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|ブルキナファソ|記録的な豊作でも穀物不足

【ワガドゥグーIPS】

ブルキナファソの市場では穀物が不足している。2008~2009年の大豊作が発表されるや否や、近隣諸国の業者がブルキナファソに殺到して買っていったからだと市場関係者はいう。 

十分な降雨と政府からの補助金により、今期の穀物生産は420万トンに達し、71万7,000トンの余剰がでた。それでも価格が下がることはなく、上昇し続けている。いつもは輸入される穀物が、ガーナ、マリ、コートジボワールなどに輸出されているためだと考えられる。

 穀物価格情報を専門とするNGO、グリーンアフリカの1月の報告書によると、市場の穀物不足からアワで14%、ソルガムとトウモロコシで20%の値上がりとなっている。「11月にトウモロコシは1袋7,500CFAフラン(約15ドル)だったが、12月は12,000CFAフラン、1月は1,5000CFAフランだ」とシシリ農業専従者連合(FEPACI)のJ.D.ムーサ会長はいう。 

グリーンアフリカは、大豊作にもかかわらず穀物が不足しているのは、不足地域の生産者と業者による備蓄も原因と考えている。生産者の在庫の多くはまだ市場に出回っていないことから楽観視する専門家もいるが、価格下落を警戒する農家は、やはり豊作だった落花生、ゴマ、豆を当面売って対抗しようとしている。 

生産者に出荷を促す会合に出席したセドゴ農水相は、不信感を抱いて抵抗を示す生産者に補助金を更新するなどして市場に穀物を流通させたいと語った。昨年度は、物価上昇に対処するため3万トンの備蓄穀物を政府が割引価格で売り出すという事態になっていた。穀物部専門家間委員会のS.シセ委員長は、政府が事前に利害関係者と協議していれば、過剰な輸出が防げたのではないかという。 

サヌー貿易起業大臣は「常に意見を聴き、相互理解を重視しているが、今のところ問題解決に至っていない」という。「このまま価格上昇が続けば昨年同様暴動が繰り返される可能性もあるが、それは避けたい」 

ブルキナファソ農業者連合(CPF)のB.ダオ会長は、食糧の自給と生産者の福利を確立するために農業支援は重要だという。同会長は「問題を避けるため、政府は余剰分を買い取って市場に適切な価格で売ることに合意すべきだ」とIPSの取材に応じて語った。 

豊作でも穀物価格が上昇しているブルキナファソについて報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー= IPS Japan 浅霧勝浩 

|世界経済フォーラム|ダボス批判

【ダボスIPS=グスタヴォ・カプデヴィラ】

スイス東部の観光リゾート、ダボスで開催された今年の世界経済フォーラム(WEF)の特徴は、世界経済/金融危機の責任者およびそれを支持してきた体制との決別であった。 

スイス社会党のスザンヌ・ローテネッガー議員は、同国のNGO「ベルン宣言」と「リーンピース・スイス」が組織した反ダボス会議「Public Eye on Davos」(ダボスに対する市民の目)の表彰式でスピーチし、ダボス会議は危機の原因となった政策を推進してきたイデオロギー機関であると批判。「同会議は非公式ネットワークを築く場で、政治家は下座に座り、メディアはリッチでパワフルなグローバル・エリートを称賛してきた。同会議は、破たんしたネオリベラル・ビジネス・モデルの怪しげなロビイング機関である」と述べた。

 Public Eyeの主催者は、WEFメンバーおよび大企業が犯した社会/環境破壊行為を体現したとして、ガーナでの金採掘に疑念が持たれる米国のニューモント鉱産、ドイツに石炭発電所を建設したスイスのBKW FMB社にネガティブ賞を授与。 

ポジティブ賞は、アフリカ系800世帯を強制移動させ石炭採掘を行おうとした多国籍企業の決定を覆したコロンビアの組合リーダー、ジャイロ・クイロスとフレディー・ロザノ、そして彼らの組合シントラカルボンに贈られた。(ベルン宣言とグリーンピースは1月29日、多国籍企業の海外プロジェクトで地元コミュニティーの権利が侵害されることのないよう国際企業責任規則を採択するよう求める書簡をオバマ大統領宛てに送付した。) 

ローテネッガー議員は、ダボス会議は民間会議であるにも拘わらず、スイス政府が800万スイスフラン(700万ドル)の補助を行っていることについても疑問を投げかけた。更に、ダボス会議反対の街頭抗議運動は殆どが禁止され、期間中は言論の自由、集会の自由も認められないと述べた。 

