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課題は残るが、核軍縮によいニュース

【ベルリンIDN=ラメシュ・ジャウラ】

核軍縮に関しては多くのよいニュースがあるが、核兵器禁止を求める活動家が「枕を高くして安らかに眠る」ことができるまでには、まだ長い道のりが待っている。広島・長崎での核兵器使用から約70年、未だに約1万7000発の核弾頭が人類の生存を脅かし続けている。

これらの大量破壊兵器を保持している一握りの国は、核兵器の維持・近代化のために今後10年間で1兆ドル以上を消費しようとしている。つまり年間1千億ドルである。

その大部分は核兵器国の納税者が支払っているものだが、最近のある報告書によると、フランス、インド、英国、米国で核戦力を生産、維持、近代化している民間企業に対して、民間部門が314,349,920,000ドル以上を投資しているという。

よいニュースは、(核抑止力に頼る安全保障政策上の理由からこれまで参加を見送ってきた)日本のような「核の傘依存国」を含む世界の124か国が、「いかなる状況でも核兵器を2度と使わないことが人類の生存の利益につながる」と強調した画期的な声明を承認したということである。

実際、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICANが指摘するように、核兵器の使用がもたらす人道的影響に関する否定しえない証拠によって突き動かされ、核軍縮の進展が遅いことに深い懸念を表明した国家や国際組織の数は、2013年だけでも加速度的に増えている。

2013年3月、ノルウェー政府がオスロで主催した「核兵器の人道的影響に関する国際会議」では、核爆発に対応できるような国際的な対処計画を効果的に実施することは不可能との結論に達した。

9月、核兵器国からの抵抗を受けながらも国連総会によって初めて招集された「核軍縮に関するハイレベル会合」は、人道主義的アプローチと核兵器禁止を求める数多くの呼びかけに焦点を当てた。この勢いに乗って、メキシコ政府は、核兵器の使用がもたらす人道的影響に関する議論を継続するため、2014年2月13~14日に同国太平洋沿岸のナヤリトで会議を主催することを発表した。

国連総会第一委員会で今年10月21日にニュージーランドが発表した共同声明の重要性は、オランダの平和団体「IKVパックス・クリスティ」がICANと共同で行った調査『核兵器に投資するな』によって強調されている。

このような背景の下、核兵器なき世界を半世紀以上にわたって追求してきた創価学会インタナショナル(SGI)は、「核兵器の非人道的性格を明確にし、いかなる状況下でも核兵器を使用しないとの明確な国際規範の確立を目指す継続した取り組み」を歓迎し支持を表明してきた。

SGI平和運動局長の寺崎広嗣氏はIDNの取材に対して、「核兵器のいかなる使用によって生ずる壊滅的な帰結は、『そのようないかなる使用も国際人道法の違反にあたると明確に宣言する』ことを諸政府に義務付けるような次のステップを求めています。」と語った。

創価学会の副会長でもある寺崎氏は同時に、「核兵器禁止に向けた人道的側面からの議論の現実的な限界、つまり引き続き核兵器保有国の協力を得られないでいる問題」についても指摘した。

寺崎氏は、核兵器保有国のオピニオン・リーダーや政策決定者に働きかける協調的な取り組みが必要だとして、「彼らの多くは、非国家主体が核兵器技術を求めるような世界においては核抑止論が既に本質的に破綻していることを認めており、核兵器なき世界はより安全な世界だと述べています。」と語った。

市民社会にとっての課題

この点について寺崎氏は、「市民社会は、『核兵器保有国と非核兵器保有国が生産的な対話に臨めるよう共通言語を作っていく』という重要な課題に直面しています。」と語った。

さらに寺崎氏は、「そしてこれは、この世の終わりをもたらすような兵器を世界からなくすという要請が現実的にも道徳的にもあるからです。この意味で、核兵器を廃絶する作業は本質的に、世界的な企図であり、すべての当事者が建設的な役割を担っているのです。」と語った。

このことはとりわけ外交官に当てはまる。ICANのレベッカ・ジョンソン共同代表はこの点について、「核兵器を禁止し廃絶する外交行動こそが、将来的に核の惨事を避ける最善の道です。」と指摘するとともに、「核兵器の人道的影響に関する重要な(共同)声明に署名した124の政府は、一部の国による核兵器保有の軍事的な正当化よりも、自国民の安全を優先したということです。」と語った。

ICAN国際運営グループのベアトリス・フィン氏は、「核兵器に人道主義の側面から焦点を当てることは成功してきたと言えます。ますます多くの国が、この大量破壊兵器が生みだしかねない容認不可能な害悪に対する懸念を示しています。この議論は、核兵器禁止に向けて信頼に足るような道筋があるという我々の自信と決意を強化してくれたのです。」と語った。

80か国に300人以上の会員を擁するICANは、来年2月の会議で市民社会が効果的かつ意義ある参加を果たせるよう、メキシコ政府と密接に協議している。メキシコ政府は、市民社会のためにこのプロセスを促進し、会議がオープンで包括的なものであるように努力をするであろう。ICANはまた、途上国の活動家に対する支援プログラムを実施する予定だと活動家らは述べている。

長い道のり

核兵器なき世界を実現するまでになぜ長い道のりを歩まねばならないのかということについては、IKVパックス・クリスティとICANの報告書『核兵器に投資するな』に記されている。これは、世界中の298の民間・公的金融機関が、核兵器の生産・維持・近代化に関わる27の企業に約3140億ドルを投資している件について焦点を当てた唯一の報告書である。

同報告書の要約には、核兵器製造企業に融資しているとみられる全ての金融機関名が記されている。その内訳は北米に175機関、欧州に65機関、アジア太平洋に47機関、中東に10機関、アフリカに1機関であったが、ラテンアメリカ・カリブ海地域には一つも存在しなかった。なかでも最も深く関与しているとみられる銀行やその他金融機関としては、バンク・オブ・アメリカ、ブラックロック、JPモルガンチェース(以上米国)、ロイヤル・バンク・オブ・スコットランド(英)、BNPパリバ(仏)、ドイチェ・バンク(独)、三菱東京UFJ銀行(日)などが挙げられている。

これらの大量破壊兵器のリスクと効果について批判している国家や金融機関も一部にはある。しかし、同報告書の調査が明らかにしているように、この3年間で、さまざまな金融機関が、少なくとも計630億ドルを融資し、投資銀行が少なくとも430億ドルを投資し、さらに少なくとも2070億ドルを(核兵器生産関連企業の)株式・債権保有などに使ったという。

にもかかわらず、多くの金融機関は核兵器違法化に向けた緩慢な政治プロセスを待つつもりはない、と同報告書は断言している。「一部の金融機関は、多国間の条約プロセスが始まるのを待つことなく、核兵器生産者に対する投資を禁止あるいは制限する政策を採用している。これらの金融機関は甚大な人道的加害を避けるという倫理的責任に基づいて行動してきた。」と報告書は述べている。

さらに報告書には、「金融機関の倫理的責任を強調する傾向の強まりに続けて、金融機関や政府に対して、核兵器の保有や開発を継続することは容認できないとの明確なシグナルを送る個々の市民の責任を強調する傾向も強まっている。」と記されている。

実際、核兵器は、無差別殺戮兵器であり、危険な人間の手に渡る可能性もあるという認識が世界的にも高まっているにもかかわらず、生物兵器や化学兵器とは違って、依然として国際法で禁止されていない唯一の大量破壊兵器である。今年6月19日、米国のバラク・オバマ大統領はベルリンにおいて、「核兵器が存在し続けるかぎり、我々は本当に安全とは言えません。」と語った。

