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移住労働者に「グローバルな見方」を学ぶシンガポールの学生

【シンガポールIDN=カリンガ・セネビラトネ】

政府統計によると、この東南アジアの豊かな国(=シンガポール)においては、人口の3人に1人が移民である。彼らは、近代的なインフラを築き、ビルを清掃し、レストランで料理や給仕をし、勤め先の家庭で子どもや老人の世話をしているが、しばしば賃金レベルはきわめて低く、粗雑な扱いを受け、地元の人々からは不審の目で見られている。

数百人のインド人労働者が警察車両を襲った2013年の「リトルインディア」暴動に始まり、イスラム系テロ集団との関連が疑われる27人のバングラデシュ労働者の最近の逮捕に到るまで、移住労働者に関しては社会に緊張が走っている。法律を学ぶある学生が語ったように、「私たちは移住労働者に関して二次的な情報源からしか情報を得ていない。そしてそれは、彼らがどういう人たちであるかについて教えてはくれない。」のである。

Map of Singapore
Map of Singapore

このことは、「地元民」に対する「移住労働者」の比率が世界で最も高い国の一つであり、移住労働者の大半が近隣諸国から来ているシンガポールに特有の現象ではないが、同国の外国人労働者に対する劣悪な処遇は、地域の外交に悪影響を及ぼす可能性がある。

1月31日から1週間の日程で始まった「移住労働者問題啓発週間」(MWAW)は、シンガポール国立大学(NUS)が2014年に始めた取り組みであり、今年からはイエール大学・NUSジョイントベンチャー大学も加わっている。

この取り組みは、法学生を移住労働者やそれを支援する非政府組織(NGO)と交流させることによって、移住労働者の希望や、シンガポールに出稼ぎにきた動機について直接学ぶ機会を与え、学生らの視野を広げてもらおうというものだ。移住労働をめぐる法的、社会的、政治的問題に対する法学生の感覚を養わせるために法科大学が行っている取り組みである。

5日間のイベントで、2つのエリート大学の学生ら400人が、NGOや130人の外国人労働者と交流した。イベントは、1月31日、バングラデシュ人労働者の孤独を詠ったベンガル語の詩の朗読から始まり、2月5日の夜、暗い場所で学生と移住労働者が話し合う「トーク・イン・ザ・ダーク」まで続いた。その合間には、法と移住労働者、家事手伝い労働者をめぐる社会的問題、人身売買された性労働者をめぐるパネル討論もあった。

Migrant Workers Awareness Week

「本校の学生の多くは裕福な中流家庭の出身です。従って、私たちは特権的な場所にいて、移住労働者の権利といった特定の問題を見過ごしているのかもしれません。」と、NUS法科大学校のイベント実行委副委員長のビクター・デイビッド・ラウ氏は語った。

「本校の学生の多くは、家庭で家事手伝いを雇っているかもしれません。こうした人々は他国の市民であり、尊重される必要があります。」

ラウ氏は、「法学生らの考え方が一朝にして変わるものではなく、時間がかかるかもしれませんが、大学による教室を飛び出した今回の教育戦略は、移住労働者らが直面している苦境や、外国に出稼ぎに出る決意をした彼ら・彼女らの希望や志を顧みないメディアから得られた二次的な情報を通じて、移住労働者に対するステレオタイプ的な見方を形成している学生の問題に対処することを狙ったものです。」と語った。

学生らは、パネル討論や移住労働者らとの暗闇での会合に加え、外国人労働者の寮を訪問し、性労働者の実態をみるためにゲイラン地区の「赤線地帯」を回った。

NUSの法学部長であるサイモン・チェスターマン教授は、1週間に亘る教育プログラムの開始にあたって、「シンガポールの繁栄の裏には移住労働者の権利問題という『暗部』があります。本校の学生には、移住労働者が慢性的な問題に対処できるよう、無償で手を差し伸べるよう奨励したい。私はチャンギ国際空港で、外国人労働者らが法的な問題が解決しないまま本国に送還される様子を見てきました。」と語った。

「移住労働者:人間かプロジェクトか?」というタイトルで開かれたMWAWの開会パネル討論では、外国人労働者への法的保護の強化の必要性に関する議論がなされた。討論の司会者である上級法律講師のシーラ・ヘイン教授は、「初めてシンガポールにきたとき、この国の法学生は、いい点数を取ってカネを稼ぐことにしか興味がないから気をつけるようにと言われました。」「しかし、(実際には)多くの学生が社会問題への意識を持っています。多くの移住労働者が私たちのもとを訪れ、不公正な扱いについて訴えてきます。」と語った。

ヘイン教授は、学生らが社会への意識を持てば、移住労働者やNGO、地域社会、政府関係者、メディアとの協力やネットワーキングにおいて成果を上げることができると考えている。

Opening Panel Migrant Workers Persons or Projects/ MWAW 2016
Opening Panel Migrant Workers Persons or Projects/ MWAW 2016

家事労働者のためのNGO「ホーム」(HOME)のジョロバン・ワム常任理事は、人口400万人のシンガポールには22万7000人の外国人家事労働者がいると指摘し、「無償の家事労働をよしとする歴史的風潮があり、家事労働者の権利はないがしろにされがちです。」と語った。

「家事労働者については人権も労働権も顧みられず、雇主と労働者の関係は忠誠と信頼を基盤としたものになっています。家事労働者を家族の一員として扱うことによって、彼女は『雇われ人』ではないとの意識が強まってしまい、労働時間の制限や休暇の権利、労組加入権などは与えられないことになるのです。」

ワム氏は、「家事労働者も労働法によって保護されるべきです。」と語った。しかし、他のパネリストである人材省労働力政策・戦略局のタン・ファン・クン副局長はこれに賛同せず、最近人材省が外国人労働者に対して行った調査で、シンガポールでの労働環境に不満を持っている外国人労働者は10人に1人に過ぎなかったという調査結果を挙げ、「家事労働は法的枠組みに収めることがきわめて困難です。」と語った。

移住労働者による相談を毎年多数扱っているNGO「移動労働者カウントツー」のアレックス・オー氏は、学生や学者に対する熱のこもった発言でこれに反論し、「外国人労働者の搾取の問題をなきものとする前に、シンガポール経済の構造が理解されなくてはなりません。」「この国では、移住労働者は使い捨てにされています。シンガポールでは、人権や労働者の権利よりも企業の権利が優先させているのです。」と嘆いた。

ワム氏もオー氏も、移住労働者が搾取される最大の領域のひとつは、労働者の手配師によるものだと指摘した。

2014年12月現在、シンガポールには130万人以上の移住労働者がいる。このうち73%は、「非熟練」あるいは「低技能」の労働ビザ保有者であり、月にたかだか400~600ドルの仕事を世話してもらう見返りに3000~1万ドルを手配師に払って入国しているのである。

このカテゴリーに入る労働者のほとんどが、フィリピン、バングラデシュ、ミャンマー、インド、インドネシア、ネパール、中国の出身者で、[手配師への]支払いは書面上記録されていない。したがって、シンガポールでそうした支払いが違法化されていても、人材省はそれを止めることができないのである。

ワム氏もオー氏も、法律家の卵たちがこうした問題を認識していれば、この現代の災難に対する法的救済策を見つけることができるかもしれないと考えている。オー氏は、「すべてのNGOが、関心のある人々に対して、私たちの活動に参加できる数多くの機会を設けています。時には学生を一度に100人単位で動員して調査を行い、地域に出かけて労働者と話をし、適切な給与を得ているか調べています。」と語った。

Wikimedia Commons
Wikimedia Commons

ワム氏は、「HOMEにはフルタイムスタッフが6人しかおらず、意識喚起を行動に結びつけることができていません。」と語った。この点に関してワム氏は、とりわけ法学生に対して、期待をにじませた。

「(法学生の皆さんには)国会議員に会って移住労働者の権利について議論していただきたい。国会議員に、シンガポール国民がグローバルな問題について、移住労働者の権利について関心を持っていることを知らしめてほしいのです。」とワム氏は語った。

法学生のラウ氏は、「NGOは、セミナーの開催を通じて、学問にばかり目を向けがちな学生らに働きかけようとしているのです。学生はこうした問題を授業の課題扱いするだけではなく、自分自身の活動の中に取り込む必要があります。教育とは単に勉強することではなく、社会的な効果を生み出すことです。こうした社会的なものの見方を活動に持ち込むことができれば、素晴らしいと思います。」と語った。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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Canadian PM Commends INPS-IDN Partner South Asian Outlook

Canada’s Prime Minister Justin Trudeau, Federal Party leaders and other eminent persons sent messages of appreciation on the 15th anniversary of South Asian Outlook, an e-Magazine partnering with INPS-IDN. Publisher and Managing Editor of South Asian Outlook is Suresh Jaura in Toronto. He is also President of INPS North America. He received the Canadian Ethnic Media Association (CEMA) award at the 30th Anniversary Award Gala on June 27, 2008 (Canadian Multiculturalism Day).

