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|視点|持続可能な未来を創る―企業と社会の契約(ゲオルグ・ケル国連グローバル・コンパクト事務所長)

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【国連IPS=ゲオルグ・ケル】

相当多数の企業がより良い世界のために投資を行っているような時代を、私たちは想像することができるだろうか? つまり企業が、経済的な意味合いだけではなく、社会的にも、環境的にも、倫理的にも、長期的な価値に奉仕するような世界を―。10年以上前ならそうした世界を想像することすらできなかったが、今は世界的な運動が進行中だと自信を持って言える。

1990年代末までに、なんらかの行動をとる必要性は明白だった。多くの意味において、世界の多くの地域が、国際投資・貿易の急拡大に伴う成長と機会から取り残されているようだった。コフィ・アナン国連事務総長が1999年のダボス会議で財界指導者らに対して「グローバル市場に人間の顔を与えるための、共有された価値と原則のひとつのグローバルな協定」を国連との間に結ぶよう提案した背景には、このようにグローバル化の進展によって企業と社会の間の関係が脆弱になり様々な危険を孕んでいた現実があった。

2000年の立ち上げ時には40企業で始まった「国連グローバル・コンパクト」は、今日では140か国から・8000の企業(先進国と途上国双方の企業で、ほぼ全ての産業部門・産業規模にまたがり、従業員数は約5000万人におよぶ)の署名にまで膨らんでいる。

各参加企業は人権を尊重・支援し、適正な労働環境を確保し、環境を保護・回復し、良質のコーポレート・ガバナンスを実施することを公約したうえで、その進捗状況を公開している。これに加えて、4000におよぶ市民社会からの参加団体は、企業に公約内容に関する説明責任を求めたり、共通の目的のために企業とパートナーを組むといった重要な役割を担っている。

今日、「国連グローバル・コンパクト」には100の国別ネットワークがあり、同じような考えを持つ企業を集めて現場で行動を促進したり、普遍的な原則と責任ある企業行動を定着させる取り組みを進めている。このネットワークは、グローバルな規範や問題のプラットフォーム、国別の枠組みにおけるキャンペーンを根付かせるために重要な役割を果たし、地域の活動や意識を加速させるための重要な基盤を提供している。

世界中の企業が、持続可能性をますます重要視していることは明らかだ。現実には、環境、社会、ガバナンス面での問題が最終的な収益に影響を及ぼしている。つまり、市場の混乱、社会不安、自然環境破壊は、サプライチェーンや資本の流れ、従業員の生産性を通じて、ビジネスに大きな影響をもたらしている。

私たちはまた、一般民衆がかつてないほど政府や民間部門にその行動に対する説明責任を負わせる力を身に着けた、高度な透明性が要求される世界に住んでいる。単にリスクを軽減するだけでは不十分であり、ビジネスを展開している地元コミュニティに対して積極的に貢献するよう求められていると企業が認識するようになるなど、根本的な変化が起きている。

リスクよりも企業の行動を促しているのは、グローバル化することによって生まれる機会の方である。経済成長の主軸が「西」から「東」へ、そして「北」から「南」へと移行するにつれ、益々多くの企業が、従来の資源の利用者から市場の構築者へと変貌を遂げてきている。

責任ある企業は、極端な貧困や、教育の不足、ジェンダー不平等、環境の劣化といった複雑な問題に直面すると、破綻した社会では繁栄できないと考え、自らを長期的には対等の利害関係者であると見なす。これが、企業と社会の共有の価値を創り出す解決策に寄り添い、ともに投資する企業行動を促している。

また、企業と社会の相互依存性も高まっている。企業は、保健や教育から、地域投資や環境保護にいたるまで、かつては公的部門の限られた仕事だと見なされていたような領域において、より積極的に貢献するよう期待されている。実際、最高経営責任者(CEO)の6人のうち5人は、世界的に優先順位の高い問題について企業が主導的な役割を果たすべきだと考えている。これはきわめて望ましい動きだ。

これまでに大きな進展がみられるが、取組むべき課題は未だに山積している。どこの企業も、持続可能なことに対しては一層の貢献が求められる一方で、持続可能でないことはやめるよう求められている。持続可能性が企業文化や企業活動のDNAとならなければならない。重要なのは、まだ行動していない企業、とりわけ変化に対して積極的に反対している企業に働きかけることである。

このイニシアチブを本格的に稼働させるためには、企業インセンティブ構造に持続可能性の価値を取り込むようにしなくてはならない。諸政府は、企業に好意的な環境を作り、責任ある企業行動にインセンティブを与えねばならない。金融市場は短期的投資をやめ、投資行動において長期的なリターンが根本的な基準となるように変わらねばならない。企業によるよい環境、社会、ガバナンスのパフォーマンスが支持され、利益を生むとの明確なシグナルが必要だ。

今年、諸政府と国連が2015年までに持続可能な開発目標の策定を進める中、企業には、社会に対する誓約に関して「義務を果たす」大きな機会が待っている。この2015年以後の開発アジェンダには、すべての主要なアクターを行動に駆り立てる力がある。民間部門がその中で果たす役割は大きい。

これらの開発目標やターゲットは、企業が自らの持続可能性に関する進展具合を評価し、グローバルな優先事項と関連した企業の目標を打ち立てるような枠組みにつながるかもしれない。この機会は、企業にとっての価値のみならず、公共の利益を作り出すうえでも重要である。

将来はどのようなものになるであろうか? 持続可能性の新たな時代を達成するための下地はできている。よいニュースは、グローバル市場の大多数を占める見識ある企業が、問題解決の一部であろうとする意志を持ち前進していることである。持続可能性を追求するとの企業指導者の決定は、状況を一変させることができる。私たちは漸進的ではなく革新的な変化へと進むことができる。そのなかで、責任ある企業は善を生み出す力となることが示されるだろう。(原文へ

※ゲオルグ・ケルは、企業よる自発的な持続可能性に対する取り組み機関としては世界最大の「国連グローバル・コンパクト」事務所長。

翻訳=IPS Japan

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国連報告書、核爆発対処の人道支援の欠陥を指摘

【ベルリンIDN=ジャムシェッド・バルアー】

国連軍縮局(UNODA)によると、広島・長崎への原爆投下から70年近く経過した今日でも、依然として約2万2000発の核兵器が人類の生存を脅かし続け、これまでに2000回以上の核実験が行われてきたという。しかし国際社会は、「大規模な核戦争は言うまでもなく、基本的なレベルでの対応という意味ですら」、核兵器爆発という事態に効果的に対応する準備ができていない状態である。

こうした憂慮すべき見方を打ち出したのは、国連軍縮研究所(UNIDIR)が国連人道問題調整事務所(OCHA)および国連開発計画(UNDP)と協力して、9月26日の「第1回核兵器廃絶国際デー」を前に発表した研究報告書である。

