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|サウジアラビア|核武装という虚勢を張るも、現時点では空疎な響きに留まる

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【カイロIDN=エマド・ミケイ】

米国・イラン核合意が7月に発表された際に、サウジアラビアの国営メディアが報じたイメージは、「西側諸国が新しい強力な隣の敵国に屈した」というものだった。通常はあまりものを言わないサウジアラビアの政府高官らは合意に対していつもの融和的なコメントに終始したが、国内のソーシャルメディアや学界、国営報道機関は揃って政府とは異なる見方を示していた。それは、サウジアラビアの深い懸念を代弁したものであり、石油資源豊かな同国がその富を使って核武装化するかもしれない、という言明もそこには含まれていた。

「仮にそれが核計画の実施を意味するとしても、王国は民衆を守るために自らを恃みとするだろう。」と記しているのは、「ファイサル国王イスラム研究センター」のナワフ・オベイド上級研究員である。オベイド氏は、核武装化したらイランは「数多くの国にとって極度に危険な国になるが、中東のパワーバランスにおいて長らくイランの主たる敵対手であったサウジアラビアにとって最も危険なものになるだろう。」と語った。

皮肉なことに、サウジアラビアに警戒感を与えた今回の合意は、別の結果をもたらすべく意図されたものであった。イランが、15年にわたって、低濃縮ウランの備蓄を98%削減し、設置済みの遠心分離器を減らすことに同意したのと引き換えに、イランに対する制裁を徐々に解除するという枠組みである。しかし、サウジアラビアやその他の湾岸地域の同盟国は、この合意は地域のパワーバランスを大きく変えるものにほかならないとみている。

The ministers of foreign affairs of France, Germany, the European Union, Iran, the United Kingdom and the United States as well as Chinese and Russian diplomats announcing the framework for a Comprehensive agreement on the Iranian nuclear programme (Lausanne, 2 April 2015). /United States Department of State.
The ministers of foreign affairs of France, Germany, the European Union, Iran, the United Kingdom and the United States as well as Chinese and Russian diplomats announcing the framework for a Comprehensive agreement on the Iranian nuclear programme (Lausanne, 2 April 2015). /United States Department of State.

イランは制裁解除によって得る新たな歳入を使って、裕福なアラブ近隣諸国に対する科学、技術、核能力面での優位を失うことなく、通常戦力を増強したり、地域的な影響力を拡大したりすることが可能だ。結局のところ、アラブ各国は、長年に亘ってあまりにも盲目的に米国の湾岸諸国に対する安全保障に信を置いてきたため、自国の科学技術開発に対する投資を怠り、米国内の保管庫で埃を被っていた大量の武器を購入することでよしとしてきたのである。

イランが近隣のイラクとシリアに前例のない規模で軍事力を投入し、イエメンの反体制派シーア派集団「フーシ」を支援していることは、サウジアラビアをさらに困惑させた。サウジアラビアの専門家らが、自国の核武装化についてこれまで以上にその可能性と意思を叫んでいるのは、驚くべきことではない。同国にとっては、オバマ政権が安全保障の約束を違えようとしているかのように見えるのだ。

ミドルベリー国際問題研究所(モントレー)のジェフリー・ルイス教授は、「オバマ政権は、非常にまずい地域安全保障戦略を築いています。」「これを戦略的な漂流だとみなして同盟国やパートナー国が不満を口にし出しているのは驚くべきことではありません。サウジアラビア国民のほとんどが、地域安全保障環境の悪化を警戒し、オバマ政権は能力がないと感じています。」と指摘したうえで、「残念ながら、(米国の)次の政権が(中東の)地域関係・二国間関係にどう取り組むかを見極めるまでは、現在の不平不満が今後も続くことになると結論付けざるを得ません。」と語った。

中東の専門家らによると、サウジアラビアの人々は、表立たない形で、あるいは内密に事を進めるのを好むため、不満を公然と表明するのは珍しいという。しかし今回、サウジアラビアのメディアは、同国のミサイル部隊について事細かに伝えると同時に、サウジアラビアの核武装の可能性にも言及することで、イラン核合意への反応を示している。

核計画

Credit: Official White House Photo by Pete Souza

サウジアラビア政府には既に核計画がある。2011年、800億ドル以上をかけて、今後20年間で16基の原子炉を建設する計画を発表した。これはサウジアラビアの電力消費の2割を賄うものであり、その他の、小規模の原子炉を脱塩のために使うことが予定されている。

最近は、フランスとサウジアラビアが、フランス企業「アレバ」が建設予定の原子炉2基の契約に関する実現可能性調査を行うと発表した。さらにサウジアラビアでは、一基当たり約20億ドルにも及ぶ原子炉建設計画について、ハンガリー、ロシア、アルゼンチン、中国との協議が進行している。

アブドラ国王原子力シティ」が原子力関連のほとんどの事業を掌握し、イランがサウジアラビア存続にとって究極の脅威であるとのイデオロギーを吹き込まれた若い研究者らがこれを支えていると言われている。

国際原子力機関(IAEA)は、平和的な原子力発電計画と、「ファイサル国王専門病院・研究センター」での癌治療施設の建設のために、サウジアラビア政府と緊密に協力している。

しかし、多くの中東専門家らは、サウジアラビアに新たな動機や取組みが認められるものの、どんなに同国が望んでも核兵器を製造することは困難であろうとみている。つまり、サウジアラビアがやっていることは、初歩的な原子力研究の真似事をして騒ぎ立てているだけだと分析している。

「これまでのところ、こうした騒音は、口先以上の、時として大声での喧伝以上の具体的なものには結びついていません。」とジェームス・マーチン不拡散研究センターのアブナー・コーエン氏は語った。

サウジアラビアの核計画の前にはその他の障害もある。同国は世界の既知の石油埋蔵量の16%を支配しているが、核弾頭あるいは弾道ミサイルを開発する教育的、技術的スキルを依然として欠いた、権威主義的な途上国に留まっている。

サウード家が支配するサウジアラビア政府は、国内の科学技術の発展や国民の技能向上に投資するよりも、むしろ国民を贅沢品で甘やかす施策を長らく推進してきた。

核脅威イニシアティブ(NTI)の最近の報告書には、「サウジアラビアには、初歩的な民生用核インフラしかなく、現時点では、独自の核兵器能力を開発する物理的・技術的資源に欠いている。」と記されている。

このように知識集約型インフラが国内に未発達な状況を、豊富な資金力で「国外から支援を獲得する」形で埋め合わせてきたサウジアラビア政府は、パキスタンのような核保有国との同盟関係を構築することで、核の安全保障も「購入できる」ものと想定してきた。それは、パキスタンやエジプト軍部に寛容さを示すことで、パキスタンの核計画を利用し、必要な際には「核兵器を注文できる」という理論に基づくものであった。

Locations of Saudi Arabia and Pakistan/ Wikimedia Commons

サウジアラビアの「気前よさ」の欠点

しかし、近年の推移を見れば、サウジアラビアの「気前よさ」にも欠点があることが明らかになってきている。パキスタンは、経験不足のサウジアラビア軍兵士と共にイエメンで戦う地上軍を派遣することに難色を示した。この、サウジアラビア政府を困惑させたエピソードは、同時に資金力に依存した安全保障戦略の限界を露呈するものだった。

中東情勢を追ってきた多くの核問題専門家らは、サウジアラビアによる核兵器の「発注」などというものは、いかなる意味においても実態の伴わない主張に過ぎないという。

「実行は可能ですが、信憑性はほとんどありません。」「ほとんどの専門家が、パキスタンがサウジアラビアに移送するための核兵器を別に取っておいたり、サウジアラビアとの核共有協定に入ったりすることはないと考えています。」とルイス氏は語った。

サウジアラビアの同盟国、とりわけ米国は、血の気の多いサウジアラビアのメディアや一部政府関係者がいかに核武装化を主張しようとも、それを許すことはないだろう。

米国政府は、核武装したイランに対してサウジアラビアを含めた湾岸諸国を守るとされる「核の傘」の提供をサウジアラビア政府に申し出るか否かについて議論してきた。もし米国の「核の傘」が提供されることになった場合、サウジアラビアが独自に核武装する動きは抑えられることになるだろう。

この提案の下で、サウジアラビアは民生用核協力協定についての交渉を行うことになるだろう。さらにその提案には、サウジアラビアがウラン濃縮や再処理を自粛するとの文言が含まれるとみられている。「アブドラ国王原子シティー」の規模は縮小され、都市規模の研究センター設立計画は棚上げにされ、そのための資金は代わりに米国の歳入となるだろう。

IMF logo/ Wikimedia Commons

サウジアラビアのメディアが報じる核武装の脅し文句は、その他の面から見ても空疎なものだ。国際通貨基金(IMF)は今月10月、サウジアラビア政府が石油価格の低下に苦しみ、赤字予算となって外貨予備が急速に失われるだろうと述べた。

さらに悪いことに、サウジアラビア王室は、地域の覇権を握ろうとして、近年巨額の対外支出を行っている。エジプトの民主主義が保守的なサウジアラビア王国に波及することを恐れて、エジプト初の民主的な選挙で選ばれた(ムハンマド・モルシ)大統領を追放するためのクーデターに約60億ドルの支援を行った。また、シリアの反体制派集団に行ってきた4年間に及ぶ財政支援に加えて、今年3月には、イエメンのシーア派集団「フーシ」に対する高価な爆撃作戦を開始している。

イラン核合意はサウジアラビア政府に警戒感を呼び起こし、核武装の野心という派手な宣伝に走らせることになったが、現実にはもう何年も前に、既に核計画を進める機会は失われているのである。その窓(=核兵器開発)を再度開けるには、さらに何年もの時間を要することになるだろう。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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核軍縮の検証に関する国際パートナーシップの最新状況

