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世界市民教育は平和な社会づくりを目指す若者の取組みを支える

【国連IDN=カニャ・ダルメイダ】

今年半ばまでに10歳から24歳の若者の数は18億人(全人類は72.8億人)となり、人類史上最大規模となっている。

国連によれば、この層の大部分は「南」の国々に住んでいる。世界の後発開発途上国48か国で、児童・青年が人口の最大の部分を占めている。

Role of Global Citizenship Education in Fostering Youth Peacebuilders

しかし、最近国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が招集した国際会議で様々な青年リーダーたちが指摘したように、今日の若者たちは数多くの困難に直面している。

9月10日から11日まで2日間にわたって開催された「青年平和構築者を育成するうえでの世界市民教育(GCED)の役割に関する会議」の参加者らは、紛争や汚職、気候変動は、若者が日々直面している様々な困難のごく一部に過ぎない、と語った。

また会議の参加者らは、「難民化や暴力、失業、非識字もまた、若い世代に問題を投げかけており、高次のレベルの意思決定や政策策定に若者を関与させ巻き込むように、地域・国家・国際の構造レベルで『根本的な』変革が必要」と訴えた。

次代を担う青年リーダーたち

この会議に参加した次代を担う青年リーダーたちは、潘基文国連事務総長が2012年に立ち上げた「グローバル・エデュケーション・ファースト・イニシアチブ(GEFI)」を支援すべく策定された、すべての文化や宗教、人々に対する包摂性、相互尊重、寛容を基盤とした枠組みである世界市民教育を用いて、開発や人権、平和や安全保障の分野に乗り込んでいきたいと考えている。

Global Education First Initiative
Global Education First Initiative

世界の若者たちが、暴力や紛争による影響を不釣り合いなほど多く受けていることを考えれば、若者の参加は、国連の三本柱のひとつでもある紛争の分野においても、もっとも緊急に必要とされるものである。

事務総長室の青少年問題特使のデータによれば、世界の紛争地帯に暮らす約15億人の内、実に4割を若者が占めており、武力紛争下の児童に関する国連の最近の報告書では、このところ児童が戦争の被害者になる傾向が強まっているという。

シリアやアフガニスタン、イラクのような長期化した紛争を含め、継続中の政治的、経済的、環境的危機によって、数多くの若者が故郷を追われている。2011年には、1400万人の若者が戦争や自然災害のために難民になることを余儀なくされている。

国連麻薬犯罪事務所(UNODC)発行の「殺人率に関する世界的調査」によると、15歳から19歳の男子が銃火器による殺人に最も脆弱であり、武力紛争下にある社会で暮らしている若い女性や女児は、パートナーによって殺害される「高いリスク」があるという結果が出ている。

世界の殺人被害者の43%は15歳から29歳の年齢層であり、南北アメリカの若い男性の殺人被害者は、世界全体の実に7分の1を占めている。

「こうした現実があるにも関わらず、青年には発言権が与えられていません。」と会議に参加した青年リーダーらは語った。

Ahmad Alhendawi, Secretary-General Ban Ki-moon’s first-ever Envoy on Youth
Ahmad Alhendawi, Secretary-General Ban Ki-moon’s first-ever Envoy on Youth

潘基文国連事務総長によって初の青少年問題特使に任命されたアフマド・アルヘンダウィ氏は、国連本部で先月開催されたこの会議で演説し、「平和と安全」の領域は伝統的に、専門家や外交官、政治家だけに開かれた排他的なクラブでのみ取り扱われてきた現実を嘆いた。

「世界中で火の手が上がっており、若者たちはこの火で焼かれています。戦争によって影響を受けた若者を、平和をもたらす議論に関わらせるべきです。」とアルヘンダウィ氏は語った。

アルヘンダウィ特使は、ヨルダンで最近開催された「若者、平和、安全に関するグローバルフォーラム」での議論を振り返って、世界中の約1万1000人の若者の声を取り入れた野心的な文書である「アンマン青年宣言」で打ち出された行動計画に着目するよう呼びかけた。

グローバルな政策枠組みを確立する

アンマン青年宣言の中で、国際社会に対する提案で主なものは、紛争、および、2017年までの紛争後のシナリオにおける、青年の「具体的なニーズや資産、能力、多様なアイデンティティ」の問題に対処するグローバルな政策枠組みの確立である。

Wikimedia Commons
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同宣言はまた、国連安保理に対して、「青年、平和、安全」に関する決議を可決するよう求める一方で、ジェンダー平等や社会経済的エンパワメントなど、青年層が抱いている特定の関心事項の他の領域に焦点を当てている。

実際、若い女性は、ジェンダーに関連した暴力やリプロダクティブヘルスに関連したリスクにさらされやすく、男性よりも倍の負担に直面している。

女性難民委員会」によると、1986年以降に紛争を経験した51か国の全てにおいて、若い女性に対する性的暴力が高いレベルで起こったという。

国連は、妊娠や出産に伴う問題が「途上国における若い女性の死亡原因の2番手になっており」、毎年数万人がなくなっている、としている。

毎年、途上国では、18歳未満の少女20万人が毎日出産している。

また現在の傾向が続くならば、現在から2030年までの間に、15歳から19歳の女性の実に1500万人が女性性器切除を強いられることになるだろう。

また10月13日に発表されたある調査報告書によると、とりわけ若年層は労働力から排除されやすいという結果が出ている。

「若年層雇用の解決に向けて」と題された報告書は、若年層は世界の失業人口の4割を占め、成人よりも4倍の確率で失業状態に陥る可能性があるという。

しかし、会議に参加した青年リーダーらは、若年層をこうした状況の被害者とばかり見ることの問題点を指摘した。

「並外れたことを成し遂げている普通の青年はたくさんいます。」「むしろ問題なのは、若年層を排除し、青年たちの声を聴かないようになかば意図的に作られている、国連組織を含めた社会・組織構造のほうです。」と、西アフリカのシエラレオネ生まれで、GEFI青年グループの議長であるチェノール・バー氏がパネルディスカッションの中で語った。

Chernor Bah, Chairman of GEFI’s Youth Advocacy Group (YAG)
Chernor Bah, Chairman of GEFI’s Youth Advocacy Group (YAG)

学校へ

バー議長は、マララ・ユスフザイ氏の勇気ある行動が世界に及ぼす波及効果について繰り返し言及しながら「#UpForSchool」のような活動の成功例を紹介した。これは、現在、86か国以上で500人の青年大使を誇る運動で、学校に通えない世界の5600万人を教室に戻すことを目的とした請願書に600万以上の署名を集めている。

バー議長は、「私たちには、若い人々を巻き込み、勇気ある行動をみんなで評価するような根本的なパラダイム・シフトが必要です。」「毎日のように、マララさんのような数多くの若者たちが、しばしば他人から見過されながらも断固とした行動を通じて、自らの権利のために立ちあがっているのです。」と語った。

政策決定のつながりの中に若者を巻き込む取組みを下支えするものは、世界市民教育(GCED)概念である。21世紀のあらたな種類のリテラシーを育てることを目的としている。

韓国のハン ジョンヒ国連代表部次席大使は、現在、新たな「持続可能な開発目標」に取り込まれた世界市民教育は、自分自身の他者との関係、地球との関係について考えるツールとして見なければなりません。」と語った。

破壊的な気候変動の差し迫る危機は言うまでもなく、世界がこれまで経験したことのないような政治的、経済的、技術的大変革の中に生きる今日の青年たちにとって、世界市民教育はオプションではなく、必要不可欠のものだ。(原文へ

INPS Japan

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開発・平和のカギを握る世界市民教育

太平洋島嶼国の人々が、「オセアニア市民」、「世界市民」について討議

【スバ(フィジー)IPS=シャイレンドラ・シン】 

「世界市民」概念に関する討論が様々な国際的な場で勢いを増しているが、従来太平洋島嶼国ではあまり検討の対象になってこなかった。

世界市民イニシアチブ」(TGCI)の共同創設者ロン・イスラエル氏によると、世界市民は、共通のグループアイデンティティを基盤にしながらも地域社会の枠を超えた発想をし、より広範で、生まれつつある世界コミュニティーの一員であることを自覚している、という。

Photo: Professor Epeli Hau’ofa | Credit: usp.ac.fj
Photo: Professor Epeli Hau’ofa | Credit: usp.ac.fj

太平洋地域では、トンガ王国の学者・哲学者の故エペリ・ハウオファ教授が「新しいオセアニア人」と呼ぶ共通の地域的なアイデンティティを提案するまでに至っている。これは、多様な国々や人種の一員としてではなく、太平洋地域共通の伝統と帰属意識を持った人々から成り立っている。

ハウオファ教授の考え方によれば、オセアニア人とは太平洋に住んでいるあらゆる人々を指し、民族や宗教に関わりなく、太平洋地域に帰属意識を持っている人々を指す。またこの枠組みによって、この半世紀以上にわたる太平洋島嶼民の「驚くべき移動性」を説明することもできる。この拡大バージョンのオセアニアは、「太平洋島嶼地域という用語で表される最大地域」よりもより広い範囲をカバーし、「南西はオーストラリアやニュージーランド、北東は米国やカナダまでを含む、海洋を超えた社会的ネットワークの世界」を形成する。ハウオファ教授は、住民にとって死活問題である太平洋の保護を含め、地域共同の利益を増進していくためには、共通で拡大された太平洋アイデンティティが必要不可欠だと考えていた。

共通の利益を求めて闘うために人々をつなぎ動員して力を得るという点は、「オセアニア市民」と「世界市民」の概念に共通する点である。ただし、世界市民はより拡大的なものだ。この考え方を主唱する人々は、平和で、寛容で、包摂的で、持続可能な社会に向けた構成要素として、正義や民主的参加、多様性、グローバルな連帯という普遍的価値に世界市民概念を結び付けている。

Pacific Islands Map/ Pacific Islands Forum Secretariat
Pacific Islands Map/ Pacific Islands Forum Secretariat

太平洋島嶼地域の識者らはこの概念に賛同してはいるが、それを実行するには特定の文化的、経済的、地理的、歴史的障害が立ちはだかる可能性があると考えている。南太平洋大学の元研究者(文学研究)のソム・プラカーシュ博士は、ある種の世界市民の価値のなかには、太平洋島嶼社会の文化的信念や哲学、ライフスタイルとは折り合わないものがあるとみている。例えば、平等主義は、フィジーの首長権力、トンガ王国の貴族制、西サモアマタイ(首長)制など一部の太平洋島嶼社会の階層的な秩序にとって有害だと見られている。