この報告書には、「国連の様々な機関で人道支援活動に携わっている職員に対するインタビュー内容をまとめると、彼らの多くにとって、人口密集地で核爆発が発生するという事態は想定外の出来事であり、中には『低レベル』の核爆発が発生した事態への対処計画があり、国際原子力機関(IAEA)が専門的知識や機材、運用能力を提供して主導的役割を果たすはずだと考えている者もいた。」と記されている。

UNIDIRの専門家ジョン・ボリー氏とティム・カフリー氏による研究報告書『安全の幻想―国連人道調整と対応にとっての核爆発という挑戦』は、2013年3月にノルウェーのオスロで初めて開催された「核兵器の人道的影響に関する国際会議」の結果を分析したものである。同会議の議長総括には、「いかなる国家あるいは国際機関も、核兵器の爆発が直ちにもたらす人道面における緊急事態に十分に対応し、被害者に対して十分な救援活動を行うことは不可能であろう。そのような対応能力を確立すること自体、いかなる試みをもってしても不可能かもしれない。」と記されている。

ボリーとカフリー両氏は、こうした核兵器爆発が発生した場合に考えられる状況について、「そうした爆発の即時的な影響(1発あるいはそれ以上の核兵器爆発による爆風、熱放射、即発放射線)は多くの被害を引き起こし、主要なインフラのかなりの部分を破壊するだろう。それはまた恐怖や混乱を引き起こし、人々の通常の行動様式を変化させ、混乱に拍車をかけることになるかもしれない(例えば、放射線被ばくを恐れるあまり、家から逃れて既に被災者で満杯の病院に向かう、など)。重要な点は、こうした即時的な損害が既に発生しているため、いかなる対処を試みても不十分なものにならざるを得ないということである。」と述べている。

この調査によれば、ほとんどの専門家の見解は、「核爆発が発生した場合、被災者の緊急ニーズへの対応は、地方自治体あるいは中央政府に(それらが依然として機能している限りにおいて)委ねられることになるだろう。」という点で一致しているようだ。「人口密度の高い地域では、きわめて多数の重度の火傷患者や重症者(その多くが死につつある)が発生するため、人道的なニーズは広範なものに及ぶ。この分野の専門家が記した多くの文献は、国際的支援は言うに及ばず、支援の手が被爆地に到達するには数日かそれ以上かかるだろうと想定している。」

人道支援システムへの挑戦

報告書は、放射性の「汚い爆弾」や化学兵器が使用されたシナリオを想定した国際訓練が最近になって実施されたケースはあるものの、人口密度が高い地域で核兵器が爆発した場合、被災者を支援する人道システムにどのような困難が生じるかを検証するような訓練は全く行われてこなかった、と指摘している。

さらに、現在の人道支援システムには、核爆発固有の現象に対処することに焦点を絞った体系的な計画は存在しない。加えて、核爆発が発生した際に人道支援活動を現場で支援するために、放射線モニタリングや除染作業といった専門性が求められる必須措置をとる責任が、国際機関や人道支援パートナー組織に対して、明確に割り当てられているわけではない。

この報告書が新たに明らかにした主要な知見のひとつは、一部の専門機関が、委ねられている責任を、一般の放射能汚染緊急事態や、(テロなどの)特定の核爆発シナリオに適用することはできても、核兵器が使用された場合や、その他の核爆発のシナリオ(国家による使用、核兵器事故など)のケースには適用できないと考えている点である。

報告書の著者はさらに、「CBRN(化学兵器、生物兵器、放射能兵器、核兵器)防衛に関する対処グループ」等の機関が設立されるようになったことは頼もしい進展ではあるが、核兵器爆発という特定の事態において、国連人道支援システムと各国の関連機関との間の調整に関する常設的な取り決めは存在していないように思われる、と指摘している。

「人道支援システムが極力迅速に救援活動を開始することについて疑問の余地はないが、危機の真っ只中でこうした調整を進めるのは理想的な方法とはいえない。なぜなら、混乱や誤解を招く可能性が高く、もっともタイムリーで効果的な対処を阻害する事態も招きかねないからだ。」と報告書は警告している。

この報告書のもうひとつの結論は、さらなる核爆発が続くかもしれないという威嚇や恐怖が、人道支援の提供のみならず、その調整や対処の性格や規模に関する意思決定を非常に複雑なものにする、というものである。

この点について報告書は次のような可能性を指摘している。「核爆発から数時間、数日、或いは数週間経過しても、核兵器がどこから撃ち込まれたのか、首謀者が誰なのかは判明しないかもしれない。そうした不確実さが、核危機をさらに深刻化させる可能性がある。」「さらに、リスク評価という点では、(関連する国連機関などの)人道支援の主体が、被災者に人道支援を提供するのは危険すぎると考えるようになるかもしれない。他方で、被害を受けた国家(あるいは複数の国家も)、被爆地域の環境が十分に『安全』と確認されるまでは、援助を受け入れることに消極的になるかもしれない。また、人道支援システムによって調整された支援を提供しようとする国家は、さらなる核爆発が起きる可能性があると危惧した場合には、支援提供に及び腰になるかもしれない。このために、核爆発の影響を直接受けたり家を追われたりした人々の被害状況を悪化させることになるかもしれない。」

報告書の著者らは、予防こそが核爆発への最大の対処法だとしつつも、もし国連システムの内部で(核爆発という事態を想定した)事前の考察や対処計画がなされれば、「核爆発の直後にできることは少ないながらも、(核爆発によって引き起こされる)人的被害全体のレベルを相当程度引き下げることができるかもしれない。」と述べている。

(核爆発という事態への)対処能力を育成することは、それがいかに不十分なものだとしても、意思決定チャンネルを作るのに必要な時間を減らすことで命を救うことに寄与し、資源の動員を調整し、支援活動を行う職員の配置に関連した健康問題を解決することに役立つであろう。

報告書は、「本質的に必要とされているのは、核爆発によって引き起こされる危険や汚染の程度、支援職員を被爆地に派遣するにあたって考慮すべきその他のリスクを基にして、動員をかける前提を事前に明確に設定した、体系的な意思決定プロセスである。」と結論付けている。

国連緊急援助調整官で国連事務次長(人道問題担当)のバレリー・エイモス氏と、国連開発計画のヘレン・クラーク総裁は、「この報告を読めば、核兵器なき世界を達成するまでは、国連やその人道支援パートナーがいかに努力をしようとも、核兵器は人類に壊滅的な結果をもたらずリスクであり続ける、ということを改めて思い知らされます。」と述べている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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「イスラム国」への攻撃で、はたして恒久的平和を地域にもたらす政治機構が実現するのか

