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HIV/エイズの脅威に晒される移民たち

【タショロトショ(ジンバブエ)IPS=イグナチウス・バンダ】

ブラワヨ市内から南東へ約150km、マタベレランド州の辺境地の1つタショロトショ(Tsholotsho)では職を求めて周辺国へ出稼ぎに行こうとする若者で溢れている。しかし、家族を養うために故郷を離れた彼らを待ち受けているのは、HIV/エイズの脅威である。 

WHO(世界保健機関)など現地の専門家によると、サハラ以南諸国での移民の増加はHIV/エイズの感染拡大を助長する原因になっており、移民労働者の生活の長期化や(農村部での)コンドーム使用率の低さなどがその背景にあるという。

 国連の統計では、ジンバブエの平均寿命は女性が34歳、男性が37歳と世界で最も低い。  

『南部アフリカ地域貧困ネットワーク( Southern African Regional Poverty Network: SARPN )』が発表した報告書(『Mobility and HIV/AIDS in Southern Africa』)も、ジンバブエの移民労働者は複数の性交渉相手を持つ場合が多いことや、男性のコンドーム利用が定着していないことを指摘。 

ジンバブエでは経済危機のあおりを受けて多くの人々が職を求めて近隣諸国に移動している。同国政府は昨年、HIV/エイズの罹患率が減少したと発表した。しかし、国連開発計画(UNDP)やWHOは移民の増加の影響で正確な数値を得ることは難しいとして、政府側の公式発表には疑問があると論じた。 

タショロトショで活動するNGO職員Maria Guyu氏は、若者の移民労働者の急増がHIV/エイズの感染を一層拡大させていると主張している。「タショロトショのような町には、(抗レトロウイルス薬など)十分な治療薬も無ければ、医者や看護士、(患者に必要な)食料さえも不足している」と農村部を取り巻く厳しい現実を嘆いた。 

HIV/エイズの蔓延が深刻化するジンバブエの辺境地について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|国連|子ども自爆兵を懸念

【国連IPS=タリフ・ディーン】

国連はアフガニスタンやイラクで増加の一途をたどる子どもを巻き込んだ自爆攻撃について『大いなる懸念』だとしている。 

30日(水曜日)国連が発表した45ページにわたる報告書『Children and Armed Conflict(子どもと武力紛争)』には、「これは比較的最近の傾向である。国連は紛争に巻き込まれた子どもに関する極めて憂慮すべき数件の事例を記録した」としている。 

さらに、イラクのアルカイダやその民兵、アフガニスタンのタリバンを名指しした上で「国連はこのような組織と問題解決のためのいかなる取引も行うことはできない」と述べている。 

国連人権委員会特別報告者ラディカ・クマラスワミ氏はIPSとの取材に応じて「子どもを巻き込んだ自爆テロは多くの新たな問題をもたらしている」と指摘した。

 「我々はこの問題にどう対処すべきか、今現在、取り組んでいるところだ」 

 クマラスワミ氏は、次の3点について疑問を投げかけた。「第一に、(戦争捕虜に関する扱いを規定した)『ジュネーブ条約』において、自爆テロ犯は『戦闘員』と見なされるのか?自爆テロを起こす可能性のある人間を『兵士』と見なすことができるのか?あるいは、これらの自爆テロ犯を『子ども兵士』と判断していいのか?」 

「第二に、『安保理決議1612』の目的は軍司令官と行動計画を締結し、子ども兵士を解放することである。しかし、自爆テロ犯やテロを起こす可能性のある人物に関して、これをどのように進めていくべきなのか?」 

「最後に、子ども兵士を徴用している政府や他の武装組織などと同様に、自爆テロを実施する(アルカイダなどの)武装グループが、子どもの解放を巡り我々国連との話し合いに応じる可能性はかなり低いだろう。この問題は、国連と武装組織との協議によって解決できる問題なのか?また各国政府はこれを許可するだろうか?」 

「政府の許可を得ることができさえすれば、我々は話し合いができるのだ」 

しかし、アフガニスタンのカルザイ政権は現在、国連など国際組織に対してタリバンとの一切の協議を許可していない。 

先月、EUの職員(英国人)と国連職員(アイルランド人)の2名が激しい戦闘の続く南部ヘルマンド州のタリバン側との協議を行おうとしたことを理由に、アフガニスタンから退去させられた。 

