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|インタビュー|平等な世界ですべての人に人権を(ラメシュ・ジャウラINPS総裁兼編集長インタビュー)

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以下はドイツの非政府組織(NGO)「プロモザイクe.V.」(ProMosaik e.V.)のミレーナ・ランポルディ氏による、ラメシュ・ジャウラ氏へのインタビューである。ジャウラ氏は、ベルリンに本拠を置く国際通信社「インターナショナル・プレス・シンジケート(INPS)」の総裁兼編集長であり、1983年に創設されたシンクタンク「国際協力評議会(Global Cooperation Council)」の共同創設者で会長でもある。

ミレーナ・ランポルディ(MR):INPSの最も重要な目的は何ですか?

ラメシュ・ジャウラ(RJ):「インターナショナル・プレス・シンジケート」(INPS)とそのフラッグシップ(中心)メディアである「IDNインデプスニュース」は、主流メディアがしばしば見落としたり、問題の背景や文脈抜きで伝えるニュース報道の向こうにある深層(Issue Beyond the News)に焦点を当てています。INPSによる分析記事の根幹には次の3つの着眼点があります。つまり、①社会正義と世界市民に基盤を置く本当の意味でのグローバルガバナンス。二つ目は、②核兵器なき世界を招来する「平和の文化」。そして三つ目は、③人権や市民の自由を確保することに資する国際協力(南北協力、南南協力、三角協力)です。

INPSはまた、芸術や文化に反映された文化横断的な交流の根本的な重要性を認識するとともに、2030年までに世界を変革することを目指した17項目から成る「持続可能な開発目標」(SDG)の枠の内外において持続可能性に注目しています。

そしてINPSの最大の特徴は、富裕国、中・低所得国の声なき声に光を当てるとともに、情報をより民主的でより多くの人々が参加できるよう、市民とあらゆるレベルのアクター(国連から各国政府、NGO、シンクタンク等)の橋渡しとなるよう、取材・配信活動を進めていく点にあります。

MR:INPSが国際的に取り上げている主なテーマにはどのようなものがありますか?

RJ:主なテーマとしては、①世界市民の育成、②核兵器なき世界の必要性に関する意識喚起、そして③持続可能な開発があります。

Wikimedia Commons
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実のところこれら3つのテーマには相互に関連性があります。つまり、地域や国の存在を超えて、遠くにありながらこれまでになく身近に感じざるを得ない「グローバル化された世界」の市民であるという感覚です。今や、地域や国家の問題ですらグローバルな次元を持つようになり、グローバルな問題が世界中の国々で個人に影響を及ぼしていることから、私たちはもはや、こうした現実を踏まえた観点を持って対処していかないかぎり、規模の大小に関わりなく、問題を解決できなくなっているのです。

私たちは世界市民として、限定された範囲を破壊する能力を持った小型の兵器とは異なり、核兵器は大量破壊兵器であるとの認識を持たなければなりません。核兵器は、ひとたび配備されされば、世界の最も遠い場所にも影響を及ぼし、老若男女を無差別に殺戮し、地球環境に予測不能な、恐らく原状復帰不能な被害を及ぼすでしょう。その結果、地球上の生命が生きていくことはほぼ不可能になります。

この観点から見れば、核兵器が及ぼす人道的帰結は壊滅的なものであり、開発にとって真の脅威となります。事実、持続可能な開発は不可能になるでしょう。国際社会が2015年9月25日に「新たな持続可能な開発アジェンダの一環として、貧困を撲滅し、地球を保護し、全ての人にとっての繁栄を確保する」ための開発目標を採択した背景には、まさにこうした現実が念頭に置かれているのです。

ICAN
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各開発目標には、今後15年で達成すべき特定のターゲットが明記されています。これらの目標を達成するには、政府、民間部門、市民社会、一般の人々など、全ての人が関与しなくてはなりません。

MR:人権を求めて闘うための最善の戦略は何でしょうか?

RJ:人権とは、国籍、居住地、性別、出身国・民族、肌の色、宗教、言語、その他のあらゆる地位に関わりなく、すべての人間が本来的に持っているものです。私たちは、差別なく人権を平等に享受する権利を持っています。これらの権利には互いに関係があり、相互依存的で、不可分なものです。

世界人権宣言は、人権の歴史における画期的な文書です。世界の全ての地域から集まった様々な法的・文化的背景をもつ代表らが起草したこの宣言は、1948年12月10日、パリで開かれた国連総会において、すべての人民とすべての国が達成すべき共通の基準として採択(国連総会決議217(III))されました。それは史上初めて、基本的人権は普遍的に擁護されなくてはならないと宣言したものでした。

人権を求める闘いは、次のような目的を持った多方面の戦略を必要とします。あらゆる場所ですべての形態の貧困を撲滅する;飢餓の撲滅、食料安全保障や栄養状態の改善の達成、持続可能な農業の促進;健康な生活の確保とすべての年齢のすべての人々の厚生の促進;すべての人に対する包摂的で質の良い教育の提供と生涯学習の推進;ジェンダー平等の達成とすべての女性・女子のエンパワメント;すべての人に対する水と衛生的な環境の提供;安価で、安定的で、持続可能で近代的なエネルギー源の確保;すべての人に対する包摂的で持続可能な経済成長、雇用、人間らしい労働の促進。

また、人権を求める闘いは、必然的に次のようなものを含んでいなくてはなりません。国々の内部および国家間の不平等を緩和し都市を包摂的で安全で柔軟で持続可能な場所にすること;持続可能な消費・生産パターンの維持;気候変動とその影響に対処する緊急行動;海洋、海、海洋資源の保全と持続可能な形での利用;森林の持続可能な形での管理、砂漠化の防止、環境悪化の食い止めと原状復帰、生物多様性の喪失の食い止め;公正かつ平和的、包摂的社会の促進。

MR:あなたにとって最も重要な足元の問題は何でしょうか?

RJ:私たちは足元の問題をグローバルな観点から見ています。いま見てきたように、足元の問題は人類がグローバル規模で直面している諸問題を反映しています。つまり、貧困、飢餓の問題や、教育、水、衛生、保健施設の欠如といった問題です。同じように、ジェンダー平等の欠如や、圧倒的な社会的・経済的不平等は、社会を足元のレベルにおいても苦しめることになります。それらもまた、私達にとって重大な意味合いを持つ問題なのです。

MR:「プロモザイクe.V.」は、様々なNGOをつなげ、それらの活動について知らせていくことが重要だと考えていますが、この点についてどうお考えですか?

RL:全く同感です。NGOや市民社会組織(CSO)は、地方、国家、サブ地域、地域、国際レベルにおいて今日の世界で重要な役割を果たしています。それは、これらの組織が、社会の主流から取り残され、困窮した人々の鼓動を感じているからだろう思います。

しかし、NGOやCSOについても、一般の人々に対する透明性と説明責任を確保し、絶対確実な存在とは見られないようにしなくてはなりません。私たちINPSは国際協力評議会(GCC)と緊密に協力しながら、積極的にNGOの活動を報じていきます。GCCは、途上国と先進工業国との間の真の対話を促進することを目的に1983年に南北フォーラムとして設立されたシンクタンクです。

MR:平和を促進するための最善の戦略とはどのようなものでしょうか?

