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核廃絶 vs. 核抑止力──中間点は可能か?

【ウィーンLondon Post=オラミデ・サミュエル】

およそ80年間、核兵器は世界の安全保障を形づくってきた。それは、あまりに恐ろしいために使用できず、しかしあまりに戦略的に重要であるために放棄できないというパラドックスの象徴である。核兵器の全面廃絶を目指す「核廃絶」と、戦争を防ぐ手段として報復の脅威に依拠する「核抑止力」の間には、根深い対立が存在する。この対立は道徳的命題と地政学的現実を突き合わせるものであり、核心的な問いを提起する──対立する両者の間に、中間的な立場は存在しうるのか?|ドイツ語版英語

核兵器を保有する9か国が約12,500発の核弾頭を抱える現在(Global Zero, 2023)、そのリスクは計り知れない。本稿では、歴史的背景、ロシア・ウクライナやインド・パキスタンといった最近の事例、そして今後の展望を通じて、現実的な中間路線が存在しうるかを考察する。

歴史的背景

核兵器は、第二次世界大戦中に米国の「マンハッタン計画」を通じて誕生し、1945年の広島・長崎への原爆投下によってその破壊力が世界に知られることとなった。この出来事がもたらした倫理的衝撃は、世界の軍事戦略と外交政策に深く刻み込まれた。

冷戦時代、米ソ両大国は「相互確証破壊(MAD)」という戦略に依拠し、核戦争の勃発を回避しようとした。これは、いずれかが先制攻撃すれば、双方が壊滅的な報復を受けるという前提に基づいており、抑止理論の中核を成すものであった。

この戦略的バランスは、いまだに一部の国々が核兵器保有を正当化する根拠となっている。

現代の事例:ロシア・ウクライナ、インド・パキスタン

21世紀に入り、核兵器の現実的脅威はむしろ高まっている。ロシアのウクライナ侵攻(2022年)では、ウラジーミル・プーチン政権がたびたび核兵器使用の可能性を示唆し、西側諸国に対する抑止力として機能させようとした。これは、核兵器が依然として地政学的駆け引きの道具として使われていることを示している。

一方、南アジアでは、インドとパキスタンという2つの核保有国が、カシミール問題をめぐってたびたび緊張を高めている。両国とも先制不使用政策を標榜しているが、実際には衝突のたびに核戦争の可能性が取り沙汰される。

これらの事例は、核兵器の保有が必ずしも安定をもたらすとは限らず、むしろ危機を増幅させうることを示している。

核廃絶への道:理想か現実か?

核廃絶を主張する立場は、核兵器の人道的・環境的・倫理的リスクを強調する。国連の「核兵器禁止条約(TPNW)」は、核兵器の開発・実験・配備・使用、さらには使用の威嚇までも禁止する包括的な枠組みであり、2021年に発効した。

しかし、核兵器を保有するどの国もこの条約に署名していないことが、現実とのギャップを象徴している。現実的な安全保障上の脅威に直面する国々にとって、完全な核廃絶は理想主義的すぎると受け取られることが多い。

中間点は可能か?

この対立を乗り越えるには、妥協と現実主義に基づく中間的アプローチが必要かもしれない。たとえば以下のような施策が考えられる:

  • 段階的削減:すぐに全廃するのではなく、各国が段階的に核兵器を削減する。
  • 先制不使用政策(No First Use):核保有国が核兵器を先に使用しないと誓約することで、リスクを低減する。
  • 透明性の強化と信頼醸成措置(CBMs):核兵器の数や戦略についての情報公開、定期的な対話の枠組みを導入する。
  • 地域的非核兵器地帯の拡大:ラテンアメリカ、東南アジア、アフリカのように、地域ごとに非核兵器地帯を創設する。
  • デュアルトラック戦略:核抑止を維持しつつ、核軍縮への道筋を確保する。

これらのアプローチは、現実的な安全保障の懸念と、核廃絶という倫理的理想の間を橋渡しする可能性を持つ。

結論:共存か、選択か

核廃絶と核抑止の対立は、単なる政策の違いではなく、世界の未来をめぐる根本的なビジョンの対立である。中間点が可能かどうかは、国際社会がどれだけ現実を見据えつつ理想を追求できるかにかかっている。

究極的には、核兵器のない世界が可能か否かではなく、そうした世界をどのように築いていくかが問われている。核兵器が存在する限り、私たちは終末の可能性と隣り合わせで生きることになる──そのリスクを許容し続けるのか、それとも変革への道を選ぶのかが、いま問われている。(原文へ

This article is brought to you by London Post in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

INPS Japan

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世界人口の半数が教育より利払いを優先──取り残される34億人

【ニューヨークIPS=マキシミリアン・マラウィスタ】

現在、世界の34億人が、教育や保健よりも債務の利払いに多くの国家予算を費やしている国々で暮らしている。これは、国連が掲げる「持続可能な開発のための2030アジェンダ」の実現が危ぶまれていることを示す深刻な兆候である。

目標年まで5年を切るなか、開発途上国は年間4兆ドルにのぼる資金ギャップに直面しており、持続可能な開発への取り組みが後回しにされている。地域別の格差は次の通りである。

【アジア・オセアニア】
・教育より利払いに多くを支出:21億3900万人
・保健より利払いに多くを支出:22億4000万人

【アフリカ】
・教育より利払いに多くを支出:4億200万人
・保健より利払いに多くを支出:7億9100万人

【ラテンアメリカ・カリブ】
・教育より利払いに多くを支出:1億4000万人
・保健より利払いに多くを支出:3億5600万人

【世界全体】
・教育より利払いに多くを支出:34億人
・保健より利払いに多くを支出:24億人

教育は、貧困からの脱却に向けた最も有効な長期的手段とされている。にもかかわらず、世界人口の半数近くが教育より債務返済を優先する地域に暮らしている現状は、SDG4(質の高い教育)やSDG1(貧困の撲滅)の達成に向けた進展を妨げる要因となっている。

セビリア行動プラットフォーム

第4回開発資金国際会議(FfD4)において、「セビリア行動プラットフォーム」が発表された。これは再建的かつ拡張的な政策の即時実施を目指し、130の「高インパクト」施策を提示している。

このプラットフォームは、以下の3つの重点分野を柱としている。

1.大規模な投資の促進
税収の動員、ブレンデッド・ファイナンス(官民連携)、保証制度や地域通貨による融資を通じてSDG資金ギャップの解消を図り、危機対応に必要な資金の供給を強化する。

2.債務改革の推進
開発と引き換えに債務を相殺する「債務スワップ」、返済一時停止を可能にする条項を設けた連携枠組み、債務国同士の協議の場(ボロワーズ・フォーラム)などが含まれている。

3.グローバル金融構造の改革
各国主導の制度改革や、GDPに代わる脆弱性指標を取り入れた資金配分の見直し、国際開発協力の再設計など、制度の根本的見直しを目指す。

UNCTAD(国連貿易開発会議)のレベッカ・グリーンスパン事務局長は、「開発を考えるには、貿易・投資・金融・技術の各要素が相互に補完し合う統合的視点が必要だ」と述べ、プラットフォームの意義を強調した。