プラカーシュ博士はまた、「例えば、民主主義は、一般の民衆よりも権力と権威を与えられている伝統的な長からは必ずしも歓迎されるわけではありません。通常の太平洋島嶼国の文化が年長者や長に対して疑問を呈することに慣れるには、時間がかかるでしょう。この地域では、平和(世界市民概念の柱の一つ)は、しばしば、慈悲深い独裁者の下でより良く達成しうると論じられているのです。」と語った。

「その他にもいくつか明白な矛盾があります。フィジーのラトゥ・ジョーン・マドリウィウィ副大統領も指摘しているように、フィジーのような集団主義的な太平洋地域の社会では、集団の利益が個人の利益に優先されます。他方で、世界市民は、市民に対して『相互に関連しあう世界の本質に目を向け、世界的視野から開発の必要性を考えるよう吹き込む』ことで、彼らを変化の主体たらしめようとするものです。」

Three matai, the two older men bearing the symbols of orator chief status – the fue (flywhisk made of organic sennit rope with a wooden handle) over their left shoulder. The central elder holds the orator's wooden staff (to'oto'o) of office and wears an 'ie toga, fine matting. The other two men wear tapa cloth with patterned designs/ Public Domain
Three matai, the two older men bearing the symbols of orator chief status – the fue (flywhisk made of organic sennit rope with a wooden handle) over their left shoulder. The central elder holds the orator’s wooden staff (to’oto’o) of office and wears an ‘ie toga, fine matting. The other two men wear tapa cloth with patterned designs/ Public Domain

しかし、フィジーで学ぶ大学生ダイアン・マー氏のような人は、そうしたパラドックスを障害だとは見ていない。マー氏は、「太平洋地域も、地理的、文化的、哲学的差異を超えた共通のグローバルな諸問題によって他の地域と同様に影響を受けています。」と指摘したうえで、「世界市民とは、その理想や思考のプロセスが、貧困や気候変動、人権といった全般的にグローバルな諸問題を基礎としている人のことをいいます。多くの太平洋島嶼国の農村社会では、人々は気候変動のような問題や、貧困対策の必要性について高い意識を持っています。こうした問題は地元のレベルでは討議されており、そこから、村々がしばしばNGOと協力してそうした問題に対処しています。」と語った。

さらに、集団の連帯を基盤とした集団主義には、世界市民の「相互依存性」という概念(もっとも、世界市民モデルの場合は、単に「村」とか「氏族」のレベルではなく、「相互依存的な世界」を含みこんだものではあるが)と明確に並びあうものがある。国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)などの機関が支持している世界市民概念は、民衆の「個人および集合的な行動にはグローバルな影響力があり、自らの社会と地球のために積極的な行動に関与する責任がある」という考え方を推進している。

また、グローバルな問題に対処する集合的な責任という考え方は、太平洋島嶼地域の人々の間で共感を呼ぶ可能性がある。とりわけ、この地域で深刻な脅威と見られている地球温暖化海面上昇の問題に関しては可能性が高い。すでに10年以上にわたって、太平洋島嶼地域の歴代指導者が、様々な国際会議の機会をとらえて、先進工業国に対して、地球温暖化への責任を取り、二酸化炭素排出を削減する意味のある政策を採るよう強く求めている。

キリバスのアノテ・トン大統領がしばしば指摘するように、太平洋島嶼地域は地球温暖化に対してわずか3%の責任しか負っていない。しかし、多くの島々が海面上昇の「最前線」に立たされている。太平洋島嶼国の指導者らによる最近の会合で発言したフィジーのフランク・バイニマラマ首相は、「私たちを大災難に陥らせた」として先進工業国を非難した。また、「先進工業諸国は、地球の温暖化を引き起こしている過度の二酸化炭素排出をやめるよう、その経済と優先順位を再構成する必要があります。私たちを波間に沈ませてしまうのは、まったくもって非道徳的な行いです。国際社会は私たちを裏切らないでほしい。」と語った。

また、パプアニューギニアの首都ポートモレスビーで開催された太平洋地域の指導者による最近の会議は、より厳格な世界的目標を求める海抜の低い島嶼国の要求をオーストラリアやニュージーランドが阻止したことから、決裂に終わった。こうした立場の違いはますます深刻化しており、ある識者はこうした現状について「太平洋島嶼国の窮状に対してオーストラリアやニュージーランドが鈍い反応しか示さず、とうとう(太平洋島嶼国は)我慢の限界に達した」と説明している。

マー氏は、太平洋島嶼国が地球温暖化によって直面している窮状を「コモンズの悲劇」と呼んでいる。これは、一部の国の行動が他国(この状況を生み出した責任がない国も含め)にマイナスの影響を及ぼす状況を指し示している。

南太平洋大学の学者プラカーシュ氏は、オーストラリアとニュージーランドの地球温暖化問題に対する頑なな態度は、「おそらく、強国が太平洋島嶼国を『侮蔑』とまでは言えないとしても、これまで『無遠慮』に扱ってきた多くのやり方の最近の事例として考えることができます。」と語った。プラカーシュ氏はまた、「こうした扱いによって、太平洋島嶼国は『しばしば裕福国から発せられる、グローバル化というバラ色の発想』としてみなされるようになったものに対して、疑念を抱くようになっています。グローバル化の最も目につきやすくわかりやすい影響の例としては、太平洋島嶼国の社会をのみ込んでいる低俗なテレビ番組や携帯電話、ソーシャルメディアを挙げることができます。」と語った。

Wikimedia Commons
Wikimedia Commons

しかし、マー氏が指摘するように、太平洋島嶼国はある意味ではグローバル化から恩恵を受けてきた側面もある。さらに、グローバル化と世界市民は別の異なる考え方である。たしかに2つの概念は混同されやすいかもしれないが、実際、世界市民原則は、グローバル化の副産物である「コモンズの悲劇」のような状況に対処することを目的としたものだ。

現実には、太平洋島嶼地域がいかに小さく孤立していようとも、その運命はその他の世界の運命と結びあわされている。ハウオファ教授もそのことを明確に意識していた。ハウオファ教授は、「植民地宗主国によって作られた私たちのような小さな国々が、『太平洋の世紀』という大きな問題に、個々に向き合い取り組んでいくことなどできません。私たちは、『地図から消え去る』か、巨大な汎太平洋ドーナツのブラックホールの中に消えてしまいかねないのです。」と記しているが、その際彼が「世界市民」概念に沿って思考していたのは確かである。(原文へ

※シャレインドラ・シンは、フィジーの首都スバにある南太平洋大学芸術・法律・教育学部言語・芸術・メディア校のコーディネーター、上席講師(ジャーナリズム専攻)。この文章の見解は、同氏の雇用主である南太平洋大学の見解とは必ずしも一致しない。

翻訳=IPS Japan

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開発・平和のカギを握る世界市民教育

|フランス|気候変動会議の失敗を避けるべく、機運を高める

来月からパリで開催予定の第21回国連気候変動枠組条約締約国会議(COP21)は、国連会議としてはこれまでかつてないほど、年初から世界的な注目を集めている。このことは、気候変動の問題に、世界中の人々が大きな関心を向けつつあり、その中からユニークな形である種の世界市民性が育まれている証左といえるだろう。

【パリIDN=A・D・マッケンジー

有名なオルセー美術館近くのセーヌ川沿いを歩く観光客や地元民はいま、3か所の一風変わった場所で携帯電話を充電することができる。それは、太陽光で発電される街灯だ。

太陽光パネルが取り付けられたこの高いポールは、ここフランスの首都で国連の次の気候変動協議であるCOP21が開催されるのを前にして、気候変動問題への市民の意識を高めるべくフランスのNGO「国境なき電気技師たち」(ESF)が設置したものだ。

「気候変動との闘い、そして、世界の一部における電気不足の問題には解決策があるということを市民に示したかった」と語るのは、ESF広報担当のローラ・コルヌ氏である。

ESFはこの20年で、アフリカの農村地帯やヨルダンの難民キャンプ、ハイチ・ネパールでの震災後のテント設営地に、太陽光パネルを設置してきた。セーヌ川沿いに設置された太陽光発電の街灯は、気候変動問題に対する革新的な行動を募集したパリ市長の呼びかけに応えて提出された170件にも及ぶプロジェクトのうちのひとつである。

他方、この街灯からほど近い場所にあるのが、セーヌ川クルーズのための太陽光推進船に観光客が乗り込む乗船場である。雨の日には、冷たい風に観光客が震えていても、船自体はバッテリーに溜めたエネルギーで走ることができる。

一方、晴れた日には天井の太陽光パネルがとらえた力を推進力とし、乗組員たちは、太陽光技術と首都パリの「魅力」について乗客に語りかけるのである。

太陽光発電による街灯とクルーズ船は、COP21開催(11月30日から12月11日迄)に向け、気候変動問題が突き付けている深刻な現状を、世界の指導者や国際社会に理解してもらおうとフランスが取り組みを強化する中で実施された、人目を引く取り組みの一例である。

Franois Hollande/ Wikimedia Commons

フランスのフランソワ・オランド大統領は9月、閣僚が列席する中、COP21を成功させるための野心的な試みを開始した。しかし大統領は一方で、同会議が失敗に終わる可能性が現実にあると警告した。

オランド大統領は、「奇跡などありません…成功する可能性はありますが、失敗するリスクも大いにあります。」と、政治指導者、芸術家、科学者、CEO、非政府組織、学生などを集めてエリゼ宮で開催された半日間の会議で語った。

フランス政府は、NGOの他にも、数多くの会議やプロジェクトを支援している。そうしたなか、パリ市は、9月27日を、隣国のベルギーの首都ブリュッセルが数年実施してきた先例に倣って、新たに「ノーカー・デー」に指定した。

さらに、歌や踊り、芸術プロジェクト、市民行進、COP21記念切手の発行、フィットネス用の自転車でエネルギーを作って音を出すなどの革新的なベンチャーへの注目等を通じて、COP21に向けた機運が高まりつつある。

