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イスラエルとイラン、どちらが非核中東への障害か

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【テルアビブ/ラマラIDN=メル・フリクバーグ

国連安全保障理事会常任理事国(米英仏中露)にドイツを加えた世界の6大国(P5+1)が、イランイスラム共和国に課せられた制裁を解除することと引き換えに、同国の核計画に関する包括合意に6月末までに達することを目指している。

6月の期限前に、3月末までに政治的枠組みに関する合意をP5+1が目指す中、イランの核開発の意図について報じた記事が再び紙面を賑わせている。

この枠組み合意は、4月27日から5月22日にかけてニューヨークの国連本部で核不拡散条約(NPT)運用検討会議が開かれるのを前にしてなされるものだ。

IDNは、将来的な中東の非核化とそれが実現する可能性、目標達成を阻む障害について、イスラエルとパレスチナの専門家にコメントを求めた。

イスラエル国家安全保障研究所(INSS、テルアビブ)の主任研究員であるエフライム・アスキュライ氏は、中東が直面しているイラン問題と核問題の専門家であり、イスラエルの保守的な観点を持つ人物である。

「6月の期限に向けて、枠組み協議に進展があるかどうかはわかりません。」とアスキュライ氏はIDNの取材に対して語った。

「これまで多くの交渉期限を見てきましたがた、依然として意見の対立を耳にします。様々な情報源が合意妥結の可能性に様々な意見を述べている一方で、一部には妥結困難を指摘する意見もあります。いずれも公的に確認されたものではないのです。」

「イランは極めて熟達した交渉相手です。彼らの主要な目標は国際社会を満足させる合意ではなく、制裁を解除させることにあるのです。」

「しかし、制裁を解除させるには、核開発の意図を放棄せずに譲歩をしたと見せかける必要があります。」

「イランは既に核兵器を開発する能力を取得しているが、これに国際的な制約を課されたくないと思っています。」とアスキュライ氏は語った。

「イランがイスラエルを攻撃するとは思えない。」

またアスキュライ氏は、「イランが現時点において核兵器を開発しようとしているとは思えません。ただし、万一脅威を認識した場合に核兵器を開発できるような先進的な能力を保持しておきたいとは考えているでしょう。」と語った。

「そうした先進的な能力をひとたび手にすれば、イランの指導部から核兵器開発の指示が出た場合、実際に開発に進むことになります。究極的に言えば、イランは不可避なことを先送りにしているだけだと思います。」

アスキュライ氏は、もしイランの核開発を抑えることができなければ、他の中東諸国も、シーア派のイランに対するスンニ派諸国間の相互防衛策として、自らの核兵器取得を目指す可能性がある、と指摘する。

さらにアスキュライ氏は、「イスラエルの核兵器は、(スンニ派)湾岸諸国が核兵器計画を追求する場合の要因ではなかった。」と指摘したうえで、「イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ現首相が、イランがユダヤ国家であるイスラエルに対する生存上の脅威であると盛んに非難してイランの脅威を煽ったことが原因だとする主張は正しくありません。」と語った。

「イランがイスラエルを攻撃するとは思えません。その可能性はきわめて低いと言えます。しかし、ネタニヤフ首相がイスラエルの安全保障に関して警戒的な態度をとるのは正しい姿勢です。なぜならイスラエルは、もし必要に迫られればイランを攻撃する権利を保持しておくべきだからです。」

「またイランは一貫してイスラエルに対する言葉による攻撃を加えています。例えばイラン政府は、ホロコーストの存在を否定しています。これはイスラエル国民の神経を逆なでしているのです。」

「イラン政府はイスラエルを地図上から消去するなどと述べていますが、これは非常に危険なゲームです。イスラエルもまた、自らを防衛するために言葉で反応しています。両者は言葉による戦争を遂行しているのです。」

「イスラエルはイランに対する脅威ではないし、イスラエル人がイラン人に敵対しているという主張はあたりません。イスラエルは、(1979年の革命で)イスラム共和国が権力を獲るまでは、イランに対してきわめて友好的な関係を築いていました。」

アスキュライ氏は、仮にイランが核開発の意図を放棄し、国際社会で尊重される一員になろうと努力するならば、非核中東は可能であろうと考えている。

「しかし、現段階ではイランには透明性が欠けています。査察官を核施設に入れず、核能力について嘘をついているのです。」とアスキュライ氏は語った。

一般市民がすべての事態について説明を受けているかという問いに関してアスキュライ氏は、「イランの頑迷さのためにメディアはすべての情報を与えられていないが、国際原子力機関(IAEA)は公明正大であり、知りうる限りの情報を公表しています。」と語った。

「イランとの合意は可能だ」

しかし、ラマラ近くにあるビルセイト大学の政治科学者サミール・アワド教授はアスキュライ氏とは異なる意見であり、同氏の分析に異を唱えた。

「イランとの合意に達する可能性はあります。イランは、軍事目的のために核計画を追求する意図はないということを非常に明確にしてきていますし、ロシアと中国もこの主張を支持しているのです。」とアワド氏はIDNの取材に対して語った。

「イラン政府は民生目的で核計画を推し進め、経済発展を導こうとしています。すなわち、ドイツや日本、ブラジル、南アフリカと同じような能力を持とうとしているのです。」

「イランはエネルギー生産のための十分な核技術を持つことを目指しており、この点については他国と同様の権利があります。ハッサン・ロウハニ大統領は、イランを世界に開こうとしているのです。」

「ロウハニ大統領は、制裁のために失業率が高まり国際投資が減少することで、高い教育程度とレベルの高い実業をもつイラン国民が経済的に抑えつけられるような孤立と断絶の状態を望んではいません。」

「最近、米国も欧州諸国もイランに対してより前向きなアプローチをしてきているように感じています。」

「欧州諸国は(米国ほど)懐疑的でなく、核を保有したイランによって欧州が脅威に晒されるのではないかとは、それほど恐れていません。」

「これは今や、米国についても安全保障の問題というよりは、むしろイランに対して厳しい立場をとっている共和党と、合意妥結を目指そうとする民主党との間の政治課題になっています。」とアワド氏は解説した。

「他方、核開発の意図に関してイランの説明に透明性がないと批判するイスラエルは、そのアプローチにおいて非常に欺瞞的です。」

「そのイスラエルこそが、中東最大の核兵器国なのです。同国は、中東で最も強力な国であるというだけではなく、最も好戦的で攻撃的な国でもあるのです。」

「ネタニヤフ首相は、とりわけ今回のイスラエル総選挙(3月17日)で票集めを有利に導こうとして、イラン核武装化の脅威論を盛んに利用しています。」

「イスラエル国民は、国の安全が脅かされていると感じると極右政党に票を投じる傾向にあります。ネタニヤフ氏は、自らの政治的利益のためにこうした国民の心情を操作するのに長けているのです。」