UNCTADはまた、貿易が「地域経済と世界成長を結びつける最も強力な手段」であるとし、予見可能な貿易ルールと透明な政策により、開発途上国の競争力と回復力を高める必要性を訴えている。

さらに、プラットフォームは「公的債務を負担から開発の手段へと転換する」という提案を掲げている。これは借入コストの引き下げ、公平な債務再編制度の導入を意味し、G20の債務処理共通枠組みを超える対応を想定している。具体的には、融資限度額を500億ドルから1500億ドルへと3倍に拡大する構想も盛り込まれている。

深まる「グローバル債務の罠」

過去10年間で、開発途上国は先進国よりも高金利で多額の債務を抱えるようになり、その結果、保健や教育などの基礎的な公共サービスが縮小を余儀なくされてきた。2010年以降、途上国の債務は先進国の2倍の速度で拡大し、現在では102兆ドルに達している。これは前年比で5兆ドルの増加に相当する。

2024年だけでも、61か国が政府歳入の10%以上を利払いに充てており、その合計額は9210億ドルに上った。開発途上国全体では、31兆ドルが債権者への返済に回されており、本来であれば教育や医療といった公共財に充てられるべき資源が奪われている。

多くの開発途上国は、返済能力に乏しいにもかかわらず、米国の2〜4倍の金利で借り入れを行っており、これは深刻な機会損失をもたらし、最も脆弱な人々の生活を直撃している。

本来、債務は適切に運用されれば、開発のための有効な手段となるはずである。しかし現状では、急増する利払いが将来の投資を圧迫し、債務の連鎖が遅延と依存の悪循環を生んでいる。この構造により、開発途上国は毎年250億ドルを超える利子を純流出させており、持続可能な開発を実現する余地が失われている。多くの国が、今や「生き延びるためだけの経済運営」に追い込まれている。

国連のアントニオ・グテーレス事務総長は、現在の債務システムについて「持続不可能で、不公平かつ非現実的だ」と断じたうえで、「多くの政府が、保健や教育の支出を上回る額を債務返済に充てている」と警鐘を鳴らした。事務総長は、長期的かつ持続可能な資金調達を可能にする新たなグローバル債務制度の創設を強く呼びかけている。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau

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パリから車椅子へ:ギラン・バレー症候群、リハビリ、そして連帯の力

Press Room in Paris with Kevin Lin, my colleague (second from right) and the author (extreme right). Credit: Katsuhiro Asagiri
Press Room in Paris with Kevin Lin, my colleague (second from right) and the author (extreme right). Credit: Katsuhiro Asagiri

【東京INPS Japan=浅霧勝浩

2024年9月、私は中央アジアと欧州を巡る出張の途上にありました。数々の有意義な出会いと意見交換に恵まれ、各地の人々との交流は実り多いものでした。パリで3日間の国際会議を取材を終え、旅の締めくくりに差しかかっていた夜、突如としてすべてが一変しました。

I was put on oxygen, and given a battery of tests at American Hospital in Paris.
I was put on oxygen, and given a battery of tests at American Hospital in Paris.

夜10時頃、ホテルの部屋で、太ももと指先に焼けつくような激しい痛みが走り始めました。数分のうちにその痛みは胸のあたりまで這い上がり、私は汗だくとなり、横になることも眠ることもできなくなりました。同行していた同僚のケビン・リンがすぐに救急病院へ連れて行ってくれました。私の酸素濃度は93%まで低下しており、アメリカン・ホスピタルに3日間緊急入院することになりました。酸素投与と一連の検査が行われましたが、命にかかわる異常は見つからなかったが、できるだけ早く帰国するよう勧められました。

ケビンは終始私のそばにいて、医師との連絡を取り合い、帰国の手続きをサポートしてくれました。私たちは医師の見立てに納得がいかず、帰国を決意。片道航空券を購入し、ケビンはシャルル・ド・ゴール空港まで私を付き添って送り届けてくれました。日本航空の乗務員の皆さんが脚を伸ばせる手配してくださったおかげで、何とか長時間のフライトを乗り越えることができました。

しかし、真の試練はここから始まったのです。

帰国後:制度の限界と向き合う
Japan Airline Airbus A350-900 credit: Wikimedia Commons.
Japan Airline Airbus A350-900 credit: Wikimedia Commons.

帰宅後、症状はさらに悪化し、激しい痛みのために立ち上がることも困難になりました。3日目、ついに救急車を呼ぶことにしました。そこで直面したのは、まさにパンデミック時代の慎重な対応を思い起こさせるような現実でした。海外渡航歴があることを理由に、4つの病院から受け入れを拒否されたのです。幸い、5件目の秀和病院がようやく診察を引き受けてくれました。診察の結果、医師からはギラン・バレー症候群(GBS)の疑いがあると告げられました。これは、免疫システムが自らの神経を攻撃するという、稀ながらも重篤な自己免疫疾患です。私は直ちに、獨協医科大学埼玉医療センターへ緊急搬送されることになりました。

Dokkyo Medical University Saitama Medical Center
Dokkyo Medical University Saitama Medical Center

同大学埼玉医療センターに入院した当初、麻痺は脚だけにとどまらず、顔面にも広がっていました。顔の筋肉がまったく動かせず、笑うことも、眉をひそめることも、自力でまばたきすることすらできませんでした。食事も困難で、麺をすすることはもちろん、口まわりの動きを要するものは口にできず、おかゆや細かく刻んだ食事をなんとか飲み込むのが精一杯でした。医師からは、症状がさらに進行すると、喉にまで麻痺が及び、飲み込むことすらできなくなったり、肺に達して呼吸ができなくなる危険性があると説明されました。幸いにも、麻痺は顔面で止まりました。言語聴覚士(ST)による集中的なリハビリを受け、少しずつ表情筋の機能を取り戻していきました。

激痛と日常の崩壊

治療にもかかわらず、激しい痛みは続きました。特にベットで横になると、両脚の筋が激しくつって激痛が走りました。ベッドの端に座ることでわずかな緩和が得られ、私は3週間以上、昼夜を問わずリクライニング車椅子で過ごしました。この不自然な姿勢は足の腫れを引き起こし、毎日のマッサージが欠かせませんでした。さらに深刻だったのが、パリでの初発症状の晩から始まった重度の便秘です。最大限の薬を投与しても、2週間近く排便がなく、身体的にも精神的にも極限に追い詰められました。

Sitting on the edge of the hospital bed to ease pain.While receiving intravenous painkillers, I sat on the edge of the hospital bed to ease the pain rising from my legs, cooling my hands with a wet towel to cope with the burning sensation in my fingertips. credit:Katsuhiro Asagiri.
Sitting on the edge of the hospital bed to ease pain.While receiving intravenous painkillers, I sat on the edge of the hospital bed to ease the pain rising from my legs, cooling my hands with a wet towel to cope with the burning sensation in my fingertips. credit:Katsuhiro Asagiri.

免疫グロブリン療法とステロイドパルス療法により、状態は安定しましたが、すでに13キロの体重が減り、筋力は著しく低下していました。歩くことも立つこともできず、リハビリに望みを託すしかありませんでした。

静かなるヒーローたち──PTとOTの力
The author practicing walking in the corridor of Amakusa Hospital’s ward, using Nordic walking poles. Credit: Katsuhiro Asagiri
The author practicing walking in the corridor of Amakusa Hospital’s ward, using Nordic walking poles. Credit: Katsuhiro Asagiri

11月8日、私は社会医療法人敬愛会・天草リハビリテーション病院に転院し、本格的な回復への道のりが始まりました。そこで始まったリハビリは、私にとって奇跡のような変化をもたらしてくれたのです。

病院では、担当医をはじめ、理学療法士(PT)作業療法士(OT)で構成されるチームが、私のために全力を尽くしてくれました。毎日3時間にわたる集中的なリハビリの中で、筋力の再構築、筋肉の再訓練、そして基本的な運動機能の回復に取り組みました。

PTの皆さんは、麻痺した下肢に少しずつ刺激を与えながら、最も基本的な動作から一つひとつ丁寧に指導してくださいました。OTは、動作の協調性やバランス感覚を取り戻すための訓練を重ね、日常生活の自立に向けて寄り添ってくれました。

彼らは単なる医療従事者ではありません。私にとっては、まさに「命の綱」と言える存在でした。自分自身が回復を信じられなくなったときでも、彼らは常に私を信じ、励まし続けてくれました。そのおかげで、私は少しずつ立ち上がる力を取り戻し、歩けるようになり、再び日常を取り戻す希望を見出せたのです。

資料:天草リハビリテーション病院

2025年2月7日、私は退院しました。そしてその1カ月後には、ニューヨークで開催された国際会議の取材に出かけ、仕事に復帰しました。いまも杖を必要とし、手足の感覚は完全には戻っていませんが、プロジェクトパートナーや同僚たちの支えを得て、生きがいと使命感を持って現場に復帰しています。

GBSから学んだこと:健康、共感、そして責任

私はこれまで、核廃絶持続可能な開発目標(SDGs)をテーマに、ウクライナ、スーダン、イエメンといった地域の人道危機を報道してきました。しかし、自身が病を患ったことで、それらの出来事を単なる「取材対象」としてではなく、「他人事ではない、共に生きる人々の現実」として、改めて捉え直すようになりました。

The author posing in front of UN Headqualters in NY. Credit: Katsuhiro Asagiri
The author posing in front of UN Headqualters in NY. Credit: Katsuhiro Asagiri

私の取材活動を支えてきた理念の一つに、「同苦(どうく)」という仏教の言葉があります。これは「共に苦しむ」「他者の痛みを自分の痛みとして受け止める共感的連帯」を意味します。この考え方は、今の私にとって一層深い意味を持つようになりました。報道の中で紹介される人々の立場になって想像してみると、医療にアクセスできずに病気やケガに直面することが、どれほど恐ろしいことかを身をもって実感しています。

だからこそ、特に米国のような大国による人道支援の削減を目にするたびに、胸が締めつけられるような思いになります。それは単なる予算の数字ではなく、実際の人間の命や暮らしに直結する重大な決断なのです。

私はたまたま、世界でも有数の医療体制が整った国に住んでいたからこそ、生き延びることができました。その幸運に報いるためにも、誰もが公平に医療を受けられる世界の実現を、これからも強く訴えていきたいと思います。

SDGs for All Banner 1
https://sdgs-for-all.net
感謝の言葉

この危機を乗り越えられたのは、以下の方々のおかげです。

  • パリで迅速に対応してくれた救急病棟の医師と看護師の皆さん
  • 常にそばにいてくれたケビン・リン氏
  • 帰国便で配慮してくださった日本航空の客室乗務員の皆さん
  • 入院を断られても搬送を諦めなかった救急隊員の皆さん
  • GBSの兆候を見抜いてくれた秀和病院の医療チームの皆さん
  • 確実な診断と治療を行ってくれた獨協医科大学埼玉医療センターの医療チームの皆さん
  • 睡眠もままならぬ夜を支えてくれた看護師の皆さん
  • 獨協医科大学埼玉医療センターと天草リハビリテーション病院のST、PT、OT、看護師の皆さん

彼らの仕事は決してニュースの見出しになることはありません。しかし、彼らなしでは回復はあり得ませんでした。これは、ギラン・バレー症候群からの生還の物語にとどまりません。リハビリの奇跡、介護者の人間性、そして「誰もが癒される権利」を支える連帯の力を語る記録でもあるのです。(原文へ)中国語版

INPS Japan

浅霧勝浩:東京を拠点に活動するジャーナリスト。国際通信社INPS Japanの代表として、核兵器廃絶や持続可能な開発目標(SDGs)に関する国際メディアプロジェクトを推進している。2024年には、「外国メディアが見たカザフスタン」コンテストにおいて、アジア太平洋地域の最優秀賞を受賞。彼の研究成果には、2000年7月にニューヨークで発行されている学術誌『Geographical Review』に掲載された「ドミニカ共和国に渡った日本人移民の軌跡」がある。

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釈迦の誕生と悟りを記念する祈願祭、ロ・モンラム・チェンモに僧侶らが参集

【カトマンズNepali Times=ソニア・アワレ】

チベット暦の最初の月、信仰者たちは「サガ・ダワ(聖なる月)」に「ロ・モンラム・チェンモ」の儀式を行い、仏陀の誕生、悟り、入滅を記念する。

「ロ・モンラム・チェンモ(Lo Monlam Chenmo)」は直訳すれば「ムスタン大祈願祭」となり、6月初めには1週間にわたり開催された。この間、すべての衆生の長寿と幸福、仏法(ダルマ)の継承・存続・普及、そして世界平和を願って、百万回を超えるマントラ(真言)が唱えられた。

photo: MANI LAMA IN MUSTANG
photo: MANI LAMA IN MUSTANG

祈願祭には、ムクティナート近郊の僧院の町ジャルコットに、僧侶と尼僧あわせて578人、さらに多くの地元住民が集まった。この祭りは600年以上の歴史を持つが、20世紀後半には衰退期を迎えた。当時、モンラム・チェンモはダライ・ラマの長寿を祈る場として用いられていた。

「ロ・モンラム・チェンモは7年前、ネパールで再び復興された。多くの寄付が、海外に移住した地元出身者から寄せられている」と語るのは、伝統文化や地元教育、ムスタンの遺産保護に取り組むジャルコットのノルブスム財団に所属するクンジョン・タクリ。「この祭りは来年はアッパー・ムスタン(上ムスタン)で、その翌年はロウワー・ムスタン(下ムスタン)で開催され、両地域が隔年で交互に主催している」

photo: MANI LAMA IN MUSTANG
photo: MANI LAMA IN MUSTANG

この祭りは、チベットをはじめ、ネパール(カトマンズを含む)、インドのラダックやシッキム、そしてブータンでも祝われている。

モンラム・チェンモは、1409年にチベットでラマ・ツォンカパによって初めて執り行われた。釈迦牟尼仏が示した奇跡を記念するために、新年の最初の2週間にわたり実施されたものである。最終日は満月の日であり、今年は6月11日に当たった。この日は「奇跡の日(Day of Miracles)」とも呼ばれ、多くの祭礼や儀式が行われる。

photo: MANI LAMA IN MUSTANG
photo: MANI LAMA IN MUSTANG
photo: MANI LAMA IN MUSTANG
photo: MANI LAMA IN MUSTANG

「最終日はとくに吉日とされ、祈りや修行を行うには最も適した日とされている。この日に行う善行は、功徳が何倍にも増幅されると信じられている」とタクリは言う。「そのため、スワヤンブナートやボダナートなど、主要な仏教聖地では、祈りを捧げる人々が真夜中から集まり始める」

この日、多くの人々がスワヤンブを時計回りに21周巡礼する「コラ(kora)」に挑む。その全長は約30kmにも及ぶ過酷な道のりである。また、他の信仰者たちは、サガ・ダワの月の間に聖地を108周する巡礼を行い、自らのカルマを浄化し、霊的な功徳を得ようとする。

photo: MANI LAMA IN MUSTANG
photo: MANI LAMA IN MUSTANG

祭りの期間中、個人でプージャ(供養)を行うこともできる。例えば、ヒンドゥー教の儀式である「シュラッダー(श्राद्ध)」―先祖を供養するためのもの―を捧げる者もいる。ジャルコットがムクティナートに近いことから、この祭りは仏教徒とヒンドゥー教徒の両方にとって意味深いものである。

また、多くの参加者は、仏教の非暴力の教え(アヒンサー:अहिंसा)に従い、サガ・ダワの月の間は殺生や害を及ぼす行為を慎み、菜食主義を貫く。さらに「ダーナ(दान:布施)」の実践として、僧侶や僧院に飲食物などを寄進し、慈悲の行為を体現する。

この祈願祭は、カトマンズを中心にネワール仏教徒によって実施されるもう一つの月例祭「グンラ(Gunla)」と多くの点で類似している。グンラは「功徳の月」を意味し、ネパール暦では第十月にあたり、通常は雨季にあたる時期に行われる。

グンラは、経典の読誦、断食、奉納音楽の演奏、巡礼の実施、そして五戒(पञ्चशील)――不殺生、不偸盗、不邪淫、不妄語、不飲酒――を実践しながら、仏法に対する内省と精神的修養の時間として位置づけられている。(原文へ

INPS Japan/Napal Times

Original URL: https://nepalitimes.com/here-now/a-million-mantras-in-mustang

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米国、マレーシアと戦略的民生原子力協定に署名 アジア太平洋地域での安全保障同盟構想も進行

【国連発IPS=タリフ・ディーン】

米国は現在、アジア太平洋地域において、32か国が加盟する長年の集団防衛条約「北大西洋条約機構 (NATO)」にならった、正式または非公式の安全保障同盟の創設を検討している模様である。この構想が実現すれば、新たな同盟には日本、韓国、オーストラリアに加え、ブルネイ、カンボジア、インドネシア、ラオス、マレーシア、ミャンマー、フィリピン、シンガポール、タイ、ベトナムから成る10か国の東南アジア諸国連合 (ASEAN) 加盟国などが含まれる見通しだ。|ヒンディー語版英語

米紙「ニューヨーク・タイムズ」は先月、ピート・ヘグセス米国防長官の発言として「米国のインド太平洋地域の同盟国・パートナーへの関与を疑う者はいないはずだ。我々は友好国を包み込み、ともに協力する新たな方法を見出し続ける」と報じた。ヘグセス長官はまた、インド太平洋は「米国が安全保障同盟において混乱よりも継続性を重視する地域だ」と述べている。

米国防総省でインド太平洋安全保障問題を担当した元次官補のエリー・ラトナー氏も、外交専門誌「フォーリン・アフェアーズ」への寄稿で、米国とアジアの同盟国がNATO型の集団防衛条約を結ぶべきだと提案している。

新たな同盟は、主に同地域の2つの核保有国、中国と北朝鮮への防護盾となることを目的としている。世界には9つの核保有国が存在するが、そのうち4か国 (インド、中国、パキスタン、北朝鮮) がアジアに集中している。米国、英国、フランス、ロシア、イスラエルはアジア以外の核保有国である。

一方、オーストラリア、英国、米国による三国間安全保障パートナーシップ「AUKUS」は、「自由で開かれ、安全で安定したインド太平洋」の促進を目的としている。

ヘグセス長官の地域訪問に続き、マルコ・ルビオ米国務長官も訪問を行った。ルビオ長官は7月10日のクアラルンプールでの記者会見で「就任直後の最初の会合は日本、韓国、インドとのものだった」と振り返り、「その後も何度もこのグループで会合を重ね、日本のカウンターパートとは8~12回会っており、もはやお互い自分の家族より会っていると冗談を言い合う仲だ」と語った。

米国務省のタミー・ブルース報道官は、ルビオ長官がASEAN関連の外相会合や二国間会談のためクアラルンプールを訪れ、「自由で開かれ、安全なインド太平洋」への米国の揺るぎない関与を再確認したと説明した。

ルビオ長官はASEAN・米国ポスト閣僚会議に出席し、アンワル・マレーシア首相やマレーシア、ロシア、日本、フィリピンの外相と会談した。インド太平洋地域は世界の経済成長の3分の2を占め、米国外交政策の中心的焦点であり続けていると述べた。

また、ルビオ長官はマレーシアとの間で民生用原子力協力に関する覚書に署名し、最高水準の安全性・セキュリティ・不拡散基準の下での協力推進を確認した。現在、「123協定」に向けた交渉が進行中で、これが締結されれば、平和目的での原子力資材や機器の移転が可能となり、エネルギー・安全保障・経済分野での二国間関係がさらに深まることになる。

米原子力法第123条は、米国から他国への重要な核資材や機器の移転に際して、平和目的の原子力協力協定の締結を義務付けている。こうした協定 (通称「123協定」) は、技術交流、科学研究、保障措置に関する協議など、他の分野での協力も促進する。核不拡散条約 (NPT) と併用され、米国の不拡散原則を推進する法的枠組みを提供する。

パートナー国が123協定を結ぶには、厳格な不拡散要件を満たす必要がある。米国務省が交渉を担当し、エネルギー省 (DOE) や国家核安全保障局 (NNSA)、原子力規制委員会 (NRC) と協議しながら進められる。現在、約25か国が米国との123協定を有効にしている。

しかし、この安全保障同盟構想には、より軍事色の濃い見方もある。

カナダ・ブリティッシュコロンビア大学公共政策・世界問題大学院のM.V.ラマナ教授(軍縮・地球・人間安全保障担当シモンズ講座)はIPSの取材に対し、「もし新たな枠組みができれば、軍事化の傾向がさらに強まり、とりわけ中国との戦争リスクが高まり、気候変動対策など緊急の課題から資金が奪われる」と警告した。

さらに、「設立されれば、米国政府は加盟国に米国製の高価で破壊的な兵器を購入させ、米国の政策決定における軍需産業の影響力を強化し、それが米国内の社会状況をさらに悪化させるだろう」と指摘した。

ルビオ長官は「米国がインド太平洋や東南アジアから目をそらすことはあり得ない」と強調し、「21世紀の物語の多くがこの地域で書かれ、今後25~30年で世界経済成長の3分の2がここで生まれる」と述べた。東南アジア諸国は世界でも最も若い国々の一部であり、労働市場の急拡大が見込まれているとし、「これは一世代に一度の歴史的機会であり、経済的変革だけでなく米国との関係強化にもつながる」と語った。米国企業6,000社以上が過去20~30年にわたり同地域経済に大規模投資を行っており、この関係を維持・発展させる意向を示した。

国連条約局元局長で、前スリランカ駐中国大使のパリタ・コホナ氏は、中国は核兵器を保有しているが「先制不使用」政策を採っており、北朝鮮も攻撃抑止を中心とした政策を取っていると指摘。その上で、「東アジアや東南アジアでNATO型の抑止同盟を推進するのは過剰に思える」と述べた。

また、中国の海外基地はジブチの1か所のみで、北朝鮮には海外基地は存在しない。両国とも自国外に軍事要員を派遣していない一方で、米国は中国周辺に数千人規模の軍事要員を配備しているとし、「対中戦略の一環として米国がアジアに軸足を移してきた」と述べた。

コホナ氏は「意図的にあおられたものを含む、現実・想像上の緊張を緩和する最善策は、当事者間の対話を促すことだ。人類の進歩には紛争ではなく平和が必要だ」と強調。「途上国のインフラ整備、気候変動対策、極度の貧困撲滅を促進し、世界をより良くする同盟こそ必要である。過去の米国の軍事介入は平和をもたらさず、むしろ各国の発展を阻み、多くの戦闘員・民間人の死傷を招いた」と指摘した。

また、ルビオ長官は日米関係について「我々は日本との間に非常に強固なコミットメントと同盟関係を持ち、緊密に協力している。現在も日米間で共同訓練が行われている」と述べ、日本の自衛能力強化についても「憲法の枠内であれば支持する」とした。

INPS Japan

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イラン・イスラエル戦争:インド人スパイ関与説と情報戦の深層

【メルボルン LondonPost=マジド・カーン】

2025年6月中旬に発生したイランとイスラエルの軍事衝突は、国際社会に大きな衝撃を与えた。イスラエルは今回の事態をイランによる「重大な戦略的誤算」と非難。一方、イランは甚大な軍事的損失に加え、防衛体制への国民の信頼が揺らぐ事態に直面した。

この衝突のさなか、一部メディアは「イラン国内のインド人が危険にさらされた」「標的にされた」と報じた。しかし、詳細な検証によって、状況はより複雑かつ事実に基づいたものであることが明らかになった。

6月12日と13日、イスラエルはイラン領内深部に対して、空爆と秘密作戦を組み合わせた高度な軍事作戦を実施した。ナタンツやイスファハンの核濃縮施設、ミサイル基地、レーダー施設など、戦略的インフラが標的となった。

『The Wall Street Journal』や『AP通信』によると、この作戦ではイスラエルの諜報機関モサド主導とみられるサイバー攻撃と無人機を用いてイランの防空網を無力化し、その後、有人機を投入して精密爆撃を行った。合計15カ所の施設が攻撃され、イスラム革命防衛隊(IRGC)の幹部や核科学者を含む多くの死傷者が出た。

イスラエルの攻撃は、そのタイミングと複雑さにおいてイラン側の想定を大きく超えており、特にSNS上では「防空システムはどこにあったのか?」という国民の疑問と批判が広がった。

イラン側が対応に失敗した要因の一つとして、イスラエルの戦略的意図を誤読したことが挙げられる。イランの分析官らは、イスラエルによる軍事行動は核協議(オマーン)での進展の行き詰まりと連動すると誤って予測していた。

その誤認により、イスラエル軍の動きを示す初期情報は「心理戦」と見なされ、真剣に受け取られなかった。この判断ミスは、要員の移動や資産の防護といった防衛行動の遅れを招き、結果として攻撃時に複数のIRGC高官が標的施設内に居合わせていた。

この事態は、単なるイラン諜報機関の失策ではなく、誤情報、準備不足、そして硬直化した指揮体制が複雑に絡み合った深刻な機能不全だった。現場の指揮官が即応判断を下す裁量を持たず、上層部の承認を待たねばならない体制が、対応の遅れに拍車をかけた。

軍事的な展開と並行して、「インド人が攻撃に巻き込まれた」「標的にされた」との噂がSNSや一部メディアで拡散された。中には「インド人留学生がミサイル攻撃の近くにいた」「犠牲者が出た」といった未確認の報道も含まれていたが、いずれも信頼できる証拠に基づいていなかった。

6月13日以降、在テヘラン・インド大使館は注意喚起を発出し、在留インド人に対し安全な地域への一時的な避難を促した。24時間対応のホットラインも設置され、インド人留学生や労働者との連絡が強化された。

『The Times of India』や『WION』といった主要メディアは、大使館の対応を中心に冷静な報道を行い、在イランのインド人に取材したインタビューでは「不安はあるが、今のところ直接的な危険は感じていない」との声が多く寄せられた。

誤情報が拡散した背景には、地政学的緊張に伴う不安感、SNS上での未確認情報の拡散、そして過剰な反応があるとみられる。インド政府の安全勧告が一部では「実際にインド人が被害を受けた」と誤って解釈され、外交的な混乱を引き起こすおそれもあった。

より広い視点では、今回の衝突はイラン防衛体制の脆弱性と、現代戦の性質の変化を浮き彫りにした。イラン国内では、諜報機構の刷新、軍指揮系統の分散化、そして予測分析への過度な依存を見直すよう求める声が高まっている。

イスラエルの作戦は、サイバー戦、人間情報(HUMINT)、精密爆撃を統合した「ハイブリッド戦」のモデルを示し、被害を最小限に抑えつつ、戦略的成果を上げた。この戦術は、今後の中東各国の軍事ドクトリンに影響を与えるとみられている。

一方、チャーバハール港などのインフラ事業に従事するインド人が「イスラエルのスパイ活動に関与していた」との報道がインドおよび一部の国際メディアで浮上した。

『The New Indian Express』や『India Today』によれば、複数のインド人がスパイ容疑でイラン当局に拘束されたとされているが、これらはすべて匿名情報に基づいており、具体的な証拠は示されていない。

イランでは過去にも外国人がスパイ容疑で拘束された例があるものの、イスラエルとの関係が立証されたケースはない。今回の報道も文書、証言、公式な確認を欠いており、あくまで憶測の域を出ていない。

一部の専門家は、こうした報道はイスラエルの心理戦の一環として、同国の情報網の広がりを印象づける狙いがあるとみている。また、イラン政府が外国人労働者に対する監視強化や国内の治安対策の失敗を覆い隠す目的でこの種の情報を利用している可能性もある。

いずれにせよ、こうした報道はインドの外交的立場を複雑にし、テヘランとの間に不必要な摩擦を生む危険性をはらんでいる。

『The Hindu』や『The Wire』といったインド主要紙は、スパイ関与説に対して裏付けが乏しい点を指摘し、懐疑的な見解を示した。イラン国営メディアもこれらの報道を「西側による偽情報」として一蹴している。

匿名情報による報道と、これに続く公式な否定という構図は、情報戦の典型的なパターンに一致しており、相反する言説が世論や政策判断に影響を与える手段として用いられている。

仮にインド人がイスラエルの作戦に直接関与していなかったとすれば、なぜこのような報道が広がったのか。その一因は、現代の戦略的欺瞞という構造にある。第三国の関与を持ち出すことで、混乱を生み、信頼を損ね、外交的コストの転嫁が可能になる。

あるいは、まったく関係のない第三者が独自の意図でこうした危機を利用し、偽情報の拡散を図った可能性もある。

今回の衝突は、現代の戦争が物理的戦場にとどまらず、デジタル空間や情報領域でも同時に展開されていることを改めて示した。人的諜報の重要性はいまだ高く、今回のイスラエルの作戦も、長年にわたりイラン国内に構築された情報ネットワーク──おそらくIRGC内部の情報源も含まれる──によって支えられていたと考えられている。

さらに、米国および西側諸国との情報共有、特に衛星監視や通信傍受は、作戦成功において重要な役割を果たしたとみられている。しかし、明確な証拠がないままイスラエルの成功を外国人民間人の協力によるものとすることは、誤解を招きかねない。

最も重要な教訓は、現代の紛争がもはや伝統的な戦場だけで行われるものではなく、サイバー空間、メディアによる情報戦、秘密作戦といった複数の領域で同時に行われているという現実である。

この現実は、事実と操作された情報を見極めることを一層困難にし、政府、専門家、ジャーナリストに対して、かつてないレベルの注意と検証責任を求めている。(原文へ

INPS Japan/London Post

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1日で過去最多の1,200人超が英仏海峡を渡る 英国防相「国境管理は崩壊した」

【ロンドンLondon Post】

英国では土曜日、過去最多となる1日で1,194人の移民が18隻の小型ボートで英仏海峡を渡り、記録的な越境となった。これを受けて、ジョン・ヒーリー国防相は「英国は国境管理の主導権を失った」と厳しく批判した。

内務省が確認したこの数値は、今年に入ってからの1日あたりの最多記録であり、5月に記録された825人というこれまでの2024年の最多記録を上回った。これにより、今年の海峡越境者数の累計は14,811人に達し、前年同期比で42%増、年初5カ月としては過去最多となった。

ヒーリー氏はこの状況を「衝撃的」と形容し、仏海岸で密航業者が「まるでタクシーのように」移民を乗せて運んでいると非難。フランス側が合意された新たなルール(浅瀬での警察によるボートの摘発)を適用していないことが危機の要因だと指摘した。

ヒーリー氏は、スカイニュースの番組『サンデー・モーニング・ウィズ・トレヴァー・フィリップス』で「事実として、過去5年間で英国は国境の管理能力を喪失し、前政権が亡命制度を混乱に陥れ、移民は過去最多を記録した」と述べた。「密航業者は別の場所から出発し、海上で移民を拾っているのです」と語った。

一方で、現在のフランスとの協力関係は「求められるレベルに達している」としながらも、ルール変更の早期実施が急務だと強調。「我々の最大の課題は、このルール変更を実行に移し、密航業者を摘発し、ボートに乗った人々を海上だけでなく、出発前の段階で止めることです」と述べた。

仏海上当局によると、土曜日に阻止できた移民は184人にとどまり、試みられた越境のわずか15%にすぎなかった。英国側では、国境警備隊や救命艇が救助に当たったが、対応が追いつかず、ヨットやカヤックでの遭難に対処するために漁船まで動員された。

SNS上では、移民がゴムボートに密集して乗る様子を撮影した動画が拡散されている。

この急増は、労働党政権が純移民数削減とビザ要件の厳格化方針を発表してから3週間も経たない時期に起きた。また、移民問題が争点となるスコットランドの重要な補欠選挙を木曜日に控えており、政治的影響も大きい。

保守党の野党は土曜日を「労働党にとっての恥の日」と呼び、「英国は海の上で混乱に陥り、国境警備隊は限界に達している」と非難した。

キア・スターマー首相は、「犯罪組織の壊滅」を掲げ、国際協力の強化、新たな国境安全司令部の設置、そしてテロ対策レベルの権限を関連機関に付与する方針を打ち出している。しかし、季節外れの穏やかな天候も重なり、過去最多の越境が発生したことで、首相の公約は重大な試練にさらされている。(原文へ

INPS Japan/London Post

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被爆者の記憶を未来へ―軍縮教育が拓く核兵器なき世界(砂田智映SGI平和センター軍縮・人権部長)

【INPS Japan=砂田智映】

2025年は、広島・長崎への原子爆弾投下から80年という大きな節目の年となりました。

一方で、国際情勢は冷戦終結後で最も不安定かつ分断が深まった局面を迎えています。 ウクライナでの戦争や中東情勢のさらなる緊迫化を背景に、国際的な安全保障体制はかつてないほどの重圧にさらされています。

核兵器使用を示唆する発言や、原子力関連施設への攻撃の脅威は、もはや仮定の議論ではなく、現実の懸念となっています。私たちは今、「核抑止」という論理に世界全体が縛られ、国家の安全保障が全面的な破滅の脅威の上に成り立っているという深刻な構造的危機に直面しています。

現実主義の立場に立てば、核兵器が存在し続ける限り、誤算や意図的な使用によって人類が破滅する可能性は、常に消えることのないリスクとして存在し続けるのです。 この危険な現状を変えるため、創価学会インタナショナル(SGI)は、草の根での軍縮教育と意識啓発活動を重要な柱として取り組んできました。

Credit: Soka Gakkai

その代表的な取り組みの一つが、「被爆者の肖像―80年の記憶」展です。芸術の力を通して原爆被害の現実を伝えるこの展示では、広島・長崎の被爆者52名の肖像と、それぞれが未来へ託した平和へのメッセージを紹介しています。 この展示会では、一人の若者に起きた印象的な変化を目の当たりにしました。原爆投下の歴史について詳しく知らなかった14歳の女子生徒は、展示された被害の実相に大きな衝撃を受けました。しかし、その反応は単なる悲しみや驚きにとどまりませんでした。彼女は展示の冒頭に戻り、52人すべての被爆者の証言を一つひとつ丁寧に書き留め始めたのです。

それは受け身で情報を受け取る行為ではなく、自ら歴史を引き受けようとする主体的な行動でした。その後、彼女が書いた感想文は市の冊子に掲載されました。この出来事は、一人の「傍観者」が「当事者意識を持つ市民」へと成長していく過程を示しています。そして、それこそが教育の本質的な価値です。

教育は、過去の出来事という知識を、未来の平和と安定を守ろうとする責任ある意思へと変えていく力を持っています。 現在の行き詰まりを乗り越えるためには、軍縮教育の本質そのものを改めて問い直す必要があります。

被爆者であり平和活動家でもある小倉桂子さんは、技術的・軍事的な安全保障論に対する重要な対抗軸として、次のように語っています。 「軍縮教育で最も大切なのは、他者の痛みを想像する力です。海の向こうで子どもが泣いていたら、その涙を自分のこととして感じられるでしょうか。もしここに核兵器が落とされたら、自分の大切な家族はどうなるのでしょうか。その苦しみを具体的に思い描くことのできる人を数多く育てることこそ、核兵器が二度と使われないための、究極の抑止力なのです。」

現実主義の観点から見ても、この言葉こそが核兵器使用を阻む最も強固な防壁であると言えるでしょう。安全保障の理論や戦略を構成する無機質な数字や概念の背後には、かけがえのない人間の命があります。核兵器がもたらす惨禍を一人ひとりが具体的に想像できる市民を世界中に育むことは、「合理的」と称される核使用へのエスカレーションを防ぐための、極めて重要な戦略的課題なのです。

国際政治がどのような方向へ進もうとも、私たちは「何も変えられない」という諦めに未来への希望を奪われてはなりません。歴史の流れを変える力は、国家の軍事力だけにあるのではなく、一人ひとりの人間の意思の中にあります。そして、その意思を育み、持続可能な平和を支える連帯を築く最も重要な手段が教育です。

核兵器のない世界への道のりは決して平坦ではなく、多くの困難を伴います。しかし、それは私たちが決して諦めることのできない戦略的課題です。SGIはこれからも、一人ひとりとの対話と草の根の行動を何よりも大切にしながら、人間の主体的な力こそが世界を変える最も大きな原動力であるとの確信のもと、核兵器廃絶と恒久平和の実現に向けて歩み続けていきます。 

本稿は、INPS Japanが創価学会インタナショナルと推進している核廃絶メディアプロジェクトの報告書(2025年4月~26年3月までに配信されたプロジェクト記事をまとめたもの)に寄稿されたものである。

INPS Japan

Toward a World without Nuclear Weapons
Toward a World free from Nuclear Weapons

INPS Japan

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グローバル・サウスの指導者たちが国際協力の新たな設計図を描く

【タイ・バンコクIPS=ベン・フィリップス

国際協力を支えてきた従来の資金供給システムが突然崩壊した影響は甚大であり、世界各地に被害の連鎖をもたらした。その結果、世界はさまざまな危機に対してこれまで以上に脆弱になり、それに対応する力も低下している。その破綻の爪痕は誰の目にも明らかだ。問題は、次に何をすべきかである。|ENGLISH

こうした損害に警鐘を鳴らすグローバル・ノースの一部の論者は、壊された国際協力の仕組みを元に戻すべきだと主張している。

しかし、それは実現しないだろう。

国際協力の資金危機は、単なる財源不足ではなく、そのモデルへの支持が揺らぎ、さらにそのモデルが体現していた父権主義的な援助観への支持も失われていたことの表れだったからである。

旧来の仕組みがこれほど急速に崩壊したのは、その構造自体がもともと不安定だったからにほかならない。

一方、グローバル・ノースでは、「現実主義者」を自称する別の論者たちが、今後の国際協力について、展望に乏しい二つの案を提示している。

しかし、そのどちらも明るい未来を描くものとは言い難い。

一つ目は、共有すべき世界的課題に投入できる資金が今後も減少し続けることを前提に、「より少ない資源でより多くを実現する(Do more with less)」という発想である。

だが、この考え方は失敗するだろう。

実際には、パンデミック、エネルギー不安、自然災害など、地球規模の脅威に対する共同対応に十分な資源を投入できなくなるからである。

その結果は、人類の存続そのものを脅かしかねないほど危険であり、共有された脅威に早い段階で対処する場合に比べ、すべての国に桁違いのコストを強いることになる。

もう一つの考え方は、これまで政府間で担ってきた責任を民間部門に委ねるというものである。

しかし、このアプローチも失敗するだろう。

世界共通の脅威に対応するための資金が決定的に不足するだけでなく、極端な格差をさらに加速させ、説明責任と権力を寡頭支配に明け渡す結果になりかねない。

As the old system for financing international cooperation collapses, global crises—from pandemics and disasters to energy insecurity—are leaving vulnerable communities exposed, while shrinking public resources and the transfer of responsibility to private power threaten to deepen inequality and weaken collective action. Image: INPS Japan
国際協力のための旧来の資金供給システムが崩壊する中、パンデミック、災害、エネルギー不安などの世界的危機が脆弱な地域社会をさらなる危険にさらしている。一方で、公共資金の縮小と民間権力への責任移譲は、格差を深め、集団的対応力を弱める恐れがある。画像:INPS Japan

こうした三つの実行不可能な発想―

旧来の秩序を復活させようとし続けること。

衰退を管理しながら受け入れること。

民間部門に責任を委ねること。

―が、現在のグローバル・ノースにおける国際協力論の大半を占めている。

しかし幸いなことに、グローバル・サウスの多くの政府は、共有された地球規模課題のための新たな資金調達の仕組みづくりに着実に取り組んでいる。

「世界公共投資」連合の誕生

セネガルとコロンビアの外相が共同議長を務める「世界公共投資(Global Public Investment)政府連合」には、すでに30か国以上が参加している。

その目的は、現在の世界的な転換期を、新たな国際協力体制を築く契機へと変えることである。

ウルグアイ国際協力庁のマルティン・クラビホ長官は、こう語る。

「私たちの課題は共通であり、リスクも共通です。そして、それに対する解決策も、ますます共有されるべきものになっています。」

「今必要なのは、協力の考え方そのものを進化させることです。各国が能力に応じて貢献し、必要に応じて恩恵を受け、資源の使い道について対等な立場で意思決定に参加する枠組みへ移行しなければなりません。」

コロンビア外相であり、同連合の共同議長を務めるロサ・ヨランダ・ビジャビセンシオ・マピ氏は、次のように述べる。

「世界公共投資は、各国政府が協力して地球規模の課題や危機を乗り越えるための、21世紀型の最も理にかなった答えです。」

「公共資金を大幅に拡充することが不可欠です。そして、その資金は、より代表性が高く、より効果的な仕組みの下で運営されなければなりません。」

また、セネガル外相で共同議長のシェイク・ニアン氏は、こう強調する。

「私たちは、従来の『援助する国』『援助される国』という発想を超え、対等で包摂的なパートナーシップへ移行しようとしています。」

「開発段階に関係なく、すべての国には貢献できることがあり、同時に正当な要求もあります。」

「国家、地域、世界が抱える課題を解決するために、慈善だけに頼ることはできません。また、民間企業だけが私たちを救ってくれると期待することもできません。必要なのは、より多く、そしてより質の高い公共資金です。」

2030年へ向けたロードマップ

この連合は、2025年7月、第4回開発資金国際会議で発足した。

同年9月には、国連総会の機会に第1回会合を開催した。

2026年には、3月にボゴタ、5月にナイロビで会合を開き、9月にはニューヨークで再び会合を開く予定である。

グローバル・サウスを基盤としながらも、グローバル・ノース諸国にも参加を呼びかけている。

ガーナの外相サミュエル・オクゼト・アブラクワ氏は、次のように語る。

「私たちが求めているのは慈善ではありません。求めているのは対等なパートナーシップです。」

レソト外相リンフォ・タウ氏も、こう述べる。

「これからの国際協力は、責任の共有と共通の利益をよりよく反映した仕組みへと進化しなければなりません。」

市民社会とも連携

Credit: Coalition of Governments on Global Public Investment
写真:世界公共投資に関する政府連合

各国政府は、市民社会とも密接に連携している。

クラブ・デ・マドリード(Club de Madrid)の事務局長、マリア・エレナ・アグエロ氏は次のように評価する。

「ここに結集している指導者たちは、多国間主義を再生し、つくり直そうとする先駆者です。」

「彼らがともに築こうとしている仕組みは、前世紀から引き継がれてきた手法よりもはるかに公平なものになるでしょう。すべての国が発言権を持ち、当事者として関与できるからです。」