【ニューヨークIDN=ファビオラ・オルティス】

核戦力の検証と、核物質およびその他の軍事活動の検証は、核兵器なき世界の達成に向けた前提条件になる、と専門家らはIDNの取材に対して語った。彼らは、ニューヨークの国連本部で開かれた「核軍縮検証国際パートナーシップ」(IPNDV)に関する最新状況の説明会に参加していた。

IPNDVの創設は、米国のローズ・ゴットモーラー米国務次官(軍備管理・国際安全保障)が、核兵器の削減と廃絶を追求するなかで、核軍縮の実態を検証するツールと技術を開発する新たな国際協力のイニシアチブを発表した2014年12月4日にさかのぼる。

米国務省によれば、IPNDVは、核軍縮の検証にまつわる複雑な問題に対応するために、核保有国・非核保有国双方の専門知識をつなげるものである。

Rose Gottemoeller/ US gov
Rose Gottemoeller/ US gov

IPNDVの設立総会はワシントンDCで今年3月に開催された。その付託事項を最終決定する会議がノルウェーのオスロで11月16日から2日間にわたって開催されるのを前に、「核脅威イニシアチブ」(NTI)国連米国代表部が、「道を切り開く:核軍縮検証国際パートナーシップの最新状況」と題する公開のサイドイベントを10月14日にニューヨークの国連本部で共催した。

このイベントの主要参加者の一人が、ノルウェー外務省グローバル安全保障・軍縮問題顧問であるヨルン・オスムンドセン氏である。この取組みの理念について、オスムンドセン氏は、「核兵器を解体するためには、検証を行うツールが必要です。つまり、核軍縮を検証する能力を持つことは、核兵器なき世界を達成するための前提条件となるのです。」と語った。

「サイドイベントを開催した目的は、IPNDV設立総会以来の様々な進展について各国に報告することでした。この取り組みに対する国際社会の関心を高めたかったのです。」とNTIのアンドリュー・ヴィエニャフスキ副代表はIDNの取材に対して語った。

ヴィエニャフスキ氏によると、この国際パートナーシップの主な利点は、核兵器を保有する国と保有しない国の両方を含んでいることにあるという。現在、25か国以上がこのパートナーシップに参加している。

Andrew Bieniawski/ NTI
Andrew Bieniawski/ NTI

ヴィエニャフスキ氏はまた、ノルウェーや英国、オーストラリア、ポーランドのようなこの分野での知識を持った国々を念頭に、「できるだけ多くの国々の参加を促すだけではなく、この核軍縮のためのパートナーシップを前進させていくうえで価値をもたらし貢献できる専門能力を備えた国々の参加を得ています。」と強調したうえで、「私たちは各国から、強固な信頼を勝ち取ろうとしています、同時に、核不拡散上機微な情報の保護もしなくてはなりません。技術を学ぶことと、可能な限り強固な信頼を得るために現地査察からの教訓を学ぶことの間にはバランスがあります。しかし、私たちはそれを、安全や安全保障の規則に照らし合わせながら、安全かつ確実な方法で進めていかなければなりません。」と語った。

NTIによれば、効果的な検証体制を完成させるまでには、依然として多くの技術的問題を乗り越えなくてはならないという。

ICAN
ICAN

ワシントンDCでの設立総会に引き続き、この取り組みの参加国は、3つの作業部会の設置に合意した。監視と検証の目的(議長国:オランダ・イタリア)、現地査察(議長国:オーストラリア・ポーランド)、技術的問題と解決(議長国:スウェーデン・米国)である。

3つの作業部会は現在、オスロで最終決定・採択される予定の草案と付託事項を検討している最中である。

包括的な文献一覧

「このパートナーシップに精力を傾けてきました。各国は専門能力のレベルも違っているし、(核軍縮という)この複雑な問題に関する理解も違っています。」と、NTIのビエニアウスキー副代表は語った。

NTIは、米国務省・エネルギー省と協力して、これまでに発表された核兵器の検証と監視に関する様々な論文・報告書・研究に関する包括的な文献一覧を作成してきた。

「現在、NTIのウェブサイトで無料閲覧可能な文献は200件以上あります。私たちは知識の体系を作り、パートナーシップの能力を強化したいと考えています。これは、この取り組みが複数年度にわたるものでありながら、すでに活動が始まっていることを示すものです。」とビエニアウスキー氏は説明した。

彼の見方では、国連での公開サイドイベントに参加した国々からの反応は上々だという。「非常に示唆に富んだ質問がありました。人々はこの(=核軍縮)問題について非常に知識があったことは明らかです。私たちが強調した主なことのひとつは、できるだけ透明性を確保しようということでした。」

「諸国には、軍縮検証に適用可能な関連領域における技術的専門能力の蓄積があります。従ってIPNDVは、長期的で、持続可能なパートナーシップになるでしょう。主な目標の一つは、能力の構築と、核不拡散条約(NPT)と軍縮問題に中心的なその他の側面に関して取り組んでいる技術的専門家をつなぎ合わせることに焦点を当てることです。」とハーティガン氏はIDNに語った。

オスロでの次の会合への期待が高まっている。この会合までには、6か国が共同議長を務める3つの作業部会が、実践に移されることになる憲章に合意していることだろう。

「この作業はきわめて技術的なもので、時間がかかります。しかし私たちは焦ってはいけません。3つの作業部会の付託事項を策定するために時間を長くとってきました。その付託事項を最終決定することがオスロ会合での目的の一つです。」とノルウェー外務省のヨルン・オスムンドセン氏は語った。

「ノルウェーは、軍縮問題を政府の外交政策における優先事項の一つとし、堅実な実績を上げてきました。」とオスムンドセン氏は語った。1997年の対人地雷禁止条約や、2008年のクラスター爆弾禁止条約の交渉でもノルウェーは積極的な役割を果たした。

ノルウェー政府は、近年核軍縮交渉に進展が見られない状況を打開するため、2012年10月、多国間の核軍縮交渉(いわゆる、オープン参加国作業グループ)に向けた新たなプロセスを確立する国連総会決議の共同提出国となった。

Jorn Osmundsen
Jorn Osmundsen

2013年3月、ノルウェー政府は第1回「核兵器の人道的影響に関する国際会議」(非人道性会議)を主催し、核廃絶を高らかに呼び掛けた。それ以来、さらに2度の会議が、2014年2月にナヤリット(メキシコ)で、2014年12月にウィーン(オーストリア)で開催されている。

このイニシアチブは、核兵器なき世界の平和と安全という、ノルウェー・英国政府共通の目的に向けて、透明性と信頼、(情報の)開示性を高め、進展をもたらすために、核軍縮検証に関する協同の技術的研究を行うべく、両国の専門家が協力したものである。

オスムンドセン氏は、核弾頭軍縮検証に関する2007年の「核弾頭の解体を検証する措置に関する英国とノルウェーの共同イニシアチブ(UKNI)」を念頭に、「私たちは今回のパートナーシップにつながってくる堅実な経験があります。」と語った。

「核兵器なき世界に到達しようとするのならば、核軍縮の実態を検証できる体制が必要ですが、その構築は容易なことではありません。従って、今から取り組みを始める必要があるのです。」とオスムンドセン氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【国連IPS=タリフ・ディーン】

世界の二大核兵器国である米国とロシア間の軍事衝突の可能性が現実味を帯びる中で、国連はこれまで不可能とみられてきた目標、つまり核軍縮に向けて重要な一歩を踏み出した。

国連総会(193か国が加盟)は国連総会第一委員会(軍縮・安全保障)を通じて、核軍縮実現のための効果的な法的措置について検討を行うオープン参加国作業グループを設置する見込みである。

UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri

メキシコなどが提出した決議案によると、「オープン参加国作業グループ会合を、2016年にスイスのジュネーブで、国連総会の下部機関としてその手続き規則に則って開催し、そこで行われた交渉や勧告を反映させた作業報告書を2016年9月に開催される第71回国連総会に提出する。」としている。

この決議案には、メキシコのほか、オーストリア、ブラジル、チリ、コスタリカ、ガーナ、リヒテンシュタイン、アイルランド、マルタ、ナイジェリア、フィリピン、南アフリカ共和国等が共同提出国として名を連ねている。

イランが提出した2つ目の決議案は、2つ目の作業グループを設置して、作業報告書を「核軍縮に関する国連総会ハイレベル会合(2018年までに開催予定)」、「ジュネーブ軍縮会議」、及び「国連軍縮委員会」に提出する、としている。

核政策に関する法律家委員会のジョン・バローズ事務局長は、IPSの取材に対して、「こうした関連決議案は未だ審議中です。」と語った。

バローズ事務局長はまた、「国連総会第一委員会における、こうした展開の背景には、①『2013年オープン参加国作業グループが提出した他t国間核軍縮交渉の前進に向けた提言』、②『2013年から14年にかけてオスロ、ナヤリット、ウィーンで開催された『核兵器の人道的影響に関する国際会議』(非人道性会議)、③『2015年核不拡散条約(NPT)運用検討会議における最終文書案』によって高まってきた(核軍縮を求める)機運があります。」と語った。

John Burroughs
John Burroughs

「新たなオープン参加国作業グループが提出する短期的な成果にかかわりなく、これまで高まってきた(核軍縮を目指す)機運を維持し、新たなステップに向けた突破口を作り出す観点から、オープン参加国作業グループを設置することは、非常に前向きな動きです。」「米国は2013年にはオープン参加国作業グループに反対の立場をとりましたが、新オープン参加国作業グループ案については、コンセンサスベースで交渉を進めることと、核軍縮のためのあらゆる効果的な方策(検証作業等)を検討し、(核兵器を禁止するための)法的な手段を交渉しないという条件で、支持する意向を表明しています。」「一方、他の安保理常任理事国(英国、フランス、中国、ロシア)がオープン参加国作業グループ設立案にどのような反応を示すかはまだ分かりません。」とバローズ氏は付け加えた。

