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与党に厳しい目を向け、野党を育てるという姿勢 (石田尊昭尾崎行雄記念財団事務局長)

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【IPS東京=石田尊昭

Mr. Takaaki Ishida
Mr. Takaaki Ishida

今のように「液状化」したままの野党では、ここまで強く大きくなった与党に対して緊張感を与えることは難しいかもしれません。かといって放置してよいはずもなく、やはりここは、私たち国民が現政権・与党に対して常に厳しい目を向け、声を上げていくことで、緊張を促すことが必要だと思います。

厳しい目を向ける、というのは、何でもかんでも批判したり、単に不支持を表明することではありません。政策の具体的内容や進め方に対して、「白紙委任」で「お任せ」するのではなく、良いものは良いと評価し、おかしいものはおかしいと評価する姿勢です。同時に、野党を、ただ「腐す」のではなく、「育てよう」とする姿勢も求められるでしょう。

野党は、そうした国民の声を、与党以上に真摯に汲み上げながら、単なる数合わせではない、理念と政策による再編を行なうことが求められます。それがあって初めて健全野党の第一歩が踏み出せるのかもしれません。

政権・与党に厳しい目を向け、かつ、野党を育てるという姿勢は、現政権を支持する人にも、支持しない人にも、共通して求められることだと思います。

Ozaki Yukio Memroial Foundation
Ozaki Yukio Memroial Foundation

日本の政党政治のあり方に失望しつつ、最期まで政党政治を諦めなかった尾崎行雄。民権闘争70年の末に出した答えは、政党間の健全な競争こそが政党を鍛え、政治・政策をより良いものにしていく、というものでした。そして、それを促すのは、ほかでもない「有権者自身である」と。

第23回参院院議員通常選挙の結果は、大方の予想どおり、自由民主党公明党の圧勝、そして民主党の惨敗でした。

現政権への支持と期待の現れという側面もありますが、それ以上に、野党に対する失望感が大きかった気がします。自公に投票した人の中には、「仕方なく」という消極的支持もあったのではないでしょうか。

しかし、健全な野党がなければ、政治も政策も、より良いものにはなっていきません。
与野党間に緊張があり、互いに政策を競い合う環境が必要です。

IPS Japan

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イスラエルがイランへの威嚇を再開するなか、専門家は自重を求める

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【ワシントンIPS=ジム・ローブ】

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相が、再びイランの核施設に対する攻撃を示唆する中、米国の専門家・元外交官ら29人がバラク・オバマ大統領に対して、新たにイラン大統領に選出されたハサン・ロウハニ師の政権誕生後の交渉において、最大限柔軟に対応するよう求めている。

大統領宛ての書簡は「あらゆる懸念を解決する合意に到るには時間がかかるが、イランとの外交交渉は、我々が既存の制裁やその他の措置を、あくまでもイラン側からの互恵的な妥協を引き出す目的で活用する用意がある場合にのみ、成功するだろう。」と述べている。

この書簡の署名者には、トーマス・ピカリング元米国務次官(政治担当)、ブルーノ・ペイヨ元国際原子力機関(IAEA)副事務局長がいる。

「さらに、ロウハニ政権発足までに、すべての当事者が、この外交的機会を危機にさらす挑発的な行為は控えることがきわめて重要だ」と書簡は述べている。この書簡には、ピーター・ジェンキンス元英国IAEA大使や、米中央情報局(CIA)で2000年から05年まで近東・南アジア担当の情報分析官を務めたポール・ピラー氏も署名している。

「米国は現段階において追加制裁を実施したり検討したりすべきではない。なぜならそのような動きは、政策をより穏健な方向に転換しようとする(イラン国内の)勢力を犠牲にして、核の問題で譲歩することに反対している強硬派を勢いづけることになるからだ。」と書簡は述べている。

この書簡は、2006年以来核問題に関してイランと交渉しているいわゆる「P5+1」(米国、英国、フランス、中国、ロシア+ドイツ)の高官が会談を行う予定の7月16日の前夜に出されたものである。

この書簡は、日曜日の人気番組「CBSニュース」でのネタニヤフ発言と並んで、オバマ政権が、エジプトで7月3日に発生した軍のクーデターの問題、米国の支援する反体制派にとって風向きが悪くなりつつあるシリア内戦の問題、アフガニスタンからの米軍撤退のペースとタイミングに関する新たな不確実要素の問題、ますます悪化するタリバンとの和平協議の見通しといった諸問題に取り組んでいるなかで、出てきたものである。

ネタニヤフ首相は、こうしたオバマ政権が直面している諸問題についてイラン核問題以外の重要性は比較的低いと指摘したうえで、「米政権にはイラン核問題に関する危機感がなさすぎる」とオバマ政権の姿勢に不満を表明した。

ネタニヤフ首相は、「これらの問題は重要ではありますが、核兵器を保有しようとしているこの救世主的かつ終末論的で過激な(ロウハニ)政権に比べれば、大した問題ではないと言わざるを得ません。」と述べ、昨年はほとんど控えていた激しい口調を復活させて、イランを非難した。

ネタニヤフ首相はまた、単独軍事行動を取るという従来からの威嚇を改めて繰り返して「私は手遅れになるまで待つつもりはありません。」と述べた。

そのうえでネタニヤフ首相は、「P5+1」に対して、核濃縮作業の全面停止、コム近くの地下濃縮施設の閉鎖、既存の濃縮ウラン備蓄の海外への移送、をイランに要求するよう求めた。

さらにこれらの要求について、「制裁の段階的強化によって裏付けられる必要があります。もし制裁の効果がないときは軍事行動をとる準備があることをイランに知らしめなければなりません。そうして初めて、制裁にイランの目を向けさせることができるのです。」と語った。

米国の専門家らは、先月のイラン大統領選挙の結果が、明確に穏健派や改革主義的な有権者の支持を背景としたロウハニ師の選出に終わったことを、驚きと警戒を含んだ楽観主義で迎えていたが、ネタニヤフ首相は、このロウハニ師を評して、「羊の皮をかぶったオオカミだ。」と語った。

またネタニヤフ首相は、ロウハニ師の外交的手腕と戦略的目的についても言及し、(ロウハニ師は)「笑顔で核兵器を作る人間だ。」と語った。

オバマ政権の中にはこうしたネタニヤフ発言を快く思わない向きもある。ある政府関係者は匿名を条件に、「このCBSニュースによる(ネタニヤフ首相の)インタビューはあまりよい効果を生まなかった。」と語った。

たしかに、7月1日にイランに対して新たな経済制裁を課したばかりのオバマ政権は、ロウハニ政権が発足する8月4日から少なくとも1か月以内の9月に行われると予想される次の「P5+1」との交渉以前に追加制裁を行うことに反対する意向を、ロウハニ師選出以来密かに伝えている。

