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10周年を迎えた国際刑事裁判所の成果と課題

【ロッテルダムIPS=イレーヌ・デベッテ】

7月17日で、国際刑事裁判所(ICCを設立するローマ規程が採択されて10年になる。ICCは、大量虐殺(ジェノサイド)、戦争犯罪、人道に対する罪を犯したと疑われる個人を裁くための、初の恒久的な国際法廷だ。 

1989年、トリニダード・トバゴ政府は、恒久的な刑事法廷を設立する提案を行った。その後、ユーゴスラビアやルワンダに関して特別法廷が設置されたが、1994年になって、恒久法廷のための規程がいよいよ起草された。そして、1998年にローマ規程が採択され、2002年に60ヶ国の批准をもって規程は発効した。現在、106ヶ国が批准を済ませている。しかし、米国・中国・インド・イスラエルなど批准していない国もある。

 最近でもさまざまな動きが起こっている。今年7月はじめには、旧コンゴの反体制指導者ジャン-ピエール・ベンバの身柄がベルギーからICC本部のあるハーグに移された。7月14日には、ルイス・モレノ-オカンポ検事が、スーダンのバシール大統領の逮捕状を請求した。ダルフール地区で発生している武力紛争に関して、戦争犯罪、人道に反する罪、大量虐殺に関与した容疑だ。 

国際人権団体「ヒューマン・ライツ・ウォッチ」は、7月11日、ICCの5年間にわたる活動を評価した報告書を発表した。捜査や起訴、現地事務所の開設、証人の保護などの点で進展があったと報告書は評価している。 

しかし、たとえば、コンゴの元軍閥トーマス・ルバンガに対する起訴手続きが停止した事案は、ICCの抱える困難を示している。捜査にあたる人間の不足が根本的な問題だと報告書は指摘する。ICCには独自の警察力がなく、逮捕状を執行しようとすれば、各国政府の警察に依存せざるをえないからだ。 

全世界2500のNGOを束ねる「国際法廷を求める連合」(CICC)は、ICC10周年を記念して、各種イベントを開いている。10周年を迎えたICCの話題について報告する。(原文へ) 

翻訳=山口響/IPS Japan浅霧勝浩 


|ネパール|王国から共和国となって、人々の生活

【レレIPS=マリカ・アリアル】

ネパールが共和国宣言を行った時、カトマンズはにぎやかな祝賀ムードに包まれた。レレでもやや控えめな行進が行われたものの、住民の多くはあまり関心がなかった。レレではこれまでネパール・コングレス党が優勢だったが、4月10日の制憲議会選挙ではマオイストのバルシャ・マン・プン・マガル氏がコングレス党の対立候補ウダイ・シャムシェル・ラナ氏を15,329票対14,011票で破った。

「この辺りの村ではネパールが今や共和国になったと知っているものは少ない。知っていてもそれが何を意味するかを本当に分かってはいない」とスナルさんはいう。スナルさんはかつて、現在の制憲議会で第3位となったネパール共産党統一マルクス・レーニン主義派(UML)の忠実な支持者だったが、数年前にマオイストに加わり、今はレレのダリット解放戦線の書記を務めている。

 「マオイストは村のダリットや他の抑圧された人々への差別をなくすために頑張ってきた」とスナルさんは家族が見下されていた頃を思い出して語る。茶店ではカーストの上位の人々と一緒の席に座ることは許されず、地元の茶店ではどこでも、お茶を飲んだ後で自分のコップを洗わなければならなかった。

スナルさんの妻のラクシュミーさんは慎重に言葉を選んで語る。「国王がいなくなっただけでは十分ではない。政党は国王よりもうまく国を治められるということを実際に国民に示さなければならない。生活水準が向上し、道路、開発、建設工事が行われ、子どもたちが無料で学校に通えて、私たちが医療の心配をしなくてよいようにならなければ、王もマオイストも他の政党も、私たちのような貧困層には皆同じだ」

レレにあるヒンズー教寺院では、僧侶のラム・プラサド・ギミレさん(65歳)が都会からやってきた参拝者を案内していた。ギミレさんはギャネンドラ前国王が荷物をまとめて王宮を出ていくのに2週間しか与えられなかったことを知っている。「政党は過ちを犯したが、気の毒な国王にも非がある」とギミレさんはいう。