「しかし、米国の姿勢の変化は、環境が良い方向に変化しつつある兆候です。」と「国際反核法律家協会」(IALANA)国連事務所の代表でもあるバローズ氏は語った。

西部諸州法律財団(WSLF)のジャクリーン・カバッソ事務局長はIPSの取材に対して、「国連総会第一委員会から提出される全ての決議案は、全会一致に縛られない国連総会で毎年圧倒的多数の支持を得て採択されます。」と指摘したうえで、「今年、国連総会は、多国間軍縮交渉を前進させるためのオープン参加国作業グループ(全193加盟国に参加資格がある)を設置することが期待されています。」と語った。

カバッソ事務局長は、「19か国の135団体から成る非政府組織(NGO)連合が10月16日に発表した共同声明文には、『我々は国連加盟国に対して、stop fiddling while Rome burns(=大切なものが破壊されようとしているのをよそ目に見て何の手も打たないのをやめるよう)要求する。」という明白なメッセージが込められていました。』と語った。

カバッソ事務局長は、国連総会第一委員会で135団体を代表して発表した共同声明の中で、「ウクライナからシリア、そして中東全域から西太平洋に至る世界の紛争地域において、核保有国同士による直接的な軍事衝突が発生しかねない状況がこれまでになく現実味を帯びてきています。」と語った。

「核戦争が再び起こる危険性は、数年或いは数か月の時間枠で見ても高まってきています。」

「にもかかわらず、核保有国の為政者らは、核軍縮を数世代の時間枠で取り組んでいくことに満足しているようで、直ちに核軍縮問題に対処することに全く関心を示していません。」

この共同声明文を支持したNGOには以下の団体が含まれている。戦争防止地球行動国際平和ビューロー核戦争防止国際医師会議創価学会インタナショナル婦人国際平和自由連盟プロジェクト・プラウシェアーズ、国際反核法律家協会、イスラエル軍縮運動スウェーデン平和評議会アクロニム研究所コードピンク

平和首長会議「2020ビジョンキャンペーン」事務局の国際ディレクターであるアーロン・トビッシュ氏は、IPSの取材に対して「ジュネーブ軍縮会議で一部の国が全会一致の規則を悪用して重要な議題を進めることを妨害し続けている事態を受けて、平和首長会議は、既に2006年の時点で、国連総会の下部機関としてその手続き規則に則って運営する別の作業グループを設置する働きかけを開始しました。」と語った。

「2013年の『多国間核軍縮交渉の前進に向けた』オープン参加国作業グループの活動は、期間があまりにも短すぎたものの、有益な試みでした。今日改めて(2013年当時よりは)強い権限を付与したオープン参加国作業グループを復活させることは、最も時勢にあった動きだと思います。」「来年、ジュネーブとニューヨークでオープン参加国作業グループを開催することに何ら問題はないと考えています。両会議にはそれぞれ長所と短所があります。従って、核軍縮に向けて誠実に取り組む用意がある国々は、双方の会議に積極的に参加すべきです。」とトビッシュ氏は付け加えた。

トビッシュ氏はまた、「私たちはまさに(核兵器のない世界を実現するための)本格的な交渉を始めたところです。従って、核軍縮議論をどの方向に持っていくことが最も生産的かという結論を出すのは時期尚早といわねばなりません。2つ(或いはそれ以上)の協議の場に良い役割分担を持たせることに合意することも十分考えられることです。」と語った。

カバッソ事務局長は、NGO連合を代表してWSLFのアンドリュー・リヒターマン氏が準備した共同声明の中で、「軍縮機構をいかにいじりまわしても、それを運営する人々に前進する意図がないなかで、軍縮を進展させる組織へと変貌させることはできません。」と語った。

「新たな紛争と対立、そして軍拡競争の復活は、核保有国で政策形成に影響力を持つ人々によって引き起こされています。」

「世界各地で続いている近代兵器が使用される戦争の惨劇に対して主に責任を負うべきは、軍産複合体と世界の戦争体系の頂点にいるこうした核兵器国の、とりわけ米国の安全保障担当のエリート層です。」

核保有国が世界の武器輸出の4分の3を、とりわけ、米国とロシアは2国で全体の半分以上を占めています。」

The escalating warfare in the past week alone has involved aerial bombardments, car-bombings, and a government shut-off of national internet service. Credit: Rami Alhames/cc by 2.0
The escalating warfare in the past week alone has involved aerial bombardments, car-bombings, and a government shut-off of national internet service. Credit: Rami Alhames/cc by 2.0

カバッソ事務局長は、「こうした国々は、元々は地域に限定された戦争に至らない程度の政治的な対立を、武器輸出を通じて産業規模の戦争へとエスカレートさせ、社会を寸断し、基幹インフラを破壊し、地域全体を不安定化させています。さらに、こうした人道的な大惨事を、むしろ軍事介入を正当化する手段として競って利用し、その結果、容易に手に負えない状況に陥りかねない代理勢力間の紛争において、核武装した軍事勢力がお互い至近距離で作戦行動を展開するなど、むしろ危険性を高めています。」と指摘した。

「このような大きな危険性を孕んだ武器輸出競争で短期的な利益を得るものはほんの一握りの人々に過ぎません。一方、全ての人類が(核戦争の)リスクを負うことになるのです。」とカバッソ事務局長は力説した。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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核実験禁止条約早期発効へ、欧州連合が資金追加

【ベルリンIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

核実験禁止条約の早期発効を視野に入れて、欧州連合(EU)が、包括的核実験禁止条約機構(CTBTO)準備委員会への追加支援300万ユーロ(390万ドル)を決めた。これで、EUによる自発的な財政支援は、2006年以来、約1900万ユーロ(2150万ドル)となった。

EUの全28加盟国はグループとして、包括的核実験禁止条約(CTBT)に署名・批准している。EU加盟国によるCTBTO予算への定期的な拠出金は全体の約4割を占める。

European Union Flag
European Union Flag

CTBTは、国際的な核不拡散体制とEUによる核軍縮への取組みの基礎にあって、中心的な役割を果たしている。「従ってEUは、CTBTの早期発効と普遍化に熱心に取り組んでいきます。」と、EUのウィーン国際機関代表部が19日の報道発表で述べている。こうした貢献は、「大量破壊兵器拡散に対抗するEU戦略」の線に沿ったものだと発表では述べられている。

「2015年10月12日の欧州評議会決定の全般的な目標は、『EU戦略』の主要目標のうちの2つにあたる『CTBTの普遍化』と『CTBT早期発効をさらに促進すること』にあるが、『CTBTO検証システムの運用と持続可能性、さらには、その運用能力の向上に資することにもある。』」と報道発表は述べている。

「条約の意義と、継続的に向上しているその検証体制の実績を明確に示す例は、近年北朝鮮が実施した核実験の探知と、この点に関するCTBTOの迅速な行動に表れている。」と報道発表は指摘した。

「さらに、CTBTOは、ひとたび条約が発効すれば条約の遵守を効果的に監視し、その遵守を確実にする独立かつ信頼性ある手段を国際社会に提供する能力を繰り返し示してきた。」

Lassina Zerbo/ CTBTO
Lassina Zerbo/ CTBTO

このEUの決定を受けて、CTBTO事務局長のラッシーナ・ゼルボ博士は、「欧州連合の支援がなければ、CTBT検証体制の運用能力を強化する点で、CTBTOが今のような前進的な地位に到達することはできなかったでしょう。」と語った。

これには、EUが途上国においてCTBT検証技術のキャパシティビルディングを支援し、世界最大かつ最も洗練された多国間検証システムへのこれらの国々の加入を促進したことも含まれている。米国のジョン・ケリー国務長官は、この検証システムについて、現代の世界における最大の成功のひとつだと述べている。

「CTBTの署名開放から20年を迎えようという中、EUの強力な政治的・財政的支援は、条約の発効達成に向けた継続的な進展を得る上で、きわめて重要です。」とゼルボ事務局長は語った。

これまでのEUの自発的な貢献を基礎になされた新たなEU評議会の決定は、CTBT検証体制に以下の3つの主要領域で支援を与えるものだと、CTBTOが10月19日にウェブサイトに掲載した記事で説明している。

1.国際監視制度ネットワークの維持

EU財政の最初の部分は、国際監視制度(IMS)と呼ばれるCTBTOの監視局ネットワークの構築を支援するためのもので、例えば、支援を必要とする補助的な地震学的監視施設を置いている国々への支援が含まれる(他の種類のCTBTO監視局とは異なり地震学的監視施設については、維持費負担の責任はホスト国にある)。

また別のプロジェクトは、IMSによる、核爆発に伴う放射線希ガスのみならず、医療用の放射性同位体生産のような正当な民生活動によって放出される希ガスの探知能力を向上させることを目的としている。これによって、世界的な希ガスのバックグラウンド・レベルの研究と、放出源における排出希ガスの捕捉システムの構築への財政的支援がなされる。

IMS/ CTBTO
IMS/ CTBTO

この項目の下での他のプロジェクトには、例えば、外部研究者がIMSのデータや国際データセンターの成果物へのアクセスを可能にするポータルである「VDeCシステム」のアップグレードや、波形データ(地震波、微気圧振動、水中音響)分析のための国際データセンター(於:ウィーンのCTBTO技術事務局)向けソフトウェアの強化などが含まれる。

2.現地査察能力の強化

CTBTOの現地査察能力を強化するために、EUの支援によって、2014年にヨルダンで行われた統合野外演習IFE14」で使われたような、航空機から使用できるマルチスペクトル画像撮影機器の購入が可能となる。また、さまざまな現地査察技術を支えるために、同じく航空機から利用可能なレーザー距離測定システムの購入にもあてられる。