RJ:平和は、武力紛争の不在や、地域規模或いはさらに大規模な戦争の不在によって表されるものではありません。平和は、「平和の文化」に埋め込まれていなくてはなりません。国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)憲章が述べるように、「戦争は人の心の中で生れるものであるから、人の心の中に平和のとりでを築かなければならない」のです。

この同じ憲章は、「政府の政治的及び経済的取り決めのみに基づく平和は、世界の諸人民の、一致した、しかも永続する誠実な支持を確保できる平和ではない。よって、平和が失われないためには、人類の知的及び精神的連帯の上に築かれなければならない」と強調しています。

したがって、平和教育や非暴力の教育、寛容、容認、相互の尊重、知的および宗教横断的な対話と和解によって、人間の心のなかに平和を築くことを優先しなくてはなりません。

平和戦略は、対立し交戦中の主体の間で理解を促進する思考と行動によって導かれなければなりません。現在国連が行っている16の平和維持活動(PKO)によっても明らかなように、これは「言うは易く、行うは難し」です。しかし国際社会はこうした努力を、継続していかなければなりません。(原文へ

INPS Japan

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持続可能な開発のために世界市民教育を推進する

国連、西暦2133年を待たずに完全なるジェンダー平等達成をめざす

【ベルリン/ダボスIDN=リタ・ジョシ】

国連の潘基文事務総長が、世界の女性のエンパワメントは「世界的な課題」だと述べて、初の「女性の経済的エンパワメントに関するハイレベルパネル」の開催を発表した。

英国政府、世銀グループUNウィメンが支援したこのパネルの設置は1月21日、世界経済フォーラム(WEF)の開催地であるスイスのダボスで発表された。

しかし観測筋によると、この発表は驚きではない。国連の持続可能な開発目標(SDGs)第5項目は、ジェンダー平等の達成とすべての女性・女児のエンパワメントを掲げている。そして、今年のWEFが提示した世界の十大重要課題のひとつに、ジェンダー平等が含まれているのである。

過去10年、WEFは、「世界男女格差レポートGlobal Gender Gap Report)」を通じて、変化のペースを測ってきた。2006年に初めて発行された同レポートの2015年版は、10年間のデータを使い、「世界は全体として進歩してきたが、不平等が未だに頑として存在している。このペースだと、男女間の経済格差を完全に解消するにはあと118年(2133年まで)かかるだろう」と述べている。

SDGs Goal No. 5
SDGs Goal No. 5

報告書が述べるように、2006年以来、2.5億人の女性が世界の労働市場に加わったにもかかわらず、女性の賃金レベルは10年前の男性のそれと変わらず、不平等がいまだに存在するためだ。

保健、教育、経済機会、政治における世界的なジェンダー格差はこの10年でわずか4%しか縮小していない。経済的格差の縮小はほんの3%で、これでは格差が完全に解消されるまでに118年もかかることになる。

女性にとって教育は何ももたらしていないのかという問いに関して、レポートによれば、2006年以来、調査対象国(145か国)の中で格差が拡大したのは22%の国々にとどまり、97か国で男性よりも女性の方が多く大学に入学しているが、女性が熟練労働者の多数を占めているのは僅か68か国、指導者の多数を占めているのはわずか4か国であった。

依然として北欧諸国が、世界男女格差指標の上位を占めている。非北欧諸国でもっとも上位にあるのが、5位のアイルランドだ。非欧州諸国でトップ10にランクインしているのは、ルワンダ(6位)、フィリピン(7位)、ニュージーランド(10位)。米国は前回の調査から8ランクダウンで28位であった。

他方で、女性は自らの収入を家族や地域のために、とくに健康や教育のために投資するとの調査結果が出ている。「マッキンゼー・グローバル研究所」は、各国の女性が市場において男性と同じような役割を果たしたと仮定すると、2025年までに世界経済は28兆ドル押し上げられるだろうと推定している。

ICAN
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しかし、現在のところ、女性の収入や資産は[男性より]少なく、一方で、より多くの無償労働や介護負担を担い、その経済活動は脆弱で低賃金なものに集中している。女性は、無報酬の介護や家事に(男性の)2倍の時間を費やし、男性と同じ仕事をしても、世界的に男性よりも24%低い賃金しか受け取っていない。

さらに、途上国における女性雇用の75%は、非正規で保護されていない。こうした格差が女性の権利に対する制約となり、経済成長と生産性を阻害している。

従って、諸政府や開発機関等が社会全体の利益のために女性の経済的エンパワメントに投資するように、行動と政治的意思の強化が必要だと国連は考えているのである。

こうしたことを背景に、「女性の経済的エンパワメントに関するハイレベルパネル」は、考え抜かれたリーダーシップを提供し、世界で根強く残る経済の男女格差をなくすことを目的とした具体的な行動を起こすことになる。

同ハイレベルパネルは、とりわけ、女性のための経済的成果を向上し、持続的で包括的、環境に優しい経済成長を促す女性のリーダーシップを促進するために、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の履行に向けた勧告をなすことになる。

同ハイレベルパネルはまた、政府や民間部門、国連やその他の利害関係者によってとられる主要な行動への勧告を行い、女性の経済的エンパワメントを呼び掛けたSDGsのあらたな目標と指標を達成するために必要な政策的指針を示すであろう。

「世界の女性のエンパワメントは世界的課題です。」と、ハイレベルパネルの設置を発表した国連の潘基文事務総長は語った。

Photo: Secretary-General Ban Ki-moon (left) addresses a meeting to brief Member States on April 4, 2016 on the preparations for the World Humanitarian Summit (WHS), set for 23-24 May in Istanbul, Turkey. At his side is Stephen O'Brien, Under-Secretary-General for Humanitarian Affairs and Emergency Relief Coordinator. Credit: UN Photo/Evan Schneider
Photo: Secretary-General Ban Ki-moon (left) addresses a meeting to brief Member States on April 4, 2016 on the preparations for the World Humanitarian Summit (WHS), set for 23-24 May in Istanbul, Turkey. At his side is Stephen O’Brien, Under-Secretary-General for Humanitarian Affairs and Emergency Relief Coordinator. Credit: UN Photo/Evan Schneider

「しかし、ジェンダー平等を促進するうえで大きな進歩があったにも関わらず、女性の経済的エンパワメントと経済活動への完全参加を実現するには、依然として構造的障壁が行く手を遮っており、火急に対処する必要がある。もし世界が持続可能な開発目標を達成しようとするなら、女性の経済的エンパワメントを飛躍的に前進させる必要があります。」と潘事務総長は語った。

ハイレベルパネルの共同議長は、コスタリカのルイス・ギジェルモ・ソリス大統領、IKEAスイスCEOのシモナ・スカルパレッジア氏の2人。ここに、国際通貨基金、世銀グループ、UNウィメン、幅広い著名なジェンダー・平等関連の活動家、経済専門家、学者、労組関係、さらに、あらゆる地域からの経済界・政界の代表が加わる。

ハイレベルパネルは、英国政府の支援を受けたUNウィメンがホストする独立の事務局によって運営されることになっている。

ハイレベルパネル創設主体のひとつである英国のジャスティン・グリーニング国際開発相は、同ハイレベルパネル設置を歓迎し、こう述べた。「このハイレベルパネルに参加できることを非常に光栄に思います。女児・女性に投資することは単なる基本的人権の問題ではなく、世界の人口の半分の潜在能力を完全に解き放つことでもあります。英国は既にこの取り組みの先頭にいるのです。」

By DFID - UK Department for International Development -, CC BY 2.0
By DFID – UK Department for International Development -, CC BY 2.0

「国際開発省において私は、女児・女性の生活の向上を政策の中心課題としてきたし、英国は女性性器切除や児童婚の撲滅を先導し、女児を学校に、そして女性を職場に送り込んできました。強い経済は女性を含めた全員の貢献を必要としており、このパネルは女性の経済的エンパワメントをかつてない規模で課題として取り上げる先導役を果たすことになります。」とグリーニング国際開発相は付け加えた。

同じくハイレベルパネルの創設者である世銀グループのジム・ヨン・キム総裁は、「世銀グループは、貧困を撲滅し共通の繁栄を加速するための不可欠の要素であるジェンダー平等に強くコミットしてきました。私たちの新たな『ジェンダー平等戦略』は、経済的エンパワメントにより明確な焦点を当てています。」と語った。

「すべての人間がその潜在能力を発揮するまでは、いかなる社会、地域、経済も、その完全なる潜在能力を発揮し、あるいは、21世紀の高まる諸問題に対応することはできません。私たちは、このパネル招集のために英国国際開発省及び国連と協力できることを喜ばしく思います。ハイレベルパネルの作業は、私たち共通の目標に向けた進展を加速することになるでしょう。」とキム総裁は付け加えた。

ハイレベルパネルは、女性の経済的エンパワメントには相乗的な効果があり経済全体を活性化するという証拠や諸政府や民間部門による認識を基礎として、世界中で依然として残る経済的機会・成果におけるジェンダー格差の問題に取り組むことになる。