核軍縮に関する国連総会ハイレベル会合」において、オーストリアのハインツ・フィッシャー大統領は、「核の奈落を避けようとの我々の共同の取り組みは、その野心においてあまりに控えめであり、わずかな成功しかもたらしていません。」「核兵器が我々を滅ぼしてしまう前に、我々がそれを悪とみなし、禁止し、廃絶しなくてはなりません。」と語った。

これまでに、核不拡散条約(NPTの全190加盟国が「核兵器のいかなる使用によっても起こる破滅的な人道的帰結」を認識しており、国際赤十字委員会が言うように、次のステップは核兵器を「違法化し廃絶すること」である。

これによって、まさに「希望は人間の胸に永遠に湧き出る」という古い格言に重みが加わることになろう。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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清掃することを恐れる「不潔な」キリスト教徒

【ペシャワール(パキスタン)IPS=アシュファク・ユスフザイ

ジョハル・マセーさんは、パキスタンの大半のキリスト教徒がそうであるように、清掃の仕事をしていた。場所はカイバル・パクトゥンクワ州の州都ペシャワールの工場である。

彼は、ペシャワールの諸聖徒教会で9月22日に起きた自爆テロの犠牲者の一人である。また、清掃の仕事をしていることから人口の大半を占める国内のイスラム教徒から「不潔な人々」と蔑まれている数十万人におよぶキリスト教徒の1人でもあった。

地元で仕立屋を営むラフィク・マセーさんは、「キリスト教徒と握手する奴なんていないよ。文字通り、私たちは『触れてはいけない人間』として扱われているのさ。」と語った。彼の店にはイスラム教徒の客も多いが、大半の客は彼と口をきこうともしないという。

「キリスト教徒の大半は、ペシャワールの街に集中してのさ。なぜなら田舎だと、(イスラム教徒)の住民からなにをされるかわからないからね。」

またキリスト教徒の圧倒的多数は、不衛生で水道もなく、保健施設も整っていないスラムで極貧生活を送っている。ペシャワール大学で清掃の仕事をしているジャヴィド・プヤラさんは、「私たちは2部屋の泥とレンガの家に住んでいるが、家族10人にはあまりに狭い」と語った。

このように厳しい環境に置かれているキリスト教徒だが、彼らはしばしば欧米諸国の手先と見なされる傾向にある。

「世界で(イスラム教に対する)何らかの冒涜的な事件が起こると、パキスタンではキリスト教徒がその責めを負わされることになります」とシャムシャッド・カーンさんはIPSの取材に対して語った。昨年、米国で預言者ムハンマドを冒涜する映画が制作されたのを受けて、近隣の町マルダンでは、キリスト教会が焼き打ちされる事件が起きた。

「人々はキリスト教徒を異教徒(非イスラム教徒)として嫌っているのです。」とカーンさんは語った。

パキスタン憲法では、キリスト教徒が大統領や首相の職に就くことを禁じている。「国会や州議会ではキリスト教徒に1%の議席が割り当てられているのですが、これをもって彼らの声が国の政治に反映されているとはとても言えません。」「住民の多くはキリスト教徒を握手したがりませんし、ましてや食事を共にするものなどいないのが現状です。」とカーンさんは語った。

このような状況の中で、多くのキリスト教徒たちの望みは、次の世代がよりよい生活を送れるようになることだ。「最近では、若いキリスト教徒の中に、教育を受けて高賃金の仕事に就く者が増えてきています。彼らは(親の世代のように)清掃の仕事に就こうとはしません。」と政府庁舎で清掃の仕事をしているブータ・マセー(60)さんは語った。

「私は地元の大学を卒業して今では銀行で現金出納係をしています。私の友人十数人も大学を卒業して高給な仕事に就いています。」と息子のアクラム・マセーさんはIPSの取材に対して語った。

多くの若い世代のキリスト教徒は、親の世代では経験することがなかったより良い未来を見据えている。「友人にはイスラム教徒もいます。私たちはともに食事をし、政治やいろいろな話題を語り合います。お互いに尊敬しあっているのです。」と掃除人の息子で現在はペシャワールのイスラミア大学に通うムクタール・マセーさんは語った。

「キリスト教徒の少女の大半は、(イスラム教徒の)地元の少女が就労を望まない看護の仕事に就きます。あるいは公立や私立の学校で教師の職に就くこともあります。」と、地元住民のジャラル・マセーさんは語った。しかし、こうしたより良い生活を志向するキリスト教徒の若者らの希望は、今回のキリスト教徒を狙った過去最悪の自爆テロにより。大きく揺らぐことになった。この死亡者85人、負傷者140人を出した自爆テロに、パキスタンのキリスト教徒は震え上がった。

ペシャワール在住の10万人にも及ぶキリスト教徒らは、まともな生活と、社会に受け入れられることを求めて努力を積み重ねてきたが、今やテロリストからの脅迫に対処することを余儀なくされている。

「私たちキリスト教徒は全く無防備な状況に置かれています。テロリストたちは私たちを標的にしてくるので、当局によるしっかりとした保護が必要です。」と9月22日の自爆テロで負傷したジャミル・マセーさんは語った。

ペシャワールの宗教学者ムハマド・カリム氏は、「テロはイスラム教徒とキリスト教徒の間の対立を煽ることを目的にしているのです。」と指摘したうえで、「キリスト教徒は、私たちの病院や事務所、市場を掃除し、奉仕してくれているのだから、彼らに感謝しこそすれ、傷つけてはならないはずです。イスラム教では、非イスラム教徒と共存することを謳っているのですから。」と語った。

ウラマー連合のマウラナ・タヒール・アシュラフィ会長は、「マイノリティー(=キリスト教徒)を保護できないでいる現状に衝撃を受けるとともに、極めて恥ずかしいことだと思っています。なぜなら、預言者ムハンマドの教えによれば、非イスラム教徒のための礼拝の場を保護することは国の義務なのですから。」と語った。

一方、イスラム宗教学者マウラナ・ザファル・グル氏は、「イスラム教スンニ派宗教学者のほとんどは、教会の存在を認めていません。彼らがそれでも沈黙を保っているのは、政府や国際社会からの圧力があるからにすぎないのです。」と語った。

パキスタンマイノリティー運動のサレーム・グラブル会長は、「パキスタンではキリスト教徒はこれまでも惨めな生活を送ってきました。私たちは僅かな賃金で清掃の仕事をしてきたのです。そして今、テロ攻撃により命の危険に晒されているのです。」と語った。

「最近のキリスト教徒を標的にした自爆テロは、パキスタン政府がタリバンとの対話を決意したタイミングを狙って国際社会の注目を引こうとしたものです。テロリストらは、対テロ戦争におけるパキスタン政府の関与に激しい憤りを感じており、パキスタン国内のモスク、シーア派住民、葬列、学校、市場、政府庁舎等を標的にすることで、そうした怒りを訴えているのです。」とラホールの政治学者サワール・シャー氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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未来の世代を維持するカギを握る軍縮

【ニューヨークIDN=ジョアン・エラキット】

政策形成を通じて将来世代の利益増進に取り組んでいる「世界未来評議会(The World Future Council)」は、列国議会同盟(IPUおよび国連軍縮部(UNODAと協力して、4年前から世界の平和と安定に貢献した優れた政策に「未来政策賞」を授与している。

