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|国際労働デー|メキシコが「移民のいない日」を支援

【メキシコシティーIPS=ディエゴ・セバジョス】

メキシコのビデオレンタル店では「A Day Without Mexican(メキシコ人のいない日)」という映画の人気が高い。この映画は5月1日の国際労働デーに米国の移民団体を全国規模のデモとボイコットに駆り立てている作品だ。IPSが問い合わせたすべてのビデオ店で、メキシコ人がいなくなったカリフォルニアの混乱を描いたこの映画のビデオは全部貸し出されていた。

メキシコの労働組合、活動家、議員は、不法滞在者の特赦を求めるとともに下院を通過した厳格な改正移民法に抗議して米国の移民が行なう予定のデモを支援している。移民の権利を擁護する団体は移民の経済的な力を示すために、米国の移民に仕事や学校をボイコットし、商品を売り買いしないよう、さらにメキシコでは米国製商品をボイコットするよう呼びかけている。

 「米国にとって移民の存在を意識する歴史的な日になる」とメキシコ中南米協会のRaul Murillo氏はIPSの取材に応じて語った。メキシコの労働組合も5月1日に大規模なデモを予定し、米国の移民との連帯を示すとともに、メキシコ政府による労働組合の内部問題介入に抗議する。メキシコ政府は関与を否定しているが、政府の役人は5月1日に向けた準備を把握し、米国の議員や役人と対話を持って包括的な移民法の改革を要求していた。

米国のおよそ1,200万人といわれる不法滞在移民の大半はメキシコ人である。また米国の4,000万人の中南米系の多くもメキシコ人である。メキシコ人のセルジオ・アラウ監督の作品である「メキシコ人のいない日」はコメディで、カリフォルニア州の労働力の3分の1を担い住民の4分の1を占める移民が、ある日突然消えて混乱する様子を描き、最後は米国の国境係官がメキシコ移民を拘留や退去でなく歓待する場面で終わる。

3月にも移民の大規模なデモを受けて、米上院議員の中には40万人の移民労働者を毎年受け入れ既に米国に住んでいる1,000万の不法移民に市民権を与えるという妥協案を作成したものもいたが、支持を得られなかった。ブッシュ政権は「人道的」移民改革を支援するといいながら、5月1日に抗議する移民を取り締まろうとしている。5月1日の大会に移民の力が示される。国際労働デーにデモを計画している米国の移民について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

|エジプト|シナイ半島の爆破事件は増えるだろう

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【カイロIPS=アダム・モロウ】

紅海に面したリゾート地ダハブで、4月24日、スーパー/カフェテリアを標的とした3件の同時爆破事件が起き、外国人観光客5人を含む18人が死亡、85人が負傷した。警察は、多数の容疑者を拘束したが、犯人の特定はできていない。

2004年10月には、シナイ半島のタバおよびヌエバアでも同様の事件が起き、少なくとも30人が死亡。2005年7月には、シナイ半島南部のリゾートSham el-Sheikhでも爆破により80人強が死亡している。(事件後、当局は、取調べのためベドウィン系住民を中心とする大量検挙を行った。タバ事件だけで、約3千人が拘束され、厳しい取調べを受けたという。)

 シナイ半島の爆破事件はそれだけではない。昨年8月には、地雷により多数の警察官が死亡した他、エジプト/イスラエル国境地域監視に当たる平和維持部隊のカナダ兵士2人が、路肩爆弾で負傷している。また、ダハブ事件の2日後には、2人の自爆テロリストが、シナイ半島に駐留する国際平和維持部隊基地を攻撃している。(爆発が小規模であったため、被害は犯人2人の死亡に止まった。)

内務省担当官は、4月26日の事件は、攻撃の規模/方法から見てテロ組織分派の仕業ではないと見ている。

アル・アハラム政治戦略研究所のザイド次長は、「これら一連の爆破は、国家権力掌握を目的とした1980年代のイスラミア、イスラム聖戦などの武装イスラム組織と異なり、警察権力に対する復讐といったそれぞれの理由に基づいて組織された新たな地方テロ・ネットワークの仕業」と見ている。同氏は、「現在は1-2の組織に止まっているが、爆破事件による国内の混乱に乗じて、今後その数は増加するのではないか」と懸念している。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan浅霧勝浩