こうしたなか、フランスのローレン・ファビウス外相は、「動かそう:気候対策支援に関与する市民社会」という公開フォーラムを10月3日に開催した。地元の大学と新聞が共催した同フォーラムには、約500人が参加して気候変動問題について議論した。

また、11月1日に開催予定の「地球のための24時間瞑想」や、COP21開催まで毎月1日に断食を行うことを呼びかけている「気候のための断食」プロジェクトなど、市民によるユニークな行動イベントに参加することも可能だ。

「芸術を通じて行動を訴える人々」の中には、「アートCOP21」という集団もある。彼らは「気候変動の問題を人々の課題として取り組む全市を挙げた文化イベントを開催し、そこで積極的で持続可能な変化をもたらすための文化的な青写真を創出する計画を立てた。

アートCOP21のローレーヌ・ガーモンド代表は、「芸術家は時として、政治家の声が届かない人々にもメッセージを届けることができます。しかし、私たちのこうした試みが、来月にCOP21が閉幕する際に各国が合意に至るかどうかということについて、どの程度影響を及ぼせるかは分かりません。」と語った。

オランド大統領は、望ましい結果を得るための「成功への鍵」を握るのは、2020年以降、毎年1000億ドルが必要だとされている対途上国援助資金の問題を解決することにあると繰り返した。

この資金は、気候変動に対して脆弱な国々がこの問題に対処していくために必要不可欠なものだと考えられており、その資金集めについては、とりわけ10月半ばに開催される欧州評議会のサミットで議論されることになっている。オランド大統領は、「こうした手段の中には金融取引に対する課税も含まれます。」と指摘したうえで、フランスの取り組みについて語った。

オランド大統領はまた、気候変動が、紛争や「独裁者、テロ」と同じように難民を生み出していることから、「(気候変動に関する)資金調達で世界の難民問題の緩和につながる可能性があります。」と指摘した。

フランスのマニュエル・ヴァルス首相はさらに、「地球温暖化によって主に被害を受けているのは『最も脆弱かつ貧しい』人々であり、フランスは、この問題に対して行動を起こす『決定的な役割を担っています。』」と語った。

Victorin Lurel/ A.D. McKenzie of IDN

エリゼ宮での会議の参加者の一人でグアドループから来たビクトリン・ルレル氏は、IDNの取材に対して、地球温暖化が小規模な島嶼国家に与える影響について、「例えばカリブ海諸国は、温室効果ガスの主要な排出者でないにも関わらず、海岸線の喪失、激しさを増すハリケーンの襲来などの被害を受けています。」と語った。

「これは私たちにとって死活問題であり、カリブ海諸国は、誰が(地球温暖化の)大きな責任を負っているかという問題は別にしても、地球温暖化は普遍的な問題であるとの意識喚起を図っています。」と、フランス海外領土であるグアドループ地域評議会の会長であるルレル氏は語った。

フランスのエコロジー・持続可能開発・エネルギー大臣であるセゴレーヌ・ロワイヤル氏は、「市民社会の中で行動が『非常に盛んに』なってきていることを喜ばしく思います。この機運がCOP21に向けて、そしてその後も継続していくことを期待します。」と語った。

ロワイヤル氏は、人類が直面している課題をシンプルに表現した。すなわち、森林などの環境破壊を止める、海洋などの汚染を減らす、(温室効果ガスの)排出を減らす、資源の過剰搾取を止める、ということである。

Ségolène Royal/ Wikimedia Commons
Ségolène Royal/ Wikimedia Commons

フランス政府によると、COP21はフランスがこれまで主催した会議の中で最も重要なものになるという。それは、世界が難題に直面しているからというだけではなく、「数万人」もの人々が物理的に会議に参加し、同時に会議の経緯を注視することになるからだ。

フランスのNGOにとっては、COP21はまた別の意味で重要な機会になるという。つまり、フランスは、ドイツやスイスといった国に比べて、国民の環境問題への意識が低く、おそらく(今回の会議によって)フランス市民がNGOの意見に耳を傾けるようになるのではないか、と期待されているのである。

これまでの気候変動会議開催期間中になされた非公式調査では、例えば、パリの街中にいる人々は、気候変動問題や協議の行く末についてほぼ関心を示していなかったという。多くの人々が、炭素ガス排出に向けた交渉や、地球の温度を「2度上昇」以下に抑える国際的目標について、何も知らないと答えている。

「私たちの意見に十分耳を傾けてもらっているとはまだ考えていません。」と語るのは、世界自然保護基金(WWF)フランス支部で自然保護プログラムの責任者を務め、NGOネットワークの代表でもあるダイアン・シミュー氏である。

有名なフランス人監督による環境についての映画を含め、芸術面から後押しすることは有効だろうか?

この問いに対してオランド大統領は9月に次のように述べている。「もう遅いし、恐らくは遅すぎるのかもしれません。」「したがって、緊急の行動が求められています…今さら知らなかった、などと言うことはできないのです。」(原文へ

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カザフスタン・日本、核実験禁止条約発効に向け「攻勢」へ

【国連IDN=ファビオラ・オルティス】

国連が創立100年を迎える「2045年までに核兵器なき世界を実現するという目標を達成すべく、より果敢に取り組んでいきたい。」と中央アジアのカザフスタン共和国のエルラン・イドリソフ外相が宣言した。

Erlan IDRISSOV/ CTBTO
Erlan IDRISSOV/ CTBTO

イドリソフ外相の発言は、29日にニューヨークの国連本部で開催された第9回「包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進閣僚会議」でのことである。

日本の岸田文雄外相と共同議長を務めたイドリソフ外相は、各国の代表に対して、法的拘束力のある核実験禁止実現を追求するにあたっては「遠慮なく、時には外交儀礼をかなぐり捨てる姿勢すら辞さない」であろうと指摘したうえで、「両国(カザフスタンと日本)は、核兵器を廃絶することに関しては挑戦的になる道義的権利があります。」と語った。

共同議長の岸田外相は、核兵器廃絶へ向けた国際社会の取り組みの中で、被爆国である日本が歴史的役割と義務を担っていることを強調するとともに、広島・長崎への原爆投下から70年という節目と、核爆弾の生存者(ヒバクシャ)の経験に言及した。

Fumio Kishida/ CTBTO

会議には、批准国の外相が多数参加したのに加え、欧州連合フェデリカ・モゲリーニ外務・安全保障政策上級代表、デズモンド・ブラウン元英国防相、日本原子力委員会委員の阿部信泰大使、アンゲラ・ケイン前国連軍縮問題高等代表、CTBTOのウォルフガング・ホフマン名誉事務局長など「賢人グループ」(GEM: Group of Eminent Persons)のメンバーも参加した。

CTBTの関連条項にちなんで「第14条会議」とも称されるこの会議では最終宣言が採択され、「普遍的で効果的に検証可能な条約は、国際的な核軍縮及び核不拡散体制の中核を成す要素である」ことが確認された。

ローマカトリック教会のフランシスコ法王はこうした熱烈なアピールを支持している。25日には国連総会で「核兵器なき世界に向けて行動する緊急の必要があります。」と各国代表らに対して演説した。

Pope Francis addressing the General Assembly at the United Nations headquarters in New York, USA/ CTBTO

国連の潘基文事務総長は会議の開会にあたり、「CTBTは核兵器なき世界という私たちのビジョンの実現にとって極めて重要であり、国際社会がこれ以上核兵器の影の下で生きることを余儀なくされないようにするものです。」

潘事務総長はまた、「CTBT準備委員会の元議長として、私は個人的に、この条約の発効のためにあらゆる努力を払いたいと思っています。」と公約するとともに、自らの名前が「BAN」(「禁止する」という意味の英語)と綴ることに引っ掛けて、「私はあらゆる核実験を禁止する(BAN)決意です。」と冗談めかして語った。

CTBTO準備委員会のラッシーナ・ゼルボ事務局長はIDNの取材に対して、「条約発効のためにより多くのことがなされ、各加盟国が真のリーダーシップを発揮することを強く希望しています。」「2016年は、CTBTが署名開放されてから20年目になります。しかしこれは祝福すべきことではありません。なぜなら20年経っても、未だに条約発効促進のために第14条で定められた会議をこうして開催しなければならないからです。」と語った。

包括的核実験禁止条約は1996年に署名開放され、核兵器の開発に制約を課すと同時に、世界全体で全ての核爆発実験を禁止している。

しかし、8か国がまだ署名・批准していないために、条約は発効していない。その8か国とは、中国、エジプト、インド、イラン、イスラエル、パキスタン、米国、朝鮮民主主義人民共和国である。これらは、1990年代の条約最終交渉時において核技術を持っていた44か国のリストに含まれる国々である。

CTBTは、多数の監視施設から成るグローバルネットワークを構築し、世界のいかなる場所においても疑わしい事象に対する現地査察を容認している。取り決め全体は、前文、17の条項、2つの附属書、検証手続きについて定めた議定書から成っている。

イドリソフ外相は、「ソ連が崩壊してカザフスタンが独立した24年前、わが国には1400発の核兵器と核実験場があり、生物兵器・化学兵器の生産施設も存在しました。」と語った。

イドリソフ外相はまた、「独立後最初の10年で、カザフスタンはすべてのソ連の兵器システム・施設を解体することを決意し、重要な核不拡散条約署名の先頭に立ちました。」「世界をより安全な場所にすると決意し、その決断は他国の刺激になりました。核兵器なき世界の達成は困難な任務です。歴史の浅い国として、わが国は全ての国々が軍縮に向かうための良き刺激になりたいと考えています。日本とカザフスタンは、核兵器という軍事主義がもたらす最も醜悪な影響を被りました。カザフスタンで実施された500回におよぶ核実験は、この種の兵器がもたらす最も破壊的な危険性を思い起こさせるものです。」と語った。

会議の共同議長である日本の岸田外相は、広島(同氏の出身地)と長崎への原爆投下から70年にあたることを想起した。

Photo: Hiroshima Ruins, October 5, 1945. Photo by Shigeo Hayashi.
Photo: Hiroshima Ruins, October 5, 1945. Photo by Shigeo Hayashi.