この国際社会にプラスの変化をもたらす使命を帯びた三者連合による顕彰プロセスは、次の質問から始まる。「今日もっとも重要な問題は何であり、いったいどの国が、他者の注意を引くような熱意をもってそれに取り組んでいるのか?」そして今年のテーマは優れた「軍縮政策」に焦点を当てることとなった。

10月23日、国連関係者、市民社会、各国の代表がニューヨークの国連本部に集い、「2013年未来政策賞」授賞式が開催された。

国連オーケストラの演奏と、自動小銃「AK-47を改造したギターを携えたコロンビアの歌手セサル・ロペス氏の歌で始まった授賞式は、平和と安全保障をもたらす手段としての政策形成の重要性を訴えるイベントとなった。

3つの受賞カテゴリー(「金賞」「銀賞」「特別賞」)に沿って、「優れた軍縮政策」、とりわけ、兵器(小火器および核兵器)を廃棄する取り組みが模範的かつ持続可能だと評価された国に賞が授与された。

潘基文国連事務総長は、すべての形態の兵器を解体することの重要性を支持するとしたうえで、軍縮は「もっとも重要な世界の公共財」であり、「国連軍縮部の取り組みを引き続き支援していきます。」と語った。

世界未来協議会によると、2012年の世界の軍事支出は1兆7000億ドルを遥かに上回るという。これは、貧困削減や疾病対策、環境問題に使われている資金の額と対比してみると驚くべき数値である。

兵器の存在そのものが社会に脅威を及ぼすものだと言うこともできる。また、兵器の不法な拡散・売買は、引き続き多くの国にとって深刻な問題であり、武器を用いた暴力を加速し無辜の市民を死に追いやる一方で和平プロセスを妨げている。

従って今や軍縮問題は、持続可能な発展と民衆保護の両立という難題を解決するために不可欠の要素となっており、今年の授賞式ではその重要性が大いに強調された。

そして受賞者は……

多くの候補推薦を募ったのち、8人で構成する受賞者選定委員会が7月に検討を行い、ニューヨークで発表される受賞者を決定した。その際、6大州15ヵ国における25以上の軍縮政策が検討された。

ノミネートされた国の多様性は言うに及ばず、提示された政策の多様性は、このテーマが今日の国際社会においていかに緊急の課題であるかを物語っている。検討された軍縮政策には、特定の兵器の廃棄に焦点を当てたものもあれば、核兵器の完全廃棄と軍縮に着目したものもあった。

授賞式をホストした「世界未来評議会」のアレクサンドラ・ワンデル理事長は、IDNの取材に対して、今日の世界情勢に照らしてこの賞が持つ重要性について次のように説明した。

「今日、ニュースを見れば、毎日のように武力紛争や銃の拡散を伝える暗い報道に接する状況であり、世界の多くの人々が絶望感に打ちひしがれています。だからこそ、『未来政策賞』は、前向きな(今年の場合、軍縮政策の)実例が世界に存在し、軍縮を行い現在および将来世代の生活環境を向上させることは可能だということを、世界の人々と各国政府に知らしめる責務を負っていると考えています。」

「未来政策賞」特別賞は、ベルギーをはじめとする5ヵ国に授与された。ベルギーは、対人地雷を禁止した、「1995年武器弾薬法」改正、さらに、クラスター弾を禁止した「兵器に関する経済的・個人的活動を規制する2006年の法律」が評価された。

コスタリカは、1948年の5週間にわたる内戦の後、1949年に制定した憲法の12条で常備軍を廃止したことが評価された。

モザンビーク南アフリカ共和国は、犯罪撲滅の領域で相互協力・支援した1995年の取り組みが評価された。そして5ヵ国目の「特別賞」受賞国モンゴルは、2000年に国内法である非核法「モンゴルの非核兵器地位に関する法律」を成立させ「一国非核兵器地帯」を確立したことが評価された。

「未来政策賞」銀賞は、アルゼンチンとニュージーランドに授与された。アルゼンチンは、2006年に施行した「銃火器自発供出」政策が評価された。この政策は、不必要な銃火器による暴力を防止する記念碑的な第一歩であった。

ニュージーランドは、1987年に施行した「ニュージーランド非核地域、軍縮、軍備管理法」(これによりニュージーランドの国土と領海は、非核兵器および非原子力推進艦艇地帯となった:IPSJ)が評価された。このニュージーランドの政策は、南太平洋において核実験が行われていた時代に、健康と環境を守るうえで重要な役割を果たした。

そして「未来政策賞」の最高賞である「金賞」は、既に半世紀以上に亘って多くの国に影響を及ぼしてきた「トラテロルコ条約」としても知られる「ラテンアメリカ・カリブ海核兵器禁止条約」を実現した、ラテンアメリカとカリブ海諸国に授与された。

1967年に署名されたこの条約は、核軍縮を利用した協力的な地域安全保障を生み出す前例を作った。キューバ危機に刺激されて、(条約署名から)2年後の1969年、ラテンアメリカ・カリブ海地域核兵器禁止機構(OPANALが設置された。トラテロルコ条約の基本原則を守り、地域の平和と安全を継続的に作り出す活動をしている。

トラテロルコ条約は、あらゆる核兵器の製造、使用、実験、設置、貯蔵、取得、保有を禁止するという顕著な特徴を有し、地域外からの核兵器の脅威に対処するという公約を果たしてきた。一方、当時多くのラテンアメリカ諸国が将来的に核兵器開発能力を取得しかねない原子力産業の育成に乗出し始めていたことを踏まえて、同条約は将来を見据えてもいた。2013年の現在、この非核兵器地帯条約は、1960年代当時と同様に重要な意義を持ち続けている。

「ラテンアメリカ・カリブ海核兵器禁止条約の特異な点は、これらの国々が人類初の非核兵器地帯の創設に成功したのみならず、他者にも影響を与えたということにあります。今日、南半球は非核兵器地帯であり、それが他の地域や他の核兵器国に対する刺激となっているに違いありません。なぜなら、依然として核兵器を保持しているということは平和への脅威だからです。」とワンデル会長は語った。

軍縮の将来

それぞれの受賞者は賞を母国に持ち帰り、地球社会を守るための取り組みを続けることになるが、ここで問わねばならないのは、軍縮の未来が次の世代にとって何を意味するのかということだ。

「核廃絶フォーラム」第2号に寄稿した、示唆に満ちた論文の中で、ロブ・ファン・リエット氏は、まもなく核兵器が日常の一部となっている世界で生きる可能性と対峙しなくてはならなくなる、概して核問題に無知な人々について言及している。米国のバラク・オバマ大統領が2009年4月にプラハで行った演説を回想しながら、ファン・リエット氏は、核抑止をどう捉えるのかはっきりしない状況がもたらす致命的な側面について再考している。

「(オバマ大統領による)この発言は同時に我々の目を覚まさせるものであった。核兵器が及ぼす危険性について概して認識が浅い若い世代に対して、ベルリンの壁の崩壊は核兵器の壁の崩壊につながらず、今すぐにも世界を完全に破壊しかねないものであるということを気づかせたのだった。」

この悲しい真実は、大半の若者―間違いなく核世界の影響を維持しつづけなければならないであろう世代Y(1970年代末から90年代中盤に生まれた世代)―が、軍縮をめぐる政治動向についてほとんど理解していないという事実によって、より現実的なものとなっている。

