ホーム ブログ ページ 308

|ネパール|国連は和平プロセス実現の救世主となるか

【カトマンズIPS=スーマン・プラダン】
 
ネパール政府は先週、国連に対して「マオイスト(毛派)との和平交渉を援助すること」を求める書簡を正式に送ったと伝えられている。そして多くのネパール市民も和平プロセスの実現に関して、国連の対応に大きな期待を寄せている。

しかし(まもなく暫定政府への参加も実現する)毛派は、国連への書簡が自分たちとの相談無しに行われたことで政府への怒りをあらわにした。毛派スポークスマンで対話団長のクリシュナ・バハドゥル・マハラ氏は「我々は書簡の内容も知らされていないし、合意もしていない」とIPSの取材に応じて語った。

 毛派の動きに詳しい情報筋の話では、毛派は暫定政府への参加前に武器管理を国連に委ねることについて慎重な構えを見せている。さらに毛派は、政府が暫定政府の確立に向けた努力ではなく、権力基盤を固めていると非難している。

一方、ネパール政府は毛派が11年におよぶ武装闘争を完全終結させてから中央政府へ参加するべきという強い意思のもと、政府軍と毛派双方の武器管理を国連に求めている。

7月の政府と毛派との間で合意された注目すべき条項には、国会と毛派支配地域の人民政府の解散、暫定憲法の作成と毛派を含む暫定政府の確立がある。ある政府関係者は「政府は7月の歴史的な合意で自ら窮地に追い込まれた。今回の国連への書簡は政府による毛派への『先制攻撃』である。国連が介入すれば、非民主的な支配を阻止する枠組が構築されるはずである」と述べた。

和平プロセスの進展を求めるネパール市民の期待をよそに、国連の関与をめぐる政府側と毛派との意見の相違について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー:IPS Japan

関連記事:
先行き不安な国内避難民の帰還

表現の自由を求めるパキスタンのジャーナリストたち

【ペシャワールIPS=アシュファク・ユスフザイ】

ハヤトゥラ・カーン・ダワール氏の手錠をかけられ射殺体が発見されてから3週間後、同氏が拘束中に殺害されたことが明らかになったことで、アフガニスタン国境沿い地域で多発するジャーナリストへの攻撃の中止を求める人々の声が相次いでいる。

この国境付近の街に住んでいる人々の多くは、今回の殺害が同氏が写した(12月1日に北ワジリスタンの爆発で死亡したと伝えられている)エジプト出身のアルカイダ幹部、アブ・ハムザ・ラビア容疑者らが米軍ミサイルによる攻撃を受けたことを証明する写真に関係していると見ている。

 レーザー誘導の「ヘルファイア」地対空ミサイルの断片が写っている写真は、地元の新聞で公表された。このため、ハムザ容疑者らは「爆弾の製造過程で死亡した」とする軍の主張とは食い違う結果となった。ミサイル片には、(遠隔操作式の無人偵察機『プレデター』に搭載された)ヘルファイアミサイルを示す「AGM-114」の印があった。

このような国境沿い地域では現在も、アフガニスタンでの「対テロ戦争」をめぐるパキスタンと米国との協力強化は受け入れられていない。特に米軍が(ワジリスタンや他の国境付近に軍事拠点を置く)アルカイダの容疑者に対して、無人偵察機やミサイルの使用を開始して以降、この傾向は顕著になった。
 
 しかし、米軍による攻撃で一般市民の犠牲者を出すといった失敗も、いまだに後を絶たない。アフガニスタン国境に近いパキスタン部族地域バジャウルで1月に起こった『プレデター』による無差別攻撃で、女性・子供を中心に18名が死亡。この米軍による最悪の攻撃により、反米感情も一気に全国に広まった。

パキスタンは、特にアフガン国境沿い半自治地域(アルカイダ指導者ウサマ・ビンラディン容疑者を含む多くの過激派が2001年に米軍が武装勢力の掃討作戦を開始してから潜伏した場所)における米軍による領土進入に強く反対している。

地元新聞「Ausaf」およびEuropean Pressphoto Agency(EPA)の記者を勤めていたハヤトゥラ・カーン氏は12月5日、覆面の男たちに拉致された。彼の家族は同氏がパキスタンのISI(Inter Services Intelligence:統合情報局)で拘束されているとの知らせを受けた。さらに彼の兄、イサヌラ・カーン・ダワール氏は遺体にかけられた手錠が政府のものであると述べた。

ハヤトゥラ・カーン氏はこれまでも記事の内容に対して、イスラム原理主義組織タリバンから脅しを受けてきたが、今回、この団体は脅迫に関する自らの責任を否認したうえ、同氏の殺害への報復を宣言した。

ハヤトゥラ・カーン氏の遺体発見から1週間後、北ワジリスタンのMiranshahで配布されたウルドゥ語のパンフレットには、同氏が軍当局の姿勢に異を唱え、米軍ミサイルの写真を掲載したため、ISIや米国を支持するパキスタン軍に殺害されたと書かれていた。また、このパンフレットにはタリバン指導者アブ・ラシードの署名も付されていた。

いずれにせよ、ハヤトゥラ・カーン氏の失踪・殺害という衝撃的な出来事は、(国民会議の審議に対するボイコットを含む)パキスタンの記者同盟による一連の抗議行動への引き金となった。

一方、モハンマド・アリ・デュラーニ情報相はハヤトゥラ・カーン氏殺害を徹底調査することと、ペシャワール高等裁判所の下で独立司法委員会を設置することを正式に約束したため、この抗議行動は2週間前中止になった。

しかし司法委員会の秘密主義的なやり方は、政党の党員や人権擁護団体の代表者、ジャーナリストたちの間で疑惑を深めることになった。地元カイバル記者同盟のインティカブ・アミール氏は「非公開の審議は委員会の透明性に欠ける」と述べた。

高い評価を受けているHuman Rights Commission of Pakistan(パキスタン人権委員会: HRCP)は現在、今回の事件に関して遺体発見現場を訪れ、殺害に関する事実解明を進めるため、記者・弁護士・人権擁護団体の代表者などから構成される調査委員会の設置を検討している。

HRCPのA.R.レーマン委員長は、ジャーナリストは安全対策法や特別法などを認めないと述べた。そしてレーマン氏は先週の会合で「我々は憲法によりパキスタンの法律に従わざるを得ないが、今回ハヤトゥラ・カーン氏が誰に拉致・殺害されたのかは明白である」と語った。

レーマン氏は政府が公表したハヤトゥラ・カーン氏の家族への賠償について「我々は支払いを認めない。善良な市民を殺害し、その殺害に賠償金を支払うような法律を議会が通過させることはない」と述べた。

ハヤトゥラ・カーン氏の弟、ハシーヌラ・カーン・ダワール氏は「ハヤトゥラ・カーン氏は自らの命を犠牲にしてまでも真実を記事にしたことに誇りを感じている」とIPSの取材に応じて語った。19歳の弟は、兄が北ワジリスタンのMir AliにAl Hayatの模範校を設立したことを明らかにした。

悲しみくれるハヤトゥラ・カーン氏の妻は、夫が頻繁に秘密工作員に電話で呼び出されていたと語り、「失踪した日、彼に会いたがっている人からの電話がありました。私は何度も彼に会わないように言いましたが、それでも彼は取材に行くと言い出て行ったのです」と当時のことを振り返った。

6ヶ月に及ぶハヤトゥラ・カーン氏の失踪は、ペシャワールの記者たちによる抗議デモにまで発展した。さらに国境なきジャーナリスト、ジャーナリスト保護委員会(CPJ)、アムネスティ・インターナショナル、ヒューマンライツ・ウォッチなどの国際組織を動かして、政府にハヤトゥラ・カーン氏の解放を保証する内容の声明を出すよう促した。

現在、5月に突然姿を消したTVジャーナリストのムケシュ・ルペタ氏の安否について不安が高まっている。同氏は、米国との協力関係を強めるパキスタン政府に反発する抗議デモの現場、米軍が進駐するジャコババードの空軍基地周辺で撮影を行っている間に行方不明になった。

ルペタ氏が働くGeo TVによれば、軍関係者は同氏が空軍基地を撮影したため拘束されたことを認めたが、政府側はいかなる関与も否定した。シンド県のラウフ・シディキ内相はカラチで抗議行動を展開するジャーナリストに対して「パキスタン政府はルペタ氏の情報を全く把握していないため、我々が同氏の行方を突き止めていくつもりだ」と述べた。

国際ジャーナリスト連盟(IFJ)は「パキスタン政府はルペタ氏の失踪を調査し、このような凶悪犯罪を犯した者を法に基づいて裁かねばならない」と声明を発表した。

ハヤトゥラ・カーン氏の場合も、政府は関与を否定した。軍スポークスマンのショウカト・サルタン将軍は「もし政府が関与していたならば、遺体は決して発見されなかっただろう」と述べた。

しかし、ペシャワールのジャーナリストたちは、軍が(タリバンやアルカイダを一掃するため)約8万もの軍隊を駐留させているワジリスタンで、ジャーナリストたちが活動することへの『警告』の意味を込めて、ハヤトゥラ・カーン氏の遺体に手錠をかけたのではという見方が強まっている。近年、武装勢力はアフガニスタン国内での攻撃を拡大している。ハヤトゥラ・カーン氏は過去2年間でワジリスタンの地で殺害された5人目のジャーナリストになった。(原文へ

翻訳=IPS Japan 

中印両国、ヒマラヤ貿易ルートを再開通

【ナトゥラIPS=ジグメ・カジ】

中国・インド両国が、1962年の中印国境紛争以来停止されていたヒマラヤ山脈越えの貿易ルートを、44年ぶりに再開させた。現在のところ、インドのシッキム州(1975年にインドが王政を廃止し1州として同国に編入:IPSJ)と中国のチベット自治区の地域間交流という形をとっているが、近い将来、両国間の大きな貿易関係に発展することが期待されている。

中印関係は、決して良好ではなかった。両国間に国境紛争があるのみならず、チベットの宗教指導者ダライ・ラマがインドを亡命先としていたこともその理由のひとつだった。

 しかし、2003年6月、インドがチベットを中国の一部だと認め、代わりに、中国側はシッキム州をインドの一部だと認めた。これは、両国が、経済発展というより大きな目標を重視し始めたことの証しと考えられる。

今回の貿易ルート再開と時を同じくして、北京とチベットのラサ(拉薩)の間に初めての鉄道が開通した。チベットのジガゼまでこの鉄道を延長すると中国政府はすでに表明している。

チベットルートでの貿易に関しては、インドよりも中国側の熱心さが目立っている。現在のところ、中国からインドに持ち込まれるものは、絹・羊毛・家畜・陶土などに限られているが、中国側は、インドから中国に自転車・織物・農機具・靴・農薬などの工業製品を輸入することを提案している。

ジャワハルラル・ネルー大学のギャンガナス・ジャ教授によれば、残る問題は、中国のラサからインドのシッキム州を通ってベンガル湾のコルカタ港に至る鉄道がまだ走っていないということであり、インド政府の躊躇が最大の障害であるという。

ヒマラヤを越える中国・インドの貿易関係について報告する。(原文へ

INPS Japan

|鳥インフルエンザ|大流行の前にワクチンを

【トロントIPS=ステファン・リーヒー】
 
鳥インフルエンザに対する低価格で効果的なワクチンの開発が盛んに行われるようになってきている。これまで、約120人がこの感染症のために亡くなっている。

ロチェスター大学(ニューヨーク州)のジョン・トリーナー氏によれば、未知の突然変異型ウィルスはいつでも出てくる可能性があり、さまざまな型のワクチンを開発しておけば、中には役立つものがあるかもしれないという。

先ごろ、2003年に香港で見つかったある型のH5N1ウイルスを基礎にして作られたワクチンを投与したフェレットが、新種のウイルスに対しても抵抗力を見せたことが発見された。