ギミレさんは国王を退去させたやり方については憤慨しているが、国民が共和国を望んでいることは理解している。「それでも240年続いた制度を簡単になくしてしまっていいのだろうか。ビシュヌ神の生まれ変わりとみなしている人物への崇拝をやめるのか。価値観や伝統を手放すのはそれほど簡単だろうか」とギミレさんは自問している。

先週の閣議では、ヒンズー神の生まれ変わりとして崇拝されている前国王に、カトマンズ郊外のナーガールジュナ宮殿に住む許可が下された。また6月8日の夜遅く行われた閣議では、マヘンドラ故国王の妻で80歳のラトナ皇太后に、ナラヤンヒティ宮殿の敷地にあるマヘンドラ・マンジルに住む許可が下された。

ネパールの農村部は「人民戦争」の間に軍隊と反乱軍との紛争に巻き込まれることが多かったので、マオイストが権力を持つことで戦争はついに終わったという非常に強い期待感がある。

日雇労働者のアーシャー・カジ・マハルジャンさんのような人々の多くは、世の中は良い方向に変わりつつあると期待している。「全面戦争を経験したし、制憲議会選挙に投票した。そして今、新憲法が作成されているのだから、もちろん世の中は変わる」とマハルジャンさんはいう。

レレの町では、過去18年間ネパール軍に勤務していたバル・クリシュナ・シルワルさんが休暇を取って家に戻っていた。シルワルさんは戦争中にネパール西部でマオイストに対する主要作戦に加わっていて、戦争が終わったことを安どしている。「軍の最高司令官が誰になっても仕えるつもりだ」シルワルさんはいう。

けれどもシルワルさんは政党が国王の処遇の決定を急ぎすぎたと考えている。「国王は退位するにしても、国王を退かせる正しい方法は国民投票を行うことではなかっただろうか」とシルワルさんはいう。住民の多くと同じように、ネパールが王政であろうとなかろうと貧しい人々にはどうでもよいことだとシルワルさんは考えている。「人々は食料、水、仕事、道路、開発を望んでおり、誰が国を支配しようとかまわない」とシルワルさんは語った。

昼時になると、地元の茶店にはレレと近隣の村からの客があふれる。バヌ・バハドール・ラマさんはレレから20キロ離れた村Sanghumarからやってきた。息子のミム・ラマさん(20歳)はネパール軍に入隊していたが、3年前にカイラリでの激しい戦闘で死亡した。ラマさんの住む村では、村人のほぼ全員がマオイストに投票したが、ラマさんはコングレス党に投票した。「息子がマオイストに殺されたのに、マオイストに投票できるわけがない」とラマさんはいう。

息子を失ってから、ラマさんは妻と3人の幼い子供に1日2回の満足な食事を与えるために大変な苦労をしている。「ネパールが共和国になろうが、国王が宮殿を出ようが関係ない」とラマさんはいう。「息子はいない。私の人生はもう終わりだ。心配なのは家族を養うだけの稼ぎが今日あったかどうかだけだ」(原文へ

翻訳=IPS Japan

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|ケニア|見放される国内避難民

【ナイロビIPS=ナジム・ムシュタク

ケニアで多くの国内避難民(IDP)が追い詰められている。政府はこれまでの国内避難民支援の政策(『Operation Rudi Nyumbani』)を終了すると発表。国内の難民キャンプを閉鎖し、避難民に対して1、2週間のうちに帰還するよう促している。

ナイロビの『IDPs Advocacy and Policy Centre』のPrisca Kamungi氏は「実際に故郷に戻り再定住できる避難民は僅かである。彼らの多くはキャンプを追い出された後も、市外地の劣悪な状況でテント生活を強いられるだけだ」と、怒りを露にした。

国連によるとケニアにおけるピーク時の避難民の数は35万人から50万人とも言われている。現在、同国全土に設置された300ヶ所の国内避難民キャンプでは30万人を越える人々が身を寄せているという。

 市民団体や人権団体からもケニア政府に対して強い反発が出ている。ケニア国家人権委員会(KNCHR)は今月24日、政府の計画は大きな失敗を招くと酷評した。「ケニア政府は、世界で進められている難民のための再定住計画の国際基準を無視している」。

ケニア政府は和平合意を経て国際社会に国内の『正常化』をアピールしたい意図がある。同国では近年、暴動や混乱で世界から厳しい非難を受け、また人権団体からは国内避難民の窮状を訴える報告が相次いでいた。