過去の行動は将来の条件を形作るが、未来政策賞によって光を当てられた政策は、この現象をきわめて明瞭な形で明らかにしている。

これらの政策の多くは30年前のものであり、40年も前のものすらある。内戦や世界的な不安、権力の濫用が、現在においてもそうであるように、これらの時代にきわめて重い意味を持っていた。これに対抗して、ともに手を携えて、歴史を繰り返させないように政府が実行することのできる政策を創り出すべく刺激を受けた人々の姿があった。

世界の指導者らが集って核兵器の将来について議論する際、これらの計画に来る世代も関与させるよう願うばかりだ。あるいは、少なくとも、平和と軍縮の関係について熟考するよう世代Yに対して呼びかけよう。こうした世代によって、兵器に対する考え方が再評価され、社会を守る政策に関する教育が行われ、彼らが地方政治や国政への関与を実現していけば、将来の世代を支えていく思慮に富んだ措置が可能になるだろう。

軍縮は、国際の平和と安全を強化し、「未来政策賞」を通じて我々が垣間見たように、変化のドミノ効果を生み出すことができるのだ。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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サウジ政府が国連安保理を非難

【国連IPS=タリフ・ディーン

1991年、サウジアラビアが国連総会議長のポストを目指してパプアニューギニアと争っていた時のこと―。サウジアラビアはまず、アジアグループからの指名を勝ち取る必要があった。そのために「袖の下」も使ったという。

国連報道に長く携わり現在は米国のシンクタンク「フォーリン・ポリシー・イン・フォーカス(FPIF)」で上級アナリストを務めるイアン・ウィリアムズ氏は、IPSの取材に対して、「当時アジアグループからの代表指名投票が行われた際、サウジアラビアに賛成の挙手をする大使らの手のほとんどに、スイスの高級腕時計『ロレックス』が光っていました。」と語った。

この話自体はやや眉唾物だが、国連機関の要職の座を巡って裏側で何が行われていたかを示すエピソードではある。

10月17日、サウジアラビアは、(おそらく高価なギフトを伴わない)精力的なロビー活動を経て、国連総会で国連安保理非常任理事国(任期2年)のポストを勝ち取った。ところが、それから24時間もしないうちに、理事国入りを辞退するとの異例の発表を行ったのである。

「安保理非常任理事国のポストを辞退するというサウジ政府の決定は、絶対王政国家だからこそあり得る判断だと思います。また、国王自身が(安保理非常任理事国のポスト獲得を目指した)自国の外務省の動きについて知らなかったという可能性さえあります。」と英国のトリビューン誌にも寄稿しているウィリアムズ氏は語った。

イスラム協力機構(OICは21日、サウジアラビアの決定を支持する声明を発したが、国連のアラブ諸国の代表部は、サウジ政府がこの決定を見直すことを期待している。

あるアジアの外交官はIPSの取材に対して、「サウジ政府はシリア情勢を巡って行き詰っている国連安保理の現状に不満を抱いており、今回の決定を覆すことはないだろう。」と語った。とりわけ、シリアのバシャール・アサド大統領に対する制裁を求めた西側諸国主導の決議案がロシアと中国の拒否権行使により3度も頓挫している現状を問題視しているのだという。

「アラブ研究所」が発行する有力電子マガジン『ジャダリーヤ』(Jadaliyya)のモーイン・ラバニ編集長は、「今回のサウジアラビアの行動は、同政府に外交政策を行う能力が欠如していることが表面化したもの」と指摘したうえで、「自国の国連代表部が、非常任理事国選出に大いに沸いたにも関わらず、その直後に彼らの多大な準備と努力の一切を無にすることになる(辞退)発表を本国政府が行ったことを考えればこの点は明らかです。」と語った。またラバニ編集長は、「この決定を誰が下したのか、またこの発表自体が単なる決定を伝えたものなのか、それともサウジ政府の懸念を誇示するために行った政治的なジェスチャーだったのかについては不確かなままです。」と語った。

またラバニ編集長は、「サウジ政府は、国連安保理のポストを辞退する発表を行った際、安保理の構造的な機能不全と、安保理がシリアやパレスチナ問題の解決に失敗してきた経緯を指摘した」点を挙げ、「こうした懸念は、さらなる検討に値します。」と語った。

ラバニ編集長はしかし一方で、「国際の平和と安全を守り紛争解決を協議する場としての国連の権威を失墜させるような行為を、米国やイラク、ときには中東から遠く離れたニカラグアと結託して、長年に亘って行ってきたのも、他ならぬサウジアラビアなのです。」と指摘した。

ウィリアムズ氏は、サウジ政府の今回の決定の背後には、国内の有権者の期待に応えようとしながら、(米国をはじめとした)重要な支援国への配慮を示さなければならないことから生じるジレンマが存在する、と指摘した。

1991年に国連総会議長に就任したサウジアラビアのシャミル・シハビ氏が最初に手掛けた仕事の一つが、「シオニズムは人種主義と人種差別の一形態である」とした国連総会決議3379について再検討する国連特別総会の議長を務めることだった。この国連総会はジョージ・H・W・ブッシュ大統領の呼びかけで開催されたもので、再検討の結果、(そもそも1975年にアラブ諸国、第三世界諸国、ソ連が主導して実現した)同決議は覆された。

ウィリアムズ氏は、当時シハビ議長自身が、イスラエル代表の欠席にもかかわらず、(イスラエルにとって有利な決議を行った)この総会を欠席していた点を指摘した。当時ブッシュ政権に借款を拒否されていたイスラエル政府は、ブッシュ大統領がこの国連総会の開催を呼びかけることで、アメリカ・イスラエル公共問題委員会(AIPAC、親イスラエルロビー団体)からの支持獲得を狙っていると警戒して大使の出席を見送っていた(当時の米以関係)。

ウィリアムズ氏は、「当時のサウジアラビアの動きに、今回のショッキングな決定の背後にある共通の論法を見出すことができます。つまり、そもそもサウジアラビアの外交政策は二枚舌的なものにならざるを得ないのです。例えば、一方で米国と結んでイランを追い詰めながら、他方では、同じイスラム教国に攻撃を加えていると見られないように注意しなくてはならないのです。」と指摘した。

ラバニ編集長は、「実際のところ、サウジアラビアがパレスチナ問題の解決を真剣に考えているとまともに受け止めている人はほとんどいないでしょう。」と語った。

「ほとんどの人が、サウジアラビアが今になって突然、国連安保理の機能不全やパレスチナ問題に関する責任放棄に気づいたというのは、遅きに失したと考えるのではないだろうか。もしサウジ政府がそれほどまでにパレスチナ問題を重要だと考えているのならば、今回のように国連を舞台にした政治ショーを演出する前に、なぜ米国に対してそれを真剣に提起し、対米関係を見直さなかったのだろうか。」とラバニ編集長は疑問を呈した。

またラバニ編集長はシリア情勢について「サウジ政府は、容赦ない宗派間抗争を遂行するために(シリアのみならずイラクやレバノンにおける)最も過激なスンニ派原理主義グループに対する武器援助を含めた支援を行っているが、こうした政策がサウジ政府が国連安保理に要求している平和と安全の確保にどのように貢献しているのかという問いに対して、未だに説明を行っていません。」「この問いにサウジ政府がどのように回答するかは不明です。」と語った。

そして今後の中東情勢について、「現在懸念されているのは、サウジ政府が、交渉によるシリア情勢の妥結とイランとの対話が進展する事態を防ぐために、(そうした状況を同じく望んでいない)イスラエルと結託して中東を戦火に巻き込む方向に動く事態です。今後の望みは、サウジ政府がこれまで通り、米国政府の指示に従うことです。」とラバニ編集長は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【デリク(シリア)INPS=カルロス・ズルトゥザ】