Read all messages here, including that from Justin Trudeau.

日本・カザフスタン、核実験禁止条約発効へ外交努力

【ウィーン/東京IDN=ラメシュ・ジャウラ】

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会が6月の閣僚会議招集を準備する中、カザフスタンと日本が、条約の発効に向けた取り組みを強化するとの公約を再確認している。

1月25日から2月4日にかけて開かれたシンポジウム「平和と安全に向けた科学・外交」の第1週、ウィーンの両国代表は、昨年9月にニューヨークの国連本部でそれぞれの外相が開始した取り組みを推し進めると述べた。

日本の岸田文雄外相とカザフスタンのエルラン・イドリソフ外相は、昨年9月29日、第9回「CTBT発効促進外相会合」の共同議長を務めた。

カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領と日本の安倍晋三首相は、10月27日にアスタナで発表された共同声明で、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効が必要な理由について繰り返し述べている。

「 核兵器の脅威を経験し、これを十分に認識する国として、日本とカザフスタンは核兵器がもたらす人道的惨劇について、世界中の人々の認識を向上させる道義的権限と責任を共有する。この特別な使命を念頭に置き、日本とカザフスタンは、核兵器のない世界を追求すべく緊密に協働する決意である。」と共同声明は述べている。

「核兵器なき世界」にコミットする両国の首脳が必要な政治的措置をとるなか、著名な仏教哲学者・平和活動家である池田大作氏は、20年も停滞しているCTBTの発効への熱烈な支持を表明している。

Dr. Daisaku Ikeda /Photo Credit: Seikyo Shimbun
Dr. Daisaku Ikeda /Photo Credit: Seikyo Shimbun

創価学会インタナショナル(SGI)会長である池田氏は今年の平和提言「万人の尊厳 平和への大道」のなかで、「残りの8カ国が一日も早く批准を果たし、CTBTを名実ともに力強く機能させ、核実験が二度と行われることのない世界への道を開くよう、あらためて呼び掛けたい。」と訴えている。

8か国の中には、条約に署名はしている中国・エジプト・イラン・イスラエル・米国と、署名すら拒否している北朝鮮・インド・パキスタンが含まれている。

国連加盟国のうち計183か国が署名を済ませ、そのうち164か国が批准もしている。しかし、発効要件国である44か国(=条約の「附属書Ⅱ」に掲げられている条約交渉当時に核施設を保有していた国々)が批准手続きを済ませた場合にのみ、条約は発効することになっている。

「核問題解決への取り組みを加速させ、軍縮の促進はもとより、CTBTの採択を土台に生まれたこの活動のような『世界の人道化』に向けた潮流を、本格的に強めていくべきではないでしょうか。」と東京に本拠を置くSGIの会長は1月26日に発表した平和提言のなかで述べている。

池田会長はまた、「非人道性の観点からも、軍事的な有用性の面からも、核兵器が『使うことのできない兵器』としての様相を一層強めていく中で、軍事的競争の限界から生じた『人道的競争への萌芽』ともいうべきものが、一つの形を結ぶまでになってきています。」と述べている。

このひとつの例は、1996年にCTBTが採択された際に創設された国際監視制度IMS)によるさまざまな貢献の中に見て取ることができる。CTBTは未発効だが、世界中で核爆発を探知するためにCTBTO準備委員会によって設置されたIMSはすでに運用が開始されている、と池田会長は指摘している。

IMSは、いかなる核爆発も探知されることなく行われることがないようにするための独自で包括的な検証体制の重要な柱である。IMSは、完成すれば、地球上における核爆発の兆候を監視する337施設(5種類の観測所321ヶ所及び放射性核種に係わる公認実験施設16ヶ所)で構成されることになる。現在、施設の約9割が既に稼働を始めている。

SGI会長はIMSを称賛して、「先日(1月6日の)の北朝鮮の核実験をめぐる地震波の検知や放射性物質の観測のような本来の役割に加えて、最近では、世界中に張りめぐらされた監視網を活用して、災害の状況や気候変動の影響を幅広くモニターする活動なども行われるようになっています。」「例えば、海底地震の探知によって津波警報を早期に発令できるように支援したり、火山噴火の状況を監視して航空機のパイロットへの警戒情報につなげたり、大規模な暴風雨や氷山の崩壊を追跡するなど、“地球の聴診器”としての重要な役割を担ってきました。」と述べている。

池田会長はまた、「CTBTはまだ発効していないうちから命を救っている」とする潘基文国連事務総長の意見に賛同するとともに、「核軍拡と核拡散に歯止めをかけるための制度が、多くの生命を守るという人道的な面でも欠くことのできない存在となっている。」と述べている。

United Nations Office at Vienna/ Wikimedia Commons
United Nations Office at Vienna/ Wikimedia Commons

CTBTOの専門家たちがウィーンでIDNに説明したように、世界各地の監視施設が、CTBTOのウィーン本部にある国際データセンターIDC)に大量のデータを送信している。処理されたデータは、原データ、或いは分析した形で、CTBTOの各加盟国に送られている。

ラッシーナ・ゼルボ氏は、2013年8月にCTBTOの事務局長に就任する以前は、IDCのセンター長であった。ゼルボ氏は、世界的な核実験禁止検証機関としてのCTBTOの地位を確立し、条約の発効と普遍化に向けた取り組みを前進させることに尽力してきた。

池田会長はまた、核兵器禁止に向けた具体的な法的措置の問題を話し合うべく国連総会が設置した公開作業部会(OEWG)にも平和提言の中で期待を寄せている。OEWGは、核兵器なき世界実現のための法的措置と規範に関して作業をするための実質的な会期を開くことにしている。また、中間的な核リスク削減措置についても勧告を行う予定だ。

1月28日に開かれたOEWGの非公式会議には85か国と一部の市民団体が参加し、タイのタニ・トングファクディ大使が議長に選出されるともに、暫定議題が配布された。

OEWGは、(a)「核兵器のない世界の達成と維持」のために必要となる具体的かつ効果的な措置、法的条項、規範と、(b)多国間の核軍縮交渉を前進させるために有益なその他の措置に関する勧告をなすことを予定している。なお(b)については、例えば次の措置を含むが、それに限定されるものではない。

Photo: UN Geneva
Photo: UN Geneva

既存の核兵器に伴うリスクに関連した透明化措置/偶発的、計算違い、未承認、あるいは意図的な核兵器爆発のリスクの削減・排除のための措置/核爆発から生じる幅広い人道的な帰結の間の関係とその複雑さに対する認識と理解を高める追加的な措置。

UNFOLD ZEROによると、OEWGに対する支持が世界各国の議会や市民社会の間で強まっている。UNFOLD ZEROは、「核兵器なき世界」の達成に向けて国連に焦点をあてたイニチアチブや行動のための新たなプラットフォームである

6900以上の都市が加盟している平和首長会議はOEWGに対して公開書簡を送り、すべての国連加盟国(とりわけ核兵器保有国とその核の傘の下にある国々)に対して、核兵器なき世界への道を切り開くために、OEWGで建設的な論議に関与するよう求めた。