「ケニアの難民支援に世界からの注目が集まる今こそ、国内避難民の帰還・再定住支援に向けた総合的な政策が必要だ」と、Kamungi氏は述べる。

ケニア国内避難民が直面する新たな苦難を伝える。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

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|ブラジル|気候変動が再生可能エネルギー源にも影響

【リオデジャネイロIPS=マリオ・オサヴァ

ブラジルはエネルギーの45%を再生可能エネルギー源に頼っている。これは先進諸国の3倍にも相当し、これは高く評価されることである。しかしこのために、ブラジルは気候変動に対する脆弱性が高い、と6月2日に発表された研究報告書は指摘した。

予測される2071~2100年の気候条件下では、サトウキビを除き、国内における再生可能エネルギー源によるエネルギー生産は減少する、とブラジル連邦リオデジャネイロ大学(UFRJ)の大学院 Institute of Engineering Graduate Studies and Research(COPPE)による研究のコーディネーターのひとりRoberto Schaeffer氏は述べている。

風力エネルギーの潜在発電量は、国内中部の強風の頻度が減るため、60%の減少が予測さる。バイオディーゼルの生産も、温暖化による北東部および中西部の油料作物生産の減少もしくは消滅により、深刻な影響を受けるだろう。

報告書はまた、降雨不足および異常降雨により、ブラジルの電力生産の85%を担っている水力発電所も影響を免れないとしている。

矛盾しているようだが、国連の気候変動に関する政府間パネル(IPCC)が予測する温室効果ガスの排出が高めのシナリオ(A2シナリオ)では、水力発電量は平均1%の減少が予測されるが、排出量が低めのシナリオ(B2シナリオ)では、それよりも高い2.2%の減少が予測される。

Schaeffer氏によれば、これは「控えめな予測」であり、貯水池の水位が低く、小規模ダムが発電能力を失い、また、短期間に集中して豪雨が発生し、ダムの決壊を回避するために水門を開け、貯水された水を放流する必要が生じると、予測はさらに悲観的なものとなる。

また、2071~2100年の気候変動の予測に基づくと、平均気温の上昇により、2030年頃までにブラジルの電力消費量は8%増加するとの推定も明らかにされた。

すでに国内最大の貧困地域である北東部に、もっとも深刻な影響が予測される。北東部の半乾燥地帯はさらに乾燥が進み、バイオディーゼル用の作物生産が困難となり、水力発電の水源であるサンフランシスコ川流域の発電力は今世紀末までに7.7%の減少が見込まれる。

COPPE/UFRJのエネルギー・プラニング・プログラムの8人の研究者が執筆した気候変動とエネルギー安定供給に関する今回の研究報告書は、将来計画に当たっては、現状ではなく、予測される気候の影響を考慮に入れなければならないことを実証することが目的である。

研究報告書のもうひとりの執筆者Alexandre Szklo氏は、「不確実度が増した」ことで、アマゾン密林の河川の未開拓の可能性や気候変動がその流量に与える影響など、発電に影響を及ぼすさまざまな要因についてさらに適切なデータが求められると指摘している。

Szklo氏は、気候変動にもかかわらず、代替エネルギー源を促進する政策を引き続き実施すべきと言う。風力エネルギーは潜在能力の60%を失う可能性があるが、しかし「格別に好ましい」風が沿岸や沿岸水域に集中すると思われるので、このセクターにおける「投資の実行可能性は増大する」と語る。

ブラジル鉱業エネルギー省の計画立案機関であるエネルギー研究公社(EPE)のトップMauricio Tolmasquin氏は、不確実度は増すが、水力発電量の1~2%の減少は「このセクターのリスクの許容範囲内」であるので、事態全般については「ある程度平静」に見て大丈夫だと述べている。

水力発電は今後も、ブラジルのエネルギー基盤のもっとも重要な部分を担うだろう。将来の技術はヒマシ油や大豆など北東部における油料作物の損失を補うことができ、人口密度が高く、エネルギー需要が集中しているブラジル海岸線沿いの強い風力は引き続き役立つだろうと、Tolmasquin氏は報告書発表の場で述べた。

また、COPPEのエネルギー計画プログラムのコーディネーターLuis Fernando Legey氏は、気候変動に対処するためには、すでに技術的に可能であるものの費用が法外である酵素加水分解によるバイオ燃料の生産など、将来の代替エネルギーについて「大胆な仮説」が必要と述べている。