3か月前に内戦から逃れてきたばかりのグルナズさんは、イスラム教の戒律に従って死後24時間以内に弟を埋葬するために再びシリアへと帰る途中である。しかし、棺を担いでイラク・シリア国境を超えるのは容易なことではない。

バグダッドの北西460キロにあるクルド自治区の町ペシュカブールには、この数か月間、尋常でない人の波が押し寄せている。その多くがシリアからの難民だが、いったん離れた戦乱の地に戻らねばならない者たちもたくさんいる。イラク側の国境検問でクルド人官吏による出国審査手続きを待っている間、弟の死に直面してショックで打ちひしがれているグルナズさんに代わって、同行の人物が事情を次のように語ってくれた。

「シリアで7月にイスラム過激派らによる(クルド人支配地域に対する)攻勢が始まってから、私たちは隣国イラクのエルビル(バグダッドから北390キロにあるクルド人自治区の行政上の首都)に移ってきました。しかし、まったく不運なことに、彼女(グルナズさん)の弟が交通事故で亡くなってしまったのです。」

イラク・シリア国境の行き来を管理する両国の検問所の風景は他の国々のものとほとんど変わらない。ここでも制服を着た検査官らが荷物を調べ、カウンターの向こうでは私服の官吏がひたすらコンピューターにデータを打ち込んでいるおなじみの風景である。およそ一時間後、グルナズさんら一行の出国手続きは終わったが、彼女らのパスポートに出国印が押されていないのが、ここの検問所の特徴を示している。

 Kurdish-inhabited area, by CIA, Public Domain
 Kurdish-inhabited area, by CIA, Public Domain

つまりここペシュカブールは、イラクのクルド人自治区(クルド人の長年の悲願である自らの国家樹立とまではいかなかったが、これまでに勝ち取ったそれに最も近い自治形態)と、クルド系シリア人が今日実質支配しているシリア北東部が接する国境なのである。

今日クルド人は、約4000万人が、イラン、イラク、シリア、トルコの国境に分断されて暮らす、独立国家を持たない世界最大の民族である。シリアに暮らす約300万~400万人のクルド人は、2011年3月に民衆蜂起がシリアで勃発して以来、バシャール・アサド政権にもスンニ派アラブ人を主体とする反政府勢力にも与せず、基本的に中立の立場をとる「第三の道」を選択した。

シリア北部と北東部では、政府が反政府勢力と戦う兵力を南部に結集するため軍を撤退させたのに続いて、2012年7月には人口の大半を占めるクルド人が事実上の自治を確立した。しかしその立場は、政府軍及び反政府勢力双方の攻撃に晒される不安定なものである。とりわけ、トルコ政府の支援を受けていると報じられているアルカイダと繋がりを持つイスラム原理主義勢力との熾烈な戦闘が続いている。

(長年国内のクルド人独立運動に悩まされてきた)トルコ政府は、国境の南側(=シリア北部及び北東部)にクルド人の統治政体が樹立される事態を決して歓迎しないと公言している。

当面のところ、イラク北西部のクルド自治区とシリア北東部の間に天然の国境を形成するハブール川を渡る物品や人間の通過記録を、イラク政府もシリア政府も取っていない。

イラク側での書類手続きが終わり、グルナズさんら会葬者らは自分の名が記載された書類を受け取った。その書類を所持した者だけが、ハブール川を行き来する2隻の船に乗ることを許される。

まず、涙を必死に堪えようとしている民族衣装を着たクルド人男性らが棺を担いで乗船し、船の中央に棺を置いた。そして2人の女性が彼らの深い悲しみを媒介するかのように、クルド人が歓喜か悲しみが極まった時に発する独特の奇声を発していた。グルナズさんは、同行者に促されて、両手で顔を覆ったまま乗船した。

船頭のシェルワンさんは、「川に橋ができればもっと楽になるのだが。」と、シリア側の川岸で既に工事に取りかかっている2台のブルドーザーを指してながらつぶやいた。

ペシュカブールにかかる浮橋は、本来車両の通行と石油輸送に限られている。にもかかわらず、国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、8月だけでも3万人以上が国境を越えたという。シリアからイラクに逃れた難民は20万人ほどだと見られている。

流れが穏やかなハブール川を渡る時間は僅か5分ほどであった。対岸のシリア側に上陸すると、新たに創設されたクルド系シリア人からなる治安警察「アサイッシュ」の制服に身を包んだ2人の少女が、越境者の荷物を検査していた。

この地で治安警察を率いるハシム・モハメッドさんは、IPSの取材に対して、「私の部隊は約40000万人規模のクルド人民保護部隊(YPG=シリアのクルド人の中で唯一自前の武装組織)を補佐する約4000人のボランティアで構成しています。」と説明した。YPGは、本格的な軍事組織で、これまでのところシリア北部・北東部への勢力拡大を目論むイスラム原理主義勢力の攻勢を防ぐことに成功している。

このクルド人軍事組織の資金源の大半が、イラクのクルド人自治区からの越境支援のほか国境管理に伴う収益で賄われている。国境では、ハブール川の岸から数メートルのところに白い小屋が設けられており、越境者は一人当たりここで1000シリアポンド(=約665円)を徴収される。現地の官吏の話によると、この川を渡河する人の数は一日当たり150人から200人とのことである。

シリア側の検問所の外ではタクシーが待機しているが、出発前に一休憩したい人は、施設に隣接して建てられている小屋の中に、臨時食堂を見つけることができる。現地のクルド人は、このような困難な状況下にあっても持ち前の商魂をたくましく発揮している。

グルナズさん一行は、入国審査を通過すると直ちに葬儀場に向かった。一方同じくハブール川を渡河してシリア側に入国したその他の人々は、ここで各々の計画を立てている。

ダマスカスの北東680キロのカミシリを目指すマスード・ハミッドさんも、この臨時食堂で腰を掛けてお茶を飲んでいた。ハミッドさんは、アラブ語とクルド語の2つの言語で作成されたシリア初のバイリンガル新聞『ヌ・デム』をシリアで発行している。最新号をイラクのエルビルで印刷しての帰りだった。

「シリアのクルド人自治地域には、依然としてまともな印刷機がないので、15日ごとにイラクとの間を行き来しなくてはならないのです。」とハミッドさんは語った。

ハミッドさんはダマスカス大学に在学中の2004年、ユニセフ本部前で抗議活動をする子どもの写真を掲載したとしてシリア当局に逮捕され、3年の懲役刑に処せられた。しかし彼の勇気ある行動は「国境なき記者団」に注目された。釈放後フランスに亡命し、状況が好転したのを見てシリアに戻ってきた。ハミッドさんは、「シリアはこれから大きな変革期を迎えます。かつてとは全く異なる様々な変化が起こるでしょう。」と指摘したうえで、「今日、私たちは(イラクとシリアの)出入国管理を通らなくてはならなかったわけですが、今やどちら側の検査官もクルド人なのです。」「これは、これから中東で起きる数多くの変化のひとつにすぎません。」と語った。

翻訳=INPS Japan

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|UAE|英首相、2020年万国博覧会のドバイ開催を支持