岸田外相は、「核実験の禁止は核軍縮の効果的な柱のひとつであり、CTBTは核実験禁止という規範を強化するのに貢献してきました。条約の早期発効に向けて私たちの取組みを強化しなくてはなりません。」を語った。

岸田外相はまた、「国際監視制度(IMS)の完成に向けた更なる構築を促進し、中でも同制度を支える各国の国内データセンター要員養成のための支援を促進することが重要です。」と語った。

IMSは、条約遵守を検証し、条約違反を探知・確認する世界大のネットワークである。今日、IMSは8割完成しており、254の監視ステーションからなる。放射性核種研究所16か所のうち、10か所がすでに認証されている。

CTBTの実行ための必要な準備を進めるために、包括的核実験禁止条約(CTBTO)準備委員会が1996年にウィーンに設置されている。

ゼルボ事務局長は、より「果敢なアプローチ」が必要だというカザフ外相と同意見だ。「条約を完成させて、通常の外交的手法、すなわち、すべての国に批准を呼びかけ、2年間待ち、また同じようなレトリックを繰り返すといった現状を打破することができるように、建設的で果敢なやり方で行動することを望んでいます。国際社会には、具体的な行動計画と、達成すべきことについての明確なスケジュールが必要です。」とゼルボ事務局長は付け加えた。

CTBTO準備委員会は、すべての国が条約を批准した際に創設されるものとされている。しかし、ゼルボ事務局長は、かりに組織が公的には創設されていないとしても、すでに、あたかも組織が存在するかのごとく機能しているという。

「私たちは、効果的に機能している400人以上の集団です。人々に関与し、納税者のお金を使わせてもらい、国際監視制度のようなインフラを構築した上で、条約発効への準備ができていない、とは言えないでしょう。」とゼルボ事務局長は語った。

ゼルボ事務局長は、CTBTO準備委が北朝鮮の核実験を探知した2006年が画期の年であったと考えている。「私たちは国際社会に対して、効率的に核爆発実験を探知できることを証明しました。この取り決めの下で必要とされるもの、すなわちデータを諸国に効果的に提供する枠組みがあり、私たちの情報提供によって、いかなる核爆発実験も探知されずに行われることはないことを示したのです。」

Des Browne/ Chatham House

CTBT賢人グループの一員で「核脅威イニシアチブ」の副議長を務めるデズ・ブラウン氏によると、その答えは依然として政治の中にあるという。米国はCTBTの最初の署名国となり(1996年9月24日)、条約を推進した国のひとつであったが、国内政治のために未だに批准が済んでいない。

「またいくつかの障害は国際政治に関係している。中国の場合、米国が批准したらその直後に中国も批准するとの意思を鮮明にしている。もし中東諸国の抵抗を排することができたなら、(批准)は芋づる式に発生するかもしれません。同じことは、インドとパキスタンの場合にも言えます。つまり地域政治が密接に関係しているのです。」とブラウン氏はIDNの取材に対して語った。

米国のアントニー・ブリンケン国務副長官は、「オバマ政権がCTBTを推進して上院からの批准を求める政策に変わりはありません。」と指摘したうえで、「明確かつ説得力のある証拠を見れば、包括的核実験禁止条約を発効することが米国の安全保障にとっても、国際安全保障にとってもよいことであると考えています。この条約は、核兵器への依存を減らし、核軍拡競争のリスクを減ずる重要な一歩です。」と語った。

Deputy Secretary of State Antony J. Blinken/ US State Department
Deputy Secretary of State Antony J. Blinken/ US State Department

ブリンケン副長官はまた、「米国は条約にコミットし続けており、批准が必要だとの訴えを国内で積極的に行っています。他の国々もまた、批准を追求し、どうすれば批准できるかについての計画を明確にすべきで、他の国がどうするかを待つ理由はありません。CTBTは理論的な世界に関する抽象的な概念ではありません。それは、自らの市民にとっての、そして、世界の民衆に対しての、平和と安全をもたらす明確かつ確実なステップなのです。」と付け加えた。

世界の歴史は、核兵器が人間の健康と環境に影響を及ぼす破壊的かつ無差別的なものであることを証明している。日本の原子力委員会委員長代理でありCTBT賢人グループの一員でもある阿部信泰氏は、「民衆はこの種の兵器は今後二度と使われてはならないと理解しています。」と指摘した。

「もし米国がよく考え、自国にとっての長期的な利益を考えるならば、CTBT批准を支持すべきです。なぜなら核兵器はほぼ使用が不可能だからです。それでは、なぜ核実験を続けなければならないのでしょう? 米国はもはや核実験を行う必要がないのです。彼らはすでに1000回も核実験を行ってきました。これは、各国の中で最大の数です。時代は変わったのです。核兵器は、無駄で、使いようのない資産になってしまうでしょう。」と阿部氏は語った。

核実験と核兵器のない世界は2045年までに実現可能だと、デズ・ブラウン氏は考えている。30年前、米国のロナルド・レーガン大統領とソ連のミハイル・ゴルバチョフ共産党書記長との会談で、すべての弾道ミサイルを禁止することが提案された。会談が行われたのは1986年のことだ。

ブラウン氏はこう主張している。「その10分間、両首脳は核兵器なき世界の可能性を開きました。個人的には、現在の政治状況はステップ・バイ・ステップでなければならないと思いますが、それでも可能ではあります。それは、思いがけず起こるものですし、物事は急激に変わりうるものです。これまでの私たちの取り組みが失敗だったとは思っていません。」とブラウン氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan 

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SDGs達成のため、韓国の「セマウル(=新しい農村)運動」から学ぶ

【国連IPS=アルナ・ダット、バレンティーナ・イエリ】

世界の33億人以上が農村地帯に暮らしている。従って、農村開発は「民衆・地球・繁栄のための行動計画」とされている『持続可能な開発のためのアジェンダ2030』を実現しようとするならば、極めて重要な意味合いを持ってくる。

世界の指導者らがニューヨークの国連本部で25日に「持続可能な開発目標」(SDGs)を全会一致で採択した翌日、経済協力開発機構(OECD、加盟34カ国)開発センターと韓国外務省、国連開発計画(UNDP)が合同で、途上国でSDGsを達成する方法について討論する画期的なイベント(「セマウル運動高官級特別行事」)を開催した。

焦点があてられたのは、韓国の「セマウル運動」の成功から刺激を受けた、「新たな農村開発パラダイム」と「包摂的・持続可能な新共同体モデル」である。

SDGs for All
SDGs for All

2004年1月から06年11月まで韓国の外相だった国連の潘基文事務総長は会合で発言し、「指導者らは、すべての人々にとっての尊厳ある生活を創り出すと誓いました。私たちは、農村地帯の人々も含め、『誰も置き去りにしない』と約束したのです。地域開発なくしてはこのグローバル運動の進歩はあり得ません。」と語った。

潘事務総長は、韓国が国連に提示したこの開発モデルを歓迎し、「韓国の農村地帯は貧困から繁栄の地帯とへ変貌しました。セマウル運動にはSDGsの究極的な目標と共通する部分があります。」と指摘したうえで、「教育、勤勉、自助、相互協力を主要原則とするセマウル運動は、世界の持続的な繁栄のための新たな農村発展パラダイムになる可能性を秘めています。」と語った。

またこのイベントには韓国の朴槿恵大統領も参加した。朴大統領は、他の国々のそれぞれの条件に見合うように「新農村運動」モデルを適用させるべく、韓国がUNDPやOECDといかに協力しているかについて説明した。

「セマウル運動は韓国国民の生活を向上させ、私たちの社会を変えました。私たちはかつて世界のなかでも最も貧しい国の一つでした。しかし今や、私たちは世界の経済大国トップ15の中に入り、主要な国際支援ドナーの上位を占めています。」と朴大統領は語った。

韓国の開発の歴史は韓国の成長産業が牽引したとされることが多いが、国連韓国政府代表部のハン・ジョンヒ次席大使は、「セマウル運動は1970年代の成長をもたらした重要な要素であり、今日の急速な都市化と産業化の時代における、これからの環境的に持続可能な開発にとって刺激になるものです。」と語った。

Ambassador Hahn, Deputy Permanent Representative of the South Korea Mission to the U.N., with UNSG Ban Ki-moon. Source UN photo/ Mark Garten

「この運動は、あらゆる人が、絶望から希望へ、貧困から繁栄へとヴィジョンを変えるために必要とされるものです。」「韓国は世界の全ての国々と、この開発モデルから得た経験を共有したいと考えています。」とハン次席大使はIPSの取材に対して語った。

ハン次席大使はまた、「セマウル運動を主流の開発戦略から分けている顕著な側面は、エチオピアやウガンダ、ルワンダ、タンザニア、アフガニスタン、ミャンマー、ラオス、カンボジアなど、世界30か国において実施されてきた開発プロジェクトの中に統合されています。」「そこには、『やればできる』精神や、ジェンダー平等や人権に関する啓蒙的な観点を促進するなどの戦略が含まれているのです。」と語った。

朴槿恵大統領の父親である朴正煕大統領(当時)は、1970年にセマウル運動を開始し、各村にセメントと鉄を与え、村人が資源をうまく利用した程度に応じて村の順位付けを行った。当時の韓国政府はこうして、上位にランクされた村々にさらに資源を与え、村人が近隣の村々に対抗して最大限協力しあって努力するインセンティブと連帯感を創出した。

結果としてこの事業は、国民の間に連帯感を生み、地域と国をより住みやすい場所にしようとする流れに自らが加わることができるとの信念を民衆の間に育むことに成功した。また、セマウル運動に対する人々の熱狂を盛り立てる手段として、旗や歌、功労者に対する叙勲といった動機づけの手段が効果的に用いられた。

"교육 사진" by Icestar912 - Own work. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Commons
“교육 사진” by Icestar912 – Own work. Licensed under CC BY-SA 3.0 via Commons

「私たちはこの経験から、音楽がこの開発プロセスにおいて大きな要素を占めると考えています。」とハン次席大使は語った。当時人々に最も親しまれた2曲の歌謡のうちの一つは、朴大統領自身が作曲したものだった。ハン次席大使は当時を振り返り、「『Jal Sala Boseh』という歌は、『豊かで繁栄する』というメッセージを送ったものであり、『Saebyuck Jong-i Ulryutneh』は『新しい一日がやって来た。さあみんなで新しい村を建設しよう』と歌ったものです。」と語った。