(来月12日の国連安保理の議題に上る予定の)同報告書によると、現在世界の約13カ国(ブルンジ、チャド、コロンビア、コンゴ民主共和国、ビルマ、ネパール、フィリピン、ソマリア、スリランカ、スーダン、ウガンダ、アフガニスタン、中央アフリカ共和国)で政府や武装グループが子ども兵士を利用しているという。 

一方、コートジボワールでは現在子ども兵士の事例は報告されておらず、シエラレオネでも武装解除により子ども兵士が解放されたため、国連のリストにも上がっていない。 

国連は、ウガンダ、スリランカ、スーダン、ビルマで現在も子ども兵士の解放に向けた取り組みを行っているところだ。 

クマラスワミ氏は30日の記者会見で、「世界中で今もなお約25万から30万人の子供兵士がいる。そして、我々は子ども兵士を取り巻く戦闘の形態が変化してきていることを心配している」と語った。 

同報告書は、最近多くの子どもが『テロの実行犯』になっていることや、時には子どもが敵からの攻撃を防ぐための『人間の盾』にされる場合もあると伝えている。 

自爆攻撃などの激しい戦闘で子どもを徴用し、利用するケースも目立ってきている。 

アフガニスタンのホースト州で昨年2月、12歳と15歳の少年が自爆テロを行い警備員1名が死亡、市民4名が負傷した。さらに、14歳の少年が州知事を暗殺するため、自爆攻撃用ベストを着用して歩いているところを逮捕された。 

昨年5月には、自転車に乗った14歳の少年がイラクのハディーサで自爆攻撃用ベストを爆発させ、巡回中の警察官3名が死亡した。 

また、武装組織の新たな作戦として、車による自爆攻撃で子どもを囮にする事例も報告されている。 

同報告書はイラクでは戦闘により犠牲になる子どもの数は増え続けていると伝え、さらに、現在報告されている自爆攻撃の一覧表を掲載。子どもの死傷者数はほぼ毎日伝えられているとしているが、まだ今のところ信頼性のある統計値ではないとしている。 

「住宅街を狙った迫撃砲による無差別攻撃や、自爆攻撃(特に殺傷能力の高い自動車爆弾)の犠牲者には多数の子どもが含まれている」と説明している。 

クマラスワミ氏は、記者に対して「アフガニスタン、イラク、タイで増加している宗教とは無関係の『学校』をターゲットにした攻撃にも懸念している」と述べた。 

 このような学校への攻撃は『教育の推進』に反対する一部の武装組織が行っている。2006年8月から2007年7月の間に、学校を狙った攻撃は少なくとも133件あったという(死亡者10名)。 

さらに、学校の中でも女子高が特に狙われており、女子生徒や女性教員への計画的な攻撃が多発している。 

アフガニスタンでも学校機関、特に女子教育の促進を妨害するため女子高をターゲットにした(武装グループによる)攻撃が相次いでいる。 

ユニセフ(国連児童基金)はイラクでは現在子どもの就学率は30%であると予測している。 

同報告書では特に痛ましい事例として昨年起きた以下の事件を挙げている。 

昨年1月、バグダッド西部のal-Khuludの女子中等学校で迫撃砲が打ち込まれ生徒5人が死亡、21人が負傷した。 

5月と6月には、バクバで女子の学校機関を狙った3件の攻撃が発生。 

タイでは、73名の教師が死亡し、100を超える学校が焼き払われた(昨年6月だけでも11校が全焼)。このような卑劣な行為は全て『武装分子』によるものだ。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 


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将来に向けてのセーフガードとして農作物の多様性を急速冷凍

【メキシコシティIPS=ディエゴ・セヴァジョス】

アフリカ、アジア、ラテンアメリカ、中東各地の農作物20万品種を貯蔵するため北極圏にあるノルウェー領の島に建設された急速冷凍貯蔵施設に向けて、トウモロコシ(メイズ)と小麦の種子3tが輸送されている。 