【ドバイWAM】

英国のデイビッド・キャメロン首相は、アラブ首長国連邦(UAE)のドバイ首長国こそ、2020年万国博覧会を主催するのにふさわしい、と語った。

キャメロン首相は英字日刊紙「ガルフ・ニュース」に寄稿した記事の中で、2020年万博のドバイ開催を支持する理由として次の3点を挙げた。「第一に、来る万博はまさにドバイの出番だと思います。誰もがドバイに近づくにつれ、砂漠に忽然と現れる高層ビルのスカイラインに鮮烈な第一印象を受けることでしょう。しかし昨年ドバイを訪問した私もそうですが、この街を後にする頃には、誰もがその鮮烈な第一印象を遥かに上回る、長く心に残る感銘を覚えることでしょう。この街は、わずか半世紀の間に、漁業と真珠養殖を営む小さな街から、世界有数の国際都市に変貌を遂げたのです。

「この街には、アラビア語、ウルドゥ語、マラヤーラム語(インド南西部ケララ州で話されるドラヴィダ語)、ソマリア語、タガログ語、ロシア語、英語が日常生活の中で飛び交っています。そしてこの街には200を超える国籍の人々が働き、暮らしているのです。」

 「第2に、2020年万博をドバイで開催することは、国際社会に対して中東が可能性と活力に満ちた地域であり、過去・現在・未来に亘って革新の源泉でありつづけていることを改めて知らしめる効果が期待できます。」


「ドバイは世界有数のビジネス拠点であり、人々は、この都市の成功を目の当たりにして中東地域の可能性を見出すとともに、より良いビジョンと信念、そして弛まぬ努力をもってすれば、自分の国も変えられるという確信を抱けるのです。」

 
「第3に、ドバイは世界を繋ぐ中東における貿易・流通のハブとしての地位を確立しました。つまりドバイ万博は、世界の幅広い地域からのアクセスが可能という点においても、(他の候補地より)優れているのです。1851年の第一回万博がロンドンのハイドパークに建設された水晶宮(クリスタルパレス)で開幕した時、来場者は太陽の光を浴びて光り輝くクリスタルの外観を見て、あたかも『アラビアナイト(千一夜物語)』の世界から飛び出してきたような建物のように思えたと言い伝えられています。」

「しかしそれから150年以上が経過しているにもかかわらず中東における万博開催は未だに実現していません。私は、2020年の万博でそれを実現する時だと確信しています。そしてその中東初の万博開催地としてドバイに勝る場所はありません。」とキャメロン首相は述べている。

翻訳=IPS Japan

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ロシアは、核のレトリックよりもより良い政策を推進できる

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【モスクワIPS=パボル・ストラカンスキー】


ロシアは、一見したところ、核軍縮政策の変化に対して頑なに抵抗しているかに思えるが、シリアに化学兵器を廃棄させた最近の動向を見ると、世界の核兵器備蓄を削減するうえでより積極的な役割をロシアは果たしうるのではないかと専門家らは考えている。

9月26日にニューヨークの国連本部で開催された史上初の「核軍縮に関する国連総会ハイレベル会合」は、ロシアが核兵器削減への新たな取り組みを行わないとの立場を明確にして終了した。

ロシアは、米国の戦略防衛システムの問題や、既存の核戦力削減条約の効果的な履行、他国の兵器プログラムに関する懸念など、緊急と考える問題に先に対処すべきだと主張した。

しかし、同ハイレベル会合では、シリアが化学兵器を廃棄することに合意したのを受けて、核問題と同じ程度に化学兵器についても議論された。

もともとはロシア政府によって提案されたシリアとの合意は、もしある国に大量破壊兵器(WMD)計画について再考させることができるならば、核兵器の問題も含め、他の国も説得することができることを示した、と専門家らは考えている。

Petr Topychkanov
Petr Topychkanov

カーネギー・モスクワセンターの不拡散問題の専門家ペートル・トピチカノフ氏はIPSの取材に対して、「核軍縮問題について、このハイレベル会合でロシアから何か新しい動きが起きると予想できる要素はないが、シリアの化学兵器廃棄同意後、何らかの変化が起きる希望が出てきました。」と語った。

「シリア合意は、大量破壊兵器の廃棄に関して、ロシアと他国との間での協力の良い模範を示した、という点が重要です。今回は核問題についてではなかったものの、ロシアが軍縮問題で他国との議論を活性化できるとのシグナルを送ったと言えるでしょう。」

「シリアは、化学兵器の廃棄を加盟国に義務づける化学兵器禁止条約の署名国ではなかったが、(ロシアの説得を受入れ)今回同条約への署名と化学兵器の廃棄に合意しました。従って、シリアに対して大量破壊兵器(WMD)を廃棄させることができるなら、例えば核兵器のような他のWMDについて、他の国々に同様の措置をとらせることも、不可能とは言えないでしょう。」

ロシアと米国は合計で世界の9割の核兵器を保有しているが、ロシア政府は、核軍縮の必要性には米ロだけが対処するのではなく、すべての核兵器保有国が参加しなくてはならないと強力に主張してきた。

ウラジミール・プーチン大統領は、近隣諸国、周辺諸国が自国の核戦力を拡大しているとみられるときに核戦力の削減を呼び掛けて意味があるのだろうか、と公然と疑問を投げかけている。

ロシアは、「核軍縮に関する国連総会ハイレベル会合」において、核兵器とその他の形態のWMDをもつすべての国が軍縮への措置を採るまでは、核軍縮には本当の未来は訪れないであろう、と強調した。

トピチカノフ氏は「ロシアは、核軍縮問題を、米ロ間の軍縮という視点からのみ考えているわけではありません。ロシアは軍縮協定に他の国々も巻き込んでいきたいのです。」と語った。

「それは、たとえば国連の安保理5大国すべての軍備を縮小するような多国間協定というわけでは必ずしもありません。なぜならそれは不可能だからです。ロシアはむしろ、多くの二国間軍縮協定の締結を推進したいと考えています。」

たしかに、このところ米ロ間の核軍縮の取り組みは失速している。冷戦終結以来、双方の核弾頭の数を削減するさまざまな協定が締結されてきた。

バラク・オバマ大統領が今年6月のベルリン演説の中で行った、米ロ両国双方が(配備済み戦略)核戦力を3分の1削減するという提案は、ロシア政府によって事実上否定されている。両国の兵器運搬能力の違い(通常兵器で圧倒的優位にある米国に対抗するためロシアは多数の戦術核兵器を維持しているとみられている:IPSJ)から、ロシアは、核戦力の大幅削減に同意すれば軍事的に不利に立たされることを恐れているのである。

ロシアはまた、米国のミサイル防衛計画にも神経をとがらせており、ロシアに対してそれが使用されることがないとの確約を得ない限り、核兵器に関して譲歩することはなさそうだ。

「(核軍縮に関する)ロシアの立場はきわめて頑ななものです。それを変えなければならないという必要性を見出していないのです。」と、ウィーン軍縮不拡散研究所のニコライ・ソコフ上級所員はIPSの取材に対して語った。

「国内的には、(ロシア)世論は核軍縮にあまり共感を持っておらず、国際的には、少なくともどこかの国から何らかの動きが起きることをロシア政府は期待しています。『(米国による)我々は、国内の政治状況から政策を変えることができない』というよく聞く議論に対して、(ロシアでは)『なぜ我々が負担をしなくてはならないのか? 全員が参加しなくてはならないはずだ。』という議論が湧き上がっているのです。」

ロシア政府関係者は、2010年にワシントンで結ばれた新戦略兵器削減条約(新STARTの義務に見合うようにロシアは核兵器を削減しているが、米国は同じ義務を果たしていないという指摘を好んでする。

