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「核兵器なき世界」推進のカギを握る2016年

【ベルリン/ニューヨークIDN/INPS=ジャムシェッド・バルーア】

セミパラチンスク核実験場の閉鎖25周年、すべての核実験を禁止する条約の署名開放、国際司法裁判所による全員一致の勧告的意見からそれぞれ20周年を迎える今年2016年は、重要な節目の年となる。

カザフスタンのヌルスルタン・ナザルバエフ大統領は3月2日、「これらの歴史的な出来事は、核兵器の世界実現に向けてすべての国の努力を結集する重要な機会となります。」と同国に駐在する大使とアスタナで開いた会合の席上で述べた。

Kazakh President Nursultan Nazarbayev addressing the UN General Assembly in September 2015 | Credit: Gov of Kazakhstan
Address by His Excellency Nursultan Kazakh President Nursultan Nazarbayev addressing the UN General Assembly in September 2015 | Credit: Gov of Kazakhstan

「ポリゴン」としても知られるセミパラチンスク核実験場(STS、あるいは「セミパラチンスク21」と呼ばれる)は、旧ソ連の主要な核実験場であった。ソ連は、1949年から89年にかけてセミパラチンスクで456回もの核実験を行ったが、地元住民や環境に及ぼす影響は顧慮されなかった。放射線被ばくの全貌は長年にわたってソ連当局によって隠蔽され、実験場が1991年に閉鎖されてようやく表に出るようになった。

1996年から2012年にかけて、カザフスタン、ロシア、米国の核科学者・技術者が密かに行った調査に基づいて、廃棄物となったプルトニウムを山岳地帯の地下トンネルに封鎖した。

包括的核実験禁止条約(CTBT)が1990年代にジュネーブで交渉され、1996年に署名開放された。183カ国が署名しており、うち164カ国は批准も済んでいる。その中には、フランス、ロシア、英国の3核兵器国も含まれている。

しかし、CTBTが発効するには、核技術を持つ44の特定の国が署名・批准を完了しなくてはならない。このうち、中国・エジプト・インド・イラン・イスラエル・北朝鮮・パキスタン・米国の8カ国がまだ締約国でない。インド・北朝鮮・パキスタンは署名すらしていない。

包括的核実験禁止条約機構(CTBTO、本部ウィーン)のラッシーナ・ゼルボ事務局長は、2006・09・12・16年と4回の核実験を強行した唯一の国である北朝鮮や、国際社会に挑戦するその他の国を含め、すべての国に対して、CTBTが発効して法的拘束力を持つものになるようにするために、あらゆる手段を尽くしている。

実際、カザフスタンと日本は、「誰によっても、地球の表面、大気圏、水中、地下のどこでも」核爆発を禁止するこの条約の発効を促進ために協力してきている。

国際司法裁判所(ICJ)が1996年に勧告的意見を出してから20年が経ったが、目指された目標の達成に向けてほとんど進展はない。

「厳格かつ効果的な国際管理の下でのあらゆる側面における核軍縮につながるような交渉を誠実に追求し妥結をもたらす義務が存在する」と、国連の主要な司法機関であるICJは1996年の勧告的意見の中で宣言している。

これが実行に移されなかったことが、マーシャル諸島共和国(RMI)がオランダ・ハーグにあるICJに訴えて、9つの核兵器国(米・露・英・仏・中・イスラエル・インド・パキスタン・北朝鮮)に軍縮義務を果たさせようとしている理由だ。

マーシャル諸島共和国は2014年4月に9つの核兵器国すべてに対する訴訟を提起したが、これは、世界の最高裁判所たるICJに対して持ち込まれた、核軍縮に関する初めての案件である。しかし、米・露・中・仏・イスラエル・北朝鮮はICJの強制的管轄権を受諾していないため、訴えを無視している。その結果、「強制管轄権」を受諾していたインド、パキスタン、英国のみが提訴を受け入れることとなった。

Photo: Proceedings instituted by the Republic of The Gambia against the Republic of the Union of Myanmar on 11 November 2019. Source: ICJ.
Photo: Proceedings instituted by the Republic of The Gambia against the Republic of the Union of Myanmar on 11 November 2019. Source: ICJ.

ICJは、3月7日に始まった公聴会を3月16日に終わらせた。今後は、ICJがこの件に関する管轄権を有するかどうかを決定することになっている。その決定が下されるまでに数か月はかかる見通しだ。

ICJの公聴会に先んじて、ジュネーブにおいて2月22~26日の日程でオープン参加国作業部会が開催されたが、核兵器軍縮における停滞を打破するには至らなかった。核武装国は審議に加わらなかったが、核兵器に依存する一部の国々(多くのNATO諸国や、日本、韓国、オーストラリア)は参加した。

こうしたことを背景に、カザフスタンのナザルバエフ大統領は、主要な核兵器国は核兵器削減の最初の模範を示すべきだと訴えた。

ロシアのタス通信はこう報じている。「核兵器の保有ではなく核実験の削減について議論することは、世界がテロへの恐怖心に捕われている時代にあっては時宜を得ており、核兵器国、とりわけ『核五大国』は、まずはじめに、この問題で模範を示すべきです。そうでなければ、これらの国々のみが核兵器を保有しその近代化を推し進める一方で、他の国々には核保有を認めないという結論を導くことになりかねません。もしそういうことになれば(現在のNPT体制は)『間違っている』ということになります。」

ICAN
ICAN

ナザルバエフ大統領は、さもなくば、「20の(核兵器保有まであと一歩の)「核敷居国」が自国の防衛のために核兵器保有を望むことになるでしょう。」が、それは「きわめて危険な流れです。」と指摘したうえで、「世界の全ての国が連帯して、この(=核軍縮の)方向に進むべきです。」と語った。

タス通信によれば、カザフスタンは「核不拡散体制の強化に一貫して貢献してきた」とナザルバエフ氏は述べたという。同国は、イラン核計画に関する国際協議で、合同行動計画の履行などの点で実質的な貢献をなし、それを支援してきた。

「カザフスタンは12月、イランが低濃縮ウランを除去したことへの代償として、同国に60トンの天然ウランを輸送した」とカザフスタン大統領は述べ、こう付け加えた。「これが、核不拡散体制の強化、原子力平和利用開発への諸国の正統な権利の履行、核燃料への非差別的なアクセスを確実にすることになると、確信しています。」

カザフスタンが核軍縮・核不拡散の頑強な推進役と広く見なされてきたのは、こうした取り組みのためだ。同国の最近の成果としては、国連総会での決議に加え、「核兵器のない世界の達成に関する普遍的宣言」がある。

ナザルバエフ大統領は、2010年4月にワシントンで開催された第1回核保安サミットにおいてこうした宣言の採択を提案した。2015年12月7日に採択された宣言は、カザフスタンが同年10月に提案した草案を基礎としている。35カ国が共同提出国になり、133カ国からの支持を得た。

今年の核保安サミットは、ワシントンDCで3月31日~4月1日の日程で開かれる。ホワイトハウス報道官は、今回のサミットの狙いについて、「同サミットは、進化する脅威に関する議論を継続し、高濃縮ウラン使用を最小化するために一致して取りうる措置に焦点を当て、脆弱な物質を確保し、核の密輸に対抗し、核テロの試みを抑止・探知・妨害するであろう。」と語った。

声明はこうも述べている。「米国は、包括的で、国際基準に則り、各国の核安全政策履行への信頼を築き、核兵器に使用可能な物質の世界的な備蓄の減少につながるような、グローバルな核安全の仕組みの強化を追求している。核安全のための基準を集団的に強化するための協力を進める前に核テロリズムが起こってしまうのを座して待つような余裕は、私たちにはない。」(原文へ

翻訳=IPS Japan

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核軍縮を審理する国際司法裁判所

【ハーグIDN=ラメシュ・ジャウラ】

マーシャル諸島共和国は、小国ながらも著名な国際法律家チームの支援と、「核兵器ゼロ」の実現を主唱する支持者を背景に、断固とした決意で、国連の主要な司法機関である国際司法裁判所(ICJ)に訴えて、9つの核兵器国(米・露・英・仏・中・イスラエル・インド・パキスタン・北朝鮮)に核軍縮の義務を果たさせようとしている。

核時代平和財団」の事業責任者リック・ウェイマン氏によれば、これは世界の最高裁判所に持ち込まれた核軍縮をめぐる初めての案件であるという。

マーシャル諸島共和国は2014年4月、9つの核兵器国すべてを提訴した。しかし、米国、ロシア、中国、フランス、イスラエル、北朝鮮はICJの強制的管轄権を受諾しておらず、自国に対する提訴を無視した。その結果、「強制管轄権」を受諾していたインド、パキスタン、英国のみが提訴を受け入れることとなった。

Rick Wayman
Rick Wayman

他方で、インド、パキスタン、英国のみが受諾している。

マーシャル諸島共和国は、核武装国は既存の国際法の下における核軍縮義務に違反していると主張している。これは、核不拡散条約(NPT)の締約国である5大国(米・露・英・仏・中)だけではなく、非NPT締約国である4ヶ国(イスラエル・インド・パキスタン・北朝鮮)についても慣習国際法の下で適用される。