途上国で盛んな「臓器移植ツアー」

【カリフォルニア州オークランドIPS=ビル・ベルコウィッツ】

人身売買業者による身体部分の不法取引は、映画やテレビやSF小説に出てきそうな話だが、実際に相当な頻度で起きている。カリフォルニア大学バークレー校で医療人類学を専門とするナンシー・スケイパー-ヒューズ教授は、1980年代半ばにブラジルのスラム街で広まった不法臓器取引の噂が発端となって作られたOrgans Watchの共同創設者兼代表であり、この問題を知り尽くしている。

NACLA(北米ラテンアメリカ会議)米州レポートの最新号である2006年3・4月号に掲載された「生物的海賊行為と人間の臓器の地球規模の探索」と題された評論で、スケイパー-ヒューズ教授は不法臓器取引について述べている。

 外国の大病院に勤務している米国人あるいは日本人の医療関係者が死体を盗み、臓器を取り出して遺骸を「田舎の道端や病院の大型ごみ収納器に」捨てているといった話を調査するために、同教授は1997年から数年にわたって12カ国を回り、不法取引の現場を50カ所以上訪ねた。各国で法規制は進められているが、臓器移植を望む患者数は多く、取締りは難しい。

同教授にとって衝撃的なのは身体部分の取引という嫌悪感を催す商売が実利的見地から認証された医療事実になりつつあることだ。2003年世界保健機構(WHO)会議の組織・臓器移植における倫理、手段、安全に関する委員会のメンバーだった教授は、臓器取引の商業化を是認する主張を耳にした。同時に民間組織による角膜やアキレス腱の不法取引も目にした。こうした取引では身体の一部を奪われた人間以外は皆が得をしている。

合法的な臓器提供者が少ない中で、臓器移植を待つ人の数は増大している。教授はIPSの取材に応じて「Organs Watchでの活動に積極的に取り組み続ける」と語り、現在WHOとともに中国、パキスタンの不法移植ツアー「多発区域」について調査し、さらに南アフリカとブラジルの保健省と連邦警察とともに「不法移植手術執刀医」の逮捕と裁判に協力している。不法臓器取引の実態について報告する。

翻訳/サマリー=IPS Japan 浅霧勝浩

|ブラジル|政府と対立する先住民会議

【リオデジャネイロIPS=マリオ・オサバ】

4月12日から1週間、「ブラジル先住民全国会議」が開催された。主催したのは、政府機関の「先住民全国財団」(FUNAI)である。220を超える民族集団から約800名の代表が集った。

しかし、この会議に対して、その直前に開かれた「先住民の4月キャンプ」の参加者たちが、政府は先住民の「保護者」として振舞おうとしていると非難する声明が出されたのである。FUNAI主催の会議に対する主な批判は、同会議が、ルーラ大統領の就任した2003年ではなく今になってようやく開かれたという点だ。政府側はその熱意が疑われたのである。

しかし、会議は何の成果ももたらさなかったわけではない。先住民の問題を討論する「全国先住民政策委員会」の設置、および、先住民の代表から構成される一種の「議会」のようなものを創設する合意もなされた。

ただし、先住民の土地における採鉱を規制する法律案の支持については見送られた。地元の人々の意見をもう少しよく聞いてみることが必要だと判断されたためだ。

この採鉱規制は、ダイヤモンド採掘に従事していた29名の先住民が2年前に殺害されたことから、議論されるようになった。鉱業会社は先住民の土地に大きな関心を持っており、現在政府は、約38,000件もの採鉱申請を審査している最中だという。

また、今回の会議は、先住民の「代表」を集めるという点でも新しい経験となった。なぜなら、彼ら先住民の伝統は、人々の中から「代表」を選んで決定を委ねるという方法と相容れないからだ。

ブラジル先住民の会議をめぐる議論について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

圧制的な豪州から南太平洋諸国を救う中国

【シドニーIPS=カリンガ・セレヴィラトネ】

太平洋島嶼国(PIC – フィジー、パプアニューギニア(PNG)、クック諸島、ミクロネシア連邦、ニウエ、サモア、バヌアツ)と中国の首脳会議が4月5日から2日間フィジーで開かれ、温家宝首相が中国首相として初めて南太平洋を訪れた。

