ホーム ブログ ページ 212

国連、2015年以後の開発課題で女性の役割重視

【国連IPS=タリフ・ディーン】

2015年以降の開発課題の完全実行のための集中的な世界キャンペーンを開始した国連は、9月に世界の指導者が採択した17の持続可能な開発目標(SDGs)の実現に向けて、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントが不可欠であると明確に主張している。

UN Assistant Secretary-General and UN Women Deputy Executive Director, Lakshmi Puri, intervening at the Women’s Forum on Financing for Gender Equality. Photo: UN Women/ Binyam Teshome Weldehana

そして、国連の潘基文事務総長は、人類の半数を占める女性が「あらゆる領域において(男性と)完全かつ平等な参加者として」扱われるようになるまで、あるいはそうならない限り、国連の開発目標が100%達成されることはないだろうという政治的メッセージを強く発した。

「UNウイメン」のラクシュミ・プリ事務局長代理(国連事務次長補)はこのメッセージを再確認して、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントは持続可能な開発の実現にとって必要不可欠だと語った。

このことは、昨年7月の第3回開発資金会議で採択された「アジスアベバ行動目標」や、9月に国連総会で採択された「持続可能な開発に向けた2030アジェンダ」の成果の中にも強く反映されている。

プリ氏は、「こうした成果は、ジェンダーギャップの解消に向けた投資の増加を通じたものを含め、ジェンダー平等とすべての女性・女児のエンパワーメントを達成することを自らに強く義務づけています。」と指摘した。

アジスアベバ行動目標の最初のパラグラフは「我々はジェンダー平等と女性のエンパワーメントを達成するであろう」と宣言している。

「『2030アジェンダ』は、ジェンダー不平等が、国内及び国家間の不平等を含むあらゆる不平等の源泉であると認識する一方、SDGsではジェンダー平等の達成を単独の目標として掲げています。」とプリ氏は語った。

17のSDGsには、飢餓貧困の根絶健康な生活の確保ジェンダー平等の達成、グローバル環境の保護、持続可能なエネルギーの確保などが含まれている。

これらの目標は2030年までの達成が期待されている。

昨年初めに開催された、権力と意思決定権を持つ女性に関するハイレベルイベントで演説した潘事務総長は、この数十年に比べて、今日の世界ではずっと多くの女性が政治分野で活躍していることを認めた。

「しかし、進展はあまりに遅く、スピードにもばらつきがあります。」と潘事務総長批判した。

潘事務総長は、「どの国にも女性の完全な平等はなく、女性は国会議員の5人に1人しかいません。また世界で女性の国家指導者は20人しかいないのです。」と指摘した。

潘事務総長はまた、「国会に女性が全くいない国が世界には5つあり、8か国には女性閣僚が全くいません。さらに女性は、余りに多くの国々で、家庭内暴力や性器切除、その他の形態の暴力に苦しんでいます。」と指摘したうえで、「こうした行為は個人にトラウマを、社会にダメージを与えています。」「現在世界的に横行している女性・女児に対する暴力を終わらせないかぎり、人権の擁護や開発の進展はありえません。」と語った。

プリ氏は、「私たちは、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントという真の約束と可能性を実現し、彼女たちの人権を実現する100年に一度の、これまでで最大の機会を手にしています。」と語った。

「これまでで初めて、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの本質性が『アジェンダ2030』の中で認識され再確認されました。世界193か国の元首級の会合で採択された『アジェンダ2030』は、『人類の半分を占める女性に完全な人権と機会が与えられないかぎり持続可能な開発は不可能だ』と述べています。」とプリ氏は指摘した。

「さらに、ジェンダー平等はますます『実現可能なミッション』見なされるようになってきている。献身的で、包括的で、変革的なSDGsの第5項は、ジェンダー平等の約束の達成を謳うだけではなく、すべての女性・女児をエンパワーし、誰も置き去りにしないということを明記している。」

「アジェンダ2030」の履行のあらゆる側面において、ジェンダーギャップ解消のための投資の急拡大、ジェンダー平等機関の強化、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントの系統的な主流化への約束がなされている。

SDGs for All Logo
SDGs for All Logo

「女性・女児に対するあらゆる形態の差別を法律・慣習上廃絶し、女性への暴力を終わらせることは、持続可能な開発の目標である。同様に、女性の未払いケアワークや、経済的・政治的・公的生活における平等な参加とリーダーシップ、性と生殖に関する健康・権利への普遍的なアクセス、資源や経済的エンパワーメントへの所有と管理に価値を与え、それらを提供することも、持続可能な開発の目標となります。」とプリ氏は付け加えた。

「履行と変化のペースを上げ、ジェンダー平等と女性のエンパワーメントを現世代の間に達成するとの約束もあります。『プラネット50/50』を2030年までに達成し、ジェンダー平等にまで高めるのです。」とプリ氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

関連記事:

奴隷状態から自立へ:南インド、ダリット女性たちの物語

持続可能な開発のために世界市民教育を推進する

女性をとりまく深刻な人権侵害の実態が明らかになる

ユネスコ協力のイベントで世界市民育成のためのジャーナリストの役割強調

メディアやジャーナリストは、世界市民の育成につながる環境を整えるうえで重要な役割を果たす。国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)は、この観点から、12月14日から15日にバンコクでアジアの学者・メディア関係者が参加して開催されたシンポジウムを承認し資金提供を行った。参加者らは、紛争よりも調和を促進し、世界市民の育成に役立つメディアを創出するような21世紀のジャーナリストを訓練するために、旧来からのアジア人のコミュニケーション作法をいかに利用しうるかについて検討した。

【バンコクIDN=カリンガ・セレヴィラトネ】

「マインドフル(=周囲に気を配るの意)・コミュニケーション」ブームが現在米国を席巻しているが、ここバンコクに集ったアジアの学者やメディア関係者らは、旧来からのアジア人のコミュニケーション作法を、紛争よりも調和を促進するメディアを創出するような21世紀のジャーナリストを訓練するためにいかに利用しうるかについて検討した。

チュラロンコーン大学の大学院でコミュニケーション・アートを専攻した元ジャーナリストで、現在はタイ北部で「森の僧侶(町や村の寺に住む僧侶ではなく、瞑想を実行するために静寂な場所を求めて歩く僧侶)」でもあるプワドル・ピヤシオ・ビック師は、シンポジウムの開会講演の中で、「欧米で実践されている『マンドフルネス』には『やや問題があります。』なぜならそれは、主に個人のレベルでストレスから解き放たれるために使われているからです。」と指摘した。

「欧米におけるマインドフル・コミュニケーションの実践は世俗的であろうとするため、いかなる宗教的な価値も含めずに実践されています。しかしそのような実践にはパナ(智恵)が伴っていなくてはなりません。この道徳的な智恵なしでは、たとえ実践したところで、社会を正しい方向へと導くためには十分なものとはならないでしょう。」

ビック師は、ジャーナリズムへの実践的なアプローチとして、仏教の根本には苦しむ者への思慮(=同苦の精神)によって苦しみを取り除く必要性を説いていることから、分断と紛争を煽らなくてもある問題について報じることはできる、ということを説明した。

東南アジア諸国連合(ASEAN)統合に向けたマインドフル・コミュニケーション」と題されたシンポジウムは12月14日・15両日、チュラロンコーン大学コミュニケーション・アート学部がユネスコの「コミュニケーション開発のための国際プログラム」(IPDC)との協力で開催した。この集まりは、アジアの古代からの仏教、ヒンズー教、儒教の哲学からの思想や概念、考え方を統合したアジアの新たなジャーナリズム養成カリキュラムを発展させるプロセスの一環である。

UNESCO
UNESCO

もう一人の基調講演者で著名なタイの社会活動家スラク・シバラクサ氏は、マインドフルネスに固執すればマイナスの結果が生まれる可能性もあると警告した。シバラクサ氏はまた、マインドフルネス・トレーニングが米国の企業経営者の間で流行っていることを指摘したうえで、「この訓練に倫理的訓練が伴っていなければ、一層利益を追求する無謀な行動を導きかねません。シラ(倫理)や貪欲、憎しみ、思い違いについて学ぶことが、持続可能な開発に向けたマインドフル・コミュニケーションのために必要です。」と論じた。

シンポジウムでは多くの発表者が、「アジアの哲学的思想は2000年前と同じく今日でも有効だが、現在の『マインドフル・コミュニケーション』ブームに見られるように、その起源に十分な考慮が払われることなく、欧米の知的社会で利用されている。」と指摘した。同時に、アジアの若者たちもまた、近代的ないかなるものも欧米を起源とし、自分たちの古くからの哲学は近代的な生活様式を形成するうえで無関係であるという誤った考えに囚われたまま成長している。

Dr. Binod C. Agrawal
Dr. Binod C. Agrawal

ヒムギリ・ジー大学(インド)元副学長のビノッド・アガルワル博士は、「途上国」のためにジャーナリズムのカリキュラムを組もうというユネスコのかつての試みは、「アプローチにおいて概して欧米的であり、欧米で追求されてきた理論的・イデオロギー的観点を組み込もうとするものだった」と指摘した。アガルワル博士はまた、この問題について、もっぱら欧米で教育を受け、こうした知識をアジアの知的社会に無批判に持ち込もうとしたアジアの知識人を、とりわけり厳しく批判した。

ある発言者が述べたように、コミュニケーションに関するアジアの学者は、15世紀にグーテンベルクによって聖書がドイツで印刷されたことにマスメディアの端は発すると教える一方で、それよりも600年も前に、印刷された言葉を通じてアジア全体に仏教が伝播するのに一役買った「金剛般若経」を中国人が印刷したという事実を無視している。