米国政府高官らは、先週末の記者会見で、4月にカザフスタンのアルマトイでイランと行った前回の交渉で提示した提案に対する公式の反応を米国と「P5+1」パートナー諸国が受け取らないかぎり、新たな譲歩をする用意はない、と明らかにした。

「P5+1」は前回の交渉で、イランが20%ウラン濃縮を停止し、20%濃縮ウランの備蓄を海外移送することと引き換えに、信頼醸成措置(CBMs)として、金・レアメタル取引、及び石油化学輸出の一部に対する制裁を解除することを提案している。

同高官らは記者団に対して、この提案は「条件を飲むか飲まないか二者択一を迫る」といった類のものと見るべきではなく、もしイラン政府がより包括的な合意を求めているのならば、「P5+1」側も検討する用意がある、と語った。

その際、ある高官は、「もしイラン側がイエスと言えば、我々もCBMに関心があるが、より大きなことを議論してもかまわない。」「もしイランが20%(濃縮ウラン)に関する3つの措置全てに関心があるが、制裁もさらに解除してほしいというのなら、(我々の反応は)『そちらの目的は何か?これが見返りに我々が望むことだ』と言うだろう。それが交渉というものだ。」と語った。

高官らはまた、オバマ政権は「P5+1」の枠内でイランとの二国間直接協議を呼び掛けてきたが、イラン政府はそれまでのところこの提案を無視してきている、と強調した。

「二国間協議には価値があると我々は考えている。」「できるだけ適切な方法で努力を強化したいと思う。」とある高官は語った。

ロウハニ師は選挙期間中、対立候補のサイード・ジャリリ氏が率いる現在の交渉チームは柔軟性に欠けていると批判した。ロウハニ師は、当選後初めての記者会見で、米国との関係は「癒すことが必要な古傷」だと述べたが、二国間協議については言及しなかった。

イランの核計画と米国との二国間関係について最終的な決定権を有すると考えられている最高指導者アヤトラ・ハメネイ師は、米国政府との直接協議の価値については懐疑的な立場を示してきたが、一方で完全否定もしていない。

一方、イスラエル・ロビーがかなりの影響力を持っている米議会においては、ここ数週間、ネタニヤフ首相のタカ派的発言に共鳴する声が聞かれるようになった。

今月初め、共和党が多数を占める下院外交委員会の委員46人のうち1人を除く全員が、ロウハニ師の当選にも関わらず、既存の対イラン制裁の抜け穴をふさぎ制裁を追加することで、イランへの圧力を強化するよう求める書簡をオバマ大統領に送った。この書簡は、下院においては、ロウハニ政権が始動する前にさらなる制裁案を通す動きが出てくることを予測させるものである。

しかし同時に、チャールズ・デント下院議員(共和、ペンシルバニア州)とデイビッド・プライス下院議員(民主、ノースカロライナ州)が共同提出したオバマ大統領への超党派書簡は、「ロウハニ師の当選が、イラン核計画に関する検証可能で執行可能な合意に向けた進展への真の機会となるかどうかを試してみないのは誤りだ。」と警告している。

このデント=プライス書簡は、米政府は「ロウハニ師の主張する『和解と和平の政策』に反対するイラン体制内の強硬派に対して、ロウハニ師の立場を弱めるような行為」は避けるべきだ、としている。

これまでのところ、定員435人の下院において決して少なくない61人の議員が、この書簡に署名している。

オバマ政権の関係者は、こうした取り組みにも関わらず、次の「P5+1」協議の前に下院が新たな制裁を承認するかもしれないが、上院は恐らくそれに追随しないだろう、と語った。

29人の専門家と元政府高官らが7月15日に発表した書簡の内容は、デント=プライス書簡の内容と共鳴するもので、米国政府はロウハニ大統領誕生というせっかくの「大きな機会」を無駄にすべきではないという点を強調している。

(本記事の冒頭で触れた)「全国イランアメリカ協議会」が発表したこの書簡には、「この機会が真の結果を生み出すかどうかはわからない。しかし、米国、イラン、そして国際社会には、我々の目前にある機会を逃したりつぶしたりする余裕はないのである。」と述べられている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【ドバイWAM】

「パレスチナ自治政府のマフムード・アッバス大統領は、中断されているイスラエルとの中東和平交渉を再開するためのジョン・ケリー米国務長官による提案に同意したとしても、ベンヤミン・ネタニヤフ右派政権はヨルダン川西岸(ウエストバンク)からユダヤ人入植地を撤退させることには決して同意しないと知るべきである。」とアラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙が報じた。

7月19日付ガルフ・ニュース紙は、「ケリー国務長官は、ネタニヤフ首相に対して、イスラエルはパレスチナ占領地域からの完全撤退と引き換えに、アラブ諸国によるイスラエルとの紛争終結・和平合意、および正常な関係の構築を約束したアラブ和平提案を再検討すべきだと語った。」と報じた。

「条件の中に曖昧な領土交換を含むなど骨抜きにされている部分があるものの、米国務長官が、このアラブ和平提案を新たな交渉のスタートポイントとして取り上げたのは驚くべきことである。もしケリー長官が今回の提案内容を主張し続けた場合、ウエストバンクからのいかなる撤退案にも反対してきたネタニヤフ首相と意見が衝突することになるだろう。」
 

「もし今後米国政府が、これまでのようにイスラエルの主張に屈するようなことになれば、ケリー長官とバラク・オバマ大統領はアラブ世界からの尊敬を失うことになるだろう。一方、もし米国政府がネタニヤフ政権に対して主張を曲げない姿勢を貫けば、中東に和平が訪れる可能性がでてくるだろう。」
 

「ケリー長官がアッバス大統領とアラブ連盟の代表と会談した同じ週に、欧州連合(EU)は、ウエストバンクや東エルサレムで活動するイスラエルの機関・団体について、2014年以降、援助対象から正式に除外する方針を決定した。これにはイスラエルに対して、ユダヤ人の入植地建設を自制するよう国際的な圧力を強める狙いがあるとみられている。そもそもこうした不法入植地の機関・団体に援助が行われてきたこと自体、憂慮すべきことだが、今回の決定は、今後も同地に違法な入植地建設を継続していくとするネタニヤフ政権の政策に、EUが同意しない意向を示唆したものである。」

「パレスチナ人の多くは、イスラエルがウエストバンクへの違法入植と占領を止めるという究極の要求はもとより、ウエストバンク在住のイスラエル人に対する旅行規制や占領地域で生産された製品に対する包括的なボイコットなどEUにはさらなる行動を期待しているが、今回の決定に対して歓迎の意を示している。(原文へ