フィジーでは、中国企業の対南太平洋投資を支援するための特別基金を含む30億元(3億7,400万米ドル)の包括的開発援助が締結された。

とりわけPNG、フィジー、バヌアツをはじめPICにとって、中国への関心は、新植民地的姿勢を強めているオーストラリアへの依存から脱却する手立てとなるものである。最大の援助国であるオーストラリアは近年ODAの大部分を「ガバナンスの強化と腐敗削減」に特定し、戦略的省庁や法執行機関への官僚・警官・財務顧問の派遣を進めており、こうした圧制的な戦術にPICの間からは、主権を損なおうとするものとし、批判が高まっている。

開会式で挨拶に立った温家宝首相は、中国の太平洋地域への関与は「外交的な便宜主義」ではなく、「戦略的決定」であると述べた。フィジーのライセニア・ガラセ首相は、首脳会議は太平洋地域における外交と政治的連携の形態の移行を反映したものであり、援助への依存を改め、自助努力のもと自立を目指したいとの意向を表明した。会議後の記者会見で首相は、「島嶼小国にとって柔軟な参入が可能であり、輸出ニーズが満たされうる新規市場を見出す道を開くもの」と今回の会議を評価した。

中国とPICの貿易関係の促進を目指す「経済協力・開発基本枠組(Economic Cooperation and Development Guiding Framework)」の策定を提案する合意がなされた。この5年間に中国とPIC間の貿易は3倍に増大した。昨年最初の8カ月の中国の対PIC輸出は3億5,700万ドル、輸入は3億1,100万ドルにのぼっている。
「規模ははるかに大きいものの同様の開発課題を抱える途上国である中国とお互いに学ぶことは大きい」とPNGのマイケル・ソマレ首相が語る中国とPICのサミットについて報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

|ネパール|見えないところでの闘い

【カトマンズIPS=マーティ・ローガン】
 
ギャネンドラ国王による王政打倒を目指す民衆たちは、街頭で警官隊と衝突している。これまでに数千名という人々が逮捕された。しかし、人々の目に触れにくいところでも闘いは続けられている。

ひとつの焦点はメディアだ。カンティプール出版が保有する『カトマンズ・ポスト』紙が国王に批判的な記事を掲載する一方、国有の『ライジング・ネパール』紙オンライン版のトップ記事は、ギャネンドラ国王が、シリア国民の祝日にあわせて、同国のアサド大統領にメッセージを送ったというものであった。

 また、「カンティプールTV」では、デモ隊に乱暴狼藉を働く警官の映像を繰り返し流している。他方で、国有の「ネパールTV」は、街角を警備する警察・軍の様子や、反体制派に批判的な人々の声を放送している。

4月9日、ラナ情報相は、ジャーナリストたちに対し、「報道機関は今、ネパールには自由がないと叫んでいる。しかし私は生命を守ることがもっと重要だと思う」と告げた。そして13日、ラナ情報相は、主要なケーブルテレビ局に対して、カンティプールTVの番組を放送しないよう要請したのである。しかし、これに応じたのはわずか1局のみで、しかも数時間だけであった。

また、警官隊との衝突で怪我をした人々に対する救急医療体制も問題となっている。現在、怪我をした人々の治療のための資金として、すでに1000万ルピー(13万8,000ドル)が集まっているという。オム病院では、抗議活動で怪我をした人は無料で治療を受けられる。

他方で政府は、救急医療を行なっていた2人の外国人医師を、労働ビザの不所持を理由に国外追放処分にするという挙に出ている。

ネパール民主化闘争のさまざまな側面について伝える。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

鳥インフルエンザとビルマ軍事政権

【バンコクIPS=マルワン・マカン・マルカール】
 
国連担当官は4月10日、ASEAN諸国政府に対し、ビルマにおけるH5N1型インフルエンザ(鳥インフルエンザ)の急増について警告した。MandalayおよびSagaingの2州を中心に、既に100件を超える発病が確認されたという。