アジアのメディアは、この地域の紛争につながりかねない南シナ海での対立に関する欧米メディアの注目に無批判に追随する一方で、地域に大きな経済的進歩をもたらし、アジア全体で協力と繁栄をもたらす可能性がある、中国提案の「海と陸のシルクルート」プロジェクトへのリップサービスを行っている。

センセーショナルな取り上げ方を止めて、根本に迫る

マレーシアの元外交官アナンダ・クマラセリ博士(人間開発・平和財団)は、ジャーナリストを「脱文化化(de-culturalise)」する必要があると考えている。クマラセリ博士は、「メディアは問題をセンセーショナルに扱い、欲望と消費主義を煽ることによって、人々の心情に影響を及ぼしているのです。」と指摘したうえで、「つまり問題は人間が作り出しているものですから、人間の精神がどのようなものかを理解しなくてはなりません。そしてそのためには、(センセーショナルに取り扱うのではなく)問題の根本に迫るよう、ジャーナリストを訓練する必要があるのです。」と語った。

圓光大学宗教研究センター(韓国)のパク・ガンス教授は、北朝鮮報道に関して同じような傾向が韓国メディアにあると指摘した。「韓国メディアはいつも北朝鮮の核兵器については報じますが、両国間の家族再会や経済関係のような問題については無視しています。」と述べ、「(韓国)メディアはこれらの問題をより深く理解する必要があります。」と付け加えた。

Supaporn Phokaew/ Chulalongkorn University
Supaporn Phokaew/ Chulalongkorn University

チュラロンコーン大学コミュニケーション・アート学部のスパポーン・フォカウ教授も同じ意見だ。彼女は、仏教の教えの基本的な側面である、生きとし生けるものに対する情けと共感という観念に関する知識を持つことで、ジャーナリストは、(自分たちが報道する)対象に対する深い共感を持つことができるでしょう。」「私たちは学生に読み書きの能力は教えていますが、耳を傾けるスキルは教えていません。マインドフルなコミュニケーションの実践として、他人に深く耳を傾けることを教え始めなくてはなりません。社会とつながっていくためには他人に耳を傾けなくてはならないのです。」と論じた。

人権に対する欧米の信条もまた、アジアの学者らからは大いに批判を浴びた。彼らは、「欧米諸国が独善的な解釈による『個人の権利』概念を傲慢に適用したことから中東に混乱が引き起こされ、『アラブの春』は『憂鬱な寒い冬』に変質してしまった。」と論じるとともに、「デンマークフランスで発生した預言者ムハンマドの風刺画をめぐるテロ事件を例に挙げながら、言論の自由にも限界がある。」と指摘した。学者らはまた、「こうした欧米の信条は、アジアにおいては批判的に検討されねばならない。」と論じた。

欧米の既存のジャーナリズムモデルと置き換わるソーシャルメディア

王立ティンプー大学(ブータン)のドルジ・ワンチュク渉外部長は、欧米からの良いものは、「私たちのニーズと価値観に見合う形で」アジアで適用可能だと考えている。ワンチュク氏は、ブータン王国の国是である「国民総幸福量」(GNH)は「価値観を伴う開発」であると説明した。ワンチュク氏はまた、「欧米ジャーナリズムの『第四の権力』モデルは、異なったものの見方や社会的相互作用を生み出しつつあるソーシャルメディアの隆盛によって、急速に姿を消しつつあります。アジアのメディアは、商業モデルというよりも、充足感(contentment)を基礎にしたモデルの発展を目指すべきです。」と論じた。

ワンチュク氏は、充足感を基礎としたメディアモデルを「中庸の道」だと呼んだ。「ブータンは、幸福、共同体、共感、ブータン社会の中核的価値観を称揚するジャーナリズムの形態を作り上げつつあります。『中庸の道』のジャーナリズムは、ニュースを、商品ではなく社会財として発展させていきます。そうすることで、ジャーナリズムは、紛争や対立、商業主義を肥やしにするのではなく、共同体の発展、コンセンサスの形成、幸福の増進に資する役割を果たしていくことができるのです。」とワンチュク氏は語った。

オープンな議論と討論は健全な人間社会にとって不可欠なものだが、マレーシア人で「仏教チャンネル」のリム・クーイ・フォン代表は、「それには責任が伴っていなくてはならない」と論じた。フォン氏はまた、「この点については、仏教の哲学から学ぶべきことは多いが、同時に、1990年代の『アジア的諸価値』論議に見られたような、権威的な支配エリートに対する批判の矛先をそらす手段として使われることを避けなくてはならない。」と指摘した。

リム氏はまた、「アジアの声の底流にあるのは、自由で個人主義的なエートスが、過度に法遵守的で、攻撃的で、消費主義的な態度と結びついた場合、アジア社会の伝統的な諸価値、すなわち、社会の調和や家族や権威の尊重、とりわけ、権利の主張よりも義務や責任の強調といったことに抵触するのではないかという深い懸念があるのです。」と指摘したうえで、「『アジア的諸価値』の代表と『西洋リベラリズム』の擁護者は、互いから学び、ある意味では補い合うことができるのではないでしょうか。」と語った。

倫理と徳

タイの作家で詩人のクニイン・チャンノングスリ・ハンチャンラッシュ氏は、「責任とアカウンタビリティは、道徳的行い(シラ)・精神の平静(サマディ)・洞察(パナ)という仏教実践の三原則において鍛えられた心に自然に宿るものです。」と論じた。

ハンチャンラッシュ氏はまた、「マインドフルネスは、実践によって生み出される特質です。」と指摘するとともに、「コミュニケーションにとってマインドフルネスとは、実際のコミュニケーション行為が起こる以前の、感情・偏見・動機など、自分の心の中に湧き上がってくる探求のことです。それは、何かに反応するというよりも自らが決定できる『知ること』の領域に他なりません。」と語った。

ベトナムのあるカトリック学者は、ASEAN社会に対してマインドフルなジャーナリズムを提示するにあたっては注意が必要で、それが宗教的な概念だと見られないようにしなければならない、との見解だ。「仏教徒以外の人々に対してこの概念を納得させようとする場合、他の宗教的な伝統にも反映されている倫理や徳に結び付けられる必要があります。」と論じた。

パク教授は、「倫理や徳はアジアの伝統の重要な部分です。仏教だけではなく儒教哲学においてもこれらの実践は立派な位置づけを与えられています。」と語った。教授はまた、道教の哲学者・荘子の言葉を引用しつつ、「対立的なスタイルのジャーナリズムは、より協力的で問題解決を志向するスタイルのジャーナリズムに転換することが可能です。」と論じた。

Wikimedia Commons
Wikimedia Commons

韓国仏教テレビネットワーク(BTN)のハヤカワ・エミ氏は、これをいかに実践に移しうるかについて具体的な事例を示した。2014年4月に韓国でフェリー転覆事故が起こった際、韓国放送公社(KBS)は死者の数や救助作戦、死体袋や人々が悲しむ様子を集中的に報じたが、BTNは仏教社会がいかに生存者の安全な帰還を祈り、家族の救済計画を練り、癒しのプロセスに役立ったかに焦点を当てた。

「ジャーナリストには、(人類の抱える)巨大な(開発の)問題に対処するうえで、共同体や世界の宗教指導者らが重要な役割を果たしうるということを伝える重大な役割があります。ジャーナリストは、グローバル経済において弱く貧しい人々に利益を与える新しい倫理的価値への関心を呼び起こし、世界的な金融危機を避けるには自分たちのライフスタイルを皆が変えることが必要だと指摘すべきです。」と、パク教授は論じた。

マインドフルなジャーナリズムの実践は宗教的ではなく世俗的な実践であると論じるハンチャンラッシュ氏は、肯定的なつながりとしての個人への共感と尊重は、文化と信条の美しきモザイクとしてのASEAN共同体の創出において必要不可欠であると考えている。「ユーザーのマインドフルネスによって、マスコミという強力なツールは、非利己的で建設的な社会の構築における効果的な主体となることが可能です。」とハンチャンラッシュ氏は論じた。

INPS Japan

関連記事:

女性のエンパワメントの模範となった尼僧

|アジア防災閣僚会議|FBOが国連開発アジェンダへの協力を表明

|日中韓シンポジウム|困難な状況下でのNGOの役割を強調

|モロッコ|新移住政策が施行されるも欧州渡航の夢を諦めない移民たち

【フェズ、ウジダ、ナドール(モロッコ)IDN=ファビオラ・オルティス】

欧州に渡りたいサブサハラ地域のアフリカ住民たちがかねてより通路としてきたモロッコが、欧州連合(EU)に向けた移民の流れを制限し、依然として渡航を望む人々の希望を打ち砕く国家戦略を実行しつつある。

人々が故国を離れて移民となり、より良い暮らしを求めて危険なルートを辿り、命を危険にさらすのには、数多くの理由がある。

コートジボワール出身のアブドゥル・カリメさん(19歳)がモロッコに2013年に着いたときはまだ10代の青年だった。それ以来、フェズ市の主要駅に隣接する非公認居住地にある貧相なテントで暮らしてきた。

SDGs Goal No.10
SDGs Goal No.10

「貧しさから故国を離れました。お金はなかったし、支えてくれる家族もいません。一人ぼっちの私は、故郷の街を離れ、ヨーロッパに行って生活しようと思いたったのです。」とカリメさんはIDNの取材に対して語った。