「イラン『脅威論』は、(イスラエルにとっての)大きな生存上の脅威があるとの幻想を仕立て上げることで、パレスチナとの和平協議問題を棚上げにする極めて便利な口実に使われているのです。」とアワド氏は語った。

「しかし、イスラエルの諜報機関モサドが、イランは核兵器取得に向かってもいないしそれを望んでもいないとみなしている事実は、今も変わりはありません。」

「また、核拡散理論がなぜイスラエルに対してのみ議論されないのか?この現実について一度考えてみる必要があると思います。イスラエルが核開発の可能性があるというだけでイランに脅威を感じるべきというのであれば、250発以上の核弾頭を既に保有しているイスラエルに対してイランが少なくとも同程度の脅威を感じてもおかしくないのではないでしょうか。」

アワド氏は、「他のアラブ諸国も核兵器を取得することを望んでいる」とする(アスキュライ氏の)見解を否定するとともに、「これらの国々は、イランと同様に国内的な理由(民生目的)から核施設を開発しようとしている。」との見解を示した。

「エジプトは原子炉を2基建設する協定をロシアと結び、アラブ首長国連邦は同じような協定をフランスと結んでいます。」

アワド氏は、イスラエルこそが、非核中東への最大の障害だと考えている。

「もしイランが核兵器を保有したとしても、イスラエルを攻撃するほど愚かではないでしょう。他方でイスラエルは、パレスチナ占領をやめ核兵器を放棄する意図は全くないように見えます。つまりこのことが、中東和平の最大の脅威であり続けているのです。」と、アワド氏はIDNの取材に対して語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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|視点|世界市民教育への抜本的なアプローチ(クィーンズ大学教授)

【ブリスベンIPS=ウェイン・ハドソン】

世界市民教育は、このところしかるべき認知を得てきているが、それを論じる文献の多くが、「平和と正義を促進する教育」「持続可能性」「環境への配慮」「多宗教」「多文化理解」といった旧来からの検討課題を別の呼び名で論じたものである。

また別の文献は、子どもたちが、世界史やグローバル倫理、グローバル法など特定のグローバルな知識を学ぶことを提唱している。こうしたアプローチは「世界市民」というものに含まれる(考え方における)革命性を把握し損ねているというのが私の意見である。

これらは、時代の水準に達しておらず、必要な変化をもたらすほど抜本的な教育へのアプローチを促進しえない。また、世界市民教育の支持者の中には、別の名の下で政治的・社会的活動を促進しようとする傾向があることも、問題である。

そして最後に、世界市民教育には、ヨーロッパ的な「啓蒙」の観念に過度に依存した西欧の用語として紹介される傾向にあるという大きな問題がある。私は、より抜本的で、教育上の実践に関する新たな概念を含んだ、世界市民教育に対するアプローチを提唱したい。

もちろん私は、西欧文明のこれまでの成果や、欧州啓蒙運動の豊かな伝統を無視した世界市民教育を論じようとしているのではない。しかし同時に、世界市民教育は、西欧の啓蒙イデオロギーにおける教育ではありえないのである。

世界市民教育はイスラムの実質的な主張を無視することはできない。また、ロシア正教がある種の私的な選択肢であるとか、ロシア連邦が世俗的な国民国家であるとか装うわけにもいかない。そして、世界市民教育が現場で限定的な影響力しか持たないような教育的空想主義の新たな事例となることを避けようとするのならば、世界中に見られる、政治的、文化的、倫理的な現実の多様性と関わりを持たざるを得ない。

世界市民教育は、単に西欧的なものではありえず、都会のエリートの子どもたちのみならず、貧困国や農村環境に生きる子どもたちとも関わるものでなくてはならない。世界市民教育として実施されている現在の形態の多くは、そうした子どもたちのニーズに対処しているようには思えない。

西欧的イデオロギーと夢想の域を超える世界市民教育を実現するには、2つの大きな跳躍を成し遂げねばならないというのが私の意見である。

一つは、ポスト世俗主義的な跳躍を成し、公的生活と私的生活の双方における非日常的な活動の認知と穏健な世俗性を両立させることが必要だ。これはつまり、「公共の広場」あるいは「公共圏」に関するアメリカ的なイデオロギーの否認を意味する。

それは、実際の世界の現実とふたたびつながり、様々な精神的観点を、宗教的市民権のレベルにおいて、人権のレベルにおいて、そして国家の役割のレベルにおいて、真剣に受け止める世界市民教育のモデルを含む。

こうした諸問題について、西欧的啓蒙主義に基づく主張を繰り返すだけの偽善的な宣言は、イスラム世界やロシアにおいては実際には失敗に終わるだろう。欧米社会に育ったイスラム系少数市民に対してすら、受けるところがないかもしれない。また長期的には、インドミャンマー、中国といったアジア地域の多くの国々においても、こうした宣言は実践されることがないだろう。

このように、世界市民は、世界市民教育に関する多くの論者が現在想定しているよりももっとグローバルなものでなければならない。現在よりも、文化的、宗教的、文明的差異を真剣に取り扱わねばならない。

ここで問題になっているのは特殊主義、あるいは非合理な形態の文化的相対主義ではなく、現実にある異質性や実際の世界の文脈を問題とし、且つカント的な道徳哲学、あるいは英米的な政治哲学に依拠しないようなアプローチである。

「グローバル」とは、英米的であるとか、単にヨーロッパ的であることを意味しない。グローバルなアプローチとは、差異を尊重すると同時にある程度までは説明しなくてはならない。つまり、旧来から提供されてきた個別の伝統よりも強力な概念が必要だということだ。このことが二つ目の跳躍へとつながることになる。

私の見方では、世界市民教育はまた、新たな概念に向けた跳躍を果たさねばならない。歴史的な特殊性を考慮に入れつつも、異なる文化や国民国家を超えた性質を創出しうるような概念である。

新たなグローバルな概念は、現在の教育機関で提案されているようなものではなく、教育の発展におけるほとんどの思考に刺激を与えるようなものではない。これは部分的には、この種の思考法が、教育者よりも数学者・物理学者・哲学者の間に一般的にみられるものであるという事実からきている。