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【国連IPS=タリフ・ディーン】

性暴力をけっして許さないとの国連の方針にも関わらず、南スーダンやコンゴ民主共和国、ウガンダ北部、ソマリア、中央アフリカ共和国といった紛争地帯において、そして最近では、政治的に問題を抱えたエジプトやシリアなどにおいて、性暴力関連の犯罪が多発している。

国連の潘基文事務総長は、昨月、安全保障理事会の会合において、レイプは「戦争の武器」であり、紛争があるところ必ず性暴力が多発し、「被災者を物心両面で打ちのめし、地域社会の構造そのものを破壊してきました。」と指摘したうえで、「こうした紛争下の性暴力は、国際人道法及び国際人権法に違反する犯罪であり、国際の平和と安全に対する脅威にほかなりません。」と訴えた。

国連は、この許すべからざる犯罪の大半が、国連が平和維持活動を実施している紛争地帯で発生していることから、紛争地帯で性暴力防止を任務とする「女性保護アドバイザー」の一団を派遣することを決定した。まずは、南スーダン、中央アフリカ共和国、コートジボワール、コンゴ民主共和国、マリ、ソマリアに派遣される予定である。

派遣先がアフリカ大陸に限定されることになるのかという記者の質問に対して、国連平和維持活動局/フィールド支援局のアンドレ=ミシェル・エスング広報官は、「派遣先について特定の地域に限定するという決まりはありません。たまたま当面の派遣先がアフリカ大陸の平和維持活動地域となっただけです。」「現在、女性保護アドバイザーの採用プロセスを進めています。」と語った。

人道支援団体「難民支援協会」で女性や少女の権利擁護に取り組んできたマーシー・ハーシュ氏は、「私たちは、国連に対して、女性保護アドバイザーを現地派遣する前に、十分な訓練を実施し、現地では既に活動を展開している諸団体と積極的に協力するよう促すような緊急対策をとるよう要請しています。また、紛争地で性暴力事件の捜査を担当する女性保護アドバイザーには、犠牲者の安全と尊厳を守っていくために、確固たる倫理・安全基準が備わっていなければならないと考えています。」と語った。

またハーシュ氏は、6月24日に国連安保理にて全会一致で可決された決議2106号(戦時下の性的暴行及び暴力禁止に関する新たな決議案)にも、「女性保護アドバイザー」に関連して、適切なタイミングでの派遣、適切な訓練の実施、様々な分野を跨った調整の必要性といった、「難民支援協会」の要請内容と一致する文言が含まれている点を指摘した。

ハーシュ氏は、この安保理決議に加えて、複数の国連加盟国からも、全ての政治・平和維持活動に対して「女性保護アドバイザー」を派遣すべきとの意見が出ている点を考えれば、「国連は、女性保護アドバイザーの展開に際して、必ず緊急に質的な向上をはかる措置をとるだろう。」と語った。

またハーシュ氏は、国連は、「女性保護アドバイザー」が性暴力事件の防止及び対策プログラムの基礎となる、時宜を得た、客観的かつ正確で、信頼のおける情報を収集するとともに、性暴力事件の被害者の安全と尊厳を守るような体制を構築していくだろうと期待している。

潘基文事務総長は、U.N. Women(ジェンダー平等と女性のエンパワーメントのための国連機関)と国連平和維持活動局(PDKO)が、UNアクション(紛争下の性暴力問題に取り組む国連13機関のネットワーク)を代表して「史上初の具体的なシナリオに基づいた国連平和維持部隊向け訓練プログラム」を作成した、と語った。これは、これまでに国連平和維持部隊の一部(具体的には南スーダン、コンゴ民主共和国、ハイチに派遣された隊員の一部)による現地住民に対する性的虐待が確認された事態への対応策である。

国連はまた、紛争当事国の法制度と法的枠組みを強化する目的で、「法の支配・紛争下の性的暴力専門家チーム」を設立しており、同チームはこれまでに中央アフリカ共和国、コロンビア、コートジボワール、ギニア、ソマリア、南スーダン政府に対して、法律面における技術的なアドバイスを行っている。

紛争時における性暴力に関する国連事務総長特別代表のザイナブ・ハワ・バングーラ氏は、「国連は20年前に旧ユーゴスラヴィア諸国の広範な地域でレイプが組織的に行われている『決定的な証拠』を提供しました。」と指摘したうえで、「最近その内の一つで、内戦中に5万人の女性が性暴力の被害にあったとされるあるボスニア・ヘルツェゴヴィナを訪問したが、同国では今日に至るまでに、性暴力の容疑者が起訴されたケースはほんの僅かに過ぎないことがわかりました。」と語った。

「こうして、性暴力の被害者らは、過去に折り合いをつけて前に進むこともできず、引き続き恥辱に苛まれながら、人目を避ける生活を余儀なくされているのです。」

つい最近では6月下旬に、コンゴ民主共和国で幼い少女らが犠牲となったいくつかのレイプ事件について、国連は「全く受け入れられない。」との声明を出している。コンゴ民主共和国の南キヴ州では、生後18か月から12歳までの9人の少女が性暴力にあい、体中に深刻な傷を負った状態で病院に運び込まれ、そのうち2人が死亡した。

国連コンゴ民主共和国ミッション(NUMOC)のロジャー・ミース特別代表は、これらの事件について、「こうした虐待は、村々から幼い子供を誘拐して結婚する(誘拐結婚)という有害な伝統的慣習と関わりがあると言われています。」と指摘したうえで、「しかし、このような暴力と虐待は全く受け入れられないものであり、終止符が打たれなければなりません。」と、語った。

また2012年には、コンゴ民主共和国東部のミノヤにおいて、135人の女性・少女が政府軍の兵士によって集団レイプされたとの報道が広範囲でなされている。

フランスのナジャット・バロー・ベルカセム女性権利相は、先月国連本部で開いた記者会見において、(性暴力のような)犯罪については、非難するだけでは不十分であり、犯人は起訴されるべきだ、と記者らに語りかけた。

「フランス政府は、こうした犯行が反乱軍兵士によるものか政府軍兵士によるものかに関わらず、このような残虐行為が起こっていることを深く憂慮しています。」とベルカセム女性権利相は付け加えた。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【国連IPS=スデシュナ・チョウドリ】

マララ・ユサフザイ(16歳)さんと、ムハンマド・カシム(23歳)さんには多くの共通点がある。いずれも、長年過激主義とテロが蔓延ってきたパキスタンの最辺境地(ユスフザイさんは北西部のスワット渓谷、カシムさんは北部パンジャブ州チャクワル)の出身者だ。