何千年もの間種子を保存できるよう北極の永久凍土層深くに建造されたこのスヴァールバル世界種子貯蔵庫(Svalbard Global Seed Vault)は、世界最多の植物遺伝資源を収集して保存することになる。 

メキシコに本部を置く国際トウモロコシ・小麦改良センター(CIMMYT)の資源動員部長ロドミロ・オルティス氏は「実に驚くべき取り組みだが、人災や天災から貴重な生物学的収集を保護するにはそれだけの価値がある」とIPSの取材に応えて述べた。

オルティス氏によれば、CIMMYTからは小麦48,000、トウモロコシ7,000のサンプルが先週ノルウェーに向けて発送された。 

166箱の積み荷には、米州のトウモロコシの多様性の90%近くに相当する品種が含まれている。トウモロコシは、およそ8,000年前にメキシコで初めて栽培化された。 

「この積み荷には、遺伝子組み換えのメイズの種子はひとつたりとも入っていない」と断言したCIMMYTの研究員オルティス氏は、しかし次のように言い添えた。「遺伝子組み換え作物については賛否両論あるが、大いに役立つ地域もあるのは確かである」 

「さまざまな米、小麦、豆、モロコシ、サツマイモ、レンズ豆、ヒヨコ豆、その他各種食糧、飼料、農林植物が、人間の農業遺産を遺すための最後の倉庫として建設された施設に保護されることになる」と国際農業研究協議グループ(CGIAR)は説明している。 

1971年に創設され、世界各地に所在する15の公的農業研究センターと研究者8,500人の連携協力を図っているCGIARは、貯蔵施設に生物由来物質を提供する。 

世界各地からノルウェーに向かっている種子は、ノルウェー本土からおよそ1,000km北にあるスヴァールバル諸島にある町ロングイェールビーン近くの山腹に建てられた貯蔵施設に保管される。 

貯蔵施設の建設はノルウェー政府が資金提供した。施設運営費はローマに本部を置く世界作物多様性財団(Global Crop Diversity Trust)が負担する。 

貯蔵施設に送られる最初の積み荷に入れられたCGIARからの種子複製は、ベニン、コロンビア、エチオピア、インド、ケニア、メキシコ、ナイジェリア、ペルー、フィリピンおよびシリアにある国際研究センターから集められたものである。CIMMYTを含むCGIARのセンターは、遺伝子銀行に60万の植物品種を保存している。 

オルティス氏の説明では、2月末に開設が予定されている貯蔵施設には、今後数年にわたり種子が送られ続けることになる。 

伝えられるところによると、米国の映画監督のオリバー・ストーン氏がこのプロセスに関心を持ち、CIMMYTの高官によれば、「地球最後の日のための貯蔵庫」とマスコミが呼ぶこのプログラムについて映画を制作する計画という。 

「CGIARの収集物は世界の農業の『至宝』である」と、世界作物多様性財団の事務局長ケアリー・ファウラー氏は述べている。財団は、種子の準備・梱包・運版関係の費用を負担する。 

ファウラー氏は声明で「米、小麦粉、メイズ、豆を収集した世界最大規模のもっとも多様なコレクションである。これらの作物の伝統的在来種の多くは、遺伝子銀行に収集・保存されなければ失われていただろう」と言い添えている。 

オルティス氏は「貯蔵施設は、私たちが免れ得ないものである攻撃や破壊などの場合にも、農業システムの回復に役立つ」と言う。 

 イラクのアブグライブにある遺伝子銀行は、2003年の米主導によるイラク侵攻後、略奪者によって荒らし回された。しかし種子は、シリアにあるCGIARセンターに複製のコレクションがあったため、失われることはなかった。 

CGIARはまた、2006年にフィリピンの国立コメ遺伝子銀行に大きな被害をもたらしたシャンセン台風(台風15号)を例に挙げる。 

オルティス氏は、遺伝子銀行は博物館ではなく、種子を収集・保管する場所であり、さらには、異なる条件に適合したより生産性の高い種子を改良する場所でもあると強調した。そうした財産が、可能性のあるいかなる脅威からも遠く離れたノルウェーに貯蔵されることになる。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩 

|欧州|さらに東へ移動するシェンゲンの壁

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【プラハIPS=ゾルタン・ドゥジシン 】

シェンゲン自由往来圏の拡大は西欧と東欧の再結合を実現するものとして期待されているが、圏外の東側では負担を強いられると感じており、圏内の西側では変化を歓迎しない国もある。シェンゲン協定に調印した国の人々は、圏内の国境を自由に往来できる。 