3.アウトリーチと各国レベルのキャパシティビルディング

CTBTO Head Lassina Zerbo overseeing the equipment in use during the Integrated Field Exercise IFE14 in Jordan from Nov. 3 to Dec. 9, 2014. Photo Courtesy of CTBTO
CTBTO Head Lassina Zerbo overseeing the equipment in use during the Integrated Field Exercise IFE14 in Jordan from Nov. 3 to Dec. 9, 2014. Photo Courtesy of CTBTO

また、CTBTOが途上国におけるキャパシティビルディングプログラムを継続することも可能になる。これは、これまで全てのEUによる自発的貢献の不可欠の部分であった。

これによって途上国は、各国の国内データセンター(NDC)を設立・維持することが可能になる。国内データセンターは、CTBTの各締約国によって維持されるもので、IMSから得られる観測データを国際データセンターから受信したり、当該政府の関心事項に関して助言を与えたりするものである。キャパシティビルディングの取組みは、各締結国の国内データセンター用解析ソフト(NDC in a box)の提供・運用支援と、地域的には、中東、南アジア、東南アジア、太平洋、極東地域に焦点を当てたものになるだろう。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan

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|ミラノ万博|日本の新興財団、世界へと手を広げる

【ベルリン/ミラノIDN=ロバート・ジョンソン】

「地球の未来を守り、今日の世代と未来の世代の両方が健康で充実した人生を送る権利を守ること。これが21世紀における開発上の最重要課題である。」と、国連開発計画が委託した独立の報告書『人間開発報告書2011』に謳われている。

これは10月16日に国連の潘基文事務総長にイタリアで公式に手渡された「ミラノ憲章」の前文に掲載されたメッセージでもある。ミラノ憲章は、「地球に食料を、生命にエネルギーを」とテーマとして5月1日に開幕し、10月31日に184日間の会期を終える「ミラノ万博2015」の「遺産」となるものだ。

ミラノ万博2015の関係者が正しくも述べたように、この万博開催期間は、文化と科学、革新と伝統、持続可能性と連帯が交差するユニークな日々であり、145か国と3つの国際機関(欧州連合、国際連合、カリブ共同体)、複数の非政府組織が参加した。

財団法人「DEVNET Tokyo」は、この万博イベントに参加した著名な非営利組織のひとつである。DEVNET Tokyoは、安全で栄養のある食料、清潔な水、エネルギーへのアクセスを確保して人間の尊厳の実現に寄与しているパートナー諸団体を日本から招聘し、万博会場に出展ブースを提供した。

そうすることで、財団法人「DEVNET Tokyo」の明川文保代表理事は、(ミラノ憲章の前文に掲げられた)「人間開発報告書」のもう一つの主要なメッセージに応えている。それは、「現在および未来の世代のために人間の自由を拡大しようと思えば、環境の持続可能性と公平性の関係を理解することが欠かせない」というメッセージだ。

DEVNET Tokyoは、ローマに本拠を持つ「DEVNETインターナショナル」の世界的ネットワークの一部として2013年3月に発足した。本部は、1995年以来、国連経済社会理事会(ECOSOC)の一般協議地位(カテゴリー1)を持っている。しかし、本部組織はミラノ万博には参加していない。

ミラノ万博への参加・出展は、財団法人「DEVNET Tokyo」にとっての初の世界デビューであったというだけではなく、比較的新しい非政府組織でも、この領域での名声が確立されたより大きな組織とも肩を並べることができるというメッセージを、日本の外の世界に向かって発信したいという明川氏の熱意を裏付けるものである。

Mitsugi Ikeda CEO of Ikeda Technical/ Devnet Tokyo

8月1日から31日まで展示を行った財団法人「DEVNET Tokyo」のパートナーとしては、戸建て・集合住宅から、老人ホーム、工場、倉庫、園芸、体育館向けの革新的な「地中熱利用空調システム(Geo-Max)」を開発した池田テクニカル株式会社がある。「私たちは、クリーンで、持続可能で、シンプルな技術に信を置いています。」と、大中小様々な規模の施設向けに、こうした技術を用いた自社製品を販売している同社のCEO池田租氏は語った。

池田氏は、「地中熱は太陽熱を起源とする地中の極浅い所に蓄えられた熱のことをいい、地下5m付近では年間を通して摂氏15度前後の温度に保たれています。」と指摘したうえで、「私たちは、地下2m程度の地中に内径800㎜のポリエチレン管を水平に埋設することで、この地中熱を利用しています。」と語った。

池田氏はさらに、「ポリエチレン管の外周は空洞となっているため地下水及び温水を循環させることで、管内の温度を調整することが可能で、その空気を管内に設置した大型ダクトファンで効率よく施設内に送り出す仕組みになっています。つまり、Geo-Maxは、必要なスペースさえあればどこでも設置可能です。」と語った。

Exhibition booth by System Brain

財団法人「DEVNET Tokyo」と協力しているもう一つの主要パートナーは、新世代のガラスコーティング技術「ナノシャイン」の普及に取り組んでいる株式会社システムブレインである。CEOの神田智一氏は、「使用するのは水と天然鉱石(特殊セラミック)のみで、化学溶剤を一切使わないため地球環境にやさしい保護コーティング技術です。今では、自動車のみならず、大手私鉄車両、船舶、航空機、公共設備など、さまざまなところでナノシャインの技術が採用されています。」と語った。

神田氏はまた、「この技術は日本だけではなく中国やタイなどアジア諸国の一部でも使われており、今後欧州諸国においてもナノシャインの活躍の場が広がる見込みです。」と付け加えた。

Yukiko Yajima, president of the Hiroo Arisugawa spa/ Yukiko Yajima

「医食同源=美食同源」は、財団法人「DEVNET Tokyo」がミラノ万博で運営した展示館(パビリオン)におけるもう一つのパートナーであるケアサロン「広尾有栖川スパ」が掲げているモットーである。適切な栄養摂取による血液浄化の観点から美容と健康を追求している代表の矢島由紀子氏は、展示ブースを訪れた興味津々の観客に、米がいかに豊富な栄養を与えてくれるのかについて説明した。

「もみ殻を取り除いただけの未精米の米(=玄米)は、食物繊維や、ビタミン、鉄分のバランスも黄金比率と言われる完全栄養食ですが、こうした栄養価の95%はぬか層に集中しておりしかも吸収率が悪いため、元来食用には適していない状態にあります。」と矢島氏は説明した。

そこで矢島氏は、この米ぬかの最大の栄養価を独自の酵素分解・特許技術により、あますことなく消化・吸収出来る、「ブラン・トレゾール(Bran Tresor)」という新製品を開発した。「お子様からご年配の方まで安心して摂れる100%ナチュラル栄養フードです。また、デトックスや便秘の解消、美しい肌の維持、アンチエイジングにも有効です。」と矢島氏は語った。

「DEVNET Tokyo」はまた、さまざまな側面における持続可能な開発を促進するプロジェクトに関わっているスリランカ出身のモンテ・カセム博士や中久保正己氏らのような著名なパートナーのミラノ万博への参加も得ている。

カセム博士は、京都の立命館大学副総長や大分の立命館アジア太平洋大学学長を務めた人物である。

中久保氏は、総合省資源システムの企画立案、設計、施工監理、運用管理を行っている「株式会社JCサービス」のCEOである。今年3月、中久保氏はスリランカで実施した「グローバル市場におけるスマートコミュニティ等の事業可能性調査」の報告書を作成した。

中久保氏はまた、遊休地および公共、民間施設の大型屋根を対象に、メガワットクラスの太陽光発電設備を構築し、運営するための総合的なサービスを提供している。「1メガワット」というのはあくまで一部分を取り出した数字だが、これは、平均的な家庭750軒が利用できる電力量に匹敵する。

財団法人「DEVNET Tokyo」のパートナーの多様性はまた、日本の伝統版画家である瀧秀水氏が、財団の運営する展示館でひときわ訪問者の目を引く場所を占めていた点にも象徴されるだろう。瀧氏は、日本国外においても高い評価を得ており、「サロン・ド・パリ」のグランプリなど、多数の賞を受賞している。また、彼の作品は大英博物館にも収蔵されている。(原文へ

「JCサービス」は、総合省資源システム事業と、メガワットソーラー事業の融合総合省資源システムの水・エネルギー供給能力を拡大させる一方、ソーラー発電設備による電力供給能力を付加して、地域防災拠点を作っている。

翻訳=IPS Japan

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【国連IPS=タリフ・ディーン

潘基文事務総長は、国連のポスト2015開発アジェンダにおいて、世界の青年には特別な役割があると主張している。しかし同時に、この若い世代が空腹のまま新アジェンダに掲げられた目標に向かって前進できないことも理解している。

潘事務総長は10月12日に開幕した世界食料安全保障委員会(CFS)第41回セッションに宛てたメッセージの中で、「私たちは、ゼロ・ハンガー・ジェネレーション(飢餓人口ゼロを体現する世代)になるという目標に向かって努力を傾注していくなかで、青年たちが活発に参画できるよう彼らをエンパワーしていかなければなりません。」と語った。

UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri

今年9月には世界160か国以上の首脳が出席した「持続可能な開発に関するサミット」において、繁栄の促進や環境保全など17の目標からなる持続可能な開発のための「2030アジェンダ」が全会一致で採択された。

持続可能な開発目標(SDGs)の主要目標の一つが、2030年までに飢餓と貧困をなくすというものである。

潘事務総長は、鳴り物入りで始まったこの新たな国連の開発アジェンダが成功するには、「世界の食の安全保障が重要」と指摘したうえで、「飢餓と栄養不良の解消に向けた急速な進歩がない限り、2030年アジェンダに掲げられた目標を達成できません。」と警鐘を鳴らした。

持続可能な農業を目指す米国のNGO団体「フードタンク(Food Tank)」のダニエレ・ニーレンバーグ代表はIPSの取材に対して、「小規模家族農家のエンパワーメントを含む食料と栄養の安全保障を改善する強いコミットメントがなければ、どのSDGsも達成することは不可能でしょう。」と語った。