ハイレベルパネルは、2016年3月に国連で開かれる婦人の地位委員会の60回目の会期においてその活動を開始する。地域ごとの一連の協議会合も開かれ、行動志向の勧告を含んだ最初の報告書は9月に発行される予定である。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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宗教的原理主義に対話で立ち向かう

【東京IDN=モンズルル・ハク】

宗教的アイデンティティとは、広義では特定の宗派に属していることと捉えられているが、今日このテーマが、激しい議論の対象となっている。その主な理由は、宗教的な意味での帰属意識が、他者に危害を加えることによって、特定の目標を達成することに向けられているからである。この宗教的アイデンティティを巡る議論は、「文明の衝突」という概念が欧米の学者や知識人の間で一定の支持を得る中で、近年激しさを増している。

さらにこうした議論は、欧米の指導者らが「悪の枢軸」と名指しした体制(=イラクのサダム・フセイン政権、リビアのムアンマール・ガダフィ政権)を打倒するプロセスに欧米諸国自らが関与したことで、更に拍車がかかることとなった。つまり欧米諸国が介入した結果、そうした国々では、神の名において自らの正当性を主張する様々な宗教を基盤としたテロ集団が台頭するという、予期しなかった事態を招いてしまったのである。

その結果、宗教は売り物のひとつになり、教義を説いて回る輩が、世界中の惑い悩む人々に対してせわしなく「天国への切符」を売りつけている。

こうした状況を背景に、様々な信仰に帰属する人々の間で健全で学術的な議論を交わすことがますますは困難になってきており、そこに生まれた危険な空白を、あらゆる方面の狂信者たちが、いとも容易に埋めていくという事態が進行している。

オタゴ大学平和紛争研究所(ニュージーランド)と戸田記念国際平和政策研究所(ハワイ・ホノルル)の共同による今回の最新の取組みが重要なのは、まさにこうした危機的な事態が背景にあるからだ。

東京で2月初旬に開かれた4日間の国際会議「世界的諸宗教における平和創出の挑戦」には、3つのアブラハムの宗教(IPSJ注:聖書の預言者アブラハムの宗教的伝統を受け継ぐと称するユダヤ教、キリスト教、イスラム教を指す)及び仏教について、11か国・地域の研究者や識者ら20名が参加した。会議では、相互理解につながる行動について4つの宗教の信者が前向きに関与し合い、それを世界に平和と正義を確立するプロセスに結び付ける可能性に焦点が当てられた。

暴力性と平和主義的な傾向はともに、ほぼすべての宗教に本来的に備わっているものである。異なる宗教の信者の間で紛争を避けるためには、この矛盾した二つの傾向の間で微妙な均衡を保つことが肝要である。

しかし、現在の世界状勢を見れば、暴力的な傾向が平和主義的な傾向を凌駕していることは明らかだ。世界の他の地域よりも宗教を基盤にした分断が著しい中東地域だけではなく、近年までは宗派対立が比較的少ないと見られてきた地域においても、この傾向が顕著になってきている。

会議は、2つの全体会議と、世界中で宗教的な不寛容を煽りたてている破壊的な教えに対抗する手段として作用しうる現代の4つの主要宗教に備わっている平和主義的で非暴力的な伝統を強化する方法に焦点を当てた11の分科会から成り立っていた。

2つの全体会議が、「世界市民」の実現につながるような宗教間理解という複雑な問題に対する認識を深めるための共通の基盤として機能したのに対し、分科会では、平和主義的、軍事主義的な傾向に関連した特定の問題や、4つの宗教すべてにおける平和主義的な伝統を育成・強化する方法に焦点が当てられた。

戸田記念国際平和研究所のオリビエ・ウルバン博士は、開会の挨拶で、異なる宗教の信者の間で定期的な対話を行うことの重要性と、世界の複雑な諸問題の多くに対して答を与えるという宗教が持つ本来の目的に回帰する必要性を強調した。

Dr. Olivier Urbain, director of the Toda Institute for Global Peace and Policy Research/ Katsuhiro Asagiri

暴力的かつ平和主義的な伝統に反映された矛盾含みの宗教の役割が主要な宗教のほぼすべてにおいて支配的であることから、ウルバン博士は、全ての宗教上の教えの中から互いに最善の部分を引き出し、それを適用することで「私の宗教が一番だ」という偏狭な視野から従来世界を捉えてきたものの見方を、互いに変えていくことができるような対話の重要性を強調した。

戸田記念国際平和研究所の創設者である池田大作SGI会長は会議にメッセージを送り、「世界を蝕んでいる排外主義の高まりといった『戦争の文化』に歯止めをかけることは、平和研究にとっての一大焦点であるのみならず、人間の良心を糾合して取り組むべき急務であると思えてなりません。」と述べた。

池田会長はさらに、「その意味で、今回、キリスト教、ユダヤ教、イスラム教、仏教を背景とする研究者、運動家、宗教者が一堂に会し、各地で広がる『暴力と憎悪の連鎖』を乗り越え、世界に『平和と人道の潮流』を高めてゆくために、宗教、また信仰を持った個々人がどのような役割を果たしていけるのかについて探求する意義は大きい。」と指摘したうえで、「誰も置き去りにすることなく、すべての人々が平和に生き、尊厳を輝かせていける世界を築くために、宗教が担うべき役割はますます重要になってきています。」と述べ、会議の成功に期待を寄せた。

Sihem Bensedrine, President of the Truth and Dignity Commission of Tunisia/ Katsuhiro Asagiri

チュニジア真実尊厳委員会のシヘム・ベンセドリン委員長は基調講演で、さまざまな宗教集団の信者の間だけはなく、ひとつの特定の宗教に帰属しながらいくつかの重要問題で見解を異にする人々の間で共通の基盤を見出すことの難しさについて語った。ベンセドリン委員長は自身の祖国チュニジアの例を引き合いに出し、人口わずか1100万人の国から、宗教の名において無慈悲な政治的暴力に訴えるイスラム過激派組織ISの戦士に加わった者が6000人近くも出ている現実を指摘した。ベンセドリン委員長は、宗教は今や、イスラム教の名において蔓延る最も無慈悲な暴力と蛮行の中心に位置付けられてしまっています、と語った。

チュニジア真実尊厳委員会の委員長として、ベンセドリン氏は、和解という困難な任務を担わねばならなかった。彼女によれば、和解の道を探るプロセスで直面した最大の課題は、あまりに長い間、全くと言っていいほど罰せられることなくチュニジア社会を支配してきた独裁組織をいかにして解体するかということだった。

移行には常に敗者が伴う。従って、敗者の側にいる人間にもプロセスに関わってもらうことが重要である。国民の記憶の保存は、暴力を二度と繰り返さないうえで重要な位置を占める、とベンセドリン委員長は言う。基本的に性格が異なるものの、チュニジアの和解の事例は、異なった宗教の信者の間に存在する溝を埋める方法に関してヒントを提供しうる重要な教訓だと言えよう。

第二全体会議のパネル討論では、4つの参加宗教の代表らが、それぞれの宗教における暴力的伝統と平和主義的な伝統の観念について説明し、地球における平和確立の手段として平和主義的な傾向を強化する方法を検討した。それぞれの宗教から、異なった地域出身のパネリストが2名ずつ登壇し、宗教的思想を幅広く代表するように構成されていた。

Kevin Clements, the Chair of Peace and Conflict Studies and Director of the National Center for Peace and Conflict Studies of the University of Otago/ Katsuhiro Asagiri
Kevin Clements, the Chair of Peace and Conflict Studies and Director of the National Center for Peace and Conflict Studies of the University of Otago/ Katsuhiro Asagiri

オタゴ大学平和紛争研究所のケビン・クレメンツ所長が司会を務め、各登壇者はまず、宗教的理解からこの問題をどう考えるかについて述べ、次に活気ある質疑応答の時間に移った。