「核軍縮を求める人々」と「人類サバイバルプロジェクト」はOEWGの参加国に覚書を送り、即時に核のリスクを減らし、核兵器を禁止・廃絶するステップを同時に採る人道面、安全保障面からの強い要請があることに焦点を当てた。覚書は、包括的な核兵器禁止条約や、禁止先行条約、いわゆる「ビルディング・ブロックアプローチ(=ブロック積み上げ。包括的核実験禁止条約(CTBT)発効など、核軍縮のさまざまな具体的措置を同時並行的に実施するアプローチ)を含め、核兵器を禁止するさまざまなオプションを検討している。

覚書によると、単一のアプローチで問題を解決することは考えられず、あるアプローチによって作られた推進力が別のアプローチによる進展を加速することになる可能性があるという。

Witness in Hiroshima Film/ Katsuhiro Asagiri of INPS

池田会長はまた、希望の持てる最近の展開についても述べている。たとえば、「核兵器を忌むべきものとし、禁止し、廃絶する」ことを約束した「人道の誓約」を120か国以上が支持したことや、市民社会から核兵器廃絶への呼び掛けが強くなっていることを挙げている。また、8月に広島で開かれた「核兵器廃絶のための世界青年サミット」など、SGIが支援してきた信仰を基盤とした団体(FBO)」や若者による取り組みにも焦点を当てている。(原文へ

翻訳=INPS Japan

*この記事はラメシュ・ジャウラINPS事務総長が、1月25日から2月4日にかけて開かれたシンポジウム「平和と安全に向けた科学・外交」‘を取材したCTBTO: Acronym of the Year’シリーズの3本目。この記事を含む他のINPS関連記事はCTBTOオフィシャルウェブサイトでも閲覧できます。 

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|気候変動合意|「評価できるが完璧ではない」―太平洋の女性たち

【キャンベラIPS=キャサリン・ウィルソン】

太平洋島嶼諸国の女性たちは、パリで行われた国連気候変動条約第21回締約国会議(COP21)でなされた地球温暖化を抑制するための合意について、途上国と先進国との間の対立によってこれまで特徴づけられてきた問題で世界が連帯した前例なき瞬間であったと歓迎している。しかし、気候変動を自身の生存にとって最大の脅威とみなしている太平洋の小さな島嶼途上国にとっては、威勢のいい言葉に実際の行動が伴なわなければ、成功とは言えない。

「これは大きな前進で、太平洋島嶼諸国の先住民らが一致して行動や正義を要求しなければ、不可能だったと思います。私は将来に関して楽観視しています。」と語るのはキャシー・ジェトニル=キジナー氏だ。キジナー氏は、マーシャル諸島出身の気候問題に関する活動家・詩人で、この歴史的な会合にも出席した。

昨年12月にパリで開催された21回目の会議では、気候変動条約の締約国会議を構成する195か国プラス欧州連合(EU)の利害の間で集中的な協議と妥協が図られた。

太平洋諸島フォーラム事務局(PIFS)のメグ・テイラー事務局長は、「太平洋島嶼諸国が指摘したすべての問題が最終成果・文書に反映されたわけではありませんでしたが、気温上昇幅の1.5度までの抑制、個別要素としての損失・損害の問題、簡素化された気候変動対策資金への大規模なアクセスといった取り組みを追求する重要性が認識され、相当の進展がありました。」と語った。

中部太平洋にある小さな環礁国キリバス(人口11万人)の「キリバス気候アクションネットワーク」のクレア・アンテレア氏は、会議の成果は「評価できるが完璧ではない」と指摘したうえで、新たな気温抑制目標と気候対策資金拡大が特に重要だと語った。

世界気象機関(WMO)は、2016年の世界の平均気温は産業化以前の時代より1度上昇して、史上最も暑い年になると予想している。他方、太平洋島嶼諸国は、今世紀に起こりうるさらなる気温状況、海面上昇、海洋の酸化、サンゴの白化に備えている。多くの島嶼国家における最大海面上昇幅は0.6メートル以上になる可能性があると、「太平洋気候変動科学プログラム」は報告している。

Flag of Marshall Islands
Flag of Marshall Islands

マーシャル諸島では、海面上昇のために「ただの高波でも洪水を引きおこし、セメントや石で造られた防波堤を壊し、家々を完全に破壊します。また、海水の侵入によって運ばれた塩分は作物や食物をダメにするのです。」とジェトニル=キジナー氏は語った。

もっともうまくいった場合でも、キリバスやパプアニューギニアでは気温上昇が1.5度に達する可能性があるが、もっとも温室効果ガスの排出が多い場合、2090年までに2.9度も上昇するかもしれない。

地球温暖化が進めば、パプアニューギニアやソロモン諸島では常食であるサツマイモの生産高が2050年までに5割以上減少する可能性があるとアジア開発銀行では予測している。作物減少の重荷は、地域で作物を育て水を運んでくることに主たる責任を負う太平洋島嶼諸国の女性たちの肩にかかってくるだろう。

太平洋島嶼諸国は、昨年COP21に際して新たな気温上昇の上限1.5度への認知度を高めようとキャンペーンを張った。これは、島々が食物や水、土地の損失のためにますます住みにくい場所になっていく中で、将来の気候変動がもたらす衝撃を和らげ、強制的な移住を減らすためにきわめて重要だと彼らは論じている。

そして、先進国社会における見方の変化を示す兆候として、COP21第2週の間に出てきた「野心連合(Coalition of High Ambition)」において数多くの途上国・先進国がこの問題に関するキャンペーンで太平洋島嶼諸国に加わった。とりわけ、この連帯はメキシコ・ブラジル・ノルウェー・ドイツ・EU・米国等79か国によって示された。

Pacific Islands Map/ Pacific Islands Forum Secretariat
Pacific Islands Map/ Pacific Islands Forum Secretariat

地球の気温上昇を2度に抑制し、さらに0.5度の減少を「追求する努力をする」ことをめざした最終的なパリ協定は、この連合にとっての勝利といえよう。

「『1.5度』は会議開始前には交渉のテーブルにも上ってもいませんでした。だから、それが最終テキストに入ったと聞いた時、安心感で叫んでしまったほどです。とはいえ、文言があいまいな点は心配で、実際に1.5度を達成するには私たちが継続的に圧力をかける必要があります」とジェトニル=キジナー氏は語った。

Kathy Jetnil-Kijiner speaking at the Climate Summit/ ICNP
Kathy Jetnil-Kijiner speaking at the Climate Summit/ ICNP

しかし、太平洋島嶼諸国にとて、異常気象に対処するうえで既に直面している大きな諸問題がこれでなくなるわけではない。小規模な島嶼経済にとって、国際的な気候財源へのアクセスなしに、こうした諸問題への対応は不可能である。今年、島嶼諸国の指導者らは、途上国による気候問題への対応資金として2020年までに毎年1000億ドルを拠出するという公約を国際社会が守るように呼びかけている。この目標は2009年にコペンハーゲンで初めて設定されたものだ。これまでに拠出された金額に関する評価は分かれているが、世界銀行は4月、700億ドルという巨額の不足が生じているとしている。

テイラー氏は、「パリ協定第9条は、島嶼途上国にとって、資金提供は公的かつ無償でなければならないと定めており、2020年以後の気候財源には前向きな面がみられます。」と語った。「グリーン気候ファンド」(GCF)のような財源メカニズムについては、無償供与とすべきか低利子の融資とすべきかについて従来から議論がなされている。

アンテレア氏は、資金が効果的なものであるには、「簡潔な提供方法を通じて草の根の人びとに届くようなものである必要がある」と強調した。

PIFSのテイラー事務局長は、「最終協定で極端な気候と自然災害によって引き起こされる損失・損害が言及されたことは、気候変動の被害を受けている国々が重大な環境汚染を引き起こしている国々に対して責任や補償を訴えるための内容が入っていないにせよ、画期的な一歩となりました。」と指摘したうえで、「しかし、この決定によって、その他の方法を使って他の加盟国の責任を問う国家の法的権利が、減じられたわけではありません。」と語った。