しかし、教育実践においてそうした概念を作り出し模範として見せていくことはそれほど難しいことではないのかもしれない。実際、新たな概念を哲学的あるいは理論的な用語で展開するよりも、教育実践においてそれを確立する方が容易であろうと思うのだ。

私のここでの立場は、本質的に代案を提示しようとするものであり、明らかにかなりの例証を必要とするものである。私の推奨するアプローチは、教育における多くの支配的な戦略とは異なっている。旧来のそれらはしばしば、あらかじめ存在する教育上の概念や戦略をカリキュラムが実践するものだと想定されている。

世界市民教育に対する私のアプローチは、教育法と学習におけるきわめて異なった概念を伴うものである。すなわちそれは、逆説的にも、教育者が通常は好まないようなタイプの強力な認知主義と、彼らが好んではいるが通常は実践に移されることはないようなタイプの強力なプラグマティズム(実用主義)の両方とつながりをもったものなのである。

Charles Sanders Peirce/ Wikimedia Commons
Charles Sanders Peirce/ Wikimedia Commons

それはとりわけ、ジョン・デューイウィリアム・ジェイムズリチャード・ローティといったプラグマティズムの主唱者よりも、アメリカの哲学者で数学者であるチャールズ・サンダース・パースのプラグマティズムとつながりを持ったものである。

私の主張は、哲学と実践に対するこうした通常でないアプローチは、世界市民教育にとっての利益をもたらすという点にある。このアプローチを基盤とした教育法には、新しい技術を用いた実践に向いているという利点がある。

またそれは、世界中の地域社会において、より安価で、実践的で、容易に実施することが可能である。もちろん、そうした革新的なアプローチは、少なくとも、現代哲学や数学、認知科学におけるアプローチのための基礎が十分理解されるまでは、問題含みのものであるかもしれない。しかし、それこそが私が発展させようと思っているアプローチである。それは、現在の論争に真の貢献を成しうるアプローチであると考えている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

本記事の中で紹介されている見解は著者個人のものであり、インター・プレス・サービスの編集方針を反映したものではない。

※ウェイン・ハドソンは、クィーンズ大学、チャールズ・スチュアート大学、タスマニア大学(豪州)の教授。

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Fostering Global Citizenship – 2014年4月-6月号

Fostering Global Citizenship – 2014年 7月、8月号

Fostering Global Citizenship – 2014年 9月、10月号

Fostering Global Citizenship – 2014年 11月、12月号

Fostering Global Citizenship – 2015年 1月、2月号

Fostering Global Citizenship – 2015年 3月号

This newsletter is part of a Soka Gakkai International (SGI) project with IPS. It includes independent news and analyses as well as columns by experts, news from international NGOs and a review of global media for a glimpse of what is happening on the ground.

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|国連防災世界会議|災害を理解することが防災への鍵

【仙台IPS=ラメシュ・ジャウラ

第3回国連防災世界会議が、長くかかった最終協議を経て、3月18日に閉幕した。187の国連加盟国代表が、今後15年(2015年~30年)という長期に亘る新しい防災対策の行動指針となる「仙台防災枠組」にようやく合意した。

国連の潘基文事務総長は会議の始まった14日、「持続可能性は仙台から始まるのです。」と述べた。「仙台防災枠組」が新たな時代の夜明けを告げるものだとしても、それが事務総長の期待に応えるようなものであるかはまだわからない。

国連事務総長特別代表(防災担当)で国連防災戦略事務局(UNISDR)長のマルガレータ・ワルストロム氏は、この新しい枠組みは「災害リスクと人命・暮らし・健康の損失の実質的な減少につながるような行動のための目標と優先行動を示したものだが、持続可能な開発における新たな時代を開くものとなるだろう。」と強調した。

UNISDR

しかし、ワルストロム氏は18日、仙台防災枠組みの実行には「強力なコミットメントと政治的なリーダーシップが必要であり、持続可能な開発目標(今年9月の国連総会で採択予定のポスト2015年開発アジェンダ)と気候変動に関する今後の合意(今年12月のパリ気候変動会議)を達成するうえで肝要なものである。」と警告した。

仙台防災枠組」は、7つのグローバルな減災目標と4つの優先事項を示している。

今後15年で達成すべきグローバルな減災目標とは、「①災害に伴う全世界の死亡率を大幅に削減する。②被災者数を大幅に削減する。③国内総生産(GDP)に占める災害の直接的な経済損失を大幅に削減する。④医療や教育施設など重要インフラを強靱化する。⑤2020年までに全国・地域レベルで防災戦略を策定する国の数を増やす。⑥途上国支援を強化する。⑦複数の危険に関する早期警戒システム及び災害情報・評価へのアクセスを強化する。」である。

4つの優先行動とは、①災害リスクへの理解向上。②災害リスク管理のための災害リスクガバナンスの強化。③強靭化に向けた防災への投資の強化。④効果的な応急対応に向けた準備の強化と「災害復興:よりよい復興(Build Back Better)」に焦点を当てている。最終的な優先行動は、より効果的な防災準備や、復旧・復興・再建において「よりよい復興」を埋め込むことを呼び掛けている。

以下は、UNISDRのマルガレータ・ワルストロム氏に対して3月16日に仙台会議の会場で行ったインタビューである。そこで同氏は防災の本質について語っている。

IPS:この仙台会議で防災への解決策が導き出されるとお考えですか?

マルガレータ・ワルストロム氏(以下MW):この会議と集合的な経験から解決策が導き出されてきました。それは実際、私たちにとって問題ではないのです。問題なのは、既に知っている知識を応用するためにいかに説得力のある議論をできるか、ということなのです。それは、個人や社会、企業などに関係のある話です。きわめて複雑な問題ですから、あまり単純化した問題だと捉えないことが重要です。

もし災害を相当程度に減らそうと考えるならば、個別にではなく数多くのセクターに対して目を向けなくてはなりません。しかし、複数のセクターには協働が必要なのです。この10年にかなりの進展があったことを、私は自分の目で見て、そして自分の耳で聞いてきました。

国際社会が今日超えるべき重要なハードルは、従来の災害を理解するという段階から、「(災害)リスクを理解する」という段階へと進むことです。災害というものを表面的に理解することはできますが、それだけでは将来的に(災害)リスクを減らすことにはつながりません。リスクを減らすことができるのは、個別のリスクではなく、本当に社会を壊してしまうような、複合して機能する複数のリスクを私たちが理解したときなのです。」

仙台会議がやろうとしているのは、まさにこのことなのです。今後数十年にわたる防災行動の基礎を築く文書に関する協議を行うことと同等に、人々がお互いから急速に学びあい、刺激を受け合うことがこの会議における極めて重要な目的なのです。

IPS:(レジリエンス)強靭性が重要な問題となっていますね。貧しく脆弱な立場に置かれている人々は常に強靭さを発揮してきました。しかし、こうした人々の強靭さを強化するために必要なのはお金(開発のための資金)と技術です。仙台会議の結果として、これら2つのことがもたらされるとお考えですか?