それにも拘らず、ビルマの軍事独裁政権は、鳥インフルエンザ発生を国民に伝えておらず、養鶏業者もその緊急性を全く理解していないという。

ビルマ問題専門家は、4月17~18日バリで開催されるASEAN外相会議が、ビルマ政府に圧力をかける良い機会と見ている。海外のビルマ亡命者で構成されるNational Council of the Union of BurmaのSoe Aungスポークスマンは、「健康問題がASEANの議題に上ったことはないが、鳥インフルエンザは国際的問題であり、政治とは切り離せない」と語っている。

 
また、マレーシアの野党議員も、「鳥インフルエンザは、各国の外務大臣が早急に話し合うべき問題である。わが国の外務大臣(ハミド外相)のように、ビルマ軍事政権に弱腰で、馬鹿にされるようなことがあってはならない」と述べている。(ハミド外相は先月、ビルマ民主化視察のため同国を訪れたが、軍事政権が、スーチー氏との面会を拒否したため、訪問を切り上げ帰国している。)

これとは別に、米ジョンホプキンス大学ブルーンバーグ公衆衛生学校は3月、「ビルマ政府の公共衛生に対する無関心と人道支援拒否の態度が、エイズや薬剤耐性結核、マラリア、鳥インフルエンザの蔓延防止策を困難にしている」との警告メッセージと共に、ビルマ政府を厳しく非難する報告書を発表した。同報告書によれば、ビルマのエイズ感染者は17~62万人であるのに対し、NIV感染予防・治療予算は、世界最低の2万2千米ドル以下、また血液検査を行う施設すら無いに等しい状態という。(原文へ

翻訳/サマリーIPS Japan

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軍事政権の孤立を打ち破る鳥インフルエンザ

|スワジランド|国境デモで民主化運動を後押し

【ヨハネスブルクIPS=モイガ・ヌドゥル】

12日国境の南アフリカ側でデモを行った民主化活動家25人が逮捕された。南アフリカ労働組合会議(COSATU:Congress of South African Trade Unions)と南アフリカ全国金属労働組合(National Union of Metal Workers of South Africa)の副委員長も逮捕された。COSATU広報官はIPSの取材に対し、南ア労組はスワジランドの民主化運動に賛同しているが、活動の指揮を執るのはスワジランド側と応えた。

スワジランドでは1973年、当時の国王ソブーザ2世が緊急事態を宣言して全政党を非合法化して憲法を停止させて以来、ムスワティ現国王の下でも民主化が遅々として進んでいない。

業を煮やしたスワジランド連帯ネットワーク(Swaziland Solidarity Networkスワジランド民主化推進派のアンブレラ組織。本部をヨハネスブルクに置くNGO)と人民統一民主運動(PUDEMO:非合法野党People’s United Democratic Movement)は4月を「スワジランド注目月間」と宣言して行動を起こした。

スワジランド連帯ネットワークのB.マスク事務局長はIPSの取材に応じ「英連邦54カ国ならびに南部アフリカ開発共同体14カ国の無関心が痛手」と語り、今回の行動も「国際的関心を喚起する上では成功」と評価している。

スワジランドの平均寿命は世界で最も短い33歳。15歳から49歳の年齢層の約39%がHIV陽性である。ケープタウンに本部を置き、抗レトロウイルス薬の普及活動を行うNGOトリートメント・アクション・キャンペーン(TAC:Treatment ActionCampaign)は、スワジランドにおける民主的権利の欠如が国民の保健に悪影響を及ぼしていると非難。南ア社会と政府にはスワジランドの民主化を支援する道徳的義務があると説く。

アフリカ最後の専制君主国スワジランドにおける最近の民主化運動と南アフリカ市民社会の支援について報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan


関連ヘッドラインサマリー:
危機をはらんでいるスワジランドの現状

エジプト野党のつまずき

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【カイロIPS=アダム・モロウ】

激戦となった昨年の議会選挙以来、野党は、ムバラク大統領率いる国民民主党(NDP)に敗北を帰している。その極めつきが、4月1日のワフド党本部襲撃である。

本部建物の破壊と数十人の負傷者を出した同襲撃は、ワフド党内の改革派により追放されたゴマア元党首の扇動によるものであった。メディア報道によれば、ゴマアを先頭に約60人の武装グループがカイロの党本部になだれ込み、党メンバーと警察が制止するまで、本部職員に襲い掛かり、施設を破壊したという(ワフド党は、自由と反植民地主義を掲げ、1919年に創設された。9月の大統領選では、ゴマア候補は大差で3位に終わり、議会選挙でも僅か6議席しか獲得できなかった)。