すべての宗教の本質が、信者の平和的生存を確保し、戒律を守ったことに対する報いとして来世がそれに続くものだとすれば、暴力的な要素もまた、さまざまな理由から宗教の本質的な一部分を構成してきた。たとえば、ユダヤ教の信者は、常に不安定な状態にさらされているという感情ゆえに、暴力的な傾向に訴えてきた。

シャロム・ハートマン研究所のノーム・シオン上級研究員は、安全が保障されない困難な場所(=イスラム教の国々が大半を占める中東地域)にちっぽけなマイノリティーとして暮さざるを得ない現実こそが、ユダヤ人が戦士へと変貌していく究極の理由だと語った。一方、マレーシア科学大学のオマール・ファルーク教授は、ジハードはイスラム教において平和主義の最高の形態である旨を語り、基調講演者を含む一部の参加者は、(シリアとイラクで)イスラム過激派組織ISの戦士の列に加わる外国人ジハーディストたちは、各々がマイノリティーとして育った社会において、ユダヤ人同様に脆弱な立場におかれていた、との見解を示した。

また一部の仏教徒ですら、世界の一部の地域では暴力的になり、仏陀の教えに背いている。

宗教をめぐるこのように対照的で不安をもたらすような状況の中、パネリストらは、暴力主義的な傾向に歯止めをかけ、平和主義的な傾向を強化する努力を強める必要性を聴衆に訴えた。この困難な目標は、対話と討論を通じてのみ達成できるという点でおおむね一致していた。

この会議は、宗教的な立場を通じて議論されるグローバルな問題に焦点を当てることの重要性に着目した時宜を得た取り組みとなった。しかし、主催団体にしても会議の参加者にしても、対話と討論をより意義があり包括的なものにするには、その他の宗教の信者や無宗教者も含めて参加者を広げていくことが重要であると認識している。そうした人々は、合わせてみれば、世界の人口のかなりの部分を占めているからだ。(原文へ

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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移住労働者に「グローバルな見方」を学ぶシンガポールの学生

【シンガポールIDN=カリンガ・セネビラトネ】

政府統計によると、この東南アジアの豊かな国(=シンガポール)においては、人口の3人に1人が移民である。彼らは、近代的なインフラを築き、ビルを清掃し、レストランで料理や給仕をし、勤め先の家庭で子どもや老人の世話をしているが、しばしば賃金レベルはきわめて低く、粗雑な扱いを受け、地元の人々からは不審の目で見られている。

数百人のインド人労働者が警察車両を襲った2013年の「リトルインディア」暴動に始まり、イスラム系テロ集団との関連が疑われる27人のバングラデシュ労働者の最近の逮捕に到るまで、移住労働者に関しては社会に緊張が走っている。法律を学ぶある学生が語ったように、「私たちは移住労働者に関して二次的な情報源からしか情報を得ていない。そしてそれは、彼らがどういう人たちであるかについて教えてはくれない。」のである。

Map of Singapore
Map of Singapore

このことは、「地元民」に対する「移住労働者」の比率が世界で最も高い国の一つであり、移住労働者の大半が近隣諸国から来ているシンガポールに特有の現象ではないが、同国の外国人労働者に対する劣悪な処遇は、地域の外交に悪影響を及ぼす可能性がある。

1月31日から1週間の日程で始まった「移住労働者問題啓発週間」(MWAW)は、シンガポール国立大学(NUS)が2014年に始めた取り組みであり、今年からはイエール大学・NUSジョイントベンチャー大学も加わっている。

この取り組みは、法学生を移住労働者やそれを支援する非政府組織(NGO)と交流させることによって、移住労働者の希望や、シンガポールに出稼ぎにきた動機について直接学ぶ機会を与え、学生らの視野を広げてもらおうというものだ。移住労働をめぐる法的、社会的、政治的問題に対する法学生の感覚を養わせるために法科大学が行っている取り組みである。

5日間のイベントで、2つのエリート大学の学生ら400人が、NGOや130人の外国人労働者と交流した。イベントは、1月31日、バングラデシュ人労働者の孤独を詠ったベンガル語の詩の朗読から始まり、2月5日の夜、暗い場所で学生と移住労働者が話し合う「トーク・イン・ザ・ダーク」まで続いた。その合間には、法と移住労働者、家事手伝い労働者をめぐる社会的問題、人身売買された性労働者をめぐるパネル討論もあった。

Migrant Workers Awareness Week

「本校の学生の多くは裕福な中流家庭の出身です。従って、私たちは特権的な場所にいて、移住労働者の権利といった特定の問題を見過ごしているのかもしれません。」と、NUS法科大学校のイベント実行委副委員長のビクター・デイビッド・ラウ氏は語った。

「本校の学生の多くは、家庭で家事手伝いを雇っているかもしれません。こうした人々は他国の市民であり、尊重される必要があります。」

ラウ氏は、「法学生らの考え方が一朝にして変わるものではなく、時間がかかるかもしれませんが、大学による教室を飛び出した今回の教育戦略は、移住労働者らが直面している苦境や、外国に出稼ぎに出る決意をした彼ら・彼女らの希望や志を顧みないメディアから得られた二次的な情報を通じて、移住労働者に対するステレオタイプ的な見方を形成している学生の問題に対処することを狙ったものです。」と語った。

学生らは、パネル討論や移住労働者らとの暗闇での会合に加え、外国人労働者の寮を訪問し、性労働者の実態をみるためにゲイラン地区の「赤線地帯」を回った。

NUSの法学部長であるサイモン・チェスターマン教授は、1週間に亘る教育プログラムの開始にあたって、「シンガポールの繁栄の裏には移住労働者の権利問題という『暗部』があります。本校の学生には、移住労働者が慢性的な問題に対処できるよう、無償で手を差し伸べるよう奨励したい。私はチャンギ国際空港で、外国人労働者らが法的な問題が解決しないまま本国に送還される様子を見てきました。」と語った。

「移住労働者:人間かプロジェクトか?」というタイトルで開かれたMWAWの開会パネル討論では、外国人労働者への法的保護の強化の必要性に関する議論がなされた。討論の司会者である上級法律講師のシーラ・ヘイン教授は、「初めてシンガポールにきたとき、この国の法学生は、いい点数を取ってカネを稼ぐことにしか興味がないから気をつけるようにと言われました。」「しかし、(実際には)多くの学生が社会問題への意識を持っています。多くの移住労働者が私たちのもとを訪れ、不公正な扱いについて訴えてきます。」と語った。

ヘイン教授は、学生らが社会への意識を持てば、移住労働者やNGO、地域社会、政府関係者、メディアとの協力やネットワーキングにおいて成果を上げることができると考えている。

Opening Panel Migrant Workers Persons or Projects/ MWAW 2016
Opening Panel Migrant Workers Persons or Projects/ MWAW 2016

家事労働者のためのNGO「ホーム」(HOME)のジョロバン・ワム常任理事は、人口400万人のシンガポールには22万7000人の外国人家事労働者がいると指摘し、「無償の家事労働をよしとする歴史的風潮があり、家事労働者の権利はないがしろにされがちです。」と語った。

「家事労働者については人権も労働権も顧みられず、雇主と労働者の関係は忠誠と信頼を基盤としたものになっています。家事労働者を家族の一員として扱うことによって、彼女は『雇われ人』ではないとの意識が強まってしまい、労働時間の制限や休暇の権利、労組加入権などは与えられないことになるのです。」

ワム氏は、「家事労働者も労働法によって保護されるべきです。」と語った。しかし、他のパネリストである人材省労働力政策・戦略局のタン・ファン・クン副局長はこれに賛同せず、最近人材省が外国人労働者に対して行った調査で、シンガポールでの労働環境に不満を持っている外国人労働者は10人に1人に過ぎなかったという調査結果を挙げ、「家事労働は法的枠組みに収めることがきわめて困難です。」と語った。

移住労働者による相談を毎年多数扱っているNGO「移動労働者カウントツー」のアレックス・オー氏は、学生や学者に対する熱のこもった発言でこれに反論し、「外国人労働者の搾取の問題をなきものとする前に、シンガポール経済の構造が理解されなくてはなりません。」「この国では、移住労働者は使い捨てにされています。シンガポールでは、人権や労働者の権利よりも企業の権利が優先させているのです。」と嘆いた。

