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核兵器ゼロを呼びかけるハリウッド映画

【ワシントンIPS=プラタップ・チャタジー】

米国映画界(ハリウッド)、IT産業界(シリコンバレー)のリーダーが、中東の王族や米政府の高官と協力して、来週ワシントンで開催される核安全保障サミットに出席する各国の首脳に対して、「国際社会は一刻も早く核兵器をゼロに削減する必要がある」というメッセージを送る予定である。

米国のバラク・オバマ大統領は、来週ワシントンにロシアのドミートリー・メドベージェフ大統領、中国の胡錦涛主席、フランスのニコラ・サルコジ大統領、ドイツのアンゲラ・メルケル首相を含む47カ国の首脳を核安全保障サミットに招聘し、核兵器を如何にテロリストの手に渡らないよう安全確保するかについて協議する予定である。今回のサミットには、事実上の核保有国であるインド及びパキスタンも参加する予定であるが、一方でイランと北朝鮮は招待されていない。

 サミット開催に先立つ4月8日、核廃絶を訴える世界規模の運動「グローバル・ゼロ」の代表がワシントンで記者会見を開いた。

そこでの目玉は、新作映画『ゼロへのカウントダウン(Countdown to Zero)』の発表であった。本作品は、英国のルーシー・ウォーカー女史が監督をつとめ、地球環境問題を扱い賞賛された『不都合な真実』や、『イングロリアス・バスターズ』等のクエンティン・タランティーノ作品を手掛けてきたローレンス・ベンダー氏が制作を担当した。

このドキュメンタリー作品は、オンラインオークションサイト「EBay」の創業者でカナダ出身の億万長者ジェフ・スコール氏の出資を得て制作された。スコール氏はこれまでにもドラマ『チャーリー・ウィルソンズ・ウォー』をはじめ『Food, Inc』といった一連の政治的メッセージを持った映画作品に出資している。
記者会見で映画の広報担当者は、各国元首脳とのインタビュー(ジミー・カーター元米国大統領、ミハイル・ゴルバチョフ元ソ連大統領、トニー・ブレア元英国首長、パルヴェーズ・ムシャラフ元パキスタン大統領)を収録したこのドキュメンタリー作品について、「人類に残された唯一の選択肢は全ての核ミサイルを廃絶すること。」というメッセージを伝えていると語った。

「核兵器は既に政治的、軍事的有用性を失っています。」とリチャード・バート元米国大使は語った。バート大使は1991年同時、旧ソ連との間に進められた第一次戦略兵器削減交渉(START1)の米国側首席代表を努めた人物である。

記者会見の席上でヨルダンのヌール王女や元大西洋軍最高司令官のジョン・シーハン将軍らスピーカーを紹介したバート元大使は、「今日国際社会が直面している危機は核戦争ではなく、核物質の拡散なのです。」と語った。

冷戦の最盛期、米ソ両国は合計で19,000発の戦略核を保有していた。これは地球全体を何百回も破壊するに十分な量であった。その後両国は、戦略核の保有上限を各々2,200発にまで削減したが、オバマ、メドベージェフ米露大統領は7月8日プラハで、新・戦略兵器削減条約(新START)に調印し、米露各々の配備戦略核を向こう7年間でさらに1,550発にまで削減することに合意した。

またオバマ大統領は、4月6日、米国が核兵器を使用する環境を大幅に制限する新「核態勢見直し(NPR)」を発表した。新NPRは、核拡散防止条約(NPT)を順守する国々に対する核兵器の使用禁止の他、核兵器の実験及び新核弾頭の開発停止を謳っている。また、ホワイトハウスに対して、米上院が核実験全面禁止条約(CTBT)を批准・承認するよう働きかけるとともに、同条約の早期発効を目指すよう求めている。

オバマ、メドベージェフ両大統領は、プラハでの新START署名後の共同会見で、イラン・北朝鮮両国がこのままNPTに加盟しなければ報復もあり得るとして、両国への圧力を一層強めた。この際、オバマ大統領が国連による強硬で厳しい追加制裁措置を訴えたのに対して、メドベージェフ大統領は「イランは(米露などによる)これまでの建設的妥協案に反応しておらず、目を閉ざすことはできない。」と述べた。

ただし両大統領が全ての議題に同意したわけではなかった。イランの潜在的な核ミサイルの脅威から欧州を防衛するとして米国が主張してきたミサイル防衛計画については、ロシアは最後まで認めない立場を崩さなかった。

映画制作を担当したベンダー氏とスコール氏は、「核兵器の完全なる廃絶と核物質の徹底管理を求める署名をできるだけ多くの民衆から集めることによって、今日における政治指導者間の交渉の行き詰まりを打破したい。」と語った。

7月9日公開予定の『ゼロへのカウントダウン(Countdown to Zero)』の予告編では、一般市民にまじって世界の指導者が登場し、口々に「(核兵器)ゼロ」を訴える内容となっている。

ベンダー氏は、この映画を北朝鮮やイランでも公開意図があるかとの記者の質問に、「(出来ることなら)是非そうしたい。」と語った。シリアを定期的に訪問し、同じく記者会見に出席したヨルダンのヌール女王は、「私は中東全域の指導者に、この映画を観て核兵器廃絶を訴える宣誓書に署名するよう是非とも働きかけていきたい。」と語った。

一方、反核活動家の間には、「オバマ大統領は、核態勢見直し(NPR)、新START締結、核安全保障サミットという一連の機会を通じて、核問題に関して自らの鳩派イメージを演出している。しかし対イラン・北朝鮮対応を見れば明らかなように、核拡散の脅威に対しては、もっと効果的な対応が出来たのではないか。」といった、オバマ大統領の従来の取組を不十分とする意見もある。

ロス・アラモス研究グループ(ロス・アラモス研究グループ:米国最初の核兵器開発地に因んだ名称)のグレッグ・メロ代表は、「新NPRは大変好戦的なものであり、言い換えれば、『鳩の羽毛を纏った鷹』のようなものだ。新NPRは、リベラルな理想と好戦的な米核戦略の現実の間の折り合いをつけようとしたものである。しかし、米国の核政策は今後もほぼ従来通りの路線を踏襲していくだろう。」と語った。

メロ代表は、プラハ合意を振り返って、「オバマ政権下における今日までの備蓄核兵器の廃棄処分の進捗状況は、ジョージ・W・ブッシュ前政権下の実績にさえ及ばない。新NPRは、一方で世界的な核管理体制強化(核不拡散と核保有国の拡大阻止)を推進しつつ、同時に米国による(必要ならば核抑止による脅迫を含む)「軍事力の行使」を担保することを目的としているのです。」と語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩


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包括的核兵器禁止条約を作るべきとき(ディミティ・ホーキンス)

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【IPSコラム=ディミティ・ホーキンス】

歴史の中で今ほど核軍縮に向けて動くべき好機はないでしょう。現在世界に2万3300発ある核兵器を廃絶したいという希望は、世界の指導者と市民社会の主導によって、明るいスポットライトの中に躍り出てきたのです。 

米国のバラク・オバマ大統領は、昨年4月に行ったプラハ演説の中で、「核兵器なき世界の平和と安全を目指す」と宣言しました。世界の市民社会もこうした目標を共有しています。 

この4月には、米ロ両国が1991年の戦略兵器削減条約(START1)に代わる後継条約に署名しようとしています。そうすれば両国の核兵器は25%削減されるでしょう。現在、米ロ両国で世界の核兵器の96%を保有しています。従って、核兵器廃絶に向けた米ロ間のこうした動きは、歓迎すべきものでもあり、長く待ち望まれていたことでもありました。

 検証可能で完全な核軍縮は段階的な措置だけでは実行不可能で、包括的な枠組みによってのみ実現可能なのだという認識が高まりつつあります。市民団体は包括的な核兵器禁止条約(NWC)を求めているし、それを支持する政府も増えつつあります。 

1997年には、世界中の民間の専門家によって、モデルNWCの発表という大胆な試みもなされました。こうした条約案は多国間フォーラムにおいて長年にわたって議論され、2007年にふたたびモデルNWCが発表されたことで勢いを得ています。国連では、1997年と2007年の2度にわたってモデル条約が承認されているのです。 

政府がこうした協議を進める中、市民社会はふたたび積極的な解決策を打ち出してきています。そうして、実行可能な道筋をつけ、検証可能で包括的なNWCに関する作業を始める青写真を描いているのです。 

NWCは何も目新しいものではありません。しかし、いよいよそれが注目を集めるときがやってきたのです。 

NWCは、核分裂性物質の生産と、核兵器の開発・実験・貯蔵・移転・使用(その威嚇を含む)を禁止することによって、すでに行われている数多くの軍縮交渉を強化することになるでしょう。この条約の加盟国には、すべての核兵器、核物質、施設、運搬手段を申告する義務があります。そして、決められた段階にしたがって自国の核兵器を廃絶していくことになっています。第一段階は、核兵器の警戒態勢を解除することであり、次に兵器を配備状態から撤去し、運搬手段から核弾頭を取り外して弾頭を無能力化し、最後にすべての核分裂性物質を国際的な管理下に置くこととなっています。 

きわめて困難な国内情勢にあって核軍縮を推進することでどれだけの政治的な得点が稼げるのか、という疑問をもつ政府もあります。しかし、市民社会は、この究極の大量破壊兵器を世界からなくすという課題に向かって前進しつづけています。 

国連総会では毎年、NWCの早期交渉入りを求める決議に3分の2の国が賛成しています。「グローバル・ゼロ」が2008年に21カ国で行った調査でもこのことは示されています。回答者の76%が、自国政府が決められた時間枠の中で核兵器を廃絶する法的拘束力のある合意に達することを望んでいるのです。国連事務総長は、核兵器なき世界に向けた5つの提案の中で、NWCを第1点に挙げていました。包括的な条約を作成することに意味があると市民社会は考え、それに同意する政府も増えてきています。核兵器ゼロに向けた計画に及び腰な(特に核兵器を保有している)国々を牽引していくリーダーシップが求められるのは、まさにここの点にあるのです。 

NWCの交渉成功を阻むものは、技術的な問題ではなく政治的なものです。すべての政府からの同意表明が必要であり、それには行動が伴わなくてはなりません。NWCに向けた準備は、核兵器なき世界という目標を実現しようと思うのなら、いま始めなくてはなりません。 

核戦争防止国際医師会議(IPPNW)、平和市長会議アボリション2000婦人国際平和自由連盟創価学会インタナショナル(SGI)核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のようなグローバルな市民社会集団は、協力してこの課題に取り組んでいる。医師や地方政府、平和を目指す女性、宗教人、ビジョンを持った人々を代表するこうした集団は、政府高官や大使と定期的に会合を持って、NWCを推進してきました。 

今年の6月5日には、世界中の人々が「核兵器禁止条約―いまこそできる」という標語の下に同時行動を起こす予定です。世界各国に対して、核兵器ゼロという課題に向けて行動するよう求める予定です。ちなみにこの同時行動は、5月に国連本部で開かれる核不拡散条約(NPT)運用検討会議において実質的な進展がないのではないか、との懸念から発した行動なのです。 

核拡散の脅威が消えない中、発効後40年にもなるNPTへの不満は強まりつつあります。この40年間、核軍縮については満足のいく前進が見られませんでした。NWCは、核廃絶へのロードマップを示すことによって、NPT第6条規定にある「各締約国による誠実に核軍縮交渉を行う義務」を強める効果を持つでしょう。 

今まさに、世界にはNWCを追求すべき理由が少なくとも2万3300あるのです。そして、そのひとつひとつが、行動を不可避のものとしています。市民社会はこのことを知っています。今こそ、各国政府は、世界の多数の人々の期待に応え、永遠に、そしてすべての人々にとって核兵器を廃絶するために、NWCを準備すべきときなのです。(原文へ)(アラビア語) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

※ディミティ・ホーキンスは、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のキャンペーン担当。オーストラリアのICAN本部に常駐。 



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2つの震災を比較する

【バーリントン(米バーモント州)IDN=アシュリー・スミス】

世界の地殻はつねに変動しているが、このところの2ヶ月間の動きは特に激しい。1月12日、マグニチュード7.0の地震がハイチを襲い、30万人が死亡、150万人が家を失った。2月27日にはチリをマグニチュード8.8の地震が襲い、数百名が死亡、200万人以上が家を追われた。

2つの地震には明確な違いがある。ハイチの地震はマグニチュードが7.0と比較的小さかったにもかかわらず、震源が地表の8マイル下で首都のポルトープランスにも近かったために、被害は甚大になった。他方で、チリの地震はハイチ地震の500倍のエネルギーを持っていたにもかかわらず、震源は人口密集地に遠く地表から22マイル下だったために、比較的少ない被害で済んだ。

 しかし、実際のところ、両国の被害の大きさの違いは、地殻や活断層、震源といった自然現象が生み出したものではなく、社会的状況の違いが生み出したものなのだ。

よく知られているようにハイチは世界で最も貧しい国のひとつであり、人口の80%以上が貧困線以下で暮らしている。

このような状況は、おおよそ米国が生み出したものだと言ってよい。米国はハイチに新自由主義的な経済モデルを押し付けて農業を破壊し、首都の人口爆発をもたらした。しかし、活断層の上にあるポルトープランスにはまともな建築規制がなく、今回のような事態を招いてしまったのである。

他方、チリは、1人あたりの年間国内総生産が1万4700ドルに上る、ラテンアメリカでは比較的裕福な国のひとつだ(ちなみに、ハイチは1300ドル)。チリの先進的な耐震基準は、民主主義的なサルバドール・アジェンデ政権時代の1972年に作られていた。
 
とはいえ、チリでも、アジェンデ政権をクーデターで倒したアウグスト・ピノチェト政権以降の自由主義的経済の流れの中で、利潤獲得に走った建築産業が基準を守らない不動産開発を進めていたため、今回の地震で犠牲になったものが少なくなかった。かつて国家が建設した古い道路や橋は地震で壊れなかったのに、民営化されてからの構築物は実に脆弱だったという。

震災対応の点でも、ハイチとチリでは似通っている部分もある。ハイチで政府が何もできていないのは周知のとおりだが、チリでも、海軍が沿岸部で警告して回らなかったために津波被害を防ぐことができなかったし、家を失った200万人への食料援助は十分行き届いていない。

生活の術を失った人々が「暴徒」と化すと、国際メディアはそのことばかりに焦点をあてるようになり、ハイチでもチリでも軍隊が震災地に派遣されることになった。ハイチには米兵2万人が送られ、チリでは1万4000人の軍隊が動員されて18時間の屋内待機令が出されている。

こうして人々は、実際のところ、自ら助け合って生き延びるしかなくなっている。

「国際社会」からの支援は、実にお粗末なものだ。米国はハイチに1億ドルの支援を約束したが、バラク・オバマ政権は軍事予算に6500億ドルを使っているのである。チリに対しては、欧州委員会が400万ドル、日本が300万ドル、中国が100万ドルを約束したに過ぎない。

ハイチとチリの震災拡大の社会的要因を探る。

INPS Japan


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核廃絶への取り組みに地雷禁止の経験を(ノーベル平和賞受賞者ジョディー・ウィリアムズ女史インタビュー)

【国連IPS=クリソ・ディアンジェロ】

Jody Williams Credit: Photo by Judy Rand
Jody Williams Credit: Photo by Judy Rand

戦略兵器削減条約(START1)が昨年12月に失効して以来、米ロ担当者は、後継条約の合意に向けた交渉を活発に進めてきた。米国政府筋によると、後継条約が発効すれば両国の核弾頭配備数はおよそ4分の1削減される。

ヒラリー・ロッダム・クリントン米国務長官は、3月18日モスクワで、ロシアのセルゲイ・ラブロフ外相と、米国とソ連(当時)が冷戦期の1991年7月31日に締結したSTART1(昨年12月に失効)の後継条約について協議した。