「地方機関を通じた自立、海外援助にできるだけ頼らない国にしようという考え、そして最終的には政府への依存を減らそうという考えに対する強い信念は、セマウル運動における重要な成長戦略でした。それは、より持続可能なプロジェクトにつながっていき、80年代初頭までには、政府予算よりも、地域の資源と資金に支えられるようになっていきました。」とハン次席大使は語った。

韓国政府の政策は、プロジェクトを実行する地方の公務員と住民を中央政府と結びつけるセマウル訓練センターの設置につながり、地方・中央の訓練組織における女性向けの指導訓練も行なわれた。各村からは12人の代表が出されたが、政府は、そのうち少なくとも1人は女性にすることを義務づけたことから、女性のエンパワーメントにつながった。

セマウル運動の経験は、その他の国々でもうまく再現することが可能だろうか? OECD地域開発センターのマリオ・ペッチーニ所長は「それは可能です」と指摘したうえで、「世界の農村人口33億人のうち92%は途上国に暮らしており、2028年までにはさらに数が増えると見られています。従って、「農村の視点」で見ることは、SDGsの実行と成功にとって不可欠です。」とペッチーニ氏はIPSの取材に対して語った。

Mario Pezzini, Director of OECD Development Centre, Source : OECD Dev. Centre
Mario Pezzini, Director of OECD Development Centre, Source : OECD Dev. Centre

貧困層の大多数は農村地帯に暮らしており、拡大する不平等や、都市が農村人口を吸収できないという制約と闘っている。

こうした人々は環境や社会、経済面で不安定な現実に直面しているため、彼らを見捨てることはできない。「農村開発とは、農業のみと結び付けられるものでもないし、衰退と結び付けられるものでもないということを心に留めておかねばなりません。」とペッチーニ氏は説明した。

「農業は農村経済の重要な部分を占めています。農業の生産性を向上させれば、必ず農村人口の過剰につながりますが、それは必ずしも農業部門のみの雇用で吸収できるわけではありません。農村開発を議論する際には、農業を含めた地域に根差した経済を語ることが重要ですが、同時に非農業雇用など、それを超える議論も必要なのです。従って、農村開発は必ずしもそのまま農業開発、或いは、工業開発を意味するものでもないのです。」とイタリア出身のOECD開発センター長は語った。

これは、政策決定への革命的なアプローチにつながる。

セマウル運動を基礎にした新たな農村開発のパラダイムが含意すべきものは、「さまざまな活動を考慮に入れた、複数の分野、複数の主体、複数の次元にまたがった地方・地域開発の新しいタイプです。」とペッチーニ氏は語った。

「新たな政府のアジェンダは、政府による様々なタイプの計画的な介入を必要とする、農村地帯の多様な資産に焦点を合わせるべきです。中央政府が、地域の住民や地元の知恵を考慮に入れず、一般的な枠組による政策を進めれば、失敗する可能性が高くなります。」とペッチーニ氏は付け加えた。

「一つの主体だけで事を為し得ることはできません。しかし、もし公的部門を効果的なものにしようとするならば、民間部門や労組、一般市民を巻き込まねばなりません。ここで重要な点は、まだ使われていない資産の価値をいかに定めるかということにあります。」とペッチーニ氏は強調した。(原文へ) 原文掲載日09.30.2015

翻訳=IPS Japan

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【国連IDN=ファビオラ・オルティス】

持続可能な開発目標(SDGs)とは、ミレニアム開発目標(MDGs)という「未完の仕事を終わらせる」ためのもの―こう語ったのは、ポスト2015年の開発計画に関する潘基文国連事務総長の特別顧問であるアミーナ・モハメッド氏である。

国際社会は、ニューヨークの国連本部で開催された「持続可能な開発に関するサミット」(9月27日~29日)において、2030年までの17の新たな開発目標と169のターゲットを採択した。今年で期限を迎える8つのMDGsに替わって、ポスト2015年のアジェンダはより多い目標数を定めた。

国際社会は、今後15年間で世界が優先すべき課題とその範囲を定める作業に実に3年半を費やした。

モハメド特別顧問は、国連での記者会見において「今般の開発目標は、世界が直面している諸問題に対して対症療法的な対応に留まりません。」と指摘したうえで「私たちは問題の表面的な現象ではなく根本原因について議論していきます。MDGsは一定の成功を収めました。もっとも仮にMDGsがあまり機能していなかったら、その後継目標について話し合うこともなかったでしょう。ただし(期限を迎えた)MSGsは未完の仕事のままなのです。」と語った。

「今日の世界は、今後15年間で何をすべきかについて少数の人々が世界に処方箋を提示した2000年のMDGs発表当時とは、大きく違ってきています。」「今日、私たちが手にしているのは、普遍的な開発目標です。つまり、このアジェンダはみんなのものであり、互いに密接な関連を持っていると誰もが認める世界の諸問題に関する開発目標なのです。SDGsは、2030年までにいかにして貧困を根絶していくか、そして数多くの複雑な問題にいかに対処していくかについての、人類の共通のビジョンに対する回答なのです。」と、モハメド氏は強調した。

世界資源研究所(WRI)キティ・ファンデルヘイデン氏にとっては、SDGsは革命とまでは言えないが、本質的に革新的な内容を含むものだ。「SDGsは、私たちの経済や暮らし、生態系をも変える可能性を持っています。また17の目標はMSGsが成しえなかったこと、つまり『誰も見捨てない』という目標を目指していくことになります。これは、一歩前進だと思います。」とファンデルヘイデン氏はIDNの独占インタビュー対して語った。

「持続可能な開発」とは、経済・環境・社会の三本柱の間のバランスを意味する。ヘイデン氏によると、グローバル経済がかなり成長した過去数十年において(世界のGDPは1990年以来3倍になった)、世界は極度な貧困を半減させることである程度の平等は達成したが、ジェンダー平等や女性の性と生殖に関する健康の面においては依然として大きな課題を抱えているという。

「私たちは、経済は成長させてきましたが、経済的・社会的富を世界に平等に配分することには失敗してきました。その結果、深刻なニュースを目の当たりにしています。つまり、生物多様性の喪失スピード、土壌の劣化、気候変動、海洋の酸性化、飲み水の不足、これら全てが加速度的に悪化しているのです。」とファンデルヘイデン氏は語った。

モハメド特別顧問によれば、MDGsは、何が人々を経済から排除し、なぜ貧困があるのかという問いについて、「根本原因」に目を向けなかったし、より広く、より統合的な視野に対応することができなかった、という。

「健康に関しては、HIVや結核などの疾病には何とか対応してきましたが、その中身は黙々と対処療法に終始したもので、保健医療制度には目を向けていませんでした。そのためエボラ出血熱の大流行が起こり、従来の脆弱は保険医療制度では十分な対処ができず大きな後退を余儀なくされたのです。」「私たちは正面から問題に対処しようとはしましたが、根本原因には触れませんでした。今後はこのような失敗を繰り返さないためにも、応急処置に留まらず、さらに一歩先に踏み込んでいかなければなりません。」と、モハメド特別顧問は語った。

Two health care workers clean their feet in a bucket of water containing bleach after they leave an Ebola isolation facility during an Ebola simulation at Biankouma Hospital in Côte d’Ivoire. Credit: Marc-André Boisvert/IPS

しかし、市民団体には、新しい開発目標について、特にその「履行」に関して、懐疑的な見方もある。

世界自然保護基金(WWF)ディオン・ネル氏は、SDGsの今後の見通しについて、「MDGsでは大きな進歩もありましたが、今後環境という要素をしっかり織り込まなくては、これまでに得たものを失ってしまう大きなリスクがあります。究極的には、この開発アジェンダは、謳われている文章によってではなく、それらが実際に行動に移されかどうかによって判断されなければなりません。」と語った。

ネル氏は記者たちに対して、「現状を見る限り世界はもはや後戻りできない岐路に立たされており、今後の見通しについて「きわめて悲観的」にならざるを得ない数多くの理由があります。」「例えば、人類は毎年地球の一年分の資源を8か月で消費し続ける一方で、重要な生命の生態系の6割が衰退しています。また、2015年は史上最も暑い年となりました。」と語った。

他方で、市民団体は変化の兆候も感じ取ってもいる。「この新しいアジェンダは、地球を変革するための、文字どおり草の根の実行計画です。やらねばならない仕事は多いが、世界を変革するための第一歩となるものです。私たちはこのプロセスを自分たちのものにしなくてはなりません。このアジェンダは完璧ではないかもしれないが、それでも基礎から積み上げて作り上げてきたものです。」とネル氏は強調した。

一方インドネシアの人権活動家エニ・レスタリ氏の意見では、「SDGsには矛盾があり、移民のニーズに対応できていない。」という。

Eni Lestari, Ketua International Migrant Alliance (IMA)
Eni Lestari, Ketua International Migrant Alliance (IMA)

「数多くの人々が、開発やアグリビジネス、オイルプランテーション、鉱山、不動産開発等のために土地を追われて貧困に陥っています。彼らは、安価で搾取される労働力になることを余儀なくされており、その中から多くが難民になるかもしれません。また多くの人々が、気候変動や災害で土地を追われて、基本的な市民の権利を拒絶してきたグローバル化の最下層を構成しつつあります。」と国際移民連合(IMA)の議長を務めるレスタニ氏は批判した。

レスタニ氏はまた、国連から報道している会場の記者らに対して、「一部の開発目標は一般的な不平等の問題に対応していますが、真の変化を生み出すための財政的な確約は未だに存在していません。」「この開発アジェンダの中に、貧困の原因となるシステム自体を変革するよう諸政府に求めるものはありません。」と語った。

彼女の意見では、民間部門と企業がSDGsの資金面を見るようになれば、問題の根本原因に適切に対処されないリスクがあるという。

Paul O’Brien/ Oxfam America
Paul O’Brien/ Oxfam America

SDGs実現のためのコストがいくらかかるのかということと、国際ドナーの政治的意思との間には、未だにギャップがある。「このギャップは巨大で、毎年数兆ドルという規模の額にもなります。」とオックスファム・アメリカの政策・キャンペーン担当副責任者のポール・オブライエン氏は語った。

オブライエン氏によると、とりわけ途上国の国内支出に対するインセンティブを考えれば、SDGsの財政面を賄う資金は十分にあるという。

「目標のすべてを達成するための時間と資金はあります。」とオブライエン氏は断言した。問題は、各国政府に政治的意思が十分にあるかどうかだ。オブライエン氏はこの点について、「(サミットに出席した)全員がそれぞれの国に急いで帰って、目標達成のための投資を始めるかといえば、そうは思えません。」と語った。