MW:この会議の結果、というだけではありません。なにかあるとすれば、会議は、優先行動を掲げ、必要とされる計画の統合に対する理解を高めるものになるでしょう。いかなる場合においても、歴史的経験が示しているものは、強靭性のための最も重要な基礎は社会開発と経済発展だということです。人間は健康であり、よい教育を受け、選択肢があり、仕事がなくてはなりません。知っての通り、それに続くのは、もちろんある意味では、新たなリスクです。つまり、ライフスタイルのリスクです。

そこにあるのは技術ではないでしょうか。技術の問題といえば、その利用可能性の問題、それであればお金の話になりますが、技術をどうやって使うかという能力の問題でもあります。多くの国や個人にとって、これは本当に問題です。自分自身を見つめてみなくてはなりません。技術の進歩は人々がそれを使いこなす能力よりも、早いペースで進んでいるのです。

技術を手に入れる金銭的資源は、間違いなく制約にはなりますが、多くの場合、より大きな制約は「能力」の問題です。政府自身の投資(それは最も肝要なものですが)という点でお金の問題を考えれば、資金は増えてくることになるでしょう。強靭性を作り出すために必要なものをどう理解するかと言えば、それはリスクに対応できるインフラであり、リスクに対応できる農業であり、水管理システムなのです。それらはいずれも単独の問題ではありません。

投資は今後増えることになるでしょう。個人に対する投資、強靭性の社会的側面に対する投資、とりわけ最も貧しい人々に対するそれには、政策の方向性に関する明確な決定を必要とします。それはおそらく、ポスト2015年の普遍的開発アジェンダに関して今年後半になされる合意において、浮かび上がってくるでしょう。それは(従来のMDGにおける)貧困削減重視の姿勢を今後も継続するために何がなされるべきかについて焦点をあてるものとなるでしょう。

IPS政府開発援助(ODA)の問題は、今日、何らかの関連性があるでしょうか。

MW:大きさと規模の上では、外国直接投資や民間部門の成長と比べれば、おそらく大きな関連性はないでしょう。しかしもちろん、ODAには、具体的な連帯の表現として、極めて重要な象徴的意味合いや、政治的な意味合いがあります。

UN WCDRR

持続可能な開発目標の議論やこの仙台会議の議論において、国際協力を含め、基盤となるような国家的資源が強調されている理由がこのあたりにあることが、おわかりなのではないかと思います。(原文へ

しかし公平を期すために申し上げておくと、現在でも、多額のODAに依存している開発途上国は多く存在します。GDPの3割~4割が何らかの形でODAに依存しているのです。このような状況は、最終的な政治的選択に関していえば決して好ましいものではありませんが、現在の経済的現実でもあるのです。経済発展のニーズ、その国の経済成長を刺激し人々の成長を促すような種類の投資といったものに優先順位を与え続けていく必要があります。

翻訳=IPS Japan

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核兵器を禁止する法的拘束力のある条約(レイ・アチソン「リーチング・クリティカル・ウィル」代表)

【ニューヨークIPS=レイ・アチソン】

2010年に核不拡散条約(NPT)の「行動計画」が採択されてから5年、核軍縮に関連した約束への遵守は、核不拡散あるいは原子力平和利用の関連のそれに比べて、はるかに立ち遅れている。

しかし、その同じ5年の間に、あらたな証拠と国際的な議論が、核兵器使用の壊滅的な帰結と、意図的であれ偶発的であれ核の使用がもつ容認しがたいリスクに焦点をあててきた。

こうして、NPTの完全履行、とりわけ核軍縮に関する履行が、以前にもまして急を要する問題となってきた。核軍縮のもっとも効果的な手段のひとつは、核兵器を禁止しその廃絶の枠組みを確立する法的拘束力のある条約の交渉であろう。

Ray Acheson, Reaching Critical Will
Ray Acheson, Reaching Critical Will

しかし、そのことにコンセンサスがあるわけではない。

実際、4月27日から5月22日にかけてニューヨークで開催される予定の2015年NPT運用検討会議を前にして、NPT上の核保有国と核依存同盟国は、そうした交渉によってNPTは「損なわれ」ると論じ、「行動計画」は長期的なロードマップであって、少なくとも次の運用検討サイクルまで「延長」すべきであると主張している。

これは、意味ある行動に向けた機会となるはずのものに対する、きわめて退行的なアプローチだ。NPT第6条を履行するための法的枠組みについて交渉することが、条約を「損なう」はずがない。

逆に、それは最終的に核保有国にその法的義務を果たさせるものになるはずだ。

核兵器を保有しているかあるいはそれに依存している国家は、核拡散を防止し安全保障を高める上でのNPTの重要性を強調してきた。

しかし、その同じ国々が、その他の加盟国以上に、軍縮のために必要な具体的な行動を防止し、回避し、遅らせることによって、条約をおおいに損なっているのである。

NPT上の核保有国やその核依存同盟国は、その責任や誓約、義務を今こそ果たすべきだ。さもなくば、彼らが守らねばならないと訴えている条約体制そのものが損なわれてしまうだろう。

Photo: Wide view of the General Assembly Hall. UN Photo/Manuel Elias
Photo: Wide view of the General Assembly Hall. UN Photo/Manuel Elias

彼らがその約束を履行しないことは、NPTの将来に暗い影を投げかけている。こうした不履行が永久に続き、核兵器を保有し続けるだけではなく核兵器システムを改修・配備できると期待しているならば、それは誤っている。

2015年NPT運用検討会議は、他の諸政府がこうした行動に直面・挑戦し、協調的かつ即時の行動を要求する機会を提供することだろう。

加盟国は、この5年間の事態について真摯に評価を加えるだけではなく、NPTを今後も生き長らえさせ、核軍拡競争の停止、核兵器製造の停止、核兵器使用の防止、既存核戦力の廃絶といったNPTのすべての目標と目的を達成するためにどんな行動が必要かを決定しなくてはならないだろう。

核兵器の非人道的帰結に関してこのところあらためてなされた検討作業は、糸口を見つけるよい出発点である。2010年のNPT運用検討会議は、「核兵器のいかなる使用による破滅的な人道的帰結に対しても深い懸念」を表明した。

それ以降、とりわけ、ノルウェーやメキシコ、オーストリアが主催した一連の会議において、人道的帰結の問題がますます議論と行動提案の焦点を成してきた。

諸政府は、従来からの議論の場においても人道的影響の問題を取り上げるようになっている。たとえば、2014年の国連総会では155か国が共同声明に署名し、核兵器によって引き起こされる容認しがたい被害に焦点を当て、いかなる状況においても核兵器が二度と使われないようにするよう行動を求めた。

「人道的帰結」のアプローチは核軍縮に対するあらたな推進力の基礎を与えた。赤十字・赤新月運動国連人道問題調整事務所、新世代の市民活動家など、新しいタイプのアクターの登場を促した。

ICAN
ICAN

核兵器の非人道的影響をめぐる議論は、NPTのすべての加盟国によって完全に支持されるべきである。

「人道的帰結」のアプローチはまた「オーストリアの誓約」にも結び付いた。同政府(および、その誓約に賛同するいかなる国)が「核兵器の禁止と廃絶に向けた法的ギャップを埋める」ことを約束したものだ。

今年2月現在で、40か国が同誓約への支持を表明している。これらの国々は、変化を求めているのである。既存の国際法は核軍縮達成のためには不適切であり、核兵器を悪とみなし、禁止し、廃絶するような変化のプロセスが必要だと考えているのである。

このプロセスには、核兵器のもたらす容認しがたい結末を基礎にして、核を明確に禁止する法的拘束力のある法的文書が必要である。こうした条約は、特定の条約を通じてすでに禁止の対象となっている他の大量破壊兵器と核兵器とを同等の立場に置くことになる。

Photo: Hiroshima Ruins, October 5, 1945. Photo by Shigeo Hayashi.
Photo: Hiroshima Ruins, October 5, 1945. Photo by Shigeo Hayashi.

核兵器を禁止する条約は、既存の規範に則ったものであり、NPTなどの既存の法的枠組みを強化する。しかし同時に、核兵器活動に従事し、核廃絶を推進するフリをしながらも核兵器の永続化から利益を得ようとすることを諸国に可能とする現在の法的体制の抜け穴をふさぐことにもなろう。

NPT加盟国は、核軍縮達成までどのくらい待つことができるのかを考えてみなくてはならない。2010年運用検討会議以来の動向は、核兵器に関する現在の国際的議論を推し進めてきた。

諸国および他のアクターは、核兵器を禁止しその廃絶のための枠組みを打ち立てる法的拘束力のある文書を策定することによって、軍縮を本当に達成する行動をとるとの意志を今こそ示すべきだ。広島・長崎への原爆投下から70年の今年は、まさによい出発点である。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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|国連防災世界会議|女性のリーダーシップを強調

【仙台IPS=ジャムシェッド・バルーア、浅霧勝浩】

国連や諸政府、市民社会の代表らが、災害リスクの低減と、災害中・災害後の計画と意思決定において女性は重要な役割を果たす、と口々に主張した。

実際、防災の取り組みは、女性のニーズと声を無視しては効果的でも持続可能でもないという意見で一致をみている。

UNWCDRR
UNWCDRR

「災害に見舞われた場合、女性は最も大きな影響を受ける一方で、膨大な障壁を克服して災害への対応を指導したり、自らの健康と安寧を危険に晒してまで、ケアや支援を提供したりする女性も多い…。」と、「第3回国連防災世界会議」初日の14日に開催された防災分野での女性のリーダーシップをテーマにした首脳級対話の参加者らは語った。

仙台市で3月14日から18日にかけて開催された「第3回国連防災世界会議」(仙台会議)における一連の首脳級対話の最初の会合である「防災における女性のリーダーシップ」に関するハイレベル会合には、世界食糧計画(WFP)国連人口基金(UNFPA)のトップらが参加した。

UNFPAのババトゥンデ・オショティメイン事務局長はIPSの取材に対して、「仙台会議は世界にとって、共通の災害リスク削減アジェンダのもとに結集し、女性をその中心に据える集団的行動を約束するための新たな機会を提供するものです。」と語った。

Babatunde Osotimehin/ UN photo

この分野において深刻な格差が残っているのは、ジェンダーに基づく妥当なアプローチとベストプラクティスに関する指針やツールが存在しないためではない。必要なのは、女性の発言力の強化と、参加を確保するための前提条件となる政治的な意志である。こうした全ての取り組みが、性と生殖に関する健康の権利を含む女性の権利を強化するものとせねばならない。

オショティメイン事務局長は、あらゆるレベルで講じうる重要な対策を提案するとともに、この目的に使える資金自体が不足している現状に鑑み、資金を災害リスク削減に回すとともに、女性がこの分野で実質的な役割を果たすためのエンパワーメントも行わねばならないと強調した。

オショティメイン事務局長は、持続的かつ持続可能な災害リスク削減のためには、進捗状況を測定し、各国と地方の主体による実施に向けた動きを確保するための指標と目標を伴う説明責任枠組みが必要である、と語った。

Ertharin Cousin/ UN photo

医師であり保健問題の専門家であるオショティメイン事務局長は、国連事務次長として2011年1月にUNFPAのトップに就任する以前は、人口1.8億人のナイジェリアでHIV・エイズ問題を管轄する「国家エイズ活動委員会」の委員長であった。

WFPのアーサリン・カズン事務局長は、仙台で3月14日に始まった「グローバル・リセット」は、女性を防災リスク削減努力の中心に据えるための措置を含めなければならないと強調した。

「他の発言者や諸政府の元首がその他のフォーラムで強調したように、仙台会議は、開発資金や持続可能な開発、気候変動のそれぞれに関し、すべての人々にとってより安全かつ豊かな世界を確保することを目的として、国連が2015年に後援する一連の重要な会議の先陣を切るものだからです。」とカズン事務局長は指摘した。

日本の安倍晋三首相も、基調講演のなかで、「日本が古くから、女性の発言力、視認性、参加を増大させることの重要性を理解してきた。」と述べ、こうした趣旨に賛同する立場を表明した。

例えば、もし日中に災害が起きた場合、家にいるのはほとんどが女性であるため、女性の視点こそが「被災地を復旧するうえで、絶対に欠かせない」ことを指摘した。

「どれほど大地が揺れようとも、私たちの心はいつも平静です。」安倍首相は、2011年3月11日の震災直後に訪れた被災地の女性の力強い言葉を引用し、すべての女性が防災でより大きな役割を果たせるよう、日本政府として本格的な取り組みを続けていくことを誓った。

Shinzo Abe at WCDRR/ Katsuhiro Asagiri of IPS Japan

安倍首相は、防災における女性のリーダーシップを拡大することが、日本による国際支援の新たな政策の重要な要素になると発表した。

また安倍首相は、「本日、私は日本の新しい防災協力イニシアチブを発表しました。今後4年間で4万人の防災・復興リーダーを育成するというものです。」と語った。

「このイニシアチブを通じてなされる主要なプロジェクトのひとつが、『防災における女性のリーダーシップ推進研修』の立ち上げであります。さらに、この夏に東京で開催される予定の『女性が輝く社会に向けた国際シンポジウム(WAW! Tokyo 2015)』のテーマのひとつが『女性と防災』になる予定です。」

さらに安倍首相は、「世界中の国々において具体的なプロジェクトも開始しています。フィジーソロモン諸島など太平洋島嶼国は台風や火山噴火などの多くの自然災害に直面しています。毎年のように豪雨に見舞われ、河川の氾濫で多くの地域に浸水被害が起きています。私たちは、コミュニティ防災分野の専門家を派遣して、女性たちを対象とする研修を3年間にわたり行いました。今やこの女性たちがリーダーとなり、コミュニティの女性に対して防災の知識を広める活動を行っています。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【仙台IPS=ジャムシェッド・バルーア、浅霧勝浩】

仙台における重要な国際会議(=第3回国連防災世界会議)に先立って、国連国際防災戦略事務局(UNISDR)のマルガレータ・ワルストロム国連事務総長特別代表(防災担当)が、「災害対処から災害リスクへの対処へと移行する」必要性について「一般的な合意」があると語った。こうした理解の背景についてワストロム氏は、「もし国際社会が、貧困や気候変動、生態系の衰退、制御不能な都市化・土地利用といったリスクの根本にある原因に対応することに成功すれば、結果として地球はもっと強靭なものになるだろう。この枠組みによって、既存のリスクレベルを低減し、新たなリスクの発生を防ぐことに役立つだろう。」と語った。

UNISDR

UNISDR代表の意見と同じく、列国議会同盟(IPU)のセイバー・ホサイン・チョウドリ議長も、国際社会が持続可能な開発の向けた歩みを進めている中、仙台会議を「よい出発点」にすることを誓った。

国連総会は今年9月、貧困の半減等を謳った「ミレニアム開発目標」(MDGs)に代わる、「持続可能開発目標」(SDGs)を採択する予定だ。東北地方の中心地であり、福島第一原発事故につながった2011年の地震・津波の被災地である仙台は、3月14日から18日にかけて開催された「第3回国連防災世界大会」の会場となった。186ヵ国の首脳ら延べ15万人以上が参加した。

UNISDRによれば、2005年に神戸で前回の世界会議が開催されて以来、災害によって世界全体で少なくとも70万人が命を失い、17億人が被災したという。2005年~14年の世界の災害による経済的損失の合計は1兆4000億ドルにのぼっている。防災に関する第1回会議は1994年に横浜で開催されていた。

3月13日に開催された列国議会同盟(IPU)とUNISDRによる議員会合「防災のためのガバナンスおよび立法」に登壇したチョウドリ氏は、「災害による損失のレベルが高くなる中では持続可能な開発は達成し得ません。」と指摘するとともに、仙台会議で「地域の力」が着目されていることを歓迎し、「地方自治体の役割は極めて重要です。(私たち)国会議員には、地方自治体への資源配分を増やすなど、重要な役割があります。」と語った。

IPU

チョウドリ氏は、国会議員らとUNISDRとの間のパートナーシップを称賛するとともに、地域レベル・全国レベルにおいて災害に対する強靭性(レジリエンス)を強化するために各国の議会が用いている実践的なツールをいかに両者が共同で発展させてきたかを指摘した。

識者らは、こうした動きに関連して、ネパール政府による地域の防災計画に対する自発的取り組みについて触れている。

国連防災世界会議のウェブサイトには、「ネパール連邦問題・地域開発省は130の自治体による地域防災計画の策定を支援する。NGOを含め、ネパールにおいて防災に関与しているすべての利害関係者との協力の下に実施される予定だ。この計画は、地域レベルにおける防災活動の指針となるだろう。」

パキスタン政府は、「障害者を包摂した災害リスク低減のためのマスター訓練者20人を育成し、草の根レベルの技術訓練を通じて100の人道支援プロジェクトに影響を与え、障害者を包摂した災害リスク低減に関して150人の主要な人道支援活動家を訓練する」ことを約束すると発表した。

仙台会議開始に先立って、政府代表らは13日、会議終了日の18日に採択される「2015年以降の減災枠組み」の文言について議論した。

草案では、仙台会議は、「人類とその資産、生態系をより効果的に守るために、少なくとも今後50年間に関するリスク・シナリオを想定し、それに向けた計画を立て、行動を始めることが緊急かつ肝要」であると宣言することになっている。

ポスト2015年枠組みの文言では、「災害リスクに対する、より広範かつ人間を中心においた予防アプローチ」を呼び掛け、全てのレベルにおいて「暴露と脆弱性の問題に対処し、リスクの発生に対する責任を確保するための強化された取組み」の重要性を強調した。

採択される予定の文章はこう述べている。「能力が違っていることに鑑みれば、途上国には、開発のための強化されたグローバル・パートナーシップや、実行のための全ての方法の適切な提供と動員、災害リスクを減らすための継続的な国際支援が必要である。」

草案には、強化された南北協力、それを補完する南南協力および三者協力が「災害リスクを減らすための鍵を握って」いることが証明されており、「それをさらに強化する必要がある」と述べている。

草案にはさらにこうある。「パートナーシップが、全てのレベルの諸政府や企業、市民社会、その他の幅広い利害関係者間の関与がもつ力を全面的に引き出すことによって、重要な役割を果たすであろう。また、人的資源・金銭的資源や専門能力、技術、知識を動員する効果的な手段であり、変化や革新、厚生を生み出す強力な力となりうる。」

資金移転・技術移転というしばしば問題含みの点について、草案はこう述べる。「途上国、特に後発開発途上国や島嶼途上国、内陸途上国、アフリカの場合は、金融支援や技術支援、相互に合意した条件に従っての技術移転を通じたものを含め、二国間及び多国間のチャンネルを通じた、それらの国々の能力を発展させ強化するための予測可能で適切、持続可能で協調的な国際支援を必要としている。」

また、国連やその他の関連機関を含め、二国間、地域、多国間の協調的取り決めのような既存のメカニズムを通じて、環境に優しい技術や科学、革新に加え、知識や情報へのアクセスを強化し、移転を促進することを謳っている。

