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「核兵器なき世界」を求める高らかな呼び声

【ベルリンIDN=ラメシュ・ジャウラ】

マーク(仮名)は28歳。彼と同じように20代の若者たちは、米国が日本の広島と長崎に投下した原爆は遠い過去のものだと考えがちだ。しかし、ロシアのプーチン大統領がウクライナ戦争に核兵器を使うと脅して以来、彼らは1989年のベルリンの壁崩壊後に統一したドイツが、なぜ 「核兵器を作ってはいけないのか」を考えるようになった。

マークは自身の考えを、大学外の人文学研究所としては最大であり300年以上の歴史を持つ「ベルリン=ブランデンブルク科学人文学アカデミー」で伝えた。アカデミーの講堂の壁には第二次世界大戦時の銃弾の跡が残っている。

核兵器を持つことで(それが抑止力となり)核の攻撃を受けずにすむという、明らかに一般に広がっている誤解に基づく、質疑応答の場でのマークの発言は、「核兵器なき世界は可能である」をテーマとした分科会でパネル討論に臨んでいた4人の懸念でもあった。パネリストらは、ウクライナ戦争は核兵器不拡散に明らかに悪影響を及ぼし、核戦力の近代化による危険が拡がっていると感じていた。

ローマに本部を置くカトリック系の聖エジディオ共同体が全世界に1200万人の会員を擁する仏教団体である創価学会(本部は東京)などと共催して9月11日に開催したこの分科会は、9月10~12日にベルリンで開かれた国際会議「平和への勇気の声をー宗教と文化の対話」における20の関連行事の一つであった。

寺崎広嗣副会長は創価学会派遣団を率いてこの国際会議に参加し、聖エジディオ共同体のマルコ・インパグリアッツォ会長やイタリア司教協議会会長のマッテオ・マリア・ズッピ枢機卿など様々な要人と交流した。

分科会「核兵器なき世界は可能である」のモデレーターを務めたアンドレア・バルトリ氏は、創価学会とその国際機構である創価学会インタナショナル(SGI)との協力の重要性について語った。彼は現在、平和と対話のための聖エディジオ財団の会長や大量破壊犯罪に反対するグローバルアクション(GAAMAC)の運営委員、アメリカ創価大学のグローバル問題研究所(SIGS)の顧問を務めている。

ベルリンの壁が崩壊しソ連が解体して、1991年に冷戦が終了して以降に生まれた20代の若者たちの懸念に対して、欧州SGIのロバート・ハラップ共同議長は、「課題は多いものの、市民社会組織の支援を受けた国連の努力により、核兵器に関連する2つ目の国際条約が発効している。」と語った

核不拡散条約と核兵器禁止条約

The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras
The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras

そのうちの一つが核不拡散条約(NPT)で、核軍縮・核不拡散体制の礎石として、国際の平和と安全保障の推進に不可欠なものである。もう一つが核兵器禁止条約(TPNW)で、2021年1月の発効以来、NPTを補強・補完・強化している。

世界教会協議会(WCC)国際局長のピーター・プローブ氏もこれに同意し、同協議会は「当然ながら、『人道イニシアチブ』と、最終的に核兵器禁止条約の起草と採択につながったアドボカシーの強力な支持組織でした。」と付け加えた。

プローブ氏はまた、「もちろん、核保有国が核禁条約に参加しない限り、そして参加するまでは、条約は事実上無意味だと言う人も多いだろう。しかし、私はそうは思いません。核禁条約は、核保有国が核兵器を保有し続けることを『当たり前』のものとしてとらえる傾向、これまで私たちが黙認してきてしまった傾向に挑戦し、国際法に新たな規範的原則を持ち込むことに成功しています。この新たな規範的原則の重要性は、条約の署名国・批准国が増えるごとに強化されます。とりわけ、国連加盟国の過半数というハードルに近づくにつれてそうなってくるでしょう。」との見通しを語った。

核兵器なき世界へのコミットメント

ハラップ共同議長は、「核兵器なき世界」に対するSGIのコミットメントを振り返って、66年前の1957年9月に創価学会の戸田城聖第2代会長がそれ以降の学会の活動を方向付けることになる「原水爆禁止宣言」を発表していることを指摘した。当時、ICBM(大陸間弾道ミサイル)の発射実験が成功し、核軍拡競争が激化していた。

Opening ceremony of the exhibition ‘Everything You Treasure – For a World Free from Nuclear Weapons’ in Astana, Kazakhstan. Filmed and edited by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan.