Wikimedia Commons
Wikimedia Commons

しかし、大きな希望となっているのは、排出削減目標を設定し、長期的な監視・再検討のプロセスにこれを付すという法的拘束力のある公約を各国がなした点にある。これにより、再生可能エネルギーへの世界的移行は加速され、地球温暖化ガスの最大の発生源である化石燃料の燃焼はますます困難になるであろう。

「私たちの目標に対して諸政府に責任を取らせるための重要なステップとして、5年ごとの再検討が必要です。」とジェトニル=キジナー氏は強調した。もし各国がこの目標をより良いものにする努力を怠ったならば、地球は、2.7度以上の破滅的な気温状況に向かうことになるかもしれない、と専門家らは結論づけている。

パリでの世界的な合意が示した高揚感が去ったのちに最も緊急となってくる問題は、この高邁な約束をいかに実行に移すのか、という点である。太平洋島嶼諸国の人びとの生活は、まさにその点にかっているである。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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次期国連事務総長選挙戦、本格化へ

【ウィーン/ニューヨークIDN=ジャムシェッド・バルーア】

今年進んでいく潘基文国連事務総長の後継者指名プロセスは、歴史的な次元を帯びている。ノルウェーのトリグブ・リー氏が初代国連事務総長になった1946年以来、計7人がこの国連のトップとして安全保障理事会に指名され、国連総会によって追認されてきた。

しかし今年は、国連総会議長と安保理議長が12月15日付の画期的な共同書簡の中で、全ての国連加盟国に対して、「男性だけではなく女性も、事務総長職の候補として検討するよう」呼びかけたことから、史上初めて国連事務総長の指名プロセスが全ての国連加盟国に開放されることになるだろう。

「この変化は、国連総会加盟諸国と『70億人のための1人』キャンペーンによる圧力が功を奏したものです。」と、「核兵器なき世界」の達成に向けて国連に焦点をあてたイニチアチブや行動のための新たなプラットフォームであるUNFOLD ZEROは語った。

UNFOLD ZERO

「70億人のための1人」キャンペーンは、世界各地の個人や、アムネスティ・インターナショナルアヴァーズフォーラム・アジアなど750以上の団体から構成されており、合計で既に1.7億人が参画している。「コフィ・アナン前国連事務総長のような著名人をはじめ、私たちの目的を支持する政府も増え続けています。」と同キャンペーンは述べている。

国連高官やその他の専門家らは、国連の指導者を選出するプロセスのさらなる改革を目指して、声を上げている。

次の事務総長に関する重要問題を話し合うため1月18日にパリ政治学院で開かれた「青年・リーダーサミット」で、多くの国連専門家や政治家、NGO関係者らが、次期国連事務総長は、一期限り(おそらくは7年間)の任期にすべきとの「70億人のための1人」キャンペーンの提案に賛同した。

これは、国連総会と安保理の議長が共同の呼びかけを行ってから、次期国連事務総長を巡る重要問題について初めて行われたパネル・ディスカッションだった。

「70億人のための1人」キャンペーンは、「アラブ連盟のアムレ・ムーサ元事務局長が『国連事務総長を大国の圧力から解き放つことになる』任期一期限り・更新なしの方がよいと訴えた」と、この討論をまとめている。

Amr Mohammed Moussa/ Guillaume Paumier
Amr Mohammed Moussa/ Guillaume Paumier

アルジェリアの元外相で国連事務総長の特別代表でもあるラクダール・ブラヒミ氏もまた、新国連事務総長の任期を一期に限るという考え方と、「70億人のための1人」キャンペーンへの一般的な支持を表明した。

任期を一期に限る案への支持を表明している他の国連専門家には、マルティ・アハティサーリ氏(フィンランド元大統領、国連調停者、エルダーズのメンバー)、ジャン=マリー・ゲーノ氏(「国際危機グループ」会長、国連平和維持活動元代表)、ブーク・イェレミッチ氏(国連総会元議長、セルビア元外相、国連事務総長の候補の一人といわれる)、シャウカート・アジズ氏(パキスタン元首相)らがいる。

次の国連の指導者にはどのような資質が不可欠か、との「70億人のための1人」からの問いに答えて、パネリストらは、強国に対峙する勇気のある候補者が成功する、と述べた。この資質は、現在のところ、「70億人のための1人」キャンペーンによる世論調査でトップを走る回答である。

ジャン=マリー・ゲーノ氏によれば、次の事務総長に必要な主な資質は、「リスクを取ることを恐れない人物である」ということだ。「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のブルーノ・スタグノ・ウガルテ氏もこれに賛同して、「(国連事務総長には)真実を語る勇気を持った人間が必要です。国連安保理に対して、安保理が聞きたいことではなく、聞かなくてはならないことを話せる人物を」と語った。

「70億人のための1人」キャンペーンは、ブラヒミ氏が、次の指導者は「明日職を辞しても構わない」と言える人物でなければならず、「国連は、それを牛耳る大国ではなく、それを必要とする小国のために存在している」と語った、とまとめている。

アンゲラ・ケイン国連元事務次長は、人道的危機の問題について国連安保理に注意を促すことを国連事務総長に認めた国連憲章99条を利用すべきだと示唆したと伝えられる。

Angela Kane, UN High Representative for Disarmament Affairs, addresses the 2013 session of the Conference on Disarmament. Credit: UN Photo / Jean-Marc Ferré
Angela Kane, UN High Representative for Disarmament Affairs, addresses the 2013 session of the Conference on Disarmament. Credit: UN Photo / Jean-Marc Ferré

パネリストらはまた、次の国連指導者は、国連における前向きな変化の媒介者にならねばならないと論じた。刺激を与え、ヴィジョンを示し、よいファシリテーターになる。紛争におけるすべての関連主体を関与させる意思を持ち、紛争の発生前にそれを見通す。そして、権力のない人々のために声を上げ、「政治的に有能」で、安保理で対立する利害の橋渡しをする、そのような人物が望まれている。

「70億人のための1人」キャンペーンのある代表は、パネリストに対して、主に個人の能力よりも、むしろ様々な地理的地域の間で事務総長ポストを回していく、いわゆる「地域ローテーション」方式についても尋ねた。

指名は能力に基づくものでなければならないという同キャンペーンの主張に沿って、ブーク・イェレミッチ氏は、今回の選出は、指名を狙っている東欧グループに限られるべきではないと語った。「個人的に言えば、私は、全世界にプロセスを広げるべきと考えています。全ての人にチャンスが与えられるべきで、指名は能力に基づくものでなくてはなりません。」

アンゲラ・ケイン氏は、地域によるグループ枠は、事務総長選出プロセスにおいては、「撤廃するか、無視すべきであり」、任務に「最適な候補者」を選ぶことに注力すべきだと語った。ケイン氏は、既にアフリカ出身者(=ブトロス・ブトロス・ガリ氏とコフィ・アナン氏)に15年も国連の舵取り役を任せてきたのだから、「私たちは既に、地域ローテーションを無視するという前例を作り上げています。」と語った。 

「70億人のための1人」キャンペーンによれば、国連総会のモーエンス・リュッケトフトは、次の3人の候補者を正式に発表している。

スルジャン・ケリム:マケドニア出身。元外相、国連総会議長。現議長が12月15日に立候補を発表。

イゴール・ルクジッチ:モンテネグロ出身。副首相、外相。国連総会議長が1月15日に立候補を発表。

ヴェスナ・ピュジッチ:クロアチア出身。副首相、外相。国連総会議長が1月14日に立候補を発表。

「70億人のための1人」キャンペーンはこれに加えて、オンライン記事をもと他に24人の候補者がいることを明らかにしている。しかし、これらの人物の立候補は国連総会議長によって公的に承認されていないことから、「推測や伝聞の域を超えたものではない。」と同キャンペーンは述べている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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核の危機に依然として無知で無関心な若者たち

