態を紹介する活動などについて、BTSのメンバーとともに現場で話し合って計画を立てるようにしています。」とYAS広報担当のイッサ・アムロ氏はIDNの取材に対して語った。

「パレスチナ人活動家とイスラエル人活動家が占領政策に反対して団結し、協力し合うことを、私たちはコ・レジスタンス(co-resistance:共に抵抗する活動)と呼んでいます。」

「多くのパレスチナ人とイスラエル人が、こうした協力活動への参加を通じて相互理解を深め合い、友情を育むようになっています。また両者のこうした姿は、パレスチナ人の間に、自分たちのことを大事に考えてくれるイスラエル人もいるのだという希望をもたらしているのです。」とアムロ氏は語った。

Foreigners and Israelis on a tour with Il Amim learn about life in East Jerusalem under occupation/ Mel Frykberg of IDN

2004年に設立されたNGO「イル・アミーム(Ir Amim:「民の街」の意)」も、占領下のパレスチナ人と協力して東エルサレムの入植地問題に取り組むイスラエル人による平和組織である。

イル・アミームは、パレスチナ人のNGO「平和と民主主義フォーラム」とともにエルサレム政策フォーラムを設立した。

このグループは、イスラエル議会とエルサレム市当局に対して、同市の安定を脅かしたり市民の平等を阻害したり、あるいはイスラエル-パレスチナ間の和平交渉の行方を脅かすような行動について情報提供を行っている。

また当局に対して、東エルサレムの全ての住人の尊厳と福祉に対する配慮を求めるとともに、市内に点在する聖地における歴史文化財の保護に取り組んでいる。

イル・アミームの教育普及啓蒙活動は、主に一般のイスラエル市民に向けられたもので、東エルサレム問題に関するイスラエル社会全般の議論を再構築することを目的としている。

そこでこのグループは、一般市民を対象とした、メディア作品の制作をはじめ、スタディツアーや説明会、ハウスミーティング、教育プログラムの実施を通じて、実際に(東エルサレムの)現場で起きている出来事とそれらがイスラエル社会にどのような影響をもたらすかについて、冷静に分析するよう求めている。

イル・アミールによるスタディツアーに参加したスウェーデン人観光客のアミ―・カールソン氏は、「私はこれまで東エルサレムが西エルサレムと比較していかに不利な状況に置かれているか全く知りませんでした。今回イル・アミールの方から、東エルサレムが、西エルサレムが享受している市当局からの予算のほんの僅かな一部しか得ていないことを知りました。実際に東エルサレムを回って、町中にゴミが散乱し、街灯が不足し、標識がほとんどない惨状を目の当たりにして、この(パレスチナ人)地区がいかに当局からおざなりにされているかがよく理解できました。それとは対照的に、同じ東エルサレムでもユダヤ人入植地に関しては行政のケアが行き届いていたのが印象的でした。」とIDNの取材に対して語った。

このように平和のために協力し合っているイスラエル人とパレスチナ人が相互に有意義な体験を育んでいる一方で、シャッツ氏をはじめとした元イスラエル軍兵士たちは、個人のレベルでこうした人権活動に関与している代償を払わされているのが現状である。

「私は、これまでに殺害の脅迫を受けたり、軍務についていた頃のかつての同僚たちから裏切り者呼ばわりされたりしてきました。しかし、祖国イスラエルを心から愛しつつ、一方で間違っている占領政策は憎むということは可能だと確信しています。こうした脅迫や侮辱は、この信念を貫徹するための代償として、甘んじて受け入れる覚悟です。」とシャッツ氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

*イスラエル人とパレスチナ人の有志グループが、時勢に逆らい、偏狭な利害を乗り越えて、深く対立する双方のコミュニティーに対して、自らが変わることで解決の一部になれるという働きかけを辛抱強く行っている姿(-「世界市民」の概念を地域で実践している好例-)に焦点をあてた記事。

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核兵器を抑止力とみなすフランス

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【パリIDN=A.D.マッケンジー】

各国の指導者が4月27日から5月22日にかけてニューヨークの国連本部で開催される核不拡散条約(NPT)運用検討会議に向けて準備を進める中、フランスの活動家らは、発効から45年となる同条約の履行に本気で取り組むような公約がなされるとはあまり期待していないと語る。

フランスは世界第3位の核兵器保有国であるが、フランソワ・オランド社会党政権は、「核備蓄量を増やさない」「核実験は停止しなければならない」という政策を公式に掲げる一方で、核兵器の廃絶には賛成していない。

Franois Hollande/ Wikimedia Commons
Franois Hollande/ Wikimedia Commons

実のところ、オランド大統領の見解は前任のニコラ・サルコジ氏のものとは少し異なっている。サルコジ前大統領は、核軍縮は、相手方が兵器を削減すれば自らも兵器の削減に応じるとする「相互主義」に基づいて行われるべきと主張していた。