 
独立系日刊紙al-Masry al-Youmのサマアン記者は、「同事件は、長年の党内問題を露呈したもの」と言うが、市民は「ワフド党の自滅は、与党の計略によるもの」と見ている。

ゴマアは現在、拘留中であるが、収監されている元大統領候補はゴマアだけではない。設立まもないal-Ghad党のノウル党首も改竄の罪(支持者は濡れ衣と主張)で5年の刑に服している。サマアン記者によると、「ムバラク大統領は、息子のガマルを後継者に考えており、将来的にライバルとなるノウル氏を政治の舞台から追放した」と語っている。カリスマ党首の不在で、al-Ghad党も分裂状態だ。

イスラム同胞団(Muslim Brotherhood)も最近は、国家治安組織による逮捕、脅迫に合っている。同グループは1970年代に党資格を剥奪されたが、議会選挙では無党派候補を多数立候補させ、88議席を獲得した。しかし、NDPはこれを選挙違反と主張し、数十人のメンバーを逮捕。また、国家治安組織は、アレキサンドリア事務所の閉鎖を発表している。

政府圧力は、既存政党だけでなく設立を計画する新党にも及んでいる。今月初め、政党裁判所(Political Parties Court)は、イスラム系al-Wasat党(1990年代にイスラム同胞団から分裂)および汎アラブのカラマ党の党承認申請を却下している。エジプトにおける野党に対する締め付けの状況を報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

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複数政党制選挙に少なくとも一歩前進
治安部隊による有権者への投票妨害、報道抑圧に混乱した人民議会選挙

|ネパール|否定された革命

【カトマンズIPS=マーティ・ローガン】
 
ネパールではギャネンドラ国王と政府に対する抗議行動として、4月6日から主要7政党による全国ゼネストが継続されている。4月12日には全国で約100人が逮捕され、首都カトマンズから車で6時間ほどのナワルパラ市では警官の発砲で抗議者1名が死亡、4名が負傷した他、警官による殴打で58名の負傷者が出たと地元のNepalnews.comに伝えられた。

しかし、国王退陣までには、さらに何日もの反政府運動が継続される必要があるようだ。国際危機グループの南アジアプロジェクト副ディレクターのロデリック・チャルマーズ氏は「これはおそらく決定的な転換点にはならない」と述べている。

反政府抗議行動を主導する主要7政党の同盟(SPA)は、マオイスト(毛沢東主義反政府組織)と連携しているわけではないとわざわざ指摘している。マオイストは、11月、ネパールはまだ革命の時機ではないと認め、SPAが憲法制定会議を約束通りに行なうのであれば、SPAに加わることに同意した。だが政党側は、政府がマオイストを反政府運動に引き入れていると非難し、「テロリスト」のレッテルをはると脅すと、直ちにこれを否定したのである。

反政府運動への参加団体の数は日ましに増加している。4月11日は東部のダランや西部のポカラでは医師や看護師が反政府集会を開き、カトマンズではトリブバン大学附属病院が連帯して外来を閉鎖した。

しかし、大学の町キルティプールでは地元住民の参加が進んでいないと、住民のひとりブッダ・ラトナ・マリ氏は次のように述べている。「(街頭抗議により立憲君主制への移行を実現させた)1990年には住民が揃って参加した。だが今は大半が大学生だ。1990年以降優れた政治指導者がおらず、市民はすべての政治家に不信感を抱いている。」チャルマーズ氏は「旧態復帰に反対する政党の運動の問題点は、それが利己的に見えることだ。彼らは、『下院を回復し、我々の仕事を返せ。そうすれば仕事を進めるから』と主張するばかりだ。彼らは市民を鼓舞するような詳細な計画を立てることが必要だ」と述べている。
 
反政府抗議運動に、外出禁止令も敷かれているネパールから報告する。(原文へ

翻訳/サマリー=IPS Japan

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国王のクーデターから1年、いまだ膠着状態続くネパール