中東欧諸国が12月21日に加盟し、キプロス、アイルランド、英国を除くすべての欧州連合(EU)諸国がシェンゲン協定に調印した。文化的経済的結びつきが強まり、観光業が活性化される一方で、西側は犯罪や不法移民の増加を心配し、東側はEUからの疎外を不満に思っている。

新たな加盟国は、不法移民を防ぐためにシェンゲン圏以外の国境の警備を強化している。EU加盟を望んでいるウクライナは、西側との新たな壁が東に移るとシェンゲン圏の拡大に批判的だった。今後ウクライナでは、国境を接するポーランド、スロバキア、ハンガリーのビザを取得するために35ユーロ、書類提出、10日間が必要になる。 

国境近辺に住む人々は1日に何度も国境を往復して生活しているため、審査手続きの強化に抗議し、ウクライナとポーランドとの国境地帯では大規模なデモが行われた。シェンゲン圏への加盟前にポーランド当局はウクライナ国境の往来に支障はないとしており、ポーランドは新たな協定作りを急いでいる。 

ウクライナの安い労働力がEUに流れ込むのを阻止しなければならないが、国境の取り締まりが一般市民の生活に不都合となっても困る。 

シェンゲン圏拡大に関与する諸国は、密輸や不法移民を取り締まるため、圏内の国境警察隊の縮小に伴い、国境地域や建設現場での書類審査を厳しくした。国境を接する4カ国が新たにシェンゲン圏となったオーストリアは、政府が1年後にシェンゲンによる影響を調査するまで定期的審査を続ける計画である。 

ドイツ警察は東欧の安全基準の低さを挙げてシェンゲン拡大に反対だった。シェンゲン圏拡大に伴う影響について報告する。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

|ケニア|注目されないキシーの難民たち

【キシー(ケニア)IPS=クワンボカ・オヤロ】

ケニア大統領選挙で現職のムワイ・キバキ大統領陣営が不正を行ったとの疑惑に端を発した暴動で、すでに25万人が移住を余儀なくされ、500人以上が殺害されている。

ケニア西部キシー市(Kisii)にある大聖堂にも、すでに1週間以上前から2000人ほどの難民が身を寄せている。

政府は、キバキ大統領の敵対候補であるライラ・オディンガ氏(オレンジ民主運動)支持が多い近隣のカレンジン人の居住地域から、大統領に親和的なキシー人をここキシー市へ連れ出してきている。

 ある男性は、「私は単にキシー人だというだけの理由でここへ連れてこられた。でも、どこへ行ったらいいのかわからない」と話す。この男性によると、住民の中には、家を焼かれたり「家に戻ったら殺す」と脅されたりした者もいるという。

赤ちゃんを抱えたある女性は、疲れきって話すこともできない。涙が彼女のほほを伝っている。彼女の夫と子供は、暴動の渦中で殺害されたかもしれないという。

教会も食糧を配給するなど何とか難民支援をしようとしているが、あくまで一時的な措置に過ぎない。メイズの収穫はまだ1ヶ月も先のことだ。

難民たちは、政府はキシーの難民を無視しているとして怒りをあらわにしている。また、現地にいる記者たちも、キシーの窮状がメディアを通じて伝えられていないと危機感を口にした。

すでに、3000人以上の難民がケニアから隣国ウガンダに流出しているとの報道もある。

ケニア暴動から逃れようとしている難民の窮状について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

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国連、米国の支配で無力化

【国連IPS=タリフ・ディーン

就任2年目を迎える国連の潘事務総長の働きについて、ワシントンを拠とするInstitute for Policy Studyの新国際プロジェクト担当ディレクター、フィリス・ベニス氏は、「事務総長のこれまでの行動および今後のアプローチには、独立、強さ、強権国に異議を唱える気概、国家/人類の平等に対する責任感が見られない。国連が揺らぐ信用を取り戻す可能性があるとすれば、これらは不可欠な資質である」と語る。