【国連IDN=ロドニー・レイノルズ】

1945年8月の広島・長崎への原爆投下から70年以上にわたって、平和活動家たちは「核兵器なき世界」に向けた世界的なキャンペーンをたゆみなく続けてきた。

この問題について長期に亘って議論を展開してきた国連は、核軍縮に関する数多くの決議を毎年採択し続けている。

従って国連総会(193か国が加盟)が昨年12月に、2015年の会期を軍備管理・軍縮に関する57本の決議案を採択して締めくくったことは驚くにあたらない。これらの決議のうち、実に23本が核兵器に関するものであった。

しかし、「核兵器なき世界」という目標は、少なくとも現在の世代にとっては、依然として、遠い先の政治的幻影にすぎないのが現状である。

英米安全保障情報評議会(BASIC、本拠ワシントン)が先週発表した新たな調査報告書は、核兵器に関する議論の枠組みを再構成しようと試みたものだった。

数千発の核兵器を受け継ぐことになる次世代の政策立案者は、核軍縮をどのように見ているのだろうか? とりわけ、核兵器に関する政策が過去の世代の遺産にきわめて強い制約を受けているとしたらどうだろうか。

14か月に及ぶプロジェクトの結果をまとめたこの調査報告書は、「さらなる核不拡散・核軍縮をめざす次世代の政策決定者の間で革新的な発想を育み、より多くの人々を巻き込むうえでの出発点となる」ことが期待されている。

「核不拡散措置を強化し、核軍縮を通じてグローバルな安全保障を達成するという共通の責任について、人々の凝り固まった態度と進展がほとんど見られない現状を克服するには、革新的な思考が必要である。」と報告書は論じている。

このプロジェクトは3つの問いを提示している。第一に、核兵器に関する意思決定のサイクルにおいてもっとも影響力を持っているのは誰か、そして、この状況を転換することが可能か否か。

第二に、核に関する議論が、より注目を集める他の政策領域や運動とより緊密に統合されるとすれば、それはどの領域において、いかにして可能か。

第三に、新興の政策立案者や公衆、メディアと核兵器問題とがより強く響き合うようにするにはどうすればよいか、なぜそうなるのか。

調査は、米国と英国において次世代を担う青年層の参加者を対象に行った一連のワークショップの結果である。ワークショップは、課題や、関与のメカニズム、討論で出てくる可能性のある新たな次元、(核兵器と気候変動の関係といったような)他の領域との関係性を把握することを目的としたものであった。

従来、核問題が表の議論に出てくる際、思慮ある議論がなされることはめったになく、むしろ、特定の立場をナイーブだとかタカ派だとかレッテル貼りするために、浅薄で象徴的な議論として特徴づけられる傾向がある。

調査は、新たな声を議論に持ち込むことを呼び掛け、若者世代の政策立案者の登場を促す方法を試みている。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)軍縮・軍備管理・不拡散プログラムの責任者タリク・ラウフ氏はIDNの取材に対して、「BASICの報告書は、核兵器に関する思考と言説が長年の間にいかに陳腐なものになって来たか、そしていかにして世界にとっての主要な危険リストから滑り落ちてきたかに焦点を当てたものです。」と語った。

「報告書は、核軍縮を通じて世界の安全保障を確保することについて、旧態依然とした態度で思考停止状態が続いている現状を打破する必要性から、将来における核兵器政策を、若者世代の安全保障と関心事に、より一層関係づけさせようとする意思に満ちています。結局のところ、こうした次代を担う若者世代は、数千発の核兵器と、数千トンの兵器級核物質を引き継ぐことになるのですから。」と、ラウフ氏は指摘した。

またラウフ氏は、「報告書の重要な内容のひとつは、英国・米国の若者は、自国の核兵器にそれほど関心を持ってはいないが、核保有国がさら増えたり、テロ集団に核が拡散することを懸念しているという点にあります。」と語った。

「この新世代は、お目出度いことに、(彼らが育った)ツイッターやフェイスブックのような仮想の世界には核兵器は何の関連ももってこなかったことから、核保有の現実に無知であり、その結果、関心を持っていないのです。しかし彼らは、事故か或いは非国家主体によるものかは別として、万一核爆発が不幸にも引き起こされることがあれば、否応なしに、眠りからたたき起こされることになりのです。」と、核不拡散条約(NPT)2015年運用検討会議の2014年準備委員会会合議長の元上級顧問を務めたラウフ氏は語った。

ラウフ氏はまた、「主流のメディアにおける核兵器に関する数少ない議論はたいてい、敵対国の[核の脅威に関する]恐怖を煽るものですが、一方で自国の核兵器や関連政策及び支出については無視しています。」と指摘した。

ICAN
ICAN

「この報告書は、若者に対して核兵器に関する教育や情報を早期の段階、まずは学校教育から提供し始めるべきだと勧告しています。この点については『核の瀬戸際における私の旅』と題する回顧録を最近出版したウィリアム・J・ペリー元米国防長官のような、核兵器政策に関する直接の経験を持つ人々の見解や、『博士の異常な愛情』『未知への飛行』『世界を救った男』のような映画に注目することが有益です。」ラウフ氏は語った。

My Journey at the Nuclear Brink by William J. Perry/ Stanford University Press
My Journey at the Nuclear Brink by William J. Perry/ Stanford University Press

「BASICの報告書は、核兵器の問題や人類の存亡に係わる地球規模の安全保障に関して若い世代を巻き込む方法を探るうえで重要な貢献となります。」と、国際原子力機関(IAEA、本部ウィーン)渉外政策調整部検証安全保障政策課長(2002~11)を務めた経験もあるラウフ氏は語った。

BASICのこのプロジェクトで利用された方法は例えば、フォーカス・グル―プの参加、ラウンドテーブルや専門家との対話イベントの開催、14~30歳の欧州の若者を対象にした核兵器に対する意識調査、デジタルツールを用いた関与、若者世代との対面的なネットワーキングなどがある。

報告書の重要な知見には、例えば、核兵器が修正主義国家(=現在の国際秩序に不満を持つ国家)や非国家主体の手に渡った場合に引き起こされる将来への不安を除けば、米英の若者達にとって、核兵器はあまり関連のないものだと見られている点が挙げられる。

「核兵器の問題は、(米英の若者達にとって)普段の意識や視野からは外れた、三面記事からも切り離された話題であり、日常生活との関連付けが難しいというだけではなく、政治や軍事の領域においてもあまり影響のない問題だと見られている。」

前の世代が核兵器に対して大いに有用性と恐怖を見出し、その恐怖を基づく複雑な抑止関係を確立したのに対して、次の世代は、その帰結は自分たちにほとんど関連のない問題だとみなしている、と報告書は結論づけている。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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CTBTO@20

INPS-IDN covered the symposium ‘Science and Diplomacy for Peace and Security: the CTBT@20’ from January 25 to February 4, 2016 at the Vienna International Centre in Austria – and did an exclusive interview with CTBTO Executive Secretary Dr Lassina Zerbo.

video interview: ‘Ratify Treaty to Ban Nuclear Testing Before Fatigue Creeps in’

国連、2015年以後の開発課題で女性の役割重視

【国連IPS=タリフ・ディーン】

2015年以降の開発課題の完全実行のための集中的な世界キャンペーンを開始した国連は、9月に世界の指導者が採択した17の持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けて、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントが不可欠であると明確に主張している。

UN Assistant Secretary-General and UN Women Deputy Executive Director, Lakshmi Puri, intervening at the Women’s Forum on Financing for Gender Equality. Photo: UN Women/ Binyam Teshome Weldehana

そして、国連の潘基文事務総長は、人類の半数を占める女性が「あらゆる領域において(男性と)完全かつ平等な参加者として」扱われるようになるまで、あるいはそうならない限り、国連の開発目標が100%達成されることはないだろうという政治的メッセージを強く発した。

「UNウイメン」のラクシュミ・プリ事務局長代理(国連事務次長補)はこのメッセージを再確認して、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントは持続可能な開発の実現にとって必要不可欠だと語った。

