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クウェートで働く家事使用人に新たな権利保護策

【コロンボIPS=フェイザル・サマト】

クウェートとスリランカの公認職業斡旋業者の2団体―「クウェート・スリランカ人材福祉協会」(SLMWAK)と「スリランカ公認外国雇用斡旋業者協会」(ALFEA)―が4月中旬、移民労働者の安全と福祉を守るための方法を講じることを約束した覚書を調印した。 

はたしてこの協定は、クウェートにおいて深刻な虐待に遭っている家事使用人を保護するだろうか。

移民労働者の福祉のために活動するスリランカの団体のひとつ「移民労働者のためのアクション・ネットワーク」(ACTFORM)のコーディネーター、ヴィオラ・ペレラ氏は、職業斡旋業者の下請け業者が公認組織となり、説明責任を負うようにならないかぎり、問題は存続すると言う。 

ペルシャ湾岸諸国に働く150万人のスリランカ移民のおよそ70%が家政婦として働く未熟練女性労働者である。スリランカにとって彼女らからの送金が衣料品輸出に次ぐ外貨取得手段となっている。 

しかし彼女らは労働、社会、健康保護の法律や政策の対象から疎外されている。週1日の休みも、標準労働時間も、労災補償も、最低賃金も認められず、家に閉じ込められている。法的保護の欠如は、性的虐待、暴行、拷問などの数多くの人権侵害を生んでいる。 

スリランカ政府は、女性移民の安全への脅威と社会的影響を懸念して未熟練労働者の海外への出稼ぎを食い止めようと圧力をかけている。しかし、政府の管理下にあり、ライセンスの剥奪や契約違反の処罰の対象となるのは、公認の職業斡旋業者だけだ。公認業者は、労働者の供給を下請け業者に頼っているのが現状である。 

ペレラ氏はまた、未熟練女性の海外での求職禁止は憲法で認められている移動の権利の侵害になるとしている。 

はたして誰の利益が保護されることになるのか。クウェートで家事使用人として働くスリランカ女性の権利保護の問題について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|南アジア|各国の知る権利に関する見解

【ダッカIPS=カリンガ・セレヴィラトネ】

南アジアのメディアや学者は、国連と国際人権機関が提唱する知る権利(RTI)を全面的に是認してはいない。今月初めのRTIの価値と適用性を話し合う会議では、RTIはメディアが享受すべき権利だとされながら、責任を持って行使すべきという意見もあった。 

会議の開催国バングラデシュについては、バングラ・アカデミー会長のハルン・オル・ラシド教授が、現行のRTI法には情報の自由な入手を妨げる条項があるとして見直しを求める一方で、ユナイテッドニュース社のA.カーン社長は、暫定政府による同法の成立および司法と国家の分離を称え、良い統治と国民の権利拡大の鍵になると述べた。

 インドの著名なジャーナリスト、A.バハル氏は、5年前にRTI法を導入してからインド国民は政府に異議を申し立てる権利を得たという。バハル氏は政府と外部業者の汚職摘発に貢献したことで知られている。またネパールのラジオ局、ラジオ・サガルマータのG.ルイテル局長は、自由の抑圧について「政府以外の扇動的組織からの脅迫がある」と述べた。 

議論の大半を占めたのは、国家安全保障問題をメディアの自由の制限に対する正当な理由とできるかどうかということで、反対意見が多かった。 

内戦の続くスリランカからの参加者は、国家安全保障問題の報道は制限があってしかるべきと考える。「報道の自由には責任が伴わなければならない、銃弾によって自由を奪われないようにする責任である」 

パキスタンの「デイリー・バロキスタン・タイムズ」紙の編集者、S. F. イグバル氏は、「ムシャラフ大統領に対して立ち上がった法律家の運動がパキスタン社会に民主主義、そしてメディアに自由をもたらした。ムシャラフ政府は国家安全保障問題を言い訳に言論の自由を抑圧したが、新たな連立政府は情報入手法を復活させた」という。 