ニーレンバーグ代表は、「多くの点で、SDGsは潘事務総長が主導してきた「ゼロハンガーチャレンジ(=飢餓ゼロへの挑戦)」の延長線上にあります。しかし、政策責任者らが飢餓と貧困をなくすための実質的なコミットメントと投資をする必要があります。それがなければ、国際社会は2020年までに飢餓をなくせません。」と指摘した。

Credit: Courtesy of Danielle Nierenberg

「私は、経済界、資金提供者、資金供与者、政策責任者らが、こうした地球規模の難題に対する取り組みはもはや『待ったなし』であり、農業も環境と経済の両側面から持続可能なものにして、世界の人々と地球を養う方法を早急に見出す重要性を理解していることを望んでいます。」とニーレンバーグ氏は語った。

フードタンクは、既存の食糧管理システムは破たんしている、と結論付けている。「世界には依然栄養不足で苦しんでいる人々が約8億人いる一方で、世界で生産される食料の3分の1が廃棄されています。この問題を解決する方法は一つしかありません。つまり現実を受け止め、自分にできることから行動に移していくことです。」とニーレンバーグ代表は語った。

国連食糧農業機関(FAO)は、10月13日に発表された「世界食糧農業白書2015」の中で、「学校給食、公共事業、送金、年金等の社会保障プログラムは、世界で飢餓と貧困と戦ううえで、大きな役割を果たしている。」「社会保障プログラムはまた、幼児の栄養摂取状況を改善し、児童労働を減らし、学力を向上させ、地域社会全体の経済活動を活発化する一助になる。」と指摘した。

一方同白書は、世界の貧困層のうち、なんらかの社会保障プログラムの恩恵を受けている人々は全体の3分の1にすぎない現状を嘆いている。

報告書はまた、貧しい国々に社会保障プログラムを実施する余裕があるか否か、また、そうした社会保障プログラムを如何にして、包摂的な経済成長を促進し、人々の生活環境を改善して飢餓の撲滅に貢献できるようデザインできるか、問いかけている。

ミレニアム開発目標(MDGs)における貧困削減目標は多くの国々で達成されたが、依然として多くの国々が大きく立ち遅れた状況に置かれていることから、ポスト2015開発アジェンダは、貧困と飢餓を完全になくすことを目的としている。

「多くの開発途上国の間で、貧しい生活を送っている人々の差し迫った欠乏状況を緩和し、経済危機に見舞われた際に、その他の人々が貧困状態に陥るのを防止するためには、社会保障プログラムが必要という認識が広がってきている。」と「世界食糧農業白書2015」は指摘している。

10月16日、「世界食糧デー」を記念してミラノ国際博覧会に参加した潘事務総長は、「70年も前に、世界の国々は『人類の飢餓からの解放を確実なものとする』という公約のもとにFAOを創設しました。そして今日、私たちは、この約束を果たすために、私が2012年に発足させた『飢餓ゼロへの挑戦』の実現に向けて、引き続き努力を傾けています。」と語った。

潘事務総長は、「飢餓とは食料が不足している以上のことなのです。これはひどい不公平そのものです。」と指摘してうえで、「2030年アジェンダは、私たちにとって成功へのロードマップにほかなりません。」と語った。

「私たちが今日ここにいるのは、世界の全ての人々の食料安全保障を達成することを誓約するとともに、飢餓撲滅に向けた世界的なムーブメントを作るためです。この取り組みは、より大きな開発枠組みである保健衛生、経済開発、ソーシャルインクグージョン(=社会的包摂)との密接な連携のもとに進められていきます。」と潘事務総長は力説した。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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米国が核テロ防止条約100か国目の加盟国に

【国連IPS=タリフ・ディーン】

1997年公開の映画「ピースメーカー」(一部が国連本部の外で撮影された)は、ロシアの片田舎で発生した列車事故で行方不明になったリュックサックに入る大きさの小型核弾頭を入手した旧ユーゴスラビア出身のテロリストが、それを国連本部の外で爆発させるべくニューヨークに持ち込むというストーリーを描いた作品である。

これはハリウッドお得意の作り話だろうか? それとも現実に起こり得る大惨事とみるべきだろうか?

Photo: Wide view of the General Assembly Hall. UN Photo/Manuel Elias
Photo: Wide view of the General Assembly Hall. UN Photo/Manuel Elias

テロ集団が盗んだ核兵器で武装するという万一の事態を想定して、「核によるテロリズムの行為の防止に関する国際条約(核テロリズム防止条約)」が2005年4月に国連総会で採択され、2007年7月に発効した。

現在、核保有国である中国、フランス、インド、ロシア、英国を含む99か国がこの条約に批准している。

9月30日、米国が国連条約局に批准書を寄託し、100か国目の締約国となった。

「主要な核兵器保有国による核兵器の使用を制限するいかなる条約や協約の批准と同様、これは朗報です。」と語るのは、ジャヤンタ・ダナパラ元国連事務次長(軍縮問題担当)である。

「この条約を2005年に提案したのがロシアであり、現在、署名国が115か国、締約国が99か国あることを念頭に置いておくといいでしょう。」と、ダナパラ氏は語った。

「核テロは、とりわけ9・11同時多発テロ事件以降怖れられており、アルカイダや、イラクとレバントのイスラム国(ISIL)も、原始的なレベルとはいえ核兵器を製造できる核物質を取得しようとしていることは広く知られています。」と、2007年以来「科学と世界問題に関するパグウォッシュ会議」の議長も務めるダナパラ氏は語った。

「とはいえ、核実験の禁止を規範化し核開発を抑える重要な歯止めとなる包括的核実験禁止条約(CTBT)が依然未発効で、米国を含む7か国の批准待ち状態である現実を踏まえれば、今回の米国の動きをあまり過大評価してはなりません。」と付け加えた。

「1万5850発の核兵器(そのうち93%は米国とロシアによる)を9か国の核兵器国が保有している限り、政治的意図或いは事故によるものであれ、また、国民国家或いは非国家主体によるものであれ、戦争で核兵器が使用され、恐ろしい人道的な被害と生態系や遺伝子への取り返しのつかない被害がもたらされる可能性は、恐るべき現実として存在しています。」と『原子科学者紀要』編集の理事で、ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)の運営委員も務めるダナパラ氏は語った。

核テロ防止条約は、テロリストらが大量破壊兵器を入手することを防ぐ世界的な取組みの一環とされている。

また同条約は、放射性物質あるいは放射性装置の違法かつ意図的な所有・使用や、核施設の使用あるいは損壊に関する罪を規定している。

さらに同条約は、情報共有と、捜査や犯罪人引き渡しの支援を提供することで、国家間の協力を促進するために策定されたものである。

M.V.-Ramana
M.V.-Ramana

物理学者で、プリンストン大学ウッドロー・ウィルソン公共国際問題学部「核未来研究所&科学・安全保障プログラム」の講師でもあるM・V・ラマナ博士はIPSの取材に対して、「私は会話を違う方向に持っていき、『核テロとは何か』を問うてみたいと思います。」と語った。

「ウェブスター辞書は、『テロリズムとは、とりわけ強制の手段として、恐怖を体系的に使うこと』と定義しています。核兵器は大量の死と破壊をもたらしうる。この可能性に直面した人間は誰でも恐怖に陥ることでしょう。」とラマナ博士は語った。

「米国の大統領や政府高官から『いかなるオプションもテーブルの上にある』、つまり、当然そこには核兵器の使用も含むと示唆された中東の人々がどんな気持ちがするか考えてみるとよいでしょう。」

「テロリズムについての、公平かつ公正な定義の下では、他人を恐怖に陥れるために核兵器を使用した者は、誰でもテロリストということになります。これには、核兵器を『単なる抑止のため』に使った者も含まれることになります。」とラマラ博士は主張した。

「まことしやかに恐怖を醸し出す能力こそが究極的に抑止戦略の中核にあることと、抑止がもたらすとされる安全とは、かつて、ウィンストン・チャーチルが語った『恐怖が生み出すしたたかな産物』に他ならないということを、忘れてはなりません。」

Winston Churchill/ Wikimedia Commons

「平和を求める人々にとっての難題は、『非国家主体』による核テロリズムの問題から、核兵器による死と破壊の脅しに政策の基礎を置いている核兵器保有国と、そうした国々の軍縮を進める緊急性へと、着目点を切り替えることにあると思います。」とラマナ博士は語った。同氏には、『約束された力:インドの核エネルギーを検証する』など、複数の著書がある。

ローズ・ゴットモーラー米国務次官(軍備管理・国際安全保障)は先週、「核テロに関して言えば、今日の世界は5年前よりも安全だと言えますが、まだなすべきことはあります。」と指摘したうえで、「米国は、世界のパートナーと協力して、危険な核物質の計量管理と保全をこれからも世界的に進めていきます。」「核物質を手に入れようとするかもしれないテロリスト集団の試みを阻止するには、警戒を絶やすことはできません。」と語った。

ゴットモーラー次官によれば、米国は国際原子力機関(IAEA)核保安基金の最大の貢献国であり、2010年以来、7000万ドルを拠出している。

この基金は、(IAEA)加盟国に専門家や任務遂行チーム、技術派遣団を無償で訪問したり、核保安指針や実践集、事故・密輸データベースを作成したりするのに役立っている。

国務省の核密輸防止プログラム(CNSP)は、世界のパートナーと協力して、核密輸ネットワークの捜査、違法な移転核物質の確保、関与した犯罪人の訴追を行っている。

Rose Gottemoeller/ US gov
Rose Gottemoeller/ US gov

グルジアモルドバのような国々は、高濃縮ウランを密輸しようとした犯罪人を最近逮捕したことで賞賛されています。この地域では大きな進展がありました。究極的には、兵器に利用可能な核物質が押収され続けているという事実は、核物質が依然として闇市場で取引されていることを示しています。」とゴットモーラー次官は語った。