このことは、昨年7月の第3回開発資金会議で採択された「アジスアベバ行動目標」や、9月に国連総会で採択された「持続可能な開発に向けた2030アジェンダ」の成果の中にも強く反映されている。

プリ氏は、「こうした成果は、ジェンダーギャップの解消に向けた投資の増加を通じたものを含め、ジェンダー平等とすべての女性・女児のエンパワーメントを達成することを自らに強く義務づけています。」と指摘した。

アジスアベバ行動目標の最初のパラグラフは「我々はジェンダー平等と女性のエンパワーメントを達成するであろう」と宣言している。

「『2030アジェンダ』は、ジェンダー不平等が、国内及び国家間の不平等を含むあらゆる不平等の源泉であると認識する一方、SDGsではジェンダー平等の達成を単独の目標として掲げています。」とプリ氏は語った。

17のSDGsには、飢餓貧困の根絶健康な生活の確保ジェンダー平等の達成、グローバル環境の保護、持続可能なエネルギーの確保などが含まれている。

これらの目標は2030年までの達成が期待されている。

昨年初めに開催された、権力と意思決定権を持つ女性に関するハイレベルイベントで演説した潘事務総長は、この数十年に比べて、今日の世界ではずっと多くの女性が政治分野で活躍していることを認めた。

「しかし、進展はあまりに遅く、スピードにもばらつきがあります。」と潘事務総長批判した。

潘事務総長は、「どの国にも女性の完全な平等はなく、女性は国会議員の5人に1人しかいません。また世界で女性の国家指導者は20人しかいないのです。」と指摘した。

潘事務総長はまた、「国会に女性が全くいない国が世界には5つあり、8か国には女性閣僚が全くいません。さらに女性は、余りに多くの国々で、家庭内暴力や性器切除、その他の形態の暴力に苦しんでいます。」と指摘したうえで、「こうした行為は個人にトラウマを、社会にダメージを与えています。」「現在世界的に横行している女性・女児に対する暴力を終わらせないかぎり、人権の擁護や開発の進展はありえません。」と語った。

プリ氏は、「私たちは、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントという真の約束と可能性を実現し、彼女たちの人権を実現する100年に一度の、これまでで最大の機会を手にしています。」と語った。

「これまでで初めて、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの本質性が『アジェンダ2030』の中で認識され再確認されました。世界193か国の元首級の会合で採択された『アジェンダ2030』は、『人類の半分を占める女性に完全な人権と機会が与えられないかぎり持続可能な開発は不可能だ』と述べています。」とプリ氏は指摘した。

「さらに、ジェンダー平等はますます『実現可能なミッション』見なされるようになってきている。献身的で、包括的で、変革的なSDGsの第5項は、ジェンダー平等の約束の達成を謳うだけではなく、すべての女性・女児をエンパワーし、誰も置き去りにしないということを明記している。」

「アジェンダ2030」の履行のあらゆる側面において、ジェンダーギャップ解消のための投資の急拡大、ジェンダー平等機関の強化、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの系統的な主流化への約束がなされている。

SDGs for All Logo
SDGs for All Logo

「女性・女児に対するあらゆる形態の差別を法律・慣習上廃絶し、女性への暴力を終わらせることは、持続可能な開発の目標である。同様に、女性の未払いケアワークや、経済的・政治的・公的生活における平等な参加とリーダーシップ、性と生殖に関する健康・権利への普遍的なアクセス、資源や経済的エンパワーメントへの所有と管理に価値を与え、それらを提供することも、持続可能な開発の目標となります。」とプリ氏は付け加えた。

「履行と変化のペースを上げ、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを現世代の間に達成するとの約束もあります。『プラネット50/50』を2030年までに達成し、ジェンダー平等にまで高めるのです。」とプリ氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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メディアやジャーナリストは、世界市民の育成につながる環境を整えるうえで重要な役割を果たす。国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)は、この観点から、12月14日から15日にバンコクでアジアの学者・メディア関係者が参加して開催されたシンポジウムを承認し資金提供を行った。参加者らは、紛争よりも調和を促進し、世界市民の育成に役立つメディアを創出するような21世紀のジャーナリストを訓練するために、旧来からのアジア人のコミュニケーション作法をいかに利用しうるかについて検討した。

【バンコクIDN=カリンガ・セレヴィラトネ】

「マインドフル(=周囲に気を配るの意)・コミュニケーション」ブームが現在米国を席巻しているが、ここバンコクに集ったアジアの学者やメディア関係者らは、旧来からのアジア人のコミュニケーション作法を、紛争よりも調和を促進するメディアを創出するような21世紀のジャーナリストを訓練するためにいかに利用しうるかについて検討した。

チュラロンコーン大学の大学院でコミュニケーション・アートを専攻した元ジャーナリストで、現在はタイ北部で「森の僧侶(町や村の寺に住む僧侶ではなく、瞑想を実行するために静寂な場所を求めて歩く僧侶)」でもあるプワドル・ピヤシオ・ビック師は、シンポジウムの開会講演の中で、「欧米で実践されている『マンドフルネス』には『やや問題があります。』なぜならそれは、主に個人のレベルでストレスから解き放たれるために使われているからです。」と指摘した。

「欧米におけるマインドフル・コミュニケーションの実践は世俗的であろうとするため、いかなる宗教的な価値も含めずに実践されています。しかしそのような実践にはパナ(智恵)が伴っていなくてはなりません。この道徳的な智恵なしでは、たとえ実践したところで、社会を正しい方向へと導くためには十分なものとはならないでしょう。」

ビック師は、ジャーナリズムへの実践的なアプローチとして、仏教の根本には苦しむ者への思慮(=同苦の精神)によって苦しみを取り除く必要性を説いていることから、分断と紛争を煽らなくてもある問題について報じることはできる、ということを説明した。

東南アジア諸国連合(ASEAN)統合に向けたマインドフル・コミュニケーション」と題されたシンポジウムは12月14日・15両日、チュラロンコーン大学コミュニケーション・アート学部がユネスコの「コミュニケーション開発のための国際プログラム」(IPDC)との協力で開催した。この集まりは、アジアの古代からの仏教、ヒンズー教、儒教の哲学からの思想や概念、考え方を統合したアジアの新たなジャーナリズム養成カリキュラムを発展させるプロセスの一環である。

UNESCO
UNESCO

もう一人の基調講演者で著名なタイの社会活動家スラク・シバラクサ氏は、マインドフルネスに固執すればマイナスの結果が生まれる可能性もあると警告した。シバラクサ氏はまた、マインドフルネス・トレーニングが米国の企業経営者の間で流行っていることを指摘したうえで、「この訓練に倫理的訓練が伴っていなければ、一層利益を追求する無謀な行動を導きかねません。シラ(倫理)や貪欲、憎しみ、思い違いについて学ぶことが、持続可能な開発に向けたマインドフル・コミュニケーションのために必要です。」と論じた。

シンポジウムでは多くの発表者が、「アジアの哲学的思想は2000年前と同じく今日でも有効だが、現在の『マインドフル・コミュニケーション』ブームに見られるように、その起源に十分な考慮が払われることなく、欧米の知的社会で利用されている。」と指摘した。同時に、アジアの若者たちもまた、近代的ないかなるものも欧米を起源とし、自分たちの古くからの哲学は近代的な生活様式を形成するうえで無関係であるという誤った考えに囚われたまま成長している。

Dr. Binod C. Agrawal
Dr. Binod C. Agrawal

ヒムギリ・ジー大学(インド)元副学長のビノッド・アガルワル博士は、「途上国」のためにジャーナリズムのカリキュラムを組もうというユネスコのかつての試みは、「アプローチにおいて概して欧米的であり、欧米で追求されてきた理論的・イデオロギー的観点を組み込もうとするものだった」と指摘した。アガルワル博士はまた、この問題について、もっぱら欧米で教育を受け、こうした知識をアジアの知的社会に無批判に持ち込もうとしたアジアの知識人を、とりわけり厳しく批判した。