バングラデシュの軍が就任させた文民政権は市民の声を取り上げる地域社会のラジオ放送の導入を検討し、スリランカ政府は国家安全保障を理由に内戦に関する報道を抑えようとし、パキスタンの新政府はメディアへの制限を解除しようとしている。南アジア各国の知る権利に関する異なる見解について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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|アジア|自由にとどまらず
 

|コロンビア|暴力に満ちた世界で希望となる子どもたち

【ボゴタIPS=ヘルダ・マルティネス】

コロンビアで生まれたオルネラ・バロスさんは12歳の時、「未来ではなく現実、希望ではなく確実なこと」を求めていこうと決意した。それから6年後、政治学を専攻する学生となったバロスさんは、「子どものための宗教者ネットワーク(GNRC)に参加しようと決めたのは正しかった」と語る。

 「現在大学生となり、確信をもって言えるのは、もっとも大事なのは人間の尊厳を推進する道徳的価値観を教えることで、それをすべての宗教が共通して行っている」とバロスさんは、ボゴタで家庭内暴力を克服するための異教徒間の対話に関するGNRC地域会議が開会された28日、IPSの取材に応じて語った。

 この会議は、ラテンアメリカ司教会議(CELAM)、キリスト教の救援組織であるワールド・ビジョン・インターナショナルおよびユニセフ(UNICEF)の支援を受けている。

参加者は「家庭内暴力を取り巻く原因、影響、文化的構造を分析しながら、コミュニケーションの機構を作り上げ、暴力を克服するために活動する人々を支援していく」とGNRCのラテンアメリカ・カリブ諸国担当のコーディネーターであるメルセデス・ロマン氏はいう。

「私たちが生きる地球環境を守りながら、貧困の中で生活する子どもをなくすことが急務であるとともに、子どもに対する暴力をなくすことは道徳的な責務である」とロマン氏は述べた。

中南米数カ国、および異なる宗教的信条を持つ人々の代表による討議は、「5月24~26日に日本の広島で開催されることになっている第3回GNRCフォーラムで発表される」と、ロマン氏は今回の地域会議の冒頭で告げた。
 
「第二次世界大戦が日本社会に及ぼした劇的な影響を認識するために、広島が次期フォーラムの開催地となる」とロマン氏は述べ、1950年に敬虔な仏教徒である宮本ミツ師が妙智會(心を豊かにする)教団を創始して、仏教の価値観を平和の達成に利用しようと献身的な活動を行ったことに言及した。
 
1990年に、その妙智會の宮本丈靖会長が、子どものためにより良い世界を作り上げていくことを目的とした「ありがとう基金」を設立した。
 
「ありがとう基金」は国連が認定するNGO団体であり、子どもに対する暴力のない世界を目指す、すべての宗教的伝統の結集として2000年5月に創設されたGNRCを支える原動力だった。
 
「子どものために活動できるようにしてくれた人々に感謝する」とロマン氏は会議の参加者に述べた。参加者には、ボゴタ郊外のボサ、ソアチャ、カスーカなどのスラム地区に住む6~16歳の少年少女の「希望の歌声」聖歌隊のメンバーも含まれていた。

「スラムでは、いたるところで争い事がある。道の曲がり角ではどこでも殴り合いのけんかをしていて、10~12歳の子どもがたばこを吸い、アルコールを飲み、してはいけないことをやっている」と聖歌隊のメンバーのホルヘ・モリナさんはIPSの取材に応じて語った。

「だから私たちは、暴力によって住む場所を失ったたくさんの人々に希望の歌声を届けるため、やさしい気持ちを広めるために歌を歌う」とモリナさんはいう。

コロンビアでは、半世紀近く続く内戦のために、故郷を離れて国中から集まってきた数万人の人々が、ボゴタを取り巻くスラムで避難民となっている。

「希望の歌声」はコロンビアの作曲家、サンチアゴ・ベナビデス氏の作品を歌っている。作品の歌詞では「銃弾では世の中を変えられない」「明日になって振り返った時に、自分の足跡が見えるようにするには、今何ができるだろう」「ウラバからやってきたウゴは、茶色のリュックを持っていて、どこに行ったらいいかわからないまま、生まれた町から逃げてきた」などと歌われている。

この歌詞はコロンビアの現実を映し出している。「1万1,000~1万5,000人の子どもが武力紛争に巻き込まれている」とワールド・ビジョン・コロンビアのサミュエル・アルバラシン副代表はIPSの取材に応じて語った。

「状況は非常に深刻で、ワールド・ビジョンは3万5,000世帯の40万人ほどの子どもの命を救うためにあらゆる努力を行っている。世界的には、私たちの組織は、300万人の子どもに手を差し伸べていると推定している」