今年初めに発表された最新公式データによると、米ロ両国は2018年までに条約上の削減目標を果たさねばならないが、米国が配備済み戦略核弾頭と発射手段に関して依然として上限をはるかに上回っているのに対して、ロシアはすでに下回っている。

ロシア政府はまた核戦力のための支出を増やすことを主張している。今月、ロシアメディアで、政府が核兵器関係支出を今後3年で5割増やすとの報道が出た。ほとんどが旧ソ連時代に作られた兵器や技術を維持・更新する必要があるためだ。

「ロシアには軍縮義務があるが、核戦力は旧式で維持にコストがかかり、近代化される必要があります。ロシア政府は新STARTとそれが課した制限に従っているが、その制限内で核兵器を更新・開発する方針も採っています。」とトピチカノフ氏は語った。

しかし、核軍縮に関して他国との二国間協定を推進し、WMD放棄の交渉に他国を引きずり込む方針をたとえロシア政府が持っていたとしても、ロシア・米国のそれぞれで核兵器の削減がなかなか進まないことは、ロシア政府にとって歓迎すべからざる事態ではない。

ソコフ氏はIPSの取材に対して、「ロシアの指導層は、実際には現在の停滞状況を望んでいるのです。それは邪魔されずに核戦力の近代化を進める機会が得られるからです。たとえばミサイル防衛に関して米国が何をしようとも、その研究開発が実際にロシアの安全保障に影響を及ぼすような生産プロセスに変換されるまでまだ相当の年数がかかります。」と語った。

「すべての核兵器保有国が、現在の軍備管理の停滞状況を利用して、各々が望む計画を進めようとしています。これが可能なのは、現在は大きな紛争の脅威が存在しないからです。こうした核兵器保有国の計画の妨げになる唯一のものは国際社会からの圧力ですが、残念ながらそれは十分に強力なものとは言えません。」(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【ナント(フランス)IPS=スティーブン・リーヒー

ある晩、イングランド北西部チェシャー州にあるアシュトン・ヘイズ村のパブで、誰かが気候変動とエネルギーについての話を始めた。2005年のことだった。それから2年の間に、村人たちは、CO2排出とエネルギーのコストを2割も削減した。

今やアシュトン・ヘイズ村は、イングランドで初の、カーボンニュートラルコミュニティーになろうとしている。

「人びとは、気候変動と資源の枯渇を目の当たりにして、大きな変化が生み出されねばならないということを理解しています。」と語るのは、ロブ・ホプキンズ氏だ。彼は、地域住民らが寄り集まって、街頭や地域をより持続可能にしていく方法を探る運動「トランジション・タウン」の創設者の一人である[IPSJ注:トランジションとは「移行」の意]。

「これは、ただ待っていても政府が解決してくれる訳ではないという現実を知っている友人や近隣の住民が、『私たち一般人でも何ができるか?』という問題意識から始めた運動なのです。」とホプキンズ氏は語った。

大量のごみ問題に悩まされた南アフリカ共和国南部のグレイトン村の住民らは、ビニールなど自然に分解しないゴミをペットボトルにぎっしり詰め込んだ「エコレンガ」を製作している。これは、高い断熱性を持った良質の建築素材になり、たとえばグレイトンにあるトイレのブロックを作るのに使われている。

一方、失業率が20%を超え賃金が低下しているポルトガルでは、トランジション運動は、お金を使う必要性を減らすことに焦点を当てている。ある小さな町では、お金を使うことが3日間禁止された。人びとはその代わりサービスを共有したり交換したりしたのだ。

「私たちは自ら変化を生み出すことができるのです。」と、「『何かをやるだけ」が生む力:いかにして地域の活動が世界を変えるか』の著者でもあるホプキンズ氏は語った。

このように自発的で非営利の運動である「トランジション・タウン」には今や、1000以上のコミュニティーが参加している。これらのコミュニティーでは、住民自身が知恵を出し合って化石燃料への依存度を削減する方法を生み出すとともに、食料や水、エネルギー、文化、健康といった共通の問題について、コミュニティーの力で自己解決できる能力を高める取り組みを行っている。

国連の「気候変動に関する政府間パネル」(IPCC)が9月30日に発表した2000ページ以上に及ぶ報告書によると、1983~2012年の気温は、北半球の過去1400年間でもっとも高かった。

IPCC
IPCC

慎重に選ばれた言葉で記されたこの報告書では、気温上昇や降水量の変化、極端な気象など、観察されたさまざまな影響について詳述している。また、CO2排出が増すとこれらの影響も悪化することを確認している。

英国南西部の人口50万人都市ブリストルのジョージ・ファーガソン市長は「CO2排出をゼロにするために都市が果たしうる役割はきわめて大きい」と語った。

ブリストル市では、能動輸送や徒歩、自転車移動を推奨し、街路樹による日よけを倍に増やそうとしています。大気の質と住民の健康を向上させたいのです。」とファーガソン市長はIPSの取材に対して語った。

「ブリストル市は、最も早くから『トランジション・タウン』運動に加わったコミュニティーのひとつであり、市民みんなのための『エコシティ』を創出するためのアイディアと実験に溢れたコミュニティーです。そうした取り組みのひとつが、午後3時から5時まで市内の多くの通りが子どもの遊び場として解放され、車の進入が一時禁止されるというものです。これは大きな反響を呼び、今では多くのコミュニティーが「路上遊び運動」としてブリストル先例を実践しています。」とファーガソン市長は語った。

ブリストルはまた英国におけるリサイクル先進都市であり、市が所有する持続的可能エネルギー公社を創設する計画もある。また市内の子どもたちは、来年から学校でユニークな生態学(エコロジー)を学ぶことになっている。これは毎年市が資金を提供する緑化事業の一環として実施するもので、市内のどこにどんな種類の木を植えるか、子どもたち自身が調べ、自ら決める内容となっている。

「子どもたちは親に重要なエコの教訓を教えてくれるものと確信しています。」とファーガソン市長は語った。

ところで市長は、「ブリストル・ポンド(上の写真)」と呼ばれる同市独自の通貨(=地域通貨)で給料の全てを受け取っている。これは市内の店でしか使うことができない。

「私は、ブリストル・ポンドで自転車もズボンも食べ物も買いましたし、髪も切ってもらいます。」と市長は語った。

「現在世界では、400以上の地域通貨が使われています。グローバル化と企業支配が強まる中で、あたかもそれに反発するかのように地域通貨を導入するコミュニティーの数は世界各地で急速に増えています。そうした中、ここブリストル市では、市民が地方税をブリストル・ポンドで支払うことはできるが、企業が所有するスーパーマーケットは地域通貨を受け取らないという事態も起こっています。」とファーガソン市長は語った。

この夏ブリストル市は、こうしたこれまでの取り組みが認められ、英国の都市としては初めてとなる、2015年の「欧州緑の都市(European Green Capital)」に選出された。

「私たちがブリストル市でやっていることは、数多くの都市で実現できることです。また私たちは大いに楽しんでやっています。」とファーガソン市長は語った。

フランス北西部のブルターニュ地方にあるサン・ギル・ドゥ・ミーンは、かつて人口が流出しつづけ経済も傾いた僻地の村だった。この村は、自らを、村が所有するエネルギー生産者として位置づけなおす決断を下した。今日、風力、太陽光、バイオマス、バイオガス、家屋の断熱向上を組み合わせて、村の全エネルギー消費量の3割を地場産出のエネルギーで賄っている。村民らは、2025年までに他の地域にエネルギーを販売することも狙っている。