国連によれば、核テロリズム防止条約の主要な条項には、例えば、「核テロ行為の計画、威嚇、実行をこの条約上の犯罪とする」、「締約国はそうした(条約上の)犯罪行為を自国の国内法上の犯罪とする」、「そうした犯罪行為の重大性を考慮した適当な刑罰を科することができるようにする」、「そうした犯罪行為に対する締約国の司法管轄権を確立場合の諸条件」、「犯罪人引き渡しやその他の刑罰措置に関する指針」などがある。

さらに、「放射性物質の防護を確保するための適当な措置を講ずるためにあらゆる努力を払うよう締約国に義務付ける」規定や、「武力紛争における、或いは公務の遂行にあたって行う軍隊の活動はこの条約によって規律されない」規定、「この条約が、いかなる意味においても締約国による『核兵器の使用又はその威嚇の合法性の問題』を取り扱うものではなく、また、取り扱うものと解してはならない」との規定がある。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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ジンバブエに開発援助の成果を広げる日本

国際社会が持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けて様々な方策を模索する中、日本政府は、独立行政法人国際協力機構(JICA)を通じて、この南部アフリカの国で様々な開発領域をカバーしている。

SDGsは、行動志向型で、簡潔かつ容易にコミュニケーションできる国連の開発目標であり、持続可能な開発を世界中で実行する一助となるものだ。

「あらゆる場所で、あらゆる形態の貧困に終止符を打つ」から、「持続的で包摂的かつ持続可能な経済成長の促進」、「すべての人のための生産的な完全雇用とディーセント・ワーク(適切な雇用)を推進」などが、SDGsの17の目標の中に含まれている。

SDGs for All
SDGs for All

JICAはその創設時の使命に沿って、人的資源の開発、能力構築(キャパシティビルディング)、政策・機構の改善、社会経済インフラの提供等の支援を行うことで、公正な成長を通じた持続的な貧困削減を追求している。

このアジアの国(=日本)の開発機関(=JICA)はまた、開発アプローチとして、被援助国の全ての人々が、自ら直面している開発問題を認識し、取り組みに参加し、その成果をともに享受することを目指している。

この目的のために、JICAはジンバブエでこうした開発アプローチが実行されるよう、持続可能な開発の領域での支援に踏み出した。

しかし、JICAは、自己満足的な仕事をしているのではない。

Yuko Mizuno, JICA representative in Zumbabwe. Photo by Jeffrey Moyo
Yuko Mizuno, JICA representative in Zumbabwe. Photo by Jeffrey Moyo

「私たちは、ジンバブエ政府の要請で動いています。まず、何を為すべきかについて、現地政府と合意を結び、あらかじめ決められた領域の中で最善を尽くすのです。」と、JICAジンバブエ支所の水野右孝支所長はIDNの取材に対して語った。

これまでJICAは、ジンバブエ東部の国境の街ムタレの北100kmのところにあるニャンガ出身のネヘミア・ムタサ氏のような、多くの人々の人生を変える数多くのプロジェクトを成し遂げてきた。

「日本人は、ジンバブエの農業プロジェクトに対するJICAによる技術支援を通じて、私の人生を変えてくれました。支援プログラムで提供された訓練のお陰で、私のような一般の人々が、新たに地元で成功した農家として、活躍できるようになったのです。」と、ムタサ氏はIDNの取材に対して語った。

JICAによる支援が得られた地域とは、ニャンガにおけるニャコンバ灌漑プロジェクトである。

JICA’s Study Mission visiting project site of the “Irrigation Development for the Nyakomba Irrigation Scheme” / Embassy of Japan in Zimbabwe
JICA’s Study Mission visiting project site of the “Irrigation Development for the Nyakomba Irrigation Scheme” / Embassy of Japan in Zimbabwe

「ニャコンバでJICAは、(1995年から1999年にかけて)小規模農家を対象にした日本の無償支援により、地区全体で5ブロック(A~Eブロック:680ha)のうち、BCDの3ブロック(471ha)に対して灌漑設備整備を行いました。(A、Eブロックはジンバブエ政府が担当したが土地改革の影響で国の経済が混乱し工事がストップしている。)しかし2006年にサイクロンによる洪水に見舞われ、BCDブロックに設置していた揚水機場は全面水没してしまいました。日本政府は、これらの揚水機場の修復に合意してくれたのです。」と、JICAジンバブエ支所のプログラム・オフィサーであるジェイムズ・ニャフンデ氏はIDNの取材に対して語った。

JICAは新規に(Aブロックの)農業開発支援、揚水機場修復と並行して、「小規模農家生産向上プログラム」を通じて、農家の灌漑スキームの維持管理運営能力(マネージメント)向上や市場を考察した販売能力向上のための支援を行った。

「このプログラムを通して、農民たちは作物を育て始める前の段階で収穫物を売る市場を確保しなければならないこと等、営農のノウハウを学び、それを習得した農民たちが今大いに活躍しています。」と水野支所長は語った。

事業の成功

こうしたJICAによる開発支援活動の成功は、中央マショナランド州ビンドゥラ地方のツンダや、東マショナランド州ムレワ地方のチトラのように、ジンバブエの多くの地域においてはっきりと認められる。こうした地域では、JICAのお陰で台頭しつつある農民たちが、新たな成功をかみしめている。

Map of Zimbabwe
Map of Zimbabwe

「私はいまやハラレの都市部に家を持つまでになりました。自身は郊外に住みながらも、この家を他人に貸しお金を稼いで家族の生活を支えています。これも、JICAから農業を成功させる方法を学んだからです。私の人生は大いに変わりました。」と、6人の子どもを抱える未亡人でビンドゥラに住むチピワ・チタンダ氏は語った。

しかし、JICAは、その人道的支援を、欧米諸国の非政府組織との協力によって行っているわけではない。

「残念ながら、JICAはバスケット・ファンドを行うことができないので、ジンバブエへの私たちの支援は『ジム・ファンド』(Zim-Fund)を通じては行えないということになります。」と水野支所長はIDNの取材に対して語った。

ジム・ファンドとは「ジンバブエマルチドナートラスト基金」のことで、2010年にドナー集団によって創設され、ジンバブエ政府の優先的な復興活動を支援することを目的としたものである。

ジム・ファンドは、アフリカ開発銀行グループの理事会によって承認を受けて設立されたもので、「ジンバブエのためのマルチドナートラスト基金の創設」と題された文書に含まれた勧告によるものだ。

水野支所長によれば、JICAは、ジンバブエ支援の一環として、30年以上前に作成された同国の地図情報を更新するために、測量局と協力して、地理的情報システムの開発を進めている。

the Development of a Geospatial Information Database Project in the Republic of Zimbabwe/Embassy of Zimbabwe
the Development of a Geospatial Information Database Project in the Republic of Zimbabwe/Embassy of Zimbabwe

「地理情報システムが更新されれば、私たちJICAが、いかなる領域の開発を支援すればよいか特定するのが容易になります。」とニャフンデ氏はIDNの取材に対して語った。

「ハラレ市当局は、JICAが協力して更新を進めているこのシステムが完成すれば、これを利用して様々な問題解決に利用できるようになります。このことは、ジンバブエ電力供給公社や利害関係者、ジンバブエ交通安全評議会についても同じことが言えます。この地理的情報システムの更新作業は、2017年まで続けられる予定です。」と水野支所長は語った。

JICAを通じて、ジンバブエにおけるコミュニティをベースにした観光も大いに伸びた。

マニカランド州のイボンヌ・ンゴリマ氏のようなジンバブエ国民は、JICAによるコミュニティをベースにした観光プロジェクトへの支援に、安堵している。

コミュニティをベースにした観光とは、たいていは田舎で、貧しく周縁化された地域住民が、観光客を自分たちの地域社会に招き、宿泊を提供するというものだ。

このコミュニティをベースにした観光に関わる住民らは、地主や企業家、サービスや物品の生産者、従業員として、収入を得ることになる。

雇用の創出

「私が住んでいる村は失業率が高い貧しい地域ですが、JICAの助けでコミュニティをベースにした観光プロジェクトに関われるようになり、商売で得た利益で自分の社会的な地位を引き上げることができました。」と、ンゴリマ氏はIDNの取材に対して語った。

コミュニティをベースにした観光について、水野支所長は、「私たちは観光・ホスピタリティ産業省と協力しながら、既存のものに付加価値を付与することで、観光促進に努めています。」「私たちは村の女性や子供たちに着目し、観光客を集めるために、地域に何があるのか(文化的なものか宗教的なものか等)を把握する支援を行っています。」と語った。

ヌゴリマ氏のような多くの人々が、JICAによるコミュニティをベースにした観光の支援によって利益を得ている。ジンバブエ観光・ホスピタリティ産業省の統計によると、女性を含めた12万人以上が、JICAが支援したコミュニティをベースにした観光によって利益を得たという。

一般の人々への利益は、観光のために特定された領域から得られた収入の形で実現している。

JICAによる生活支援は、教育の分野にも拡大している。

JICAによれば、毎年60人から70人がジンバブエから日本に招聘されて、開発の様々な領域での訓練を受けている。訓練は通常3週間から11週間かかる。

「ジンバブエ人を対象にした修士課程、博士課程の院生のためのABEイニシアチブ」もあります。これは、南南協力という形で、学習プログラムはここと同じような状況にあるアフリカ諸国をホストに実施されています。」と水野支所長は語った。

Master's Degree and Internship Program of the African Business Education Initiative for Youth (ABE Initiative)/ JICA
Master’s Degree and Internship Program of the African Business Education Initiative for Youth (ABE Initiative)/ JICA

ABEとは、「アフリカの若者のための産業人材育成イニシアチブ(African Business Education Initiative for Youth)」を意味し、日本の現在の総理大臣安倍晋三氏にちなんで命名されたものだ。