ユスフザイさんは、女子教育を否定するタリバンの圧力に屈することなく、公然と教育の権利を追及した。カシムさんも、ユスフザイさんのように自身が教育を受ける権利を追及するとともに、村の少女らにも教育を受けさせようと、友人らと寄付を募り、村に女子中学校を建設した。

UN TV

ユスフザイさんは、7月12日に国連本部で行ったスピーチの中で、「過激主義を信奉する人々は、昔も今も本とペンを恐れます。それは、彼らが教育の力を恐れているからなのです。」と語った。

カシムさんも同意見だ。「都市部の住民がタリバンの標的にならないのは、文盲率が高い辺境地とは違い、住民が教育を受けているからです。」と、カシムさんはIPSの取材に対して語った。

ユスフザイさんとカシムさんの主な共通点は、両者とも紛争地に生まれ育ち、教育への熱い情熱を抱いている点である。

ユサフザイさんは、女性にも教育の権利があることを主張したことが原因でタリバンに銃撃され、頭にけがを負ったが奇跡的に回復した。中学生が標的となったこの襲撃事件とその後の経緯については、世界中で報道された。

カシムさんは、友人からの携帯メールで、ユスフザイさんが襲われたニュースを知ったという。以来、カシムさんは友人らとともに、タリバンによるこの襲撃に抗議する集会を組織し、ソーシャルメディアを駆使して、パキスタンにおける女子教育への一般民衆の理解を高める運動を展開してきた。

カシムさんとユスフザイさんは、数日前、ニューヨークで初めて直接対面した。カシムさんが空港でユスフザイさんを見かけたときには、嬉しさで胸がいっぱいになったという。「私は彼女の健康状態について尋ねました。すると彼女は、元気で暮らしており、学校では主要テーマとして地理と歴史を選択する予定だと言っていました。」とカシムさんは語った。

黄色のTシャツとジーンズ姿で取材に応じたカシムさんは、しっかりとした自己の信念を持った青年だ。パキスタンの辺境地で育った彼には、一つの夢があった。「それはエンジニアになることです。」とカシムさんは言う。

カシムさんは、「マララ・デー」を記念するイベントに出席するためにニューヨークの国連本部に世界中から集まった若者1000人のうちの一人だ。

国連の潘基文事務総長は、女性にも教育の権利があると主張してタリバンの圧力に屈しなかったユサフザイさんの勇気を称えて、7月12日を彼女のファーストネームを冠した「マララ・デー」とした。

今回カシムさんは、女性教育への支持を表明するためにこの国連イベントに参加した。パキスタンの著名な権利擁護団体「子供の権利保護協会(SPARC)」が発行する2012年版「パキスタンの子ども白書」によると、同国では2500万人近い青少年が学校に通えない状況に置かれている。

カシムさんにとっても、彼が望んでいたような教育機会を得ることは容易ではなかった。彼は小学校に5年間通った後、父親の指示で村のマドラサ(イスラムの宗教学校)に編入させられた。

「マドラサの教師たちからは、公立学校の通常教育など受ける必要はないとよく言われたものです。マドラサからの圧力は父にもかかっており、父もついに抗しきれず、私を公立学校から辞めさせてマドラサで宗教教育を受けさせることにしたのです。」

しかしカシムさんは、それでエンジニアになる夢を諦めたわけではなかった。当初彼は、マドラサでの宗教教育と普通教育の学習をうまく調整してやっていけると考えていた。

カシムさんは、「マドラサでの生活は厳しいものでした。」「マドラサには週に6日通いました。しかし金曜日はイスラム教の休日にあたるので、この日に(以前の)学校に行って1週間分の遅れを取り戻そうとしたのです。」と当時を振り返った。カシムさんが村のマドラサに編入したのは、米国同時多発テロ事件(2001年9月11日)が勃発する数か月前のことであった。

「当時私は11歳か12歳の少年で、タリバンは私たちのヒーローでした。誰もが尊敬していたのです。」

「タリバンが、実は人間にやさしくなく、愛国的でもないということに気付いたのは、もっとあとになってからでした。」

「タリバンは罪のない女性や子どもを殺しており、人々は次第に、タリバンは支持するに値しない連中だということに気づき、離反していったのです。また、彼らは(本来あるべき)イスラム教徒ですらなかったのです。」とカシムさんは語った。

結局、カシムさんは、マドラサでの勉学から得るものはないと確信した。

「世間では、マドラサでは、生徒らは体罰にさらされ気がおかしくなるという噂が流れていました。現実は、噂通りというわけではありませんでしたが、生徒たちが教師に殴られたり洗脳されたりするという事実はありました。しかし私の場合、ここでの教育が私の求めているものではないということは、当初からはっきりと分かっていました。」

カシムさんは両親との口論の末、なんとか説得し、公立学校に通うことを許してもらった。

「将来の夢を叶えるには、それが唯一の方法だったのです。」とカシムさんは語った。

カシムさんは10年生(高校1年に相当)になるまでは村の公立学校に通い、近隣の都市の学校に転校した。その後奨学金を獲得し、現在は首都イスラマバードの工学系大学に通いながら、パートタイムで企業に勤めている。近年パキスタンが大洪水に見舞われた際には、積極的に被災地を回って救援活動にも従事した。しかしカシムさんは、将来もっと大きなことを成し遂げたいと、さらに研鑽を積んでいる。

「私は故郷の村の子どもたちが勉強できるような短期大学を村の近くに設立し、それを数年で総合大学にしたいという夢があります。」

カシムさんは、教育を受けることができた自分の経験を、故郷の村のすべての少女たちにも分かち合いたいと決意している。

またカシムさんは、今回の国連イベントへの参加について、自分が地元を代表して国連まで旅することができたことは、故郷の人々にとって大いに刺激になるだろうと想像しつつも、「リスクも孕んでいる」側面もあることを率直に認めた、

「(国連イベントが終わって)故郷のパキスタンに帰国し再び現実に直面した時のことが心配です。しかし、これはまたとない機会ですから、私は是非国際社会の前で自分の思いを述べたかったのです。」

またカシムさんは、パキスタン政府の役割について、「政府は教育問題に取り組もうとはしていますが、やはり腐敗の問題が大きな障害となっています。ぺキスタンの教育状況を変えるには、深刻な資金問題と並んで、政策レベルで抜本的な改革が断行される必要があります。」と指摘した。

国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)最新のグローバルモニタリングレポートによると、世界中で学校に行けない児童の約半数にあたる2850万人が、紛争地帯に住んでいるという。また同レポートは、人道支援援助のうち、教育分野に充当される割合は、2009年の2.2%から2012年には1.4%まで低下していると指摘している。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【アブダビWAM】