「核不拡散体制の推進に責務を持つ米ロ両国が、核分裂物質の安全確保と核テロの脅威に対抗する世界的な取り組みに、パートナーとして協力し合うことは特に重要である。」とクリントン長官は語った。

今回の米ロ外相会談は、来る一連の核軍縮協議に先立って行われた。4月には12日・13日の両日にワシントンで核安全保障サミットが、5月には3日から28日にかけてニューヨークで核不拡散条約(NPT)運用検討会議が開催予定である。

「私たちは政府の美辞麗句を聞かされているのです。しかし行動を伴わない言葉はあまり役には立たないのです。」と、ジョディー・ウィリアムズ氏は語った。ウィリアムズ氏は1997年の対人地雷全面禁止条約(オタワ条約)実現に尽力した地雷禁止国際キャンペーン(ICBL)の創立者で、その功績から同年ノーベル平和賞を受賞している。

「政府は、市民が結束して圧力をかけない限り、自ら行動を起こすことはありません。世界には核兵器を保持し続けようとするあまりにも多くの既得権益が存在するのです。」とウィリアムズ氏は語った。

以下にインタビューの抜粋を紹介する:

Q: 対人地雷全面禁止条約は、38カ国において地雷生産を停止させ、世界で4200万発の対人地雷を処理するなどかなりの成果を収めました。この成功モデルは核軍縮にはどのように生かすことができるでしょうか?

A
:対人地雷全面禁止条約は、当時私たちが、地雷禁止という共通の目標の下に幅広い市民社会組織を結集することで実現を見ました。地雷禁止国際キャンペーンでは、一般の市民が政府に対して変革を求める圧力をかけたのです。核軍縮を実現するためには、このような幅広い一般民衆に支えられた運動が必要です。しかし、私は武器禁止分野における市民社会の取り組みの現状には多少批判的な意見を持っています。私が見たところ、核拡散防止という一つの目標に、十分な数の市民社会組織が結集しているとは思えないのです。もちろん私のこうした発言は活動家の友人たちにとって快いものではないと思いますが、これが草の根活動家としての私の率直な見解なのです。

Q:どうしてそう思われますか?

A
:私たちが地雷禁止国際キャンペーンを展開した際の利点は、当時において地雷除去や被害者への義肢提供を行っている団体はあったものの、地雷禁止に取り組んでいる団体が皆無だったことです。いわば私たちは前人未到の領域に挑むことができたのです。一方、核兵器禁止に関しては、既に数十年に亘って取り組んできた団体が多数あることから、目的実現の暁にはどこがクレジットを受けるべきかといった縄張り意識のようなものが見受けられます。

Q:START後継条約を支持しますか?

A
:完全に支持します。私は、米ロ両国が、4月の核安全保障サミットか5月のNPT運用検討会議前に、後継条約の締結に漕ぎつけることを望んでいます。

Q:START後継条約交渉に対する欧州諸国の反応はどうでしょうか?

A
:欧州の一部の国々の反応は素晴らしいと思います。ベルギー、ドイツ、ルクセンブルク、オランダ、ノルウェーの5カ国は、米国が欧州から核弾頭を撤去することを望んでいます。一方で、チェコ共和国とポーランドはソ連(現在のロシア)との歴史的に苦い経験から、米国の核の傘を失うことに複雑な感情を持っています。

私は、世界の核兵器の大半を所有している米ロ両国が、5月のNPT運用検討会議の場で、既に核兵器の保有を放棄した国々に対して、核兵器を保有しないよう更なるコミットメントを求めるという所業がはたしてできるものなのか、不思議に思います。率直に言って、もし私が核兵器の保有を放棄した国の代表だったとしたら、米ロ両国がそのような態度に出た場合、怒りを露わにすることでしょう。

Q:インド、パキスタンといったNPT未締結国が5月のNPT運用検討会議で果たす役割があるとすればどのようなことが考えるでしょうか?

A
:もし私がインドの代表だったとしたら、傍観を決め込むでしょう。なぜなら米国は(米印原子力協力を通じて)自らNPTを蔑にすることで今日の国際社会が偽善の上に成り立っていることを証明しました。米国は(NPT枠外で核保有に至った)インドに対して核技術の提供を合法化したのです。一方でこのような行為を正当化しておいて、他国に対しては同様の行為を行わないよう求めるなど、どうしてできるでしょうか?このような所業は、あたかも「この辺りのボスは自分だ。核兵器も自分が最も多く所有している。だから君たちは私がやりたいように行動することを認めればいいのだ。」と言う苛めっ子の論理だと思います。

Q:イランに対する(国際社会の)対応には2重基準があると思いますか?

A
:はい。イランの核開発疑惑については、イラン側に糾弾されてしかるべき意図がないとはいいきれませんが、明らかに2重基準が適用されていると思います。しかし一方で、政情不安定な中東のイランの立場から、ブッシュ政権による対イラク及び北朝鮮政策を見るとどのような結論が導き出せるでしょうか?ブッシュ政権は大量破壊兵器の存在を大義名分にイラクに侵攻しましたが、結果的に大量破壊兵器は発見されませんでした。一方、ブッシュ政権は核武装した北朝鮮に対してはなにもしませんでした。イランが自衛のために核兵器が必要と考えたとしても不思議ではありません。

Q:イスラム世界の国々が核兵器を保有することに対する恐れはどれほど現実的なものでしょうか?

A
:核兵器を新たに取得する国が世界のどこかに現れることに対する恐れは現実的なものです。現在34カ国が原子力発電所建設に必要な核関連技術の習得を求めています。そしてその多くが、懸念されている中東地域の国々です。言えることは、核技術を習得すれば、遅かれ早かれ核爆弾の製造が可能となるということです。(原文へ)(アラビア語

翻訳=IPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between Inter Press Service(IPS) and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

日本、米国の核態勢見直しに際して、自制を表明する

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【IDNベルリン=ジャヤ・ラマチャンドラン】

世界唯一の被爆国であり、北朝鮮からの断続的な核の脅威に晒されている日本は、米国が新たに打ち出そうとしている向こう5年から10年における核戦力の役割と使命について多大の関心を寄せるとともに、米国政府の判断についても影響力を行使しようとしている。

日本の慎重な動向の背景には、署名から50年を迎える、日本国とアメリカ合衆国との間の相互協力及び安全保障条約(日米安全保障条約)の存在がある。

Dwight Eisenhower/ Wikimedia Commons
Dwight Eisenhower/ Wikimedia Commons

 1960年1月19日、ドワイト・アイゼンハワー大統領が、「平等と相互理解」に基づく「不滅のパートナーシップ」と言及した同条約の署名が行われ、今日に続く2国間関係が始まった。

この観点から見れば、バラク・オバマ政権による今回の核態勢見直し(NPR)は(日米安保に影響を及ぼす核兵器の役割そのものを再評価しようとする点で)、冷戦終結から20年近く経過して最初の試みといえるものである。ちなみに、ビル・クリントン政権とジョージ・W・ブッシュ政権も、NPR報告書をそれぞれ1994年と2001年に策定している。
 
 日本はまた、太平洋地域における主要な米国の同盟国である。従って、オバマ大統領が歴史的なプラハ演説で「核兵器なき世界」の実現を呼びかけて以来、日本の政治指導者や議会メンバーは、当然ながら、座して成り行きを見守ることはしなかった。

オバマ大統領、ヒラリー・クリントン国務長官、ロバート・ゲーツ国防長官、及び米国議会の主だったメンバーに対して提出した書簡の中で、衆参両院の有志議員たちは以下のように述べている。

「私たちは、唯一の被爆国の国会議員として、貴大統領の核兵器廃絶への取り組みを全力で後押しすべき『道義的責任』を持っていると考え、下記を宣言します。

・私たちは、貴大統領が2009年4月のプラハ演説で概説した「核兵器のない世界」に向けて動くとの政策目標を完全に支持します。

・私たちは、米国が、ICNND(核不拡散・核軍縮に関する国際委員会)報告書の勧告(2009年12月15日に発表)に従って、「米国の核兵器の『唯一の役割』は、米国又はその同盟国に対して他国が核兵器を使用することを抑止することにある」と宣言する政策を直ちに採用することを強く求めます。

・私たちは、貴国が上記の「唯一の役割」政策を採ったとしても、日本は核武装の道を追求することはないと確信しています。

・私たちは、貴国の核政策が、日本の非核三原則に違反するいかなるオプションも除外することを強く求めます。

・私たちは、米ロ両国の配備戦略核を大幅に削減することを規定した新しいSTART条約(戦略兵器削減条約)の締結を目指す貴大統領の努力を支持します。

・私たちは、CTBT(包括的核実験禁止条約)の批准とFMCT(兵器用核分裂性物質生産禁止条約)の交渉を迅速に行おうとする貴大統領の努力を支持します。

2月19日、本件の発案者である与党民主党の平岡秀雄衆議院議員を始めとする7名の国会議員代表が米国大使館を訪ね、本衆参両院の超党派議員204名が署名した本書簡をジョン・ルース駐日米国大使に直接手交した。

非核三原則

Map of Japan
Map of Japan

2月9日、鳩山由紀夫首相は国会において平岡議員のイニシャチブについて、「非核三原則を堅持し、核軍縮を支持する政府の方針に沿ったものだ。」と好意的な言及をした。

非核三原則」は議会決議で、今日まで法制化されることはなかったが、60年代末の首相発言以来、戦後の国民感情と歴代政府の方針を反映して、事実上日本の核政策の根幹をなしてきた。

同三原則は、日本は核兵器を「持たず、作らず、持ち込ませず」と宣言している。この原則の骨子は、1967年、米国と沖縄返還交渉を進める最中に佐藤栄作首相が表明したものである。その後71年11月に衆議院本会議が、沖縄返還協定に関連した付帯決議として本原則を採択した。

核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)のメンバーである平岡議員(民主党)によるイニシャチブは、岡田克也外相が2009年12月にヒラリー・クリントン国務長官に宛てたNPR報告書に関する書簡の中で言及した重点事項を更に補強するものである。

PNNDのメンバーでもある岡田外相は、書簡の中で、米国による強力な核抑止を支持してきた前政権の立場とは距離を置き、一部の日本政府当局者が米議会の諮問委員会に対して核戦力維持を働きかけたとされていることについて次のように懸念を表明した。「仮にそのようなことがあったとすれば、核軍縮を目指す私の考えとは明らかに異なる。」

また岡田外相は書簡の中で、核兵器の役割を核攻撃に対する抑止に限定し、NPT加盟の非核保有国に対する核兵器の使用を禁止する考えを支持した。

今回の書簡の手交は、4月にワシントンで予定されている核安全サミットや翌月ニューヨークで予定されているNPT運用検討会議を含む一連の核関連のイベントに先立って行われた。同書簡には、「今年は、貴大統領が述べられた『核なき世界を実現する』という目標に向けた具体的措置をとる上で大変重要な年になります。」と記されている。

平岡氏によると、ルース大使は、核廃絶がオバマ大統領の最優先事項の一つである点を指摘し今回の書簡を歓迎した。しかし同時に、「(核廃絶は)オバマ大統領がプラハ演説で述べたとおり私たちの存命中に実現しないかもしれません。しかし米国政府は(その実現に向けて)現実的なアプローチをとっていきたい。」と代表団に対して述べた。

影響

この超党派議員署名による書簡は、署名した議員数が衆参両院722名中僅か204名に止まっていることから、はたして、オバマ政権によるNPR報告書策定や米議会の判断に影響力を持つものとなり得るだろうか?

この点について、日本に本拠を持つ国際NGOピースボートの共同代表で「核不拡散・核軍縮に関する国際委員会」(ICNND) NGOアドバイザーの川崎哲氏は、「署名した議員の総数が204名に止まったということが、そのまま、他の議員が書簡の内容に反対した或いは署名に躊躇したということではありません。むしろ本書簡の提唱者達がもっと積極的に動いていれば、全ての議員の署名を集めることができたでしょう。」と、語った。

「ちなみに共産党の議員は、書簡の内容は不十分で、軍縮についてもっと踏み込んだ内容にするべきだとして署名しませんでした。」と、川崎氏はIPSの電子メール取材に応じて語った。

川崎氏は、衆議院本会議が2009年6月にオバマ大統領のプラハ演説を支持して核兵器廃絶に向けた一層の努力を呼びかける決議を全会一致で採択した事例に言及して、「日本国民の意思は、この本会議決議に明白に表れています。」と語った。

浜田昌良/首相官邸, CC 表示 4.0,による
浜田昌良/首相官邸, CC 表示 4.0,による

元外務副大臣の浜田昌良参議院議員(公明党)は、「日本が核軍縮に大きく関与できるチャンスが目前にあります。」と語った。

浜田氏は、日本が拡大抑止についての定期協議を通じて、東アジアの具体的脅威に対して核抑止は本当に必要なのかを検証し、米国が「唯一目的宣言」を採用する土壌を形成すべきと考えている。


「今年4月に国連安保理の議長国となる機会を捉え、日本は「消極的安全保障(=非核兵器国に対する核兵器の使用禁止措置)」について拘束力のある国連決議策定に向けてのキックオフを行うべきです。その時期に米国からイランに対する制裁強化への要請がなされる可能性が高いことから、日本は、国連安保理議長国として重要な役割を果たすことができるでしょう。」

浜田氏は、日本は、(対イラン制裁強化を求める米国を支持することへの)カウンタープロポーザルとして(消極的安全保障に関する)国連決議に対する米国の支持を取り付けるべきだと考えている。

「日本は、消極的安全保障の拘束力化を実現すべく、3月末のサミット外相会合及び5月のNPT運用検討会議において行動を起こすべきです。このスケジュールは性急のように聞こえるかもしれませんが、5年に一度のNPT再検討会議というモーメンタムを最大限活用すべきです。」と浜田氏は東京でIDNの電子メールによる取材に応じて語った。

Hans Kristensen/ FAS
Hans Kristensen/ FAS

米国に本拠を置く「全米科学者連盟」(FAS)のハンス・M・クリステンセン核情報プロジェクトディレクターは、ワシントンDCでIDNの電子メール取材に応じ、「今回の日本の超党派議員による書簡は、日本政府関係者の声明と併せて、太平洋地域における米国にとって最重要の同盟国がオバマ政権の核軍縮構想に反対しておらず、それどころか、核弾頭の削減のみならず核兵器の役割そのものの低減についても支持していることを、米国政府、議会に対して明確に伝える重要な役割を果たしています。」と語った。

「NPR報告書は、太平洋地域(及びその他の地域における)拡大核抑止に対する米国のコミットメントを再確認するものとなるが、同時に、核兵器の弾頭数削減とその役割を低減させることについて日本の支持を得たものとなるだろう。」とクリステンセン氏は語った。

米国の民間団体「憂慮する科学者同盟(UCS)」の上級アナリストで中国プロジェクトマネージャーのグレゴリー・カラキー氏は、一部日本政府当局者の間で、米国政府が核兵器に関する先制不使用宣言や「唯一の役割」に関する宣言を行えば、日本を中国やいずれは北朝鮮からの核の脅威に晒すこととなるとの見解があることについて、「この点については、私たちは既に詳細な調査を行っています。」と語った。

そのうえでカラキー氏は、「日本の外務省及び防衛省の核安全保障専門家の中には、米国の(核兵器に関する)宣言政策が大きく変化することに懸念を抱く人々もいますが、そうした懸念が日米同盟に悪影響を及ぼしたり、NPTや核軍縮を従来強く支持してきた日本の指導者層の立場を変化させる見込みはないでしょう。その理由は明らかです。つまり、日本政府は、核兵器使用の唯一の目的は、他国による核使用の抑止であり、核攻撃に対する最終的な対抗手段であることを米国政府が直ちに宣言すべきとしたICNND勧告を強く支持しているのです。」と語った。

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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|軍縮|包括的核兵器禁止条約を作るべきとき(ディミティ・ホーキンス)

【IPSコラム=ディミティ・ホーキンス】

歴史の中で今ほど核軍縮に向けて動くべき好機はないでしょう。現在世界に2万3300発ある核兵器を廃絶したいという希望は、世界の指導者と市民社会の主導によって、明るいスポットライトの中に躍り出てきたのです。

米国のバラク・オバマ大統領は、昨年4月に行ったプラハ演説の中で、「核兵器なき世界の平和と安全を目指す」と宣言しました。世界の市民社会もこうした目標を共有しています。

この4月には、米ロ両国が1991年の戦略兵器削減条約(START1)に代わる後継条約に署名しようとしています。そうすれば両国の核兵器は25%削減されるでしょう。現在、米ロ両国で世界の核兵器の96%を保有しています。従って、核兵器廃絶に向けた米ロ間のこうした動きは、歓迎すべきものでもあり、長く待ち望まれていたことでもありました。

 
検証可能で完全な核軍縮は段階的な措置だけでは実行不可能で、包括的な枠組みによってのみ実現可能なのだという認識が高まりつつあります。市民団体は包括的な核兵器禁止条約(NWC)を求めているし、それを支持する政府も増えつつあります。

1997年には、世界中の民間の専門家によって、モデルNWCの発表という大胆な試みもなされました。こうした条約案は多国間フォーラムにおいて長年にわたって議論され、2007年にふたたびモデルNWCが発表されたことで勢いを得ています。国連では、1997年と2007年の2度にわたってモデル条約が承認されているのです。

政府がこうした協議を進める中、市民社会はふたたび積極的な解決策を打ち出してきています。そうして、実行可能な道筋をつけ、検証可能で包括的なNWCに関する作業を始める青写真を描いているのです。

NWCは何も目新しいものではありません。しかし、いよいよそれが注目を集めるときがやってきたのです。

NWCは、核分裂性物質の生産と、核兵器の開発・実験・貯蔵・移転・使用(その威嚇を含む)を禁止することによって、すでに行われている数多くの軍縮交渉を強化することになるでしょう。この条約の加盟国には、すべての核兵器、核物質、施設、運搬手段を申告する義務があります。そして、決められた段階にしたがって自国の核兵器を廃絶していくことになっています。第一段階は、核兵器の警戒態勢を解除することであり、次に兵器を配備状態から撤去し、運搬手段から核弾頭を取り外して弾頭を無能力化し、最後にすべての核分裂性物質を国際的な管理下に置くこととなっています。

きわめて困難な国内情勢にあって核軍縮を推進することでどれだけの政治的な得点が稼げるのか、という疑問をもつ政府もあります。しかし、市民社会は、この究極の大量破壊兵器を世界からなくすという課題に向かって前進しつづけています。

国連総会では毎年、NWCの早期交渉入りを求める決議に3分の2の国が賛成しています。「グローバル・ゼロ」が2008年に21カ国で行った調査でもこのことは示されています。回答者の76%が、自国政府が決められた時間枠の中で核兵器を廃絶する法的拘束力のある合意に達することを望んでいるのです。国連事務総長は、核兵器なき世界に向けた5つの提案の中で、NWCを第1点に挙げていました。包括的な条約を作成することに意味があると市民社会は考え、それに同意する政府も増えてきています。核兵器ゼロに向けた計画に及び腰な(特に核兵器を保有している)国々を牽引していくリーダーシップが求められるのは、まさにここの点にあるのです。

NWCの交渉成功を阻むものは、技術的な問題ではなく政治的なものです。すべての政府からの同意表明が必要であり、それには行動が伴わなくてはなりません。NWCに向けた準備は、核兵器なき世界という目標を実現しようと思うのなら、いま始めなくてはなりません。

核戦争防止国際医師会議(IPPNW)、平和市長会議アボリション2000婦人国際平和自由連盟創価学会インタナショナル(SGI)、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のようなグローバルな市民社会集団は、協力してこの課題に取り組んでいる。医師や地方政府、平和を目指す女性、宗教人、ビジョンを持った人々を代表するこうした集団は、政府高官や大使と定期的に会合を持って、NWCを推進してきました。

今年の6月5日には、世界中の人々が「核兵器禁止条約―いまこそできる」という標語の下に同時行動を起こす予定です。世界各国に対して、核兵器ゼロという課題に向けて行動するよう求める予定です。ちなみにこの同時行動は、5月に国連本部で開かれる核不拡散条約(NPT)運用検討会議において実質的な進展がないのではないか、との懸念から発した行動なのです。

核拡散の脅威が消えない中、発効後40年にもなるNPTへの不満は強まりつつあります。この40年間、核軍縮については満足のいく前進が見られませんでした。NWCは、核廃絶へのロードマップを示すことによって、NPT第6条規定にある「各締約国による誠実に核軍縮交渉を行う義務」を強める効果を持つでしょう。

今まさに、世界にはNWCを追求すべき理由が少なくとも2万3300あるのです。そして、そのひとつひとつが、行動を不可避のものとしています。市民社会はこのことを知っています。今こそ、各国政府は、世界の多数の人々の期待に応え、永遠に、そしてすべての人々にとって核兵器を廃絶するために、NWCを準備すべきときなのです。(原文へ)(アラビア語

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

※ディミティ・ホーキンスは、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)のキャンペーン担当。オーストラリアのICAN本部に常駐。



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|アラブ首長国連邦|海洋専門家がフランス観測船「タラ」号を訪問

【アブダビWAM】

UAE環境水資源省海洋研究センター(MRC)の専門家・調査員チームが、オマーン・パキスタンに行く前にアブダビに寄港中のフランスの海洋観測船「タラ号」を訪問した。同観測船は、ドバイ寄港前には、欧州・中東・北アフリカの20港を訪問している。

これは、「タラ号海洋プロジェクト」が、国連環境計画(UNEP)をはじめ、多くの国々の研究所や専門家の協力を得て組織した「 Tara Oceans 」と呼ばれる海洋調査プロジェクトである。タラ号は、3年間に亘る大航海を通じて50カ国以上を訪問する予定である。

この事業には、航海中、環境・科学関連の諸課題について情報及び教育学的な観点から分析調査するミッションが含まれており、UAEにおいても同国の海洋科学調査の枠組みに則って海洋生物のサンプルが収集される予定である。

 環境水資源省のアーメド・アル・ジェナヒ上級研究員は、訪問団はタラ号関係者から、船上の研究施設について説明を受けたと語った。タラ号はアブダビ港に寄港中に同研究施設で海洋サンプルの分析調査を行うこととなっている。

訪問団の目的は、船上研究施設でタラ号に乗船している科学者や研究員と専門分野についての知識の共有を行うことである。

タラ号は3年間にわたって世界中を航海し、気候変動が海洋にもたらしたインパクトについて調査する予定である。特に本事業は、史上初めて、地上全ての生命体の起源であるプランクトン等の海洋微生物に及ぼす気候変動のインパクトを地球規模で調査する試みである。海洋微生物は全ての海洋有機物のおよそ90%を占めており、大気中の二酸化炭素の大半を吸収し、地球上の酸素の約半分を生成している。(原文へ

翻訳=IPS Japan戸田千鶴

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|Q&A|「これ以上、地球温暖化を進行させる訳にはいかない」(レスター・ブラウン、アースポリシー研究所創立者インタビュー)

│キューバ│観光産業への大きな期待

【ハバナIPS=パトリシア・グロッグ】

今年1・2月におけるキューバ観光産業の好調ぶりは、この産業部門への熱い期待を甦らせている。1・2月期の観光産業は、前年比で5.2%成長した。昨年3回もハリケーンに見舞われ、さらには世界経済不況の只中にあっては、朗報だ。 

経済学者のパベル・ビダルは、米国政府による米国民のキューバ渡航禁止措置が解かれれば、観光産業はキューバ経済牽引の役割をふたたび果たすことができるだろう、と話す。 

先週、米国議会は、米国居住のキューバ人がキューバ国内の家族を年に1度訪問することを認める法案を成立させた。前ブッシュ政権が2004年にキューバ渡航規制を強化して以来、キューバ行きフライトは75%も減少していたが、また便数が復活することが見込まれる。

 米国による対キューバ渡航規制が緩和されれば、初年度で米国から少なくとも100万人の観光客が訪れるものと見込まれている。 

1990年以前のキューバの主要産業といえば、砂糖であった。東側諸国による需要も安定していた。しかし、共産圏崩壊に伴って、観光産業の重要性が増すことになる。1990~2006年において、観光産業は対キューバ投資の7分の1を占めていた。 

観光産業は、農業・建設・製造・通信など、他の産業部門の成長を誘発する性質を持っており、その分だけ期待も大きいのだ。 

他方、最近では、ベネズエラへの医師派遣などの例に見られるように、海外への技術輸出も注目されている。国家統計局によると、2008年度にはこの部門で84億ドルの収入があった。観光産業による収入の実に3倍である。しかし、同部門は、上で見たような他の産業部門の成長を促す効果が弱い。 

キューバ観光産業の成長ぶりは、他のカリブ海諸国と比べても際立っている。2008年には、230万人以上がキューバを観光で訪れたが、これは、前年比9.3%増であった。 

キューバ観光産業の成長について報告する。 

翻訳/サマリ=山口響/IPS Japan浅霧勝浩 


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│ハイチ│専門家らが「援助文化」の変化を求める

【ニューヨークIPS=ウィリアム・フィッシャー】

まもなく、人権に関する専門家らが、地震の被災にあえぐハイチを訪問して現地の人権状況を調査する。国際社会に対して、ドナー国が過去の過ちを乗り越えるためのガイドラインが必要だと訴える予定だ。 

訪問は3月9日から12日までの予定で、米州人権委員会が3月23日に公聴会を開くのに先駆けて行われる。米州人権委では、地震後の援助がハイチ国内の人権状況にどのような影響を与えているのかが審理される予定だ。

 さらに、3月31日には、ニューヨークの国連本部において、ハイチ援助会議が開かれ、ハイチに対する援助の今後について話し合われる。 

専門家らは、ハイチにおいて、住民の人権をベースにした援助が行われるべきだと訴えている。とりわけ、ドナー国が援助に関する透明性を高めて応答責任を果たすべきだとしている。そのためには、ハイチ政府と十分協力して、援助の実施状況に関する監視や報告の仕組みを作ることが重要だ。 

専門家は、ハイチ政府、市民社会、住民組織などを構成員としたマルチドナー型の支援を提唱し、ハイチ政府が自ら援助計画を実施できるようにすべきだとしている。 

1月12日の大地震以前になされていたハイチへの援助については、住民の援助ではなく、現地エリートへの援助に過ぎなかったという開発専門家もいるぐらいだ。 

ハイチへの援助に対する専門家の勧告について報告する。 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