この南部アフリカ国家の情報通信技術(ICT)に関して言えば、JICAは長年にわたって、ICTや音楽、体育、スポーツに焦点をあてたジンバブエの第三者機関に500人以上のボランティア専門家を派遣してきた。

水野支所長によれば、これは、ジンバブエにICTを根付かせたいとのロバート・ムガベ大統領の要望に応えたものだという。

「理想的には、私たちのプロジェクトは相手方の要望に応える形で行われ、政府内部で、そして政府と共に行う形が望ましい。」と水野支所長は語った。

日本は、現地大使館を通じて、様々な困難な状況を乗り越え、ジンバブエ政府と協力してきた。

匿名を条件にIDNの取材に応じたある日本の外交官は、「我が国政府は、草の根人道プロジェクトへの無償援助の枠組みを通じて、ジンバブエの社会経済的開発のための多くの地域プロジェクトの支援に多大なる努力を傾けてきました。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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国連事務総長、2030年グローバル目標の重要性を説明

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【ニューヨークIDN=ファビオラ・オルティス】

国連の潘基文事務総長は、各国連加盟国が持続可能な開発目標(SDGs)を国家政策の不可欠な部分とし、2030年までの達成を目指すことを強く望んでいる。潘事務総長はIDNとのインタビューの中で、この新たなグローバル開発目標を前進させるうえで市民社会が重要な役割を果たす必要性を強調した。

17の新たな開発目標と169のターゲットは、潘事務総長が2012年に立ち上げた「グローバル・エデュケーション・ファースト・イニシアチブ(GEFI)」に沿って、持続可能な開発を促進するうえで世界市民に重要な役割を割り当てている。

UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri

潘事務総長はIDNの取材に対して、「私は、二国間や多国間協議の機会を通じて、全ての指導者に対し各加盟国がSDGsを自らのものとして認識し、各々の国内経済・社会・環境政策に反映させるよう、強く求めてきました。」と語った。

潘事務総長は、10月9日から11日にペルーのリマで開催された世界銀行グループ・国際通貨基金(IMF)の年次総会から帰った後、ニューヨークの国連本部ビルの38階でIDNのインタビューに応じた。

世界188か国の財務相と中央銀行総裁が出席する年次会合は、国連が17の持続可能な開発目標(SDGs)を採択した歴史的な投票から2週間後に開催された。

潘事務総長は10日、世銀・IMF合同開発委員の議論に参加した。いわゆる「開発委員会」は1974年に創設されたもので、開発問題に関する政府間のコンセンサスを形成すべく閣僚レベルの委員が出席して通常春・秋の年2回開催される。

2030アジェンダ」は「人間を中心にした」ものである。開発委員会会合で登壇した潘事務総長は、「今後15年の開発の道筋は、貧困削減や包摂的な成長、持続可能な開発をこれまで妨げてきた『構造的な要因』に対処するものです。」と強調した。SDGsのモットーは「誰も置き去りにしない(no one will be left behind)」である。

潘事務総長は、「新アジェンダの成功は、政府、議会、地方自治体、国際機関、市民社会、学界、民間部門を含めた、すべてのセクターの間で、開発に向けた新たなパートナーシップを組めるかどうかにかかっています。」と指摘したうえで、「世界銀行は、豊富な専門能力を活かして、持続可能な開発のための能力構築と資源動員を強化することができます。」と強調した。

また潘事務総長はIDNとのインタビューの中で、17の新たな開発目標と169のターゲットは、健全な地球において、場所を問わず、全てに人々の繁栄と健康で幸福な生活を促進することを目標としたものだと繰り返し述べた。

「これらのSDGsは、政府のみならず、市民社会や慈善家など、全ての人々が参加して履行されることが重要です。」と潘事務総長は語った。

ポストミレニアム開発目標(MDGs)であるSDGsのモットー「誰も置き去りにしない」は、社会が持つべき「オーナーシップ感覚」を強化することを目指すものだ。

潘事務総長は、「性的多様性やLGBTI(レスビアン、ゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー、インターセックス)の権利が特定の目標として含まれなかったことを残念に思うか」という問いに対して、「この問題は、新たな開発アジェンダのすべての項目を「分野横断的に」貫いている問題であり、『誰も置き去りにしない』というSDGsのモットーに既に含まれています。誰もが参加すべきであり、民族や性的指向、性別、出生、貧しいか金持ちかは関係ないのです。新しいアジェンダには差別などなく、人間を中心においたビジョンなのです。」と潘事務総長はIDNの取材に対して語った。

国連事務総長にとっては、(SDGsが期限を迎える2030年までの)次の15年は、とりわけアフリカの人々にとって「希望の時期」になるであろう。アフリカでは、今年1月31日にエチオピアのアジスアベバで開催された第24回アフリカ連合(AU)通常総会で採択された「アジェンダ2063」とあわせる形で、SDGsが履行されていくことになっている。

SDGsとアジェンダ2063

アフリカ諸国は、今後50年間で達成したい8つの目標を挙げた。これが、アフリカ経済発展のための柱として機能することになる。「アジェンダ2063」は、実際の運用のために、25年、10年、5年単位で、短期間の行動計画を伴った実行計画を持っている。

Agenda 2063. The Africa We Want/ UN photo
Agenda 2063. The Africa We Want/ UN photo

我々の望むアフリカ」への希望は、過去の不正義をただす枠組みと、一世代で貧困を根絶し、アフリカの社会的、経済的変革を通じて広く繁栄を実現することで、アフリカ大陸の21世紀を実現する枠組みを提供している。

「我々は、2063年までに、アフリカが、(その資源を持続可能な形で、かつ長期的に管理することで)自らの開発を促進する手段と資源を持ち、繁栄した大陸になることを望んでいる」と宣言は再確認している。

その他、次のような希望が目標として宣言されている。「今後50年間で、アフリカは、(今日、人間の安全保障や平和、開発への大きな脅威になっている)武力紛争やテロ、過激主義、不寛容、ジェンダーを基礎にした暴力をなくすだろう。」「アフリカは、麻薬がなく、人身売買もなく、組織犯罪もなく、武器貿易や海賊行為などその他の犯罪ネットワークもない大陸になるであろう。」「それ以前、2020年までに、植民地主義のすべての残滓を取り去り、占領下にあるすべてのアフリカの領域は完全に解放されなくてはならない。」「アフリカの人々は、恐怖も不正もなく裁きを与える独立した裁判所と司法制度を安価で利用できるようになるだろう。」

潘事務総長の言葉によると、良い法の支配と機構を持った、アフリカの平和と繁栄に国連の「最大の優先順位」が置かれることになる。

「17のSDGsの策定には、人間の生活、そしてこの地球のすべての側面が含まれています。とりわけ、アフリカの開発に関して言えば、SDGsはアフリカの『アジェンダ2063』とともに歩むことになります。」「国連が、開発プロジェクトや平和と安全保障の課題を通じて、アフリカ連合およびアフリカ各国と緊密に関わっているのはこのためです。」と、4人のジャーナリストとの会合に応じた潘事務総長は語った。

潘事務総長は、このアフリカ諸国の開発への渇望を「国連が緊密に協力している『先を見通したアジェンダである』と解説するとともに、「アジェンダ2063とSDGsはともに前進し、その基本的な計画は互いに連携していく必要があります。」と語った。

潘事務総長によれば、SDGs合意は、「数百万人という民衆が参加した」、世界の指導者によって採択された包摂的なプロセスである。

「財政・技術協力が、今後のSDGsの履行にあたって重要な役割を担うことになります。」と潘事務総長は指摘した。しかし、それには多額の資金が必要となる。国家元首や、(財務、外務、開発協力などの)関連閣僚が7月13日から16日にエチオピアに集まり、貧困や飢餓の根絶、食料安全保障の達成などの野心的な目標の達成に必要な資金調達の方法をめぐって協議した。

アジスアベバ行動目標

アジスアベバ行動目標は、開発資金調達メカニズムを協議した「第3回開発資金国際会議」で採択された成果文書である。国連の推計によると、SDGsを履行するためには、世界は毎年11.5兆ドル、15年では172.5兆ドルを要するという。

「3年にも及ぶ交渉の後、国際社会は、途上国に対する財政・技術支援を行う基盤を提示したこの枠組みを採択したのです。」と、潘事務総長は語った。

この成果文書は、グローバル・パートナーシップと連帯の精神で、あらゆるレベルにおいて持続可能な開発のための環境をつくり、そのための資金を調達するという難題に対応していく「強い政治的コミットメント」を確認したものである。

「この行動目標は、等しく野心的で信頼性のある履行方法によって裏打ちされ、持続可能な開発と普遍的なポスト2015年開発アジェンダを履行するための資金調達の枠組みを更に強化するとともに、開発のための資金調達を再活性し強化しなくてはならない。」と成果文書には記されている。

またこの成果文書は、「多くの国々、とりわけ途上国は依然として大きな問題に直面しており、一部の国はきわめて立ち遅れた状態にあること。」さらに「多くの国々の間で不平等が劇的に増大している。」と指摘している。

潘氏が事務総長に就任したのは2007年1月1日であり、任期は2016年12月31日までである。潘事務総長は、1945年に創設され、現在193の加盟国を抱える国連の70周年の記念日を歓迎した。

“Punch Rhodes Colossus” by Edward Linley Sambourne (1844–1910) – Punch and Exploring History 1400-1900: An anthology of primary sources, p. 401 by Rachel C. Gibbons. Licensed under Public Domain via Commons

潘事務総長の意見では、国連の最大の貢献の一つは、アフリカ・アジア諸国の非植民地化プロセスに尽力したことにあるという。1950年代から60年代にかけて、この2つの大陸では40か国以上が独立を果たした。