タメル・マンスール駐UAEエジプト大使は、7月17日、ハリーファ・ビン・ザーイド・アール・ナヒヤーン大統領に対して、UAE赤新月社が大統領の指示のもとに「エジプトは私たちの心の中に(Egypt in our Hearts)」キャンペーンを同日開始したことについて、心からの感謝の意を表明した。このキャンペーンは、(軍による事実上のクーデターでムハンマド・ムルシー政権が崩壊して以来)移行期にある現在のエジプトにおいて経済的な困難に直面している国民を支援することを目的としている。

マンスール大使は、声明の中で、このキャンペーンは、困難に直面した際の「誠実なアラブの連帯」を示すものであり、友情と歴史的な絆で結ばれたエジプトとUAE両国民を繋ぐ素晴らしい実例です、と語った。

またマンスール大使は、「UAE政府は、6月30日革命後にいち早くハイレベルの政府・投資家からなる代表団を派遣して暫定政権への信任を国際的に示すととともに、エジプト国民が直面している差し迫った経済状況に鑑みて、5億ドルの燃料購入資金に加えて30億ドルの支援を表明してくれました。今回のキャンぺーンは、エジプト国民を支援するUAE指導部の賢明な立場を引き続き反映したものを理解しています。」と語った。

両国の歴史的な関係と絆を深めてきたUAE指導部への感謝の念を強調しつつ、マンスール大使は、「エジプト国民は、この「エジプトは私たちの心の中に」キャンペーンが、UAE国民がエジプト国民に対して深い敬愛の念を抱き、この困難な局面にあって隣に寄り添ってくれている真実を示すものとして、歓迎しています。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【アブダビWAM】
 

1995年の「スレブレニツァ虐殺事件」から18周年目となる11日、近郊のポトチャリの記念墓地では、昨年遺骨が発見されたうち新たに身元が判明した14歳~18歳の少年44人を含む409人の犠牲者の埋葬式典が行われた。これらの犠牲者についてアラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙「ガルフ・ニュース紙」は13日付の論説の中で、「イスラム教徒の男性や少年らが、ラトコ・ムラジッチ司令官指揮下のセルビア人勢力によって虐殺されてから18年が経過したが、不屈の調査が実り、彼らの遺骸がやっと確認された。」と報じた。

「第二次世界大戦以来、欧州の地で起こった最悪の虐殺事件の犠牲者を埋葬・追悼するこの式典には、ボスニア・ヘルツェゴヴィナや世界各地から、犠牲者の家族や親戚ら15,000人を超える人々が集った。」

ボスニア・ヘルツェゴビナ紛争末期の1995年7月、国連により「安全地帯」と指定されていたボスニア東部のスレブレニツァにおいて、イスラム教徒の男性と少年およそ8000人が、スルプスカ共和国軍セルビア人民兵によって、5日間に亘って殺害された。事件前、スレブレニツァには少数の国連保護軍とオランダ軍PKO(国連平和維持活動隊)が派遣されていたが、圧倒的なセルビア軍勢力の前になす術がなかった。1999年、コフィ・アナン国連事務総長(当時)は、民族浄化に十分な対応を行わなかった責任は、国際社会全体が負わなければならないと述べた。また、虐殺事件から10周年となった2005年には、「私たちは、どんなに時間がかかろうとも、犯人に完全かつ適切な罰が下されるまで、引き続き真相解明に努力していかなければならない。」と述べている。

こうした発言には行動が伴う必要がある。このような残虐な大量殺戮は、人類の汚点であり、私たち全てに影響を及ぼしている。
 

「この事件は、人間はそこまで残虐になりうるという歴史の教訓を示しており、我々人類はそれを決して忘れず、再発防止に取り組んでいかなければならない。」とガルフ・ニュース紙は結論付けた。

翻訳=INPS Japan

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【ロンプールINPS=ナイムル・ハク

シリン・アクタルさん(18歳)の両親が彼女の結婚を決めた時、彼女はまだ13歳だった。

バングラデシュ北部ロンプール管区の貧しく保守的な家庭で長女として育ち、教育や就労機会に恵まれないシリンさんにはほとんど選択の余地はなく、31歳になる従兄弟と結婚するのは、貧困から脱け出す最善の選択のように思われた。

柔らかな語り口のシリンさんは、取材に対して、両親からは結婚について何の相談もなかった、と語った。父親には定職がなく、家族には持ち家もなかった。両親にとって、比較的裕福な実業家からの求婚依頼を受け入れることが、娘にとって明らかに最良の選択肢に思えた。

しかし、シリンさんは大学に通うという夢をなんとか叶えたいという決意を心に秘めていた。そこで彼女が支援を仰いだのが、社会の不正義に反対し、子どもの権利向上を目指して活動していた地元の少年少女からなる「子どもジャーナリスト」の仲間たちであった。

アラジェモン村(首都ダッカの北方約370キロ)の借家の自宅で取材に応じたシリンさんは、夫の親族からの暴力、厳しい家事労働など、若すぎる結婚ゆえに苦しんできた友人や親せきの少女らをたくさん目の当たりにしてきた、と語った。そして自分には彼女たちが辿ったような境遇にはとても耐えられないと考えていた。

しかし、シリンさんにとって、両親の決定に逆らうことは容易なことではなく、勇気を振り絞るとともに、同世代の友人らによる大きな支援が必要だった。

「子どもジャーナリスト」のリーダーを務めているレザさんは、取材に対して、「大人の問題に首を突っ込むとトラブルになうことは分かっていましたが、シリンさんに対する両親の仕打ちはあまりにも不当だと思いました。そこで私たちが彼女のために反対してあげないといけないと思ったのです。」と語った。

機略に富んだ少年少女たちは、村の長老をはじめ、宗教指導者、影響力のある学者、地元の経営者らに近づいてシリンさんの窮状を訴え、彼らからシリンさんの両親に掛け合ってもらえるという確約をとった。

しかし、こうした少年少女たちによるコミュニティーのほぼ全体を巻き込んだ説得工作も、国際連合児童基金(ユニセフ)がバングラデシュで展開している「青少年エンパワメント・プロジェクト」(「キショリ・アブヒジャン」)からの後押しがなければ、シリンさんに結婚以外の選択肢が与えられることはなかっただろう。このプロジェクトは、少女たちが人生の選択ができるよう必要な技術や教養を習得する支援を行っている。

このプロジェクトは、人口1億5000万人のバングラデシュにおいて幼年婚の件数が驚異的に多い事態に対応するため2001年から導入された事業である。残念ながら、その後バングラデシュでは、こうした支援プログラムへのニーズがますます高まってきている。