さらに、諸国家や地域的機関、国連や国際金融機関などの国際機関に対しては、災害リスク低減の取り組みを、あらゆるレベルにおける持続可能な開発の政策や計画、プログラムに組み込むよう呼びかけている。

諸国や地域的機関、国際機関は、災害リスク低減に関与している国際金融機関や地域的機関、ドナー組織、非政府組織を含め、国連やその他の国際機関との間の戦略的な協調を強化するよう促されている。

草案の文章はまた、この枠組みに対するフォローアップの活動として適切な支援を確保する取り組みの一環で、国連防災トラスト基金に対して適切な資金拠出を行うよう求めている。

「この基金の現在の利用状況とその拡大の実現性について、とりわけ、災害に弱い途上国が災害リスク低減のための国家戦略を策定することができるように再検討されねばならない。」仙台会議で採択される予定の草案にはこう述べられている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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マルガレータ・ワルストロム国連事務総長特別代表(防災担当)国連防災戦略事務局(UNISDR)長インタビュー

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IPS Japanの浅霧勝浩マルチメディアディレクターは、第3回国連防災世界会議(WCDRR)を取材するため来日中のラメシュ・ジャウラIPS欧州局長と共に仙台を訪問。世界会議期間中に国連事務総長特別代表(防災担当)で国連防災戦略事務局(UNISDR)長のマルガレータ・ワルストロム氏をはじめ主な参加者とのインタビューを行った。

ワルストロム氏は、仙台枠組みは「災害リスクと人命・暮らし・健康の損失の実質的な減少につながるような行動のための目標と優先行動を示したものだが、持続可能な開発における新たな時代を開くものとなるだろう。」と指摘したうえで、その実行には「強力なコミットメントと政治的なリーダーシップが必要であり、持続可能な開発目標(今年9月の国連総会で採択予定のポスト2015年開発アジェンダ)と気候変動に関する今後の合意(今年12月のパリ気候変動会議)を達成するうえで肝要なものである。」と警告した。

“Key to Preventing Disasters Lies in Understanding Them” Interview with Margareta Wahlstrom, Special Representative to the UNSG for DRR final by Ramesh Jaura, Editor-in-Chief of Inter Press Service. Filmed by Katsuhiro Asagiri, President of IPS Japan.

翻訳=INPS Japan

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黄浩明「中国国際民間組織合作促進会(CANGO)」副理事長兼事務局長インタビュー

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Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director and President of IPS Japan

IPS Japanの浅霧勝浩マルチメディアディレクターは、第3回国連防災世界会議(WCDRR)を取材するため来日中のラメシュ・ジャウラIPS欧州局長と共に仙台を訪問。世界会議期間中に開催された日中韓シンポジウム「北東アジアの連帯によるレジリエンスの強化」に参加し、中国からパネリストとして参加した「中国国際民間組織合作促進会」(CANGO)の副理事長兼事務局長の黄浩明氏とのインタビューを収録した。

日中韓シンポジウムは、WCDRRの期間中に、東京に本部を置く仏教組織・創価学会インタナショナル(SGI)が主催した公式関連行事(パブリックフォーラム)の一つで、防災のために北東アジア地域において、人間同士の協力を促進するための基盤を提供することを目的とするものだった。イデオロギーの障壁を打ち破り、歴史にまつわる敵対意識を乗り越えて、日本・中国・韓国の市民社会組織の代表がの期間中にに参加した。

Interview with Professor Huang Haoming, Vice Chairman & Executive Director of China Association for NGO Cooperation (CANGO), about interaction for people-to-people cooperation in Northeast Asia​ in Sendai, Japan, during the World Conference on Disaster Risk Reduction (WCDRR) from 14 to 18 March 2015.

翻訳=INPS Japan

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スポットライトを浴びる先住民族の語り

【ベルリンIPS=フランチェスカ・ジアデク】

近年、「ベルリナーレ」として知られるベルリン国際映画祭が、さまざまな場を横断して先住民族の声を発信する欧州のハブ機能を果たしつつある。さまざまな場とは例えば、「NATIVe:先住民族映画への旅」シリーズや、先住民族のアーティストが語りをし、次に参加者からの発言を求める「語りのスラム」などである。

ラテンアメリカを特集した今年のベルリナーレでは、グアラニーウィチョルシャヴァンテウィチクイクロマプチェツォツィルケチュアなどの先住民族からのさまざまな声や観点を盛り込んで、ベルリンが1年で最も曇りがちなこの時期を先住民族の天賦の才で彩った。

そして、グアテマラの先住民族のストーリーである『イクスカヌル火山』(監督:ジャイロ・ブスタマンテ[37]、パカヤ火山地帯におけるマヤの社会を描く)が、「映画芸術に新たな境地を開いた」映画として今年のベルリナーレの銀熊アルフレッド・バウアー賞を獲得した。

Berlinale 2015
Berlinale 2015

『イクスカヌル火山』は、グアテマラのイクスカヌル活火山の山麓でコーヒー豆を栽培して暮らすマヤ族の女性マリア(17)の物語である。彼女は、外の世界を見たいと思っていたが、しきたりに従い、間もなく両親が決めた地元の名士との結婚をしなければならなかった。そんなある日、火山地帯を出て北に向かい新しい生活を送ろうと夢を語って彼女を誘う地元の若者ペペに出会い苦悩する。

マリアは、ペペとの駆け落ちに失敗した後、10代で望まない妊娠をした過酷な現実に直面する。マリアと(マヤ社会の演劇俳優で活動家でもあるマリア・テロンさん演じる)彼女の母親は、まもなくドラマチックな状況の中で崖っぷちに立たされる…。

実話を基にした『イクスカヌル火山』は、ブスタマンテ監督が地元の女性を討論グループとマヤ地域の12の言語のひとつであるカクチケル語で脚本を書くワークショップに参加させるなど、地域コミュニティーとメディアによる物語プロジェクトの中から生まれたものである。従って、物語は必然的に、マヤ族の人々がこれまで直面してきた、人権侵害と貧困、無力感との間にある明白なつながりに焦点をあてるものとなった。

Jayro Bustamante/ Wikimedia Commons

「私は、人々が置かれている無力な状況、何の権限も認められていない先住民の女性が直面している現実の状況を、彼女たち自身の観点で、そして自らの言葉で語ってもらいたいと考えたのです。」と、自身もマヤ社会で育ち、カクチケル語を話すブスタマンテ監督は語った。