村の再生可能エネルギー委員会のセリーン・ビルソン氏は、「エネルギー転換で雇用とシナジー効果が生まれました。私たちの村では、今では新しいビデオ会議施設を持ち、農場トラクター用のバイオディーゼルを生成しています。」と語った。

ビルソン氏は、「かつて貧しかったオーストリアのギュッシンク村の例に大いに学びました。」と語った。その村は、1990年代末、欧州の自治体として初めて再生可能エネルギーだけで完全に村のエネルギー需要をまかなった場所である。サン・ギル・ドゥ・ミーン村の住民も、省エネ努力でエネルギー消費を5割カットし、再生可能エネルギーの売却で今や数百万ユーロの収入がある。

ビルソン氏は、「私たちは研究のために時間を費やしたのではありません。事態に反応したのです。つまり、行動に移すことが大切なのです。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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エミレーツ航空、2020年の搭乗客数を7千万人と予測

【ドバイWAM】

エミレーツ航空は、2020年の年間搭乗客数を7000万人と予測しており、本拠ドバイのビジネスパートナーとともに、これに対応するための各種計画に基づいたインフラ整備と資本投下を進めている。

エミレーツ航空のプレスリリースによると、これらの計画は、2020年万博の開催地に関する最終選考を行うためドバイを訪問中の博覧会国際事務局(BIE一行に対して行った同社のティム・クラーク社長によるプレゼンテーションで披露された。ドバイは、エカテリンブルク(ロシア)、アユタヤ(タイ)、イズミル(ドルコ)、サンパウロ(ブラジル)と並んで、2020年万博の開催候補都市に名乗りを上げている。

クラーク社長は、「わが社は2020年までに250機以上の最新鋭大型旅客機を擁し、世界6大陸を繋ぐ路線で年間7000万人の乗客にサービスを提供いたします。これによりエミレーツ航空は、世界最大の国際旅客運行会社となります。」と指摘したうえで、「しかし、世界最大の航空会社になること自体が最終目標ではありません。私たちの狙いは当初から世界からの旅客を本拠のハブ空港であるドバイ国際空港を経由して世界各地の目的地にノンストップで繋ぐことです。ドバイは戦略的に優れた位置にあり、ここを発着するわが社の航空機は、例えば、ドバイ-ヒューストン路線(ボーイング777-300ER:16時間)やドバイーシドニー路線(エアバスA380:14時間)など、ノンストップの直行便をとおして世界人口の90%にアクセスが可能です。」と語った。


「世界人口の3分の1が、ドバイから旅客機で4時間以内、3分の2が、8時間以内のエリアに暮らしています。今日、エミレーツ航空は、週あたり約3200の旅客機を76ヵ国135都市に就航させています。また2012年1月以来、新たに20路線を就航させ、ドバイとその先の目的地への貿易・観光の利便性を向上させる航空輸送網の拡充をはかりました。さらに年末までには、ドバイとギニアのコナクリ(10月27日)、パキスタンのスィアールコート(11月5日)、アフガニスタンのカブール(12月4日)を結ぶ路線が就航予定です。

またエミレーツ航空では積極的に最新機材の導入を行っており、現時点でエアバスA380(53機)及びボーイング777(64機)の世界最大のオペレーターである。さらに2020年までには、こうした最新鋭大型航空旅客機を250機以上保有する予定である。

エミレーツ航空の本拠であるドバイ国際空港を訪れた乗客数は2005年の2480万人から2010年には4720万人へと倍増するなど、同空港を利用する航空機数及び旅客数は急激な伸びを示している。2012年、ドバイ国際空港は、世界225都市からエミレーツ航空を含む140の航空会社の旅客機に搭乗した5700万人の訪問客/乗継客を受入れた。

2020年、ドバイ首長国は2000万人以上の来訪者を見込んでおり、この予測需要に対応するため、ドバイ国際空港のインフラ拡充・整備を着々と進めている。2008年には、エミレーツ航空専用の3番ターミナルを新規に設置したのに続き、最近では同社が運営するエアバスA380専用発着のコンコースA(20のゲートで同時にエアバスA380の運用が可能)を設置した。現在世界でエアバスA380専用発着のターミナルがあるのはドバイ国際空港のみである。

また同空港では、他社の国際旅客機に対する運行管理能力をさらに拡大するためコンコースDの建設を進めており、2015年に完成予定である。

また、ドバイ近郊のジュベル・アリ地区に人工複合都市ドバイ・ワールドセントラル(DWC)の一部として建設が進められているアール・マクトゥーム国際空港(2013年7月に貨物便の運行を開始)では、10月27日に旅客ターミナルがオープンし、旅客便の発着が開始される予定である。ドバイ首長国では同空港をドバイの新たな物流の中心地とすべく、2014年5月の完成を目指して貨物ターミナルと付属施設の建設を進めている。同空港は、2020年代中旬までには、1億6000万人の旅客と1200万トンの貨物を扱う能力を備えた世界最大級の国際空港になる予定である。

翻訳=IPS Japan

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「ドバイの将来展望にぶれはない」とUAE紙

【ドバイWAM】

英字日刊紙「ガルフ・ニュース」は、ドバイ首長のムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム殿下が、大型開発プロジェクト「ドバイ運河拡張計画」を月末までに始動させると発表したことについて、「ドバイは将来の展望についてぶれたことはない。政府は2020年の万博誘致に名乗りを上げた時点から、明確で意欲的な都市開発計画に着手してきており、ドバイが『常にビジネスに開かれた街』というメッセージは、こうした大規模プロジェクトの発表の中に読み取ることができる。」と報じた。

「ドバイ運河拡張計画」について同紙は、「(この工事が完成すれば)かつて不毛な砂漠だった地が、街の中心部をドバイ運河で取り巻く島へと変貌することになる」と指摘したうえで、「この街の歴史と地理に大きな足跡を残す注目すべき一里塚となるだろう。」と報じた。


同紙はまた、この計画の規模について、「交通インフラの整備関連費のみで20億ディルハム(約500億円)を上回るほか、50,000㎡のショッピングモール群、450件のホテル・レストラン、高級ヨットハーバー、80,000㎡におよぶ水辺の歩道が建設される巨大プロジェクトである。また運河の拡張工事部分はビジネスベイ(新ビジネス街)とアラビア湾を結ぶおよそ3キロで、2017年の完成を目指して急ピッチで工事が進められる予定。」と報じた。

さらにガルフ・ニュース紙は、「UAEが40年前に建国された時、ドバイクリークの畔に広がる家々や市場が、いつの日か大都市の中心部を運河で取り囲んだ島の一部になるとは、誰が想像しただろうか?」と問いかけるとともに、「確かにドバイは、数年前の世界金融危機がもたらした先行き不安の影響に晒された。しかしドバイ、UAE、市民の底力に疑念を抱いた人々には、その後のドバイの目覚ましい発展を見てもらいたい。」と報じた。

運河拡張事業の他にも、昨年11月に発表された「ムハンマド・ビン・ラシードシティ」(ユニバーサルスタジオと提携した家族向け大型娯楽施設、世界最大のシッピングモールとプール、ホテル、美術館等)や、新たなランドマークとなる「ドバイフレーム」、さらに、ドバイマリーナ地区のブルーウォーター開発プロジェクトも着々と進行している。

翻訳=IPS Japan

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