しかし、経済モデルの発案者として成功を収める同会議は財政的にうまく行っており、世界のトップ1,000社、WEFメンバーからの寄付は毎年3,500万ドルを超えると同氏は予測する。スイスのチャリティー基金として活動するWEFは、金融会社の特別援助、会議参加者の料金を含め約8,800億ドルの年間収入があるという。 

ローテネッガー議員は最後に、ポスト資本主義体制およびその実現へ向けた根本的な議論、特に左派、組合、社会活動組織間の議論が必要と主張した。 

ベルン宣言およびグリーンピース・スイスが主催した「Public Eye on Davos」におけるスイス社会党議員の主張を紹介する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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|世界経済フォーラム|危機を作り、危機後の世界を探る

|シンガポール|金銭教育の恩恵を受ける家庭内労働者

【シンガポールIPS=プリメ・サルミエント】

シンガポール在住のフィリピン、インドネシア、スリランカ出身の家庭内労働者150,000人以上が持つ一番の問題は、この豊かな都市で月に200ドルから300ドルという適正な賃金を受取っても、帰国して生活する十分な資金を貯蓄出来ないことだ。 

家庭内労働者が、虐待的な雇用主の元で働かなければならない事件は国際的に大きく報道されているが、実際はこの問題の方が大きい。

 2001年に国連女性開発基金(UNIFEM)が実施した調査によると、シンガポール在住の出稼ぎ労働者の目的は、国へ帰る資金を貯めることと手に職を付けることだった。 

UNIFEMシンガポール代表のサレーマ・イスマエール氏によると、家庭内労働者は収入のほとんどを祖国の家族に仕送りしてしまい、将来のために蓄える分さえ残さないのだそうだ。一方、支援を受ける家族は、そのお金でビジネスを始めたり土地を購入したりせずに散財してしまうという。 

「家庭内労働者はたくさん稼ぐので、家族を支えなければと罪悪感を抱く」とイスマエール氏は言う。出稼ぎ労働者への金銭教育が重要だ。「金銭が管理できれば、人生も管理できる。」 

2005年、アジア開発銀行(AsDB)が発行した出稼ぎ送金に関する調査でも、金銭教育を出稼ぎ労働者の状況改善手段の1つとしている。 

「出稼ぎ労働者は、自分の時間もなく、自分の一般的な権利や選択肢も(仕送りに関する物を含めて)知らない。教育を受ければ、情報に基づいた社会的、経済的決断が可能だ」とアジア開発銀行は述べている。 

2006年UNIFEMは、家庭内労働者向けの金銭教育を専門で行うシンガポール唯一の組織として創設されたAidhaに、16,000シンガポールドル(約10,000米ドル)の活動開始資金を提供した。 

創設者であり代表を務めるサラ・マブリナック氏は、起業家精神や金銭管理の教育をすれば、労働者が帰国後に生計を立てる助けとなると言う。 

Aidhaは会計、起業家精神、効果的なコミュニケーションスキル、コンピューター操作、時間管理、自尊心の向上などのワークショップを行っている。ボランティアが教える各コースに生徒はわずか25シンガポールドル(16米ドル)で参加出来る。 

マブリナック氏は、経済金融危機で皆が仕事の心配をしている今こそ金銭教育が重要だと考える。家庭内労働者はたいてい一家の稼ぎ手となっているので、金銭管理を学んで家族を危機にさらさない様にしなければならない。 

しかし、ワークショップに参加するより学んだことを実践する方が大事、とマブリナック氏は言う。「行動を変えなければならないので大変だ。預金口座を実際に作って、管理しなければならない。」 

Aidhaは、友人と作る金銭教育のクラブ、「財務羅針盤投資クラブ」に入ることを積極的に勧めている。メンバーは週に1度人生設計の指導員と会い、貯蓄目標と優先順位に関して話合い、目標達成のための毎月の貯金額を計算し、目標実現に必要な予算を貯める。 

出稼ぎ労働者が抱える問題を教育で改善するシンガポールでの取組みについて報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリ=IPS Japan 浅霧勝浩 

|世界経済フォーラム|危機を作り、危機後の世界を探る

【ジュネーブIPS=グスタヴォ・カプデヴィラ】

水曜日から世界経済フォーラム(ダボス会議)が開催される。多国籍企業の利益を考えるビジネス界のエリート、シンクタンク、政府首脳、政治家など、2,500人がスイスのリゾート地に集まる。 