モハメド特別顧問によれば、その答えはグローバルなパートナーシップを形成していくことにあるという。「この世界には数兆ドルの資金が存在します。それは、プライベート・エクイティ・ファンドや様々な投資資金源のなかに眠っています。私たちは、それを引き出す鍵を見つけなければなりません。SDGsを実現する資金は確かに存在するのです。」

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【国連IPS=タリフ・ディーン】

9月27日まで3日間に亘って開催された「持続可能な開発に関するサミット」(過去最多の世界150か国以上の首脳が出席)において、前評判が高かった「持続可能な開発目標」(SDGs)が全会一致で採択された。この新開発アジェンダは、前代未聞の人類への素晴らしい貢献だと謳われている。

サミットの開会式で演説した潘基文国連事務総長は、「17の目標から成るSDGsは、あらゆる形態の貧困をなくすための『ポスト2015年開発アジェンダ』の不可欠の一部を成すものです。」と語った。

潘事務総長はまた、「『持続可能な開発のためのアジェンダ2030』の試金石は、『履行』にあります。あらゆる場所の全ての人々の行動が必要です。17の持続可能な開発目標は、私たちの指針、つまり、人類と地球にとっての『ToDoリスト』であり、成功への青写真なのです。」と語った。

しかし、今後15年かけてSDGsを実行し、貧困や飢餓、ジェンダー差別、病気の蔓延、環境の悪化をなくすことなど、グローバル社会の根本的な変革を2030年までに実現するには、実際に何が必要とされる条件だろうか?

それは政治的意思だろうか?それとも、 国内資源や政府開発援助(ODA)の上積みだろうか? 或は民間投資の拡大だろうか? それともその全てだろうか?

政府間のSDGs協議プロセスの共同議長であったケニアのマチャリア・カマウ国連大使は先月の記者会見において、「『持続可能な開発のためのアジェンダ』の実行には、毎年3.5兆ドルから5兆ドルもの巨額の費用がかかる可能性があります。」と語った。

オックスファム・インターナショナルのウィニー・ビヤニマ代表は「新たに採択された『持続可能な開発目標』は、文書の上では野心的なもので、インパクトの点で歴史的なものになる可能性があります。あらゆる国における極度の貧困や飢餓を単に減らすだけではなく根絶するという目標を掲げることで、従来の応急措置的な解決策からさらに踏み込んだものにしようとしています。」と指摘したうえで、「その中で大事なことは、最も裕福な人々が特権に居座ることを許すのではなく、社会の他の人々との関りを持つように引き戻してこられるかどうかにかかっているでしょう。」と語った。

欧州環境ビューロー」グローバル政策・持続可能性のディレクターであるレイダ・リノート氏は、「17の目標は政策決定に際して一層の熱意と一貫性を引き出す可能性がありますが、『持続可能な経済成長』の目標がその他の目標を損なうかもしれません。」と指摘したうえで、「地球の保持能力は向上しておらず、一部の国々は、その他の国々がベーシック・ニーズを満たせるよう、資源の利用を相当程度に減らし、より平等な資源分配を実現する必要があるのは明白です。」と語った。

「(欧州で暮らす)私たちは、気候と貧しい国々の発展を犠牲にして、過剰消費を続けています。これこそが、ますます希少になっている資源を巡って紛争を拡大させる要因となっているのです。」

「欧州委員会は、『欧州2020戦略』と『欧州連合(EU)持続可能な開発戦略』を間もなく見直しSDGsの履行に関する行動計画を策定する予定であることから、EUがSDGsとそれに合わせて取り組み方を変える必要性を理解していることを示す絶好の機会を得ることになります。」とリノート氏は語った。

SDGsは現実的に今後15年で達成可能かという質問に対して、CIVICUS(シビカス/市民社会の世界的連合組織)の広報・キャンペーン責任者ズベール・セイード氏は、「SDGsはミレニアム開発目標よりも範囲がずっと広く、先進国と途上国の双方に適用されるという意味で普遍性もあります。」と指摘した。

Zubair Sayed/ CIVICUS
Zubair Sayed/ CIVICUS

しかし、SDGsの履行に関しては2つの問題点があるという。

セイード氏は、「各国政府に財源があるか、そしてより重要なことは、履行する意思があるかどうかという点です。」と指摘した。

「あらゆる文脈において共通しているのは、SDGsの成功は、各国の政治的意思にかかっているということです。つまり各国政府が、①これらの目標を真剣に受け取るか、②自国の開発計画の中に変化を生み出すような目標を入れ込めるかどうか、③必要な資源をそのために配分できるかどうか、④設計・実行・監視の全側面において市民と市民社会を関与させられるかにかかっているのです。」

「また、これらの目標を下支えするために、国際社会が関連指標を確定することも重要です。」

2030年に向けて何が最も必要とされているかという問いに対してセイード氏は、「SDGsの成功は、政策決定者が、変化を生むような国家目標を設定してその達成のために財源を割り当て、目標設定や報告、進展状況の監視において市民を完全かつ意味ある形で関与させ、多国間のフォーラムや協議プロセスにおいて市民社会を平等なパートナーとして関与させることを通じて、これらの目標を真摯に受け止め、履行する意思を示す程度にかかっています。」と語った。

「また、各国の指導者が、SDGsの有意義な履行ができるよう、世論の支持を確保する努力も極めて重要です。」とセイード氏は付け加えた。

世界自然保護基金(WWF)のヨランダ・カカバドス会長は、「今後数か月で最も重要なことは、各国政府がこれらの目標達成のためにいかに貢献できるかを考え、それぞれの取組みについて報告できるように基準と指標を設定することです。」と語った。

カカバドス会長はまた、「人類はSDGsを成功させる見込みがあり、ようやくゴールも見えてきています。しかし、これを15年で成し遂げようとするならば、まずはランナー(=各国政府)がスタートラインに立つ必要があります。」「そのためには、それぞれの国が個別の開発計画を通じて国家指標と履行計画を策定するよう求められています。」と指摘した。

来年3月には、国連が今後、SDGsの世界的な進展状況について毎年報告できるように、各国が一連の指標に合意する予定だ。

「指標の問題は困難な課題ですが、もし各国が財政危機を解決するために団結できるのであれば、指標を生み出すことも可能でしょう。重要なのは、各国が連携していくという点と、データに関して出来るだけ透明性を確保するという点です。」とカカバドス会長は語った。

世界資源研究所」の副所長で運営責任者のマニッシュ・バプナ氏は、「SDGsは新たに大胆な国際開発アジェンダを設定した素晴らしい業績です」と語った。

SDGsは、世界の大きな変化を反映して、すべての国に適用されているほか、その中心に環境の持続可能性という価値を据えている。

「SDGsは、地球のことを考えることなしに、極度の貧困を根絶したり、経済成長を確保したりすることはできないとの理解の上に立っています。」

「幸い、貧困削減と経済成長、環境保護が互いに関連を持ちながら進行する事例が増えてきています。例えば、人間に焦点を当てたコンパクトシティの形成、浸食された土地の再生、低炭素エネルギーへのアクセスの拡大などである。」

「もちろん、優れた開発目標を掲げるだけでは不十分です。このビジョンを現実に追求できるか否かは、政府や、民間部門・国際機関・市民社会の行動にかかっています。優れた政策を掲げ、持続的な投資を促し、進展状況を測定することで、各国はこれらの目標を達成する軌道へと私たちを導くことができるのです。」

「SDGsは、もし成功すれば、開発における大きな変化を生むことができるでしょう。今日の不均衡なアプローチから、すべての人々の利益になり、同時に地球を守ることもできるようなアプローチへと転換を図ることが可能になるでしょう。」

Adriano Campolina/ Action Aid

アクションエイド」のアドリアーノ・カンポリーナ代表は、IPSの取材に対して、「SDGsは、貧困の原因を確定した点で一歩前進ですが、世界の仕組みを支配しているルールを変えない限り、同じプレイヤーが勝ち続けることになるだろう。」と指摘したうえで、「すべての人々にとって公正な未来と、カネだけがモノを言うのではなく、社会の格差が縮まった地球を創る必要があります。」と語った。

「世界の貧困層がこの新たな開発目標から恩恵を享受できるようにしなくてはなりません。企業による大規模な投資だけでは、貧困や不平等の削減を確実なものにはできません。各国政府はゲームのルールを変え、企業部門にあらゆる解決策を求めるのをやめなければなりません。私たちは、この新たな開発目標を今後15年で達成しようとするのなら、不平等の問題に緊急に対処しなくてはなりません。」

国連の全193加盟国から成るオープン・ワーキング・グループによって提案されたSDGsは、3年に及ぶ、透明で、すべての利害関係者と民衆の声に耳を傾けた参加型プロセスの成果である。

17のSDGsと新アジェンダの169のターゲットは、グローバルな指標を用いながらモニターされ、実施状況が検討される。グローバルな指標の枠組みは、「SDG 指標に関する機関間専門家グループ(IAEG)」によって策定され、来年3月に国連統計委員会で合意がなされる予定だ。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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日本・カザフ両政府が核実験禁止条約発効促進へ

【国連IDN=カニャ・ダルメイダ】

ニューヨークの国連本部で開催される第9回包括的核実験禁止条約(CTBT)発効促進会議を前にして、CTBTの発効に向けてその支持を必要とする8か国(中国、朝鮮民主主義人民共和国、エジプト、インド、イラン、イスラエル、パキスタン、米国)への圧力が強まっている。

ジュネーブ軍縮会議で交渉され1996年9月10日に国連総会で採択されたCTBTは、署名国183、批准国164を誇るが、44のいわゆる発効要件国(条約の「附属書Ⅱ」に掲げられている条約交渉当時に核施設を保有していた国々)のうち8か国が署名・批准を拒んでいるために、未だに発効していない。

核実験に対する包括的な禁止は、世界的な核軍縮・不拡散体制を構築するための重要な要素であり、越えなければならない最後の障害であるとみられている。

一般的に「第14条会議」と称されるCTBT発効促進会合は、核実験を禁止する法的に拘束力のある規範を定立することを目指して、これら8つの核兵器国をターゲットとすることになる。