世界の人口の増加を考えると、省エネには「消費習慣」を変えることも必要と、Legey氏は指摘している。

国家電力エネルギー庁のジェルソン・ケルマン長官は、ブラジル国内で気候変動のもっとも深刻な影響を受ける地域においては、高圧送電線が問題解決の鍵を握っているとの考えを明らかにした。

ブラジルには8万kmに及ぶ高圧送電線が敷設されており、電力網は完全に相互連結しているので、エネルギー不足の地域があれば、他の地域がそれを補うことができる。

2001年のエネルギー危機の際は、一部地域で停電が発生し、エネルギー配給が行われた。研究報告書の発表に出席したケルマン長官によれば、降雨に恵まれた南部は他の地域に電力を分け与える余裕があったが、しかし当時は電力網の整備が不十分だった。(原文へ

翻訳=IPS Japan

|南太平洋|広がる児童労働と性的搾取

【スバIPS=シャイレンドラ・シン】

南太平洋諸国においても、児童労働と児童に対する性的搾取が広がっている。正確な統計はないが、国際労働機関(ILO)の推計によると、パプアニューギニアの労働力の19%、ソロモン諸島の労働力の14%がそれぞれ児童であるという。

性産業も盛んだ。ユニセフは、2004年から05年にかけてフィジー・キリバス・パプアニューギニア・ソロモン諸島・バヌアツにおいて調査を行った。それによれば、これらの国のいずれにおいても、児童売春・児童ポルノ・児童セックスツアー・人身売買が起こっていたという。同調査書では、南太平洋では、貧困のために家族や友人によって児童が性産業のために売られる危険性が極めて高いとしている。

また、ある地域では、セックス・ワーカーのうち13才から19才までの児童が占める比率が3分の1であった。中には11才の子供もいた。

こうした問題に対処するいくつかの試みもある。ILOでは、今後2年間にわたって、TACKLE(教育を通じた児童労働根絶)というプログラムをアフリカ・カリブ海地域・太平洋の11ヶ国で展開する予定だ。

オランダ政府も、児童労働根絶のためにパプアニューギニアに250万ドルを投下することにしている。

ILOは、世界全体では5才から17才の子供2.46億人が児童労働に従事しているとみている。このうち3分の2にあたる1.8億人が最悪の形態の児童労働につかされているとされる。

南太平洋における児童労働の問題について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

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Q&A・エジプト:百を超える犯罪に死刑適用

IPS:
エジプトではどれ位の人が、またどの様な罪によって極刑となっているのですか? 

アイマン・オカイル:
はっきりした数はわかりませんが、アムネスティ・インターナショナルは2007年の死刑判決は40強といっています。死刑が適用されるのは、公共利益破壊、麻薬犯罪、テロなど105種の犯罪です。エジプトでは27年間緊急事態法が敷かれており、これが2010年まで続く予定です。この他に、大統領は、軍事規則に従い民間裁判の軍事法廷移行を決定することができます。

 IPS:
多くの死刑関連法には欠陥があるとおっしゃいましたが。

AO:
死刑法の文言は曖昧で様々な解釈が可能なのです。また、裁判には政治的思惑も大きく作用します。

IPS:
宗教組織の反応はどうですか。 

AO:
死刑は社会に平和をもたらすものでも犯罪を抑止するものでもないのですが、エジプト最大の宗教組織アル・アザールの指導者は、死刑は神に与えられた権利であり、何者もこれを廃止することはできないと主張しており、人々もこれに影響されています。

IPS:
議会はどうですか。

AO:
広場などでの公開死刑を要求しています。外交委員会の副議長は、広場の処刑が無理であればテレビ放送をしろと提案しています。臓器密輸犯罪への死刑拡大、核関連用法に則ったテロ行為への死刑拡大も行われています。

IPS:
軍事法廷はどうですか。

AO
最も死刑判決が多いのが軍事裁判です。これまでにテロ関連で93人に死刑判決が下り、その内67人は既に処刑されてしまいました。我々は、死刑対象の105の罪を予謀殺人、国家反逆、戦時スパイ活動、ハイジャックおよび婦女暴行の大罪に制限し、全面廃止への足がかりとしたいのです。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan


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イスラエルとシリアが演じる外交劇

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【カイロIPS=アダム・モロー、カーリド・ムッサ・アル・オムラニ】

8年間の中断を経て、イスラエルとシリアは、トルコを介して、ゴラン高原問題の交渉を再開した。2000年に米国の仲介による交渉が決裂したのは、シリアがイスラエルの全面撤退を求めているのに対し、イスラエルがガリラヤ湖の領有を譲らず、さらには、反イスラエル組織のシリア追放や、米国のシリア駐留を主張したためである。