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【アブダビWAM】

アラブ首長国連邦(UAE)の英字日刊紙は9月12日、バラク・オバマ大統領が10日に行った国民向け演説について、「中東地域からの幅広い合意が得られなければ、たとえ軍事的な勝利を収めたとしてもそれを長期に亘る政治的な成功へと繋げていくことは期待できないだろう。」とコメントした。オバマ大統領は演説の中でスンニ派過激組織「イスラム国」壊滅を最終目標とする包括戦略を発表、アラブ諸国・同盟国との連携による軍事作戦(軍事顧問の派遣と空軍支援)を展開していくことと、米軍による空爆対象を従来のイラクからシリアに拡大することを表明していた。

オバマ大統領は、イラク・シリアにおいてスンニ派住民を動員して「イスラム国」勢力を国外に駆逐する手助けをしてくれるアラブ国家を求めて、政府関係者を中東各地に派遣している。ガルフ・ニュース紙は、オバマ大統領が「これこそ、米国のリーダーシップの最高の形であり、私たちは自らの自由のために戦う人々を支持し、共通の安全保障と共通の人間性を守るために他国に参加を呼びかける。」と述べた点について、「オバマ氏一級のレトリックだ」と指摘したうえで、「問題は、この美辞麗句は米軍が最初にイラクに侵攻した際にも耳にしていることだ。その後、イラクは内戦状態に陥り、深刻な宗派対立は今日まで続いているではないか。従ってオバマ大統領が今日すべきことは、今回の軍事作戦がこれまでのものとはどのように異なるのか、そしてこれがどのようにしてこの地域に恒久平和をもたらすような永続的な政治体制を構築することになるのかを、明確にすることだ。」と9月12日付論説の中でコメントした。

ガルフ・ニュース紙はまた、「今回の戦争の最終的な政治目的についてオバマ大統領がほぼ沈黙を守ったことは問題であり、より明確に説明すべきだ。」と指摘した一方で、「『イスラム国』の脅威と闘っていくうえで、米国が先導的な役割を果たしているのは大いに歓迎だし、イラクをはじめ中東諸国と連携している点は重要である。また、オバマ大統領がシリアのアサド政権とは協力せず、『イスラム国』に対抗する勢力としてシリア反政府勢力に対する支援案への承認を米議会に求める立場を明確にした点も重要である。」と報じた。

さらにガルフ・ニュース紙は、「米国は、軍隊を統率でき地域に安定をもたらすことができる実力者なら誰とでも組むのではないかという懸念が高まっていた」点を指摘したうえで、「オバマ政権が自国民を恐怖のどん底に陥れ、失った正当性を二度と回復することがないアサド政権を決して信頼しないと判断をしたことは大いに心強い。」と報じた。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【国連IPS=ヨエル・イェーガー

もしシリコンバレーが「平和の文化」のために存在していたとしたならば、産業の次なる大再編の担い手として、ほぼ間違いなく世界市民に目を向けるだろう。

「世界市民、すなわち、人類は一つであるという考え方は、『平和の文化』の中核的な要素です。」と述べるのは、元国連事務次長・高等代表のアンワルル・チョウドリ大使である。同氏は、9月9日に開催された「平和の文化」について討論するハイレベル・フォーラム(193加盟国、国連諸機関、市民社会、メディア、民間セクターなどが参加)において、IPSの取材に答えた。

終日開催された今年のハイレベル・フォーラムでは、「平和の文化に向けた女性や若者の役割と貢献」と「平和の文化への道筋としての世界市民」をテーマとした双方向型のパネル討論などが開催された。

チョウドリ大使は、「平和の文化」を国連の課題とする動きを90年代後半に主導した。「平和の文化」の概念は、国連教育科学文化機関(ユネスコ)において進化を遂げていたが、チョウドリ大使は、より高いレベルで討議されるべき問題だと感じていた。

「国連は、従来の平和維持活動から『個人とコミュニティーの変革に焦点をあてる』姿勢へと『ギアをシフト(=態度を変える)』する必要がありました。」とチョウドリ大使はIPSの取材に対して語った。

1999年、チョウドリ大使の働きかけもあって、国連総会は「平和の文化に関する宣言及び行動計画」と題する画期的な決議53/243を採択した。同決議には、平和の文化は、非暴力、領土の一体性、人権、開発への権利、表現の自由、男女平等の推進を基礎にした生活のあり方であると明記されている。

Photo: The UN General Assembly Hall. Credit: Manuel Elias/UN.
Photo: The UN General Assembly Hall. Credit: Manuel Elias/UN.

決議の第4条には、「すべてのレベルにおける教育は平和の文化を構築する主要な手段の一つである。」と明記されており、諸政府や市民社会、メディア、親や教師に対して、平和的な文化を推進するよう呼びかけている。

この1999年の決議は、2001年から10年には「世界の子どもたちのための平和の文化と非暴力の国際10年」に結実している。

この国連の10年は公式には終了しているが、決議53/243が採択されてから15年が経過した今日においても「平和の文化」は意義を保ち続けている。国連総会は、平和の文化構築に対する加盟国の意思を再確認するため、毎年この決議を採択している。

2012年と13年の過去2回のハイレベル・フォーラムの成功を受けて開催された今年の全日のイベントは、加盟国や国連機関、市民社会に対して、非暴力や協力、全ての人々にとっての尊厳をいかに促進できるかについて意見交換する機会を提供する場となった。

Ban Ki-moon/ UN Photo
Ban Ki-moon/ UN Photo

第3回「平和の文化」について討論するハイレベル・フォーラムは、潘基文事務総長の「平和の文化」を支持する以下の演説で始まった。

「私たちは、諸社会の間で、そして社会内において、文化的なリテラシーと文化外交の新しい形を必要としています。グローバルな連帯と世界市民性を深めるための教育カリキュラムを必要としているのです。…私は毎日のように、仲裁や紛争解決、平和構築、平和維持の新しい文化を築く必要性を目の当たりにしています。」

パネル討論では、平和の文化を実現するためのいくつかの鍵について話し合われた。

UNウイメン」のラクシュミ・プリ事務局長代理(国連事務次長補)は、平和の文化を構築し維持するうえでの女性の役割に焦点を当てた。

プリ事務局長代理は、「女性や母親、祖母、その他の家族の構成員は、しばしば子どもたちにとって最初の教育者となります。彼女たちは、若者に平和の価値を教える重要な役割を果たしてきましたし、またそうすることができるのです。」と指摘したうえで、「女性は紛争予防の主体とみなされねばなりません。」と語った。

パネリストらは、女性は平和構築の場でリーダーシップを発揮し解決策を打ち出すべきという点で一致した。

若者たちもまた、「平和の文化」を実現するうえで、重要な役割を果たす。

国連事務総長の青少年問題特使であるアフマド・アルヘンダウィ氏は、「若者は平和の主体になることができます。」と指摘したうえで、「人類で最大の人口比率を占める世代が、現代の重荷ではなく、機会となるようにするため、私たちは協力していかねばなりません。」と語った。

Ahmad Alhendawi, Secretary-General Ban Ki-moon’s first-ever Envoy on Youth
Ahmad Alhendawi, Secretary-General Ban Ki-moon’s first-ever Envoy on Youth

米平和研究所ジェンダー平和構築センターのキャサリン・キューナスト所長は、創造的でエネルギーに満ちた起業家精神を引き合いに出しながら「平和の文化」に関する新しい観点を提唱し、拍手喝采を受けた。

「私たちは、平和構築にインセンティブを与える必要があります。」とキューナスト所長は指摘したうえで、「まずは、平和の文化を最初の活動として位置づけるべきです。私たちに必要なのは、グローバルな問題解決に非暴力的なアプローチで臨んでいくためのシリコンバレーなのです。」と語った。

全米平和アカデミー(ニューヨーク)のドロシー・マーヴァー会長は、共有型経済やグローバル・コモンズ、バイオリージョン(生命地域)対話といった、世界市民の台頭の先駆けとなる、最新動向や概念について指摘した。

人間のコミュニティーとして、「私たちは『私』から『私たち』へというシフトを生み出しつつあります。」「世界市民は、『私から私たちへ』を平和につなげる道筋に他なりません。」とメイヤー会長は語った。

国連は世界市民や平和の文化を強力に支持しているが、そのメッセージを拡散するためにさらに多くのことができるはずだ、とチョウドリ大使は言う。

「国連は、これまで平和維持のハード面に焦点を当て、その資金の大半を投じてきましたが、今後は個人を平和と非暴力の主体に変えることに重点を置いていくべきです。」とチョウドリ大使は指摘したうえで、「教育インフラへ資金を投入するだけでは、正しいタイプの教育に資金が回るかどうかの保証がないため、十分ではありません。国連は、若者たちが世界市民になれるような教育システムを構築するために、世界各地のコミュニティーや社会ともっと協力していかなくてはなりません。ただしそれは、包括的なアプローチかつ、変革的な投資でなくてはなりません。」とチョウドリ大使は語った。

UN Photo
UN Photo

マーヴァー会長は発表の中で、「思考にはエネルギーが伴います。私たちは何であれ、焦点を当てようと選択したことについて、人生の中でより多くのものを手にするでしょう。」と所見を述べた。

平和の文化の支持者らは、この日のハイレベル・フォーラムで得たエネルギーやアイディアが人間社会に世界市民のメッセージを広げ、真の変革につながっていくことを願っている。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【国連IPS=カイラト・アブドラフマノフ】

8月29日、「核実験に反対する国際デー」が制定されて5周年を迎えた。カザフスタンは1991年に独立を果たしたが、ヌルスルタン・ナザルバエフ大統領(当時はカザフソビエト社会主義共和国大統領)が同年打ち出した大統領令の一つが、当時世界第2位の規模であったセミパラチンスク核実験場の閉鎖を命じるものだった。

また当時のカザフスタンは、地球上のいかなる地点をも標的にできる110基を超える弾道ミサイルと1200発の核弾頭からなる世界第4位の核戦力を保持していたが、これも自発的に廃棄する決定を下した。

Address by His Excellency Nursultan Nazarbayev, President of the Republic of Kazakhstan
Address by His Excellency Nursultan Nazarbayev, President of the Republic of Kazakhstan

当時多くの人々が、カザフスタンのこの決断は、膨大な核戦力を維持管理する能力を持ち合わせていないからだと考えたようだ。しかしそれは事実ではない。なぜなら、我が国には当時もそし も、最高の技術専門家が揃っているからだ。

私たちにとって、核クラブ(=核保有諸国)から脱退するという当時の決断は、むしろ政治的意思の問題だった。なぜなら私たちは、人類と自然環境に想像を絶する破滅的な結果をもたらす核兵器の無益さ、それを実験し続けることの無益さを心の底から確信していたからだ。

セミパラチンスク核実験場が閉鎖されると、ネバダ(米国)、ノバヤゼムリャ(ロシア)、ロプノール(中国)、ムルロア(フランス領ポリネシア)等の世界各地の主要な核実験場の閉鎖がそれに続いた。

そこで国連総会は、2009年12月2日にカザフスタン政府の提案を受け、8月29日を「核実験に反対する国際デー」を宣言する決議64/25を全会一致で採択した。

an Ki-moon visited the Ground Zero of Semipalatinsk in April 2010/ UNDP
an Ki-moon visited the Ground Zero of Semipalatinsk in April 2010/ UNDP

潘基文国連事務総長は、2010年4月にセミパラチンスク核実験場跡のグラウンドゼロを訪れ、カザフスタン大統領の決断を大胆かつ前例のないものだったと称賛するとともに、世界の指導者に対してこの決断に続くよう強く訴えた。

ナザルバエフ大統領は当時の決断について、「23年前にカザフスタン国民が踏み出したこの歴史的な1歩は、人類の文明にとって重要な意義を持っており、その意義は今後数十年にわたって益々重要性を増していくだろう。」と語っている。

今日では、核実験を停止すれば(新型核兵器の開発が事実上不可能となるため)最終的に核兵器の廃絶に繋がること、従って、包括的核実験禁止条約を早期に発効させることの重要性が広く認識されている。

カザフスタンは同条約に最初に署名・批准した国の一つであり、核兵器の放棄に伴う利益を人間開発に転換したモデル国となってきた。とりわけ持続可能な開発に力点が置かれるポスト2015期においては、このモデルがますます重視されることになるだろう。

今日の国際社会においては、関連諸国の自由意思による合意に基づいて構築された核兵器禁止地域(下の世界地図のオレンジの部分:IPSJ)は、国際及び地域の平和と安全を強化し、核不拡散体制をより堅固なものとし、核軍縮という目的実現のために貢献するものと、認定されている。

確かに、国際社会の前途には、政治的な激変や障害が立ちはだかるかもしれないが、私たちは恒久的な平和と安全を追及していかなければならない。

毎年、国連総会第一委員会(国際平和を主要議題とし、軍縮と国際安全保障問題を主に取り扱う:IPSJ)では、核廃絶を支持し、核軍縮に関する公約の実施を加速するよう求める圧倒的多数の加盟国によって、多くの決議が採択されている。

また、核兵器禁止条約の締結を求める加盟国や様々なステークホールダー、市民社会による断固とした努力が継続されている。

さらに核兵器の使用がもたらす破滅的な人道的側面に注意を喚起する活動が、とりわけ市民社会を中心に、世界各地で活発に展開されている。

昨年ノルウェー政府が主催した「核兵器の人道的影響に関する国際会議」(非人道性会議)や今年の初めにメキシコ政府が主催した「第二回核兵器の人道的影響に関する国際会議」(ナヤリット会議)は、こうした核兵器の非人道性に着目する国際的な動きに、さらなる弾みをつける機会となった。

Nayarit Conference in Mexico/ICAN
Nayarit Conference in Mexico/ICAN

国際社会は、核兵器なき世界の実現という目標を達成するために、あらゆる面でそしてあらゆるレベルでこれからも努力を継続していくでしょう。

また核兵器国も、全てのNPT加盟国が同条約第6条の下で同意する核軍縮につながる、核兵器の全面的廃絶を達成することを明確に再確認しています。

国際社会は、市民社会による熱のこもった関与を得ながら、引き続きグローバルゼロに到達するための一層の努力を重ねていくものと確信しています。(原文へ

翻訳=INPS Japan浅霧勝浩

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世界市民教育に余地を与える持続可能な開発目標(SDGs)

【国連IPS=ヨエル・イェーガー】

市民社会のリーダーや国連の開発専門家らが8月27日、2015年以後の開発アジェンダにおける「世界市民教育」の役割を論じるために集まった。

創価学会インタナショナル(SGI)が主催したこのワークショップは、第65回「国連広報局/非政府組織(DPI/NGO)年次会議」の一環として開催された。

教育は「持続可能な開発のあらゆる領域とつながっており、全ての持続可能な開発目標(SDGs)およびターゲットの達成においてきわめて重要なものです。」とSGIニューヨーク国連連絡所の桜井浩行所長は語った。

Ambassador Anwarul Chowdhury/ Hiro Sakurai, SGI
Ambassador Anwarul Chowdhury/ Hiro Sakurai, SGI

「この点において、世界市民教育は特別の注目と強調に値するものです。というのも、これは様々な問題や分野をつなげ、すべてのステークホルダーを巻き込み、共有されたビジョンと目的を育むのに役立つからです。」と桜井氏は語った。

元国連事務次長・高等代表のアンワルル・チョウドリ大使がこのワークショップでの基調講演を行った。チョウドリ大使は、その中で「開発専門家の間で世界市民の考え方が広まってきたことに感激している。」と語った。

チョウドリ大使によると、世界市民には「自己変革」が必要であり、「平和の文化への道」を切り開くものであるという。

進歩のためには「個々人を世界市民として扱う決意」が必要であり、「私たちはより大きな人類の一部なのです。」と、チョウドリ大使は語った。

バハイ国際共同体」のサフィラ・ラメスファー氏も、世界市民に備わっている変革をもたらす性質について言及した。

Saphira Ramesfar/ Hiro Sakurai, SGI
Saphira Ramesfar/ Hiro Sakurai, SGI

ラメスファー氏は、「読み書きや計算ができるような人間を育てることだけが教育ではありません。」と指摘したうえで、「教育は、人間を変革させ、共有の価値に命を吹き込むようなもの、つまり、この世界とそこで共に暮らしている全ての人々を慈しむ気持ちを涵養するものでなくてはなりません。教育は、公正で一つにまとまった、多様性が受け入れられる社会をつくるという役割を十分に担う必要があります。」と語った。

過去には、世界市民を育もうとする試みが、若者に焦点を当てたこともあった。しかし、チョウドリ大使は、「この概念はもっと広いものとして理解されなくてならない」と指摘したうえで、「世界市民教育は、年齢や、公式の教育経験を受けてきたかどうかに関わらず、万人のためのものであると信じています。」と語った。

国連経済社会局のアンジャリ・ランガスワミ氏は、(2015年の採択に向けて国際的な議論が活発になっている)持続可能な開発目標(SDGs)案の策定において、NGOがいかに積極的に参加しているかについて説明した。同氏によると、ここ数年、市民社会の関与はきわめて高い水準になってきているという。

2015年に期限を迎えるミレニアム開発目標(MDGs)には、普遍的初等教育の達成(すべての子どもが男女の区別なく初等教育の全過程を終了できるようにする)が目標に含まれている。SDGsは、もし現在の起草内容のまま採択されたとしたら、普遍的な中等教育の達成も同様に目指すことになる。

SDGsは、「目標4」の下で「世界市民教育」に特に言及している。これは、MDGsでは触れられなかった問題だ。

「世界市民の養成」を3つの主要課題のひとつに挙げている国連のグローバル・エデュケーション・ファースト・イニシアチブ(GEFI)が、この新しい動きを創出するうえで影響力を持った。

Min Jeong Kim/ Hiro Sakurai, SGI
Min Jeong Kim/ Hiro Sakurai, SGI

GEFI事務局のキム・ミンジュヨンチーム長によると、GEFIは2012年に国連事務総長によって立ち上げられたが、それは「当時教育が、MDGs採択以後の急速な成長の時期を経て停滞していたから」だという。

ワークショップの発言者が締めくくりの発言をした後、参加者らは小グループに分かれて、世界市民教育に関する意見交換を行った。

このイベントは、「バハイ国際共同体」、「平和の文化に向けたグローバル運動」、「人権教育アソシエイツ(HREA)」、「持続可能な開発教育コーカス」、「国連Valueコーカス」が共催し、多様な専門家が参加した。

SDGsは、教育に関する全く新しい将来の展望を開く機会となる。

チョウドリ大使はIPSの取材に対して、「教育は、生計を立てるためというよりも、有意義な人生を送れる資質を育むことに注力すべきです。」と指摘したうえで、「これまでの支配的な考え方は、もしいい仕事に就ければ教育には意味があるが、いい仕事に就けなければ意味がないというものでした。しかしこのような考え方は、変えていかなければなりません。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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オーストリア議会、核軍縮に向けた政府の取り組みを後押し

【ウィーンIDN=ジャムシェッド・バルーア】

オーストリア政府が12月8日から9日にかけてウィーンで開催される第3回「核兵器の人道的影響に関する国際会議」(非人道性会議)に向けた準備を進める中、オーストリア議会が、核兵器のない世界を導くための同国の取り組みに法的基盤を与えた。

ウィーンでの来たる会議は、ノルウェーのエスペン・バート・アイデ外相によって招集されオスロで2013年3月に開催された「核兵器の人道的影響に関する国際会議」(オスロ会議)以降、3回目の会議となる。アイデ外相は、オスロ会議は「核兵器の爆発が人間や開発に及ぼす影響について事実を基礎とした討論を行う場を提供した。」と述べている。

Oslo Conference/ MFA
Oslo Conference/ MFA

オスロ会議には、127か国の代表に加え、国連機関、国際赤十字運動、市民社会代表、その他の利害関係者が参加した。アイデ外相は会議を総括して、「(会議に)これだけの幅広い参加を得たということは、核兵器の影響に関する地球規模の懸念とともに、世界中のすべての人々にとって最重要課題であるという認識が広がったことを反映した結果であると考える。」と述べた。

2014年2月13日から14日にかけてメキシコ西部ナヤリット州のヌエボバジャルタで開催された第2回「核兵器の人道的影響に関する国際会議」(ナヤリット会議)では、「とりわけ、公衆衛生、人道支援、経済・開発・環境問題、気候変動、食料安全保障、リスクマネジメントといった領域を含め、21世紀の観点と関心から、偶発的か意図的かにかかわらず、いかなる核爆発もがもたらす地球規模かつ長期的な結末」について検討を加えた。

ナヤリット会議には、146か国の代表、国連、赤十字国際委員会、国際赤十字・赤新月社運動、市民社会組織の代表が参加した。

Chair's Summary/ MOFA, Mexico
Chair’s Summary/ MOFA, Mexico

ナヤリット会議の議長は、オーストリアが第3回「核兵器の人道的影響に関する国際会議」を主催すると申し出たことは、「オスロ及びナヤリットのフォローアップとして、現在の気運を高め、それらの結論をより確固たるものとし、前進させるものとして、参加者からは強い支持が示された。」と指摘したうえで、「多くの参加者が述べたように、ナヤリット会議は、核兵器国及びNPT未加盟国に対し、オーストリアでの第三回会議への参加を繰り返し求めていきます。」と語った。

さらに議長は次のように語った。「そうしていく上で、私たちは、過去において諸兵器がまず非合法化され、そして廃棄されてきたことを考慮しなければならない。これこそが、核兵器のない世界を達成する道だと信じています。また、このことは、核不拡散条約(NPT)やジュネーブ条約共通第1条でも示されているように、国際法に基づく私たちの義務と合致するものであると考えています。」

「核兵器の人道的影響に関する広範かつ包括的な議論は、法的拘束力のある条約を結ぶことを通じて、新たな国際基準及び規範を実現するとの、政府及び市民社会の誓約につながっていかなければならない。」

2nd Conference in Nayarit
2nd Conference in Nayarit

「私たちは、ナヤリット会議はこの目的に資する外交プロセスを開始する時期が来たことを示したと考えます。またこのプロセスには、特定の時間枠、最も適切な議論の場の明示、明確かつ実質的な枠組みが含まれるとともに、核兵器の人道的影響が軍縮努力の本質に据えられたものでなければならないと考えています。」

新たな原動力となるか?

「今こそ行動に移るべき時です。広島、長崎への核攻撃から70年目を迎える来年こそが、私たちが(核廃絶という)目標に向かうにふさわしい里程標である。ナヤリット会議は『ポイント・オブ・ノー・リターン(もはや後戻りできない地点)』なのです。」と議長は総括した。

こうした背景の下、オーストリア議会は全会一致の決議で、ウィーンでの来たる会議に「完全なる支持」を表明した。オーストリア議会は、この会議が、核兵器の人道的影響に関する議論を深化させ、市民社会組織の関与をさらに促進することで、国際的な軍縮の言説に新たなダイナミズムをもたらす」ことを期待している。

この動議は、クリスティン・ムトネン議員(社会民主党、核軍縮・不拡散議員連盟[PNND]共同議長)とラインホルト・ロパトカ議員(オーストリア国民党代表)が4月30日に外務委員会に提出したものである。

動議は、オーストリア連邦政府に対して、「軍縮と、国際法の下での核兵器の開発・販売・取得・拡散・保有の完全禁止に向けて、国際及び欧州レベルにおける取り組みを継続」するよう強く求めている。

決議は、連邦政府に次の行動をとるよう要請している:

・二国間及び多国間のレベルにおいて、非大量破壊兵器地帯の実現のために積極的に行動すること。

・この点に関連して、国連安保理決議687に規定されている中東非核兵器地帯の構築という目標を自らの目標として採択し、多国間及び二国間レベルでこの目的のためにイニシアチブをとること。

・武器輸出、及び、とりわけ紛争地帯への核兵器運搬手段の輸出に対する、欧州での効果的な禁止を推進すること。

北大西洋条約機構(NATO)のドクトリンから核抑止論を撤回させるよう立場を明確にすること。

・現在のウクライナ危機に関連して、核抑止の拡大を目的としたいかなる政治的あるいは軍事的行為にも反対すること。

・核兵器の使用の威嚇を最も強い言葉でもって非難すること。

・欧州内外における安全保障及び協力のための非軍事的政府間組織の強化、及び必要な場合にはその創設を支持すること。

・欧州における核技術の輸出禁止、あるいは少なくとも強力な規制を支持すること。

Austrian Chancellor Sebastian Kurz/ Készítette: Kremlin.ru, CC BY 4.0
Austrian Chancellor Sebastian Kurz/ Készítette: Kremlin.ru, CC BY 4.0

この議会決議は、オーストリアのセバスチャン・クルツ外相が、ナヤリット会議において、オーストリア政府が第3回目のフォローアップ会議を主催する旨を提案した際に表明した次のような見方に完全に合致したものである。クルツ外相は、「核兵器は人類すべてにとっての恒久的な脅威であるのみならず、私たちが最終的に乗り越えなければならない冷戦の遺産でもあります。とりわけ、さらなる核拡散の危険を考慮すれば、国際的な核軍縮の取り組みには緊急のパラダイムシフトが必要です。」と指摘したうえで、「核軍縮は世界的な課題であると同時に、人類の集団責任なのです。」と語った。

ダモクレスの剣

新しい研究によると、限定的な地域核戦争でさえも、直後の人道的な緊急事態を超えて、保健、食料安全保障、気候、経済、社会秩序の面で世界的に破滅的な影響を及ぼすとされている。「この危険はけっして抽象的なものではありません。核の脅威は、例えて言えば、私たちの頭上にぶら下がったダモクレスの剣であり、国際的な取り組みの中心に据えるべきものなのです。さらに、偶発や判断ミス、テロによる核爆発の可能性は、私たちが注目しなくてはならない大きなリスクです。核兵器への依存は安全保障への時代遅れのアプローチです。地球そのものの完全なる破壊を基礎とした概念は21世紀においてあってはならないものなのです。」とクルツ外相は強調した。

「こうした言説は、安全保障ドクトリンにおいて冷戦思考がいまだ支配的な欧州において特に必要なものです。100年前、第一次世界大戦における破滅的な化学兵器使用によって、大量破壊兵器の時代が幕を開けました。今日の統合された欧州では、私たちはこの記念を利用しあらゆる努力を払って、20世紀の最も危険な遺産である核兵器を乗り越えなければなりません。」とクルツ外相は訴えた。

来たる会議の重要性は、ウィーンが国際原子力機関(IAEA)という核問題を取扱う唯一の世界機構の本拠地であるという事実にある。包括的核兵器禁止条約機構(CTBTO)とともに、IAEAは核兵器のさらなる拡散を防止するうえで重要な役割を担っている。

冷戦が終結して以来、世界における核兵器の総数は減っているものの、現状の規模は依然として人類の文明を絶滅させるに十分なものである。同時に、核武装国の数は増加し、核兵器を製造する技術的なハードルは下がってきている。したがって、オーストリア政府は、核兵器拡散の防止は、信頼性があり不可逆的な核軍縮と、核兵器を悪だとみなす国際的な取り組みと合わさってはじめて成しうるという立場を採っている。

オスロ会議やナヤリット会議で強調されたように、核爆発が起これば、政府や援助機関は、事態の大きさに対応できるような人道支援を行うことはできない。このために、オーストリア政府は、人道支援組織や市民社会組織全体との密接な協力が、核兵器廃絶のために必要な広範な国際支援体制を構築していくために不可欠な要素だと考えるのである(オーストリア外務省ウェブサイト上のメモによる)。

人類によって共有された目標

「核兵器のない世界」は人類すべてが共有した目標だが、これまでのところ実現していない。冷戦後も、推定1万6300発の核兵器が依然として存在している。9か国が核兵器を保有していると考えられているが、核技術がより入手可能になるにつれて、よく多くの国家、さらには非国家主体さえもが、将来的に核兵器を開発しようとするかもしれない。

オーストリア外務省は「核兵器が存在し続けるかぎり、意図的であれ、計算違いあるいは狂気のためであれ、技術的または人為的なミスのためであれ、核の使用のリスクは現実のものである。従って核兵器は、人類と、地球上のすべての生命にとって耐えがたいリスクを呈しつづけている。いかなる核兵器の使用であっても、人類に最も甚大な緊急事態を引き起こし、地球規模で環境や気候、保健、社会秩序、人間開発、経済に壊滅的な帰結をもたらす。」と述べている。

現代の核兵器が一発でも爆発すれば、広島・長崎での災難をはるかに上回るような破壊と人的被害がもたらされるだろう。どの国家や国際機関も適切な支援を行うことなどできないだろう。核兵器は人類すべてにとっての存在上の危機であり続けている。これらのリスクは抽象的なものではない。それは、これまで理解されているより現実的で深刻なものであり、完全に除去することはできない。

Photo: A test of a U.S. thermonuclear weapon (hydrogen bomb) at Enewetak atoll in the Marshall Islands, November 1, 1952. U.S. Air Force
Photo: A test of a U.S. thermonuclear weapon (hydrogen bomb) at Enewetak atoll in the Marshall Islands, November 1, 1952. U.S. Air Force

したがって、核兵器がもたらす人道的帰結に対する関心の高まりは重要な動きであり、核兵器に関する国際的な議論に前向でまとまりのある効果をもたらしている。国際社会が、核兵器がもたらす帰結とそれに伴うリスクの大きさを議論し理解を深めれば深めるほど、核兵器を廃絶すべきだとの主張の正当性がより明確になり、そうすることの緊急性も強まっていくだろう。

オーストリア政府は、来たる会議で、世界的な核軍縮・不拡散体制を強化し、核兵器及び核軍縮に関するすべての世界的な取り組みにおいて人道上の要請を強く根付かせる世界的な推進力の強化に貢献することを目指している。

オーストリア外務省によると、ウィーン会議はすべての関心ある人びとに開かれたものになるという。すべての国に公的な招待状が送られ、専門家及び/あるいは高官を指名するよう求められるという。また国際組織や、専門的知識を持った市民社会の代表も歓迎される。

さらにウィーン会議では事実を基礎にした討論や専門的発表が行われ、参加者間での双方向的な議論を行うことを目指す。また、より一般的な性格の声明をなす機会が代表らに与えられるという。また、最貧国からの代表に対する限定的な支援計画も準備中であるという。(原文へ

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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【アブダビWAM】

8月28日・29日の両日、アブダビのエミレーツパレス内の劇場において「ユナイテッドネイションズ・オブ・コメディII」(アブダビ観光・文化庁主催)が開催され、世界で最も有名なアラブ人コメディアン7名が登壇する予定だ。

メンバーのラインアップは、いずれも著名な、ネムル・アボウ・ナッサール、アロン・ケイダー、モハメド・アメールハレド・ハラファラアミールK、アリ・アル・サイードそしてサミー・オベイドである。

アブダビでの出演が2度目となるネムル・アボウ・ナッサール氏はWAMの取材に対して、「UAEは伝統的な文化と多様な文化が共存する国なのでコメディアンとしては大変やりがいがあります。多様な観客を前にしたチャレンジは質の高い喜劇を生み出す貴重な機会にもなりますし、観客と出演者双方にとって心に残る楽しいひと時となるでしょう。」と語った。

7人のコメディアンは両日とも出演予定で、ネタの大部分は英語で披露される予定だ。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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【クウェートWAM】

クウェート国営石油公社(KPC)と中国国営石油会社Sinopecの子会社である石油商社UNIPECが8月22日、向こう10年間で中国への原油供給量をこれまでのほぼ2倍とする原油供給契約を締結した。これはKPC史上最大規模の契約である。

これによるとKPCはUNIPECに対して2014年から新契約の下で原油の供給を開始するが、供給量は既に失効した前回の契約における1日当たりの供給量16万~17万バレルのほぼ2倍にあたる30万バレルにのぼる予定である。

香港で行われた契約調印式のあと、クウェート代表団を率いたKPCのナセル・アルムダフ国際マーケティング担当常務理事は、クウェート通信の取材に対して、「私たちは今回10年間に及ぶ原油供給合意に至ったことを誇りに思っています。これは運賃込みで原油の対中国輸送は全て我々の船舶を使用する初めてのパッケージ合意となったもので、素晴らしい成果です。これによって原油の掘削から中国への輸出までスムースな運用が可能となります。」「中国は、原油の輸送にクウェートの全船舶の50%以上を動員する新たな販路先です。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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今もなお続く核の脅威を照射する原爆忌

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【東京IPS=スベンドリニ・カクチ】

原爆投下から69年が経過したが、19万人にのぼる被爆者とその子孫の方々にとってあの日の記憶は今なお鮮明に残っている。あれから69年が経過したが、公式の謝罪は未だにない。あれから69年が経過したが―人類は依然として、核兵器による惨事が再び繰り返されかねない恐ろしい現実に直面している。

各国の要人が69回目の原爆忌を祈念するために日本に降り立つ中、広島市からのメッセージは、あらたな核攻撃が人類と地球に及ぼす甚大な脅威を真剣に考慮するよう諸政府に求める緊急のアピールであった。