8月26日から28日に広島で開催された第25回国連軍縮会議に参加した際にIDNの取材に応じたカザフスタンのイェルツァン・アシバエフ外務副大臣は、9月29日の第9回CTBT発効促進会議で日本とともに議長国を務めるカザフスタンにとって、CTBTへの支持は「当然のスタンス」であると語った。

カザフスタン北東部にある1万8000平方キロのセミパラチンスク実験場は、旧ソ連の核兵器開発事業の中で核実験を行う主要な場所であった。1949年から1989年の間に同地で456回の核実験が行われ、ガンの発生率増大や放射線被爆に起因する疾患等、推定20万人に健康被害を及ぼしたとみられている。

22万人もの死をもたらした広島・長崎への原爆投下から70年を迎える今年、日本が核実験防止のための外交攻勢を主導しているのは当然のことだ。

外務省の相川一俊軍縮不拡散・科学部長は、IDNの取材に対して、「この会議では取り組むべき『大きな課題』がある」としたうえで、「8つの(未署名・未批准)国の代表が参加して、会議を成功に導いてくれることを望んでいる」と語った。

Lassina Zerbo/ CTBTO
Lassina Zerbo/ CTBTO

1945年から、CTBTが採択された1996年までの50年間で、米国は1000回以上、ソ連は700回以上の核実験を行った。同じ時期にフランスは200回、英国及び中国はそれぞれ約45回の実験を行っている。

条約の遵守状況をモニターする機関である包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO、ウィーン)によれば、1996年以来核実験を行ったのは3か国しかない。インドとパキスタン(1998年)、そして北朝鮮(2006、2009、2013年)である。

合計すると、第二次世界大戦終結以来、約2050回の核実験が、世界中の60か所以上で行われた。CTBTOによると、これらの実験場は、(米国・英国・フランスの実験場となった)熱帯の南太平洋の環礁から、長らくソ連の核実験場として使われ、「北極海の氷に覆われた辺境の群島」と呼ばれるノヴァヤゼムリャまで、「驚くほどに対照的な場所」であるという。

CTBTOは、約300の地震波、水中音響、微気圧変動、放射性降下物探知局からなる世界的な監視ネットワークによって、大気圏であれ、地下であれ、水中であれ、秘密の核実験を国家が行うことを困難にしている。

しかし、主要な核保有[能力を持つ]8か国の署名なくしては、条約は無力だ。仮に実験が探知されたとしても、制裁などの懲罰的な措置を違反国に課すことができない。

CTBTO

8月の広島における国連軍縮会議の際にIDNの取材に応じた、元国連事務次長(軍縮問題担当)のジャヤンタ・ダナパラ氏は、核実験に関する現在支配的な政治的現実の「脆さ」について懸念を表明した。

「北朝鮮が核実験を行うかもしれないし、ウィリアム・ペリー元米国防長官によれば、すでにCTBTに署名・批准したロシアの科学者らが、政治指導者に対して核実験の再開を求めて圧力をかけているとのことです。もしこれが本当なら、CTBTがある意味で危機に立たされているといえるでしょう。」と、「科学・世界問題に関するパグウォッシュ会議」の会長も務めるダナパラ氏は語った。

ダナパラ氏はまた、「国連安保理は国際の平和と安全の管理人ですから、核実験停止モラトリアムの継続は平和と安全の根本的な要素だとする全会一致の決議は、CTBTの正統性を下支えすることになるでしょう。」と語った。

実際、国連の潘基文事務総長は、先の8か国に対して、条約を批准するよう個人的に呼び掛けている。

UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri

潘事務総長は、「核実験に反対する国際デー」記念会合(9月10日)で行った演説の中で、「私は、核実験の被害者と面談し、核実験が社会や環境、経済に及ぼした永続的な被害をこの目で見てきました。…地下水の汚染、がん、白血病、放射性降下物汚染された水、ガン、奇形児、放射性降下物の影響など、核実験による環境、健康、そして経済への打撃から二度と立ち直れなかった人々も多くいます。」と語った。

潘事務総長はまた、多くの核保有国によって核実験のモラトリアムが自発的に実行されていることを歓迎しつつも次のように語った。「しかし、それが法的拘束力を有する条約の代わりとはなりえません。なぜなら、それは北朝鮮が3度にわたって核実験を実施した事実が物語っています。」「CTBTが交渉されてからもう20年が経過しました。今こそ条約を発効させる時です。」

天然資源防護評議会」によると、1945年から1980年の間に実施された核兵器は合計510メガトンにもなるという。そのうち、大気圏内核実験だけでも428メガトンに及び、これは広島型原爆2万9000発分に相当する

それぞれの実験によって放出される放射性物質の量は、爆発の大きさや規模、タイプにもよるが、多くの科学的研究を通じて、深刻な大気・水質汚染、生態系へのダメージ、怪我や内部組織・皮ふ・眼球・細胞まで含めた人体への被害など、健康や環境への負の影響があることが明らかになっている。

放射性物質から発せられる様々な粒子状物質や線の総称である「電離放射線」は、発がん作用をもっていることが科学的に証明されている。また、放射線被ばくは、白血病や甲状腺がん、肺がん、乳がんなどを引き起こすことが知られている。

CTBTOのウェブサイトにある核実験の影響に関するページは、「核兵器複合体の健康影響に関するアルジュン・マヒジャニ氏の査定など、様々な研究や評価によると、5つの核兵器国による大気圏内核実験による世界的な放射線被ばくによるガン死者は、数十万人にも及ぶと推定されている。」と述べている。

さらに、CTBTOは、「核戦争防止国際医師会議(IPPNW)による1991年の研究では、2000年までに人間が受けることになる、大気圏内核実験に起因する放射能および放射性物質は、43万人のガン死者を生むことになると推定した。そのうちの一部は、研究結果が公表された段階ですでに起こっている。」と述べている。

「この研究は、およそ240万人が大気圏内実験の結果としてガンによって死亡する可能性があると述べている。」

これらの暗い現実を考えれば、CTBTの発効は火急の課題である。発効要件国による条約批准は「可能性」の問題ではなく、それが「いつ」なのかが問題だということで大方の意見は一致しているのだが、専門家にとっても、その「いつ」というのが正確にいつになるのかは、判断が難しい。

CTBTがいつ法的な現実になるのかというIDNの問いに対して、国連軍縮問題元高等代表で、2005年NPT運用検討会議の議長を務めたセルジオ・ケイロス・ドゥアルテ大使はこう答えた。「これはかつて『6万ドルクイズ』と呼ばれたものです。いまやこれが『6000万ドルクイズ』になり、まもなく『600億ドルクイズ』になるでしょう。しかし、いまだに正答はないのです。」「これまでの世界状況が問題です。つまり強国がその力と特権を維持しようとしているのです。」

アシバエフ外務副大臣は、世界の核兵器国が現在1万6000発の核を保有していると推定している。これらは、「地球を何度でも破壊できる」能力がある。

軍備管理協会のデータによると、ロシアと米国で世界の核弾頭の9割を占め、それぞれ、7700発、7100発を保有している。第3位のフランスはずっと離れて300発。また、中国は250発の核を誇り、英国は225発を保有している。

パキスタンとインドはそれぞれ110発、100発を保有し、イスラエルは80発、北朝鮮は10発である。ただし専門家らは、これらの数値を検証することは難しいと考えている。

軍備管理協会によれば、およそ1万発の核弾頭が軍の管理下にあり、残りの6000発が解体待ちの状態である。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan

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フランシスコ法王、国連サミットを前に世界の指導者の良心に訴えかける

【ニューヨークIDN=J.R.ナストラニス】

ローマカトリック教会のフランシスコ法王(本名ホルヘ・マリオ・ベルゴリオ、1936年ブエノスアイレス生まれ)は、故国では「謙虚で熱心に神の慈悲を説き、貧しい人々への奉仕と宗教間対話にも強い関心を持つ」人物として知られてきた。しかし9月25日に国連総会で幅広いテーマについて演説したこのアルゼンチン人の法王は、いかなる偏狭な利害にも束縛されない唯一の世界的リーダーであることを証明した。

17 SDGs

今後15年間に貧困を撲滅し、不平等と闘い、気候変動に取り組む17の目標と169項目のターゲットからなる新たなグローバルな枠組「私たちの世界を転換する:持続可能な開発のためのアジェンダ」を正式に採択する国連サミットの直前に演説したフランシスコ法王は、貧困を削減するための一連の負債、貿易、租税政策を支持した。

法王はこれに先立つ9月24日には、米国上下両院合同会議で演説し、弱者を守り不平等の問題と取り組む橋渡しとなる必要性を強調した。

「フランシスコ法王は弱者に手を差し伸べるような責任ある融資政策を実施するよう呼びかけました。法王は、弱者の苦境と貧困を念頭に、緊縮政策の失敗と抑圧的な融資政策を結び付けて語ったのです。」とジュビリーUSAネットワーク(80の宗教団体、信仰グループ、開発支援団体、人権組織から成る債務救済のために活動している連盟組織)のエリック・レコント代表は語った。レコント氏は、ローマ法王庁及び国連に対して財政と貧困問題に関する助言を行っている。

Eric Lecompte/  Jubilee USA
Eric Lecompte/ Jubilee USA

法王は演説の冒頭で、国際金融機関に対して、「さらなる貧困、疎外、依存を生じさせる『抑圧的な融資』を無くさなければなりません。」と呼びかけた。ここで法王は、途上国の持続可能な発展を阻害する一形態である「高利貸」行為について特に言及し、国連に対して、関連機関を通じて構造的な貧困問題に取り組むよう呼びかけた。法王は今年の夏、国連が提唱した国際的な破産プロセスを支持している。

「フランシスコ法王が高利貸と債権者の責任について語ったのには驚きました。法王は国連に対して債務危機を解決するために関連機関を動員する責任があると指摘したのです。」とレコント氏は語った。

法王は、「今こそ、将来好ましい歴史的な出来事として実を結べるよう、社会に新たな変化を生じさせる活動を重視していかなければなりません。私たち人類には『特定のアジェンダ(課題)』を将来に先送りすることは許されないのです。」と指摘したうえで、「今日私たちは、世界各地の紛争で故郷を追われ助けを必要としている人々が増え続けている現実に直面しています。国際社会は人類の将来のために重要な決断をすることが求められているのです。」と力説した。