「それはまた、世界中の人々の暮らしを改善するうえで、はるかに効果的な国際協力にもつながるでしょう。」

「危機の管理」ではなく「転換」を

参加国の指導者たちは、現在の混乱を単に和らげるだけでは不十分だと強調している。

彼らは、従来の手法はもはや戻ることはなく、戻るべきでもないと明確に認識している。

その代わりに目指しているのは、危機を突破口へと変え、相互依存が深まる世界にふさわしい国際金融の仕組みを、各国が対等な立場で再設計することである。

ケニア外務省のコリル・シンゴエイ筆頭次官は、次のように述べる。

「今日の世界の現実により即した、より包摂的で、より代表性が高く、より適切に機能する新たな国際金融アーキテクチャーが、緊急に必要とされています。」

また、パナマ外相のハビエル・エドゥアルド・マルティネス=アチャ・バスケス氏は、こう問いかける。

「私たちは、危機を管理した世代として記憶されたいのでしょうか。それとも、国際協力の流れを変えた世代として記憶されたいのでしょうか。」

「世界公共投資は、国際協力を変革するだけでなく、人類の未来そのものを変える力を持っています。」

各国の指導者たちは、2030年までに国際協力を変革するためのロードマップも策定している。

セントルシア外相のアルバ・バプティスト氏は、次のように述べた。

「適切なモデルを提示するために、長年にわたり多大な知的努力が積み重ねられてきました。」

そして最後に、こう締めくくった。

「今、私たちはそれを実行に移す責務を負っています。」

Credit: Coalition of Governments on Global Public Investment
写真:世界公共投資に関する政府連合
ベン・フィリップス氏は、『How to Fight Inequality(いかに不平等と闘うか)』および『Public Good: Building a Winning Narrative to Bring the World Together(公共善――世界を結びつける物語を築く)』の著者。

INPS Japan/ IPS UN Bureau Report

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神権政治家と治安主義者―イラン・イスラエル間エスカレーションの危険な構造的論理

【ニューヨークATN=アハメド・ファティ】

イスラエルとイランの最新の応酬は、中東を再び地域戦争の瀬戸際に追いやった。メディアは空襲警報、ミサイル攻撃、報復のドローン攻撃といった派手な見出しを並べているが、真に注目すべき語られざる物語は、軍事戦略や外交的失敗ではなく、むしろ「エスカレーションを前提とする統治構造」そのものにある。

これは、中庸派や外交官によってではなく、「神権政治家」と「治安主義者」という2つの強大な権力集団によって支配される体制同士が作り出した戦争である。

Ahmed Fathi.
Ahmed Fathi.
イランにおける二重権力構造:神と銃

イランでは、権力は「宗教的権威」と「軍事的支配」に分かれているが、それは決して均衡が取れているわけではない。最高指導者アリー・ハメネイ師は宗教的正統性を与え、イスラム革命防衛隊(IRGC)がその命令を実行することで国家を支配している。

IRGCは単なる軍隊ではない。石油輸出からテクノロジー監視に至るまで、多くの経済的利権を有する「国家の中の帝国」である。

イランの軍事的対応は単なる報復ではなく、自国の統治体制を示す手段でもある。IRGCは危機によって生き延びる:戦争は国内弾圧を正当化し、制裁は自立を促し、孤立はイデオロギー的純粋性を強調するために利用される。

神権政治家たちは、イスラエルや西側諸国との対立を「神聖な抵抗」として描くことによって、この体制を支えている。そしてこの神話が機能する限り、国内の反対意見や異論は「裏切り」あるいは「異端」として排除できるのだ。

イスラエルの極右治安主義者たち

イスラエルもまた、制度的な転換の途上にある。現首相ベンヤミン・ネタニヤフの連立政権には、超国家主義者や宗教的強硬派が含まれており、イランとの対立を単なる政策ではなく「運命」として捉えている。

モサド(諜報機関)、IDF(イスラエル国防軍)、エリートのサイバー部隊などは、従来は戦略立案に関与してきたが、現在では外交政策そのものを動かすようになっている。

彼らの方針は単純だ――「優位性による抑止」。先制攻撃は警告ではなく、この地域におけるイスラエルの永続性を宣言するものである。

しかしこれは単なる軍事戦術にとどまらない。ネタニヤフにとってイランは、自身の政治的生存のための「外部の脅威」として利用されており、それは国内の分断や司法問題、民主主義の後退から国民の目をそらす道具となっている。エスカレーションは失策ではなく、「制度の一部」なのである。

戦略的誤算ではなく、構造的エスカレーション

我々が目にしているのは、従来の「安全保障のジレンマ」ではなく、「統治のジレンマ」である。

テヘランでもエルサレムでも、紛争は支配の正当性を支えている。神権政治家は実存的脅威を叫び、反対意見を封じ込める。治安主義者たちは、非合理な敵に対しては武力しか通じないと主張する。いずれの場合も、戦争やその脅威は失敗ではなく、「国家運営の手段」となっている。

互いを常に緊張状態に置くことは、双方の利益になる。これは偶然ではなく「構造」そのものである。どちらの体制も、緊張の緩和には報いない。逆に、平穏こそが危険である。それは問いを生み、改革を促し、権力構造を揺るがすからだ。

米国政府は外交戦略を根本から見直すべきだ

米国の対イラン・対イスラエル政策は何十年にもわたり、「イランを制裁し、イスラエルを武装させ、混乱を抑える」という機械的な公式に頼ってきた。しかしこの公式はもはや時代遅れである。なぜならそれは、永続的な対立を生み出す「国内の権力メカニズム」を理解していないからだ。

米国と欧州の同盟国が本気で解決を目指すのであれば、ミサイルや遠心分離機を「病の根源」ではなく、「症状」として捉える必要がある。

長期戦略には以下が必要だ:

  • 武装経済構造を標的にすること:戦争によって利益を得る制度や機関への圧力を強化する。
  • 市民社会への投資:包囲されているというナラティブに異を唱える声――イランの女性人権活動家やイスラエルの人権擁護者などを支援する。
  • 外交の再構築:外交交渉を取引の手段とするだけでなく、和平を不可能にしている国内構造そのものに焦点を当てる。
結論:戦争という論理を無効化せよ

国際社会が「封じ込め」ではなく「構造的関与」に戦略を転換しない限り、この悪循環は続き、さらに悪化するだろう。今日のミサイルの応酬は異常事態ではない。それは、「脅威の中でこそ生き延びるよう設計された政権」の必然的な帰結である。

この連鎖を断ち切るには、単に「自制」を呼びかけるだけでは不十分だ。エスカレーションの論理そのものを「非正当化」しなければならない。

神権政治家と治安主義者が平和を選ぶことはない――少なくとも、戦争が彼らに与える「力」の方が、和平よりも大きい限りは。

だからこそ、政策立案者は次のように問い直さなければならない。「次の攻撃をどう防ぐか」ではなく、「この絶え間ない包囲状態から利益を得ているのは誰か――そして、どうすればそれを終わらせられるか」と。

私たちは今、「平和ではなく、恒久的な危機の中でこそ生き延びるよう設計された」政治システムと向き合っているのだ。(原文へ

INPS Japan/ATN

Original URL: https://www.amerinews.tv/posts/theocrats-securocrats-iran-israel-escalation

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