国連の潘基文事務総長は、2009年に発表した核軍縮に関する5項目提案のなかで、「すべてのNPT締約国、とりわけ核兵器国は、核軍縮につながる効果的な措置に関する交渉を行う条約上の義務を果たすべき」だと訴えている。

ICJの公聴会に先んじて、(核兵器禁止に向けた具体的な法的措置の問題を話し合うべく国連総会が設置した)公開作業部会(OEWG)がジュネーブにおいて2月22~26日の日程で開催されたが、核兵器の軍縮に関する停滞を打破するには至らなかった。国際弁護団を率いてきたアムステルダムの弁護士であるファンデンビーゼン氏は、「私たちは基本的にICJに対して、被告の国々(インド、パキスタン、英国)に国際法の下での義務を果たし、あらゆる側面での核軍縮という、必要とされる結果を導くような交渉を行うよう求めているのです。」と語った。

とりわけ、マーシャル諸島共和国はICJに対して、核兵器の威嚇と使用に関する違法性が問われた1996年の勧告的意見のフォローアップを求めている。当時ICJは、核兵器の合法性に関する国際的議論が続くことは、国際秩序の安定を脅かすと判断し、「長らく約束されてきた完全核軍縮こそが、もっとも適切な手段であるかに見える」と述べて(第98段落)、批判に耐えられない(核兵器を巡る)当時の状況に終止符を打とうとした。

ICJは、3月7日に始まった公聴会を3月16日に終わらせた。今後は、ICJがこの件に関する管轄権を有するかどうかを決定することになっている。その決定が下されるまでに数か月はかかる見通しだ。

Phon van den Biesen/ Linked-IN
Phon van den Biesen/ Linked-IN

「法的観点からすると、この案件によって提示された問題は通常のものですが、前向きな結果が出れば、劇的に世界が変わることになるでしょう。」とファンデンビーセン氏は語った。

英国、インド、パキスタンは、マーシャル諸島共和国が提訴したこの案件におけるICJの「受理可能性(本案審議に進む可能性)と管轄権」に強く反対している。英国は、他のNPT締約国と同じく、条約第6条の義務を認識し、軍縮に向けて努力していると主張している。一方インドは、NPTは差別的であり、5大国にその核兵器の近代化を事実上許容していると主張している。

マーシャル諸島共和国を支持する国際弁護団は、ICJに対して、少なくとも「厳格かつ実効的な国際管理のもとで、(諸国には)全面的な核軍縮に向けた交渉を誠実に行い、その交渉を完結させる義務がある」とした1996年の勧告的意見を再び表明することを期待している。

マーシャル諸島共和国のビキニ環礁には、かつて核実験場があった。1945年に核攻撃の惨禍を被った日本の広島と長崎と並んで、マーシャル諸島共和国は、核兵器が引き起こす惨状を身近で目の当たりにした数少ない非核兵器国である。

在マーシャル諸島共和国の米大使館によると、米国政府は、悪名高い「キャッスル・ブラボー」実験も含めて、1946年から58年にかけて67回の核爆発実験を行っている。「ブラボー実験は爆発力15メガトンで、それまでの大気圏内核実験で最も強力な核装置を利用した。」とアンキット・パンダ氏が記している

1954年3月1日の「キャッスル・ブラボー」の規模は予想をはるかに上回るものであり、広範な放射性物質による汚染を引き起こした。放射性物質を含んだ降下物は、オーストラリアやインド、日本、果ては米国や欧州の一部にまで到達した。「ブラボー実験」は秘密実験として実施されたが、たちどころに国際的事件として知られるようになり、水爆装置の大気圏内実験禁止の声が高まることになった。

マーシャル諸島共和国のトニー・デブルム元外相は、幼少時代にマーシャル諸島で目撃した米国による核実験の様子について、「空全体が血のような赤色に染まり、島々は核実験によって蒸発しました。」と証言するとともに、「わが国民は、こうした核兵器による破滅的で回復不能な損害を被ってきました。私たちは、地球上の誰もこのような悲劇を二度と味わうことがないよう、戦い続ける決意でいます。」と語った。

Tony deBrum/ U.S. Department of State
Tony deBrum/ U.S. Department of State

提訴にも関わらず、マーシャル諸島共和国と米国は、1983年に締結され、米国にマーシャル諸島共和国の安全保障・防衛の責任を委ねた自由連合協定の下で、良好な外交関係を維持している。

マーシャル諸島共和国のトニー・デブルム元外相は、同国政府がICJへの提訴に踏み切った動機について、「私はこの目で核兵器がもたらす惨状を目撃し、核兵器が人類に対して再び使われることがあってはならないと確信しています。核兵器は人類の生存を無差別に脅かす存在であり、核保有国には核軍縮を追求し最終的には廃絶するよう義務づける基本的な規範が存在します。これが、我が国がICJに提訴した理由です。」と語った。

創価学会インタナショナル(SGI)の石渡一夫平和運動局次長は、「核兵器とその使用が招く結果について世論を喚起しなくてはなりません……。知識を得ることで、人々は、核兵器なき世界に向かってより効果的に動くことができるようになります。究極的には、民衆の犠牲の上にしか成り立たない安全保障をとるか、或いは、人間の安全保障を最優先した思考や行動をとるか、私たちの目前には2つの選択肢があることを理解する必要があります。」と語った。

池田大作SGI会長は、こうした考え方の論拠として、今年の平和提言「万人の尊厳 平和の大道」のなかで、「どの地域であれ、ひとたび核兵器が使用され、核攻撃の応酬が始まるような事態が起これば、どれほど多くの人々が命を奪われ、後遺症に苦しむことになるのか計り知れません。」と明言している。

なぜなら今日世界には、15000発を超える核兵器が存在しているからである。核兵器が使用されれば、山積する地球的な課題に対し、人類がどれだけ努力を尽くしていったとしても、すべて一瞬にして無に帰してしまいかねない。

「例えば、難民問題一つをとってみても、核兵器の爆発による影響は国境を超えて非人道的な被害を及ぼすだけに、6000万人という現在の世界の難民の数をはるかに上回る、数億もの人々が住み慣れた場所から逃れ、避難生活を強いられる恐れがあります。」と池田会長は記している。

事実、最近の研究によれば、核攻撃の応酬が局地的に行われただけでも、深刻な気候変動が生じることが予測されており、「核の飢饉」と呼ばれる食糧危機が起こるとともに、人間の生存基盤である生態系に甚大な影響が及ぶことへの警鐘が鳴らされている。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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核の危機に依然として無知で無関心な若者たち

UNIDOとCTBTO、2030年までのジェンダー平等目標への支持を表明

【ベルリン/ウィーンIDN=リタ・ジョシ】

国連工業開発機関(UNIDO)包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)準備委員会は、2016年の国際女性デーのテーマである「プラネット50-50平等な地球社会:ジェンダー平等を加速させよう」を実現するための必要な措置を採る決意を固めている。

UNIDOのリ・ヨン事務局長は「私たちは、女性の経済的エンパワメントに投資することは、ジェンダー平等や貧困根絶、包摂的な産業発展に向けた近道であると考えています。」と語った。

LI Yong, Director General/ UNIDO

リ事務局長はさらに、「女性は、ビジネスにおいては、起業家として、雇用主として、あるいは従業員として、また、家庭においては、介護労働を通じて、大きな経済的貢献をなしています。にもかかわらず、女性は依然として、圧倒的に貧困や差別、搾取の悪影響を受けています。」と指摘したうえで、「ジェンダー平等への取組みをステップアップするために、UNIDOは最近新たなジェンダー政策とジェンダー戦略を採択し、女性を経済的にエンパワーするための一連のプロジェクトを継続的に強化していいます。」と力説した。

一方CTBTOは、技術関連が中心の安全保障機関として伝統的に男性中心の領域であったことを認めたうえで、「CTBTOは、全てのスタッフレベルで女性の割合を5割にする目標に未だ到達していないが、この目標にむけて近年、ゆっくりではあるが着実な進展を遂げてており、既に女性の割合を全体で43%、専門職・幹部レベルで35%にまで高めている。」としている。

CTBTOのラッシーナ・ゼルボ事務局長は、核実験禁止に対する女性の貢献を強調して、「女性は、これまでもそして現在も、核実験禁止に向けた力を生み出しています。1996年の包括的核実験禁止条約(CTBT)とその前身の条約を推進した市民社会運動は、かなりの部分を女性の主導に依存してきました。」と語った。

ゼルボ事務局長はまた、乳児の歯に関する画期的な研究を通じて、ジョン・F・ケネディ大統領を説得し1963年の部分的核実験禁止条約の締結に導いた科学者であるルイーズ・ライス博士の決定的な貢献に言及した。

2011年1月に90歳で亡くなったライス博士は、数十万人の乳児の歯に関する調査を冷戦期に指導し、世界の指導者らに大気圏内での核実験禁止を認めさせる原動力となった。