ワム氏もオー氏も、移住労働者が搾取される最大の領域のひとつは、労働者の手配師によるものだと指摘した。

2014年12月現在、シンガポールには130万人以上の移住労働者がいる。このうち73%は、「非熟練」あるいは「低技能」の労働ビザ保有者であり、月にたかだか400~600ドルの仕事を世話してもらう見返りに3000~1万ドルを手配師に払って入国しているのである。

このカテゴリーに入る労働者のほとんどが、フィリピン、バングラデシュ、ミャンマー、インド、インドネシア、ネパール、中国の出身者で、[手配師への]支払いは書面上記録されていない。したがって、シンガポールでそうした支払いが違法化されていても、人材省はそれを止めることができないのである。

ワム氏もオー氏も、法律家の卵たちがこうした問題を認識していれば、この現代の災難に対する法的救済策を見つけることができるかもしれないと考えている。オー氏は、「すべてのNGOが、関心のある人々に対して、私たちの活動に参加できる数多くの機会を設けています。時には学生を一度に100人単位で動員して調査を行い、地域に出かけて労働者と話をし、適切な給与を得ているか調べています。」と語った。

Wikimedia Commons
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ワム氏は、「HOMEにはフルタイムスタッフが6人しかおらず、意識喚起を行動に結びつけることができていません。」と語った。この点に関してワム氏は、とりわけ法学生に対して、期待をにじませた。

「(法学生の皆さんには)国会議員に会って移住労働者の権利について議論していただきたい。国会議員に、シンガポール国民がグローバルな問題について、移住労働者の権利について関心を持っていることを知らしめてほしいのです。」とワム氏は語った。

法学生のラウ氏は、「NGOは、セミナーの開催を通じて、学問にばかり目を向けがちな学生らに働きかけようとしているのです。学生はこうした問題を授業の課題扱いするだけではなく、自分自身の活動の中に取り込む必要があります。教育とは単に勉強することではなく、社会的な効果を生み出すことです。こうした社会的なものの見方を活動に持ち込むことができれば、素晴らしいと思います。」と語った。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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Canadian PM Commends INPS-IDN Partner South Asian Outlook

Canada’s Prime Minister Justin Trudeau, Federal Party leaders and other eminent persons sent messages of appreciation on the 15th anniversary of South Asian Outlook, an e-Magazine partnering with INPS-IDN. Publisher and Managing Editor of South Asian Outlook is Suresh Jaura in Toronto. He is also President of INPS North America. He received the Canadian Ethnic Media Association (CEMA) award at the 30th Anniversary Award Gala on June 27, 2008 (Canadian Multiculturalism Day).

Read all messages here, including that from Justin Trudeau.

日本・カザフスタン、核実験禁止条約発効へ外交努力

【ウィーン/東京IDN=ラメシュ・ジャウラ】

包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会が6月の閣僚会議招集を準備する中、カザフスタンと日本が、条約の発効に向けた取り組みを強化するとの公約を再確認している。

1月25日から2月4日にかけて開かれたシンポジウム「平和と安全に向けた科学・外交」の第1週、ウィーンの両国代表は、昨年9月にニューヨークの国連本部でそれぞれの外相が開始した取り組みを推し進めると述べた。

日本の岸田文雄外相とカザフスタンのエルラン・イドリソフ外相は、昨年9月29日、第9回「CTBT発効促進外相会合」の共同議長を務めた。

カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領と日本の安倍晋三首相は、10月27日にアスタナで発表された共同声明で、包括的核実験禁止条約(CTBT)の発効が必要な理由について繰り返し述べている。

「 核兵器の脅威を経験し、これを十分に認識する国として、日本とカザフスタンは核兵器がもたらす人道的惨劇について、世界中の人々の認識を向上させる道義的権限と責任を共有する。この特別な使命を念頭に置き、日本とカザフスタンは、核兵器のない世界を追求すべく緊密に協働する決意である。」と共同声明は述べている。

「核兵器なき世界」にコミットする両国の首脳が必要な政治的措置をとるなか、著名な仏教哲学者・平和活動家である池田大作氏は、20年も停滞しているCTBTの発効への熱烈な支持を表明している。

Dr. Daisaku Ikeda /Photo Credit: Seikyo Shimbun
Dr. Daisaku Ikeda /Photo Credit: Seikyo Shimbun

創価学会インタナショナル(SGI)会長である池田氏は今年の平和提言「万人の尊厳 平和への大道」のなかで、「残りの8カ国が一日も早く批准を果たし、CTBTを名実ともに力強く機能させ、核実験が二度と行われることのない世界への道を開くよう、あらためて呼び掛けたい。」と訴えている。

8か国の中には、条約に署名はしている中国・エジプト・イラン・イスラエル・米国と、署名すら拒否している北朝鮮・インド・パキスタンが含まれている。

国連加盟国のうち計183か国が署名を済ませ、そのうち164か国が批准もしている。しかし、発効要件国である44か国(=条約の「附属書Ⅱ」に掲げられている条約交渉当時に核施設を保有していた国々)が批准手続きを済ませた場合にのみ、条約は発効することになっている。

「核問題解決への取り組みを加速させ、軍縮の促進はもとより、CTBTの採択を土台に生まれたこの活動のような『世界の人道化』に向けた潮流を、本格的に強めていくべきではないでしょうか。」と東京に本拠を置くSGIの会長は1月26日に発表した平和提言のなかで述べている。

池田会長はまた、「非人道性の観点からも、軍事的な有用性の面からも、核兵器が『使うことのできない兵器』としての様相を一層強めていく中で、軍事的競争の限界から生じた『人道的競争への萌芽』ともいうべきものが、一つの形を結ぶまでになってきています。」と述べている。

このひとつの例は、1996年にCTBTが採択された際に創設された国際監視制度IMS)によるさまざまな貢献の中に見て取ることができる。CTBTは未発効だが、世界中で核爆発を探知するためにCTBTO準備委員会によって設置されたIMSはすでに運用が開始されている、と池田会長は指摘している。

IMSは、いかなる核爆発も探知されることなく行われることがないようにするための独自で包括的な検証体制の重要な柱である。IMSは、完成すれば、地球上における核爆発の兆候を監視する337施設(5種類の観測所321ヶ所及び放射性核種に係わる公認実験施設16ヶ所)で構成されることになる。現在、施設の約9割が既に稼働を始めている。

SGI会長はIMSを称賛して、「先日(1月6日の)の北朝鮮の核実験をめぐる地震波の検知や放射性物質の観測のような本来の役割に加えて、最近では、世界中に張りめぐらされた監視網を活用して、災害の状況や気候変動の影響を幅広くモニターする活動なども行われるようになっています。」「例えば、海底地震の探知によって津波警報を早期に発令できるように支援したり、火山噴火の状況を監視して航空機のパイロットへの警戒情報につなげたり、大規模な暴風雨や氷山の崩壊を追跡するなど、“地球の聴診器”としての重要な役割を担ってきました。」と述べている。

池田会長はまた、「CTBTはまだ発効していないうちから命を救っている」とする潘基文国連事務総長の意見に賛同するとともに、「核軍拡と核拡散に歯止めをかけるための制度が、多くの生命を守るという人道的な面でも欠くことのできない存在となっている。」と述べている。

United Nations Office at Vienna/ Wikimedia Commons
United Nations Office at Vienna/ Wikimedia Commons

CTBTOの専門家たちがウィーンでIDNに説明したように、世界各地の監視施設が、CTBTOのウィーン本部にある国際データセンターIDC)に大量のデータを送信している。処理されたデータは、原データ、或いは分析した形で、CTBTOの各加盟国に送られている。

ラッシーナ・ゼルボ氏は、2013年8月にCTBTOの事務局長に就任する以前は、IDCのセンター長であった。ゼルボ氏は、世界的な核実験禁止検証機関としてのCTBTOの地位を確立し、条約の発効と普遍化に向けた取り組みを前進させることに尽力してきた。