近年、SGIはその国際キャンペーンとして、ノーベル平和賞受賞団体である核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)と共同で企画した展示会「核兵器なき世界への連帯―勇気と希望の選択」をはじめ、国内外を問わず、核兵器問題の啓発に取り組んできた。

創価学会は、生命の尊厳を尊重するという仏教の原則に基づいて活動している。その目的は、草の根の活動、啓蒙・教育活動、国連をはじめとする様々なレベルでのアドボカシー活動を通じて、平和の文化を涵養することにある。

池田大作SGI会長は、40年以上にわたり毎年、国連と核兵器廃絶などに一貫して焦点を当てた「平和提言」を執筆・発表してきた。

プルーブ局長は、核兵器なき世界は、単に実現可能であるというだけではなく、「もし私たちが、(この地球で神の唯一無二の生命創造物である)人類や環境に対する最大の人為的脅威の一つを回避するためには、必要なことでもあります。」と語った。

「核兵器が望ましくないものであることは間違いありません。しかし、国際社会は現在、核兵器の拡散という脅威と潜在的な核戦争の恐怖に直面しています。」と、タンザニアの国会議員でありベテラン外交官のリベラタ・ムラムラ氏は語った。

彼女は、タンザニアが建国の父であるムワリム・ジュリウス・カンバラゲ・ニエレレ初代大統領の指導の下、核兵器のない世界を提唱する非同盟運動で重要な役割を果たしたことを指摘した。

タンザニアは「6カ国・5大陸平和軍縮イニシアチブ」に参加し、非核世界という火急の必要性を支持してきた。ギリシャ・スウェーデン・アルゼンチン・メキシコ・インド・タンザニアの6カ国は、1984年5月22日の共同アピールで、「核兵器の予防は超大国だけの問題ではない。あらゆる生命を脅かす核兵器は、私たち全てに直接関わってくる問題だ。」と述べている。

こうしたことを背景に、「ペリンダバ条約」として知られる「アフリカ非核兵器地帯条約」が結ばれ、アフリカは非核兵器地帯となった。1996年4月12日にエジプトのカイロで署名開放され、2009年7月15日に発効した。

「多国間主義は、世界の平和と繁栄を脅かす脅威を抑える中心的な役割を担ってきた。今こそ私たちは、集団的解決のための古来からのメカニズムである多国間主義を復活させ、信頼する必要があります。」と、ムラムラ氏は語った。

The picture shows eminent participants in the International Interfaith Meeting in Germany, with Mr Hirotsugu Terasaki, second from left in the first row. Credit: Seikyo Shimbun
The picture shows eminent participants in the International Interfaith Meeting in Germany, with Mr Hirotsugu Terasaki, second from left in the first row. Credit: Seikyo Shimbun

アジア平和宗教者会議の篠原祥哲事務総長は、核兵器なき世界への呼びかけに加わって、同会議の創設の理由の一つが核兵器廃絶にあると説明した。「1960年代から70年代にかけての米ソ間の異常な核軍拡競争によって、人類滅亡の危機が迫っていることを危惧した世界の宗教指導者たらが、核戦争の予防と核兵器廃絶のために立ち上がり、人間愛と兄弟愛を訴えてきました。」

それから55年が経ったが、地球上にはいまだに核兵器が存在し、核戦争の脅威は近年高まっている。「米国の科学学術雑誌(原子科学者紀要)の『世界終末時計』は今年が最悪の時期であることを示し、私たちが大きな危機の中で生きていることを暗示しています。その主な理由のひとつは、ウクライナにおける核使用のリスクの高まりです。」と、篠原氏は語った。(原文へ

INPS Japan

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G20をリードするインド、グローバルサウスのSDGs実現に邁進

【シンガポールIDN=カリンガ・セネビラトネ】

ロシアと米国が、ロシアによるウクライナ侵攻を非難しなかった9月10日のG20ニューデリー首脳宣言を歓迎した。米ロと西側諸国の見解がこのように一致することは珍しいが、これら国々が注目したのは、国際社会が直面している開発の問題であった。

ロシアを代表してG20に参加したセルゲイ・ラブロフ外務大臣は、政治的な声明に終始するよりも、グローバルな開発の果たす中心的な役割についてコンセンサスを導いたインドを称賛した。

G 20 India Logo

昨年、インドネシアのバリで開催されたG20サミットは、ウクライナのヴォロディミル・ゼレンスキー大統領を招いて演説をさせた欧米諸国にハイジャックされた格好になった。G20バリ首脳宣言は、戦争を開始し世界を経済危機に陥れたロシアを明確に非難していた。しかし、今年はインドがゼレンスキー大統領の招待を拒み、西側諸国がウクライナ問題をサミットの主要議題にしてしまわないように説得した。

30ページ、83条にわたるニューデリー首脳宣言には、ウクライナに関するわずか3つの短い節が含まれているに過ぎない。また、その部分にしても、人間の苦しみを止め、戦争がもたらす負の経済的影響を緩和することの重要性を謳ったものだ。