読み書きができないカリメさんは、英国に行くことを夢見ている。モロッコはあくまで「通過点」だ。

モロッコでの生活は、カリメさんのような非正規移民にとっては厳しい。合法な仕事に就けないことは、移民がこの北アフリカの国に着くと直面する多くの困難のひとつだ。

「食べるものがありません。」とカリメさんは言う。「あらゆるところで仕事を探していますが、見つかったためしがありません。現金収入のためならどんな仕事だってするよ。」

カリメさんは、法的な在留資格を持たずにモロッコに住んでいる数千人のサブサハラ出身のアフリカ人のひとりだ。彼は、在留資格を申請したが、許可取得に必要な基準を満たしていなかった。

移民の通過地となり、2000年代初頭以降外国人住民の数が増えてきたモロッコは、EUへ渡る非正規移民の取り締まりを強化してきた。

国連の「すべての移住労働者とその家族の権利の保護委員会」がモロッコに関して2013年に出した報告書は、公法02-03(2003)改定の必要性を指摘している。同法は、公的には「モロッコ王国への外国人の入国および滞在、非正規出国、非正規入国」について規定するものである。

モロッコの「国家人権委員会」もまた、同国の移民政策の変更を求めている。欧州大学研究所の「移住政策センター」によれば、国家人権委員会が求める改革の中には、「非正規移民に対する警察の暴力やモロッコ国境への強制連行の停止、非モロッコ国民に対する差別の是正、司法や基本サービスの利用を認めること」が含まれているという。

移住に関するグローバルな政策がその結果として策定された。それは主に、難民や移住、人身売買、社会への統合に焦点を当てたものだった。

2014年に実行された大規模な「正規化措置」は、厳しい条件を伴うものだった。違法在留の状況にある人々は、2年以上にわたって適正な労働契約を結んでいる、或いは、モロッコに5年以上継続して居住しているといった、多くの条件を満たさねばならなかった。

カリメさんは、当局に提示できるような継続した仕事に就いておらず、彼の申請は却下された。

カリメさんとは違い、セネガル出身のカディジャ・トゥレさん(25歳)は申請が認められた幸運なひとりだが、正式な書類の発行を待っている状態だ。

彼女は夫と共に3年前にダカールを発ち、幸運にもフェズの工場で定職に就くことができた。その代り、トゥレさんは、安い宝石を街頭で売るために街中をあちこち歩き回っている。

Border Spain-Morocco, by Melilla/ Ongayo – Own work, GFDL

「海を渡ってヨーロッパに行くなんて…安全に渡航する方法があるなら別だけど、どうかしているわ。インシャラー(神の御心のままに)。それより、私はここ(モロッコ)で働くための法的な権利を手に入れたい…。できれば故郷のセネガルに留まっていたかったけど、あそこでは仕事がなかったの。」とカリメさんは嘆いた。

ナイジェリア出身で2人の子どもを持つ父親ノウサ・オムシゴさん(52歳)は、イスラム過激派組織「ボコハラム」による脅迫を逃れて17年前にモロッコに移ってきてから、厳しい生活を強いられている。

オムシゴさんは、モロッコ在留のほとんどの期間を違法滞在者として過ごし、2014年にようやく正規の在留資格を得るが、それで彼が抱える問題がすべて解決したわけではなかった。

オムシゴさんは、アルジェリアとの国境に近いウジダ市で、風が強く雲の垂れ込めた寒い日にIDNの取材に応じてくれた。彼は、スーパーマーケットの入口に立ち、道行く人々に小銭を乞うていた。

「私はモロッコの在留資格を持っており、今ではこの国の市民です。しかし、ここでの生活は厳しいです。私はこうしてお金を請い、そこから食べ物を買い、家賃を払っています。私の妻もナイジェリア出身で、一緒にここに住んでいます。彼女は一度ヨーロッパに渡ろうとしましたが、スペインで捕まり、強制送還になりました。」

「ここでの生活は厳しくもう疲れはてました。国に帰りたいです。」と言うオムシゴさんは、「もしお金があったらナイジェリアに家族を連れて帰りたい。」と語った。

2014年9月までに、モロッコには8万6000人の外国人がおり、サブサハラ出身のアフリカ人がこの多数を占めていた。非正規状態にあるこれらの人びとの推計はさまざまであるが、政府による正規化措置は、約2万7600件の申請のうち、非アラブのアフリカ諸国出身者からの2万1500件の申請を取り扱っている。

「いま持ち上がっている問題は、この『正規化』段階の次をどうするかということだ。」と語るのは、首都ラバトから約500キロのウジダを本拠とする「モロッコ人権機関」(OMDH)のプロジェクト・アシスタントであるラティファ・ベナメールさんだ。

「移民を社会に統合することは大きな挑戦です。新たな移民戦略は、職業訓練のような、移民コミュニティーの特定のニーズに対応したものになっていません。」

「この場所はアルジェリア国境に近いので、毎日、人が入って来ます。アルジェリア・モロッコ国境は閉鎖されているため、彼らはブローカーに金を払わなくてはなりません。こうしたほとんどの人がヨーロッパに渡ることを夢見ています。」とべナメールさんは語った。

1979年に設立されたモロッコで最も古い人権擁護団体である「モロッコ人権協会」(AMDH)の活動家サイード・カダミさんは、新しい政策には懐疑的だ。

カダミさんは、スペインの飛地領メリリャに程近いナドールで活動している。ここでは、しばしばスペイン領に入ろうとして数百人の移民がフェンスを越えようとしている姿が見られる。

Map of Morocco
Map of Morocco

「移民政策は失敗しています。ここナドールでは何も変わっていません。」とカダミさんはIDNの取材に対して語った。「警察や政府の移民に対する扱いは相も変わらずで、逮捕が続いています。移民は警察の手で苦しんでいるのです。モロッコ政府は安全な場所や住むところを保障せず、ただ国境のフェンスから移民を遠ざけようとしているだけなのです。」

モロッコが国際社会に売り込もうとしているイメージは、「快適な滞在地」であり、「移民が定住したい場所」、というものだが、モロッコに到着する移民の目標は、ここを越えていくことであり、いわゆる「ボサ」(Bosa)になることだ。

「ボサ」とは、あらゆる障害を乗り越えてついにEUへのフェンスを越えることができたサブサハラ出身のアフリカ人を指す、くだけた言い方だ。

「私が見るところ、人々はここに留まろうとはしていません。ここには彼らの居場所がないのです。」とカダミさんは語った。(原文へ

INPS Japan

関連記事:

|欧州|性産業に引き込まれる移民女性たち

進退窮まる移民たち

欧州のどこかへ何とかして逃れようとする人びと

ルワンダ国際戦犯法廷が21年に亘る審理を経て歴史的役割を終える

【INPSニューヨーク=編集部】

ルワンダで80万人を上回る被害者(大半がツチ族、それに一部穏健派フツ族トゥワ族も犠牲になった)を出したルワンダ虐殺に責任を有する者たちを追訴すべく国連が21年前に設置したルワンダ国際戦犯法廷が、人道に対する罪を断罪した45件にのぼる判決を経て全ての審理を終え、昨年末の12月31日に解散した。

ルワンダ国際戦犯法廷は、第二次世界大戦終結直後のニュルンベルク裁判並びに極東国際軍事裁判以来、一国の元首を断罪した初めての国際法廷となった。同法廷は虐殺事件後に暫定首相に就任したジャン・カンバンダ氏を虐殺に関与したとして1998年に終身刑に処した。

Jean Kambanda/ UNICTR

1994年11月8日に設置された同国際法廷はまた、集団殺戮(ジェノサイド)の罪を犯した者に有罪の判決を下した史上初の国際法廷となった。同国際法廷を設立した国連安保理は、同法廷を解散するにあたって、「正義への強いコミットメントと、今後も免責と闘っていく」決意を再確認するプレス声明を発表した。

同国際法廷はまた、レイプを刑事国際法において定義し、大虐殺を行う手段と認めた初めての国際法廷でもあった。さらに画期的な点としては、集団殺戮に参加する民衆を煽る放送を行ったメディア関係者の罪も本国際法廷で初めて断罪された。

同国際法廷では、タンザニアのアルーシャ市における21年に亘る審理を通じて、約3カ月に亘ってフツ族強硬派らによって引き起こされたルワンダ虐殺に参加したとして終身刑を最高刑に61人に対して有罪判決が言い渡された。一方、14人が審理の結果無罪を言い渡され、10人が本国の裁判所に送致された。

起訴された中には、軍や政府の高官、政治家、実業家、聖職者、民兵組織の指導者、メディア責任者等が含まれている。同国際法廷は、「100日に及んだ流血の日々の中で...想像を絶する暴力が国(=ルワンダ)を覆い尽くした..殺害による死亡率はナチス・ドイツによるホロコースト政策ピーク時の実に4倍の規模である。」と指摘している。

ルワンダ国際戦犯法廷は、旧ユーゴスラビア国際戦犯法廷とともに、集団殺戮、人道に対する罪、戦争犯罪、個人と上官責任に関する法整備の充実を図るなど、信頼のおける国際司法制度を確立するうえで、先駆的な役割を果たした。

国連安保理のプレス声明は、「ルワンダ国際戦犯法廷は、国内の和解プロセス、平和と安全の回復、加害者に対する免責との闘い、さらに、とりわけ大量殺戮に関する国際刑事司法の発展に多大の貢献を果たした。」と称賛した。

同プレス声明はまた、2010年に決定した同法廷の国際残余メカニズムは、同法廷の終了によって指名手配犯に免責の可能性が生じることがないよう確実にする上で不可欠である点を強調するとともに、全ての国家に対し、9名の指名手配犯の逮捕および起訴を実現するよう同国際残余メカニズムおよびルワンダ政府と協力していくことを求めた。