全人口の約3分の1にあたる人々が1日当たり1ドル以下の生活を強いられている中で、多くの家庭が、娘の結婚を厳しい労働に追われる生活から逃れる手段として頼りにしたとしても不思議ではない。つまり娘の結婚相手を見つけるということは、扶養家族を一人減らし、さらには彼女の配偶者からの財政補填も期待できることを意味している。

バングラデシュでは、少女の就学率が向上し、出生率が大幅に低下し、若い女性が益々自らの権利を要求する自由を獲得したにもかかわらず、依然として多くの女性が幼年婚の風習に縛られている。最近の調査では、20歳~24歳の女性の場合、法的に認められる最低年齢にあたる18歳になる前に結婚した者が68%にも上っている。また、他の諸研究によると、こうした少女たちの大半が結婚されられたのは、実際には16歳の誕生日を迎える前であった。

政府統計によると、バングラデシュの少女人口1370万人のうち、19歳になる前に出産する女性の数は半数以上に上るという。

都市部よりもさらに貧困が広範囲に広がっている農村部では、貧しい家庭の少女は、思春期の開始とともに結婚資格があるとみなされている。つまり、13歳や14歳の幼い少女たちが妻になることも少なくないのである。

貧困家庭では、一部には花嫁持参金の出費を引き下げるため、また一部には、(不特定多数の男性からの)性的な嫌がらせから未婚の娘たちを「守る」ため、親がほとんど躊躇することなく、娘たちを年配の男性に嫁がせる傾向がある。

人権活動家らによると、こうした慣習は社会に悪影響を及ぼすのみならず、少女らの健康にとっても危険だという。出産の80%が自宅で、しかも、熟練した医療関係者が立ち会わない状況で行われているこの国において、妊娠した幼い少女と体内の胎児は、出産に至るまでの期間に、肺炎や、低出生体重など様々な合併症に侵されるリスクを負うことになる。

子ども時代を奪う「幼年婚」が、バングラデシュ社会に悪影響を及ぼしているのは、この国の妊婦死亡率が米国の10万人あたり21人と比べると、320人と極めて高いことからも明らかである。

こうした中、ユニセフをはじめとした国際機関と連携して「幼年婚」対策に取り組んでいる各地の活動家の努力は、少しずつだが実を結びつつある。

「キショリ・クラブ」として知られる自助グループには、単位ごとに約30人の若者たちが2週間に1度集まって、性と生殖に関する健康(リプロダクティブヘルス)、栄養、性的役割分担、女性への暴力といった問題について話し合っている。

そして、ユニセフによる訓練を受けたグループリーダーたちは、少女らが自ら生計を立てていくための手段となる、裁縫や陶芸、家禽の飼い方などの技術習得を支援している。

また、「キショリ・クラブ」は、バングラデシュの何百もの郡(Sub districtで、貧困家庭を対象にコンピューター技能や木工技能等の基礎研修を実施し、大きな成果を上げてきた科学大衆教育センター(CMESのような草の根関連団体と連携して活動を展開している。

「キショリ・クラブ」はまた、青少年をはじめ地域社会を対象に実施されている「幼年婚」に関する啓発活動の調整団体としても機能している。

シリンさんの経験は、こうしたローカル組織の実力を証明するものといえるだろう。シリンさんの父親が村の結婚登記所に申し入れをした際、登記官は、シリンさんの出生証明書を確認できない限り、婚姻登記はできないと回答した。この出来事は、役人たちが18歳未満の少女らの婚姻を黙認してきたこれまでの実態とは一線を画す、重要な転機を示している。

しかし、活動家らは、教育のみではこの悪習を永続化させる「旧来の思考」を変えるには十分ではないことを認識している。「幼年婚」を根絶するには、貧困家庭を取り巻く経済環境を変える必要があるのだ。

バングラデシュで児童保護の問題を担当しているユニセフのローズ-アン・パパヴェロ氏は、取材に対して、「ユニセフではバングラデシュ政府と協力して、貧困家庭を対象に、

(法定婚姻年齢未満の)娘を嫁に出さない、児童労働に使わない、体罰を行わないなどの条件に親が同意することを前提に、現金支給(年間472ドル)を行うプログラムを展開しています。」と語った。

こうした取り組みの効果は明らかに表れている。過去25年の動向を分析した2007年版「バングラデシュ人口統計と健康調査 (BDHS)によれば、40代後半の女性の平均婚姻年齢が14歳だったのに対して、20代前半の女性の場合は16.4歳と、ゆっくりではあるが着実に改善している。

翻訳=INPS Japan

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オバマ・マジックは消えた―熱意を上回った警戒心

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【ベルリンIDN=ラメシュ・ジャウラ

4年前、「『核兵器なき世界』の平和と安全を目指す」というバラク・オバマ大統領の約束は世界を駆け巡り、ただ一筋の閃光(=核爆発)によって人類が破滅することはなくなるという希望を生んだ。6月19日、オバマ大統領はこの「プラハ演説」につづく演説をベルリンで行おうとした。しかし今回は、オバマ・マジックが会場を席巻することはなかった。

Kate Hudson
Kate Hudson

核軍縮キャンペーン(CNDのケイト・ハドソン事務局長は、この理由について28日付のブログに、「オバマ大統領は明らかに、世界的な核廃絶という目標に引き続きコミットしているものの、今回の演説からは、2009年のプラハ演説で掻き立てられたようなとてつもない希望と感情の迸りを感じることはできなかった。」と書き込んでいる。

またハドソン事務局長は、オバマ大統領がベルリンで語った内容の大半は、既にプラハ演説で語られていたが、進展は極めて遅々としている、と指摘している。「CTBT(包括的核実験禁止条約)の批准や核分裂性物質生産禁止(カットオフ)条約への前進といった話題は、『プラハ演説』にもあったが依然として解決していないし、核保安と民生原子力へのアクセスの問題についても同様です。振り返ってみると、米ロそれぞれの核戦力を多少削減した新戦略兵器削減条約(STARTの批准が、オバマ大統領の2009年構想の唯一の成果と言えるでしょう。」

さらにハドソン事務局長は、「(ベルリン演説にこのような印象を持った)理由は恐らく、オバマ大統領が『プラハ演説』以降、自身の意図はどうあれ、核軍縮を呼びかけながら、同時に自国の核兵器については近代化推進を謳い、仮想敵国の核兵器の『抑止』効果を無効化する新システムの開発を進めた経緯を私たちが目の当たりにしてきたからだろう。」と述べている。