9月10日にニューデリーで行われた記者会見でラブロフ外相は、西側諸国によるウクライナ問題のゴリ押しを止めるべくインドが「グローバル・サウス(世界の南側に偏っている途上国)」の国々を「覚醒」させたことを称賛した。「インドはG20内のグローバル・サウスの国々の結束を固めることに成功した。」と述べ、開発目標に向けたアジェンダの舵取りにおいて、ブラジル、中国、南アフリカが果たした役割を認めた。

Canada's Prime Minister Justin Trudeau./ Photo: European Parliament from EU, CC BY 2.0,
Canada’s Prime Minister Justin Trudeau./ Photo: European Parliament from EU, CC BY 2.0,

しかし、カナダのジャスティン・トルドー首相は、G20の「コンセンサス」を優先させたとも言われる首脳宣言対する失望を表明した。「今回の首脳宣言は、とりわけウクライナ問題に関してもっと強い言葉を盛り込むことができたはずだと思う。」とニューデリーでの記者会見でトルドー首相は語った。

一方、マクロン大統領はサミット終了後の記者会見で、「G20は国際的な経済問題を解決するために創設されたものであり、ウクライナ戦争に関する外交的進展を期待する場では必ずしもない。」と語った。しかし同時に、ロシアがインドで外交的勝利を収めたことは認めなかった。

インドのナレンドラ・モディ首相は、サミット前に「プレス・トラスト・オブ・インディア」とのインタビューで、「人間中心の開発モデル」に導く決意を語った。モディ首相は、このビジョンをG20が将来のロードマップとして採用する必要があると主張した。

「人間中心のアプローチへの転換は世界的に始まっており、われわれはその触媒の役割を果たしています。」とモディ首相は述べ、特にパンデミック中とポストパンデミック期にインドが達成した開発成果のいくつかを指摘した。

「グローバル・サウス、特にアフリカの世界情勢への参加拡大に向けた取り組みは勢いを増しています。インドのG20議長国就任は、いわゆる 『第三世界』の国々にも自信の種をまきました。これらの国々は、気候変動や世界的な制度改革など多くの問題に関して、今後数年間で世界の方向性を形作る自信を深めています。」

SDGs達成への道は、宣言のB項とC項において13ページにわたって詳述されている。モディ首相は、「SDGsに関する世界的な進展は、まだ目標の12%を達成したに過ぎない。」と述べてまだ道半ばであることを強調し、SDGsに向けた前進を加速するようG20諸国に呼びかけた。

そのための施策として、DX(デジタルトランスフォーメーション)や人工知能(AI)、データの進歩、デジタルデバイドへの対応の必要性を認識することが挙げられる。また、2030SDGsアジェンダの実施に向けたボトルネックに対処する途上国の国内努力を支援するため、あらゆる資金源から、手頃な価格で適切かつ利用しやすい資金を動員することへのコミットメントも呼びかけた。

首脳宣言はまた、持続可能な社会経済開発と経済繁栄の手段としての観光と文化の重要な役割を強調した。また、SDGs刺激策を通じてSDGsの資金ギャップに対処しようとするアントニオ・グテーレス事務総長の努力に留意し、9月末に開催される国連のSDGsサミットを全面的に支援することを約束した。

G20開幕に先立つ9月8日にニューデリーで会見した国連のグテーレス事務総長は、「グローバル社会は機能不全に陥っている。」と述べ、G20を通じて「我々の世界が必死に求めている変革」を加速するようインドに呼びかけた。

Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain
Antonio Gutierrez, Director General of UN/ Public Domain

グテーレス事務総長は、戦争や紛争が激化し、グローバルな金融システムが時代遅れで不公正であり、「抜本的な構造改革が必要」であるため、無駄にしている時間はないと警告した。貧困、飢餓、不平等が拡大する中、グテーレス事務総長は「このような世界の分断は、最良の時であれば深く憂慮すべきことだが、現在においては破局を意味します。」と述べ、G20の指導者たちに連帯を築くよう訴えた。

ニューデリー首脳宣言は、食料安全保障と飢餓撲滅の分野において、G20持続可能な金融ロードマップに沿って、持続可能な金融の規模を拡大するための行動をとるというG20の公約を再確認する一方で、雑穀や、キヌア、ソルガムのような気候変動に強く栄養価の高い穀物や、米や小麦、トウモロコシのような伝統的な作物に関して研究協力を強化する取り組みを促進することで、世界的な食料安全保障を強化することを約束している。

G20の首脳宣言は初めてグローバル・サウスの懸念を反映したものだったが、サミット後の行動は世界に変化をもたらし、グテーレス事務総長が警告したような惨事を避けることができるだろう。

サミット閉会にあたってモディ首相は、「各国からの提案を検討し、実施に向けてどう加速できるかを検討するのは我々の責任です。」と述べ、11月にG20サミットをオンラインで開催することを各国に提案した。

G20の議長国は、2024年がブラジル、2025年が南アフリカとなる。

インドの外交官を30年以上務めたM・K・バドゥラクマール氏は、「RTチャンネル」のコラムで、G20声明は「ウクライナ問題に焦点を当てることを避けた」欧米諸国の冷静な判断によって可能になったものだとの見解を述べた。

「デリーサミットへの準備中やサミット期間中に、ロシアバッシングや、西側諸国の首脳がその件で感情を爆発させるようなこともなかった。ウルズラ・フォン・デア・ライエン欧州委員会委員長も米国政府の態度と足並みをそろえて自制を保った。」とバドゥラクマール氏は指摘した。

「バイデン政権は、グローバル・サウスを動かす望ましい指導者としてのモディ首相の立場を強化する『大きな成功』をこのサミットでもたらしたいと考えていました。米国は、グローバル・サウス、とりわけアフリカに対するアプローチにおいて大胆な軌道修正を図ったのです。というのも、地政学的な空間を独占しようとする中国とロシアからの挑戦が強まっており、そのような地政学的な現実が米政権の念頭にあったからです。」とバドゥラクマール氏は論じた。

サミットが開催された週末の2、3日の間に、(中国の一帯一路構想に似た)鉄道を建設してインド・中東・欧州回廊を造ろうとする構想をバイデン大統領が発表し、ハノイにおける米越首脳会談の翌日に持続可能な開発を目指した米・ベトナム包括的戦略パートナーシップが発表され、アフリカ連合をG20に加入させるモディ首相の試みが支持され、世界銀行による融資構造を強化するG20の新たな構想が発表された。バドゥラクマール氏は、「グローバル・サウスとの関与を強めたい西側の『危機感』がこの背景にあった。」と指摘している。

「これ以上強いメッセージもないだろう。米国はグローバル・サウスとの関与をリードしようと努めている。このパラダイムシフトの中で、バイデン大統領はモディ首相を主要な同盟相手とみなしている。もちろん、グローバルな同盟国としての米国との戦略的パートナーシップを加速し強化する意思を最近インドが明確に示していることが背景にあります。」とバドゥラクマール氏は語った。

G-20 India

シンガポールの元外交官で、「責任ある国家経営のためのクインジー研究所」のオンライン刊行物である『責任ある国家経営』の取材に応じたキショア・ムブバニ氏は、「米国はインドの取り込みに躍起です。逆説的だが、これと最もよく比較できるのは、ソ連に対抗して中国を取り込もうとした米国の1970年代の試みです。今日、中国と対抗するために米国はインドを取り込もうとしている。バイデン大統領がインドのG20に出席し、インドネシアで開催された東アジア首脳会議に欠席したのはそのためです。」と語った。

「インドは、G20議長国としてニューデリー首脳宣言に結実した巧みな外交と戦略によって、新しい世界秩序と意思決定の中心に自らをしっかりと位置づけました。」とNDTVの国際問題コラムニスト、バルティ・ミシュラ・ナス氏は主張した。

「交渉を通じて、インドは分断よりも結束を強調しました。今回のG20議長職就任はインドにとって歴史的な瞬間であり、新たなグローバル秩序におけるインドの存在感を高めるものでした。今日、世界はインドを信頼に足る強固な大国であり、恵まれない国々や疎外された国々の擁護者であると見ています。」(原文へ

INPS Japan

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アフリカ救済に関与するBRICS

【ハラレ(ジンバブエ)IDN=ジェフリー・モヨ】

南アフリカ共和国(南ア)で8月22日から24日にかけて3日間の日程で開催されたBRICSサミットは、対アフリカ開発支援の新たな取決めがより公正かつ平等なものになるとの希望をアフリカ大陸で高めた。アフリカは数十年にわたって、開発融資のためにかえって西側により多くの支払いをしてきたとの批判もある。

ブラジル・ロシア・インド・中国・南アから構成されるBRICSは、2009年の結成当初にはその意義に疑念も持たれていたが、世界的な機構を支配する西側諸国に対する対抗勢力だと今やみなされている。ロシアのウクライナ侵攻と西側諸国の対ロ金融制裁が、BRICSが代表すると見られる「グローバル・サウス」と呼ばれる地域に悪影響を及ぼしたことから、BRICSの重要性はさらに増している。

サミットに出席しなかったロシアのウラジミール・プーチン大統領はビデオメッセージで、「われわれの経済関係の中で、脱ドル化の客観的で不可逆的なプロセスは勢いを増している。」と述べた。