「ルワンダ国際戦犯法廷は、21年間の間に、5800日に及ぶ審理を実施し、93人を起訴したほか、55の一審判決、45の控訴判決を下しました。また審理に際しては、想像を絶する極めて衝撃的な経験について勇気を振り絞って語った3000人を超える人々による力強い証言に耳を傾けました。」とヴァウン・イェンセン裁判長は、国連安保理に対して語った。(原文へ

INPS Japan

関連記事:

|ルワンダ虐殺|レイプ被害者のトラウマ、依然強く

ジェノサイドからアフリカのファッションステージへ―ルワンダ女性がいかにして生活とファッション産業を成り立たせているか

|国連創立70周年|グラス半分の水(パリサ・コホナ前国連スリランカ政府代表部大使)

2016年の最重要課題となる核兵器禁止条約

【ベルリン/ニューヨークIDN=ジャムシェッド・バルーア】

核兵器なき世界の達成にむけた国連総会のオープン参加国作業グループは、持続可能な開発目標とともに、2015年が翌年に積み残した重要な課題である。

国連総会はまた他にも多くの重要な決議を採択している。139か国が「核兵器の禁止・廃絶に向けた法的欠落を埋める」ことを誓った。144か国が「いかなる状況の下でも」核兵器が二度と使用されないことが人類の利益にかなうと宣言した。132か国が核兵器は「本来的に道徳に反するもの」だと述べた。

A view of the General Assembly Hall as Deputy Secretary-General Jan Eliasson (shown on screens) addresses the opening of the 2015 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT). The Review Conference is taking place at UN headquarters from 27 April to 22 May 2015. Credit: UN Photo/Loey Felipe
A view of the General Assembly Hall as Deputy Secretary-General Jan Eliasson (shown on screens) addresses the opening of the 2015 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT). The Review Conference is taking place at UN headquarters from 27 April to 22 May 2015. Credit: UN Photo/Loey Felipe

国連総会は12月7日、核兵器なき世界を達成するための「法的措置や法的条項、規範」を起草する作業グループを設置するための投票を行った。138か国の支持を受けたこの新たな国連機関は、核兵器を即時に禁止する条約の諸要素を考案する取り組みに注力すると広く期待されている。

作業グループの創設は、2015年5月22日に終了した核不拡散条約(NPT)運用検討会議最終文書草案で勧告されていた。「軍備管理協会」が指摘するように、この提案は、核軍縮に進展がみられないことに多くの国が不満を抱いていたことから出てきたものだ。

NPTの文書によると、作業グループの目的は、「法的条項あるいはその他の取り決め」を含めた、NPT「第6条の完全履行のための効果的措置を特定」し、そのことをコンセンサスを基礎に行うことにあった。第6条の下では、条約締約国は「核軍備競争の早期の停止及び核軍備の縮小に関する効果的な措置につき、誠実に交渉を行う」ことになっている。

国連によれば、作業グループは「多国間核軍縮交渉の前進に寄与する可能性のあるその他の措置に関する勧告に実質的に対処する」ことになるという。そうした措置には次のようなものが含まれるが、それに限られるわけではない。

(a)既存の核兵器に伴うリスクに関連した透明化措置。

(b)偶発的、計算違い、未承認、あるいは意図的な核兵器爆発のリスク削減と排除のための措置。

(c)あらゆる核爆発によって引き起こされる様々な人道的帰結の複雑さとその間の相互関係についての意識を高め、理解を深めるための追加的な措置。

日程はまだ固まっていない。しかし、作業グループは2016年にジュネーブで最大15日間の会合を持つことになる。現実的な進展をもたらすために、作業グループは厳密なコンセンサス・ルールに縛られない。その実質的な作業及び合意された勧告について、次の10月に国連総会に報告書を提出することになっている。

国際組織や、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)などの市民団体も参加の招請を受けている。ICANのベアトリス・フィン事務局長は、「核兵器を禁止する条約の要素を策定する真摯な現実的作業がいよいよ始まります。大多数の国はこうした行動を支持しているのです。」と語った。

Beatrice Fihn
Beatrice Fihn

メキシコが主導した作業グループ設置のための決議はその前文で、「ほぼ20年に亘って国連の枠組み内で多国間核軍縮交渉の具体的な成果は見られない。」と述べている。また、核武装国間の緊張の高まりという「現在の国際情勢」は、核兵器の廃絶を「より緊急の」課題にしている、としている。

核武装国でもある、中国・ロシア・英国・米国・フランスの国連安保理5常任理事国は、作業グループの創設に反対した。

5常任理事国は11月に発表した共同声明でその見解について説明している。ICANによれば、声明は、「禁止のような文書」は「NPT体制を損なう」と述べているが、どうしてそうなるのかについては説明していない、という。

5常任理事国は、「厳密なコンセンサス・ルールに縛られた「適切な任務を持った」作業グループなら支持した可能性があった。」と指摘したうえで、「しかし、そうした取り決めでは、議長の任命や議題の採択など、提案されたすべての行動や決定を5常任理事国が集団あるいは個別で阻止することを許してしまう。非核国により大きなフリーハンドを与えたメキシコの手法は「分断を招くもの」だと5常任理事国は批判している。

決議に関する投票に棄権した国の中には、国内に米国の核兵器の配備を認めているドイツがある。ドイツは、国連が作業グループにすべての加盟国の参加を求めているにも関わらず、部会は「包摂的」でないとして棄権した。特定の状況下での核使用は認められると考えている日本とオーストラリアもまた、あいまいな説明によって棄権した。

核兵器を保有しているとされるインドとパキスタンは、作業グループはジュネーブ軍縮会議(CD)の存在をないがしろにするものだと論じた。CDは、1978年の第1回国連軍縮特別総会の結果として、79年にジュネーブに創設された国際社会の唯一の多国間軍縮交渉フォーラムである。

ICAN
ICAN

20年近くにわたって停滞しているCDは、世界の3分の2の国々を排除している(そのほとんどは途上国)。CDは2016年の第1会期(1年に3会期開催される)は1月25日から4月1日の間に開催される予定である。

ICANによれば、作業グループ設置に関する国連総会決議の投票は、2013年から14年にかけて3回に亘って開催された「核兵器の人道的影響に関する会議」の成功の結果であるという。

「これらの会議の結果、諸政府や市民社会の間に、核兵器を禁止する条約の交渉を今こそ始めるべきだという期待が高まってきました。今年5月のNPT運用検討会議の失敗は、実際に行動を起こす必要性をさらに明確に示しました。」とICANは述べている。

「人道的見地から明白に容認できない兵器の禁止を無期限に遅らせることはできません。」「こうした行動に反対しつづける一部の国はあるでしょう。しかし、だからと言って私たちが歩みを止めることはないのです。私たちは既に、その他の無差別で非人道的な兵器(=生物・化学兵器等)を違法化してきました。今こそ、最悪の兵器を違法化すべき時です。」(原文へ

翻訳=INPS Japan浅霧勝浩

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

関連記事:

|国連|核軍縮のための新たなオープン参加国作業グループの設置を計画

「核兵器なき世界」の理想は失われない

世界の大国、核決議に「恥ずべき」棄権

|視点|慢性的貧困の実践的な解決手段:DEVNETのアプローチ(高橋一生、DEVNETJAPAN理事、元国際基督教大学教授)

【東京IDN=高橋一生】

貧困緩和は、1970年代初頭以来、開発協力の議題にときどき挙げられてきました(1973年のロバート・マクナマラの宣言では、世界銀行の使命は2000年までに貧困を撲滅することでした。1976年には人間の基本的ニーズの充足のための方法Basic Needs Approachが開発援助委員会DACにて採択されました。)。開発委員会の大きな課題は、この目的を実現するための効果的な方法を見つけることでした。

しばらくの間、この問題はイデオロギーの問題、成長と分配の間の選択の問題として考えられていました。イデオロギーの観点からのこの政策の最後の試みは、1996年のDACの政策宣言でした。「21世紀を形作る:開発協力の貢献。」貧困緩和に着目し、この政策の意図は、先進国の支配的な政治環境に冷戦直後対応することでした。

1990年代半ば、15の欧州連合(EU)メンバーのうち10カ国以上では、第三の道体制という名の下で社会民主主義政党が政権を握っていました。アメリカは左翼の民主党が政権を執り、ビル・クリントン大統領は欧州の第三の道の年次総会に出席していました。

日本は(当時最大の政府開発援助供与国)で、社会党の村山首相が率いる連立政権でした。ODAコミュニティーは、 自分たちの政策をできるだけ政治のトレンドに関連させ、各国でODAの予算を確保しようとしました。しかし、10年も経たないうちに、政治環境は事実上保守側に代わり、すべての主要な先進国において、DACは無関係な政策となりました。

DACの宣言は国連に託されました。国連は2000年のサミットで採択されるMillennium Development Goals(ミレニアム開発目標)に関する宣言の草案を準備しなければなりませんでした。このように、ミレニアム開発目標(MDGs)は、最初から他の対象向けに作られたDAC宣言のカーボンコピーだったのです。

しかし、2001年の911アメリカ同時多発テロ事件の発生後、先進国の保守政権は、開発協力への政治的反応を突然変化させました。彼らは貧困が国際的テロの根本原因だと判断したのです。そのため、開発協力は貧困の緩和に焦点を当てることが重要でした。2002年、MDGsは保守的な政府にすらテロと戦うための重要なツールであると認識されました。この瞬間から、貧困緩和は、国際レベルで、イデオロギーの問題ではなく、広範囲に土台となる政策目標となりました。

様々な本格的な試みが国際的開発コミュニティーの中で追及され、貧困問題を緩和し、可能であれば、実際的に解決しようとしています。DEVNET Japanは、この問題へのアプローチを歴史的状況を念頭に苦心して練り上げて参りました。

DEVNET Japanのアプローチは、貧しいけれど潜在的に才能のある発展途上国の若者を先進国の産業的要求と組み合わせ、教育的・財政的付加価値を彼らに提供し、彼らが自国の発展のための原動力となるという持続可能な方法です。まずは最初の具体的な活動としては、ラオスに焦点を当てることとなるでしょう。ラオス側は、ラオス国内で教育する若者の人選を行い、教育を受けさせることで若者たちを日本の状況に適応させることができるでしょう。DEVNET Japanは、日本の大部分の地域において地域の企業や農家と協業する認可を得ており、これらの若者を日本でさらに教育することで、地域の企業や農家に適合するように訓練を十分に受けさせ、彼らひとりひとりに研修のための適切な場所を見つけます。彼らは働き、実践的スキルを身に着けるための訓練を受けます。同時に、DEVNET Japanにより定期的に広範囲な分野に関する教育をさらに受けます。彼らは訓練され、教育され、そのスキーム(枠組みを伴った計画)により、彼らはスキルや教育だけでなく、財政的基盤も確実に取得します。これらはラオスにおいて利用され、手はずが整い、彼らは、適切な企業や農家で雇われるか、または新しく起業します。この体制のコストは利害関係者全員でシェアしますので、経営は自己持続型となります。DEVNET Japanは多くの構成要素をこのスキームのために組み立てて来ただけでなく、やがてそれらが運用されることに自信を持っています。評価の仕組みもこの体制において組み込まれるため、絶えず改善して行くことでしょう。

このシステムは、他の国にも広がり、DEVNETのアプローチは「貧困緩和へのDEVNET のアプローチ」として認識され、これはイデオロギー時代後のもっとも実際的な試みとなるでしょう。市民社会と企業との組み合わせにより、(国内・国外)の公共部門が補助的役割としてもっとも困難な地球問題に対処し、21世紀型の国際開発協力に道を開くことでしょう。(原文へ

INPS Japan

関連記事:

批判にさらされる国連のポスト2015年開発アジェンダ

|インタビュー|貧富の差を埋めることに失敗すれば、21世紀はひどい暴力に終わるだろう(フィリップ・ドゥスト=ブラジ元フランス外相、国連事務次官、UNITAID議長・創設者)2015年以後の開発問題―飢餓に苦しむ者の声に耳は傾けられるだろうか?

軍事的緊張を高める北朝鮮の核実験

【国連IDN=ロドニー・レイノルズ】

世界の二大核兵器国である米国とロシアの間の軍事的緊張が強まり続ける中、国連は「核兵器なき世界」という長期的な目標のひとつに強くコミットしてきた。

しかし、朝鮮民主主義人民共和国(北朝鮮)が1月6日に初の水爆実験を行ったと発表し、核の難題は以前にもまして厳しくなってきている。

193か国から成る国連総会は、軍備管理・軍縮関連の57本の決議案を採択して、昨12月に2015年の会期を閉じた。そのうち、23本が核兵器関連であった。

核爆発実験を行わないようすべての加盟国に求めたある決議には181か国が賛成したが、北朝鮮だけが反対していた。

潘基文国連事務総長は1月6日の声明で、北朝鮮が6日に発表した地下核実験に対する深い遺憾の意を示した。

「この実験は、そうした行為をやめるよう国際社会が一致して求めていたにも関わらず、数多くの安保理決議にふたたび違反するものです。また、核実験を否定する国際的規範にも強く違反するものです。」

潘事務総長は、「(北朝鮮の)この行為は地域の安全保障を著しく不安定化させるものであり、国際的な核不拡散の取組みを損なうものです。私はこの実験を明確に非難します。そして、北朝鮮に対して、さらなる核活動を停止し、検証可能な非核化に向けてその義務を果たすよう要求します。」と語った。

「私たちは、包括的核実験禁止条約機関準備委員会CTBTO)などの関連国際機関や関連主体との緊密な連携の下、状況を監視し査定しています。」と潘事務総長は付け加えた。

これらの決議に政治的影響力はあったのかというIDNからの質問に対して、NGO「リーチング・クリティカル・ウィル」のレイ・アチソン代表は、「多くの国連総会決議は繰り返しが多く、具体的な進展を求めるというよりも共通の立場の再確認を指向することが多い。」と語った。

アチソン氏によれば、国連総会は一方で、新機軸となる重要な文書をいくつか採択したという。

アチソン氏が指摘したのは、すべての国に対して開かれているがどの国も拒否権を持たない核軍縮に関する公開作業部会に138か国が賛成した決議だ。

「今年この作業部会に参加する国々は、核兵器を禁止する新たな法的文書の要素を検討するためにこの場を活用すべきです。この決議への支持は、この点に関する明確な進展を各国が求めている明白な表れです。」と、アチソン氏は語った。

アチソン氏はまた、核兵器の人道的影響、核兵器の禁止と廃絶に向けた法的ギャップを埋めることを約束した「人道の誓約(=オーストリアの誓約を改称)」、核兵器なき世界への倫理的要請の各決議もまた、単純過半数ではなく、国連加盟国の3分の2以上の支持を得て可決した点を指摘した。

軍縮・軍備管理に関連した国際プロセスを監視・分析しているアチソン氏は、大多数の国々が、核武装国及びその核同盟国に対してついに立ち上がり、核軍縮に向けた協調的な行動に打って出たように見えると語った。

しかし、反核活動家らが高まる核の脅威について警告する中、北朝鮮は「米国による核の脅威と威嚇に直面した我々の生存権を守り、朝鮮半島の安全を確保する自衛策として」水素爆弾を爆発させたと正当化した。

核兵器廃絶国際キャンペーン」(ICAN)のベアトリス・フィン事務局長は北朝鮮の核実験に関して、「核保有国間の緊張の高まりが、新たな軍拡競争への懸念を強めています。」と語った。

「しかし、冷戦期とは異なり今日では、(核軍拡競争に)関与する主体の数が増えていますし、政治的に不安定な地域も絡んできますので、核兵器が使用されたり偶発的な事故が起こるリスクは高まっています。」とフィン事務局長は語った。

ICANは6日に発した声明の中で、「核兵器は戦争の無責任な手段であり、その使用および保有は、国際社会全体が非難すべき無謀な行為である。」と述べた。

非難に続いて国際社会が行わなければならないのは、化学生物兵器の場合と同く、核兵器を国際的に禁止することである。

今年2月には、加盟国がジュネーブに集まって、核兵器に関するあらたな法の策定についての協議を行う予定だ。

「すべての責任ある国家は、核兵器に関するあらたな法を協議し、この大量破壊兵器を保有しそれに依存することに明確に反対の立場を採り、核兵器を明白に禁止していくべきです。」とフィン事務局長は語った。

アチソン氏は、先月採択された国連決議に言及して、「132か国が、核兵器なき世界に向けた倫理的要請に関する決議への賛成にあたって、核兵器は『集合的安全保障を損ない、核の惨禍のリスクを高め、国際的緊張を悪化させ、紛争をより危険なものにする』という見方で一致しました。」と指摘した。

A view of the General Assembly Hall as Deputy Secretary-General Jan Eliasson (shown on screens) addresses the opening of the 2015 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT). The Review Conference is taking place at UN headquarters from 27 April to 22 May 2015. Credit: UN Photo/Loey Felipe
A view of the General Assembly Hall as Deputy Secretary-General Jan Eliasson (shown on screens) addresses the opening of the 2015 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT). The Review Conference is taking place at UN headquarters from 27 April to 22 May 2015. Credit: UN Photo/Loey Felipe

核兵器の禁止・廃絶に向けた人道の誓約を反映した別の決議での投票では、139か国が全ての関連する利害関係者に対して「核兵器のもたらす容認しがたい人道的影響やそれに伴うリスクに鑑みて、核兵器を絶対悪とみなし、禁止し、廃絶する」ことを求めている。

「これは、国々が国連総会で採るべき重要な立場です。」とアチソン氏は付け加えた。(原文へ

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

関連記事:

世界の大国、核決議に「恥ずべき」棄権

|国連|核軍縮のための新たなオープン参加国作業グループの設置を計画

「変革の世代」が核兵器廃絶の実行を誓う

|UAE|寛容の精神を擁護する世界有数の開発援助国

【ムンバイIDN=バーナード・シェル】

経済協力開発機構(OECD)によると、国際社会が「持続可能な開発のための2030アジェンダ」への取り組みを開始するなか、29か国で構成される開発援助委員会(DAC)(本部:パリ)に加盟していない国々による資金が、開発協力への資金調達をするうえで、ますます重要な役割を果たしている、という。

近年、困窮している国々に対して譲許的な融資や寄付を行ってきた主要なDAC未加盟国には、中国、ブラジル、インド、インドネシア、南アフリカ共和国があるが、とりわけ中東のアラブ首長国連邦(UAE)は、政府開発援助(ODA)拠出額が、国民総所得(GNI)比(国の経済規模に対してどのくらいの割合をODAとして供与しているかを示す数値)で世界第1位にランク付けされている。

OECDが発表した加盟34か国の最新数値によると、UAEによるODA拠出額は約49億ドル。これは国民総所得比1.17%に当たり、主に欧米先進国から成るDAC加盟国の平均値(GNI比0.3%)と比較しても相当高いレベルである。