Hirohima Peace Memorial Park/ Wikimedia Commons
Hirohima Peace Memorial Park/ Wikimedia Commons

1945年8月以来、核兵器を世界的に禁止するための弛みない努力を続けてきた「被爆者」として知られる原爆投下の生存者たちは、9つの核保有国のうち4か国(米国、イスラエル、パキスタン、インド)を含む各国の大使らに、2014年の広島平和宣言の言葉を噛みしめるよう訴えた。

広島平和宣言は、高齢化が進む被爆者と平和活動家の苦痛に満ちた願いを代表して、核兵器国の為政者らに対して、早期に被爆地を訪れ、米国が広島に投下したウラン爆弾(リトルボーイ)とその3日後に長崎に投下したプルトニウム爆弾(ファットマン)が引き起こした今日にまで続く被爆の実相を自らの目で確かめるよう求めている。

爆心地に近い平和記念公園で8月6日、約4万5000人が黙祷を捧げた。広島では推定14万人が亡くなり、3日後に、第2の原爆が投下された長崎では約7万人が亡くなっている。

Nagasaki, Japan, before and after the atomic bombing of August 9, 1945./ Public Domain
Nagasaki, Japan, before and after the atomic bombing of August 9, 1945./ Public Domain

この悲劇的な出来事は、日本が第二次世界大戦(1939~45)の末期に、連合国への降伏を模索している中で起こった。

平均年齢が79才と推定される被爆者は、これらの運命的な日々に原爆がもたらした身体的・心理的な傷がいかなるものであったかを、今日の私たちに伝えてくれる生き証人である。多くの被爆者とその近親者が、原爆投下時とその後被爆地に長期に亘って残留した放射線による被爆がもたらす様々な後遺症に苦しみながら懸命に生きている。

広島平和宣言は、被爆者の苦しみに哀悼の意を込めつつ「現在の核兵器の非人道性に焦点を当て非合法化を求める動きを着実に進め、2020年までの核兵器廃絶を目指し核兵器禁止条約の交渉開始を求める国際世論を拡大します。」と述べている。

しかし、この夢が現実になる可能性は依然として明るいとは言えない。ワシントンに本拠を置く「軍備管理不拡散センター」が今年初めに発表したところによると、9つの核兵器国は2014年4月現在で合計1万7105発の核兵器を保有している。

核兵器を他国に対して使用した唯一の国である米国は、公的な謝罪を行うことを一貫して拒絶する一方で、当時における原爆投下の決定は第二次世界大戦を終わらせるための「必要悪」だったと主張している。

この手の議論は現在の世界的な地政学の中で大いに利用されている。いまだに核不拡散条約(NPT)に署名していないイスラエルのような国が、中東の今も続く政治的緊張に直面して国家安全保障を守る基本的な手段として核戦力を頑強に保持しているのである。

イスラエルのガザ地区に対する軍事進攻によって、エジプトが仲介した停戦が8月5日に発効するまでに約1800人の民間人被害が出ている事態を受けて、アラブ諸国の一部が、イスラエルこそが中東にとっての最大の脅威であって、その逆ではないと主張している。

一方、推定250発の核弾頭を保有し、現在日本との領土を巡る対立を抱えている中国(日本政府は、尖閣諸島は日本固有の領土であり、領有権の問題はそもそも存在しないと言う立場ととっている:IPSJ)は、事の成り行きから明確に身を遠ざけている。

また、中国の海洋進出を背景に南シナ海においても中国と周辺諸国との対立が激しさを増すにつれ、東アジア地域の平和活動家は、北朝鮮を含めた核保有国間の緊張関係に対処する緊急の必要性を感じている。

広島平和研究所ロバート・ジェイコブズ准教授はIPSの取材に対して、「(核廃絶の)訴えは、人間を殺戮し多大なる苦しみを引き起こす核兵器を禁止せよ、というものです。核保有国はこれらの兵器を保有することによって、犯罪行為に手を染めているのです。」と指摘したうえで、「現在、世界の反核運動は、核保有国が1968年のNPTに従っていないことについて、責任を取らせようと懸命に努力しているのです。」と語った。

ジェイコブズ准教授は、そうした取り組みの例として、マーシャル諸島で3月1日に行われた年次行事「原水爆禁止運動の記念の日(ビキニ・デー)」を挙げた。マーシャル諸島は、米合同任務部隊が1954年3月にビキニ環礁で始めた高出力の核実験「キャッスル作戦」によって破壊的な放射能汚染に晒された。

広島型原爆の1000倍の威力を持つと推定されているこの核実験の結果、数千人のマーシャル諸島の住民が放射線障害を負うことになった。

Photo: A test of a U.S. thermonuclear weapon (hydrogen bomb) at Enewetak atoll in the Marshall Islands, November 1, 1952. U.S. Air Force
Photo: A test of a U.S. thermonuclear weapon (hydrogen bomb) at Enewetak atoll in the Marshall Islands, November 1, 1952. U.S. Air Force

米国は、冷戦期におけるソ連との核軍拡競争という背景の下、1946年から1962年の間に合計で67回に及ぶ核実験を行った。

マーシャル諸島政府は今年4月24日、9つの核保有国が核戦力を解体していないとして、ハーグの国際司法裁判所と米連邦地方裁に別々の訴訟を起こした。国家安全保障の言説に対する挑戦であった。

マーシャル諸島政府の訴訟は、公式核保有国(米国、英国、フランス、中国、ロシア)に対して「核軍拡競争を早期に終わらせ軍縮を進める協議を誠実に行う」義務を定めたNPT第6条を引き合いに出している。

Hiromichi Umebayashi
Hiromichi Umebayashi

広島・長崎への原爆投下の場合と同様に、米国はマーシャル諸島に対しても謝罪しておらず、被害を起こしたことへの「遺憾の意」を表明したに過ぎない。マーシャル諸島のアバッカ・アンジャイン・マディソン元上院議員は、IPSの取材に対して、「米国は依然として、この災難(被爆被害)は、『多数の安全のために少数を犠牲にしたものだ』という見方を崩していません。」と語った。

しかし、非難されているのは米国だけではない。長崎大学核兵器廃絶研究センター梅林宏道センター長は、東アジアに非核兵器地帯を創設する構想の主要な主唱者であり、核兵器は国家安全保障のために必要であるという主張を現在打ち出しているとされる安倍首相に対して厳しい批判をしている。

梅林氏は、核の傘の下で米国と緊密に協力し、国防能力を強化しようという日本の最近の決定を覆す運動を先導している。

「東アジアにおける北朝鮮の核の脅威は、より強力な軍事活動を推し進めるために日本政府によって利用されているのです。唯一の被爆国として、日本は大きな過ちを犯しています。」と梅林氏は語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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