「人類への大きな貢献は、多くの国々が植民地支配体制から離脱していったプロセスです。急速な脱植民地化プロセスを真に促進したのは、まさに国連でした。これは、途上国におけるアフリカの発展の基礎をなしています。」と潘事務総長は語った。

「多くのアフリカ諸国が独立して数十年が経過しますが、一部の国々は『民主主義への円滑な移行』を果たしたものの、大半の国々は『民主主義に移行するまでに、困難で悲劇的な道』を辿らねばなりませんでした。今日でもこの難題に直面している国々があります。」

潘事務総長は、「国連の70年の歩みを振り返れば、国連の効果と効率性、そして国連がどのような遺産を残してきたのかということについて、一定の懸念があることは認識しています。私は、この70年間にわたる国連の取り組みを誇らしく思っています。人権、良き統治、民主主義に関するすべての主要な合意は、国連においてなされてきたものなのです。」と語った。

持続可能な開発アジェンダは、世界を、より安全で、豊かな、そして、持続可能な道へと導いていくでしょう。」と潘事務総長は付け加えた。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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核軍縮団体が米ロ首脳に「核兵器が使用されるリスクを軽減する」よう求める

【ベルリンIDN=ラメシュ・ジャウラ

主な核軍縮団体が、9月下旬に英国への領空侵犯を阻止されたロシアのツポレフTu-160超音速戦略爆撃機が同国を攻撃し第三次世界大戦を引き起こす意図があったのではないかとする憶測を呼んでいることについて、重大な懸念を示すとともに、ロシアのウラジミール・プーチン大統領と米国のバラク・オバマ大統領に対して、「核リスクを直ちに軽減することで合意する」よう強く求めた。

彼らは、米ロ首脳のほか、両国の議会関連委員会、国会議員並びに国防相、外相宛に提出した書簡の中で、「北太平洋条約機構(NATO)軍とロシア軍が最近活発化している軍事演習中に万一衝突した場合に偶発的に引き起こされる可能性がある壊滅的な帰結(=核爆発)」について警告した。

10月7日に公開されたこの書簡は、9月に英国の領空を侵犯中にNATO軍機に通行を阻止されたロシアのツポレフTu-160超音速戦略爆撃機が、核爆弾を起動するためのカウントダウンを既に開始していたことが明らかになっている点を指摘している。

オーストラリアを拠点にする「人間の生存プロジェクト(HSP)」と「核軍縮を目指す会(PND)」がこの書簡作成にあたって調整を担当した。HSPは、シドニー大学平和・紛争研究センター(CPACS)とPNDの共同イニシアチブとして、2012年6月にCPACS内に設立された組織である。また、PNDは1960年以来、オーストラリアを中心に国際核軍縮運動の分野においても大きな存在感を示してきた団体である。

HSPとPDNは、「ロシア軍とNATO軍は最近多数の軍事演習を活発に展開しているが、それらは、反対側からみればあたかも「鏡像」のような動きを互いに極めて近い距離で行っているようなもの。」と指摘したうえで、「こうした演習には双方で核戦力が関与している疑いがあり、壊滅的な結果を招きかねない判断ミスがなされる可能性は明らかである。」と記している。

NATO.INT
NATO.INT

HSPとPNDが他の核軍縮団体の支援を得てとりまとめ提出したこの書簡以外にも、この数か月の間、様々な個人や団体がこの問題に焦点をあてた同様の趣旨の書簡を作成しており、その中には米国とロシアの核戦力の運用に責任を負ってきたジェームズ・カートライト将軍(前統合参謀本部副議長)やウラジミール・ドゥヴォルキン将軍も含まれている。

HSPとPNDがとりまとめたこの書簡には、1995年ノーベル平和賞の受賞団体である核戦争防止国際医師会議(IPPNW)、世界の諸都市による連合組織である世界首長会議2020年ビジョンキャンペーン中堅国家構想(MPI)世界未来協議会(WFC)核時代平和財団、さらに世界各国の国会議員有志が署名している。

書簡には、「世界に備蓄されている核兵器の90%から95%を保有する米国とロシアが核兵器を使用すれば、僅か90分以内に私たちが『文明』と呼ぶ全てのものが完全に破壊しつくされることになる。」と記されており、署名者らは「世界が滅亡する」危険性を指摘している。

書簡にはまた、「核攻撃で人類の半数が居住する多くの都市が焼き尽くされると、壊滅的な気候変動を引き起こし、当初の紛争に関与していない国々にも甚大な影響を及ぼしながら、世界の気温は前回の氷河期のレベルを下回ることになる。」「つまり、核攻撃を生き延びた人々も核の冬がもたらす暗黒の闇のなかで餓死するか凍死することとなる。」と記されている。

核リスクを軽減する方策

書簡の署名者らが強く呼びかけている核リスクを軽減する方策とは、(1)核兵器の警戒レベルを引き下げること。これにより政策責任者らは不十分な情報に基づいて僅か数分という短い時間枠の中で全世界を完全に滅亡させる判断をする必要にもはや向き合わなくてもよくなる。(2)(核兵器の)発射記録を共有すること。そして、(3)挑発的な軍事演習や軍事姿勢を避けること、というものである。

書簡は、1点目を強調して、ニュージーランド、スイス、スウェーデン、チリ、マレーシア、ナイジェリアが提出した「核兵器体系の作戦即応性に関する決議」やインドが提出した「核戦争の危険を低減させることに関する決議」等、核兵器の警戒レベルを引き下げるよう強く要請した多くの国連総会決議に注目するよう求めている。

また書簡は、2点目について、1998年当時に情報交換センターを共同で設立するとした米ロ合意を想起している。この合意は、1995年に気象探査ロケットの打ち上げが米軍の潜水艦が発射した核弾道ミサイルとロシア軍に誤認され、米ロ間の衝突が一触即発の事態にまで発展した教訓を踏まえてのものだった。

書簡はさらに、3点目について、「一連の核体制に関する見直し、とりわけ『核の先制不使用』ドクトリンや、都市を核攻撃の標的から外す決定(先述の通り都市火災が核の冬を引き起こす黒煙の最大の発生源であることから)が、核の大惨事というリスクの大幅な低減に貢献することになるだろう。」と記している。

UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri

書簡の署名者らは米ロ首脳に対して、「米ロの元戦略ミサイル軍司令官のカートライト、ドヴォルキン両将軍をはじめ、IPPNWや、世界各地の宗教指導者が、ロシア軍とNATO軍間の緊張がエスカレートして制御不能に陥り壊滅的な結果を招く可能性について、警告とまでは言わないにしても、懸念が表明されていることについて、それに強く賛同し支持する。」と記している。

核兵器の警戒態勢を解く

事実、「警戒態勢の解除」(核兵器使用の命令が発せられてから実際に核ミサイルが発射されるまでの時間差を拡大する)に関するカートライト・ドヴォルキン両氏が主宰する「グローバルゼロ」による関連研究は、「ウクライナ危機を巡り、ロシアとNATO間の緊張関係は、核リスクが飛躍的に高まる核の瀬戸際政策へとさらに一歩近づいており、誤解に基づく軍事行動が相手側の軍事行動を誘発し事態が急激にエスカレートしていく危険なサイクルに至りつつある。」と分析している。

書簡の署名者らは、欧州安全保障協力機構(OSCE)議員会議が、OSCEを設立したヘルシンキ宣言採択40周年を記念して、「ロシアとNATO間の関係悪化に起因する核の脅威が増していることに深い懸念を表明するとともに、核兵器を保有或いは核の傘のもとにある全てのOSCE加盟国が、核の高度な警戒態勢を解除し、核の先制不使用政策を採用することで、核戦争発生のリスクを減らすよう要請する決議を採択した」点に留意した。

OSCE議員会議同様に、書簡の署名者らもウクライナ国境を巡る紛争の行方に深い危機感を募らせている。

「ここでリスクに晒されているのは、最悪の場合、文明そのものであり、潜在的に人類の存亡すら危ぶまれている。もちろん、『世界滅亡』に至る一連の出来事が必ず起こるとも、そうなる可能性が最も高いといっているわけではない。」

書簡の署名者らは、そのような事態が起こるのではなく、2014年のウクライナ危機に起因する様々な問題が、ロシアを含む全ての当事国間による平和的な交渉を通じて最終的に解決することを「願い、祈っている」。

しかし一方で、彼らは、(ロシアとNATO間の対立が)壊滅的な結果を招く可能性が全くないとは言えないと考えている。「歴史の記録、とりわけ(第一次世界大戦が始まった)1914年8月を振り返れば、たとえ各国の指導者らが情勢を完全に把握していると自信を持っていても、事態は思わぬ方向に展開し、当初の問題など比較にならない深刻な結果を招くことがあるということを、私たちは留意する必要があります。」

書簡にはさらに、「欧州リーダーシップネットワーク」が指摘しているように、(とりわけ軍の間における)対決的な態度や行動は、どちらが先に仕掛けたか、或いは、責任があるかに関わらず、いとも簡単に偶発的な紛争や壊滅的な惨事にまで発展する可能性がある。

「(バルト諸国のように)ロシア軍とNATO軍間の対立がさらに激化し、軍事紛争が長期化した場合、どこで対立が止まるか、或いは、紛争防止への努力が不十分ななか、(1914年の時のように)各国の思惑を超えた紛争へと発展するのを防げるかは予断を許さない。」

最も安全な核兵器とは、間違いなく、それが全く存在しない状態である。NGOはもとより、世界の政府や議会の大半は、核兵器の廃絶について、いつか達成すれば「良いこと」という程度の認識ではなく、人類の生存がかかった緊急の優先事項ととらえている。

このように、この書簡に署名した核軍縮団体は、核保有国に対して、核不拡散条約(NPT)が義務付けているように、人類の生存がかかった緊急の優先事項として、核兵器の完全廃絶に向けて行動をおこすよう強く求めている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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