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自分たちで国境を守る」と不法移民の監視に当たる民間組織「ミニットマン」

【メキシコシティIPS=ディエゴ・セバージョス】
 
「不法移民の『侵略』に遭遇している米国は、柵を巡らし、兵士を配備すべきだ。そうした策がとられないのであれば、自分たちで国境を守る」と語るのは、アリゾナ州でメキシコとの国境警備に当たる民間のボランティア組織Minuteman Civil Defense Corps(ミニットマン)のリーダー、アル・ガルサだ。

ミニットマンには国境を接する南部州から警察・軍経験者や農場経営者を含む6,000人が参加、国境で不法移民の監視に当たり、国境監視員に内報しているという。5月末からアリゾナ州の私有地に高さ5メートルのフェンスを建設し始めた。ミニットマンは、米政府に対し3,200キロに及ぶメキシコとの国境に同様のフェンスを建設するよう要望している。

5月半ば、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、国境警備に州兵6,000人の派遣予定を公表、この非武装部隊は、監視・諜報活動を支援するためのもので、不法移民の逮捕を行うものではないと説明した。
 
 また5月、米上院は、全長595キロのフェンスの建設を承認する一方で、米国に居住するおよそ700万の不法移民に市民権獲得の道を開く法案を可決した。この法案は、不法移民を重罪犯罪者とする下院の強硬な法案との調整が残っているものの、ミニットマンの怒りをかっている。ガルサ氏は「不法入国者は本国に送還し、処罰すべき」と述べている。
 
 ラテンアメリカ系または出身の米国居住者は4,270万人にのぼり、中南米諸国政府は米国の移民改革を巡る議論を注意深く見守り、米議会の議論に影響を及ぼす方法を探っている。各国政府報道官は、力づくで移民を阻止するのは有効でないとし、米国の安い労働力に対する需要を背景とする移民の流入を規制するメカニズムを提案している。

昨年はメキシコを中心にラテンアメリカ・カリブ海諸国から40万人以上が米国に不法入国し、100万人が阻止・本国送還された。メキシコ政府・議会ならびに人権擁護団体からの抗議に対し、「人種差別主義ではない。法律による取り締まりを求めているだけ」と主張する反移民グループについて報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan 

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ディエゴ・セバージョスの記事

「世界と議会」2006年6月号

特集:議会の立法能力向上をめざして

■国会改革論の再検討―本当に必要な「立法能力」とは
大山礼子(駒澤大学法学部教授)

■対案路線の課題
廣瀬淳子(学習院大学法学部講師)

■議員に聞く
坂本由紀子(参議院議員)

■解説
立法支援体制

■「咢堂政経懇話会」講演
『最近の日中関係』
高村正彦(衆議院議員・元外務大臣)

■IPS特約
米国に直接対話のシグナルを送るイラン

■第十四回 青年リーダーシップ育成事業・米国派遣者レポート

世界と議会
1961年創刊の「世界と議会では、国の内外を問わず、政治、経済、社会、教育などの問題を取り上げ、特に議会政治の在り方や、
日本と世界の将来像に鋭く迫ります。また、海外からの意見や有権者・政治家の声なども掲載しています。
最新号およびバックナンバーのお求めについては財団事務局までお問い合わせください。

米国からの送金に頼るキューバ市民に新たな試練

【ハバナIPS=ダリア・アコスタ】

ブッシュ政権が、キューバの外貨保有削減を目的に、国内のキューバ向け旅行/送金代理店閉鎖を命じたのを受けて、キューバ政府は、いわゆる「転換ペソ」(convertible peso:CUCs)を100転換ペソ=120ドルから123ドルに引き上げた(キューバ中央銀行の海外送金手数料が以前の20ドルから23ドルへと値上がりしたことが原因)。

この「転換ペソ」(convertible peso:CUCs)は、キューバ市場における米国通貨流通を停止した2004年10月に導入されたものである。

 キューバ外務省によると、海外移住者は約150万人。その内130万人が米国に居住しているという。世界的に見ると、海外移住者の母国への送金は年々増加しているが、キューバでは減少が始まり、2005年の送金額は、2004年の12億6千万ドルから11億7千万ドルに減少。「ラテンアメリカ・カリビアン経済委員会」は、2006年はさらに8%の落ち込みを予測している。 