アルバラシン氏によると、コロンビアで子どもが被害者となる暴力の根源は、疎外、貧困、社会的排斥、児童労働、武力紛争である。

けれどもこうしたことにもかかわらず、「私たちは未来を見つける」と同氏は断言した。

30日まで続く会議では、ユニセフが、2006年10月に発表された国連事務総長の「子どもに対する暴力に関する調査」の結果を議論することになっている。

この調査は2003年から世界中の専門家、子ども、青少年が参加して行われたもので、暴力の原因と実態を理解するためにこれまで行われた取り組みの中で最大のものだった。

その中には「大人中心主義」などの文化的な傾向、そのもっとも弱い子どもたちへの影響、体罰とその影響、性的および精神的虐待がある。

3日間の議論の中心テーマは価値観としての人間の尊厳の重要性であり、それは宗教および社会が共有し、世界を変える変化を起こす力となるものである。(原文へ

翻訳=IPS Japan

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世界の子供の真の幸福のために

|アジア|自由にとどまらず

【バンコクIPS=リネット・リー・コーポラル】

5月3日の「世界報道の自由の日」を前に、2日バンコクにおいて国連教育科学文化機関(ユネスコ)の主催で表現の自由、アクセス、エンパワーメントをテーマに会合が開かれた。

会合では、昨年17人のジャーナリストの命が奪われた政治的弾圧の問題に加えて、多くのメディア事業の「レベル低下」を招いているとの批判が出ているメディアの極端な商業化の問題が議論された。

 ユネスコ、バンコク事務所のシェーファー所長は「報道の自由はジャーナリストだけでなく、社会全体にとって重要。より多くの情報を得ることで、人々は自分たちの生活に影響を与えるより多くの活動に参加する力を得る」と述べた。

アジアは経済開発および人間開発においてこの数十年大きな進歩を遂げてきたが、しかし経済格差を含む不平等は広がるばかりである。

「この不平等の原因のひとつは『知識の貧困』である」と国連開発計画の民主的ガバナンス実践チームの代表Patrick Keuleers氏は述べた。知識の貧困とは、情報の欠如が貧困者の経済・社会・政治プロセスへの参加を阻むことであり、あらゆる腐敗を招く透明性の欠如のことでもある。

Keuleers氏は、インターネット利用者のみならず個人所有のメディア発信源やウェブサイトが急増する「パラドックスの地域」とアジアを称した。

メディア手段の増加は必ずしも、メディアが社会的ニーズや社会変革に対応する情報をより多く生み出すことにはならない。「メディアの発信源は個人的利害に独占され、多くのジャーナリストが微妙な問題を報道する際に何らかの自己検閲を行っている」とKeuleers氏は指摘する。

マレーシアの独立オンライン・ニュースサイトMalaysiakini.comの編集長スティーヴン・ガン氏は、一般市民が数多くのメディア・ツールを利用できるようになった現代において、ジャーナリストは娯楽的なメディアソースと競って読者に魅力的なニュースを届けるのに苦労していると語った。

アジアのメディア議論を報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

|レバノン|ヒズボラ、ベイルート銃撃戦で政治力拡大

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【ベイルートIPS=モナ・アラミ】

シリアが行ったとされる2005年のハリリ前首相の暗殺以来、シーア派のアマルおよびヒズボラとスンニ派与党の未来運動(Future Movement)との抗争が続いているレバノンで5月7日、生活苦およびインフレ高騰に抗議するデモが両派の暴動に発展。銃撃戦で少なくとも11人が死亡、30人が負傷した。 

ヒズボラのリーダー、ハッサン・ナスララ師が、ワフィク・ショウカイール准将を空港セキュリティーの任務から外したこと、政府がヒズボラの通信ネットワークを捜査したことを糾弾し、同暴動は翌8日には政治衝突に発展。ヒズボラ・リーダーは、内閣のこれら決定を“戦線布告”と糾弾。この発言に呼応するかの様に、首都ベイルートに銃声が響いた。

 戦闘訓練、装備が不十分な未来運動は武装した野党メンバーを前に退却。野党側は未来運動のサアド・ハリリ党首および社会進歩党のワリド・ジュンブラット党首宅ならびに政府建物を包囲した。この間、レバノン軍は、緊急事態宣言を行わず、中立を保って衝突に加わらなかった。 

政治学者で「ヒズボラ:政治および宗教」の著者でもあるアマル・サアド・ゴライェブ氏は、「これはレバノン政治の新局面以外の何ものでもない。力関係の不均衡により、紛争は短期間で解決されるだろう」と語る。同氏は、「今回証明されたヒズボラの軍事的優位により、与党は譲歩を余儀なくされる。政府は総辞職を余儀なくされ、暫定政府は、野党が以前から望んでいた早期議会選挙を要求するだろう」と語る。 

戦闘が収まり、野党が市の西側を支配したことにより、今回の事件は国内だけでなく地域にも影響を与えるだろう。ゴライェブ氏は、「これが政治秩序の大幅な変革に繋がることは明らかであり、システムの不均衡を修正するためのタエフ合意見直しの布石となるかも知れない」と語っている。(タエフ合意は1990年のレバノン内戦終結時に調印された民兵組織の解体とイスラム/キリスト教徒間の平等な力配分を定めた関係者間合意) 

ヒズボラと未来運動のベイルート銃撃戦について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|ネパール|食料自給率の低下と食品価格高騰

【カトマンズIPS=マリカ・アリヤル】

5人家族のうち唯一の稼ぎ手であるマヤ・タマンさんは、家族の食費を抑えるのに余念がない。しかし、食料価格が高騰する中、多くの食品が食卓から消えてなくなる日を彼女は予想してもいる。「食用油は高くなりました。米を買うことも難しくなっています。肉の値段は恐ろしい勢いで上がっています」。 

ネパールでは昨年に比べて食品価格が2倍にはね上がった。しかし政府は、4月10日に行われた制憲議会選挙に執心して食糧危機がネパール国民に与える苦難を顧みることはなかった。

 人口2900万人のネパールの食料自給率は90年代を通じて下がり続けている。毎年、3070万ドル相当の米と76万ドル相当の小麦を輸入している。また、肥料から農薬、種子にいたる、食料生産のすべての要素を輸入に頼らざるを得なくなってきている。 

普段ネパールに食料を輸出しているインドとバングラデシュが、自らも食料危機に直面して食料輸出の禁止を決めたことが、ネパールにとっては大打撃となった。 

短期的要因もある。上で述べた制憲議会選挙のために資金を必要とする政党に資金供与している業者が、食品価格を意図的に高く設定したり売り惜しみをしたりしたのである。 

世界食糧計画(WFP)では、ネパールで食料不足に苦しむ民衆の数は400万人から800万人にまで拡大したとみている。 

他方、ネパール自身もチベットや中国、バングラデシュに小麦や米を輸出していた。しかし、政府は、4月30日、これらの輸出禁止措置を決めている。 

食料不足に悩むネパールの状況について報告する。 

翻訳/サマリー=IPS Japan 

仏紙「ルモンド」でスト、不振続く欧州新聞業界

【パリIPS=ジュリオ・ゴドイ】

経営不振の仏紙『ルモンド』で4月中旬に2日間に及ぶ前代未聞のストライキが行われた。これは、フランスをはじめとする欧州諸国の新聞界が直面する危機の拡大を象徴するものだ。 

フランスの新聞は読者と広告が絶え間なく減少し、大打撃を受けている。インターネットの普及、フリーペーパーの台頭も追い討ちをかける。 

週刊の文化雑誌『Les Inrockuptibles』の編集長Sylvain Bourmeau氏は今年初めに、インターネットで会員向けにニュースと分析を提供するMediapartに転職した。同氏はこの職場がフランスのジャーナリストに「新聞改革の機会」を与えると考えている。実際、Mediapartに転職した『ルモンド』の記者、編集者は多い。

 Bourmeau氏はフランスの新聞出版業界の危機は「季節的あるいは一時的な現象ではなく、一つの時代の終わりだ。フランス人は新聞を読むことを忘れた」と言う。 

ストライキのために『ルモンド』は4月15日と19日が休刊となった。これは1944年の創刊以降初めてのことだ。ストライキは経営陣が示した厳しい経費削減案に抗議したものだ。 