フランスは核戦力を海軍と空軍に配備しており、2013年にオランド政権が承認した『国防と国家安全保障に関する白書』によると、フランス政府は核戦力を「重要な国益」を守るための手段と位置付けている。

2015年2月、オランド大統領は同国南部のイストル空軍基地で行った演説においても改めて政府方針に言及し、「今日の『危険な世界』においては、核兵器の保有は敵に対する抑止力となります。」と語った。

「当面の国際情勢を前に、我が国は警戒を緩めて自国の防衛力を弱めてはなりません。」「今後、我が国が直接あるいは間接的に関与しうる国家間紛争が勃発する可能性は誰も否定できないのです。」とオランド大統領は宣言した。

しかし核軍縮を支持する活動家らはこうした政府の姿勢について、「政府はNPTで定められた(軍縮)義務を履行していない。」と反発を強めている。また活動家らは、フランス政府が2010年NPT運用検討会議において採択された軍縮を進めるための64項目からなる行動計画についても、実行を遅らせているとして批判している。

「核保有量の削減はまったく行わせていません。私たちに必要なのは、核不拡散の禁止よりも、むしろ核兵器そのものを禁止する条約です。」と、フランスの軍事活動を監視している地元の平和団体「Observatoire des Armements」のパトリス・ブベレ会長は語った。

Patrice Bouveret

「5年前(NPT運用検討会議)の約束で具体的に履行されたものは何一つありません。今日の状況は(核軍縮について)曖昧にされてきたこれまでの状況と変わらない訳ですから、各国は新たな条約の制定に向けて舵を切るときにきています。」とブベレ会長はIDNの取材に対して語った。

Observatoire des Armementsは、フランスの主要反核連合「脱核時代ネットワーク(Sortir du Nucléaire network)」(932団体、60,500人が加盟)のメンバーである。

「一般市民の非暴力非服従運動」を標榜する同反核連合は、例えば、3月26日より、米国との協定に基づいて米軍の核兵器を貯蔵しているドイツ国内で最後の軍施設であるブエッヘル軍事基地の周辺で、「核兵器の備蓄に反対する」抗議活動に参加している。抗議活動は、NPT運用検討会議が終わるまで続けられる予定である。

活動家らは、公式核兵器5大国(フランス、英国、中国、米国、ロシア)に対して、北朝鮮、イスラエル、パキスタン、インド、そして(恐らく)イランといった「新核兵器国」を抑えるとともに、NPTの規定に従って自らの核軍縮をより積極的に推進するよう呼び掛けている。

一方フランス政府は、2008年までに同国が航空機搭載の核兵器を3分の1削減し、核兵器の総数を300発以下にしたとしている。さらにオランド大統領は2月の演説において、フランスが潜水艦搭載核弾道ミサイル16発を3セットと中距離空対地核ミサイル54発を保有していると語り、初めて保有核戦力の数値を公表した。

フランス政府はまた、同国は公式核兵器5大国の中で唯一、自国の核実験施設と核分裂性物質製造施設を廃棄した国であり、政府は兵器用核分裂性物質の「完全」生産中止を実現するために、引き続き取り組んでいくとしている。

しかしフランスをはじめ他の核保有国や一部の同盟国が核抑止議論に固執しているため、核爆発が起こる危険性は依然として高いままである。そこで活動家らは、4月27日から5月22日まで開催されるNPT運用検討会議における議論がどうなるか、注意深く見守ろうとしている。

「我が国では依然として軍縮に関する議論は複雑です。」と、エルヴェ・モラン元国防相など10人のフランス国会議員らが、昨年12月にウィーンで開催された「核兵器の人道的影響に関する国際会議(約1000人が参加)」に宛てたメッセージの中で述べている。

Jean-Marie Collin/ PNND

さらに国会議員らは、「あまりにも多くの民間の有力者や軍高官らが、核軍縮は国家に対する背信行為であり、フランスの安全保障に対する脅威であると考えているため、核軍縮議論は、ますます複雑な様相を呈しています。」「しかしこれは誤った認識です。なぜなら、フランスは外交上、条約の内容と核なき世界を実現するという目的に完全に合致した政策を選択しなければならないからです。」と指摘したうえで、「核兵器を削減し廃絶するには、フランス国家およびその政府は核軍縮プロセスがもたらす『利益を理解する』必要がある。」と述べている。

「今日私たちの同僚の中で世界に現存する16,300発もの核兵器がもたらす危険性を理解しているものはあまりにも少ない。」と、核軍縮・核不拡散議員連盟(PNND)フランス支部コーディネーターのジャンマリー・コリン氏は語った。PNNDは、核政策に関する最新情報を提供している。

たとえフランスが自国の核戦力の保持を望んでいたとしても、核保有国を「より不安定な国々」へと拡げたくないと考えているのは明らかである。オランド大統領は2月に行った演説の中で、いくつかの国々の間で核兵器の取得を目指した「競争」が起きていることを厳しく非難した。(原文へ

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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