池田会長はまた、核兵器禁止に向けた具体的な法的措置の問題を話し合うべく国連総会が設置した公開作業部会(OEWG)にも平和提言の中で期待を寄せている。OEWGは、核兵器なき世界実現のための法的措置と規範に関して作業をするための実質的な会期を開くことにしている。また、中間的な核リスク削減措置についても勧告を行う予定だ。

1月28日に開かれたOEWGの非公式会議には85か国と一部の市民団体が参加し、タイのタニ・トングファクディ大使が議長に選出されるともに、暫定議題が配布された。

OEWGは、(a)「核兵器のない世界の達成と維持」のために必要となる具体的かつ効果的な措置、法的条項、規範と、(b)多国間の核軍縮交渉を前進させるために有益なその他の措置に関する勧告をなすことを予定している。なお(b)については、例えば次の措置を含むが、それに限定されるものではない。

Photo: UN Geneva
Photo: UN Geneva

既存の核兵器に伴うリスクに関連した透明化措置/偶発的、計算違い、未承認、あるいは意図的な核兵器爆発のリスクの削減・排除のための措置/核爆発から生じる幅広い人道的な帰結の間の関係とその複雑さに対する認識と理解を高める追加的な措置。

UNFOLD ZEROによると、OEWGに対する支持が世界各国の議会や市民社会の間で強まっている。UNFOLD ZEROは、「核兵器なき世界」の達成に向けて国連に焦点をあてたイニチアチブや行動のための新たなプラットフォームである

6900以上の都市が加盟している平和首長会議はOEWGに対して公開書簡を送り、すべての国連加盟国(とりわけ核兵器保有国とその核の傘の下にある国々)に対して、核兵器なき世界への道を切り開くために、OEWGで建設的な論議に関与するよう求めた。

「核軍縮を求める人々」と「人類サバイバルプロジェクト」はOEWGの参加国に覚書を送り、即時に核のリスクを減らし、核兵器を禁止・廃絶するステップを同時に採る人道面、安全保障面からの強い要請があることに焦点を当てた。覚書は、包括的な核兵器禁止条約や、禁止先行条約、いわゆる「ビルディング・ブロックアプローチ(=ブロック積み上げ。包括的核実験禁止条約(CTBT)発効など、核軍縮のさまざまな具体的措置を同時並行的に実施するアプローチ)を含め、核兵器を禁止するさまざまなオプションを検討している。

覚書によると、単一のアプローチで問題を解決することは考えられず、あるアプローチによって作られた推進力が別のアプローチによる進展を加速することになる可能性があるという。

Witness in Hiroshima Film/ Katsuhiro Asagiri of INPS

池田会長はまた、希望の持てる最近の展開についても述べている。たとえば、「核兵器を忌むべきものとし、禁止し、廃絶する」ことを約束した「人道の誓約」を120か国以上が支持したことや、市民社会から核兵器廃絶への呼び掛けが強くなっていることを挙げている。また、8月に広島で開かれた「核兵器廃絶のための世界青年サミット」など、SGIが支援してきた信仰を基盤とした団体(FBO)」や若者による取り組みにも焦点を当てている。(原文へ

翻訳=INPS Japan

*この記事はラメシュ・ジャウラINPS事務総長が、1月25日から2月4日にかけて開かれたシンポジウム「平和と安全に向けた科学・外交」‘を取材したCTBTO: Acronym of the Year’シリーズの3本目。この記事を含む他のINPS関連記事はCTBTOオフィシャルウェブサイトでも閲覧できます。 

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|気候変動合意|「評価できるが完璧ではない」―太平洋の女性たち

【キャンベラIPS=キャサリン・ウィルソン】

太平洋島嶼諸国の女性たちは、パリで行われた国連気候変動条約第21回締約国会議(COP21)でなされた地球温暖化を抑制するための合意について、途上国と先進国との間の対立によってこれまで特徴づけられてきた問題で世界が連帯した前例なき瞬間であったと歓迎している。しかし、気候変動を自身の生存にとって最大の脅威とみなしている太平洋の小さな島嶼途上国にとっては、威勢のいい言葉に実際の行動が伴なわなければ、成功とは言えない。

「これは大きな前進で、太平洋島嶼諸国の先住民らが一致して行動や正義を要求しなければ、不可能だったと思います。私は将来に関して楽観視しています。」と語るのはキャシー・ジェトニル=キジナー氏だ。キジナー氏は、マーシャル諸島出身の気候問題に関する活動家・詩人で、この歴史的な会合にも出席した。

昨年12月にパリで開催された21回目の会議では、気候変動条約の締約国会議を構成する195か国プラス欧州連合(EU)の利害の間で集中的な協議と妥協が図られた。

太平洋諸島フォーラム事務局(PIFS)のメグ・テイラー事務局長は、「太平洋島嶼諸国が指摘したすべての問題が最終成果・文書に反映されたわけではありませんでしたが、気温上昇幅の1.5度までの抑制、個別要素としての損失・損害の問題、簡素化された気候変動対策資金への大規模なアクセスといった取り組みを追求する重要性が認識され、相当の進展がありました。」と語った。

中部太平洋にある小さな環礁国キリバス(人口11万人)の「キリバス気候アクションネットワーク」のクレア・アンテレア氏は、会議の成果は「評価できるが完璧ではない」と指摘したうえで、新たな気温抑制目標と気候対策資金拡大が特に重要だと語った。

世界気象機関(WMO)は、2016年の世界の平均気温は産業化以前の時代より1度上昇して、史上最も暑い年になると予想している。他方、太平洋島嶼諸国は、今世紀に起こりうるさらなる気温状況、海面上昇、海洋の酸化、サンゴの白化に備えている。多くの島嶼国家における最大海面上昇幅は0.6メートル以上になる可能性があると、「太平洋気候変動科学プログラム」は報告している。

Flag of Marshall Islands
Flag of Marshall Islands

マーシャル諸島では、海面上昇のために「ただの高波でも洪水を引きおこし、セメントや石で造られた防波堤を壊し、家々を完全に破壊します。また、海水の侵入によって運ばれた塩分は作物や食物をダメにするのです。」とジェトニル=キジナー氏は語った。

もっともうまくいった場合でも、キリバスやパプアニューギニアでは気温上昇が1.5度に達する可能性があるが、もっとも温室効果ガスの排出が多い場合、2090年までに2.9度も上昇するかもしれない。

地球温暖化が進めば、パプアニューギニアやソロモン諸島では常食であるサツマイモの生産高が2050年までに5割以上減少する可能性があるとアジア開発銀行では予測している。作物減少の重荷は、地域で作物を育て水を運んでくることに主たる責任を負う太平洋島嶼諸国の女性たちの肩にかかってくるだろう。

太平洋島嶼諸国は、昨年COP21に際して新たな気温上昇の上限1.5度への認知度を高めようとキャンペーンを張った。これは、島々が食物や水、土地の損失のためにますます住みにくい場所になっていく中で、将来の気候変動がもたらす衝撃を和らげ、強制的な移住を減らすためにきわめて重要だと彼らは論じている。

そして、先進国社会における見方の変化を示す兆候として、COP21第2週の間に出てきた「野心連合(Coalition of High Ambition)」において数多くの途上国・先進国がこの問題に関するキャンペーンで太平洋島嶼諸国に加わった。とりわけ、この連帯はメキシコ・ブラジル・ノルウェー・ドイツ・EU・米国等79か国によって示された。

Pacific Islands Map/ Pacific Islands Forum Secretariat
Pacific Islands Map/ Pacific Islands Forum Secretariat

地球の気温上昇を2度に抑制し、さらに0.5度の減少を「追求する努力をする」ことをめざした最終的なパリ協定は、この連合にとっての勝利といえよう。

「『1.5度』は会議開始前には交渉のテーブルにも上ってもいませんでした。だから、それが最終テキストに入ったと聞いた時、安心感で叫んでしまったほどです。とはいえ、文言があいまいな点は心配で、実際に1.5度を達成するには私たちが継続的に圧力をかける必要があります」とジェトニル=キジナー氏は語った。