アウレリア・ガルシアさんは、「米国に移住した息子から3、4ヶ月ごとに100ドルの送金があるが、100ドルでは80転換ペソにしかならず、あっという間に消えてしまう。もっと送って欲しいところだが、息子も家族を養うために16時間も働いているのだから、仕方がない」と語る。 
 
キューバでは、労働者の平均月収は398ペソ。「ラテンアメリカ・カリビアン経済委員会」によると、2005年の消費者物価指数は、前年の2.9%上昇から4.2%上昇へと拡大したという。共産国キューバでは、医療や教育は無料。光熱・水道料等は極めて低額であるが、家族4人の平均的家庭では、給料の75%が食費で消えてしまうという。ハバナで行われたある調査によると、家族の基本的ニーズを賄うためには、平均給与の7倍が必要という。 

海外からの送金に頼るキューバ市民の生活について報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan

|カリブ海地域|奴隷制の歴史を記憶するプロジェクト

【ハバナIPS=オーランド・マトス】

アフリカ大陸からカリブ海地域に強制的に連れて来られた奴隷の歴史を後世に伝えようと、「奴隷ルートの記憶地」プロジェクトがユネスコ(国連教育科学文化機関)の主催で始まっている。アルバ島、ハイチ、ドミニカ共和国、キューバが参加している。

ユネスコ・ハバナ事務所の学芸員フレデリック・バチェロン氏は、「この企画の独自性は、物理的な場所だけでなく、非物質的な伝承をもプロジェクトの対象にしていることにある」と説明する。すなわち、アフリカ大陸から伝えられた踊りや歌、口承伝承などの保存が重視されているのである。2001年から05年の間に、90の無形文化財が指定されている。また、各国ごとに5つの場所を文化ツーリズムの目的地として指定することになっている。

  ドミニカ共和国では、記憶に留めるべき場所のリスト化が現在進んでいるが、その中には、奴隷関係のものだけではなく、先住民関係のものが入っているのが特徴的だ。「ドミニカ人博物館」のクレニス・タバレス氏によると、奴隷と先住民が「共存」してきたことの証しとしてそうしているのだという。また、キューバでもすでに735の場所を指定した。

しかし、問題がないわけではない。アルバ島国立歴史博物館のルーク・アロフス館長は、人々が奴隷制の問題をあまり思い出したがらない、とひとつの問題を指摘している。

だが、先述のユネスコ学芸員バチェロン氏はいう。「これ[奴隷制の問題]はみなが文化的課題として捉える問題で、ひとつの悲劇だと考えられがちです。ですが、それは同時に、私たちが保存し、将来において蘇らせるべき遺産を残してくれてもいるのです」。

奴隷制の歴史記憶プロジェクトについて、カリブ海地域より伝える。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan             

米国はエジプトの人権侵害に目をつぶる

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【ワシントンIPS=エマド・ミケイ】

エジプトが民主的な運動や反体制派を抑圧しているにもかかわらず、ブッシュ政権は来年度も20億ドルの財政支援続行を議会に要求している。下院の予算小委員会が政府の求める全額を承認したのは、カイロとアレクサンドリアで多くの反体制活動家がエジプト治安部隊に暴行を受けて逮捕された翌日のことだった。

米政府はエジプトにアラブ諸国の民主的改革を主導する役割を求めており、米国の戦略的利益のためにムバラク政権への援助は削減できないとしている。確かにエジプトは中東で米国に政治的軍事的に協力している。議会の公聴会で、元駐エジプト大使だったデビッド・ウェルチ国務次官補(近東問題担当)は、「エジプトとの戦略的連携はこの地域の米国政策のかなめである」と語った。

さらに「エジプトはイラン、シリア、スーダンなどの問題に親米姿勢で取り組んでいる」とし、ウェルチ次官補はエジプトのナジフ内閣の米国の意向に沿った「市場開放」政策、所得税減税、国家予算の透明化、国営企業の民営化を称えた。マイケル・クルター国務次官補代理(政治・軍事問題担当)もエジプトへの支援が米国の「テロとの戦い」においていかに重要かを力説した。

しかしながら人権活動家が非難する、ブッシュ政権によるエジプトへのテロ容疑者の強制送還問題は取り上げられない。またエジプトは人道的危機が懸念されているにもかかわらず米国とイスラエルのハマス抑圧政策に資金移転を停止する等協力している。今後イラン攻撃が行われることになれば中心的役割を担う可能性もある。

昨年の大統領選でムバラク大統領と競ったアイマン・ヌール氏は選挙違反の罪で5年の懲役刑となっている。与党勝利の議会選挙の不正を告発した判事は懲戒処分となった。多くの反体制派が現在獄中にある。こうした抑圧にもかかわらず議会のタカ派はハマスやムスリム同胞団の台頭を不安視してエジプトを批判しない。米国政府は当面ムバラク政権に警備役を任せておこうと考えている。米国の対エジプト政策について報告する。(原文へ)

翻訳/サマリー=IPS Japan

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エジプト野党のつまずき

|米国|移民の現実を無視する英語の国語化

【アルベルト・メンドーサ】

25日の上院の改正移民法案可決を控えた22日、米社会における移民の権利支援を求めて様々な文化と宗教を背景に持つ移民と支持者がサクラメントに集結した。

上院は英語を「国語」とする修正案を可決しており、移民の社会的権利との衝突が問題となっている。デモの参加者は各種社会サービスを母国語で受けることのできる権利を高く評価している。情報の提供が英語のみとなれば、享受できる権利について知識を得ることができなくなる。

 災害時の案内が英語では理解できない者のことを考えると、国家安全保障、災害救助の面でも問題が大きい。また、母国語を封じることは移民が背景として持つ文化を否定することだという主張もある。

ヒスパニック系のゴンザレス司法長官は21日「英語を共通・統一言語と捉え、チャンスにつながる道」とする考えを示したうえで、「英語を国語と宣言すること」は象徴的規定であり、言語アクセスを提供する他の連邦法、州法を損なうものではないと述べた。

上院が可決した法案には一定条件を満たす何百万人もの非登録移民にゲストワーカー(一時労働者)の資格を認め、将来の市民権獲得に道を開く計画を盛り込んでいる。下院が昨年末に通過させた不法滞在を重罪とみなす強硬な法案との調整が難航することが予想される。

英語を母国語と規定し、各種情報の提供が英語のみになると移民の権利が大きく損なわれるとする主張について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan 

関連記事::
米国、来年も移民抑制政策か
米国への移民、ようやく暗いトンネルから抜け出せるか?

|ネパール|君主制の縮小

【カトマンズIPS=マーティ・ローガン】

民政復帰したネパールの国会議員は5月18日、君主制を縮小し、国王の軍最高司令官の役割を剥奪する準備をした。下院宣言が予想通り採択可決されれば、世界最後のヒンズー王国は王室支配を初めて離れ、国王は王室ネパール軍の最高指揮権を失うことになる。

5月17日には、暫定政権のマハト外相が外交団と援助機関に「民衆の強い願望に応え、国王の従来の権限と特権は縮小されることになっている」と語ったと伝えられたが、その前日政界の長老が国王の軍最高指揮権は維持されるべきだろうと述べたと伝えられると、首都カトマンズでは抗議デモの群衆が集まり、若者のグループが数台の車を破壊し、交番を放火、夜遅くまで街頭を行進し、声を挙げた。

 5月17日Subhas Nembang下院議長は、事態は鎮静化したとIPSの取材に応えて述べ、「国民は政府を支持し、政党を信頼している」と語った。だが多くの国民が、政権を握った主要7政党(SPA)に疑念を持っている。

国民の第一の要望は、ネパールの君主制の今後を決定することになる憲法を制定するための制憲議会の選挙である。共和制を求める声も大きい。

週始め、コイララ首相は、ネパールの「世俗国家」への転換を含む宣言をまもなく下院が提出すると約束した。だが、将来の国王の役割を含め、SPA内で意見の相違が表面化したため、宣言は18日まで延期を余儀なくされた。「明日(18日)には下院宣言が出される」と下院議長はIPSの取材に対し語り、宣言は「ネパールのマグナカルタ」になるとも言われていると言い添えた。

しかし皆が下院宣言の提出を確信しているわけではない。SPAのひとつ統一左翼戦線(ULF)の指導者Sitaram Tamangは、宣言の遅れについて人々は王室による陰謀を疑っていると述べている。彼は宣言の提出を求めて政治家に圧力をかけるため、17日に抗議デモの組織を手伝った。またネパール共産党毛沢東派は、主張を通すためはるかに暴力的な戦術を引き続き使うと報じられている。

国王の実権剥奪の下院宣言を待つネパールについて報告する。(原文へ

翻訳/サマリー:IPS Japan

IPS関連ヘッドラインサマリー:
見えないところでの闘い
国際社会の承認を跳ね返すネパールの民衆

「世界と議会」2006年5月号

特集:国民本位の行政改革を目指して

■講演
行財政改革に求められる意思決定の質
宮脇淳(北海道大学公共政策大学院長・教授)

懸念が現実となった小泉道路関係四公団の民営化
田中一昭(拓殖大学政経学部教授)

■議員に聞く
林芳正(参議院議員)

■解説
行政改革推進法案

■第十回『咢堂賞』贈賞式・記念講演会

■IPS特約
ブッシュの外交課題に疑いを強める米国民

世界と議会
1961年創刊の「世界と議会では、国の内外を問わず、政治、経済、社会、教育などの問題を取り上げ、特に議会政治の在り方や、
日本と世界の将来像に鋭く迫ります。また、海外からの意見や有権者・政治家の声なども掲載しています。
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カンボジア国際法廷の問題ある人選

【バンコクIPS=マルワーン・マカン・マルカール

1975年から79年の間に約170万人を死に至らしめたといわれるカンボジアのポルポト派を裁くため、特別法廷が設置された。

カンボジア外からの13名の裁判官・検察官は、ニュージーランド・フランス・オーストリア・日本・ポーランド・オーストラリア・オランダ・米国・スリランカを出身とする法律家から構成されている。

また、ルワンダや旧ユーゴスラビアの国際法廷の場合とは異なり、地元カンボジアの裁判官の数が最大であるのが大きな特徴だ。

しかし、カンボジアのフンセン首相は、この国際法廷をあまり好意的に捉えていない。国連とカンボジア政府は、約10年にもわたる協議の末、ようやくこの国際法廷の設置にこぎつけたのである。

そのためかどうかはわからないが、フンセン首相は、17名のカンボジア裁判官の中に、陸軍大将でありカンボジア軍事裁判所の所長でもあるネイ・トル氏を入れてきた。この人選に対しては、カンボジア内外の人権団体から批判の声が上がっている。

特別法廷のヘレン・ジャービス広報部長によれば、裁判は2007年初めにも開始されるという。

カンボジア国際法廷をめぐる動きを伝える。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

IPS関連ヘッドラインサマリー:
貧困という荷を負う女性

尊属殺人容認の部族集団に非難高まる

【ペシャワールIPS=アシュファク・ユスフザイ

パキスタン・ヒンドゥークシ山中のある集落で行なわれたジルガ(村の長老の寄合)において、「尊属殺人」(名誉殺人ともいう)を警察に通報した者は死刑に処するとの決定が下され、これに対して人権団体などが猛反発している。

尊属殺人は、北西辺境州(NWFP)においてイスラム教が広まる以前から現地の部族が守ってきた慣習で、姦通などの罪を犯した女性を家族が内々に処刑することを容認するものである。

パキスタン人権委員会によれば、1998年から2002年までの間に、1,339件の尊属殺が報告されている。もちろん実勢はこれよりはるかに多い。これらの事件のうち、逮捕された容疑者はわずか202名に過ぎない。

 尊属殺人の容疑者は、「キサス・ディヤット法」(qisas and diyat)という慣習法によって保護されている。これによれば、死亡した人間の法定相続人には容疑者を免罪する権限があり(309条)、また、容疑者から補償を受け取ることにより容疑者を免罪することができる(310条)。

しかし、「法定相続人」とはたいてい殺された女性の夫あるいは両親であり[すなわち、えてして実行犯そのもの:IPSJ]、尊属殺自体が家族の黙認のうちに行なわれていることが多いため、実際には容疑者のかなりの部分が許されてしまうのである。

女性の人権を守るNGO「オーラット財団」(Aurat Foundation)などは、4月30日に集会を開き、ジルガの権限に対して連邦・州・地方政府が厳しい態度をとるよう要求した。

北西辺境州議会のナイーマ・キシュワール議員(宗教政党「ジャミアート・ウレマイ・イスラム」所属)は、「名誉の名の下に女性や男性を殺すのは反イスラム的だ。この汚い伝統と私たちは闘わねばならない」と憤る。

また、アワミ国民党のザヒーラ・ハタック副党首もまた、「政府はこの慣習にストップをかけるのを怠ってきた」と批判した。

昨年、尊属殺人を禁止する法律が連邦議会に上程されたが、反イスラム的だという理由で廃案になってしまった。

パキスタンの尊属殺人をめぐる議論を紹介する。

翻訳=IPS Japan