医療関係者と国家当局を巻き込んだ児童の人身売買をめぐる悲劇について最初にブスタマンテ監督に教えてくれたのは、地域医療に従事していた彼の母親であった。この事件はグアテマラ内戦期(1960~96)の最も暗い一面であった。

国連は、毎年400人もマヤ先住民の子どもや幼児が拉致されていたと報告している。グアテマラ軍事政権の下で罰せられることなく実行された人権侵害スキャンダルであった。

「最貧困層の人々を救うふりをしながら束縛し騙す、狡猾な社会的・法的枠組みが存在します。これが人々を無力で従順な状態に追いやっているのです。もっとも(このような状況下に直面すれば)他に選択肢がないのが現実ですが…。」とブスタマンテ監督は語った。

しかし、ベルリンでは、マリア・テロンさんと、主演のマリアを演じたメルセデス・コロイさんが、「物語を気に入って」くれたこと、耳を傾け賞賛してくれたことへの感謝の意を述べた。またテロンさんは、「先住民の女性や社会にとってこのような賞賛を受けることはめったにありません。」と語った。

グアテマラ内戦では、多数のマヤ先住民が虐殺され、その被害はこの内戦による犠牲者全体の85%を占めている。こうした残虐行為が引き起こした恐怖と人権侵害の実態については、フンボルト大学(ベルリン)の教授(公共国際法)でドイツの法律家クリスチャン・トムシャット氏ら3人の報告者が起草し、グアテマラの「歴史の真実究明委員会」がまとめた『沈黙の記憶』と題した報告書に詳述されている。

記憶は、水に関する先住民族の観点をつなぐ糸であった。水は地球において生命を維持するかけがえのない要素であり、ベルリナーレの銀熊賞(脚本賞)を獲得したチリの映画監督パトリシオ・グスマン氏のドキュメンタリー『真珠貝のボタン』の主題であった。

過去を否定する国は集団的健忘症に囚われているのであり、「ドキュメンタリー映画を持たない国は家族写真のない家族のようなもの」と語るグスマン監督は、こうした信念を、自国の植民地時代の歴史と先住民を絶滅に追いやった事実を否定するチリに適用したのであった。

この映画の題名は、真珠貝のボタン1つ分の値段で1830年に英国の海軍人に売られたヤガン族の若者ジェミー・ボタンの伝説から採られたものである。

このドキュメンタリーは、かつてパタゴニアの入江を拠点にした「海の民」であり今はほぼ絶滅したヤガン先住民3人と、かつてこの水域を自由に行き交い何世紀にもわたって人間の生活を支えた彼らの祖先たちの智恵に哀悼を捧げた作品である。

ピノチェトによる悪名高い「拷問競技場」(1973年)で15日間の拘束を経験し、ドキュメンタリー三部作『チリの闘い』(1975~78)で国際的に有名なグスマン監督によるインタビューに登場する(絶滅寸前のカウェスカル語を話す)先住民のガブリエラ・パテリトさんは、12才の時に母親と一緒に水を求めて600マイルも旅をしたことを回想した。

スペイン語の単語を自分の母語であるカウェスカル語に翻訳するよう言われたパテリトさんは、「水」「太陽」「ボタン」など多くの単語を思い出した。さらに「警察」を意味する言葉について問われた彼女は、頷きながらこう答えた。「いいえ、そんな単語は必要ありません。」また、神に関する彼女の見解は毅然としたものだった。「いいえ、神などいません。」

そう答えたパテリトさんが属する先住民族がたどってきた運命は、チリの植民地時代に決定づけられたが、その歴史はほとんど顧みられることなく忘れ去られようとしている。事実は、この海域に長年暮らしていた5つの先住民族は、この地に進出してきたカトリック教会の宣教師とスペイン人征服者らによって絶滅に追いやられたのである。

ユネスコは、「土着の智恵とは、ある文化あるいは社会に特有の局所的な知識のことであり」、自然界の知識は長年にわたって自然界との相互作用において人間社会を維持してきた蓄積された知識であることから、科学に限定することはできない、との認識を示している。

UNESCO
UNESCO

『真珠のボタン』のもうひとりの主人公は、チリ政府が表向きは彼自身(=先住民)の「保護」を名目にして、いかにして自作のカヌーの使用を禁じたか、そしてその結果として、いかに彼らの伝統的な生活様式を禁じていったかについて語っている。…このドキュメンタリー作品は、土着の海の民を絶滅に追いやったことで、2670マイルにも及ぶ海岸線の持つ潜在力を自ら利用できなくした国の姿を浮き彫りにしている。

メキシコの映画配給会社「マンタラーヤ・ディストリビュシオン」のレオ・コルデロ氏は、「『イクスカヌル火山』は、ラテンアメリカ発の作品にとっては重要なステップです。上映作品の8割がアメリカ発の大ヒット映画であり、欧州発の作品や、ましてやラテンアメリカの作品にはごく僅かなニッチ(=隙間)しか残されていません。」と指摘したうえで、「逆説的ですが、映画が欧州や世界で受けて初めて、ここラテンアメリカで上映のチャンスが出てくるのです。」と語った。

グアテマラの和平プロセスとマヤ先住民の解放に強く関心を寄せた映画『イクスカヌル火山』は、地元民による歴史の語り直しと映画制作は「共有財」であるとする新たな理解によって先住民族のメディアが花開こうとする中で生み出された作品である。

ボリビアとエクアドルは、母なる地球への権利の法という聖なる概念を基盤とした先住民族の世界観への理解を示してきた。個人的な利得よりも集合的な善を優先した「パチャママ」という概念がそれである。

ベルリナーレのNATIVeや「語りのスラム」では、先住民族の観点が中心を占めた。ベネズエラの映像アーティストで、アマゾン流域の川を守る先住民族の運動についてのドキュメンタリー『水の所有者』のプロデューサーであるデイビッド・アルベルト・ヘルナンデス・パルマー氏は、「母なる大地は悲しんでいる」と語り、ペモン族の土地であるベネズエラのグラン・サバナ自然保護区に元々はあったクエカ・ストーンは、ベルリン中心部の広大な公園であるティーアガルテンから返還されるべきだと主張した。

ドイツ政府が先住民族の資産の返還に関与することになるかどうかはわからないが、先住民族の芸術やメディア、通信はますます(対話の)橋を架けつつある。

「映画という媒体は、理解に対する重要な道筋を提供することができます。なぜなら、(映画を通して)他者の観点に対して心を開くことが可能になるからです。」と、異なる文化や民族集団間の関係に対する関心を強調したブスタマンテ監督は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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