ライス博士とその夫であるエリック(いずれも医師)は、「核情報に関する大セントルイス市民委員会」の創設メンバーであり、セントルイスにあるワシントン大学歯学部及びセントルイス大学と協力して、1959年に「乳児の歯調査」を立ち上げた。

その目標は、核実験からの放射性降下物が自然の食物連鎖の中に入り込み、最終的には人間の骨と歯に作用していることを証明することにあった。そしてこの調査は成功した。ライス博士はプロジェクトの指導者と目され、夫とともに、プロジェクトの実験室で他の科学者らと作業した。

ゼルボ事務局長は、「CTBTOで働く女性たちのことをとりわけ誇りに思っています。彼女たちは、CTBTOの監視局を築き維持するために世界の辺ぴな場所での活動をものともせず、疑わしい事象に関する大量のデータを分析するために長時間働き、分析と管理業務のための新たな手法を開発しています。私たちは、心から彼女たちに感謝とお礼を申しのべたい。彼女たちなしでは、CTBTOは、世界の検証センターという今日の役割を果たすことはできなかったでしょう。」と語った。

SDGs Goal No. 5
SDGs Goal No. 5

CTBTOでは、女性たちは、予算関係や企業との渉外の役割を務めるだけではなく、ネットワークインフラの技師や、国際監視制度(IMS)の責任者としても働いている。IMSは、完成すれば、核爆発の兆候を地球規模で監視する337施設からなるネットワークとなる。

女性スタッフには、放射性核種分析官も含まれる。この測定作業だけが、他の手法によって検知された爆発が、真に核爆発であったかどうかを確定する明確な指標を与えることになる。この作業には16の放射性核種実験室が関わっている。80ヶ所の監視局が大気中の放射性分子を測定しており、うち40ヶ所が希ガスを収集する。

Lassina Zerbo/ CTBTO
Lassina Zerbo/ CTBTO

ゼルボ事務局長によれば、「世界全体で言えば、男女間の真の平等を達成するにはまだまだ時間がかかる。数年前からの格差の縮小度合いは、予想に比して小さい。2015年の世界経済フォーラムは、ジェンダー格差を完全に解消するには2133年までかかると予測した。」と語った。

ゼルボ事務局長はまた、「国際女性デーは私にとって特に重要な意味を持っています。それは職業的な意味にとどまらず、3人の娘の父親として、そして、我が家を支るために自らの職業的キャリアを部分的に放棄した女性の夫として、この日に重要な意味あいを感じているのです。私にとって、国際女性デーを祝うことは、ジェンダー平等が共通の努力を通じて達成される前途に感謝し、配慮することを意味します。またこの日は、自分の母親が人生において出会う最初の女性であることをすべての男性に想起させる日でもあります。母親とは、私たちに思いやりの心をはじめ、物の見方や将来の展望といった生きていくうえで大切な資質を育んでくれる存在です。女性と男性は、ともに人類を構成する2つの翼のような存在であり、互いに協調して羽ばたいていかなければなりません。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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Marshall Islands Goes To ICJ

In March 2016 INPS-IDN reported the lawsuit proceedings the Republic of the Marshall Islands (RMI) had filed with the International Court of Justice (ICJ) in The Hague to hold the nine nuclear weapons states – U.S., Russia, UK, France, China, Israel, India, Pakistan and North Korea – accountable to their disarmament commitments. ICJ is the principal judicial organ of the United Nations,

World’s Highest Court Addresses Nuclear Disarmament

By Ramesh Jaura

THE HAGUE (IDN) – Aided by a team of eminent international lawyers and backed by staunch proponents of ‘nuclear zero’, the tiny but resolute Pacific Republic of the Marshall Islands (RMI) wants the International Court of Justice (ICJ), principal judicial organ of the United Nations, to hold the nine nuclear weapons states – U.S., Russia, UK, France, China, Israel, India, Pakistan and North Korea – accountable to their disarmament commitments.

These are the first contentious cases about nuclear disarmament to be brought before the world’s highest court, said Rick Wayman, Director of Programs at the Nuclear Age Peace FoundationJAPANESE TEXT VERSION PDF

The Marshall Islands filed lawsuits against all nine nuclear weapons countries in April 2014. But the U.S., Russia, China, France, Israel and North Korea do not accept the compulsory jurisdiction of the ICJ and are ignoring the cases brought against them. Only India, Pakistan and UK accept.

The RMI claims that the nuclear-armed nations are in breach of nuclear disarmament obligations under existing international law. This applies to the P5 (permanent members of the UN Security Council: U.S., Russia, UK, France and China) that are signatories to the nuclear Non-Proliferation Treaty (NPT) as well as to the four non-NPT signatories (Israel, India, Pakistan and North Korea) under customary international law.

In his 2009 five-point proposal, UN Secretary-General Ban Ki-moon had urged “all NPT parties, in particular the nuclear-weapon-states, to fulfil their obligation under the treaty to undertake negotiations on effective measures leading to nuclear disarmament”.

The public hearings at the ICJ were preceded by the Open Ended Working Group’s first meeting in February 22-26, 2016 in Geneva, which did not succeed in breaking the stalemate on nuclear weapons disarmament.

“We are, basically, asking the Court to tell the respondent states to live up to their obligations under international law and to conduct negotiations leading to the required result: nuclear disarmament in all its aspects,” said Phon van den Biesen, Co-Agent for the RMI and attorney at law in Amsterdam, who is leading the International Legal Team.

In particular, the RMI is asking the ICJ to follow up on its earlier findings in the Advisory Opinion it delivered in 1996 on the illegality of the threat or use of nuclear weapons. At the time the Court considered that the continued international debate on the legality of these deadly weapons threatens the stability of the international order.

It added that “the long-promised complete nuclear disarmament appears to be the most appropriate means” to put an end to that untenable situation. (para. 98, http://www.icj-cij.org/docket/files/95/7495.pdf)

The ICJ concludes on March 16 a series of public hearings that started on March 7 with a view to determining whether it has the authority to adjudicate the matter. Indications are that the Court will take several months to announce its decision.

“From a legal perspective, the issues presented by these cases are ordinary ones, but a positive outcome will, spectacularly, change the world,” said van den Biesen.

UK, India and Pakistan strongly object to the “admissibility and jurisdiction” of the ICJ in the case filed by the RMI. UK argues that in common with the other NPT parties, it acknowledges its obligation under Article VI of the treaty and work towards disarmament. India insists that the NPT is discriminatory, de facto allowing the P5 modernize their nuclear weapons.

The minimum the international lawyers supporting the RMI’s former Foreign Minister Tony de Brum, expect of the ICJ is to reiterate the ICJ’s non-binding 1996 advisory opinion on nuclear weapons, which said that states are legally obliged “to pursue in good faith and bring to a conclusion negotiations leading to nuclear disarmament in all its aspects under strict and effective international control”.

The RMI is home to the Bikini Atoll nuclear testing grounds. Along with Hiroshima and Nagasaki in Japan, which suffered atomic bombings in 1945, the RMI is one among few non-nuclear-armed states in the world to see the devastation of nuclear weapons at close range.

According to the United States embassy in the Marshall Islands, the U.S. government carried out 67 nuclear explosive tests between 1946 and 1958, including the infamous Castle Bravo test, which, at 15 megatons, involved the most powerful U.S. nuclear device ever to see atmospheric testing, writes Ankit Panda.

The size of the Castle Bravo test on March 1, 1954 far exceeded expectations, causing widespread radioactive contamination. The fallout spread traces of radioactive material as far as Australia, India and Japan, and even the United States and parts of Europe. Though organized as a secret test, Castle Bravo quickly became an international incident, prompting calls for a ban on the atmospheric testing of thermonuclear devices.

The RMI’s former Foreign Minister Tony de Brum narrated his experience witnessing U.S. nuclear tests in the Marshall Islands as a child: “The entire sky turned blood red,” he said, adding that islands were “vaporized” by nuclear weapons testing.

“Our people have suffered the catastrophic and irreparable damage of these weapons and we vow to fight so that no one else on earth will ever again experience these atrocities,” he added.

Despite the lawsuits, the Marshall Islands and the United States maintain good diplomatic relations under their 1983 Compact of Free Association, which grants the United States responsibility for the islands’ security and defence needs.

Explaining the RMI’s motivation to turn to the ICJ, Tony de Brum said: “I have seen with my very own eyes nuclear devastation and know with conviction that nuclear weapons must never again be visited upon humanity. Nuclear weapons are a senseless threat to survival and there are basic norms that compel those who possess them to pursue and achieve their elimination. This is the subject of legal action by my country at the International Court of Justice.”

Kazuo Ishiwatari, Vice Executive Director of the Peace and Global Issues at Soka Gakkai International (SGI) said: “We need to raise public awareness about nuclear weapons and the consequences of their use . . . Access to knowledge empowers people to work more effectively for a world without nuclear weapons. Ultimately, we need to see that our choice is between systems of national security premised on the suffering and sacrifice of ordinary citizens and ways of thinking and acting that prioritize human security.”