 その他のH5N1ワクチンに関する研究も各所で進行中である。製薬企業の「グラスコ・スミス・クライン」は、フランス・ドイツ・オランダ・ロシア・スペイン・スウェーデンにおいて、5,000人の人間に対する実験を行っている最中である。

これまで製薬企業は、児童の感染症に対するワクチンは利幅が薄いとして、その開発にそれほど熱心ではなかった。

しかし、各国政府は、鳥インフルエンザ・ワクチンの開発にテコ入れするようになってきている。米国政府は今年5月、総額10億ドル以上のワクチン開発事業を予算化した。また、ブラジル政府も、鳥インフルエンザ・ワクチンの新製造工場建設に1,360万ドルを投下すると6月に発表した。開発途上国では初めての大規模工場になると説明されている。

鳥インフルエンザ・ワクチン開発の問題について伝える。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan


IPS関連ヘッドラインサマリー:
鳥インフルエンザとビルマ軍事政権

無防備なまま鳥インフルエンザに見舞われたインド

ヨーロッパ、鳥インフルエンザへの不安高まる

|エジプト|司法制度改革の実現を困難にする行政の対応

【カイロIPS=アダム・モロウ】

改革派の裁判官による抗議が高まるなか今週、諮問議会は司法の独立を強化するための改正法案を原則的に承認した。国際問題を扱う国立研究機関Al-Ahram Centre for Political and Strategic Studiesのモハメド・サイド氏は「改正法案は従来のものと変わらない。今回の議会での法案承認により、裁判官は司法の独立性を求めた闘いに敗れたことになる」と語った。

司法権法(Judicial Authority Law)は、野党議員からの強い反発にも関わらず、与党国民民主党の党員に広く支持された。マフムード・アブーライル法務大臣は「法案通過は、司法の独立を実現に向けた大きな成果となった」と賞賛した。

今回の改正法案では名目上、法務長官の任命は政府の権限ではないことや、司法の予算決定権の独立を保障することが盛り込まれている。しかし、司法相は今後も裁判官に関する事項を掌握し、高等司法評議会の議員任命も政府が引き続き行うことになるだろう。

 
司法権の独立性を強く求めるH.el-Bastawisi裁判官は、今回の法案を厳しく批判。「この酷い法案は我々に何も利益ももたらさないだろう。政府は改革や自由選挙、裁判官の独立性など全く無視している」と非難した。

一方で、H.el-Bastawisi裁判官は「我々は今後、エジプト国民をはじめ世界中の人々に(司法改革を掲げながらも全く実行する意図が見られない)同国の恥ずべき対応を伝えていくつもりだ。我々はこれからも独立を求めて闘い続ける」とIPSの取材に応じて語った。

エジプトで司法権法が承認されたものの、実際の司法改革は期待できないと疑問を呈する専門家たちの諸議論を報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

|ネパール|先行き不安な国内避難民の帰還

【カトマンズIPS=マーティ・ローガン】

ネパール共産党毛沢東派(マオイスト)の10年余にわたる反政府武力闘争の中で、富裕層への恐喝や貧困層に対する強制的動員などマオイストの活動から逃れようと、25万人とも35万人とも言われる国内避難民が生まれた。

こうした避難民が今、故郷への帰還を考えている。しかしその道は険しい。帰還を支援する政府のプログラムもなく、家々は修理が必要であり、長年放置した畑はまず手当を要する。そしてなによりも、自治を享受している各地のマオイストとの交渉が必要、とこれまで数百人の国内避難民の定住を支援してきたNGO「インフォーマル・セクター・サービス・センター(INSEC)」のルペシュ・ネパール氏は指摘する。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)ネパール事務所のビョルン・ペテルソン氏によれば、地方司令官は(国内避難民を安全に帰還させるという)党の公約を承知しているが、現実には、人民裁判の必要性や強制労働を要求する等さまざまな条件を突きつけ、犯罪容疑者の殺害まで行なっている。