ある発言者が述べたように、コミュニケーションに関するアジアの学者は、15世紀にグーテンベルクによって聖書がドイツで印刷されたことにマスメディアの端は発すると教える一方で、それよりも600年も前に、印刷された言葉を通じてアジア全体に仏教が伝播するのに一役買った「金剛般若経」を中国人が印刷したという事実を無視している。

アジアのメディアは、この地域の紛争につながりかねない南シナ海での対立に関する欧米メディアの注目に無批判に追随する一方で、地域に大きな経済的進歩をもたらし、アジア全体で協力と繁栄をもたらす可能性がある、中国提案の「海と陸のシルクルート」プロジェクトへのリップサービスを行っている。

センセーショナルな取り上げ方を止めて、根本に迫る

マレーシアの元外交官アナンダ・クマラセリ博士(人間開発・平和財団)は、ジャーナリストを「脱文化化(de-culturalise)」する必要があると考えている。クマラセリ博士は、「メディアは問題をセンセーショナルに扱い、欲望と消費主義を煽ることによって、人々の心情に影響を及ぼしているのです。」と指摘したうえで、「つまり問題は人間が作り出しているものですから、人間の精神がどのようなものかを理解しなくてはなりません。そしてそのためには、(センセーショナルに取り扱うのではなく)問題の根本に迫るよう、ジャーナリストを訓練する必要があるのです。」と語った。

圓光大学宗教研究センター(韓国)のパク・ガンス教授は、北朝鮮報道に関して同じような傾向が韓国メディアにあると指摘した。「韓国メディアはいつも北朝鮮の核兵器については報じますが、両国間の家族再会や経済関係のような問題については無視しています。」と述べ、「(韓国)メディアはこれらの問題をより深く理解する必要があります。」と付け加えた。

Supaporn Phokaew/ Chulalongkorn University
Supaporn Phokaew/ Chulalongkorn University

チュラロンコーン大学コミュニケーション・アート学部のスパポーン・フォカウ教授も同じ意見だ。彼女は、仏教の教えの基本的な側面である、生きとし生けるものに対する情けと共感という観念に関する知識を持つことで、ジャーナリストは、(自分たちが報道する)対象に対する深い共感を持つことができるでしょう。」「私たちは学生に読み書きの能力は教えていますが、耳を傾けるスキルは教えていません。マインドフルなコミュニケーションの実践として、他人に深く耳を傾けることを教え始めなくてはなりません。社会とつながっていくためには他人に耳を傾けなくてはならないのです。」と論じた。

人権に対する欧米の信条もまた、アジアの学者らからは大いに批判を浴びた。彼らは、「欧米諸国が独善的な解釈による『個人の権利』概念を傲慢に適用したことから中東に混乱が引き起こされ、『アラブの春』は『憂鬱な寒い冬』に変質してしまった。」と論じるとともに、「デンマークフランスで発生した預言者ムハンマドの風刺画をめぐるテロ事件を例に挙げながら、言論の自由にも限界がある。」と指摘した。学者らはまた、「こうした欧米の信条は、アジアにおいては批判的に検討されねばならない。」と論じた。

欧米の既存のジャーナリズムモデルと置き換わるソーシャルメディア

王立ティンプー大学(ブータン)のドルジ・ワンチュク渉外部長は、欧米からの良いものは、「私たちのニーズと価値観に見合う形で」アジアで適用可能だと考えている。ワンチュク氏は、ブータン王国の国是である「国民総幸福量」(GNH)は「価値観を伴う開発」であると説明した。ワンチュク氏はまた、「欧米ジャーナリズムの『第四の権力』モデルは、異なったものの見方や社会的相互作用を生み出しつつあるソーシャルメディアの隆盛によって、急速に姿を消しつつあります。アジアのメディアは、商業モデルというよりも、充足感(contentment)を基礎にしたモデルの発展を目指すべきです。」と論じた。

ワンチュク氏は、充足感を基礎としたメディアモデルを「中庸の道」だと呼んだ。「ブータンは、幸福、共同体、共感、ブータン社会の中核的価値観を称揚するジャーナリズムの形態を作り上げつつあります。『中庸の道』のジャーナリズムは、ニュースを、商品ではなく社会財として発展させていきます。そうすることで、ジャーナリズムは、紛争や対立、商業主義を肥やしにするのではなく、共同体の発展、コンセンサスの形成、幸福の増進に資する役割を果たしていくことができるのです。」とワンチュク氏は語った。

オープンな議論と討論は健全な人間社会にとって不可欠なものだが、マレーシア人で「仏教チャンネル」のリム・クーイ・フォン代表は、「それには責任が伴っていなくてはならない」と論じた。フォン氏はまた、「この点については、仏教の哲学から学ぶべきことは多いが、同時に、1990年代の『アジア的諸価値』論議に見られたような、権威的な支配エリートに対する批判の矛先をそらす手段として使われることを避けなくてはならない。」と指摘した。

リム氏はまた、「アジアの声の底流にあるのは、自由で個人主義的なエートスが、過度に法遵守的で、攻撃的で、消費主義的な態度と結びついた場合、アジア社会の伝統的な諸価値、すなわち、社会の調和や家族や権威の尊重、とりわけ、権利の主張よりも義務や責任の強調といったことに抵触するのではないかという深い懸念があるのです。」と指摘したうえで、「『アジア的諸価値』の代表と『西洋リベラリズム』の擁護者は、互いから学び、ある意味では補い合うことができるのではないでしょうか。」と語った。

倫理と徳

タイの作家で詩人のクニイン・チャンノングスリ・ハンチャンラッシュ氏は、「責任とアカウンタビリティは、道徳的行い(シラ)・精神の平静(サマディ)・洞察(パナ)という仏教実践の三原則において鍛えられた心に自然に宿るものです。」と論じた。

ハンチャンラッシュ氏はまた、「マインドフルネスは、実践によって生み出される特質です。」と指摘するとともに、「コミュニケーションにとってマインドフルネスとは、実際のコミュニケーション行為が起こる以前の、感情・偏見・動機など、自分の心の中に湧き上がってくる探求のことです。それは、何かに反応するというよりも自らが決定できる『知ること』の領域に他なりません。」と語った。

ベトナムのあるカトリック学者は、ASEAN社会に対してマインドフルなジャーナリズムを提示するにあたっては注意が必要で、それが宗教的な概念だと見られないようにしなければならない、との見解だ。「仏教徒以外の人々に対してこの概念を納得させようとする場合、他の宗教的な伝統にも反映されている倫理や徳に結び付けられる必要があります。」と論じた。

パク教授は、「倫理や徳はアジアの伝統の重要な部分です。仏教だけではなく儒教哲学においてもこれらの実践は立派な位置づけを与えられています。」と語った。教授はまた、道教の哲学者・荘子の言葉を引用しつつ、「対立的なスタイルのジャーナリズムは、より協力的で問題解決を志向するスタイルのジャーナリズムに転換することが可能です。」と論じた。

Wikimedia Commons
Wikimedia Commons

韓国仏教テレビネットワーク(BTN)のハヤカワ・エミ氏は、これをいかに実践に移しうるかについて具体的な事例を示した。2014年4月に韓国でフェリー転覆事故が起こった際、韓国放送公社(KBS)は死者の数や救助作戦、死体袋や人々が悲しむ様子を集中的に報じたが、BTNは仏教社会がいかに生存者の安全な帰還を祈り、家族の救済計画を練り、癒しのプロセスに役立ったかに焦点を当てた。

「ジャーナリストには、(人類の抱える)巨大な(開発の)問題に対処するうえで、共同体や世界の宗教指導者らが重要な役割を果たしうるということを伝える重大な役割があります。ジャーナリストは、グローバル経済において弱く貧しい人々に利益を与える新しい倫理的価値への関心を呼び起こし、世界的な金融危機を避けるには自分たちのライフスタイルを皆が変えることが必要だと指摘すべきです。」と、パク教授は論じた。

マインドフルなジャーナリズムの実践は宗教的ではなく世俗的な実践であると論じるハンチャンラッシュ氏は、肯定的なつながりとしての個人への共感と尊重は、文化と信条の美しきモザイクとしてのASEAN共同体の創出において必要不可欠であると考えている。「ユーザーのマインドフルネスによって、マスコミという強力なツールは、非利己的で建設的な社会の構築における効果的な主体となることが可能です。」とハンチャンラッシュ氏は論じた。

INPS Japan

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【フェズ、ウジダ、ナドール(モロッコ)IDN=ファビオラ・オルティス】

欧州に渡りたいサブサハラ地域のアフリカ住民たちがかねてより通路としてきたモロッコが、欧州連合(EU)に向けた移民の流れを制限し、依然として渡航を望む人々の希望を打ち砕く国家戦略を実行しつつある。

人々が故国を離れて移民となり、より良い暮らしを求めて危険なルートを辿り、命を危険にさらすのには、数多くの理由がある。

コートジボワール出身のアブドゥル・カリメさん(19歳)がモロッコに2013年に着いたときはまだ10代の青年だった。それ以来、フェズ市の主要駅に隣接する非公認居住地にある貧相なテントで暮らしてきた。

SDGs Goal No.10
SDGs Goal No.10

「貧しさから故国を離れました。お金はなかったし、支えてくれる家族もいません。一人ぼっちの私は、故郷の街を離れ、ヨーロッパに行って生活しようと思いたったのです。」とカリメさんはIDNの取材に対して語った。

読み書きができないカリメさんは、英国に行くことを夢見ている。モロッコはあくまで「通過点」だ。

モロッコでの生活は、カリメさんのような非正規移民にとっては厳しい。合法な仕事に就けないことは、移民がこの北アフリカの国に着くと直面する多くの困難のひとつだ。

「食べるものがありません。」とカリメさんは言う。「あらゆるところで仕事を探していますが、見つかったためしがありません。現金収入のためならどんな仕事だってするよ。」

カリメさんは、法的な在留資格を持たずにモロッコに住んでいる数千人のサブサハラ出身のアフリカ人のひとりだ。彼は、在留資格を申請したが、許可取得に必要な基準を満たしていなかった。

移民の通過地となり、2000年代初頭以降外国人住民の数が増えてきたモロッコは、EUへ渡る非正規移民の取り締まりを強化してきた。

国連の「すべての移住労働者とその家族の権利の保護委員会」がモロッコに関して2013年に出した報告書は、公法02-03(2003)改定の必要性を指摘している。同法は、公的には「モロッコ王国への外国人の入国および滞在、非正規出国、非正規入国」について規定するものである。

モロッコの「国家人権委員会」もまた、同国の移民政策の変更を求めている。欧州大学研究所の「移住政策センター」によれば、国家人権委員会が求める改革の中には、「非正規移民に対する警察の暴力やモロッコ国境への強制連行の停止、非モロッコ国民に対する差別の是正、司法や基本サービスの利用を認めること」が含まれているという。

移住に関するグローバルな政策がその結果として策定された。それは主に、難民や移住、人身売買、社会への統合に焦点を当てたものだった。

2014年に実行された大規模な「正規化措置」は、厳しい条件を伴うものだった。違法在留の状況にある人々は、2年以上にわたって適正な労働契約を結んでいる、或いは、モロッコに5年以上継続して居住しているといった、多くの条件を満たさねばならなかった。

カリメさんは、当局に提示できるような継続した仕事に就いておらず、彼の申請は却下された。

カリメさんとは違い、セネガル出身のカディジャ・トゥレさん(25歳)は申請が認められた幸運なひとりだが、正式な書類の発行を待っている状態だ。

彼女は夫と共に3年前にダカールを発ち、幸運にもフェズの工場で定職に就くことができた。その代り、トゥレさんは、安い宝石を街頭で売るために街中をあちこち歩き回っている。

Border Spain-Morocco, by Melilla/ Ongayo – Own work, GFDL

「海を渡ってヨーロッパに行くなんて…安全に渡航する方法があるなら別だけど、どうかしているわ。インシャラー(神の御心のままに)。それより、私はここ(モロッコ)で働くための法的な権利を手に入れたい…。できれば故郷のセネガルに留まっていたかったけど、あそこでは仕事がなかったの。」とカリメさんは嘆いた。

ナイジェリア出身で2人の子どもを持つ父親ノウサ・オムシゴさん(52歳)は、イスラム過激派組織「ボコハラム」による脅迫を逃れて17年前にモロッコに移ってきてから、厳しい生活を強いられている。

オムシゴさんは、モロッコ在留のほとんどの期間を違法滞在者として過ごし、2014年にようやく正規の在留資格を得るが、それで彼が抱える問題がすべて解決したわけではなかった。

オムシゴさんは、アルジェリアとの国境に近いウジダ市で、風が強く雲の垂れ込めた寒い日にIDNの取材に応じてくれた。彼は、スーパーマーケットの入口に立ち、道行く人々に小銭を乞うていた。

「私はモロッコの在留資格を持っており、今ではこの国の市民です。しかし、ここでの生活は厳しいです。私はこうしてお金を請い、そこから食べ物を買い、家賃を払っています。私の妻もナイジェリア出身で、一緒にここに住んでいます。彼女は一度ヨーロッパに渡ろうとしましたが、スペインで捕まり、強制送還になりました。」

「ここでの生活は厳しくもう疲れはてました。国に帰りたいです。」と言うオムシゴさんは、「もしお金があったらナイジェリアに家族を連れて帰りたい。」と語った。

2014年9月までに、モロッコには8万6000人の外国人がおり、サブサハラ出身のアフリカ人がこの多数を占めていた。非正規状態にあるこれらの人びとの推計はさまざまであるが、政府による正規化措置は、約2万7600件の申請のうち、非アラブのアフリカ諸国出身者からの2万1500件の申請を取り扱っている。

「いま持ち上がっている問題は、この『正規化』段階の次をどうするかということだ。」と語るのは、首都ラバトから約500キロのウジダを本拠とする「モロッコ人権機関」(OMDH)のプロジェクト・アシスタントであるラティファ・ベナメールさんだ。

「移民を社会に統合することは大きな挑戦です。新たな移民戦略は、職業訓練のような、移民コミュニティーの特定のニーズに対応したものになっていません。」

「この場所はアルジェリア国境に近いので、毎日、人が入って来ます。アルジェリア・モロッコ国境は閉鎖されているため、彼らはブローカーに金を払わなくてはなりません。こうしたほとんどの人がヨーロッパに渡ることを夢見ています。」とべナメールさんは語った。

1979年に設立されたモロッコで最も古い人権擁護団体である「モロッコ人権協会」(AMDH)の活動家サイード・カダミさんは、新しい政策には懐疑的だ。

カダミさんは、スペインの飛地領メリリャに程近いナドールで活動している。ここでは、しばしばスペイン領に入ろうとして数百人の移民がフェンスを越えようとしている姿が見られる。

Map of Morocco
Map of Morocco

「移民政策は失敗しています。ここナドールでは何も変わっていません。」とカダミさんはIDNの取材に対して語った。「警察や政府の移民に対する扱いは相も変わらずで、逮捕が続いています。移民は警察の手で苦しんでいるのです。モロッコ政府は安全な場所や住むところを保障せず、ただ国境のフェンスから移民を遠ざけようとしているだけなのです。」

モロッコが国際社会に売り込もうとしているイメージは、「快適な滞在地」であり、「移民が定住したい場所」、というものだが、モロッコに到着する移民の目標は、ここを越えていくことであり、いわゆる「ボサ」(Bosa)になることだ。

「ボサ」とは、あらゆる障害を乗り越えてついにEUへのフェンスを越えることができたサブサハラ出身のアフリカ人を指す、くだけた言い方だ。

「私が見るところ、人々はここに留まろうとはしていません。ここには彼らの居場所がないのです。」とカダミさんは語った。(原文へ

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