援助総額でODA実績を見た場合、最大の拠出国は米国、英国、ドイツ、フランス、日本であるが、国連が2013年に目標指数として打ち出したODAの対GNI比0.7%を既に達成しているDAC加盟国はデンマーク、ルクセンブルク、ノルウェー、スウェーデン、英国のみである。

UAEの地元メディアによると、ドバイ首長のムハンマド・ビン・ラーシド・アール・マクトゥーム副大統領兼首相は、「世界で最も寛大な援助国の地位を更新できたことは、困難に直面している人々に無条件の支援を行うというUAE建国以来の原則を反映したものです。」と語った。

2015年10月、ムハンマド首長は、年間の拠出金額が2億7220万ドル相当にのぼる、一連の慈善活動・人間開発イニシアチブを確固たるものにするため、新たにグローバル・イニシアチブを立ち上げた。

ムハンマド首長は、自身のソーシャルネットワークのサイトに、「人道支援活動は変化してきており、今日、大規模なグローバル・イニシアチブに求められている課題は、社会的変化を成し遂げるような貢献をすることです。私たちはこの地域(中東)に背を向けることなく、支援の手を差し伸べ、若者の未来に希望をもたらします。」とツイートした。

このイニシアチブは、支援対象の重点をアラブ世界に置いているものの、2025年までに少なくとも116カ国の1億3000万人以上の人々に人道支援の手を差し伸べたいとしている。また同基金は、1億3600万ドルを投じて水不足対策研究所の開設を計画しているほか、中東地域に5億4450億ドルを投じて、医療研究センターや病院の開設計画を進めている。

ムハンマド首長はさらに、「人道支援と開発支援については、技術開発の進歩に対応しその恩恵を活かすとともに、『真の人道主義キャピタルになる」というUAEのビジョンを実現するために組織的に取り組んでいくべきです。」と強調した。

「施しの文化は私たちの社会に深く根ざしたものであり、UAE建国以来歴代指導者が常に育んできた価値観です。この度、我が国のODA実績が国民総所得比で世界第1位になったことについて、私たちは大変恐縮するとともに、嬉しく思っています。」とムハンマド首長は語った。

このイニシアチブは、4つの主要分野(①貧困と病気との闘い、②知識と文化の普及、③コミュニティーのエンパワーメント、④革新の後押し)に焦点をあてた28団体の活動を整理統合する予定である。

イニシアチブは、2025年までに、2000万人の子供たちに対する教育支援と、3000万の人々に対する失明予防・眼病治療を提供する計画である。

ムハンマド首長は、同イニシアチブの設立について、「今日アラブ地域は、深刻な難題に直面しています。だからこそ、私たちはこの地域のために、若者の未来に希望をもたらすような支援を行わねばなりません。また今日の世界を見渡せば、テロリズム、戦争、大量の移民など、国際社会はあらゆるレベルで大きな課題に直面しています。人間開発こそが、こうした諸問題に対する唯一の解決策ですが、そのためには民衆に教育の機会を与え、各々が自身の未来を築けるよう支援の手を差し伸べなければなりません。」と語った。

このイニシアチブでは、引き続き救済事業を継続しながら、200万人以上の人々が今後10年以内に自立して生きていけるよう支援活動を展開していくことになっている。また、今後数年間に亘って若い起業家を支援し、50万人以上の雇用創出を目指している。

なお、知識と文化を普及させる分野に関しては、従来から学校で育んできた生徒たちによる読書文化を引き続き支援するとともに、1000万冊以上の書籍を印刷・配布するほか、様々な言語で記された今日最も重要な25000タイトルの書籍をアラビア語に翻訳する予定である。さらに今後10年の間に5億冊以上の本がアラブ世界で読まれるよう環境を整えていくプログラムを支援する予定である。この分野における真の変革を創出ために、イニシアチブでは、教育、知識、科学分野に総額4億900万ドルを投資する予定である。

このイニシアチブはまた、全般的な開発戦略の枠内で、寛容で異なる文化・文明に開かれた精神で、社会に新しい文化を確立する取組みを展開していく予定である。

MBRGI
MBRGI

「この目標を達成するために、イニシアチブではこれまでに、透明性が確保された活気あるメディア対話を促進するとともに、コミュニティーが過激主義や、民族、宗教、宗派上の差別から離れて仲良く暮らすことができるよう、1億6300万ドルを超える予算を投じてきました。」イニシアチブは、今後10年間で、100万人以上を対象に、コミュニティエンパワーメントに関する様々な受賞イベントや会議を開催する予定である。

中東地域を開発する全体的なビジョンの一部として、同イニシアチブは、域内の5000人の革新者や研究者を育成してイノベーションと科学者を支援するとともに、中東地域の革新者向けの世界基準の環境を整えるために15億ドルを超える資金を投資する予定である。、

イニシアチブはまた、50,000人の若い起業家を支援して企業家精神を育むとともに、新会社の設立を支援して、向こう数年間で中東地域に500,000件の雇用機会を創出する取り組みを重点的に推進していく予定である。

「これらの取り組みはすべて、失業問題の根絶に向けてほんの少しでも貢献し、アラブの若者達が誤った方向に導かれテロ行為に誘い込まれることを防止するとともに、尊厳をもって生活できるよう支援するという、同イニシアチブの包括的な開発ビジョンの一部です。」と、グローバル・イニシアチブのウェブサイトに記されている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

関連記事:

|シリア難民|子ども達が失っているのは祖国だけではない

|米国|宗教的進歩主義が「未来への道」

国連の新たな開発目標には、成功のための資金と政治的意思が必要

|コラム|パリと、民主主義と気候の物語(ロベルト・サビオIPS創立者)

【ローマIDN=ロベルト・サビオ

わずか2日という期間に、民主主義と気候に関してパリから世界へ2つの教訓がもたらされた。メディアは2つを別々の問題として扱っているが、実際には、もはや無視しえない同根の問題によってつながっているのである。それは、「民主主義は衰退しつつある」という問題だ。

すべてのメディアが、フランス地方圏議会選挙(2回投票制)における極右政党「国民戦線(FN)」の敗北について伝えている。「戦闘に勝つことが戦争に勝つことではない」という昔からの見地を述べた者はほとんどいないが、国民戦線がフランスにおいて主流の政党になりつつあることに疑いの余地はない。

この選挙では、旧来からの政治勢力、すなわちニコラ・サルコジ元大統領が率いる共和党を中心とする中道右派連合と現大統領のフランソワ・オランド氏が率いる社会党が再び手を組み、(第一回投票で躍進した)マリーヌ・ル・ペン氏率いる国民戦線の勝利を阻止した。

しかし、(米国と同様に)欧州の右翼勢力が、ノスタルジアと外国人嫌い以上の存在になりつつあることを考えなくてはならない。欧州各国において右翼政党が議席数を伸ばしている背景には、政府に対して不満を募らせている人々(その多くが労働者階級と社会の貧困層が占める)が増加してきている現実がある。彼らはかつてなら左翼政党に票を投じただろうが、福祉体制が衰退し、自身や子供世代における失業率が増大、さらに、市場を優先したがゆえの国家の退潮、拡大する社会の不正義、移民問題の深刻化、国民アイデンティティの喪失、不愉快なまでの汚職に直面して、苛立ちを強めている。

これが「経済的ナショナリズム」とでも呼ぶべき新しいカテゴリーを生み出している。これは、欧州連合であれ、移民であれ、北大西洋条約機構(NATO)であれ、多国籍企業であれ、あらゆる形態の外国からの侵入に対して闘う姿勢を示すものである。旧来の政党は、権力にしがみついて市民が必要とするものを提供せず、責任を負わないエリートによる自己再生産的なメカニズムとみなされている。それは、外国人排斥、ナショナリズム、「古きよき時代」へのノスタルジア、外国勢力や組織にいかなる関与の余地も与えず国家を強化するような経済を求める声、等が混ざり合ったもので、つまり、有権者の間で高まっている様々な不満の受け皿となっているのである。

旧来の諸政党には、こうした有権者の感情を大いに助長してきた責任がある。こうした政党は、政策理念やビジョンよりも、個人の個性を益々重視するようになってきた。旧来型の政党帰属構造は失われ、政策を訴えるよりも、むしろイメージ戦略に近いキャンペーンによる世論掌握のための運動という様相をますます呈してきた。

“Matteo Renzi November 2014 (cropped)” by Partidul Social Democrat from Romania – Victor Ponta si Matteo Renzi la sediul PSD – 13.11 (6). Licensed under CC 表示 2.0 via ウィキメディア・コモンズ

この原稿を書いている今、イタリアのマッテオ・レンツィ首相が、政治的エリートの多くが考えていることを自身の支持者に語っているのが目に入った。レンツィ氏によれば、もはや「左」も「右」もなく、彼の政党(民主党)は、自身が2013年12月に党首になった時の中道左派政党を脱却して「国民政党」に生まれ変わる、というのである。

この「左派」へのアイデンティティの喪失は、右派政治家の成功につながってきた。まずはハンガリー(オルバーン・ヴィクトル政権)で、次にはポーランド(ベアタ・マリア・シドゥウォ政権)で、指導者は「国民」のために行動すると訴え、もはや「左翼」など存在しないと主張しているのである。

次の大統領選が2017年にフランスで行われる際、国民戦線のマリーヌ・ル・ペン党首が再び排除されることになるのかどうかはわからない。2つの旧来型の政党が2回投票制の仕組みを利用した選挙協力で国民戦線候補の勝利を阻止するトリックは、これまでのところ機能しているが、「国民戦線こそが現行選挙制度による真の犠牲者」という印象を国民の中で印象付ける結果を招いてしまった。

他方でオランド大統領は、イスラム国(ISIS)に対して自身が始めたきわめて高くつく戦争という選択とともに、選挙戦に臨んだ。(戦争遂行のため)国内問題に対処するための財源はさらに限られることとなるため、失望した市民が社会党政権に見切りをつけて国民戦線支持に向かうことになるだろう(そして、社会的に排除された若い第二・第三世代のアラブ系市民がISISの元に走るということも付け加えなくてはならない)。

2008年の金融危機以来、すべての欧州諸国で右翼勢力が伸びてきたことを無視するわけにはいかない。そして、左派政権が時流に乗ろうとして右派的な政策を採用してきたことが、かえって従来の支持者を右派支持に走らせる傾向を強める結果を招いてしまった。

もし今日、欧州連合創設のための選挙があったとしたら、その基礎にあった大きなコンセンサスは大部分失われているだろう。そして今日、世界人権宣言を採択することは可能だろうか?