新政権は、議会財務委員会のメンバーであるDiliraj Khanal議員を通じて、7月の予算編成に先駆け国内避難民援助を計画していることを明らかにしている。Khanal議員は、IPSの取材に応えて、避難民それぞれの状況に応じて対応するとともに、救援・復興に当たる組織も、援助機関あるいは政府が状況に応じて主導することとなると述べている。

問題のひとつは、この10年間に治安部隊による拷問や強制失踪など重大な人権侵害によって避難民となった人々の扱いである。Khanal議員はそうした人々の人数も、帰還に必要な費用も明らかにしていない。

ペテルソン氏は、帰還民の現地登録や住宅の修理・農具の支給等物的支援を含む包括的な政策が必要と指摘する。さらに所有者が避難したあと再配分された土地を巡る紛争の解決も重要な問題となるだろう。

4月24日に国王が実権を返還し、民主化実現となったネパールの国内避難民問題について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー:IPS Japan

自分たちで国境を守る」と不法移民の監視に当たる民間組織「ミニットマン」

【メキシコシティIPS=ディエゴ・セバージョス】
 
「不法移民の『侵略』に遭遇している米国は、柵を巡らし、兵士を配備すべきだ。そうした策がとられないのであれば、自分たちで国境を守る」と語るのは、アリゾナ州でメキシコとの国境警備に当たる民間のボランティア組織Minuteman Civil Defense Corps(ミニットマン)のリーダー、アル・ガルサだ。

ミニットマンには国境を接する南部州から警察・軍経験者や農場経営者を含む6,000人が参加、国境で不法移民の監視に当たり、国境監視員に内報しているという。5月末からアリゾナ州の私有地に高さ5メートルのフェンスを建設し始めた。ミニットマンは、米政府に対し3,200キロに及ぶメキシコとの国境に同様のフェンスを建設するよう要望している。

5月半ば、ジョージ・W・ブッシュ大統領は、国境警備に州兵6,000人の派遣予定を公表、この非武装部隊は、監視・諜報活動を支援するためのもので、不法移民の逮捕を行うものではないと説明した。
 
 また5月、米上院は、全長595キロのフェンスの建設を承認する一方で、米国に居住するおよそ700万の不法移民に市民権獲得の道を開く法案を可決した。この法案は、不法移民を重罪犯罪者とする下院の強硬な法案との調整が残っているものの、ミニットマンの怒りをかっている。ガルサ氏は「不法入国者は本国に送還し、処罰すべき」と述べている。
 
 ラテンアメリカ系または出身の米国居住者は4,270万人にのぼり、中南米諸国政府は米国の移民改革を巡る議論を注意深く見守り、米議会の議論に影響を及ぼす方法を探っている。各国政府報道官は、力づくで移民を阻止するのは有効でないとし、米国の安い労働力に対する需要を背景とする移民の流入を規制するメカニズムを提案している。

昨年はメキシコを中心にラテンアメリカ・カリブ海諸国から40万人以上が米国に不法入国し、100万人が阻止・本国送還された。メキシコ政府・議会ならびに人権擁護団体からの抗議に対し、「人種差別主義ではない。法律による取り締まりを求めているだけ」と主張する反移民グループについて報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan 

関連記事:

ディエゴ・セバージョスの記事

「世界と議会」2006年6月号

特集:議会の立法能力向上をめざして

■国会改革論の再検討―本当に必要な「立法能力」とは
大山礼子(駒澤大学法学部教授)

■対案路線の課題
廣瀬淳子(学習院大学法学部講師)

■議員に聞く
坂本由紀子(参議院議員)

■解説
立法支援体制

■「咢堂政経懇話会」講演
『最近の日中関係』
高村正彦(衆議院議員・元外務大臣)

■IPS特約
米国に直接対話のシグナルを送るイラン

■第十四回 青年リーダーシップ育成事業・米国派遣者レポート

世界と議会
1961年創刊の「世界と議会では、国の内外を問わず、政治、経済、社会、教育などの問題を取り上げ、特に議会政治の在り方や、
日本と世界の将来像に鋭く迫ります。また、海外からの意見や有権者・政治家の声なども掲載しています。
最新号およびバックナンバーのお求めについては財団事務局までお問い合わせください。

米国からの送金に頼るキューバ市民に新たな試練

【ハバナIPS=ダリア・アコスタ】

ブッシュ政権が、キューバの外貨保有削減を目的に、国内のキューバ向け旅行/送金代理店閉鎖を命じたのを受けて、キューバ政府は、いわゆる「転換ペソ」(convertible peso:CUCs)を100転換ペソ=120ドルから123ドルに引き上げた(キューバ中央銀行の海外送金手数料が以前の20ドルから23ドルへと値上がりしたことが原因)。

この「転換ペソ」(convertible peso:CUCs)は、キューバ市場における米国通貨流通を停止した2004年10月に導入されたものである。

 キューバ外務省によると、海外移住者は約150万人。その内130万人が米国に居住しているという。世界的に見ると、海外移住者の母国への送金は年々増加しているが、キューバでは減少が始まり、2005年の送金額は、2004年の12億6千万ドルから11億7千万ドルに減少。「ラテンアメリカ・カリビアン経済委員会」は、2006年はさらに8%の落ち込みを予測している。 

アウレリア・ガルシアさんは、「米国に移住した息子から3、4ヶ月ごとに100ドルの送金があるが、100ドルでは80転換ペソにしかならず、あっという間に消えてしまう。もっと送って欲しいところだが、息子も家族を養うために16時間も働いているのだから、仕方がない」と語る。 
 
キューバでは、労働者の平均月収は398ペソ。「ラテンアメリカ・カリビアン経済委員会」によると、2005年の消費者物価指数は、前年の2.9%上昇から4.2%上昇へと拡大したという。共産国キューバでは、医療や教育は無料。光熱・水道料等は極めて低額であるが、家族4人の平均的家庭では、給料の75%が食費で消えてしまうという。ハバナで行われたある調査によると、家族の基本的ニーズを賄うためには、平均給与の7倍が必要という。 

海外からの送金に頼るキューバ市民の生活について報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan

|カリブ海地域|奴隷制の歴史を記憶するプロジェクト

【ハバナIPS=オーランド・マトス】

アフリカ大陸からカリブ海地域に強制的に連れて来られた奴隷の歴史を後世に伝えようと、「奴隷ルートの記憶地」プロジェクトがユネスコ(国連教育科学文化機関)の主催で始まっている。アルバ島、ハイチ、ドミニカ共和国、キューバが参加している。

ユネスコ・ハバナ事務所の学芸員フレデリック・バチェロン氏は、「この企画の独自性は、物理的な場所だけでなく、非物質的な伝承をもプロジェクトの対象にしていることにある」と説明する。すなわち、アフリカ大陸から伝えられた踊りや歌、口承伝承などの保存が重視されているのである。2001年から05年の間に、90の無形文化財が指定されている。また、各国ごとに5つの場所を文化ツーリズムの目的地として指定することになっている。

  ドミニカ共和国では、記憶に留めるべき場所のリスト化が現在進んでいるが、その中には、奴隷関係のものだけではなく、先住民関係のものが入っているのが特徴的だ。「ドミニカ人博物館」のクレニス・タバレス氏によると、奴隷と先住民が「共存」してきたことの証しとしてそうしているのだという。また、キューバでもすでに735の場所を指定した。

しかし、問題がないわけではない。アルバ島国立歴史博物館のルーク・アロフス館長は、人々が奴隷制の問題をあまり思い出したがらない、とひとつの問題を指摘している。

だが、先述のユネスコ学芸員バチェロン氏はいう。「これ[奴隷制の問題]はみなが文化的課題として捉える問題で、ひとつの悲劇だと考えられがちです。ですが、それは同時に、私たちが保存し、将来において蘇らせるべき遺産を残してくれてもいるのです」。

奴隷制の歴史記憶プロジェクトについて、カリブ海地域より伝える。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan