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│米・イラン│何が「チェンジ」するのか

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【ホノルルIPS=ファリデー・ファルヒ】

「我々は『チェンジ』の名に値しないオバマ氏の行動に満足していない。ただし、希望がないわけではないが」――イランのアリ・ラリジャニ国会議長が記者に対して2月2日に発したこの言葉は、オバマ新政権の対イラン政策に対するイランの様子見の姿勢を示している。イランの指導部は、米国が変わる可能性に期待をしつつも、何も変わらないという結果にも備えている。

 イランが求めているのはより根本的な変化だ。だから、米国のバトミントン・チームがテヘランで開かれる「ファジル・バトミントン・トーナメント」に参加しようとした際、イラン政府はビザの発給を拒否した。米国政府がイラン国民に対してそのような取り扱いをしているのだから、イランが同じことをしても不思議ではない、というのである。

たしかに、イランはオバマ政権の誕生を好意的にみている。アフマディネジャド大統領は、イラン革命後の大統領としては初めて、オバマ政権の誕生を祝福する書簡を送ったほどである。

オバマ氏は、イランによるウラン濃縮一時停止という前提条件を付さずにイランと外交協議を始めたいと繰り返し述べてきた。しかし、いったい何のための協議なのか不明確なため、イラン側は、これまで米国が用いてきた「アメとムチ」式のやり方が根本的に覆されるのか疑念を持っている。

とくに、3人の指導者たちが「アメとムチ」式外交に激しく反発している。ラリジャニ議長とラフサンジャニ元大統領(現・専門家評議会議長)は、「米国のやり方に根本的な変化がないなら、外交協議を始めるに及ばず」と発言し、最高指導者のハメネイ師は米国によるイラン敵視政策に変化はないだろうとの見通しを示している。

イランは、過去と同じく、協議を受け入れる準備はあるとのメッセージを発している。しかし、過去と同じ発想に基づいた協議開始は、結局、過去と同じ結果しか生まないこともまた、彼らのメッセージには含まれているのである。

翻訳/サマリ=IPS Japan浅霧勝浩

|オーストラリア|先住民族、建国記念日の変更を主張

【メルボルンIPS=スティーブン・デ・タルチンスキー】

オーストラリアは、シドニー湾に最初の移民船が到着しサウス・ウェールズ植民地を建設した1788年1月26日を建国記念日と定め、毎年盛大なイベントを催している。

これについて、先住民族の学者、作家、映画監督であるサム・ワトソン氏は、「先住民族アボリジニは、何故1月26日を建国記念日とするのか当惑してきた。その日は、長期にわたる植民地侵略の始まりの日、つまり大量殺戮、大量処刑、土地の収奪、今日まで続く民族破壊政策の始まりの日だ」と語る。

実際、国家としてのオーストラリアは植民地の連邦化が行われた1901年まで存在しなかったのだ。

 植民地化以前の人口は少なくとも31万5,000人から75万人あるいは百万人を超えるとされるが、病気、迫害、強制的な立ち退きや融合策などにより先住族人口は1788年以降急減した。しかし、政府は1935年に1月26日を全国的な建国記念日と定め、1994年からは国民の祝日としている。祝日の前日には国会議事堂の前で国民栄誉賞が授与される。

今年の受賞者は、先住民族リーダーのミック・ドドソン法学教授(58)であった。北西部ヤウル族出身のドドソン氏は、国連先住民族問題常設フォーラムのメンバーでオーストラリア国立大学先住民族研究センターの所長を務める。ドドソン教授は直ちに建国記念日を変更すべきかどうかについて対話を行うよう要求。受賞の意思の無いことを明らかにした。

多くのオーストラリア人は対話を妥当と考えているようだが、政府はこれを拒否。ケビン・ラッド首相は、建国記念日のスピーチで「先住民族リーダーおよび建国記念日変更を要求する人々に対し、私はノーと言わせてもらう」と発言。その数日前には、先住民族問題担当ジェニー・マクリン大臣も変更の意思のないことを明らかにしている。

一方、活動家グループは、先住民族および彼らの環境に与えた被害を償うため補償が必要であり、すべてのオーストラリア人が建国記念日を祝う前に土地を巡る協定に調印すべきと主張している。ワトソン氏は、「この国の800に及ぶ先住部族と白人が協定を結んだ日こそ建国記念日にふさわしい」と語っている。

オーストラリアの建国記念日に関する諸問題について報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

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|政治|ガザ攻撃の惨状に、困難な課題を表明した国連事務総長

【国連IPS=タリフ・ディーン】

1月国連施設も爆撃を受けたガザ地区を訪問した潘基文国連事務総長は、いつもの物静かな事務総長とは異なり、「国連に対する常軌を逸した極めて受入れ難い攻撃だ」として、イスラエルの「過度の暴力」を激しく非難した。

この手厳しい論評は意外であった。イスラエルが相変わらず人道法に反し、22日に及ぶ今回の戦闘で1,300人以上のパレスチナ人を殺害、それも大半が民間人であったにもかかわらず、事務総長はエルサレムで前日記者団を前に「イスラエルは責任ある国連の加盟国である」と発言していたからである。

しかし、戦闘を逃れてきた難民にとって安全な避難所であるはずの国連施設の惨状は、事務総長におそらく消し難いマイナスの印象を残したのだろう。

 先週のジュネーブでの記者会見でも、事務総長は「(ガザで)目にした光景にいらだち、うろたえ、そして怒りを覚えた」と語り、イスラエル批判を繰り返した。

イスラエルのオルメルト首相が約束した調査結果を待つ一方で、事務総長は国連施設の攻撃について捜査する独自の独立国際チームを設置するものとみられる。近々発表されるだろう。

ワシントンに本拠を置く「ミドル・イースト・レポート」の寄稿編集者モイン・ラバニ氏は「ガザ訪問の際に極めて強い口調で訴えた潘基文国連事務総長は高く評価されるべき」とIPSの取材に応えて述べた。

ラバニ氏は、事務総長は目の当りにしたことをありのままに説明し、調査とアカウンタビリティ(説明責任)の必要を説き、さらには「パレスチナ人民の自己決定権」という魔法の言葉まで持ち出したと話す。

「この数十年の歴代国連事務総長の声明の中でも最も強力なものだった」と、著名な中東政治のアナリストであるラバニ氏は評している。

ラバニ氏は、「潘事務総長は困難な課題を設定した。国連と加盟諸国にその課題を乗り越える政治的意思があるのかどうかを見据えることが必要」と述べた上で、「私にはそうは思われない」と、国連がイスラエルを罰する実効性について悲観的な見方を明らかにした。

人権諸団体の要求にもかかわらず、イスラエルは、主として政治的な理由から、そのガザ攻撃について厳格な国際調査をおそらく免れるだろう。

ワシントンにある米国平和研究所(USIP)のジェニングス・ランドルフ・プログラムの上級研究員であるデヴィッド・トルバート氏はIPSの取材に応えて、イスラエルは国際刑事裁判所(ICC)に加盟しておらず、ハーグにあるこの法廷はイスラエルに対し管轄権はないと説明した。

ICCが管轄権を行使できるのは、ICCの加盟諸国の国民もしくは加盟諸国の領土で犯罪を行った者に限られる。

「どちらも今回のケースには該当しない」と元国連事務次官で、旧ユーゴスラビア国際刑事裁判所の次席検察官も務めたトルバート氏は言う。

トルバート氏は、スーダンのケースのように国連安全保障理事会にはイスラエルの戦争犯罪をICCに付託する権限はあるが、その見込みがないことは明らかと指摘する。

「申し立ての犯罪が行われた領土に対し管轄権を持つ国際裁判所はほかにもない」とも説明した。

しかし「人道に対する罪については法律で普遍的管轄権を定めている国もあることに留意すべきだ。ただ、これはまったく別の問題であり、分析である」と語った。

「いくら期待して待ったとしても、自分が生きている間にイスラエルの指導者が国際法廷で裁かれることはないだろう」と言うラバニ氏は、「法律上明白であり、1940年代以降のイスラエルのほぼすべての政治・軍事指導者は終身刑に処されるあるいは銃殺刑に処されるべきという以外結論はない。しかし法律は物事の片面でしかない」と話す。

もうひとつの側面は政治だと指摘する。そして、とりわけ加害者側がイスラエルや米国である場合は、無力な人々、無防備な人々に対しシステムは不正に操作されると言い添えた。

「ICCを見ると、失墜したアフリカの軍司令官や独裁者のための国際裁判所と改名した方が良いかもしれない」とラバニ氏は冷ややかに述べた。

これまでのところ、さまざまな戦争犯罪法廷に起訴されあるいは裁判で裁かれた者はほぼ全員アフリカ人、とりわけリベリア、スーダン、コンゴ民主共和国、ウガンダ、中央アフリカ共和国の人々である。たとえば、リベリアのチャールズ・テイラー元大統領、スーダンのオマル・アル・バシール大統領、コンゴの反政府勢力元指導者ボスコ・ヌタガンダ、スーダンの閣僚アフマド・ムハンマド・ハルン、コンゴの反政府勢力指導者トマス・ルバンガなどである。

ラバニ氏は、イラクを破壊した責任者がハーグで裁かれる可能性はゼロだと話す。

「ガザ? 同じことだ。国連総会でイスラエルの戦争犯罪について調査し、起訴するための特別法廷が設置される可能性がわずかながらあると論じる人もいるだろうが、そうした動きは見られない」と言い添えた。

トルバート氏は、ガザ紛争に対する国連の措置について「この件は平和と安全保障の問題であるから、安全保障理事会にのみ意義ある行動をとる権限がある(国連憲章第7条に基づく)」と言う。

したがって、安全保障理事会は、憲章の規定に従い、平和と安定の再構築のためさまざまな行動を採り得た。

しかしいかなる行動案も、安保理常任理事国5カ国のいずれの国も拒否権を行使することなく可決されなければならなかったが、そのようなことにはならなかった、とトルバート氏は話す。

ラバニ氏は、国連内のパワーバランス、すなわち組織内の力が安全保障理事会に移行すること、そして国連内で米国とその同盟国が享受している主導権を考えると、国連は国際平和と安全保障を確保するその権限と責任を遂行するために意義ある行動をとる立場にあるとは言えないと論じる。

ラバニ氏は、さらに面倒なことは、国連が(米国、ロシア、欧州連合とともに)中東カルテットのメンバーである点だと指摘する。「その趣意は、国連の代理を務め、有意義な和平プロセスにつながり得る賢明な政策を妨害し、(英国の前首相である)トニー・ブレア氏を世界舞台にとどめておくことにすぎないようだ」

「国連がカルテットのメンバーに加わるよう強いられたことは、おそらく国連にとってこの上ない侮辱だろう。なぜならカルテットがこれまで行なってきたこと、主張してきたことは、国連憲章と直接相反するからである」と述べた。(原文へ)

翻訳=IPS Japan 

|エネルギー|パラセールがもたらす海運新時代

【ドュッセルドルフIPS=マリセル・ドレイザー】

On the high seas with parasails. Credit: SkySails

パラセールの利用によって大型輸送船のエネルギー消費を大幅に減らす技術の開発が、ドイツで進んでいる。

輸送船に取り付けられたパラセールは、コンピューター制御で異なる風の強さや方向に対応することができる。面積160平方メートルのパラセールは8トンの牽引力をもたらすことができるが、これは、エアバス社製のA318のエンジンと同じだけのパワーである。

これによって、平均的には10~30%、最大では50%のエネルギー消費をカットすることができるようになった。世界の海上輸送によって年間8億トンのCO2が発生しているから、この技術によって地球温暖化抑制に貢献できる。

 この技術を開発したのは、ドイツ北部のハンブルクで生まれたシュテファン・ラーゲさんだ。15年前に砂浜でパラグライドをしているときに、この牽引力を海運に利用できないかと考えたのがきっかけだという。

2001年にはスカイセイルズ社が開発を開始し、2007年には国際海運路にて実験が開始されている。

パラセールの大きさによって、システムの価格は50万ドルから350万ドルまでとさまざまだが、燃油の節約によって、3~5年もあれば投資を回収することができるようになるという。

パラセールを使った新しい海上輸送の可能性について報告する。(原文へ

翻訳/サマリ=山口響/IPS Japan浅霧勝浩

|スリランカ|将来を心配するタミル人

【コロンボIPS=IPS特派員チーム】

Patient being transferred out of Mullaitivu District Hospital after it was hit by shelling on Jan 22. Credit: LTTE website
Patient being transferred out of Mullaitivu District Hospital after it was hit by shelling on Jan 22. Credit: LTTE website

2月4日に独立61周年を祝ったスリランカだが、反政府勢力が支配する北部に暮らす少数民族タミル人の思いは別だ。「そっとしておいてほしい。なんとか暮らしていきたいだけ」。政府が掌握する北部の町ジャフナから匿名を条件に電話でIPSの取材に応えた元教師の言葉は、この紛争地に暮らすタミル人共通の願いである。

独立記念の挨拶に立ったラジャパクサ大統領は、タミル人のホームランド建設を目指して1972年から戦ってきたタミル・イーラム解放の虎(LTTE)の掃討も数日で完了すると強調した。

LTTEは、北部に住むタミル系住民25万人を連れて支配下のジャングルに撤退。政府は、LTTEが住民を人間の盾に使っていると非難している。2月2日には、政府支配の安全圏にいる市民の安全と保護は保証するが、LTTE支配の地域に残る市民の安全については責任は負えないとの国防省の声明を発表した。

 こうした政府の姿勢に、人権団体の間からは非難の声が上がっている。ワシントンに本拠を置くヒューマン・ライツ・ウォッチ(HRW)は2月4日「これは一般市民の安寧に対する無関心を意味するものであり、国際法に反する」との声明を出した。

HRWはまた、LTTE側も一般市民が紛争地から逃れるのを阻んで、市民を重大な危険にさらしているとの懸念を繰り返し述べている。

ジャフナに暮らすジャーナリストのひとりは、「市民を巡る膠着状態が解消されても、平和への道は危険だらけだ。好むと好まざるに関わらず、政府側はLTTEや野党タミル国民連合を交渉のテーブルにつかせなければならないだろう」と述べている。さらに、1987年に地方分権化を目指して導入されたが、政府が権限委譲を拒否している州議会制度について、「現行の制度下における有効な解決はない」と指摘する。

国内の大半のタミル人は戦争に飽き飽きしており、以前にはなかったことだが、LTTE支持も衰えている。2月2日には、ジャングルに閉じ込められている友人や親類を解放するようLTTE指導者に求めて、数百人がジャフナの通りをデモ行進した。

LTTEの制圧が進む中、タミル人住民の思いについて報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩


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|スリランカ|民間人、国連に対し支援続行を要請

|米国|軍事費引き上げを求めるタカ派

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【ワシントンIPS=ジム・ローブ

縮小する国家経済と記録的な国防予算を抱えながらも、米国のタカ派は議会とオバマ大統領に軍事費引き上げを求め始めた。さらにオバマ大統領が進めている1兆ドルに迫る景気刺激策のうち、数百億ドルを国防費に回すべきだと主張している。軍事産業に金が回れば雇用が増えるという論理である。

新保守主義のシンクタンク、アメリカン・エンタープライズ研究所(AEI)の軍事アナリストのT.ドネリー氏は、「米国が世界の安全を保つことで経済基盤は強化され、景気回復につながる」という。軍事産業のロビー活動の活発化と時を合わせたタカ派のキャンペーンは、オバマ新政権が景気刺激策の迅速な議会通過を目指している大事な時期に始まった。 

作成中の2010年度予算について、行政管理予算局(OMB)は国防予算を8%増の5,270億ドルとしている。これには地球規模のテロとの戦いの費用は含まれず、世界の軍事費の40%はテロとの戦いに費やされている。だが今週、議会季刊誌(CQ)は、国防省側は統合参謀本部の要求が10%カットされたと主張していると伝え、極右のフォックスニュースも同様の報道を行った。

 さらに外交問題評議会(CFR)の軍事アナリスト、Mブート氏は、ゲーツ国防長官がOMBと対立したと断言した。また、カーネギー国際平和財団の新保守主義の論客R.ケーバン氏は、ワシントンポスト紙のコラムで10%軍事費カットの及ぼす悪影響について訴えた。

新アメリカ財団(NAF)のW.ハートゥング氏は、この新保守主義の動きを国防省と軍事産業の巨大キャンペーンの一部とみている。2001年のブッシュ大統領就任以来、イラクとアフガニスタンでの活動を含まない全軍事費は60%増加した。 

軍事費カットという疑わしい情報を流すとともに、国防省支持派は景気刺激策としての軍事費増を主張し始めた。昨年末にAEI のM.フェルドスタイン氏がウォールストリート・ジャーナル紙で少なくとも300億ドルの軍事費アップが33万人の雇用を生み出すと述べたことが始まりだった。それに呼応するタカ派の発言が続き、ロッキード・マーティン、ボーイング、ノースロップ・グラマンなどの主要軍事産業のロビー活動も活発化した。 

ハートゥング氏を初めとする反国防省派は、今こそ削減が重要だと主張している。「軌道修正できるのは今しかない」と同氏はIPSの取材に応じて語った。

不況の中でも軍事費増額を求める米国の新保守主義について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|米国|アフガン増派計画、交錯する期待と不安

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【ワシントンIPS=ジム・ローブ】

オバマ米大統領が『対テロ戦の主戦場』と位置づけているアフガン増派計画に懸念の声が出始めている。タリバン政権崩壊から7年以上が過ぎたアフガニスタンでは、今もなお米軍の犠牲者は後を絶たない。 

昨年のアフガニスタンでの米兵の死者数は132人で、2001年のアフガン侵攻以降最悪の状態となった(2007年は82人)。メディアでは米主導のアフガン戦争をベトナム戦争の二の舞と批判が噴出。ロバート・ゲーツ米国防長官は先週、アフガンでの軍事戦略をめぐり議会に対して慎重な決断をするよう注意を促した。 

アフガニスタンには現在、米軍約3万3,000人が駐在。アフガニスタンでの兵力増強に意欲的なオバマ新政権は、今年夏までにアフガン駐留米軍を新たに3万人増派する考えを明らかにしている。 

ゲーツ氏は先週、戦況が悪化するアフガニスタンへ今年初秋までに2から3個の陸軍旅団(1万から1万2,000人)を追加派兵する計画を示した。その一方で「我々は10万人規模のアフガン軍と治安部隊が果たす役割に期待する」とし、今後更なる増派を行う事については否定的な考えをほのめかした。

 オバマ新政権への期待は国内外を問わず依然大きい。しかし、最近の調査によるとカナダや欧州諸国からはアフガン増派の問題をめぐる厳しい意見も出てきているという。アフガニスタン・パキスタン関連の特使としてオバマ大統領から任命を受けたリチャード・ホルブルック元米国連大使は、米政策の抜本的な見直し(アフガン問題をめぐる短期・長期的目標の設定、および目標達成に向けた政策立案)を行う予定だ。 

今のところ「タリバンが拠点を置く北西辺境州などの地域に暮らす市民の安全を確保すること、またカルザイ大統領に国内の汚職問題を解決させタリバン掃討作戦への参加を促すことは不可欠」との意見が一般的である。これに対し、イラクに比べアフガン駐留兵の数が少ない点や、増派をどこに配置させるかなどの課題は残されたままである。 

カーネギー国際平和財団のジル・ドロンソロ氏は3日、最新報告書の中で『アフガン増派は逆効果になる』と論じた。「タリバンの支配下にある部族地域に外国兵が駐留すれば、一層の混乱は避けられない。反政府勢力の勢いを食い止めるのは駐留米軍の撤退しかない」。米軍によるアフガン増派計画について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|ザンビア|コミュニティー、独自の学校運営に乗り出す

【ルサカIPS=ダンスタン・カウンダ】

ザンビアの首都ルサカに近い人口20万の町カンヤマに住む12歳の少年ムユンダ・ニャンバは、「お母さんは仕事がないので、僕と妹を政府の学校に行かせることができない」と言う

政府は2004年に初等教育の無償化を行ったが、PTA費、施設維持費などは支払わなければならず、貧困家庭にとっては大きな負担となっている。教育省の予測によれば、貧困により教育の機会を得られずにいる子供たちは全国で52万人に達するという。

 そんな中、父兄・コミュニティー学校委員会(Parent-Community Scholl Committees:PCSC)は、孤児、貧しい子どもたち、そして政府の教育システムからはじき出された子どもたちの教育を目指し、NGOと貧困地区コミュニティーのジョイント・ベンチャーとして学校運営を開始した。

ニャンバは現在、カトリック教会の中に設置されたコミュニティー・スクールに通っている。教育研修生1人が国際支援団体から寄付された古い教材を使って教えるつましい学校だが、200人の生徒がそこで学んでいる。

PCSCは、日々の学校運営とマイクロ・ファイナンス・プログラムを通じた財政的独立を目指している。また、学校における開発プログラムも推進している。「ザンビア・オープン・コミュニティー・スクール」のプログラム責任者ピーター・シンヤングェは、「PCSCの組織がしっかりしていれば独立運営は可能だ。各学校におけるマイクロ・ファイナンス・プロジェクトにより、運営費を賄うための収入活動資金が得られる。また、教員の給与、コミュニティーの生活向上のためにも役立つ」と語る。コミュニティーは、利益の40パーセントを学校運営費に充てることに同意しているが、マイクロ・ファイナンスにより、これらコミュニティー内の既存ビジネスへの資本提供も可能になるというのだ。

「ザンビア・オープン・コミュニティー・スクール」のプログラム・コーディネーター、マリエット・シアンジブ・ミヤトは、コミュニティー・スクールを貧困撲滅のためのけん引役、基盤として進めて行きたいと語る。

しかし、教育省は長い間コミュニティー・スクールを予算枠に含めることもせず、推進者の教育会議参加も認めてこなかった。教育省は、コミュニティー・スクールがザンビア初等教育に果たす補助的役割を調査中としている。

ザンビアのコミュニティー・スクールについて報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|日本|国際放送に新規参入するNHKワールドTV

【東京IPS=C・マキノ】

独自のニュース発信を目指し、日本は2月2日に24時間英語ニュースを放送するNHKワールドTV をスタートさせ、英語圏以外の本格的な英語ニュース放送を行う国(インド、ロシア、中国、カタール)に仲間入りした。 

NHKの国際事業である日本国際放送(JIB)は、政府の交付金と視聴者の受信料約8,000万ドルで運営されている。JIBの番組はすでに70カ国で視聴可能だが、3月までに北米、欧州、中東、アジアの1億1、000万世帯に拡大していく。NHKワールドTV をアラビア語、中国語、フランス語、スペイン語でインターネット配信する計画もある。

 JIBの高島肇久社長は、「世界の視聴者およびインターネット使用者に日本の真の姿を伝えるために努力する」とIPSの取材に応じて語った。日本では国際舞台での日本に関する報道が十分でないと考えられている。「日本は世界に理解される必要がある。英語で主張できるすぐれた人材に世界に向けた発言の場を提供し、日本について広く知らせて行きたい」 

最近では海外メディアの日本への関心が低下し、たとえばロサンゼルス・タイムズ紙は東京から撤退してソウルから報道を行っている。高島氏は宣伝や広報ではなく、日本についての誤解の修正に役立ちたいという。NHKの今井義典副会長も、外国特派員の観点が日本人と異なる場合があると指摘する。「日本は顔の見えない国といわれるが、グローバル化の中で相互理解を深めて共生を目指すことは重要である」 

マンスフィールド財団(ワシントンDC)の小西ウェストン非常勤フェローは、海外メディアの日本に関する情報が正確でない場合があるという批判に同意する。「物珍しさが強調されることが多かったが、このプロジェクトによって日本への真の関心が高まるのを期待する」 

アラブ世界の考え方を発信するアルジャジーラのような国際放送を目指すものと思われるが、テンプル大学日本校のJ.キングストン教授は「競合する放送は多く、成功するにはNHK の官僚的なスタイルや核心を突こうとしない報道姿勢を改善する必要がある」という。 

だが国際放送の新規参入者となったNHKワールドTV が、世界における日本のイメージに有利に作用し、日本への関心を高める可能性を否定するものはほとんどいない。 

国際放送に新たに参入したNHKワールドTVについて報告する。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

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Q&A:途上国側の意見を反映させたニュース配信を求める

|財政|政府支出に関する情報公開が進んでいない国が大半

【ワシントンIPS=ジム・ローブ】

各国政府の透明性と説明責任の向上に取り組んでいるNGOインターナショナル・バジェット・パートナーシップ(IBP)(在ワシントン)が、各国政府の国民に対する歳出情報の公開度を評価した報告書を発表した。 

調査対象となった85カ国中、歳出情報の透明度を示す指数Open Budget Indexが高かった上位5カ国は、英国、南アフリカ、フランス、ニュージーランド、米国の順であった。

 しかし80%に当たる68カ国は、国民が公的資金の使用について把握、関与、監視するために必要な包括的な情報の適時公開を怠っている、と報告書は明らかにしている。85カ国のうち約半数の国は情報公開がほとんどなされていないため、浪費、不正管理、汚職腐敗を暴くことも実質的に不可能である。 

情報開示が下位の国は、中東と北アフリカが中心で、サハラ以南の諸国が次に続いた。また、低所得国、とりわけ外国からの援助や石油・ガスの輸出に歳入を大きく依存している国にその傾向が強く見られた。 

ただ発展途上国よりも先進国に歳出情報の開示が進んでいる傾向が見られたものの、例外も多く見られた。2位の南アフリカや8位のブラジルのほかにも、ペルー、スリランカ、コロンビア、パプアニューギニア、インドが上位20カ国に名を連ねた。 

こうした評価結果に、IBPのディレクターであるワレン・クラフチク氏は「貧困国であることや援助・石油ガス収益への依存国であることは、不十分な歳出情報公開の言い訳にはならないということ」と指摘する。 

また、現在情報の公開が進んでいない多くの貧困諸国でも、援助国や国内での利用目的のためにすでに情報は作成されており、最小限のコストで透明性を向上することができることが明らかとなった。 

クラフチク氏は「なすべきことはすでに作成済の情報をインターネットで公開するだけのこと。問題は情報の作成や作成能力の欠如ではなく、情報公開に対する政治的意思の欠如だ」とIPSの取材に応えて述べた。 

「透明性の欠如によって、市民は意思決定プロセスに関与することもできず、無駄で腐敗に関係した不適正な支出が生まれ、政府の各種事業の中でもとりわけ貧困撲滅事業の正当性や効果が低減されている」と指摘する報告書『Open Budgets Transform Lives』について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