法王はまた、中東とアフリカが直面している現実は深刻なものだと警告した。「中東、北アフリカやその他アフリカの国々全体の痛ましい状況に関して、私は繰返し訴えてきたことを再確認する必要があります。こうした現実は、国際問題への対処を任されている人々の良心を刺激するでしょう。」

宗教的或いは文化的迫害の場合のみならず、ウクライナ、シリア、イラク、南スーダンアフリカ大湖沼地域など全ての紛争状況において、生身の人間こそが、党利党略(それがどんなに合法なものであったとしても)より優先されなければなりません。それは、戦争や紛争状況下には、泣き、苦しみ、命を落としている個人や兄弟姉妹、老若男女がいるからです。」

法王は創立70周年を迎えた国連の功績に言及して「国連の歴史は、非常に速いペースで移りゆく時代において、人類が共有する重要な功績のひとつに挙げられます。…国際法の法典化と発展、人権に関する国際的基準の制定、国際人道法の発展、数々の紛争の解消、平和維持や和平の活動、そして各分野における国際活動や努力等、多くの功績があります。」と語った。

一方で法王は、過去70年の経験から時の流れに応じた改革と適応が必要と警告し、「例えば国連安全保障理事会、金融機関、そして経済危機に対応するために創設されたグループやメカニズムなど、有効執行能力を持つ機関には特にさらなる平等が求められます。」と語った。

疎外や不平等の問題への対処として、フランシスコ法王は、「本日の『持続可能な発展に向けた2030年アジェンダ』の採択は重要な希望の兆しです。私は国連気候変動パリ会議(COP21)でも基本的かつ有効な合意がなされることを確信しています。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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核実験禁止へのとりくみ:カザフスタンが「アトムE」を開始(カイラト・アブドラフマノフ国連大使)

【国連IPS=カイラト・アブドラフマノフ】

致命的な兵器の禁止を訴えた1946年の国連総会決議があったにも関わらず、カザフスタンが独立した年の1991年8月29日に当時世界第2位の規模であったセミパラチンスク核実験場を閉鎖するまで、核兵器の保有は科学の発展あるいは軍事力の象徴であり続けた。

この決断と、当時世界第4位であった(110基を超える弾道ミサイルと1200発の核弾頭からなる)核戦力の放棄は、カザフスタンがこの強力な核兵器実験と核兵器は必要ないと考えていることを世界に示した前例のない行為であった。セミパラチンスク実験場の閉鎖は、ネバダ(米国)、ノバヤゼムリャ(ロシア)、ロプノール(中国)、ムルロア(フランス領ポリネシア)など、他の実験場の閉鎖につながっていった。

‘RDS-37’ on 22 November 1955 – the Soviet Union’s first thermonuclear test/ CTBTO

全世界で2000回行われた核実験の4分の1にあたる600回以上の核爆発が、40年間にわたってセミパラチンスク実験場で行われた。実験場の面積は1万8000平方キロであり、その影響は30万平方キロ、150万人以上に及んだ。

実は、ソ連時代のカザフスタンは11の軍部隊で構成される一つの巨大な多角形を成していた。核実験場以外にも、航空、宇宙、ミサイル防衛、警戒システムがあり、高出力レーザー兵器の実験場もあった。私はその中に、アラル海にあった恐るべき生物・細菌兵器の実験場(かつてのルネサンス島にあるバルカン実験場)も指摘しておきたい。

これまでの取り組みを考えれば、我が国には、「核兵器ゼロへの道」に関する普遍的で即時の措置を求める十分な権利があるといえるだろう。ここで引用した恐るべきデータ、そして1996年の国際司法裁判所の勧告的意見をみれば、国際社会は、核実験と核兵器の究極的かつ不可逆の禁止に向けてもっと大胆に踏み出すようになるはずだ。

カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領は、世界の指導者に核実験の永久廃止と核兵器の完全廃絶を求める「ATOM」(廃止する=Abolish、実験=Test、私たちの使命=Our Mission)と呼ばれる国際的なオンラインキャンペーン・プロジェクトを開始した。現在このキャンペーンを国際社会にアピールするため、「ATOM」プロジェクトの名誉大使で核実験の被害者であるカリプベク・クユコフ氏がカザフスタンからここニューヨークにやってきて、自身の経験を伝えている。

Kazakh President Nursultan Nazarbayev addressing the UN General Assembly in September 2015 | Credit: Gov of Kazakhstan
Address by His Excellency Nursultan Kazakh President Nursultan Nazarbayev addressing the UN General Assembly in September 2015 | Credit: Gov of Kazakhstan

カザフスタンが世界最大のウラン生産者・供給国であるにも関わらず、強固な意思を持って堅持してきたこうした立場は、兵器よりも「調和と協力」こそが、世界の平和と安全にとって、「より有効な武器」となり得るということの証左といえよう。

軍縮に対して批判的な人々は、「核兵器の発明をなかったことにすることはできず、核という魔神はもう壺から飛び出てしまった」と主張する。しかし、カザフスタンなどいくつかの国々が、怪物的な魔神を壺の中に戻すことは私たちの能力の範囲内でできることだと証明してきた。

カザフスタンは包括的核実験禁止条約(CTBT)に署名した最初の国のひとつである。同条約を重視する我が国は、CTBT第14条に関する国際会議を9月29日に日本と共同主催して、条約の早期発効に向けて努力する所存だ。

今年は、国連創設から70年でもあり、新たな変化を生み出すポスト2015年開発アジェンダの開始の年にもあたる。私たちは、核軍縮の結果として生み出されるであろう莫大な資源を、切迫した人類のニーズを満たし、平和で安全な世界を達成するために投資する政治的意思を持たねばならない。

ICAN
ICAN

今日、核不拡散条約(NPT)の2015年運用検討会議が期待された成果を生み出せなかったことを考えると、軍縮に関する機構を前進させる新たな推進力が必要となっている。オスロ、ナヤリット、ウィーンで開催された3回の「核兵器の人道的影響に関する国際会議」(非人道性会議)、各国別、二国間、複数の国による集合的な多くの取組みとともに、市民社会によるダイナミックな取り組みを歓迎する。

こうした活動は、核兵器なき世界に向けて連帯するための警告となる。従って私たちは、オーストリアが提案しカザフスタンも今年7月10日に賛同した「人道の誓約」が推進力を得ていることを歓迎する。同様に、「核兵器なき世界の達成に関する普遍的宣言」を採択するよう国際社会に呼びかけている我が国の大統領の取組みが、10月に開催される国連総会第一委員会で支持されることを求めている。私たちは、この文書が、大きな議論の基礎をなすとか、国連の軍縮機構を縛りつけるものだとか考えているわけではない。その価値は、核軍縮達成の手段について依然として意見の一致がないにも関わらず、核兵器なき世界という基本的目標については完全に一致しているという事実にあるのだ。

カザフスタンが関与したことで東側と西側の協力が成功した事例を他にいくつか示しておきたい。

1.カザフスタンは核戦力を放棄して「国際社会の注目を大いに浴びた」が、核弾頭とミサイルを撤去・処分し、元実験場のインフラを破壊・無効化するのを可能にしたのは、ロシア連邦と米国との協力があったためであった。

2.カザフスタンは、中央アジア地域の他の国々とともに、2006年にセミパラチンスクで中央アジア非核地帯条約に署名し、早くも2009年には発効させた。2014年5月、核五大国(P5)は、条約参加国に対する消極的安全保証に関する議定書に署名し、うち4か国は既に批准も済ませている。

今年、中央アジア諸国は、地域における核保安を強化する行動計画を採択した。現在私たちは、核物質の違法取引を防止し、核テロと闘う地域的な手段を検討中だ。

3.2014年、かつてのセミパラチンスク核実験場内にあった「マシフ・デゲレン」(「プルトニウムの山」として知られる)の地下通路に残されていた数百キログラムに及ぶ核物質を安全に確保し保全するための取り組みを進めた。この措置によって、核物質の漏出と不適切な使用が防がれるであろう。カザフスタン、ロシア、米国による継続的かつ永続的な三国間協力が2012年にソウルで3か国の大統領によって発表された。これは、信頼と相互理解の精神だけが世界の安全を確実にするのだということを明確に示した事例である。現在カザフスタンは、2016年にワシントンDCで開催される予定の第4回核セキュリティサミットの準備を進めており、11月2日から4日にはアルマトイで事務方の準備会合を主催する。

4.もう一つの重要な成功は、カザフスタン政府と国際原子力機関(IAEA)との間で、国際低濃縮ウラン(LEU)バンクを2017年にカザフスタン北東部で設立する協定に8月27日に署名がなされたことだ。この取り組みは、核不拡散体制を強化し、国際的な法的枠組みに存在する隙間を埋めるうえでカザフスタンがなしている具体的な貢献の一例だ。LEUバンクは、核エネルギーの平和的利用のために、加盟国に安定して核燃料を供給することを狙ったものだ。東側と西側、とりわけカザフスタンと、P5、さらには、欧州連合、ノルウェー、クウェート、アラブ首長国連邦をプロジェクトの主要なドナーとして、LEUバンクの実現に導いた。

5.協力の最も新しい事例は、カザフスタンにあるバイコヌール宇宙基地に関するものだ。ここは、国際宇宙ステーションに飛行船を打ち上げる地球上で唯一の場所になっている。9月2日、飛行船「ソユーズ」が、カザフスタンやロシア、デンマークからの新しい乗組員を乗せて、発射された。デンマークからの乗組員は、欧州宇宙機関から送り込まれている。この事例もまた、未来に向けた希望をもって協力するよう、私たちを勇気づけるものだ。

ハーグで開かれた核保安サミットで「一般的かつ完全な核軍縮」こそが核保安を唯一もたらすものだと世界に訴えたナザルバエフ大統領の言葉を引用しておきたいと思う。大統領は、「『国際の平和』の名を借りた軍事的解決ではなく、政治的解決をもたらすという、自国民及び国際社会に対する私たちの責任に応えなければならない。」と述べた。従って、核実験禁止、核兵器禁止への推進力を生み出し、私たちの共通の人間性を忘れないようにそうした平和的な解決策を見つけ実行していくことは、私たち皆にとっての集合的な責任であり、約束なのだ。(原文へ

※カイラト・アブドラフマノフは、カザフスタン共和国の国連大使。

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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