潘事務総長は、1月7日の年頭記者会見において、「ご承知の通り、私は成功を簡単に誇るような人物ではない」とした上で、一定の成功を収めた分野として気候変動およびダルフールを始めとする和平活動の2つを上げた。しかし、ダルフールにおける国連の和平ミッションは、人員とヘリコプターの不足により開始前から厄介な状況に直面している。事務総長は、必要な26,000人の兵力の内僅か9,000人しか確保できていない旨明らかにした。

 アンワルル・チョードリ前国連事務次長は、「国連はかつての尊敬と支持を失っている。事務総長の就任2年目に当たり、信頼と中立を回復することが同機関にとって最大の課題である」と指摘した。同氏は、信頼喪失の例として、国連への抗議デモや国連トップの現地事務所訪問拒否、ホスト国による国連職員の追放、セクハラを原因とする国連治安部隊の撤退などを上げている。

サンフランシスコを拠とするシンクタンク、オークランド・インスティチュートのアヌラダ・ミッタル氏は、「国連とその機関は、米国を始めとする西側資本に支配され無力化してしまった。西側諸国は、拠出を盾に国連を人質化してしまった」と語る。

一方、国連は今年、中東、ダルフール、ビルマ、イラク、イラン、レバノン、アフガニスタン、コンゴ民主共和国といった新旧多数の政治問題に取り組まなければならないだろう。潘事務総長は、記者会見において、ケニア、スリランカ紛争、中東和平、イラクの生活再建および難民対策、アフガニスタン問題等への取り組みを強調したが、2008年中にこれらの約束を果たすことができるだろうか。ベニス氏は、ノーと言う。

同氏は、単独軍事主義、国連憲章の軽視/違反、国連決議、他の国際法の制定といった過去7年に亘るブッシュ政権の外交政策の影響を指摘。また、オルブライト国務長官(当時)の「国連は米外交政策の手段である」との1995年発言にも触れ、米国の支配が国連の使命/国際協力実現の最大の障害になっていると語っている。国連が直面している諸問題について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

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「シリアとフランス、レバノン問題で衝突」とUAE紙

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【アブダビWAM】

アラブ首長国連邦(UAE)の主要英字日刊紙は、最近のフランスとシリア両国の政治外交面の衝突について論評した。ニコラ・サルコジ仏大統領がシリアとの国交断絶をちらつかせ、シリアはレバノン危機の解決に当たりフランスと協力するつもりはないと即答した。

ドバイの『カリージ・タイムズ(Khaleej Times)』紙は本日付社説で、「再び外交面の報復合戦が行われた。サルコジ大統領は、レバノン新大統領選出の手詰まり問題でシリアとの外交関係を断絶すると声高に叫ぶが、アサド大統領が西側の示すレバノン和平プランにおとなしく従うと考えているのだろうか?」と述べた。

 「アサド政権がレバノン新大統領選出を妨害していない証拠を示すよう求めるフランスに対し、シリアの外務大臣はレバノン危機を解決するためにフランスに協力するつもりはないと表明した。」

「サルコジ大統領は数ヶ月前からアサド大統領に特使を送り、親シリアのエミール・ラフード前大統領が11月に職を辞して以来、大統領職が空席となっているレバノンの手詰まり状態の解決を模索している。激しい国内対立と大統領職を巡る利権構造の争いで、レバノンの政治混迷は深まるばかりだ。先月の暗殺事件が、政治混乱にさらに拍車をかけている。」

「仏大統領はアラブ・イスラエルの和平プロセスにおいても発言を拡大させているが、シリアとの外交努力では突破口が見出せていない。前任者のジャック・シラク大統領はレバノン和平プロセスにシリアを参加させることを嫌ったが、現大統領はアサド政権を交渉に参加させることに前向きだ。」
 