この経費削減案はルモンド社が発行する様々な雑誌の販売予測に基づいて、130人の解雇を計画したもので、新聞部門では90人が対象となる。 

さらに、個人投資家が資本を買い増すことが予定されている。そうなれば、社員が経営に意見を言うことはできなくなる。『ルモンド』は現在、協同組合形式で運営されている。経営陣は、これらの対策でおよそ1億5,000万ユーロ(2億2,000万ドル)の負債を完済できるとしている。 

『ルモンド』の副会長David Guiraud氏は4月25日の声明で「我々には、この案を夏になる前に、直ちに実行に移すしか道はない。社員の皆さんが、自ら退職を希望する決断の機会とする」と宣言した。 

しかし、社員はまだ計画を受け入れていない。全国ジャーナリスト組合ルモンド支部のChristiane Chombeau氏は記者会見で「社員の大多数が新しい再建案を求めている」と述べた。 

ルモンド社の財政難は今に始まったことではない。2005年3月にも年間赤字が1,500万ドルとなり、90人を解雇し、株式の15%を軍事産業を抱えるコングロマリットのラガルデール・グループ(Groupe Lagardere)に売却した。さらに15%をスペインのメディアグループPRISAに売却している。 

 2007年末には地方紙を多数売却し、従業員を3,200人から1,600人に削減した。同社の経営で新聞部門を代表する協同組合のSociete de Redacteurs du Mondeは、資本の29.5%を握って拒否権を確保している。しかし、ラガルデール・グループとPRISAが株を買い進めれば、拒否権も失ってしまう。 

苦境にある新聞は『ルモンド』だけではない。2006年秋には『リベラシオン』が個人投資家のEdouard de Rothschild氏に売却された。Rothschild氏は新しい編集長を連れてきて、『ルモンド』のような再建案を採用した。ある記者グループは退職して、インターネット・マガジンの『Rue 89』を創刊した。 

フランスの多くの新聞が同じような困難に直面している。1960年代半ばに100万部以上の発行部数を誇った『フランス・ソワール』は、現在3万部を発行するにすぎない。 

フランス共産党の機関紙『ユマニテ』は毎日5万部を発行するが、1975年に比べると読者数は80%減となっている。資本の一部は軍事産業グループのラガルデールを含むコングロマリットに握られている。 

これらの変化はジャーナリズムの独立性の質に大きな影響を及ぼしているとBourmeau氏は指摘。「保守系『ル・フィガロ』のオーナー軍事産業Serbe Dassaultのビジネスに関する報道を見れば分かる」と言う。 

他の国でも新聞読者は着実に減少している。ドイツでは政府と幾つかの新聞社、ジャーナリスト組合が協力して、4月17日から若者に新聞購読を勧めるキャンペーンが立ち上がっている。 

キャンペーン開始時にベルント・ノイマン文部副大臣「この時代に政治社会問題で議論をしたい人は、新聞を読まなければならない」と宣言。学校や青少年クラブにおける定期新聞購読会などの計画を実行していく。 

ドイツ文化省は声明の中で「児童、青少年の活字離れ」に懸念を表明している。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

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逮捕された親チベットの抗議活動家

 【スバIPS=シャイレンドラ・シン】


フィジーの首都スバで、チベットでの死者を出した軍隊の弾圧を非難し、中国大使館の外で平和的な抗議活動を行った17人が逮捕された。フィジーの市民運動組織と主要労働組合は、この逮捕を非難している。

非難する人々は、9日の逮捕は憲法に違反しており、抗議活動を行った人々(現在は釈放されている)を起訴する根拠はないと主張している。

フィジー政府は現在、中国から2億2,800万ドル相当の融資を受けるために協議中であり、中国政府のチベット政策を支持している。

隣国のトンガのタウハ・アハウ・トゥポウ5世国王も、先週の中国公式訪問の際に、中国のチベット騒乱への対応を支持すると表明した。

フィジーとトンガは、他の太平洋諸島の国々と同様に中国から多大な支援を受けており、政府は中国の「一つの中国」政策を堅持している。

新華社通信によると、温家宝中国首相に海南省へ招待されたトゥポウ国王は、「中国の問題は中国だけが対処できるもので、他国からの干渉は容認できない」と語った。

フィジーとは異なり、トンガからは、国王の見解に反対して一般市民が抗議した、あるいはデモを行ったという報告はない。

バヌアツもトンガやフィジーのように中国からの多額の無利子融資を求めていて、チベット問題には口を閉ざしている。メラネシアの国、バヌアツからは中国の軍隊による弾圧に関する抗議活動やデモなどの報告は聞こえてこない。

インドにあるチベットの亡命政府は3月10日に始まった抗議活動を鎮圧するために中国の軍隊が侵攻して数十人が死亡したと述べており、世界中からの批判を招いている。

先週スバで逮捕された人々の中には、フィジー人権委員会の委員でフィジー女性危機センター(FWCC)のシャミラ・アリ代表も含まれていた。

アリ氏によると、同氏らのグループは中国の軍隊によってチベットで殺害された人々を追悼する徹夜の座り込みを行っていたが、プラカードを掲げたり、通行人の妨げになったりするようなものはいなかった。

アリ氏は「逮捕は言論の自由を記したフィジー憲法に違反している」とし、「チベットの人権侵害に抗議する平和的な座り込みには何の問題もない」という。スバの中国大使館はプレスリリースで警察の行動を支持すると述べた。

軍の有力者であるバイニマラマ首相が率いるフィジーの暫定政府は、逮捕に関して沈黙したままでいる。

2006年12月5日にクーデターで権力についたバイニマラマ首相は、チベットで騒乱が発生し、それに引き続き軍事的弾圧が行われた直後に中国政府に書簡を送り、先のラサでの暴動における中国政府の対応を支持すると表明した。

書簡では、中国は国家の平和と安全を守るために適切な手段を取る必要があったとされ、チベット問題は国内問題であり、中国が対処する問題だと明言された。

けれども市民運動組織の激しい抗議と、多くの怒りに満ちた手紙が投稿記事に掲載されるのを受け、バイニラマラ首相は暫定政府の主張を守勢する立場に追い込まれていた。

同首相は、政府の主張は法律の範囲内で平和的に問題を解決するという点で非常に明確で筋が通っていると述べ、この問題は「フィジーにとって長期的な友好国である」中華人民共和国の国内問題であるとしていた。

古くからフィジーの緊密なパートナーだったオーストラリアやニュージーランド、主要大国である米国や英国は、フィジーのクーデターを非難し、その体制に制裁を科したが、中国はクーデターに関して非難を行わず、フィジーとの友好関係を維持してきた。

フィジーは2億2,800万ドル以上に相当する中国からの融資を交渉中であり、すでに1億1,300ドルは国内の地方道路の整備資金として承認されている。

大手労働組合は逮捕を非難し、抗議活動家を支持すると声明を出した。

フィジー諸島労働組合評議会のアター・シン事務局長は、逮捕が言論の自由の権利を侵害しているとし、抗議活動家は起訴されてはならないと述べた。

フィジー女性の権利運動のタラ・チェティ広報官も逮捕された1人だったが、警察の行為は不当だと述べた。「こうした無益な逮捕により、チベットでの仲間の活動家との連帯を示す静かな平和的抗議活動が、とんでもない出来事のように仕立て上げられた」とチェティ氏はいう。「フィジーの憲法と国際法で守られている言論の自由や平和的集会の自由という人権の侵害は、特に現在、フィジーが選挙で選ばれていない政府によって統治されているため、問題である」

逮捕された人々は、公の集会を統制する法律を順守するため、個別のグループで座り込みをしようとしていた。尋問はグループごとに行われた。チェティ氏によると警察が逮捕者を虐待することはなかった。

「非合法の集会を行ったことで逮捕され、そのうち数人は起訴されている。けれども現場の警察官はどのような法律に違反しているとされているかについて当初は混乱しているようだった」とチェティ氏はいう。

市民憲法フォーラム(CCF)は抗議活動を行った人々に対する起訴を取り下げるよう要請している。

「CCFは平和的な市民グループが静かなデモを行って逮捕されたことを憂慮する。こうした市民は国の平和を脅かしていなかったし、何の業務の支障にもなっていなかった」とCCFのヤバキ牧師は語り、さらに「フィジー暫定政府がチベットで中国政府が犯した人権侵害を容認しているように見えるのは非常に遺憾である」と述べた。

「フィジーの歴史にとって大事なこの時期に、政府はフィジーへの中国からの支援の約束のために中国政府寄りの立場をとっているように見える」とヤバキ牧師はいう。

「CCFはフィジー政府に、表現の自由、移動の自由、不当な捜査押収からの自由などの、基本的人権を尊重する姿勢を示すよう求めている」(原文へ

翻訳=IPS Japan

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|エジプト|ムバラク政権に抗議する第2のデモ

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【カイロIPS=アダム・モロー&カーリド・ムッサ・アル・オムラニ】