最新の「世界価値観調査」では、民主主義概念が脆弱なものになりつつあると報告している。ますます多くの市民が、もし自分にとっての死活的なニーズを満たすためにより効率的だと考えるならば、非民主的な体制であっても受け入れることだろう。例えば米国では1956年、「軍による統治」という考え方を是認する人は15人に1人に過ぎなかった。今日、この割合は6人に1人である。1980年代以降生まれの世代では、民主主義の下で生きることに最大の価値を与える人は3割しかいない。米国民の3分の1が、自分たちは民主国家に暮らしているとはみなしていない。

米国の次期米大統領選挙戦には少なくとも40億ドルのコストがかかると推定されている。これまでに消費された推定4.68億ドルのうちその半額を、400弱の家族がほぼ支出しているのである。石油王の(チャールズデイビッドコーク兄弟だけでも、10億ドル近くを寄付する予定だと発表している。これでは、自分たちの投ずる票には同等の重みがないと一般市民が感じるのにも無理はない。

国連気候変動サミット

12月12日までパリで開かれた国連気候変動サミット(COP21)についてここで考えてみよう。今回のサミットで合意された「パリ協定」の最も重大な限界は、これが条約ではなく法的拘束力がないという点にある。これは、共和党が多数を占める米議会は気候に関する条約をたちどころに否決するだろうという見通しによっている。共和党の公式の立場は、気候変動など起こっておらず、そのような主張を為す者は、米国のエネルギー部門に対する国際的陰謀を図っている、というものだ。

バラク・オバマ大統領の気候変動への取組みを率先して非難してきた米上院のミッチ・マコーネル共和党院内総務は、「彼(=オバマ大統領)の国際的なパートナーたちがシャンペンの栓を抜く前に頭に入れておいてもらいたいことがある。これは、国内のエネルギー計画を基にした達成不可能な約束事ということだ。計画は違法の疑いが濃く、既に全米で半数の州がその履行停止を求めて裁判に訴え、議会がすでに拒否することを認める法案を可決したものだ。」と語った。

"Sen Mitch McConnell official" by United States Senate - Licensed under Public Domain via Commons
“Sen Mitch McConnell official” by United States Senate – Licensed under Public Domain via Commons

米国民の66%が法的拘束力のある気候変動枠組み条約を支持していることに共和党の上院議員らが気づいていないとみなすことは明らかに不可能だが、彼らの選挙戦への最大の寄付が(エネルギー業界の)コーク兄弟やその仲間によってなされているという事実は、政治家が、それが自身の利益になるとみなせば、自身を現実からいかに切り離すことができるかを如実に示す事例である。そして、(定数100議席の過半数を占める)54人の共和党米上院議員が75億人の人類が望むいかなることでも阻止するという事態は、はたして許されるのだろうか?

パリ協定が意味するものは、各国が自ら決定する目標には何の強制力もないということである。進捗状況に対する最初の評価は2018年になされることになるが、その時国際社会の決定は再び、誰が米国大統領であるかに左右されることになるだろう。共和党の大統領なら米国の立場は一変し、一部の国もまたこの方針転換を歓迎することになるだろう。

実際問題として、私たちが作り出してきたこの混乱状況を反転させるには、恐らく遅すぎるだろう。20年前にベルリンで開かれた最初の国連気候変動会議が気候変動の問題にもっと真剣に取り組んでいれば、何か手を打てる時間はあったのだ。しかし、地球の気温はすでに、産業革命時よりも1度高いのである。各国の行為によって、気温は少なくとも3.7度は上昇するだろう。期待される目標は「上昇を2度以下に抑える」というものであり、この目標はすべての当事者を交渉テーブルにつかせるための方便に過ぎない「政治的な一時しのぎ」だと一般には見られている。

実際のところ、わずか1.5度の上昇でも重大な問題を引き起こすことが明らかになっている。調査団体「気候セントラル」は最近、2度の上昇で2億8000万人が水面下に沈むが、1.5度の上昇では1億3700万人が水没することになるとの予測を発表した。しかし、「上昇2度まで」の合意以前に既にそのうち「1度」を使い切ってしまった私たちは、このスロー・スタートのなかでいかにして上昇を1.5度までに食い止めることができるのだろうか?

Pope Francisco/ Wikimedia Commons
Pope Francisco/ Wikimedia Commons

信じられないことに、気候変動は基本的に技術的な問題だと見られてきた。これは、ある政治的含意を伴うことになる。実際のところ、気候変動の真の問題は、法王フランシスコ回勅が述べているように、正義の問いなのだ。

先進工業国はこの200年間、化石燃料を燃やし続けることによって富を生み出してきた。世界の人口のわずか1割しか占めない国々が、現在大気圏内にある温室効果ガスの6割を排出している。従って、これらの国々は工業化を現在遂げつつある国々に対する「環境負債」を抱えているのである。

国際エネルギー機構は、気候を制御する(上昇を2度に収める)には2020年までに毎年1兆ドルが必要だと試算している。しかし、パリ協定は2020年までに、必要額の10分の1であるわずか1000億ドルを拠出すると約束したに過ぎない。これを増額する公約は一切なく、額は2025年になってようやく見直されるという有り様だ。

もちろん1000億ドルというのは相当な額だが、社会的正義よりも通貨の清廉性の擁護役である国際通貨基金(IMF)は最近、2011年から15年にかけての世界のエネルギー部門への課税後の補助金額は年間30億ドル上昇し、今年は、世界の国内総生産合計の約6.5%にあたる5.3兆ドルもの高額に達するとの報告書を発表した。IMFによれば、これは、新興・低所得国による公共保健などの中核的な社会的・経済的ニーズに対する支出を遥かに上回っている。先進国は、銀行救済のために既に14兆ドルを費やしている。これはまた、先進国が2008年(の金融危機)以降に保健・教育のために投じた費用を上回っている。

COP21はまた、いくつかの関連する問題を無視している。それは、気候変動の犠牲となる貧しい国の人々の人権や救済資金の問題である(国連は、現在のところは国際法に存在しないカテゴリーである「気候難民」が2050年までに2.5億人以上生まれる可能性があると予想している)。

Climate Refugees/ UNHCR
Climate Refugees/ UNHCR

グローバル・ガバナンスの不在

「パリ協定」の矛盾や欠陥をいくらでも指摘し続けることはできるが、明白なのは、私たちには最小限のグローバル・ガバナンスのシステムすらないということだ。気候変動の問題は、世界の多くの市民が感じている不安感をさらに増幅することになるだろう。もちろん、貧しい国々はこの災厄の影響の大半を不当に被ることになる。しかし、先進工業諸国もまた、ライフスタイルの一定の変革を迫られることになるだろう。それなしに政府の行動だけを求めても、私たちが今日知っているような地球を救うことは不可能である。

COP21に参加した政治的アクターがこれをどう見ていたのかを検討してみると興味深い。彼らは、パリ協定は気候を安定化させるという問題を解決することはできないとの認識を含んだ宣言を複数発している。もちろん、これはプロセスの始まりに過ぎず、将来も事態は進展するのだから、楽観的でなければならないとの趣旨の前向きな宣言も出されている。これは、市場が新技術に投資することで強力な役割を果たし、プロセスを加速させるという自信を政治的アクターたちが垂れ流そうとしたためだ。

もちろん、市場は「正義」の問題とは関係がない。変革を生み出す真の力についてはほとんど述べられていない。それは、行動を起こし公共空間を占拠して、手遅れになる前に行動すべきだと諸政府に要求してきた世界中の市民である。こうした市民行動は、ローマクラブによる1972年の宣言「成長への限界」から始まっている。こうした問題が存在するということを政治指導者らが認めるまで45年近くもかかってしまった(2009年のコペンハーゲンでの気候変動会議では、これはまだ議論の段階だった。)その当時でも、歴史的な熱波、氷山の融解、砂漠の拡大、ハリケーンの大規模化などの否定しがたいデータは存在した。しかしこれでも、政治指導者たちが現実に対して(そして民衆に対して)耳を傾け、合意をもたらすのには十分でなかった。私たちは2015年まで待たねばならなかったのである。

Wikimedia Commons
Wikimedia Commons

2050年には、通常の気候レベルから気温が何度上昇しているか私たちは知ることになるだろう。しかし、地球環境の悪化は、私たちが既に感じている不安感を増大させることになるだろう。テロはその最新の一撃に過ぎない。あまりにも長い間、政府は市場がその責任を果たすだろうと期待していたが、その間に、市民の不信感は増すことになる。