 「サルコジ大統領はハリーリ元首相暗殺に関する国際法廷設置に財政支援を行うと表明、司法プロセスへのシリアの介入をけん制した。しかし、西側はシリアのような中東の権力ブローカーとの対立姿勢は避けた方がよい。レバノン国内の対立勢力が一致して大統領候補を選出し、国家を再び機能させることに焦点を当てるべきだ。それには、ヒズボラも参加させなければならない。」

「シリアはレバノンに関わることで、経済的であれ何であれ損失を蒙ることはなく、手詰まり状態が続くことを歓迎するかもしれない。しかし、西側と対立することには気をつけたほうがよい。何といっても、シリアは欧州の援助に大きく依存しているのだから」と論説は結んだ。(原文へ) 

翻訳=IPS Japan

レバノンで救われるイラク難民

【ベイルートIPS=レベッカ・ミュレー】

その女性は、夫とバグダッドの街角を歩いていたところ、武装した5人の男たちにさらわれて繰り返しレイプされた。 

「彼女は以前、自分の体に自信を持っていたのですが、いまでは太ってしまいました。太ることで体の魅力を失わせ、他人から自分を守ろうとしているのです」と語るのは、サナ・ハムゼさんだ。彼女は、この女性のようにイラク国内で何らかの被害を受けてレバノンに難民としてやってきた人々を支援する施設「リスタート」で働いている。

 「リスタート」は、国連難民高等弁務官(UNHCR)から資金援助を受けた団体によってベイルートで運営されている。今のところ、70人のイラク人難民に無料のセラピーを施す活動を行っている。 

代表のスザンヌ・ジャボールさんはいくつかの困難について語る。「まず、人びとは心理面での援助を受けることを怖がっています。レバノンやイラクの文化ではそれは普通のことではないからです。第2に、私たちは、イラクの文化や歴史、伝統について学ばねばなりません。最後に、イラク人はここレバノンで非人間的に扱われています。ほとんどの難民は低い自尊心しか持てず、何が起こっているかわからないために、それに適応することもできないのです」。 

UNHCRの見積もりによれば、少なくとも220万人の難民が2003年以降にイラクを離れた。デンマーク難民協会(DRC)の最近の調査では、約5万人のイラク人難民がレバノンに滞在しているという。しかしながら、その中でレバノンへの定住が当局から認められた者はわずか600人しかいない。 

レバノンは難民条約に署名していない。そのため、入国管理官による厳しい取締りがイラク人難民を待っている。難民はまるで犯罪者のように逮捕され、イラクに送還されるか、帰国を拒否した場合は無期限で身柄を拘束されるのである。 

そんな中でも、「リスタート」は希望の光を与えてくれている。バグダッドで学校の警備をしていてそれをやめるよう脅され拷問を受けたエヤドさん(33)は、現在ベイルートのヒズボラ支配下の地域に住んでいる。彼はいま、月給300ドルで窓磨きの仕事をしている。イラクに帰って家族との再会を果たすのが夢だ。彼は静かに語る。「最終的には、すべての人間が人間になるのです」。 

レバノンで暮らすイラク人難民について報告する。 (原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

|エジプト|レバノン危機に無力

【カイロIPS=アダム・モロー&カレド・ムッサ・アルオムラニ】

今週もベイルートで爆破事件があったが、レバノンは政治的膠着が続いている。2005年よりレバノンでは、西側の支持を受ける多数派の政府と、シーア派抵抗組織ヒズボラを先頭とする野党が対立している。野党にはキリスト教勢力も含む。 

サアド・ハリーリ国会議員の「3月14日運動」は、2005年にシリアをレバノンから撤退させたが、ここにも多数の勢力が集まっている。過去3年間の要人暗殺は、シリア政府によるものと主張している。

 一方、ヒズボラはシリアとイランから支援を受けている。米国とイスラエルからは「テロ組織」と呼ばれているが、アラブ世界では、イスラエルのレバノン侵攻に確固たる抵抗を示す勢力として、認知されている。 

昨年11月、エミール・ラフード大統領の任期切れに当たり、与野党勢力の緊張が高まった。昨年末のフランスによる介入など、さまざまな仲介工作は、うまくいっていない。大統領不在のまま内戦になることも、危惧された。 

今のところミシェル・スレイマン司令官を候補とすることで、仮合意している。ただし野党が拒否権の立法化を求めるなど対立点は多い。 

 1月6日、アラブ連盟は外務大臣レベルの会議を開き、事態打開を模索した。エジプトとサウジアラビアの提案により、スレイマンを大統領とする選挙を即時実行すること、国家統合政府を作ること、どちらの勢力にも拒否権を認めないこと、新しい選挙法を採択すること、という対策案が示された。シリアもイランもこれを歓迎した。 

3日後、アラブ連盟事務総長アミール・ムッサはベイルートを訪問し、両勢力の代表を説得にかかった。しかし、両勢力とも、検討するとしただけで、正式な受け入れを保証しなかった。 

13日エジプトのホスニ・ムバラク大統領は、「レバノンのすべての勢力は、国家崩壊を防ぐために、この提案を実行するべきだ。」と記者会見で述べた。こうした発言にもかかわらず、アラブ連盟を離れると、エジプトの外交的役割は低いと、見られている。 

エジプトの反体制誌『アルカラマ』の元編集長、カンディル氏は「エジプトの役割は見物人でしかない。」と言う。「中東地域におけるエジプトの役割は低下し、サウジアラビアとイランの影響力が大きくなった。」と同氏は分析する。 

エジプトの有力紙『アルゴムリヤ』編集長のアルハディド氏も、「エジプトのレバノンへの影響力は弱く、国内に支持者を持つシリア、フランス、イランが直接的役割を担っている。」と取材に答えた。 

ムスリム同胞団」の外交担当であるサアド・アルフセイニ議員によれば、「エジプトの役割低下は、エジプト政府が米国寄りであることに由来する。」とIPS記者に語った。「我々も、早急に大統領を選出するよう、要求することは賛成だが、レバノン南部を占領しているイスラエルに抵抗する必要があるので、ヒズボラの武装解除は受け入れられない。」と議員は述べた。 

エジプトのレバノンへの影響力低下を、専門家に取材した。(原文へ) 

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩 

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東アフリカで米国の頼みの綱となるケニア、選挙後の混乱が続く

【ワシントンIPS=ジム・ローブ】

ケニアで起きている選挙後の騒動により、紛争が続く東アフリカ地域で米国が長期にわたり最も信頼していた国の将来が危ぶまれている。ブッシュ政権はフレーザーアフリカ担当国務次官補を首都ナイロビに派遣し、キバキ大統領と野党指導者オディンガ氏との仲介を試みた。

少なくとも600人の命を奪った危機の発端は、12月30日に選挙委員会がキバキ再選を発表したことだった。不正の証拠が認められたにもかかわらず、米国大使はキバキ大統領を祝福した。だが1月2日には、米国のライス国務長官、英国のミリバンド外務相、アフリカ連合(AU)が紛争をやめるようケニアに要請する事態となった。

フレーザー国務次官補の滞在は長引いている。さらにAUのクフォー議長が調停に乗り出す直前にキバキ大統領が一方的に閣僚指名を行ったことが新たな火種となりつつある。米国務省はキバキ大統領に失望の意を表明し、双方の話し合いによる解決の必要性を強調している。

 ケニアは東アフリカにおける米国の経済および地理戦略上の重要なパートナーである。ケニアが紛争により機能不全に陥ることは重大な問題だ。1998年のアルカイダによるケニアの米国大使館爆破事件、2002年のモンバサのホテル襲撃事件もあり、米国はケニアを反テロ活動の重要な同盟国として、多額の支援を行ってきた。

だが軍事基地の使用許可やイスラム教徒の容疑者引渡しなどの米国への協力は、ケニアのイスラム社会からは疎んじられ、多くのイスラム教徒は野党に投票したとみられている。

ケニアの港や交通インフラは東アフリア地域の商業および人道支援の中心的役割を担ってきた。2011年に独立する可能性のある南スーダンは、石油を含む交易をモンバサ経由で行う見込みであり、ケニアの重要性はさらに増すものとみられている。

米国政府はケニアを民主主義と経済成長によりアフリカのモデル国として称えてきた。だが実際には汚職や貧富の格差が広がっている。選挙後の混乱が続くケニアの情勢について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan