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|タイ|オンラインジャーナリストの静かなる戦い

【バンコクIPS=マルワーン・マカン・マルカール】

毎年5月3日は「世界報道の自由デー:自由社会における報道の自由の大切さを思い起こしアピールす

る日」。

Somkiat Juntursimaと彼が編集するオンラインメディア「Prachatai」(昨年6月に配信開始)はタイメディア業界ではまだ無名だが、昨年1月以来700人以上の死者を出しているタイ南部の少数住民(マレー系イスラム教徒)を巡るタイ国軍の虐待疑惑に関して、他の主要メディアが必ずしも取組もうとしない(概ね報道は正確だが、政治的にセンシティブな住民の死因などに関しては十分な取材がされていない)住民や政府の犠牲者の視点に立った報道を展開しており、今後注目を集めていくだろう。

人権擁護団体ヒューマンライツ・ワォッチのスナイ・パスクは言う、「タイメディアは、90年代までは、もっと攻撃的かつ大胆で、強大な政府に対しても思い切った言論を展開したものであった。しかし今のメディアにその痕跡は殆ど見当たらない。」「『Prachatai』はかつてのタイメディアのファイティングスピリットを受継いでいるのです。」(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

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|国際報道の自由デー|ジャーナリスト被害の多発国発表される

【国連IPS=タリフ・ディーン

ニューヨークに拠点を置くメディア監視団体「ジャーナリスト保護委員会(CPJ)」は月曜日(5月2日)、ジャーナリストにとって最も命を失う危険性が高い国々として、フィリピン、イラク、コロンビア、バングラデシュ、ロシアを挙げた。

CPJは5月3日の「国際報道の自由デー」の直前に発表したが調査研究(2000年1月から5年間に亘って実施)を結論付けて、「勤務中に死亡したジャーナリスト達の大半(190人中121人)は、銃撃戦や危険な取材活動の最中に命を落としたのではなく、むしろ取材内容に対する報復として追詰められ殺害されている」と語った。

Collage: Thalif Deen
Collage: Thalif Deen

 
また、同研究調査報告書は「これらジャーナリスト殺害事件の85%以上のケースで殺害犯は逮捕されていない」と付け加えている。

「これら5カ国は、十分な捜査を行い犯人を処罰することが出来なかったことで、(結果的に)暴力でプレスを沈黙させることを志向する者達を勇気付けてしまっている」と、アン・クーパーCPJ専務理事は語った。

これらジャーナリストの大半は、政府の腐敗、犯罪、麻薬取引、反体制派の活動を取材した報道内容に対する「報復」として殺害されている。

「しかし、問題は山積みだが手に負えない訳ではない」「ここでは、殺害された者達への正義が問われているのみならず、社会全体の知る権利が問題となっているのです」とクーパーは語った。

ジャーナリストは、暴力が支配し犯罪者の罪が問われない環境で取材活動をすることはできない。「特に犠牲者が多い5カ国を含む各国政府は、このような犯罪を解決するという政府の意志を示すためにも、問題対策により多くの予算・人員を投入しなければなりません」とクーパーは語った。 

 フィリピンでは、2000年以来18人のジャーナリストが殺害されており、犠牲者の全てが政府と警察の腐敗・不正、麻薬取引、犯罪組織の活動を取材・報道していた。またその内の多くは、地方のラジオコメンテーターや記者で、待ち伏せされ殺害されている。

「フィリピンのジャーナリスト達は、(このようなジャーナリストに対する暴力)の原因を、国の法秩序の崩壊、不法武器の蔓延、そして警察当局が(上記犯罪の)実行犯を一人も逮捕できない現実にあると見ている」とCPJは語った。

イラクでは、銃撃戦に巻込まれて死亡するケースがジャーナリストの死因の最大要因を占めている。しかし、イラクのような戦争地帯(米軍及び連合軍が2003年3月以来、徐々に勢いを増している反乱勢力との戦闘を繰り広げている)においてでさえも、勤務中に殉職した41人の報道記者の内、13人は(流れ弾ではなく、報復として)殺害されたものである。

CPJによると、反乱勢力に殺害された報道記者の半数以上はイラク人ジャーナリストで、連合軍、外国機関、政治勢力との関係(事実上、想像上に関わらず)を疑われて殺害の対象となっていた。またその内、数名のジャーナリストは殺害前に脅迫を受けていた。

また、幾つかのニュース報道によると、米軍も、同軍によるイラク軍事占領に批判的なジャーナリストを意図的に標的にしたとして非難の対象となっている。

1月下旬にスイスのダボスで開催された世界経済フォーラム(World Economic Forum)に出席したCNNの幹部(chief news executive:当時)イーソン・ジョーダンは、伝えられるところによると、「米軍は意図的にジャーナリストを狙い、その内12人を殺害したと信じる」と発言して物議を醸し出した。

しかし、米国で右翼団体からの激しい非難に晒され、ジョーダンは、「私は、米軍が偶発的にジャーナリストを殺した際、それは悪意を持って行われたことだと示唆するようなことは決して言っていない」と前言を釈明し、「私が(米軍が意図的に殺害したと)言った或いは信じていると思わせた全ての人々に陳謝します」と付け加えた。

にもかかわらず、この発言疑惑によって、ジョーダンはCNNを辞職に追い込まれ、23年間に亘る彼のジャーナリストとしてのキャリアに終止符が打たれることとなった。

ニューヨークタイムズは、「ジョーダン発言で使われた表現については、ダボスフォーラム事務局が(ジョーダン発言を含む)収録テープの発表を拒否したため、『不明確なところがある』」と報道した。

一方、コロンビア(ここでは麻薬、準軍事組織、地方当局の腐敗に関する取材活動は常に大きなリスクを伴う)では、2000年以来、11人のジャーナリストが殺害されている。

CPJの調査によると、彼らの全てが麻薬、準軍事組織、地方当局の腐敗の内、少なくとも1つのトピックを報道していた。そして内少なくとも8人が撃ち殺される前に脅迫或いは警告を受けていた。

これらのジャーナリストの殺害は、対立するグループが地域の支配をかけて争いを繰り広げている無法地帯と化した諸地域で起こっている。

バングラデシュでは、2000年以来9人のジャーナリストが殺害されている。その内8人は同国南西部のクルナ地区(犯罪組織、非合法政治団体、麻薬密売組織等が暗躍する無法地帯)で犠牲となっている。更に、その内7人は事前に殺人予告を受けていた。 

 報告書によれば、「バングラデシュでは、取材に従事するジャーナリスト達が日常的に殴られたり、嫌がらせや脅迫を受けるなど、バングラデシュは長年に亘って、ジャーナリストにとって活動が厳しい国であった」。CPJは、昨年代表者をバングラデシュに派遣し、政府に対して(上記ジャーナリスト殺人に関与した)犯人達を起訴するよう強く要請した。

ロシアでは、契約殺人(Contract-style Killings)がジャーナリストにとって深刻な脅威となっている。「少なくとも7人のジャーナリストが記事内容に対する直接的な報復として契約殺人により殺害されている」とCPJは語る。CPJでは記事内容との関連が疑われている他の4人のジャーナリストの契約殺人についても、動機の解明を進めている。

CPJによると、(契約殺人の)犠牲者の殆どは、組織犯罪や政府の腐敗・不正問題を調べていた新聞記者であった。一方、テレビ報道記者の中にも、有力地方政治家の政策を批判した数名が犠牲となっている。

「腐敗と不始末に見舞われた政治化された刑事司法制度が、ロシアで犯罪者を野放しにする環境を作り出している」とCPJは語った。

IPSとの取材の中で「もし、国際連合も、そのような国々の“名前を挙げ改善を促す”ことができるか」という質問を受けて、CPJのアビ・ライトは「それは興味深い点ですね。ただし、例えば国連の報告書でも、児童を兵士として徴用している国を名指しで批判しているものもあり、そういった意味では、CPJ報告書は国連の報告書と趣が異なるものではないと思います」と答えた。

「CPJ報告書は、CPJが行うアドボカシー活動の一翼を担うもので、(人権侵害を許容している)諸政府に証拠を提示して圧力を加え、居心地悪くさせることが目的です。つまり、私達はこのような(人権侵害の)実態に光をあて、政府の責任を追及しているのです」とライトは語った。(原文へ

翻訳=IPS Japan浅霧勝浩

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|国際労働デー|ケニア|繊維労働者の将来に垂れる暗い未来

【ナイロビIPS=ジョイス・ムラマ】

ナイロビ郊外ルアラカにあるウパン・ワサナ繊維工場。シーンと静まり返った工場の中には何千台ものミシンが使われないまま放置されている-操業停止の原因をケニアの人々は-中国津波(Chinese Tsunami)-と呼んでいる。

昨年末の世界貿易機構(WTO)の多国間繊維取り決め(MFA)廃止後、ケニアを始めとする従来欧米の割当制の下で繊維製品を輸出してきた国々は、圧倒的に安価な労働力を背景とした中国の繊維製品に市場を奪われ、繊維工場の操業停止、労働者の大量解雇に追いやられる事態が相次いでいる。

この深刻な事態に直面して4月27日から28日にかけて東部、南部、政府アフリカの20カ国の繊維産業の代表、政府関係者、その他関連団体の代表がケニアのナイロビに集まり、中国繊維産業の脅威にどのように対応するかを協議した。「このまま中国が世界を倒産させるような状況を放置していてはいけない。今こそ、我々の政府と協調してケニアを含むアフリカの繊維産業を守るために声を上げるときだ。」と、ケニア被服製造・輸出協会会長のジャス・メディは語った。

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|チリ|エイズの脅威に立ち向かう

【サンチアゴIPS=グスタボ・ゴンザレス】

チリ最大の労働組合連合(Central Unitaria de Trabajadores:CUT、35万人会員)は、労働運動もHIV/AIDS感染に関する意識向上や保健知識の普及を通じて、深刻化しつつあるHIV/AIDS感染の脅威に対応すべきとの考えから、HIV/AIDSその他の性感染症予防を目的としたキャンペーンを開始した。

チリにおけるエイズ発症者は6000人にのぼり(HIV/AIDS感染者は公式発表で1万2000人、非公式数値で3万2000人)僅か5年間で2倍に膨れ上がった。特に女性の年間HIV/AIDS感染率(1998年~2003年)が男性の3%に比べて4.7%と高く、多くの女性が夫から感染しているのが特徴である。そのような背景から、Sexual Responsibility がCUTキャンペーンの主要目標の一つに入っている。

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|南アフリカ|重くのしかかる失業問題

【ヨハネスブルクIPS=モイガ・ヌドゥル】

アパルトヘイト(人種隔離政策)が廃止されて10年以上が経過したが、南アフリカの成し遂げたこの政治的偉業は今でも賞賛の的となっている。しかし、経済方面に目を移すと、国内の失業問題は大きな不安要素となっている。

南アフリカの失業率は公式発表では26.2%(労働組合のリーダー達によれば40%超)。「我々は経済成長すれども職は増えないという問題を抱えている。この問題はきちんと議論されるべきだ。」と、南アフリカキリスト教協議会(Economic Justice Network of the Fellowship of Christian Councils in Southern Africa)のマルコム・ダモンは言う。2004年の南アフリカの経済成長率は2000年以来最高の3.7%であった。

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|ネパール|健康|女性ボランティアが活躍する

【カトマンズIPS=マーティ・ローガン】

ショバ・バラルは手際よく小さな男の子の頭を後ろに傾け、もう一方の手で涙の形をした赤のカプセルから数滴を搾り出し男の子があんぐりと開けた口の中に落とした。そして同僚のイシュウォリ・バラルは、噛むことが出来る錠剤を口の中に入れた。

この2人のサリを身に纏った女性たちは、こうして一人の子供が生き残るチャンスを引き上げたのだった。ネパールでは子供人口の半数以上が栄養失調に苦しんでおり年間約75,000人が死亡している。さらに9年間に及ぶネパール政府と毛沢東派ゲリラの抗争は約11,000人の犠牲者を出し、依然として頻発する爆弾攻撃、道路封鎖は、子供たちの保健所へのアクセスを困難にしている。こうした中で、バラル達ほか約48,000人の女性コミュニティーヘルスボランティア(FCHV)の活動は、子供たちの将来に一条の光をもたらしている。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|レバノン|シリア軍と共に沈黙の時代に終止符が打たれる

【ベイルートIPS=マリアン・スティグセット】

 国際社会からの圧力により、ついにシリア軍・諜報機関のレバノンからの撤退が今週実現する。これによりレバノンは30年ぶりに武装闘争と外国軍による占領から解放され、レバノン市民は新たな時代を迎えることとなる。

レバノンでは1990年に実質的な交戦状態は終結していたが、表面的な平和と引き換えにシリア諜報機関の検閲のもと、沈黙を強いられる時代が長年続いた(内戦下の肉親や友人の不条理な死の原因究明やその時代を歴史の一部として批判的に振返ることは許されなかった)。この精神的に鬱屈した(Depressed)感情が、2月のラフィーク・ハリリ前首相の暗殺の際の、真相究明を求める大規模な民衆の行動となって現れた。シリアが去り新たに入手した言論の自由の中で、レバノンの老若男女は、各々の方法で過去・現在・未来に向き合おうとしている。

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|エジプト|旅行者がエジプト経済の生命線を維持している

【カイロIPS=アダム・モロー

4月7日にカイロ市内の歴史地区アル・アザールで外国人を標的としたテロ事件(3人が死亡)が勃発し、ホテル、旅行代理店関係者は1997年の「ルクソールの悪夢」(日本人を含む58人の外国人観光客が殺されエジプト観光産業が壊滅的なダメージを受けた:IPSJ)の再来を心配したが、今回はテロ組織との関連がない個人による偶発的な事件として処理されたことで大事には至らなかった。

エジプトは、混迷を深める中東情勢をよそに2004年には史上最多の810万人(前年比34%増)の観光客が訪れるなど、未曾有の観光ブームに沸きかえっている。しかし、もし今回のようなテロ事件が組織との関与のもと、あるいは連続して起きるようなことがあれば、エジプト経済は瞬時にして致命的な打撃を蒙ることとなる。

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|コロンビア|先住民のコミュニティーに「中立」のオプションは残されていない

【トリビオIPS=コンスタンツァ・ヴィエイラ】

「この数日は、生まれてこれまで泣いたよりも、もっと泣きました」と、ブラウディオ・メンドーサはかつて彼の家であった所の瓦礫の中に座すわりこみながら、IPSの取材に応えて語った。

コロンビアでは1964年以来、政府軍と国内最大勢力の左翼ゲリラ(Revolutionary Armed Forces of Colombia:FARC)の内戦が繰り広げられてきたが、Nasaインディアン達が先祖代々暮すトリビオ(人口約3,000人)は戦火に巻込まれなかった。ところが2003年11月に警察署が街に出来たことから、この政府施設を標的にFARCの攻撃が激化していった。Nasaインディアン達は、政府、FARC双方に中立でありたい旨を懇願してきたが、2週間前、FARCはトリビオの街への本格的な攻撃を開始、激しい銃撃戦の中、多くのNasaインディアンが犠牲になった。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|アフガニスタン|国連使節の罷免が人権侵害と秘密への関心を集めた

【ニューヨークIPS=ウィリアム・フィッシャー】

シェリフ・バシオウニ(1999年ノーベル平和賞候補:エジプト生れ)は、米国の要請でポストが廃止されるまで、アフガニスタンにおける人権問題を調査する国連の責任者の立場にいた人物だが、米国が(アフガニスタンにおける)同国の関係者による人権侵害の事実を隠蔽するために彼の調査を妨害し、挙句に彼を追放したと、米国を厳しく非難して物議を醸し出している。

 
バシオウニは報告書の中で、「1,000人以上のアフガニスタン人が正当な法手続きを得られることなく米軍によって拘束されている。」と指摘し、「このまま虐待の影響が放置されればアフガニスタンに危険でネガティブな政治的環境が醸成されそれが、和平プロセスと全般的な国の再建事業を危機的な状況に追いやることになるだろう」と語った。

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