Explaining the rationale, SGI President Daisaku Ikeda declared in his 2016 annual Peace Proposal: “If nuclear weapons were to be used in a hostile exchange in any corner of the world, the impact – whether in terms of the number of lives lost or the number of people who would suffer aftereffects – staggers the imagination.”

Because in the world today, there are more than 15,000 nuclear weapons. Their use could render meaningless in an instant all of humankind’s efforts to resolve global problems.

“Taking the example of the refugee crisis,” wrote Ikeda, “the consequences of a nuclear explosion would cross national borders, in all likelihood creating a humanitarian crisis of far greater proportion than the current 60 million refugees. Hundreds of millions of people might find themselves fleeing for safety.”

In fact, recent research warns of the devastating impact of even a geographically limited nuclear exchange on the global ecology; the impact on the world’s climate would undermine food production, resulting in a “nuclear famine”. [IDN-InDepthNews – 13 March 2016]

IDN is the flagship of International Press Syndicate.

Photo: ICJ

インド・中国は「アジアの世紀」を忘却から救う

【北京IDN/INPS=シャストリ・ラマチャンドラン】

新千年紀の最初の10年で一般的となった言葉のひとつに「アジアの世紀」がある。この用語は、約束と前途、そして目標を表したものだが、かつては楽観的な意味合いを持って使われていた。暫くの間、「アジアの世紀」というフレーズは、1980年代における「21世紀」と同様に、20世紀に抑圧された人類の大半が被った貧困や剥奪、辛苦とはかけ離れた、新たな人生や暮らし、発展といった刺激的な将来の展望を喚起する言葉だった。

しかし21世紀が実際に訪れた時、こうした憧れにも似た期待の多くは、既に消え去ってしまっていた。同様に、「アジアの世紀」という掛け声も、この言葉が呼び起こした願望とともに鳴りを潜めてしまった。今や、とりわけ北京やニューデリーといった首都では、この言葉はあまり使われなくなった。

この数年、アジアに影響を及ぼす有力者らは、「アジアの世紀」という言葉とそれに付随していた約束を捨て去ってしまったかのようだ。もし今でも「アジアの世紀」という希望を抱いている人がいるとすれば、彼らはそれを隠そうとする。「アジアの世紀」を求めて努力する人々ですら、空虚な決まり文句と化したその言葉を口にすることをやめ、とりわけインドや中国などのアジアの貧しい大衆を嘲っているのである。

「アジアの世紀」は、国によって様々に異なった意味合いを持つ。しかし、それは、「アメリカの世紀」の終わりを意味し、西から東へとシフトする世界の勢力の変化を意味するということでは、一般的な合意がある。そして、世界の権力の中心が西半球から東半球に移るとき、中国やインドいったアジアの大国は、新たな国際秩序の2つのエンジンとして登場することになるだろう。

2008年のグローバル金融危機(西側資本主義はパニックに陥り、インド経済は下降状態から反転し、中国は30年に亘るターボ成長の波に乗った)は、「アジアの世紀」という野望をさらに煽った。

アジアインフラ投資銀行(AIIB)が開設され、国際通貨基金(IMF)は中国通貨の「元」を、米ドル、英ポンド、ユーロ、日本円に並ぶ第5の通貨としてSDRバスケットに加えたが、国際機関とりわけ支配的な金融機構の改革に向けた、革新的な動きは生じていない。

しかし、国際構造と同様に、大陸諸国、とりわけインドや中国が「アジアの世紀」を実現するための効果的なステップを取ることを妨げている深刻な内部からの挑戦が存在する。中国・インドは、季節的な経済の上昇・下降、市場、投資サイクル、通貨といったことに目を奪われ、貧困と不平等という両国が直面している共通の中心的な課題を見失いがちだ。

これは、アジア経済が直面している難題でもある。アジア経済は、国の内部、国々の間、そして、東南アジア諸国連合(ASEAN)のような繁栄した地域フォーラムの内部にすら存在する格差によって、悪化している。

今世紀の初めの15年でインド国内の不平等は拡大した。経済成長が利したのは、創られた富のほとんどを手にしたトップの1%だけである。世界屈指の金融企業であるクレジットスイスによれば、インド人口のこのトップ1%が、インド全体の私有財産のうち53%以上を保有している。1250万人のトップ1%のなかで、その5分の1にあたる0.2%の人びとだけで、インドの富の40%以上を保有している。

2000年にはトップ1%の富は36.8%だった。『クレジットスイス・グローバル財産データブック2015』によると、2000年には、世界のトップ1%が世界の富の48.7%を保有していたことに比べれば、インドの不平等度は小さかった。しかし、この15年間で、トップ1%の富は16.2%増えて、53%にまでなった。対照的に、世界全体では、トップ1%の富はこの間に1.3%しか増えていない。

世界の全地域を見渡せば、インドの最富裕層1%の富の保有率は世界で最大である。他方で最貧困層はほとんど保有していない。下の50%(6億2500万人)はインドの富の4%しか保有していない。トップ10%だと76%の富を保有しており、人口の大多数には24%しか残されていない。

この数値によって、インドの経済成長はトップ1%をさらに富ませていることがわかる。2000年から2015年の間に生み出された2兆3000億ドルのうち、トップ1%は1兆4000億ドル(61%)を手にし、次の9%の人口が5000億ドル(21%)を手にした。90%は残りの4000億ドル(18%)を手にしたにすぎない。

広がる貧富の格差は、社会・政治の安定にとって脅威となる。インドのような国の内部の格差や、先進的なアジアと発展途上的なアジアとの間の格差が大きく縮まらないかぎり、「アジアの世紀」などありえない。

「アジアの世紀」を目指すということは、アジアの大国が自国やアジア全体における貧困を無視して、むしろ自らを危機にさらすことを意味していた。インドや中国、国際組織と同じように、ノーベル賞受賞者のアマルティア・セン氏やマーサ・ヌスバウム氏、ジョセフ・スティグリッツ氏といったオピニオン・リーダーたちがこの問題に取り組もうとしていた時代があった。

インドや中国における極度の貧困を近い将来になくしていこうという言説は、目に見えるものであり、行動を促すものであった。また、この時代の重要な問題として注目されてもいた。しかし、もはやそんな時代は過ぎた。

今日、貧困や不平等に対する闘いを維持しようとの空気は存在しない。中印両政府は、発展するアジアの利益のために協力するという新たな可能性を阻害するこの貧困・不平等の問題に対処することが求められている。世界の力の中心を西から東に移すために、インドと中国は手をつなぎ、ともに進まねばならない。そのためには信頼感を増す必要があるが、両国間の不信を解消しようとの最近の取り組みは成功していない。

By The original uploader was Bazonka at English Wikipedia - Image based on File:BlankMap-World6, compact.svg, CC BY-SA 3.0
By The original uploader was Bazonka at English Wikipedia – Image based on File:BlankMap-World6, compact.svg, CC BY-SA 3.0

両国首脳間では友好ムードがあり、相互訪問も成功し、貿易も拡大しているにもかかわらず、緊張関係と相互不信は繰り返し現れており、世界で最も人口の多いこの両国における貧困撲滅に向けた共同の取り組みは進んでいない。

中印両国は、すぐにでも、各々の国内とアジア全域において貧困を撲滅するために、二国間の紛争を解決し信頼を醸成する必要がある。両国がこのグローバルな責任を引き受けたときにのみ、アジアの「ビッグ2」が「アジアの世紀」を導く第一歩を踏み出したと言えるだろう。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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韓国がグローバルな場で躍進へ

【ニューヨークIDN/INPS】

国連安保理による4本の決議がありながら、北朝鮮による核の野望を止めることはできていない。運搬手段とともに実質的な核能力を保有しようという北朝鮮の強固な野望は、「水爆」実験の発表と、2月初めのロケット発射の成功という形で現れた。

こうしたことを背景に、大韓民国はその地歩を固め、とりわけ北朝鮮問題に関して国際舞台で主要なプレイヤーとして外交活動を活発化しつつある。

2006年以来、北朝鮮は核実験を4回、ミサイル発射を6回行い、朝鮮半島をめぐる情勢はこれまでになく不安定化している。

韓国国連代表部の次席代表を務めるハン・ジョンヒ大使は、INPSとのインタビューで、「協議のための協議は、もはやだれにとっても受け入れ難いものです。これは、北朝鮮による体系的かつ意図的な国連安保理決議の違反であり、明確に国際社会を侮辱しあざ笑うものです。厳しい対応を必要とする、異常な状況であります。」と語った。

「北朝鮮の軍事化と核能力は10年前よりもかなり進んでいます。私たちは、北朝鮮に対して、挑発を止め、核兵器計画を放棄する以外の選択はないことを悟らせるような強力で実質的な制裁を望んでいます。」とハン大使は語った。

2月7日の(北朝鮮が主張する)宇宙衛星発射に対して国連安保理は、「これは国際の平和に対する脅威である」として緊急会合を招集した。国連の潘基文事務総長は、国連決議に対する「嘆かわしい違反」であるとこれを非難した。

「安保理は(北朝鮮に対して)強力かつ明確なメッセージを送る点で連帯すべきです。なぜなら、『一般的な』制裁措置では、北朝鮮をますますつけ上がらせ、核実験やミサイル発射を続けさせることになってしまうからです。」とハン大使は語った。

また、2月9日から10日にかけてニューヨークで安保理理事国代表や国連事務総長と相次いで会談した韓国の尹炳世(ユン・ビョンセ)外交部長官は、強力で効果的な安保理の制裁決議の必要性を強調して、「この決議は北朝鮮に第5、第6の核実験を行わせないような、最終的な決議でなければなりません。」と語った。

北朝鮮の長距離ロケット発射実験に対して、韓国政府は2月10日、朝鮮半島の軍事境界線に沿った非武装地帯から10キロ(6マイル)北にある特別行政区域「開城工業団地」の閉鎖措置を採った。

ハン大使は、「開城工業団地は、これまで15年以上にわたって南北関係を歴史的に象徴する存在であり、北朝鮮経済に年間1~1.2億ドルをもたらしてきました。」と説明した。

「125の中小企業すべてを閉鎖するという決断は容易なものではありませんでした。しかし私たちは、開城工業団地で生まれるいかなる資金も大量破壊兵器の開発に向かうことがあってはならないと考えたのです。」とハン大使は強調した。

これにより、5万4000人以上の北朝鮮労働者が職を失い、直近の家族も含めると20万人が経済的打撃をうけることになる。

一方、北朝鮮の金正恩第一書記は、韓国の経営側の人員すべてに対して開城からの即時退去とすべての高価な備品の放棄を要求したため、両国関係は火に油が注がれることになった。

しかし、半島の緊張状態にもかかわらず、韓国政府は、南北の統合を期待しつつ、韓国と東アジア地域全体での安定と平和、経済的繁栄を維持する主導的な役割を積極的に担おうとしている。

ハン大使は、「韓国は、政策により自国を主要な援助受入国から主要なドナー国へ変貌させることに成功したグッドガバナンスの歴史的な模範といえるでしょう。」と指摘したうえで、「『セマウル(新しい農村)運動』として知られる韓国の開発プロセスは、政治・経済の両面で成功を収めてきました。今日、私たちは世界の全ての国々と、この開発モデルから得た経験を共有したいと考えています。」と語った。

最近、韓国は、持続可能な開発(SDGs)のための「アジェンダ2030」に従って、持続可能な開発や環境保護、国際協力を保証するイニシアチブを立ち上げるなど、積極的にリーダーシップを発揮してきた。

2013年、朴大統領は、いわゆるアジア・パラドックスを乗り越えて近隣諸国(韓半島とロシア、モンゴル、中国、日本、米国)間の持続可能な平和と協力を促進する北東アジア平和協力構想(NAPCI)を立ち上げた。

2015年NAPCI報告によると、このイニシアチブは「信頼外交」(Trustpolitik)の主要要素になっている。つまり、地域における紛争と不和の構造を対話と協力の秩序に置き換えようとする韓国政府の将来志向の取組みである。

2014年に提案された別のプロジェクトは「ユーラシア・イニシアチブ」と呼ばれるもので、東アジアや中央アジア、ロシア、南コーカサスの間でのエネルギー部門の経済協力を目指したものである。

同計画では、同地域のガス・石油パイプラインの新たなエネルギーネットワークと、釜山(韓国)を北朝鮮・ロシアを経由してロンドンまでつなぐ「シルクロード・エクスプレス」(SRE)を構築する予定だ。

さらに、2015年7月、韓国は国連経済社会理事会の議長国に選ばれた。議長職は今年7月まで続く。

韓国の呉俊(オ・ジュン)国連大使は、経済社会理事会の議長選出にあたって、「我が国が経験してきた開発は、世界の何処でも再現することができると信じています。経済社会理事会は、それを必要とする地域に対して、経済開発・社会開発を実現する手助けをしていく。」と語った。

ハン大使は、今年7月、国連本部の経済社会理事会の傘下で、韓国が主催して、「アジェンダ2030」採択以降初めて、SDGsの実行状況確認とフォローアップのためのハイレベル政治フォーラム(HLPF)を開催すると説明した。

「韓国はフォーラムの開催を主導するだけではなく、SDGsが履行される今後15年に関する、持続可能な開発やジェンダー問題、女児教育、不平等、グッドガバナンスなどの問題について議論する舞台を整えることになろだろう。」とハン大使は付け加えた。

韓国はまた、アジアでの開催は今回初となる「国連広報局・NGO会議(第66回年次会合)」が5月30日から6月1日まで同国の慶州市で開催されることから、国際舞台における役割を強化することになるだろう。

1500人以上の代表が集まる、世界最大のNGO集会として知られる同会議には、市民社会、国連関係者、学者、政策専門家、議員、民間部門からの参加があり、今回は「世界市民教育」について討論されることなっている。

「国連の主要なハイレベルイベントが教育や世界市民概念に焦点を当てるのは初めてのことです。」とハン大使は語った。

「今日、気候変動や過激主義、不寛容など、数多くの地球規模の難題が山積しています。従って私たちは、教育を通じてこの複雑な諸問題を理解させ、意識を喚起し、相互の尊重を高め、人種に関わらず多様性を認め、人間の尊厳を取り戻すべく、人々を教育していく必要があるのです。」

世界市民教育は、その他あらゆる種類の教育を包含する教育である。「来たる国連広報局・NGO会議」は、『アジェンダ2030』の17項目の目標を達成するために、あらゆるステークホールダーが一堂に会し、責任と戦略について討議する機会となるでしょう。」とハン大使は続けた。

平等や尊敬、透明性の理想は、安全保障理事会の抜本的な改革を求める「コンセンサス連合」(UfC)を韓国の国連代表部が率いているという事実にも表れている。

「UfCは、いかなる国でも、建設的な役割や貢献に基づいて安保理の理事国に立候補できる、透明で、応答性があり、民主的で包摂的な改革を求めています。拒否権をもった常任理事国の数を拡張・拡大することは、国際社会の現在及び将来の状況を考えると、適切な解決策ではありません。」とハン大使は説明した。

「拒否権を持った常任理事国は、2度の世界大戦の間の20年に国際社会が経験した危機の教訓を基礎とした、第二次世界大戦後における独特で特別な政治的取り決めを反映している。これは、冷戦期の五大国(英国・フランス・中国・ロシア・米国)の間の統一を確保することを目的としたものでしたが、70年経った今、同じ概念を保持したまま同じ枠組みを拡大することは現実的ではありません。」

The Security Council in New York plays a crucial role in peacekeeping/UN Photo/Eskinder Debebe
The Security Council in New York plays a crucial role in peacekeeping/UN Photo/Eskinder Debebe

UfCとは逆に、ドイツ・日本・ブラジル・インドからなるG4や、「エズルウィニ・コンセンサス」として知られるアフリカ諸国から成るグループのようなその他のグループは、非常任理事国枠の拡大とともに、拒否権を持つ常任理事国枠の拡大を求めている。

ハン大使によれば、UfCの主な考え方は、最初に安保理入りした際に成果を残せた国が再選される機会を提供するというものである。

「『長期にわたって再選されうる理事国の地位』という概念は、公正かつ民主的な代表、そして、アカウンタビリティを基礎とした平等な機会という、国連憲章の原則にのっとった適切な方策だ思います。それはまた、国の権力構成や影響力が急速に移り変わる現在の国際政治環境を反映したものでもあります。」とハン大使は強調した。

UfCの斬新な側面は、安保理改革が普通の人々の日常生活に影響を与える可能性があることから、安保理の活動をめぐって他の主体を関与させようとの意志を持っていることにある。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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SDGs達成のため、韓国の「セマウル(=新しい農村)運動」から学ぶ

軍事的緊張を高める北朝鮮の核実験

|視点|核時代の“終焉の始まり”となるか?(池田大作 創価学会インタナショナル会長)

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【東京IDN=池田大作

Daisaku Ikeda/ Photo Credit: Seikyo Shimbun
Daisaku Ikeda/ Photo Credit: Seikyo Shimbun

昨年に開催されたNPT再検討会議は、核保有国と非保有国との溝が埋まらないまま、閉幕しました。広島と長崎への原爆投下から70年を迎えた節目に、NPT加盟国の総意としての最終合意が実らなかったことは、極めて残念に思います。

それでも、希望が完全に失われたわけではありません。重要な動きがさまざまな形で起こっているからです。その動きとは、①核問題を解決するための連帯を誓う「人道の誓約」の賛同国が拡大していること、②昨年末の国連総会で事態の打開を求める意欲的な決議がいくつも採択されたこと、③市民社会で核兵器の禁止と廃絶を求める声が高まっていること、です。

昨年の国連総会では、核兵器のない世界を実現し維持するための、効果的な法的措置について実質的な議論をする、「公開作業部会」の開催を求める決議が採択されました。

決議では、公開作業部会を「国際機関や市民社会の参加と貢献を伴って招集すること」と併せ、「全般的な合意に到達するための最善の努力を払うこと」が明記されています。

先月、ジュネーブで初めてこの公開作業部会が開催され、重要な議論が交わされました。今後、5月と8月の会合でも建設的な議論が積み重ねられ 公開作業部会が「核兵器のない世界の達成と維持」のために必要となる効果的な措置をリストアップし、国連のすべての加盟国が取り組むべき、共同作業の青写真を浮かび上がらせることができるよう、切に希望するものです。

核兵器の威嚇と使用に関する違法性が問われた国際司法裁判所の勧告的意見において、NPT第6条の規定を踏まえ、「すべての側面での核軍縮に導く交渉を誠実に行い、かつ完結させる義務が存在する」との見解が示されてから、今年で20年を迎えます。にもかかわらず、すべての保有国が参加する形での誠実な交渉が始まっていない現状は、極めて深刻であるといえましょう。3回にわたる国連の公開作業部会での議論を機に、核兵器禁止条約の締結に向けた機運を本格的に高めていくべきです。

International Court of Justice; originally uploaded by Yeu Ninje at en.wikipedia
International Court of Justice; originally uploaded by Yeu Ninje at en.wikipedia

いまだ世界には、維持するだけで年間1000億ドル以上を費やす、1万5千発以上もの核兵器が存在します。それらは、貧困や飢餓の克服、気候変動への対応など、山積する地球的な課題に対しどれだけ努力を尽くしていったとしても、すべて一瞬にして無に帰してしまう元凶となりかねません。どの地域であれ、たった一発が爆発するだけで、その影響は想像を超えたものです。

こうした破滅的な末路が避けられず、計り知れない犠牲を世界中に強いることになったとしてもなお、核兵器によって担保しなければならない国家の安全保障とは一体何でしょうか。国を守るといっても、多くの人々に取り返しのつかない被害を及ぼす結果を前提に組み上げるほかない安全保障とは、そもそも何を守るために存在するのでしょうか。それはつまるところ、本来守るべき民衆の存在を捨象した安全保障になりはしないでしょうか。

残念ながら、地球上に核兵器が存在する限り、核抑止力を保持し続けるしかないといった考え方が、核保有国やその同盟国の間に、いまだ根強くあります。

しかし、核抑止力によって状況の主導権を握っているようでも、偶発的な事故による爆発や誤射の危険性は、核兵器を配備している国の数だけ存在するのが現実であるといってよい。その脅威の本質から見れば、核兵器の保有が実質的に招いているのは、自国はおろか、人類全体の運命までもが〝核兵器によって保有されている〟状態ではないでしょうか。

核問題の解決は、核兵器に基づく安全保障の奥底にある、「目的のためには手段を選ばない」「他国の民衆の犠牲の上に安全や国益を追い求める」「将来への影響を顧みず、行動をとり続ける」といった現代文明に深く巣食う考え方を乗り越える挑戦でもある、と私は考えてきました。

私どもSGIは、昨年のNPT再検討会議で発表された「核兵器の人道的結末に対する信仰コミュニティーの懸念」と題する共同声明に加わり、キリスト教、ユダヤ教、イスラムなどの人々とともに、次のようなメッセージを発信しました。

「核兵器は、安全と尊厳の中で人類が生きる権利、良心と正義の要請、弱き者を守る義務、未来の世代のために地球を守る責任感といった、それぞれの宗教的伝統が掲げる価値観と相容れるものではない」

この共同声明と響き合うのが、昨年のNPT再検討会議への提出以来、賛同国が広がっている「人道の誓約」です。「核兵器を忌むべきものとし、禁止し、廃絶する努力」を、国際機関や市民社会などと協力して進める決意を明記した誓約には参加国数は、国連加盟国の半数を優に超える126か国が参加するまでになっています。

Dr. Emily Welty from WCC delivers the interfaith joint statement at the NPT Review Conference. Credit: Kimiaki Kawai/ SGI
Dr. Emily Welty from WCC delivers the interfaith joint statement at the NPT Review Conference. Credit: Kimiaki Kawai/ SGI

核兵器は過ぎ去った時代の遺物であるのみならず、核態勢の維持のために、莫大な経済資源や人的資源を費やし続けているという意味で、“地球社会の歪み“を半ば固定化してしまう要因となっているともいえるものです。

今回、ジュネーブで交わされた議論を、核時代の“終焉の始まり”とするために、市民社会は「人道の誓約」に賛同する国々とともに声を合わせ、平和と人道の新しい潮流を地球的広がりとするべき時が来ているのです。(原文へ

池田大作(1928—)は、仏教団体・創価学会インタナショナル(SGI)会長であり、戸田記念国際平和研究所の創立者。30年以上前から毎年、平和提言を発表し、核兵器の廃絶などを訴えている。

INPS Japan

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The Beginning of the End for Nuclear Weapons?

By Daisaku Ikeda * | IDN-INPS Viewpoint

TOKYO (IDN | INPS) – Last year’s NPT Review Conference closed without bridging the chasm between the nuclear-weapon and non-nuclear-weapon states. It was deeply regrettable that no consensus was reached at this significant juncture marking the seventieth anniversary of the atomic bombing of Hiroshima and Nagasaki.

Hope still remains, however, thanks to a number of important developments. These include: the growing number of countries endorsing the Humanitarian Pledge, a commitment to work together for the resolution of the nuclear arms issue; the adoption in December 2015 by the UN General Assembly of several ambitious resolutions calling for a breakthrough; and rising calls from civil society for the prohibition and abolition of nuclear weapons.

Last year, the UN General Assembly adopted a resolution setting up an Open-ended Working Group (OEWG) to engage in substantive deliberations in pursuit of concrete and effective legal measures to achieve and maintain a world without nuclear weapons. The resolution stated that the OEWG would convene “with the participation and contribution of international organizations and civil society representatives” and that participants should make their best efforts to reach general agreement.

I strongly hope that the OEWG, which held substantial discussions during its first meeting in Geneva February 22-26, will continue to engage in constructive deliberations at its next sessions scheduled for May and August to identify effective measures necessary for the achievement and maintenance of a world without nuclear weapons, something which must be the joint undertaking of all UN member states.

Twenty years have passed since the International Court of Justice (ICJ) issued its Advisory Opinion on the Legality of the Threat or Use of Nuclear Weapons. This states: “There exists an obligation to pursue in good faith and bring to a conclusion negotiations leading to nuclear disarmament in all its aspects under strict and effective international control.”

However, good faith negotiations involving all the nuclear-weapon states have not even begun. This is an intolerable state of affairs. Leveraging the deliberations at the OEWG sessions, we must build global momentum for a treaty outlawing nuclear weapons.

In the world today, there are more than 15,000 nuclear weapons that cost more than US$100 billion per year to maintain. Their use could render meaningless in an instant all of humankind’s efforts to resolve global problems such as poverty, hunger and climate change. If even one were to be detonated anywhere in the world, the impact would be beyond imagining.

What then is the point of national security guaranteed by nuclear weapons, the use of which would inevitably produce catastrophic consequences and result in immense suffering and sacrifice throughout the world? What exactly is protected by a security regime premised on the possibility of inflicting irreparable damage and devastation on vast numbers of people? Is this not a system in which the true objective of national security—protecting people and their lives—has in fact been forsaken?

Unfortunately, the nuclear-weapon states and their allies adhere to the idea that they have no choice but to maintain a nuclear deterrent as long as these weapons exist. They might believe that possessing a nuclear deterrent puts them in control. Yet in reality, the dangers of an accidental detonation or launch multiply in proportion to the number of nuclear weapons and states possessing them.

Seen from this perspective, the nuclear weapons possessed by a state actually hold the fate of not only that country but of all humankind in their grasp.

Dr. Emily Welty from WCC delivers interfaith joint statement at the NPT Review Conference 2015. Credit: Kimiaki Kawai/ SGIHidden in the depths of a security regime based on nuclear weapons is the toxic way of thinking that permeates contemporary civilization: the pursuit of one’s own objectives by any means; of one’s own security and national interest at the expense of the people of other countries; and of one’s own immediate goals in disregard of the impact on future generations. I believe that resolving the nuclear weapons issue means challenging and overcoming this way of thinking.

At the 2015 NPT Review Conference, members of the Soka Gakkai International joined with individuals from Christian, Jewish, Muslim and other faith traditions in submitting a Joint Statement of faith communities’ concerns about the humanitarian consequences of nuclear weapons.

It reads in part: “Nuclear weapons are incompatible with the values upheld by our respective faith traditions – the right of people to live in security and dignity; the commands of conscience and justice; the duty to protect the vulnerable and to exercise the stewardship that will safeguard the planet for future generations. . .”

This statement resonates with the Humanitarian Pledge that was submitted to the 2015 NPT Review Conference. Well over half the UN member states – 126 countries – have now added their voices to the Humanitarian Pledge’s call to cooperate with all relevant stakeholders in initiatives designed to stigmatize, prohibit and ultimately eliminate nuclear weapons.

Nuclear weapons are the product of a bygone age. By continuing to pour economic and human resources into maintaining these weapons, we risk permanently entrenching the grotesque inequalities of our world.

Joining our voices to those of countries supporting the Humanitarian Pledge, civil society must build broader global momentum for peace and humane values, so that the deliberations that have started in Geneva mark the beginning of the end of the nuclear age.

*Daisaku Ikeda (1928- ) is president of the Soka Gakkai International (SGI) Buddhist association and founder of the Toda Institute for Global Peace and Policy Research. He has been a long-term advocate of nuclear weapons abolition; a constant theme in his annual peace proposals for over 30 years. His 2016 proposal is at http://www.daisakuikeda.org/sub/resources/works/props/2016-peace-proposal.html [IDN-InDepthNews – 2 March 2016]

IDN is flagship of the International Press Syndicate.

母語の軽視は世界市民への脅威

【パリIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)国際教育到達度評価学会(IEA)と協定を結んで、世界市民と持続可能な開発に関する教育の測定を行うことになったが、他方で、母語を軽視する傾向が世界的に続いており、国連の「持続可能な開発目標」第4目標達成の妨げになっている。

2030アジェンダ」は「第4目標」の中に、「すべての人々に包摂的かつ公平で質の高い教育を提供し、生涯学習の機会を促進すること」を目的とした7つのターゲットを含んでいる。

SDGs Goal No.4
SDGs Goal No.4

その7つ目のターゲット(目標4.7)は、次の15年のうちに「とりわけ、持続可能な開発、持続可能なライフスタイル、人権、ジェンダー平等、平和と非暴力の文化の促進、世界市民、文化的多様性の承認、持続可能な開発に対する文化の貢献の認識に関する教育を通じたものを含めて、持続可能な開発を促進するために必要な知識とスキルをすべての学習者が習得できるようにすること」を国際社会に義務づけている。

ユネスコは、学習者がグローバルな問題に対峙し解決していく行動的な役割を担い、より平和で、寛容で、包摂的で、安全な世界の実現に向けた積極的な貢献を行えるようエンパワーしていくことを、世界市民概念と結び付けている。

しかし、目標4.7が達成できる可能性は、適切な措置が緊急に取られないかぎり、かなり低いと言わざるを得ない。毎年2月21日に設定されている「国際母語デー」の機会にユネスコが発表している重要なデータから、その理由を見て取ることができる。

Presentation delivered by Aaron Benavot at UNESCO's celebration of Mother Language Day 2016 /UNESCO
Presentation delivered by Aaron Benavot at UNESCO’s celebration of Mother Language Day 2016 /UNESCO

ユネスコ「グローバル教育モニタリングレポート」(GEMレポート)の最新版によれば、中国・インド・米国の人口の合計に匹敵する世界の人口の4割が、自ら理解できる言語での教育を受けることができていないという。

ユネスコはまた、「世界で話されている約7000言語のうち5割以上が数世代の内に消滅し、6720言語が世界の人口のわずか4%(2億9600万人、インドネシアの人口に匹敵)によってしか使われていない。」「わずか数百の言語だけが教育制度と公共空間の中で位置づけを与えられ、デジタル空間では100以下の言語が使われるのみである」と指摘している。

「もし理解できないなら、どうやって学ぶのか?」と題されたGEMレポートは、自ら理解できる言語以外のもので教えられた場合、とりわけ貧困家庭の子どもの学びに悪影響を与える可能性があると論じている。

ユネスコのイリナ・ボコヴァ事務局長は、「国際母語デー」を記念して、子供たちが自分で話せる言語で学ぶという基本原則を強調したうえで、「すべての人々にとっての、質が高く、公正で、生涯にわたる学習を優先するグローバルな新教育方針においては、教育と学習、さらには言語の多様性を促進するうえで、母語の使用を完全に尊重するよう奨励することが重要です。包摂的な言語教育政策は、高等教育における達成度を高めるのみならず、寛容さ社会の結束、そして究極的には平和に貢献するものとなるでしょう。」と語った。

Irina Bokova/ UNESCO/Michel Ravassard - UNESCO - with a permission for CC-BY-SA 3.0
Irina Bokova/ UNESCO/Michel Ravassard – UNESCO – with a permission for CC-BY-SA 3.0

GEMレポートは、二ヶ国語(=バイリンガル)教育に投資している国々で学力が向上している、と指摘している。グアテマラでは、バイリンガル教育を実施している学校の生徒らは、留年・退学率が相対的に低く、全ての教科において成績もよかった。また、8年にわたってバイリンガルプログラムに参加しているエチオピアの子どもたちは、カリキュラム全般にわたって学力を向上させていた。

この報告書によれば、植民地化された歴史を持つ国々は、(旧宗主国の言語と地元の言語)二ヶ国語教育への移行を複雑なプロセスとみなす傾向があるという。例えば、ポルトガル語やスペイン語を使い続けている多くのラテンアメリカの文脈や、フランス語が依然として支配的な教授言語である多くのフランス語圏アフリカ諸国の場合がそうだ。

GEMレポートの「教育に関する世界不平等データベース」(WIDE)は、この傾向は生徒の学習機会を著しく妨げていることを明らかにしている。

たとえばコートジボワールでは2008年、試験で使う言語を家庭でも使う5年生の55%が読みの基礎を習得しているのに対して、別の言語を家庭で使っている生徒の場合はわずか25%であった。

イランでは、家庭でペルシャ語を話さない4年生の8割が読みの基礎を習得しているのに対して、話す場合は95%以上に達している。

ホンジュラスでは2011年、授業で使うのと同じ言語を家庭でも使う6年生の94%が読みの基礎を習得したのに対して、使わない場合は62%であった。

トルコでは2012年、トルコ語をほとんど話せない15歳の生徒の約5割しか読みの最低基準に達しなかったのに対して、全国平均は8割であった。

ユネスコ調査は、トルコやネパール、パキスタン、バングラデシュ、グアテマラのような多言語社会では、学校制度を通じて支配的な言語を押し付けることが―それは時として必要に駆られた選択ではあるが―より広範な社会的・文化的不平等につながる不満の元となっていることを明らかにしている。

GEMレポート作成の責任者であるアーロン・ベナボット氏は、「言語は諸刃の剣です。」と指摘したうえで、「言語によって民族集団の社会的紐帯や帰属感が強まることもありますが、周縁化の基礎をなすこともあります。教育政策は、マイノリティの言語使用者を含め、すべての学習者が、自分の知っている言語で教育を受けられるようにしなくてはなりません。」と語った。

Aaron Benavot, Director of UNESCO’s GEM Report/ UNESCO
Aaron Benavot, Director of UNESCO’s GEM Report/ UNESCO

調査は、子どもたちが自分の理解できる言語で教育を受けられるようにするための、いくつかの勧告を行っている。

1.早い時期に母語で習得した内容を維持できるように、少なくとも6年間は母語で授業を行うことが必要である。

2.教育政策が母語での学習の重要性を認識すること。40か国の教育政策を対象とした調査によると、とりわけ低学年において、家庭で使う言語で子どもたちを教えることの重要性が理解されているケースは半数以下であった。

3.教員が2つの言語で教え、第二言語学習者のニーズを理解できるように訓練する必要がある。教員は、包摂的な教材や適切な評価戦略を含め、バイリンガル教室の学習環境の現実にほとんど対応する用意がない。セネガルではわずか8%、マリではわずか2%の教員しか、地元言語で教えることに自信を示していない。

ユネスコのボコヴァ事務局長は、「多言語的アプローチにおける母語は、質の高い教育の不可欠の要素であり、それ自体、女性や男性、そしてそれらの社会をエンパワーするための基礎となるものです。」と強調した。

「こうした観点から、『アジェンダ2030』履行に向けたロードマップであるユネスコ『教育2030行動枠組み』は、教育と学習における母語使用の完全なる尊重と、言語の多様性の促進・保護を奨励しています。」「多言語主義は、これらの目的を前進させるために不可欠です。つまり、成長や雇用、保健、持続可能な消費・生産、気候変動など、『アジェンダ2030』を横断して成功をもたらすために肝要なものなのです。」とボコヴァ事務局長は語った。

ボコヴァ事務局長はまた、「ユネスコは、インターネット上においても、関連する地域言語のコンテンツや、メディア・情報リテラシーへの支援を通じて、言語の多様性を充実させることに力を入れていきます。」と指摘するとともに、「ユネスコは、地域・先住民知識システム(LINKS)プログラムを通じて、広範な知恵の源である先住民族の文化・知識を保護し共有するチャンネルとして母語や地域言語の重要性に着目しています。」と語った。

UNESCO

国際母語デーは、言語と文化の多様性、多言語の使用、そしてあらゆる母語の尊重の推進を目的として1999年11月のユネスコ総会で創設され、2000年2月以来毎年実施されている。