数日前、ノーベル賞受賞者のポール・クルーグマン氏が『ニューヨーク・タイムズ』に「醜きものに力を与える」と題したコラムを寄稿した。そこで彼は、ドナルド・トランプ氏とマリーヌ・ル・ペン氏の人気がなぜ高まっているのかを次のように分析している。「…この醜きものは、表面上は突然に見える事態の変化に恐れをなしてようやく動き始めた守旧派によって力を与えられたものだ。(今や彼らは)自らが作り上げた怪物に直面している。」

しかし私たちは、かつて「救世主」とされた人物が力を持ち、民主政府の権力を奪った同様のプロセス(=ワイマール共和国におけるヒトラーの台頭:IPSJ)を忘れるわけにはいかない。ベルリンの壁崩壊以来、私たちは制御不能の強欲の時代を生きている。私たちは今や、恐怖と不安の時期に入りつつある。恐怖と強欲は民主主義の柱をなすものではないという点で、私たちは一致すべきだ。(原文へ

※ロベルト・サビオ氏はOther Newsの発行者、INPS顧問、国際協力評議会(GCC)顧問。このIDN記事はOther Newsとの共同配信によるもの。

INPS Japan

関連記事:

気候変動会議で水問題は依然として軽視されている

「安全保障上の脅威」と認識される気候変動

|視点|パリの大量殺傷事件―欧州にとって致命的な落とし穴(ロベルト・サビオOther News代表)

「イスラム国は絶望した若者らが駆け込む聖域となっている」(タルミズ・アフマド元駐サウジアラビアインド特命全権大使)

0

【IPSオピニオン=タルミズ・アフマド】

ISIS(イラクとシャームのイスラム国)に参画する多くのアラブ人青年らにとってのISISの魅力とは、自らの歴史と伝統に基盤を置く大義の下に参加したいという彼らの希望を満たしながらも、中東地域全体でアラブの独裁者らに闘いを挑んでいる点にある。」

昨年、自らをカリフと称するアブ・バクル・バグダディは、モスルにあるモスクの壇上から集会の参加者に演説を行い、「イスラムの土地へのヒジュラ[移住]は義務的なもの」であるとして、全てのイスラム教徒に対してISISへの移住を呼び掛けた。

バグダディは自らの領土を「アラブ人と非アラブ人、白人と黒人、東洋人と西洋人がみな兄弟であり、ひとつの旗と目標の下に、彼らの血は交わり一つになる」ような場所だと述べた。

この呼びかけに応じた人々の数は驚くべきものだった。ISISには20万人の兵士がおり、そのうち3分の1が既に戦闘を経験済みだという。そのほとんどはイラクやシリアの出身だが、少なくとも3万人は80か国から集まった外国人だという。うち7000人が、女性2500人を含む欧州出身者である。

トルコ・シリア国境の監視が緩かった昨年までは、数百人の若い新参兵がISISに加わるために毎日国境越えをしていた。ほとんどが15~20歳で、女性の場合でも、最低年齢はそれを少し上回る程度だった。男たちには月給500~650ドルが支払われている。婚姻局が結婚を促進し、相談部局が結婚生活の諸問題を取り扱っている。

ISISへの入隊勧誘がほぼオンライン上で行われていることは驚くにあたらない。ISISは最新のソーシャルメディアと非常に能力の高いIT専門家を使い、キック(Kik)やワッツアップ(WhatsApp)、スカイプといった非常に探知しにくいツールを通じて複数言語でそのメッセージを発信している。(「ムスリムブック」と呼んでいる)自らのフェイスブックやスマートフォンのアプリ、イラク駐留の米兵が標的となったビデオゲームなども使っている。

「デジタル国家」

アラブの著名な評論家アブデル・バリ・アトワン氏は、デジタル技術が占めるこうした中心的な役割に関して、ISISは「デジタル国家」だと述べている。インターネットなしでは兵士を雇うことも、領土征服も成しえなかっただろう。

ほとんどの兵士は、例えば、「聖戦(ジハード)のない人生なんか考えられない」といったタイトルの勧誘映像を通じて、引き寄せられてくる。この映像は、さまざまな出自を持つ3人の過激派戦士(ジハーディスト)を登場させ、戦闘の状況について語らせたり、ISISでの生活がいかに快適なものかを語らせたりしている。あるジハーディストは「ジハードに参加する光栄ほど、鬱屈した状況への薬はない」と語っている。ISISは単に戦士を集めているだけではなく、様々なスキルを持った人々を歓迎する。「それぞれに役割はある」―映像はそう呼びかける。

ここで投影されるメッセージには2種類のものがある。つまり、①(「ジハーディ・クール」と呼ばれる)若者たちの俗語を使いながら、集団の「兄弟愛」に焦点を当て、ISISが青年たちが「属する」に値する場所であることを訴えるものと、②人質や敵集団との戦闘や殺害に焦点を当て、ジハーディストの最高の貢献として「殉教」を称賛するものである。

女性に向けられたメッセージも同様に二分法を反映している。一つは、料理のレシピや、特定の食料の慢性的な不足、季節替わりの際の温かい衣服の必要といったことに触れるものであり、もう一つは、彼女らの夫の殉教や敵兵の殺害を称賛するものである。敵兵の東部がペットの子猫と並べて表示されてすらいるのだ!

数多くの新兵参入、その多様な背景を考えると、ISISに加わる動機は幅広いものだと言ってよいだろう。中核的な小集団にとっては、主な誘因は宗教的なものを動機としている。彼らは、自分たちはイスラム教のためのジハードに従事していると信じており、「カリフの領土」の創設に歓喜している。ユダヤ人が数百年にわたって聖地を望んできたように、自分たちもカリフの領土を望んできたのだという。あまりに長きにわたって敗北と絶望の日々が続いたのち、自分たちは新たなイスラムの領域を建設するパイオニアとなったのだと自負している。

この集団のまた別の人々は、スンニ派の教義を熱心に標榜するISISのアプローチに好意的に反応している。つまり、多くのスンニ派イスラム教徒の間では、反シーア派感情が根強く、シーア派はイスラム教徒ではなく、(シーア派の大国)イランの指導の下に全てのイスラム国家が乗っ取られようとしていると考えている。

こうした感情は、数百万のフォロワーを持つソーシャルメディア上で聖職者が書く過激な言葉に強く煽られている。

しかし、ISISに加わる若者らの間で、宗教的な熱意が動機となっている者はほとんど見られない。フランスで活動する米国人学者スコット・アトワン氏は、「(ISISに加わるため)シリアに向けて出国する一部の青年らは、ダミーとして(!)コーランを持参しているのです。」と指摘した。つまり、ほとんどのこうした若いISIS新兵にとっての誘因は、(カリフが支配するイスラム国を建設するという)世界的に重要な計画に自身が参加するという冒険心と同志愛である。アトワン氏は、ISISの中核的なグループの多くが、宗教や地政学には無関心な「社会の主流から取り残された、はみ出し者たち」であると見ている。彼らは今や、「世界を変革し救う極めて魅力的な任務」に就いており、「栄えある大義のために同志に加わる喜び」を感じているのだという。

Graffiti in Cairo showing police brutality. Credit: Cam McGrath/IPS
Graffiti in Cairo showing police brutality. Credit: Cam McGrath/IPS

イスラム教とジハードの研究を専門とするフランスの学者オリビエ・ロイ氏も、アラブの若者がISISに惹かれることに宗教的動機はないというアトワン氏の見解に賛同している。ロイ氏は、「こうした青年らにとって、ISISへの参加は、自分たちを親の世代から分け隔てている深いジェネレーション・ギャップ(世代的隔たり)の表れであり、ごく短期間に急激な社会変化を経験したため、イスラム社会ではこのギャップ(隔たり)はより大きなものになっている。」と指摘した。

欧州では、アラブ系の若者が、社会の最底辺にいる自分たちの生活や、文化的な根無し草の状況、嘲りとイスラム憎悪の対象となってきた経験から、親の世代を非難している。彼らが反社会的な暴力行動に走る傾向は、19世紀フランスの無政府主義者や、近年ではドイツ赤軍派のものに近いものを認めることができる。

ISIS幹部の大部分を構成する中東出身のアラブ人にとって、各々の社会に対して募らせてきた疎外感は、不透明で説明責任が全く果たされず、政治的な意思決定プロセスに彼らが参加する門戸が完全に閉ざされたままの政治体制に起因するものだった。

こうした若者たちは、この5年間、「アラブの春」によって生まれた希望が潰され、こうした政治秩序を維持するために暴力が振るわれるのを目の当たりにしてきた。

ISISに参画する多くのアラブ人青年らにとってのISISの魅力は、自らの歴史と伝統に基盤を置く大義の下に参加したいという彼らの希望を満たしながらも、地域全体でこうしたアラブの独裁者らに闘いを挑んでいる点にある。従ってこれは、自分たちが英雄的な中核の役割を果たし、歴史的重要性をもつ企図に関与しているという、アラブの若者たちの感覚に訴えるのである。

従ってISISは、絶望した人たちが駆け込む聖域となってしまっている。ISISが青年らを惹きつけている危険な魅力を弱めることができるとすれば、それは、民衆に自由と尊厳を与えるような政治秩序の改革が中東において実現した時のことだろう。(原文へ

※タルミズ・アフマドはインドの元外交官。インドの駐サウジアラビア大使(2000~03、10~11)、駐オマーン大使(2003~04)、駐アラブ首長国連邦大使(2007~10)。外務省退職後は、ドバイでのエネルギー企業に勤める。

翻訳=IPS Japan

関連記事:

青年・平和・安全に関する初めての国連安保理決議

シリア内戦を「宗派間緊張」に変えるファトワ

国連人権トップ「テロとの闘いは、拷問・スパイ活動・死刑を正当化しない」