シリアはゴラン高原を占領された1967年の第3次中東戦争以来、中東地域において対イスラエルの急先鋒となってきた。今回の交渉にあたって、イスラエル側が狙いとしているのは、シリアのイランとの関係、或いはハマス、ヒズボラそれぞれとの結びつきを、解消することである。

 だがそれらの結びつきは、近来米国とイスラエルが押し進めてきた強硬な中東政策によって、却って強まっている。米国は2005年のレバノン・ハリリ首相暗殺事件以来、シリアの関与を示す確たる証拠はないものの、シリアへの圧力を国際社会に呼びかけてきた。イランは核兵器開発に関して、米国から圧力をかけられているし、イスラエルと戦闘のあったハマスとヒズボラは、米国が「テロリスト組織」と呼ぶところとなっている。

アルカラマ紙のハリム・カンディル氏は、シリアはイスラエルとの交渉の窓を開けることによって、「米国政府がシリアを孤立化させようとしているのに対抗し、国際社会に対して、和平に積極的だという姿勢をアピールするつもりだ。できれば米国に、シリア政府に反発する勢力への援助を、緩めてもらいたいと思っている」と分析する。

さらにカンディル氏は、「イスラエルはシリア一国なら恐れるものでなく、イラン、ヒズボラ、ハマスとの同盟があるから、深刻に警戒しているのだ。逆にシリアは、このような戦略的効力を発揮する同盟を、容易に放棄しようとはしない」と述べた。

カイロ大学のサラアマ教授(国際法)は、「シリアはヒズボラやハマスと手を切っても、イランとの緊密な関係は維持するだろう」と述べている。先月、シリアとイランの防衛大臣は、防衛協定の改定と軍事協力について会談したところである。

「だが、トルコの積極的な仲介、米国政府の協力、イスラエル、シリア双方の譲歩によって、交渉が実を結ぶこともあり得る」と同教授は見ている。また「常に地域のリーダーであったエジプトでなく、トルコが仲介役に選ばれたことは、驚きだった。エジプトが外交上の重みを失ってきているのに対し、トルコは政治的にも経済的にもプレゼンスを増している」と述べた。

一筋縄ではいかないイスラエルとシリアの交渉だが、対立深まる中東地域で、問題解決のきっかけとなればという期待がかかる。トルコを仲介として行われているイスラエル、シリア間の外交交渉について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan

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イラン人権団体、少年死刑囚に関する詳細情報を発表

【国連IPS=オミド・メマリアン】

イランの人権擁護団体International Campaign for Human Rights in Iranは6月18日、同国の少年死刑囚に関する詳細リストを初めて公表した。同リストは、著名なイラン人人権活動家エマド・バギ氏の広範な調査の結果で、「未成年者の死刑はイラン当局が主張するイスラム法に基づくものではない」と主張する同氏の著書「Right to Life II」にも盛り込まれている。(同著書はイランの議会、司法、NGO等に配布されたが、検閲により出版は禁止された。) 

同リストによると、今年に入ってから既に2人が処刑され、少なくとも114人が極刑を待っているという。その中には、犯行当時12歳だった者もいる。International Campaignのハディ・ガエミ氏は、世界が死刑廃止に向かう中で、イランの未成年処刑増加は恥ずべきことと語る。 

ヒューマンライツ・ウォッチの報告書によると、2004年以降未成年者の処刑を行っているのはイラン、スーダン、中国、パキスタンのみで、スーダンは2005年に2人、中国は2004年に1人、パキスタンは2006年に1人を処刑したという。これに対し、イランは2004年に少なくとも3人、2005年に8人、2006年に4人を処刑している。総数でいえば中国の処刑人数はイランを上回るが、比率ではイランが世界で最も高い。同国では、殺人、強姦、強盗、誘拐、麻薬密輸はすべて極刑となる。 

国連子ども権利条約および国際自由権規約は、18歳以下の犯行に死刑を課すことを禁じており、イランは両条約を批准している。 

死刑判決を受けた子供達の罪状は殺人である。しかし、バギ氏の調査が示すように多くの判決は厳しい尋問/拷問の後の疑わしい自白に基づいたものの様だ。裁判所は、被告が提出した正当防衛の証拠を取り上げることはないと、同報告書は述べている。 

ヒューマンライツ・ウォッチ中東・北アフリカのクラリサ・ベンコモ氏は、「我々が調べたケースでは、もし子供達に十分な法的支援と適正な裁判が行われていれば、多くは無実となっていただろう」と語っている。9月の国連総会でも取り上げる予定のイラン未成年処刑について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|ポーランド|前政権による情報機関濫用を正す

【プラハIPS=ゾルタン・ドゥジジン】

ポーランドでは右派「法と正義(PiS)」のヤロスワフ・カチンスキ前政権によるイデオロギーおよび政治的目的のための情報機関の濫用によって、諜報活動が完全な混乱に陥っている。 

昨年10月の総選挙で政権を奪ったリベラル「市民プラットフォーム」のドナルド・トゥスク首相は、情報機関の徹底改革を進める意向であり、検察官および調査委員会が各種情報機関における権力濫用の調査を進めている。 

情報機関は、党利党略への対応、文書偽造、機密情報の漏洩、盗聴装置の濫用、腐敗汚職への誘惑、内規違反などを非難されている。

 こうした中、前政権が政権中の活動の証拠を隠そうとしているとの容疑が高まっている。とりわけ注目を集めている公安庁(ABW)の活動の悲劇的な結果は、謎に包まれたままである。 

PiSは、情報機関からの共産主義後およびロシアの影響の排除という前政権の功績を現政権が台無しにしていると非難している。前政権は、共産党時代のロシア情報機関との関係、そしてポーランドの多くの高官がモスクワで訓練を受けたという事実が国家安全保障上の脅威となっているとの考えから、旧軍情報部(WSI)の解体を図ったのである。 

だが、当時の野党市民プラットフォームも支持したこの動きは今、アフガニスタンおよびイラクにおけるポーランド部隊と高官の安全を著しく阻害していると考えられている。昨年10月には、ポーランドの駐イラク大使の車列が爆弾攻撃にあった。多くの人はこの事件が、間接的には現地におけるポーランドの諜報活動が突然の欠如したことによる結果であると解釈している。 

ポーランド前政権による情報組織再編がもたらしている影響について報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|ノルウェー|平和協議の一方で武器を輸出

【オスロIPS=タルジェイ・キッド・オルセン】

平和調停国ノルウェーは、世界第7位の武器/弾薬輸出国である。

アムネスティ・インターナショナル、オックスファムおよび小型武器に関する国際ネットワーク(International Action Network on Small Arms:IANSA)が主宰する武器規制キャンペーンによると、現在世界には約6億3,900万の小型武器が存在するという。そして、これらの武器が武器商人などの手に渡って戦争や犯罪を引き起こし、発展の妨げとなっているのだ。

ノルウェー中央統計局(SSB)によれば、2007年の武器輸出収入は前年比18パーセント増の4億2,500万ドルで、世界全体の3.5パーセントとなる。ノルウェーの外務省規定では、紛争地帯への武器輸出は認められていないが、NGOノルウェー・チャーチ・エイド(NCA)によれば、1990年代にクルド反政府勢力と武装闘争を行っていたトルコなどへの輸出が行われてきたという。

トルコ問題を重要視したノルウェーは、その後外務省への武器輸出年次報告を義務化し議会の監視、透明性の強化を図った。また、2007年には、武器輸出の決定に民主主義/人権の原則を考慮することを宣言した。

しかし、これで問題がなくなった訳ではない。最大の課題は、武器輸入国の再販防止である。たとえば、ノルウェーから大量の武器を輸入しているチェコは、スーダン、アンゴラ、エジプト、サウジアラビアなどへの武器輸出を行っている。ノルウェーは、北欧諸国およびNATO同盟国に対しては、再販しないとの誓約を義務化していないのだ。ノルウェーが和平努力を行っている間も、米国を始めとするNATO加盟国はコロンビア、イスラエル、ネパール、フィリピン、スリランカといった紛争国への武器輸出を行っている。

スカンジナビアの武器/弾薬は主にNammo社を通じ行われている。Nammoはノルウェーに本社を、スウェーデン、フィンランドに姉妹会社を置き、ポーランド、マレーシア、米国を含む数社と武器のライセンス製造を行っている。Nammoは、ノルウェーの通商産業省とフィンランドの国防企業Patriaとの共同所有であるが、ノルウェー通商産業省は、Nammoの道義的責任について、外務省のガイドラインに従うものと期待すると述べるに止まっている。

ノルウェーの武器輸出について報告する。(原文へ

INPS Japan