Kathy Jetnil-Kijiner speaking at the Climate Summit/ ICNP
Kathy Jetnil-Kijiner speaking at the Climate Summit/ ICNP

しかし、太平洋島嶼諸国にとて、異常気象に対処するうえで既に直面している大きな諸問題がこれでなくなるわけではない。小規模な島嶼経済にとって、国際的な気候財源へのアクセスなしに、こうした諸問題への対応は不可能である。今年、島嶼諸国の指導者らは、途上国による気候問題への対応資金として2020年までに毎年1000億ドルを拠出するという公約を国際社会が守るように呼びかけている。この目標は2009年にコペンハーゲンで初めて設定されたものだ。これまでに拠出された金額に関する評価は分かれているが、世界銀行は4月、700億ドルという巨額の不足が生じているとしている。

テイラー氏は、「パリ協定第9条は、島嶼途上国にとって、資金提供は公的かつ無償でなければならないと定めており、2020年以後の気候財源には前向きな面がみられます。」と語った。「グリーン気候ファンド」(GCF)のような財源メカニズムについては、無償供与とすべきか低利子の融資とすべきかについて従来から議論がなされている。

アンテレア氏は、資金が効果的なものであるには、「簡潔な提供方法を通じて草の根の人びとに届くようなものである必要がある」と強調した。

PIFSのテイラー事務局長は、「最終協定で極端な気候と自然災害によって引き起こされる損失・損害が言及されたことは、気候変動の被害を受けている国々が重大な環境汚染を引き起こしている国々に対して責任や補償を訴えるための内容が入っていないにせよ、画期的な一歩となりました。」と指摘したうえで、「しかし、この決定によって、その他の方法を使って他の加盟国の責任を問う国家の法的権利が、減じられたわけではありません。」と語った。

Wikimedia Commons
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しかし、大きな希望となっているのは、排出削減目標を設定し、長期的な監視・再検討のプロセスにこれを付すという法的拘束力のある公約を各国がなした点にある。これにより、再生可能エネルギーへの世界的移行は加速され、地球温暖化ガスの最大の発生源である化石燃料の燃焼はますます困難になるであろう。

「私たちの目標に対して諸政府に責任を取らせるための重要なステップとして、5年ごとの再検討が必要です。」とジェトニル=キジナー氏は強調した。もし各国がこの目標をより良いものにする努力を怠ったならば、地球は、2.7度以上の破滅的な気温状況に向かうことになるかもしれない、と専門家らは結論づけている。

パリでの世界的な合意が示した高揚感が去ったのちに最も緊急となってくる問題は、この高邁な約束をいかに実行に移すのか、という点である。太平洋島嶼諸国の人びとの生活は、まさにその点にかっているである。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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次期国連事務総長選挙戦、本格化へ

【ウィーン/ニューヨークIDN=ジャムシェッド・バルーア】

今年進んでいく潘基文国連事務総長の後継者指名プロセスは、歴史的な次元を帯びている。ノルウェーのトリグブ・リー氏が初代国連事務総長になった1946年以来、計7人がこの国連のトップとして安全保障理事会に指名され、国連総会によって追認されてきた。

しかし今年は、国連総会議長と安保理議長が12月15日付の画期的な共同書簡の中で、全ての国連加盟国に対して、「男性だけではなく女性も、事務総長職の候補として検討するよう」呼びかけたことから、史上初めて国連事務総長の指名プロセスが全ての国連加盟国に開放されることになるだろう。

「この変化は、国連総会加盟諸国と『70億人のための1人』キャンペーンによる圧力が功を奏したものです。」と、「核兵器なき世界」の達成に向けて国連に焦点をあてたイニチアチブや行動のための新たなプラットフォームであるUNFOLD ZEROは語った。

UNFOLD ZERO

「70億人のための1人」キャンペーンは、世界各地の個人や、アムネスティ・インターナショナルアヴァーズフォーラム・アジアなど750以上の団体から構成されており、合計で既に1.7億人が参画している。「コフィ・アナン前国連事務総長のような著名人をはじめ、私たちの目的を支持する政府も増え続けています。」と同キャンペーンは述べている。

国連高官やその他の専門家らは、国連の指導者を選出するプロセスのさらなる改革を目指して、声を上げている。

次の事務総長に関する重要問題を話し合うため1月18日にパリ政治学院で開かれた「青年・リーダーサミット」で、多くの国連専門家や政治家、NGO関係者らが、次期国連事務総長は、一期限り(おそらくは7年間)の任期にすべきとの「70億人のための1人」キャンペーンの提案に賛同した。

これは、国連総会と安保理の議長が共同の呼びかけを行ってから、次期国連事務総長を巡る重要問題について初めて行われたパネル・ディスカッションだった。

「70億人のための1人」キャンペーンは、「アラブ連盟のアムレ・ムーサ元事務局長が『国連事務総長を大国の圧力から解き放つことになる』任期一期限り・更新なしの方がよいと訴えた」と、この討論をまとめている。

Amr Mohammed Moussa/ Guillaume Paumier
Amr Mohammed Moussa/ Guillaume Paumier

アルジェリアの元外相で国連事務総長の特別代表でもあるラクダール・ブラヒミ氏もまた、新国連事務総長の任期を一期に限るという考え方と、「70億人のための1人」キャンペーンへの一般的な支持を表明した。

任期を一期に限る案への支持を表明している他の国連専門家には、マルティ・アハティサーリ氏(フィンランド元大統領、国連調停者、エルダーズのメンバー)、ジャン=マリー・ゲーノ氏(「国際危機グループ」会長、国連平和維持活動元代表)、ブーク・イェレミッチ氏(国連総会元議長、セルビア元外相、国連事務総長の候補の一人といわれる)、シャウカート・アジズ氏(パキスタン元首相)らがいる。

次の国連の指導者にはどのような資質が不可欠か、との「70億人のための1人」からの問いに答えて、パネリストらは、強国に対峙する勇気のある候補者が成功する、と述べた。この資質は、現在のところ、「70億人のための1人」キャンペーンによる世論調査でトップを走る回答である。

ジャン=マリー・ゲーノ氏によれば、次の事務総長に必要な主な資質は、「リスクを取ることを恐れない人物である」ということだ。「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」のブルーノ・スタグノ・ウガルテ氏もこれに賛同して、「(国連事務総長には)真実を語る勇気を持った人間が必要です。国連安保理に対して、安保理が聞きたいことではなく、聞かなくてはならないことを話せる人物を」と語った。

「70億人のための1人」キャンペーンは、ブラヒミ氏が、次の指導者は「明日職を辞しても構わない」と言える人物でなければならず、「国連は、それを牛耳る大国ではなく、それを必要とする小国のために存在している」と語った、とまとめている。

アンゲラ・ケイン国連元事務次長は、人道的危機の問題について国連安保理に注意を促すことを国連事務総長に認めた国連憲章99条を利用すべきだと示唆したと伝えられる。

Angela Kane, UN High Representative for Disarmament Affairs, addresses the 2013 session of the Conference on Disarmament. Credit: UN Photo / Jean-Marc Ferré
Angela Kane, UN High Representative for Disarmament Affairs, addresses the 2013 session of the Conference on Disarmament. Credit: UN Photo / Jean-Marc Ferré

パネリストらはまた、次の国連指導者は、国連における前向きな変化の媒介者にならねばならないと論じた。刺激を与え、ヴィジョンを示し、よいファシリテーターになる。紛争におけるすべての関連主体を関与させる意思を持ち、紛争の発生前にそれを見通す。そして、権力のない人々のために声を上げ、「政治的に有能」で、安保理で対立する利害の橋渡しをする、そのような人物が望まれている。

「70億人のための1人」キャンペーンのある代表は、パネリストに対して、主に個人の能力よりも、むしろ様々な地理的地域の間で事務総長ポストを回していく、いわゆる「地域ローテーション」方式についても尋ねた。

指名は能力に基づくものでなければならないという同キャンペーンの主張に沿って、ブーク・イェレミッチ氏は、今回の選出は、指名を狙っている東欧グループに限られるべきではないと語った。「個人的に言えば、私は、全世界にプロセスを広げるべきと考えています。全ての人にチャンスが与えられるべきで、指名は能力に基づくものでなくてはなりません。」