1952年、パキスタンの2つの公用語のひとつとしてベンガル語を認めるようデモを行っていた学生が、現在はバングラデシュの首都であるダッカで警察によって射殺された日が、「国際母語デー」の由来となっている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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教育は世界市民を促進し、持続可能な開発目標を成功に導く

加速する南南協力、三角協力

【ブリュッセルIDN=ラメシュ・ジャウラ】

政府や市民社会、民間部門に、グローバル開発パートナーの代表らが、統合された地域開発を視野に入れて、雇用と起業を通じて女性と若者をエンパワーする新たな南南協力及び三角協力を構築していくことを目指している。

南南協力は、途上国間あるいは途上国内部で行われるものだが、三角協力とは、経済協力開発機構(OECD)開発援助委員会に属する旧来からのドナーと、「南(=途上国)」における新興ドナー、「南」の受益国の三者から成り立っているものである。

ACP logo
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新たなパートナーシップに関するこの決定は、2月11日から12日にブリュッセルで開かれたシンポジウムでなされた。主催したのは、アフリカ・カリブ海地域・太平洋(ACP)諸国グループ(79か国)、国連食糧農業機関(FAO)、国際フランス語圏機構(OIF)、コモンウェルス事務局、ポルトガル語諸国共同体(CPLP)である。

シンポジウムでは、国連が2030年の達成を目指し、ジェンダー平等の達成と女性・女児のエンパワメント人間らしい仕事(=まともな労働)と経済成長の追及という2つの主要な目標を含んだ「持続可能な開発目標」(SDGs)の線に沿って目標を達成すべく、共有された経験と実践例から利益を得られるようにするための行動計画に合意がなされた。

この公約と行動計画の重要性は、農業が世界で最大の雇用を生む部門であり、世界の人口の4割の生活を支えているという事実からも見て取れる。農業は、農村の貧しい世帯にとっての主要な収入源であると当時に雇用の提供元となっている。

さらに国連によると、世界の5億人の小農が、途上国世界の大部分で消費される8割の食料を供給しているという。そして、もし女性農民が男性と同じような資源を手に入れることができるなら、飢餓に悩む世界の人口は1.5億人減少するだろうと国連ではみている。

シンポジウムの3日前、国連の潘基文事務総長は、国連経済社会理事会の機能委員会のなかで今年最も早く会合を持った「社会開発委員会」に対して、世界中の31億人が貧困撲滅のレースにおいて置き去りにされることがないよう、2016年を「グローバルな牽引」(global traction)の年にしなくてはならない、と述べた。2015年は、9月に国際社会がSDGsに合意した「グローバルな行動」(global action)の年であった。

Photo: Secretary-General Ban Ki-moon (left) addresses a meeting to brief Member States on April 4, 2016 on the preparations for the World Humanitarian Summit (WHS), set for 23-24 May in Istanbul, Turkey. At his side is Stephen O'Brien, Under-Secretary-General for Humanitarian Affairs and Emergency Relief Coordinator. Credit: UN Photo/Evan Schneider
Photo: Secretary-General Ban Ki-moon (left) addresses a meeting to brief Member States on April 4, 2016 on the preparations for the World Humanitarian Summit (WHS), set for 23-24 May in Istanbul, Turkey. At his side is Stephen O’Brien, Under-Secretary-General for Humanitarian Affairs and Emergency Relief Coordinator. Credit: UN Photo/Evan Schneider

SDGsは、貧困撲滅や飢餓撲滅、健康と福祉良質の教育、ジェンダー平等、清潔な水と衛生誰もが使えるクリーンエネルギー、人間らしい仕事と経済成長、産業・技術革新・社会基盤、格差の縮小、持続可能な都市、責任ある生産と消費気候変動への緊急対応、汚染されない海洋と陸地、これらの目標を達成するためのパートナーシップと、幅広い内容を持つ。

潘事務総長は、「私達は物事を動かし続け、牽引し続けなければなりません。」「社会開発委員会の任務は、とりわけ、世界中の12億人の若者、9億人以上の高齢者、そして10億人の障害者に対して影響を及ぼします。皆さんの仕事は、2030アジェンダとSDGsによって誰も置き去りにされないようにするために、きわめて重要な意味を持っているのです。」と経済社会理事会に対して述べた。

とりわけ、「すべての人にとっての持続的で、包摂的で、持続可能な経済成長と、完全かつ生産的な雇用、人間らしい仕事」をめざした2030アジェンダの第8目標は、達成すべき重要な目標を設定したものだと、シンポジウムの主催者は参加者へのメッセージで述べた。

ブリュッセルのシンポジウムは、スキルの開発、組織能力の強化、そして、技術、土地、効率的なビジネスサービスへのアクセスの改善などの主要な領域について検討を加えた。

「アフリカ・カリブ海地域・太平洋諸国は、ACP-EUパートナーシップの枠組みなど、様々な領域で、長い協力の歴史があります。包摂性や多様性、革新、真のパートナーシップを高める上で、こうした経験を共有し、南南協力や三角協力の付加価値に焦点を当てることができるのは喜ばしいと考えています。」とACPグループ事務局長のパトリック・ゴメス博士は語った。

Dr. Patrick I. Gomes/ ACP
Dr. Patrick I. Gomes/ ACP

「この種のイベントが、とりわけ『南(=途上国)』の若者や女性に効果的に作用する『南(=途上国)』主導による開発上の解決策を紹介し促進する機会となっていることは、強調してもしすぎることはありません。今日のシンポジウムに集まっている個人や団体の皆さんに拍手を送りたい。」と述べたのは、国連南南協力室(UNOSSC)の国連機関間コーディネーターのロジェル・ヌギド氏である。

UNOSSCのジョルジェ・チェディーク代表に代わって発言したヌギド氏は「『南(=途上国)』のために『南(=途上国)』の人びとや組織の強みに体系的かつ戦略的に注目していく基盤を提供したいと考えています。」と語った。

FAO技術協力・プログラムマネジメントの副責任者であるローレン・トーマス氏は、「FAOはACPとのパートナーシップを歓迎し、2030アジェンダの下で成果を上げるために喜んで協力したい。」と語った。

「パートナーシップなくしては、誰も成功しえません。私達が必要なのは、しばしば置き去りにされている女性や若者を支援する具体的なアクションです。私達は、南南協力を通じて、ACP各国が提示し共有することで、女性と若者にとって真の変化を加速させるプロジェクトを実施していけると考えています。」

「若者の85%以上は途上国に住んでおり、各国および地域規模の政策を拡大し、若者層の雇用に介入することが不可欠だと考えられています。」とトーマス氏は言う。

OIFのミシェル・ジャン事務局長は女性をエンパワーする必要性を強調した。「女性をエンパワーすれば、地域や国家、人類をエンパワーすることになります。もし貧困と闘おうとするならば、女性が土地への権利を持ち、技術とスキルを手に入れられるようにしなければなりません。女性は政策決定過程の一部でなければならないのです。」若者は、開発における重要なアクターであり、会議に参加している各機関に対して協調した行動を呼びかけた。

Michaëlle Jean/ By Roosewelt Pinheiro/ABr - Agência Brasil [1], CC BY 3.0 br
Michaëlle Jean/ By Roosewelt Pinheiro/ABr – Agência Brasil [1], CC BY 3.0 br

コモンウェルス事務局のキャサリン・エリス青年問題局長は「若者を育成するセクターは、南南協力の重要分野となっています。若者たちは、以前よりもダイナミックで、協力的で、よりグローバル化しています。私達は、彼らを単なる受益者というだけではなく、開発の重要な促進者かつ変化のエージェントととらえねばならなりません。」と語った。

CPLP協力局のマニュエル・クラロテ・ラパオ局長は、「南南協力や三角協力は、食料安全保障や栄養向上、保健、児童労働対策などの分野においてその重要性を発揮してきました。」と参加者に語った。

シンポジウムはまた、開発関係機関や、ベニン・マリ・モザンビーク・ウガンダなどの国々が、それぞれの取組みやプロジェクトを紹介する機会も提供した。飢餓と闘い、農村地帯の生活を向上させるために世界のどこでも同じような技術をいかにして導入するかについて、議論のきっかけを提供した。

そうした取り組みの一つが、アフリカ、カリブ海地域、欧州、太平洋地域の小農を支援する貿易を下支えするACPの「COLEACPプログラム」である。これは、これらの地域の園芸業を支援して、持続可能な貿易と貧困緩和を積極的に促進しようというものである。

4つの国連機関と各国のパートナーが、太陽光を使ったラジオで地域をつなぐなどの簡単な方法で知識やスキルを手に入れることを通じて、農村地帯の女性の経済的エンパワメントを促進するために実行されている共同の取り組みについて発表した。このプログラムは7か国に広がり、7万5000人の農村の女性を支援している。

FAOは「青少年農業フィールド生活学校(JFFLS)」の取組みを紹介した。2003年に始まったこのプロジェクトは、アフリカ・アジア・中東の20か国以上に広がり、2万5000人以上の若者を支援している。以来これらの国々では、食料安全保障は向上し、農村の貧困率は下がっている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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