カイロから車で2時間の所にあるマハラ市の国営繊維工場の労働者が、食糧価格高騰に見合った賃金の引き上げを要求するストライキを計画。イスラム系の労働党、民主化を求めるケファヤ運動がこれに参加して、4月6日マハラ市では実際にデモは行われなかったものの、別の町で緊急経済支援、政治変革を要求する大規模な抗議行動が勃発した。 

治安部隊はデモ鎮圧にゴム弾、催涙ガスを使用。死者3人、けが人多数を出す騒ぎとなった。(カイロを始めとする多くの都市でもデモが計画されたが、治安部隊の出動で実現が阻まれた)

 当局は、デモ鎮圧後数日間で労働組合リーダー、政治活動家、政治主張を掲載するブログ関係者など数百人を逮捕。その内200人は釈放されたが、依然450名が騒乱罪で拘束されている。 

 4月半ば、検察庁長官は、20人(その半数は、インターネットを通じデモ参加を呼びかけた所謂オンライン活動家)の釈放を命じたが、内務省は緊急事態法を盾に彼らの再逮捕と無期拘束を命令した。カイロに本部を置くエジプト人権組織(Egyptian Organization for Human Rights)のハフェズ・アブ・サエダ事務局長は、「非暴力の活動家の拘束、再逮捕は許されない。政治活動家の大量逮捕は、政府が表現の自由の権利を認識していないことの表れ」と憤る。 

しかし、この逮捕にも拘わらず、活動家はムバラク大統領の誕生日に当たる5月4日に第2の全国抗議行動を行うべく、市民に当日の職場放棄、不買運動を呼びかけている。11万5000人のメンバーを有するエジプトの人気ブログ“フェイスブック”の支持グループ2つは既に支持を表明している。今回は、抗議の内容を社会/経済分野に絞り、生活費高騰に見合った賃金の引き上げ、インフレ/市場寡占対策、拘束者の釈放を要求。スト指導者に対しては、大量の逮捕者を出さないよう、一か所に多数の人員を集めないよう指示している。 

この動きに対し、政府は目下沈黙を守っているが、アブ・サエダ氏は、「内務省によるフェイスブックのシャットダウン、同サイト設立メンバーの逮捕はあり得る」と語っている。 

食糧価格高騰が引き金となったエジプトの社会不安について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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EUの大義を台無しにする引き渡し


【ブリュッセルIPS=デビッド・クローニン】

EU高官の内部文書によると、EU各国の政府は米国の拷問と誘拐の秘密計画に結託し、人権を推進するEUの活動を台無しにしている。2001年にEUは、「拷問に対する戦いの実践」として、他国の抑留者に対する不当な扱いをめぐる懸念の表明についてガイドラインを承認していた。

 ガイドラインの適用に関する新たなEU評価は、米国のCIAによる特例拘置引き渡しにかかわるEU加盟国のダブルスタンダードに対し非難があることを認めた。この内部文書は、IPSが確認したところによると、「EUの信頼性を強化」するよう特に推奨し、人権に対する「十分な尊重」を保証すべきとしている。 

英国を始め、ドイツ、スウェーデン、ポルトガル、アイルランド、イタリアはCIAの秘密工作に協力したことが非難されており、ポーランドとルーマニアは両国におけるCIAの収容所の存在について情報を提供しないと欧州委員会(EC)から批判されている。 

欧州議会の調査委員会が作成した2007年報告書によると、2001~5年の間にCIAの航空機が少なくとも1,245回、欧州を通過、あるいは着陸している。調査委員の1人で英国労働党の政治家であるクロード・モラエス氏は、「EUとCIAの共謀ということでは信頼性が崩壊する」という。 

CIAの活動を調査しているレプリーブのC.デイビーズ氏は、「人権擁護者としてのEUの名声が失墜しつつある」という。さらに、拷問あるいは死刑の道具の輸出を禁ずる法規が破られているとアムネスティ・インターナショナルに抜け穴を指摘され、英国政府はEUと協力して対策に乗り出した。EUの人権に対するダブルスタンダードについて報告する。(原文へ) 

INPS Japan浅霧勝浩 

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