アンゲラ・ケイン氏は、地域によるグループ枠は、事務総長選出プロセスにおいては、「撤廃するか、無視すべきであり」、任務に「最適な候補者」を選ぶことに注力すべきだと語った。ケイン氏は、既にアフリカ出身者(=ブトロス・ブトロス・ガリ氏とコフィ・アナン氏)に15年も国連の舵取り役を任せてきたのだから、「私たちは既に、地域ローテーションを無視するという前例を作り上げています。」と語った。 

「70億人のための1人」キャンペーンによれば、国連総会のモーエンス・リュッケトフトは、次の3人の候補者を正式に発表している。

スルジャン・ケリム:マケドニア出身。元外相、国連総会議長。現議長が12月15日に立候補を発表。

イゴール・ルクジッチ:モンテネグロ出身。副首相、外相。国連総会議長が1月15日に立候補を発表。

ヴェスナ・ピュジッチ:クロアチア出身。副首相、外相。国連総会議長が1月14日に立候補を発表。

「70億人のための1人」キャンペーンはこれに加えて、オンライン記事をもと他に24人の候補者がいることを明らかにしている。しかし、これらの人物の立候補は国連総会議長によって公的に承認されていないことから、「推測や伝聞の域を超えたものではない。」と同キャンペーンは述べている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【国連IDN=ロドニー・レイノルズ】

1945年8月の広島・長崎への原爆投下から70年以上にわたって、平和活動家たちは「核兵器なき世界」に向けた世界的なキャンペーンをたゆみなく続けてきた。

この問題について長期に亘って議論を展開してきた国連は、核軍縮に関する数多くの決議を毎年採択し続けている。

従って国連総会(193か国が加盟)が昨年12月に、2015年の会期を軍備管理・軍縮に関する57本の決議案を採択して締めくくったことは驚くにあたらない。これらの決議のうち、実に23本が核兵器に関するものであった。

しかし、「核兵器なき世界」という目標は、少なくとも現在の世代にとっては、依然として、遠い先の政治的幻影にすぎないのが現状である。

英米安全保障情報評議会(BASIC、本拠ワシントン)が先週発表した新たな調査報告書は、核兵器に関する議論の枠組みを再構成しようと試みたものだった。

数千発の核兵器を受け継ぐことになる次世代の政策立案者は、核軍縮をどのように見ているのだろうか? とりわけ、核兵器に関する政策が過去の世代の遺産にきわめて強い制約を受けているとしたらどうだろうか。

14か月に及ぶプロジェクトの結果をまとめたこの調査報告書は、「さらなる核不拡散・核軍縮をめざす次世代の政策決定者の間で革新的な発想を育み、より多くの人々を巻き込むうえでの出発点となる」ことが期待されている。

「核不拡散措置を強化し、核軍縮を通じてグローバルな安全保障を達成するという共通の責任について、人々の凝り固まった態度と進展がほとんど見られない現状を克服するには、革新的な思考が必要である。」と報告書は論じている。

このプロジェクトは3つの問いを提示している。第一に、核兵器に関する意思決定のサイクルにおいてもっとも影響力を持っているのは誰か、そして、この状況を転換することが可能か否か。

第二に、核に関する議論が、より注目を集める他の政策領域や運動とより緊密に統合されるとすれば、それはどの領域において、いかにして可能か。

第三に、新興の政策立案者や公衆、メディアと核兵器問題とがより強く響き合うようにするにはどうすればよいか、なぜそうなるのか。

調査は、米国と英国において次世代を担う青年層の参加者を対象に行った一連のワークショップの結果である。ワークショップは、課題や、関与のメカニズム、討論で出てくる可能性のある新たな次元、(核兵器と気候変動の関係といったような)他の領域との関係性を把握することを目的としたものであった。

従来、核問題が表の議論に出てくる際、思慮ある議論がなされることはめったになく、むしろ、特定の立場をナイーブだとかタカ派だとかレッテル貼りするために、浅薄で象徴的な議論として特徴づけられる傾向がある。

調査は、新たな声を議論に持ち込むことを呼び掛け、若者世代の政策立案者の登場を促す方法を試みている。

ストックホルム国際平和研究所(SIPRI)軍縮・軍備管理・不拡散プログラムの責任者タリク・ラウフ氏はIDNの取材に対して、「BASICの報告書は、核兵器に関する思考と言説が長年の間にいかに陳腐なものになって来たか、そしていかにして世界にとっての主要な危険リストから滑り落ちてきたかに焦点を当てたものです。」と語った。

「報告書は、核軍縮を通じて世界の安全保障を確保することについて、旧態依然とした態度で思考停止状態が続いている現状を打破する必要性から、将来における核兵器政策を、若者世代の安全保障と関心事に、より一層関係づけさせようとする意思に満ちています。結局のところ、こうした次代を担う若者世代は、数千発の核兵器と、数千トンの兵器級核物質を引き継ぐことになるのですから。」と、ラウフ氏は指摘した。

またラウフ氏は、「報告書の重要な内容のひとつは、英国・米国の若者は、自国の核兵器にそれほど関心を持ってはいないが、核保有国がさら増えたり、テロ集団に核が拡散することを懸念しているという点にあります。」と語った。

「この新世代は、お目出度いことに、(彼らが育った)ツイッターやフェイスブックのような仮想の世界には核兵器は何の関連ももってこなかったことから、核保有の現実に無知であり、その結果、関心を持っていないのです。しかし彼らは、事故か或いは非国家主体によるものかは別として、万一核爆発が不幸にも引き起こされることがあれば、否応なしに、眠りからたたき起こされることになりのです。」と、核不拡散条約(NPT)2015年運用検討会議の2014年準備委員会会合議長の元上級顧問を務めたラウフ氏は語った。

ラウフ氏はまた、「主流のメディアにおける核兵器に関する数少ない議論はたいてい、敵対国の[核の脅威に関する]恐怖を煽るものですが、一方で自国の核兵器や関連政策及び支出については無視しています。」と指摘した。

ICAN
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「この報告書は、若者に対して核兵器に関する教育や情報を早期の段階、まずは学校教育から提供し始めるべきだと勧告しています。この点については『核の瀬戸際における私の旅』と題する回顧録を最近出版したウィリアム・J・ペリー元米国防長官のような、核兵器政策に関する直接の経験を持つ人々の見解や、『博士の異常な愛情』『未知への飛行』『世界を救った男』のような映画に注目することが有益です。」ラウフ氏は語った。

My Journey at the Nuclear Brink by William J. Perry/ Stanford University Press
My Journey at the Nuclear Brink by William J. Perry/ Stanford University Press

「BASICの報告書は、核兵器の問題や人類の存亡に係わる地球規模の安全保障に関して若い世代を巻き込む方法を探るうえで重要な貢献となります。」と、国際原子力機関(IAEA、本部ウィーン)渉外政策調整部検証安全保障政策課長(2002~11)を務めた経験もあるラウフ氏は語った。

BASICのこのプロジェクトで利用された方法は例えば、フォーカス・グル―プの参加、ラウンドテーブルや専門家との対話イベントの開催、14~30歳の欧州の若者を対象にした核兵器に対する意識調査、デジタルツールを用いた関与、若者世代との対面的なネットワーキングなどがある。

報告書の重要な知見には、例えば、核兵器が修正主義国家(=現在の国際秩序に不満を持つ国家)や非国家主体の手に渡った場合に引き起こされる将来への不安を除けば、米英の若者達にとって、核兵器はあまり関連のないものだと見られている点が挙げられる。

「核兵器の問題は、(米英の若者達にとって)普段の意識や視野からは外れた、三面記事からも切り離された話題であり、日常生活との関連付けが難しいというだけではなく、政治や軍事の領域においてもあまり影響のない問題だと見られている。」

前の世代が核兵器に対して大いに有用性と恐怖を見出し、その恐怖を基づく複雑な抑止関係を確立したのに対して、次の世代は、その帰結は自分たちにほとんど関連のない問題だとみなしている、と報告書は結論づけている。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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