報道機関は自由市場のイデオロギーに組みするもののみに、概ね限定されており、いくつかのセッションは、非公開で行われる。39回目となった今回の会議のタイトルは「危機後の世界の形成」である。

 創始者のクラウス・シュワブ氏は、ダボス会議がイデオロギーを有しているという批判を否定する。この10年間で極端な私欲が先行したことは修正されるべきだが、「資本主義改革」は果たされるべきてあると述べた。 

今週ジュネーブで国連人権委員会の諮問委員会に出席するジャン・シグレール博士は、同会議を批判し、「皮肉と傲慢と盲目そのものである。」と、IPS記者のインタビューで語った。シグレール博士は出席者の贅沢も批判する。政府に640億スイスフラン(5,630万ドル)の損失補填援助を受けたUBS(スイス銀行)の代表は、豪華ホテルに滞在している。 

20年前に同会議は規制緩和、市場の自由化、民営化を高らかにうたい、参加者は利潤の絶頂を謳歌していた。「ダボスに来ている銀行家や事業家の半分は、とっくに監獄に送られてしかるべきだ。彼らは世界を占有するための、イデオロギーの基礎を作ったのだ。」とシグレール博士は述べた。同博士によると、会議で元世銀頭取のウォルフェンソン氏は、「国家なき世界政府が究極の目標である。」と述べ、喝采を浴びた。 

新自由主義に基づく経済を先導し、今回の危機の原因を作ってきた人々が集うとの批判もあるダボス会議から報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|開発|食糧サミット-懸念は示すも、具体案なし

【マドリードIPS=チトー・ドラゴ】

1月26、27両日に開催された国連とスペイン政府主催の『食糧安全保障に関するハイレベル会合(食料サミット)』には、100カ国の政府、市民団体、労組、民間企業、学界、国際機関、援助機関などが参加した。世界で飢餓に苦しむのは10億人。とりわけ南の開発途上国に集中している。会議ではこの問題について議論を深め、調整メカニズムを作り上げるために昨年6月のローマにおけるハイレベル会合以来の進展を振り返った。 

会議は具体策を打ち出すことができず、宣言の中で、各国政府と国際機関に約束した援助の履行を要請するにとどまった。

 NGO関係者によれば、公正な農業貿易を促進するために競争を阻害するような補助金の廃絶を訴えたことは前向きな側面だ。国連食料農業機関(FAO)のディウフ事務局長は「手を打たなければ飢餓の問題はさらに悪化する」と警告、今年度中に国家首脳級の食料サミットを開催し、専門家会議で科学的検証と国際的パートナーシップを促進する一方、既存の組織を改革して行動計画の効率化を促すことを提言している。 

IPSの取材に応じたスペインのモラティノス外相は「解決策は明白」として、2012年までに全ての先進工業国がGDPの0.7パーセントを援助にまわすことを求めた。スペイン現政権はODAを10億ユーロ増額することを表明、他の15カ国も来る5年間に55億ユーロの支援を約束。EUは13億ユーロの支援を約束している。 

世界で6,500万人が加盟する世界労働組合連名(WFTU)は、NATOの予算を10%削減すれば1,000億ドルのODA増額が可能と指摘。国境なき医師団、Vía Campesina Europaは飢餓対策の名目で種子や肥料の売込みが見られると指摘。食料主権の尊重を訴えた。 

国際農業開発基金(IFAD)のレナート・ボーゲ総裁はIPSの取材に応じ、世界の4億5,000の中小農家を支援すれば飢餓の改善に役立つと述べた。 

カリタス、国境なき技師団、La Suma de Todos、ProsaludのNGO4団体は『The Right to Food: Urgent(緊急の食料権利)』キャンペーンを立ち上げた。スペインのサパテロ首相が援助の増額合意を得たことを讃え、引き続き指導力を発揮するよう要望している。 

スペインで開催された食料サミットについて報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩 

|気候変動|オバマ新政権、地球温暖化政策に本格始動

【ワシントンINPS=ジム・ローブ】

クリントン・ブッシュ両政権で成し得なかった問題にいよいよバラク・オバマ新大統領が挑む。温暖化対策防止に向けた京都議定書をめぐって、クリントン前政権では調印にまでは漕ぎつけたものの上院で否決され、一方のブッシュ前大統領は同議定書が米経済を損なうとして支持しない姿勢を固持してきた。

しかし、前政権の路線修正に踏み出すためオバマ新大統領は26日、気候変動政策について2つの具体策を打ち出した。

 まず、連邦環境保護局(EPA)に対し、カリフォルニアと他の13州が採用を求めている新たな自動車排ガス規制の認可に向けて検討を行うよう指示した。元々、この排ガス規制は連邦基準よりも厳しいものであったため、ブッシュ前政権は差し止めを決定。しかし、先週シュワルツェネッガー州知事はオバマ大統領に認可の再検討を求め、同大統領もカリフォルニア州の温暖化政策への積極的姿勢を評価しこれを認めた。 

次に、オバマ大統領は運輸省に対しても既存の燃料基準を2011年度から40%にまで徐々に引き上げるよう規制強化を指示。「全ての自動車がこれに従えば、1日で200万バレル以上の石油を節約できる。これはペルシャ湾から米国への原油の輸入量にほぼ相当する」と語った。 

一方、オバマ大統領から地球温暖化防止問題の米政府特使として任命を受けたトッド・スターン氏は「ようやく米国が気候変動問題への取り組みで国際的な交渉の場に堂々と立てる時が来た。我々は前向きで活発な議論を行う必要がある」と述べた。同氏はクリントン元大統領の下で京都議定書策定に携わった人物である。 

環境保護団体『グリーンピース』の地球温暖化運動に取り組むSteven Beil代表はオバマ新政権の新たな環境・温暖化政策に期待を示した。「アメリカは8年もの間ブッシュ前政権の反対を受け、温暖化対策に踏み切れなかった。しかし今後は、他国から『環境問題に消極的な米国』と批判・非難されることもないだろう」。オバマ米新政権が乗り出したエネルギー・環境政策について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー= IPS Japan 浅霧勝浩

|カリブ海地域|ハイテク・ネットワーク設立で武器密輸を監視

【ポート・オブ・スペインIPS=ピーター・リチャーズ】

 世界では約5億の小型武器が使用されており、それによって年間約50万人が殺害されている。カリブ諸国では、今年に入り既に100人の犠牲者が出ている。 

トリニダードに本部を置くImplementation Agency for Crime and Security(IMPACS:犯罪治安実行機関)のリン・アン・ウィリアムズ事務局長は、ある国で犯罪に使用された武器が別の国で再び使用されることも珍しくないと言う。 

ジャマイカ、トリニダード・トバゴ両政府は、拳銃の密貿易と麻薬売買の関係を把握しており、コロンビア、ハイチ、ホンジュラス、ベネズエラといった国々から高性能小型武器が送りこまれているとしている。

 トリニダード・トバゴの国家安全保障大臣でカリブ共同体(Caricom)国家安全保障・法施行担当大臣協議会の議長を務めるマーチン・ジョセフ氏は、「これらの武器は、密輸品の保護、ユーザー・競争相手に対する脅迫、縄張り確保、ギャング・メンバーのリクルートなどに使用されている。拳銃関連の暴力は、カリブ諸国にとって保健システムの負担になるだけでなく社会的/経済的問題を生じさせている」と語る。 

最近国連が発表した中央アメリカおよびカリブ諸国における小型武器の子ども・青少年に与える影響についての報告書によれば、武器密輸業者は年間数百万ドルの外貨を稼いでいるという。また、ラテンアメリカおよびカリブ諸国の殺人件数は世界全体の42パーセントを占めるという。 

ジャマイカ警察の統計では、2005年1月から2008年5月までに5,068人が殺されており、その78パーセントが拳銃による殺人だ。怪我人は2,000人を超える。トリニダードでは、昨年の死亡者は544人。その54.2パーセント、295人はギャング抗争による射殺という。 

カリブ諸国政府は3年前にIMPACS設立で合意。現在、メンバー国の小型武器密輸およびこれに関連した犯罪の取り締まりを強化するため、地域統合弾道情報ネットワーク(RIBIN)開発を行っている。ウィリアムズ事務局長は、これにより米国、カナダなどの国々との協力拡大も可能になると語っている。 

実際米政府は、既にジャマイカに対して「高い犯罪率はビジネスにも影響し、投資にも悪い影響を与える」と警告している。米国国際開発庁のジャマイカ担当カレン・ヒリアード部長は、「ジャマイカの中小企業は、年間収入の平均17パーセントをセキュリティー・コストに費やしており、イラクにおける23パーセントに匹敵する」と語っている。

ジャマイカおよびトリニダード・トバゴにおける小型武器密輸とそれによる殺人事件の増加について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPSJapan 浅霧勝浩

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|米国|「イランによるタリバン支援」説、否定される

|パキスタン|オバマ大統領に対する期待と懐疑

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【カラチIPS=ビーナ・サルワール】

世界数10億の人々がテレビ放送されたバラク・フセイン・オバマ氏の第44代米大統領就任式を見守る中、彼の希望のメッセージはパキスタン国民にも共感を与えた。しかし、一部にはシステムの変革は無理との見方もある。


パキスタン国民の多くはまず、オバマ大統領がアフガニスタン国境に近い北部地域の標的攻撃に無人偵察機あるいは遠隔操縦機を送るという米軍の政策を変更するよう欲している。パキスタン政府も、これは好戦性および暴力の拡大を生むだけだとしている。 

教育開発センターの所長で著名なイスラム教学者であるアッバス・フセイン氏は、米新政権の対話の姿勢を歓迎している。しかし、短期、中期の変化に期待してはならないと言う。

 友人と就任式を見ていたカラチの環境活動家アリフ・ペルヴァイズ氏は、「オバマは将来を見据えたダイナミックな人物で、世界の人々に希望を抱かせる100年に一度の逸材だ」と語る。パキスタンの「クリントン気候変動イニシアチブ」の責任者である同氏は同時に、「余り期待過ぎると失望することになるかも知れない。彼一人では米国の政策は変えられないのだから」と語っている。 

一方、家族訪問のため一時帰国しているペルヴァイズ氏の友人は、「オバマが米国の外交/国内政策に劇的な変化をもたらすことはないだろう。イラク戦争は、既に沈静の方向にあり誰が大統領になっても変化しただろうし、グアンタナモ収容所閉鎖も大したことではない」と言う。 

パキスタンのメディアはオバマ氏とパキスタンとの関係について大きく報道してきた。当時二十歳の学生だったオバマ氏は、1981年に3週間のパキスタン旅行をしており、昨年サンフランシスコの選挙支援組織を訪れた際、この旅行でジョン・マケイン候補やヒラリー・クリントン候補よりも大きな海外経験をしたと語っている。新政権のビル・バートン首席報道官によれば、オバマ氏はロサンゼルスのオキシデンタル・カレッジからコロンビア大学に移るまで、大学時代の友人モハメド・ハサン・チャンデオ氏の所に泊っていたという。オバマ氏自身、回想録の中で数人のパキスタン人学友について明かしている。 

パキスタン国民の中には、このコネクションを強調する者もいるが、ボストン大学のアディル・ナジャム教授は、そうすることは、オバマ氏の若き日の冒険に暗い意味を見出し、策略を巡らすそうと図るオバマ反対派の思う壺にはまることにもなりかねない」と危惧する。 

ある新聞売りは、「米国の政策は、パキスタンと同じく国民ではなく陰の人物によって作られるのだから個人による変革は無理だ」と語った。 

オバマ大統領就任に対するパキスタン国民の声を紹介する。(原文へ) 
 
翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|キューバ-米国|誰の「機会」か?

【ハバナIPS=パトリシア・グロッグ】

バラク・オバマ大統領率いる米新政権に対し、キューバでは両国関係の緊張緩和への期待が高まっている。しかし、一部学者の間では懐疑論も聞かれる。 

ハバナ大学のルイス・レネ・フェルナンデス氏は「日が経つにつれ、対キューバ政策に関するオバマの考えについてだんだん楽観できなくなっている」とIPSの取材に対し述べた。 

「米国の専門家は対キューバ封鎖解除の必要を説いているが、新政権はキューバへの航行の自由化以外に両国関係改善の意向は少ないのではないか。最近のオバマや国務長官に就任するヒラリー・クリントンの発言が今後の政策を示唆するものとすれば、大きな変革が期待できる根拠は見えない」と話す。

 フェルナンデス氏は、新大統領が、エネルギーや環境の分野での協力、貿易の自由化、テロ支援国家のリストからの除外などの意志を今なお持っているとすれば、前進となるだろうとしながらも、次のように指摘する。 

ヒラリー・クリントン国務長官が1月13日の上院公聴会で、新政権の誕生はキューバにとって政治犯の釈放、経済自由化、国民に対する抑圧的制限の解除など変化の機会となる、と述べたが、これは「政治的近視眼」を露呈するもの。アフガニスタンとイラク侵攻、秘密刑務所、囚人の不法な引渡し、グアンタナモ収容施設などにおける拷問等々、問題の根源は米国自体にある。 

新政権がブッシュ政権の施策によって色あせた米国のイメージを改善したいのであれば、米国にこそ、旅行や送金の制限解除以上の具体的措置を採る「機会」がある。 

対キューバ関係の改善は、ラテンアメリカ、カリブ海地域、アフリカ、アジアなどの第三世界において、さらには先進諸国や米国自身の幅広い社会層において、米政権にとって極めてプラスの影響をもたらすだろう。また、麻薬密売、テロ、再生可能エネルギー、環境などの共通の重要問題に協力する機会を生み出すだろう。貿易・投資は増大し、雇用が創出され、旅行者数も増加することが期待される。 

米新政権により対キューバ封鎖解除の施策が短期間にとられるとの期待は楽観的すぎるが、しかしそうした施策はキューバよりも米国自身に政治的・経済的利益をもたらすとする分析について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|ロシア|移民労働者への帰国要請強まる

【モスクワIPS=ケスター・ケン・クロメガー】

景気後退の悪化は、ロシア人よりも旧ソビエト連邦諸国からロシアへ来て働いている人々に、より厳しい影響を与えている。ウラジミール・プーチン・ロシア連邦首相は先月、2009年のCIS独立国家共同体(バルト3国ラトビア、リトアニア、エストニア以外の旧ソビエト連邦の国々で形成された緩やかな国家連合体)からの労働者受け入れ割当てを、ロシア人の雇用保護のため半分、もしくはそれ以上減らすよう命じた。 

これは400万人の定員が200万人あるいはそれ以下に減らされ、移民労働者の多くが解雇に追い込まれることを意味する。

ここ数年移民労働者の定員は、ロシアの経済成長にともなう安い労働力の需要により大幅に増加した。しかし、現在ロシア企業は建設業などの肉体労働で何千人もの移民労働者を解雇している。モスクワの国際労働機関(ILO)におけるRegional Migration Programmeの技術顧問二リム・バルア氏はIPSのインタビューに応じ「プーチン首相の政令は390万人という移民労働者定員の削減を直接謳ったものではない。しかし一時は定員を30パーセント増加する準備があった一方、雇用市場の状況に応じて50パーセントまでの定員の増減を許容する内容となった」と述べた。景気後退が続けば、定員を半減することも許される。 

労働移民は、外国人労働力の需要とビザ免除国(グルジアとトルクメニスタンを除いたCIS独立国家共同体の国々)と他の国々に対する割り当てを勘案して受け入れられている。アルメニア、アゼルバイジャン、カザフスタン、キルギス、ウクライナの経済は石油で潤っているロシアで働く移民労働者からの送金に強く依存している。 

こうした正規の移民の他にロシアには少なくとも500万人の不法労働者がいると言われている。ロシアからの送金が国で待つ家族の主要な資金である一方、移民労働者の多くはロシアでの人権侵害や保証の少なさについて不満をこぼす。ILOの調査により、ロシアで働く移民労働者の社会保障と身辺の安全度が極端に低いことも明らかになった。 

中央アジア旧ソビエト連邦の国家指導者達は、ロシアに対して移民労働者の労働環境を改善し、ロシア領土において彼らの市民権を保護するよう訴えてきたが、今では移民労働者の雇用そのものが脅かされる危機に直面している。バルア氏は「金融危機以来増えている給与未払い問題は労働権の侵害であり、解雇は労働契約と労働法に反している」という。 

ロシア科学アカデミーの社会経済問題研究員であるElena TjurukanovaはIPSのインタビューに応じ、「新しい定数を採択すれば、合法移民と違法移民の割合が入れ替わるだけである。また当然不法労働者は何の権利も保障されない」と述べた。 

Centre for Social and Labour Rights のPyotr Bizyukov氏はロシアの大手新聞『Nezavisimaya Gazeta』と『Novye Izvestia』のインタビューに「ロシア企業は問題が壊滅的ではないにも関わらず、従業員を『念のため』という理由だけで早く解雇しすぎた」と述べた。Bizyukov氏は、経済危機に関わらずロシアはまだ外国からの労働力を必要としており、じきに労働力不足に陥ると指摘する。その仕事の大半は過酷で賃金が低い、ロシア国民が避けたがる仕事である。 

1月初め、ドミトリー・メドヴェージェフ大統領が認可した、ロシア人失業者の支援を拡大する法令には、失業者の再訓練や雇用創出のための公共工事費などが予算に含まれる。政府は18億ドルをロシア人失業者の支援のために確保しており、その準備金の大半は石油による収入でまかなわれている1,370億ドルからくるものである。 (原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