またハドソン事務局長は、オバマ大統領にとって(ベルリン演説後の)国内状況も決して芳しいものではないと指摘している。「ベルリン演説以降、ケリー・アヨット上院議員(共和党、ニューハンプシャー選出)が、大統領の意図には誤解があり危険なものだと評するなど、多くの共和党上院議員が大統領に容赦ない批判を浴びせている。もっとも、金融危機が世論と安全保障上のニーズに関する国民認識にどのような影響を及ぼしているかを見極めないことには全体像を判断することはできないが、控えめに見ても、核軍縮をさらに進展させるには多くの障害がある。」

「米国であれ英国であれ、核兵器に予算を費やすことへの反発が強まってきている。つまり、無駄遣いであり時代遅れだと広く見なされるようになってきているのだ。人々は、テロやサイバー戦争気候変動といった21世紀の脅威に核兵器で対処することはできないと考えているのです。」

ICAN
ICAN

核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)は、オバマ大統領のベルリンでの「核兵器なき世界」への呼びかけと、米ロ核戦力のさらなる削減を図るとの意向を歓迎しつつも、「…核兵器に関する世界的な運動の関心事となりつつある、核兵器の使用がもたらす人道的帰結の問題をみれば、核兵器の禁止と廃絶が当然の結論となる。」との声明を出した。

ICANはさらに、「オバマ大統領の演説は、核兵器は使えない兵器であり、今日の世界の安全保障環境において何の現実的な有用性もないという広がりつつある認識をさらに強化することに寄与しました。にもかかわらず、核兵器はひとたび使用されれば、恐るべき人道的帰結をもたらすことになります。核兵器は条約で禁止されていない唯一の大量破壊兵器であり、ICANは核廃絶の枠組みを定める条約の締結を呼びかけています。」と述べている。

オバマ大統領は、かつて東西ドイツを分けていた歴史的なブランデンブルク門の東側から演説し、「我々は、もはや世界絶滅の恐怖の中で生きてはいないかもしれません。しかし、核兵器が存在し続けるかぎり、我々は本当に安全とは言えません。」と宣言した。この文脈において重要なことは、オバマ大統領が核兵器を平和と正義に結び付けて次のように語ったことである。「その夢がいかに遠く見えようとも、正義のある平和とは、『核兵器なき世界』という安全を追求するということです。」

Hirotsugu Terasaki/ SGI
Hirotsugu Terasaki/ SGI

創価学会の副会長であり、創価学会インタナショナル(SGI)平和運動局長でもある寺崎広嗣氏は、「この目標は果てしなく遠く、また非現実的であると考える人もいるかもしれませんが、手の届かないものではありません。」と指摘したうえで、「21世紀の真の安全保障を考えるにあたり、私どもは変わりゆく現実を直視し、それを望ましい方向へと導くべく、さらに新しい現実を生み出す想像力を持たねばなりません。」という池田大作SGI会長の言葉を引用した。

東京に本部を置き世界に会員を擁する在家仏教組織SGIは、核兵器廃絶の必要性を世論喚起する上で先頭を走ってきた。

寺崎局長はIDNに寄せた声明の中で次のように述べている。「オバマ大統領のベルリン演説は、核兵器のない世界を目指すことを再確認するという意味では歓迎すべきものです。米ロ両国が保有する核兵器の一層の削減努力への決意は、この目標に向けての具体的なステップを示すものです。」

「表明された公約を実現するためには、米国政府は、世界における核兵器のリスクを減少させるだけではなく、さらに核兵器廃絶への具体的な行動の道筋を確立する必要があります。オバマ大統領が明確にしたように、核抑止というドクトリンは、もはやいかなる国の安全に役立ちうるものではありません。これは、世界の一般の人々がすでに感じていたことでもあります。核による破滅を盾に人類を人質にとっても、誰一人安全にはなりません。」

まだ多くの作業が残る

オバマ大統領はベルリン演説で「まだ多くの作業が残っている」と認めたうえで、「さらなる措置について発表する」と述べた。そしてこう続けた。「私は、包括的な再検討を経て、米国の配備済み戦略核兵器を3分の1削減しても、米国とその同盟国の安全を確保でき、強力で信頼性の高い戦略的抑止力を維持できるとの結論に至りました。私は、ロシアとの交渉によって削減を追求し、冷戦期の核態勢からの脱却を目指す所存です。」

「同時に、北大西洋条約機構(NATO)同盟国と協力して、欧州における米国とロシアの戦術核の大胆な削減を図ります。そして、原子力平和利用の新しい国際枠組みをつくり、北朝鮮とイランが追求しているとみられる核保有を阻止することは可能です。」

オバマ大統領はさらに、「米国は2016年、世界中の核物質の保全を図るため2年毎に開催している『核安全保障サミット』の第4回目を主催し、包括的核実験禁止条約の米国批准への支持調達のために努力し、核兵器用の核分裂性物質生産を禁止するための条約交渉を開始するようすべての国家に呼びかけます。」と語った。

寺崎局長はまた、核兵器のリスク、影響、コストに鑑みる時、世界からこの破滅的な兵器をなくす実際的必要性と道義的要請の双方が存在すると指摘し、「核兵器を禁止する条約について、交渉を始めなければならない時がきたのです。」と述べている。そのうえで、「核兵器廃絶への取り組みは、全人類家族全てによる共同事業でなければなりません。核兵器国、核兵器開発を行わなかった国、そして最も重要である人類の一人ひとりが、それぞれの役割を果たさなければなりません。SGIは、核兵器の禁止と廃絶に向け人々が立ち上がるよう、草の根の意識啓発に尽力していきます。」と強調している。

すべての核爆発を禁じている包括的核実験禁止条約(CTBT)は183か国が署名し、そのうち158か国が批准を済ませているが、核能力を持った残り8か国(中国、北朝鮮、エジプト、インド、イラン、イスラエル、パキスタン、米国)が批准をしないかぎり、発効しない。

グローバル・ゼロに向かって

予想されたとおり、6月19日のドイツのギド・ヴェスターヴェレ外相の反応は、慎重な楽観論と、ドイツ領土からの米戦術核撤去やロシアとの真の対話といったドイツ政府の関心についての間接的な言及がない交ぜになったものだった。「核軍縮に関するオバマ大統領の提案は、ドイツがその外交政策において支持している方向への大胆なステップです。」

「核軍縮に関するオバマ大統領の計画を我々が共同で実現することができれば、世界はより安全でより良い場所になるでしょう。核兵器の数を減らし、核不拡散に関する効果的な世界的ルールを構築することは、『グローバル・ゼロ』、すなわち核兵器なき世界への決定的なステップとなります。」

「私たちはこの機運を活かして協力していくことが必要です。とりわけ、ロシア政府との対話は、この機を逃してはなりません。また、欧州の戦術核も削減しようという提案は、我々にとっては特に重要なテーマです。ドイツ政府はオバマ大統領の計画を支持し、最大限の努力をする用意があります。」

6月20日、ヴェスターヴェレ外相は、ニュルンベルクで開催された安全保障に関する会議において、「依然として世界には1万7000発の核弾頭があります。もしこの数を減らすことができれば、世界はより安全な場所になるでしょう。そういう理由から、オバマ大統領の軍縮構想は、平和と安全に向けた大胆な措置なのです。」

「オバマ大統領が彼の提案に欧州戦術核を明確に含めたことは、ドイツ領に残る最後の核兵器の撤去を実現するために我々が行っている取り組みに弾みをつけることになるでしょう。」

「オバマ大統領の構想は、核軍縮をドイツ外交政策の最優先事項に据えるという我々の決定を大いに後押しするものです。もちろんこの構想を実現するには、その他の核大国、とりわけロシアも役割を果たさねばなりません。我々は、オバマ大統領の構想支持を念頭に、ロシア政府との対話を強化していきます。今後ドイツ外交政策の焦点は、核軍縮をもたらすための架け橋を築くことに置かれるでしょう。」

「核兵器なき世界は一つのビジョンであって、幻想ではありません。もちろん、それは一夜にして実現するものではありません。我々には、政治的意思、機敏な外交、そしてとりわけ、根気と戦略的忍耐が必要となります。」

チャンスは過ぎた

ドイツ連邦議会軍縮・軍備管理・不拡散小委員会のウタ・ツァプフ委員長は6月27日、ロシアの安全保障上のニーズに考慮を払わないかぎり、核兵器のさらなる削減というオバマ大統領の提案をロシアが受け入れることはないだろう、と述べた。

またツァプフ委員長は、「なぜ、軍縮がなされるまで、米国の戦術核兵器が欧州そしてドイツに存在しなくてはならないのでしょうか?むしろこうした兵器が米国に置かれていたほうが、もっと軍縮はやりやすいのではないでしょうか?」と疑問を投げかけた。

実際、戦術核撤去のチャンスは過ぎてしまったようだ、とツァプフ委員長は言う。「おそらくはシカゴでの決定(NATOサミット)の結果として出された2013年6月12日の米国の『核兵器の運用指針』は、欧州に戦術核を展開すると明記している。B61核弾頭の近代化は、同盟国を守る米国の戦略の不可欠の一部を成しているようだ(いわゆる「拡大抑止」)。」

ロシアの反応を見れば、ツァプフ委員長の意見は外れていないようだ。グローバル・セキュリティ・ニューズワイヤによると、新START合意ではすでに、両国が配備済み[戦略核]弾頭の数を2018年までにそれぞれ1550に制限することを義務づけているが、オバマ新提案の上限は、配備済みの戦略核弾頭を約1000に引き下げるということになっている。

「ロシアは、能力を強化したミサイル防衛システムを今後5年間で欧州に配備するというオバマ政権の計画に反対している。ロシア政府は、ミサイル防衛システムはイランからのミサイル攻撃から防御することのみを目的としているという米国政府の説明を受け入れず、迎撃ミサイルの使用に条件を付ける法的拘束力のある合意を米国に要求している。これまで米ロ政府間でミサイル防衛に関する多くの協議がなされてきたが、中核的な部分の相違を埋めるに至っていない。」とグローバル・セキュリティ・ニューズワイヤは報じている。

一方、ITARタス通信は6月20日、ロシアのドミトリー・ロゴジン副首相がミサイル防衛問題が未解決であることを考えると、ロシア政府はオバマ大統領の協議提案に疑念を持っていると発言した、と伝えている。

 「米国がロシアの戦略的潜在戦力を迎撃する能力を高めている時に、戦略核の潜在戦力を削減するという提案をどうして真剣に受け止めることができるだろうか?我が国の政治指導部がこの約束を真剣に受け入れることができないのは明らかだ。」とロゴジン副首相は記者団に語った。

また、ロシアのセルゲイ・リャブコフ外務次官はRIAノボスチの取材に対して、「ロシア政府は他の国が核兵器とミサイル能力を強化している状況の中で、核兵器の削減・制限について米国と二国間協議を延々と続けることはできない。」「核兵器のさらなる削減の必要性を議論する前に、(ミサイル防衛)の問題についての容認可能な解決に至らねばならない。」と語った。

冷戦期の態勢

グローバル・セキュリティ・ニューズワイヤのエレーン・M・グロスマン氏は、6月21日付の分析記事の中で、「オバマ大統領は、米ロそれぞれの配備済み核兵器をさらに削減する交渉をロシアに提案して新聞の見出しを飾る一方で、冷戦期の重要な柱を手放さないよう、密かに国防総省に指示を出していた。」と記している。

「オバマ大統領のベルリン演説からわずか数時間後、国防総省は(ウタ・ツァプフ委員長も言及している)『核兵器の運用指針』に関して大統領がこの数日の間に出した議会向け報告を公表した。これは、米国が核兵器をどれほど必要としているかを定める際の、広い範囲を対象とした指令である。」

グロスマン氏は、「指針は一方で、配備済み戦略核弾頭の追加削減の追求と、先制核攻撃準備への依存を減らすよう指示している」という核兵器専門家ハンス・クリステンセン氏のブログ記事(6月20日)を引用している。「他方で同指針は、対兵力目標選定(=戦略核戦力を攻撃目標として選定すること:IPSJ)、戦略核戦力三本柱の保持、欧州への非戦略核(=戦術核)前進配備の保持といった、冷戦期の核態勢の中核的な特徴を維持することを再確認している。」(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【カイロWAM】
 
アラブ連盟は声明を発表し、国際社会、とりわけ国連、国際赤十字委員会、人権擁護団体に対して直ちに介入し、イスラエル占領下の収容所や監獄でハンガーストライキを行っているパレスチナ人囚人の命を救済するとともに、彼らに対する非人道的な扱いを止めさせるよう強く求めた。

ナビール・エルアラビー・アラブ連盟事務総長は、この声明の中で、「我々は、きわめて深刻な健康状態にありながら無期限のハンガーストライキに入っているパレスチナ人囚人、とりわけ5月末以来のハンストで危険な状況に陥っているとされるアブドゥラ・バグーチ氏が置かれている状況について、重大な懸念をもって見守っています。」と述べた。

エルアラビー事務総長は、そのうえで、国際社会に対して、イスラエル占領当局によるパレスチナ人囚人への虐待を止めさせるよう、強く訴えた。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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