しかし、BRICS共通通貨に関する議論はサミットの議題とはならなかった。セルゲイ・ラブロフ・ロシア外相は、ブラジルのルーラ・ダ・シルヴァ大統領の後押しを受け、BRICS諸国間の共通通貨を支持する発言をしていた。

南アフリカのシリル・ラマポーザ大統領は、「アフリカの課題を前進させることは、わが国がBRICSの議長国を務める間の戦略的な優先事項であった。」と8月23日の開会の挨拶で語った。

BRICSが立ち上げた「新開発銀行(NBD)」の総裁を務めるブラジル出身のジルマ・ルセフ氏によると、BRICS諸国はアフリカにとって「良きパートナー」だという。ルセフ総裁はBRICSサミットのスピーチでこのように述べ、NDBはアフリカの物理的面・デジタル面でのインフラ建設を金融支援し、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を後押しすると語った。

今回のBRICSサミットでは、エジプトとエチオピアのアフリカ2カ国が、アルゼンチン・イラン・サウジアラビア・アラブ首長国連邦とともに来年1月からこの枠組みに参加することが認められた。

基軸メンバー(濃い青)、2024年1月以降の新規メンバー(薄い青)、正式に加盟を申請している国(橙色)、加盟に興味を示している国(黄色)、招待を辞退した国(緑色)Credit: By Dmitry Averin, - Own work, CC BY-SA 3.0
基軸メンバー(濃い青)、2024年1月以降の新規メンバー(薄い青)、正式に加盟を申請している国(橙色)、加盟に興味を示している国(黄色)、招待を辞退した国(緑色)Credit: By Dmitry Averin, – Own work, CC BY-SA 3.0

人権問題への批判から欧米諸国と敵対してきたジンバブエは、BRICSへの加盟も目指している。コンスタンティーノ・チウェンガ副大統領が同国を代表して今回のサミットに参加した。

「ジンバブエは、BRICSが多極的で包括的な世界秩序を促進する強力な同盟であると認識している。この同盟に参加することで、ジンバブエは志を同じくする国々と協力し、集団の力を活用するまたとない機会を得ることができる。」とチウェンガ副大統領はサミットで語った。

同氏はさらに、「BRICSの新開発銀行(NDB)設立と、BRICS加盟国と他の南側諸国との間で地域通貨を使用するという提案を称賛する。」と述べるとともに、「ジンバブエは、南の他の国々と同様に、開発プロジェクトのための代替資金源としてNBDの恩恵を受けることを望んでいる。」と語った。

ザンビアのハカインデ・ヒチレマ大統領は、BRICSがアフリカ諸国、特に自国にとってゲームチェンジャーとなることに期待を表明した。

「ザンビアとしては、多くの機会にたびたび発言してきた問題に対応するための真の機会をBRICSが提供してくれるものと期待している。資本のような開発にとって不可欠の要素に伴った不平等の問題に対処するために、グローバルな世界秩序を改革する必要がある。」と、ヒチレマ大統領は語った。

サミットの参加者らは、アフリカに有利な状況をもたらすために、BRICSの新開発銀行による融資の利率は比較的低く抑えるべきだと議論した。

2000年までのアフリカの債務を帳消しにするキャンペーンを展開していた「ジュビリー2000」の前身である「債務の正義」は、昨年のG7サミットの前にG7メンバーに対し、アフリカの借金の35%を占める中国などからの二国間融資よりも、欧米の民間銀行の方がはるかに高い金利を課していることを指摘していた。

アフリカ諸国は、新開発銀行から有利な利率で融資を受けたいとの意向を表明している。ボツワナのスランバー・ツォグワネ副大統領は、BRICSサミット出席後、同国の『デイリー・ニュース』紙の取材に応えて、「従来の国際機関の構成から我々は教訓を学んでおり、より民主的なあり方を望んでいる。」と述べた。同氏はモクウィツィ・マシシ大統領の代理でサミットに出席していた。

ただし、ナミビアのように、サミットに参加しつつも、BRICS入りそのものには慎重なアフリカ諸国もある。

隣国の南アでBRICSサミットが開かれるのを前に、ナミビアのネトゥンボ・ナンディ=ヌダイトワ国際関係相は、「BRICSは新たなメンバー国に門戸を開いたと聞いているが、加入宣言の前にその手続きについてまずは知る必要がある。我々の経済に利益をもたらすかどうか考えてみる余地はある。」と記者団に語った。

しかし、ジンバブエの隣国モザンビークのように、BRICS入りに熱意を示している国もある。同国のフィリッペ・ニュシ大統領は今回のサミットに出席した。

「この対話に参加することによって、BRICSが具体的な行動を通じて利益及び取り組みを共有するもう一つの明確な道筋を示し、我々の国々の構造的な利益を巡る様々な問題においてグローバル・サウスを特徴づける相補性と連帯という環境の下で相互利益をもたらすものだとの確信をモザンビークは得た。」とニュシ大統領はBRICSサミットで発言した。

国連食糧農業機構(FAO)中国オフィスの代表を務めるカルロス・ワトソン氏は新華社通信の取材に答えて、「BRICS諸国と他の国々との協力は2030年までのSDGsの達成において『よい成果』をもたらすうえでカギを握る。」との見方を示すとともに、「農業部門では、グローバル・サウスの国々の間での協力が、農業開発、食料、栄養安全保障、農村開発、貧困削減の触媒として重要な結節点となることができる。」と語った。

中国もまた、開発途上国が国連の持続可能な開発目標に沿った開発目標を達成できるよう支援している。

南アフリカ・ツワネ大学の著名な講師であるリッキー・ムニャラジ・ムコンザ博士は、アフリカ諸国を取り込もうとするBRICSの取り組みを高く評価した。

「BRICSはアフリカにとって良いニュースだ。南と南の関係に貢献する組織として、アフリカ大陸の経済的利益に目を向けると、これは特にそうです」とムコンザ博士はIDNの取材に対して語った。

マラウィ大学政治行政学部の研究者ギフト・サンボ氏は、BRICSに加わることでアフリカ諸国の希望は高まっていると述べた。

(from left) President of Brazil Lula da Silva, President of China Xi Jinping, President of South Africa Cyril Ramaphosa, Prime Minister of India Narendra Modi and Foreign Minister of Russia Sergey Lavrov, in a family photograph during the BRICS Leaders Retreat Meeting, at Johannesburg, in South Africa on August 22, 2023. Photo Credit: By Prime Ministers Office - Press Information Bureau, GODL-India.
(from left) President of Brazil Lula da Silva, President of China Xi Jinping, President of South Africa Cyril Ramaphosa, Prime Minister of India Narendra Modi and Foreign Minister of Russia Sergey Lavrov, in a family photograph during the BRICS Leaders Retreat Meeting, at Johannesburg, in South Africa on August 22, 2023. Photo Credit: By Prime Ministers Office – Press Information Bureau, GODL-India.

「アフリカ諸国がBRICSに寄せる期待の大きさは理解できる。この地域には、ワシントン・コンセンサスよりもBRICSの方が公正な貿易取引を行える可能性が高いという強い認識がある。アフリカにおける経済大国である南アがBRICSの主要メンバーであることも、この認識を強めている。BRICSへの強い親近感は、グローバルな政治経済におけるアフリカの交渉力を高めることだろう。」とサンボ氏はIDNの取材に対して語った。

ジンバブエの政治学者ギブソン・ニカジーノ氏もまたこの議論に加わった。

ニカジーノ氏は、「世界政治システムは、西側の支配的な政治的、社会的、経済的秩序に対抗し、従来疎外されてきた国々が経済的正義と平等を目標に合併できるよう、形を変え、再編成されつつあります。」と指摘したうえで、「BRICSは、世界的な問題に対処する支配力を持つG7や西側の一方的なアプローチに対抗するため、南南協力や経済的可能性に存在するポテンシャリティーについて、アフリカに代替案を提示しています。BRICSは公正なウィンウィンの協力を提唱していることから、経済活動、生産高、協力に関する実績はアフリカにとって好ましいものです。」と語った。(原文へ

INPS Japan

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映画『オッペンハイマー』を観た日本人ジャーナリストが、本編に描かれなかった核兵器が長期にわたって人体に及ぼす人道的な影響について考察した。

【アスタナNepali Times/INPS Japan=浅霧勝浩(Katsuhiro Asagiri)】

 「核実験に反対する国際デー」を記念する中央アジア地域会議の取材で訪れたカザフスタン共和国の首都アスタナで、映画『オッペンハイマー』を観た。この映画はデリケートな内容であるため、被爆国日本ではまだ公開されていない。

Time-lapse detonation of Gadget, Trinity nuclear weapons test, July 16 1945. Public Domain.

日本やカザフスタンのように、原爆投下や核実験による深刻な健康被害がいまだに残っている国々の人々にとって、この映画は、一抹を不安を掻き立てるものになるだろう。なぜなら、この映画の本編では、原爆がもたらす大量死や放射能による病気をわずかに仄めかしているだけで、原爆被害の実相を描くことを避けていたからだ。

クリストファー・ノーラン監督は、史上初の原子爆弾の製造と核爆発の背後にある政治と、物理学者J・ロバート・オッペンハイマーが直面した道徳的ジレンマを赤裸々に描き、ハリウッド映画として素晴らしい作品に仕上げている。ただ、1945年7月のトリニティー核実験以来、核兵器が人類に及ぼした人道的な側面や、映画で登場した核爆弾が実際に使用された広島と長崎の壊滅的な破壊、そして今日まで続く想像を絶する核爆発が人々にもたらした危険性についても描いてほしかった。

この映画は、トリニティー核実験後、ネバダ砂漠のロスアラモスから風下に住んでいた約15,000人のアメリカ人が被った放射性降下物による健康被害や長期にわたった苦しみについてさえ触れていない。米国政府の公式説明では、実験場は人里離れた場所にあったということになっているが、この映画ではこの歴史的事実について掘り下げていない。

Semipalatinsk former nuclear weapon test site/ photo by Katsuhiro Asagiri
Semipalatinsk former nuclear weapon test site/ photo by Katsuhiro Asagiri

驚くべきことに、モスクワのソ連中央政府も同じような正当化を行い、当時ソ連領であった中央アジアのカザフの大草原にあるセミパラチンスク核実験場(ベルギーまたは日本の四国の大きさ)を「人里離れたところ」として、実に456回にも及ぶ核実験を繰り返した。

興味深いことに、1961年に北極圏で実施されたソ連最大の大気圏水爆実験「ツァーリ・ボンバ」に参画した主任科学者アンドレイ・サハロフも実験後に良心の呵責から、核実験禁止を訴えるようになり、国家から迫害される道を歩んでいる。

今日、カザフスタン北東部のセミパラチンスク核実験場周辺では、今日も核実験による悲劇的な後遺症が続いている。ガンや奇形などの健康問題を抱えた子どもたちが生まれ続け、核兵器の非人道的な結果を痛ましい形で証明している。ここでは1949年から89年まで、150万人以上のカザフ人が核実験によって降り注いだ放射性降下物により被曝した。

Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan
Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan

1991年8月29日、セミパラチンスク核実験場は、まだソ連の一部であったにもかかわらず、カザフスタンによって永久に閉鎖された。その後、カザフスタンは独立し、当時世界第4位だった核兵器を廃絶することで、核兵器保有国から非核兵器保有国へと自主的に転じた世界初の国となった。

2009年、カザフスタンの提唱により、国連総会は8月29日を「核実験に反対する国際デー」とする決議を採択し、この歴史的な閉鎖の意義を強調した。

核実験は、今日に至るまでカザフスタンの人々の生活に深刻な影響を与えている。著名な画家であるカリプベク・クユコフは、母親の胎内で放射線を浴び、両手がない状態で生まれた。クユコフは、セミパラチンスク核実験場の閉鎖に重要な役割を果たした民衆による反核運動(ネバダ・セミパラチンスク運動)に初期から参加し、今日に至るまで彼の作品を通して核実験が人々に及ぼした実相を伝えている。

Karipbek Kuyukov(2nd from left) and Dmitriy Vesselov(2nd from right)/ Photo by Katsuhiro Asagiri
Karipbek Kuyukov(2nd from left) and Dmitriy Vesselov(2nd from right)/ Photo by Katsuhiro Asagiri、Multimedia Director of INPS Japan.

地域会議で被爆証言をしたディミトリー・ヴェセロフは、セミパラチンスク出身の被爆3世だ。彼は鎖骨がないのが特徴の肩鎖関節異骨症を患っており、彼の手はわずかに筋肉と靭帯でのみつながっている状態で、本格的な作業ができない。核実験が世代を超えて人々を苦しめている実相について語った彼の痛切な言葉は、小型戦術核兵器の使用や限定的な核戦争を擁護する人々に対する厳しい警告であり、被爆者の切実な願いを代弁したものだ。

40年に亘ってセミパラチンスク核実験場で爆発した核兵器の威力は、広島・長崎に投下された原爆の2500倍と推定されている。ウクライナ紛争と中米の緊張を背景に、終末時計の不吉な音は真夜中に近づいている。人類は、核兵器の使用と核実験がもたらす重大な結果を記憶しておく必要がある。

地球規模での全面的な核対立がもたらす脅威は、地球上の生命にとって、予測される気候危機の影響よりもはるかに深刻なものであることを再認識する必要がある。

The “Humanitarian Impact of Nuclear Weapons and the Central Asian Nuclear-Weapon-Free Zone” regional conference held in Astana on Aug 29, 2023. Photo credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan.
The “Humanitarian Impact of Nuclear Weapons and the Central Asian Nuclear-Weapon-Free Zone” regional conference held in Astana on Aug 29, 2023. Photo credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan.

カザフスタン外務省が国際的なパートナーと協力してアスタナで開催した地域会議では、参加者が核兵器の人道的影響ついて掘り下げた議論を行った。この核兵器の人道的影響こそが、先にウィーンで開催された核兵器不拡散条約(NPT)2026年再検討会議準備委員会における核保有国間の軍縮議論や、映画「オッペンハイマー」で顕著に欠けていた側面であった。

Mr. Hirotsugu Terasaki, Director General of Peace and Global Issues of SGI Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan.
Mr. Hirotsugu Terasaki, Director General of Peace and Global Issues of SGI Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan.

この地域会議の共同主催者である創価学会インタナショナル(SGI)の寺崎広博嗣平和運動総局長は、核兵器禁止条約(TPNW)の第6条と第7条をめぐる国際社会で進行中の議論を強調した。これらの条文は、締約国に対し、核被害者への援助、被害地域の修復、国際協力の促進を求めている。カザフスタンはキリバスとともに、この重要な議論の中心となる作業部会の共同議長に任命された。

核兵器を保有する9カ国がTPNWを無視し続け、核抑止力の必要性を国民に納得させようとしている一方で、次に誰が核兵器を使用しようとも、この非人道的な兵器の被害を受けるのは、私たちのような一般市民であり、その後遺症は世代を超えて残るものであると認識する必要がある。

私たちは、アメリカ、ロシア、カザフスタン、オーストラリア、アルジェリア、南太平洋諸島、中国、北朝鮮、コンゴ民主共和国など、核兵器の使用や実験、製造の犠牲となった「グローバルヒバクシャ」に対する核兵器の影響という人間的側面に注意を払わなければならない。

第2回TPNW締約国会議が11月27日から12月1日にかけてニューヨークの国連本部で開催され、世界は核兵器使用の脅威に直面している。締約国は、NGOや世界のヒバクシャ代表とともに、TPNWを支持し批准することによって、核兵器のない世界の実現を訴える構えだ。(原文へ

浅霧勝浩は、INPSジャパンの日本人ジャーナリストであり、「Towards a World without Nuclear Weapons(核兵器のない世界へ)」と「SDGs for All(すべての人のためのSDGs)」のプロジェクトディレクター。

INPS Japan

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「核実験に反対する国際デー」記念行事を取材

NPT再検討会議準備委員会のサイドイベントで、カザフスタンの核実験被害者が被爆の実相を証言

デカップリングではなくデリスキング: 言葉の巧妙な言い換え以上のものか?

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ハルバート・ウルフ 

中国にどのように対処するべきか? 西側先進国はここしばらく説得力のある対中戦略を見いだそうと試みている。広島で行われたG7サミットの一つの成果は、そのような共同の対中戦略を、少なくとも机上では策定したことである。最終コミュニケによれば、G7を構成する主要7カ国は、問題は中国から経済的にデカップリングすることではなく、リスクを低減し、依存を軽減することだという点で合意している。この戦略は、キャッチーでアングロサクソン的な「デリスキング」という言葉で呼ばれている。理屈はもう結構だ。実際にこの政策をいかに実現するかは、今後の課題である。G7各国政府の一致した合意にもかかわらず、それぞれの国は、利害関係に応じて「デリスキング」が意味することについて独自の理解をしている。(

グローバル規模の二つの事象、新型コロナパンデミックとウクライナに対するロシアの戦争により、G7の中でも外でも、中国との関係を見直す動きが出ている。パンデミックは、経済的サプライチェーンの脆弱性を浮き彫りにし、特に欧州では、緊急に必要な医療物資が十分に供給されないことが明らかになった。これを受け、当初のショック反応の中で、経済的自給自足の可能性に関する議論が起こった。しかし、この議論はすぐに下火になった。なぜなら、経済学者、特にグローバリゼーションの支持者が、今日のグローバル経済における緊密な相互依存関係を考えれば自給自足は現実的な選択肢でないことを明確にしたからである。

そのような中、ウクライナに対するロシアの戦争は、ロシア産のエネルギーや原材料の供給への依存を突如として浮き彫りにした。全ての先進国は中国との経済関係をいっそう深めており、それは危機が生じた際に大きな問題になる恐れがあるため、サプライチェーンの多様化という考え方が広まっているのだ。中国依存という状況に陥らないために、さらには中国に脅迫されないために、今や国家安全保障と経済的利益のバランスを見いだすことに議論の重点が置かれている。要するに、中国の技術が特にハイテク分野で支配的になったら、そして中国が世界中で多額の投資を続けたら、国家安全保障は脅かされるのか、重要インフラが中国にコントロールされるのかということである。しかし、自国の強靭性を高めるために、世界第2位の経済大国である中国との協力を意図的に制限した場合、経済的ダメージはどれほど深刻になるだろうか?

米国では近年、「デカップリング」が中国との競争における超党派の強硬策となっている。当初この政策は、ドナルド・トランプ前大統領によって導入された。特に基幹技術については、米国は断固としたデカップリング政策を打ち出しており、この世界的政敵から重要先端技術を剥奪するために大幅な輸出規制を導入している。EUも日本も、そこまでの強硬路線は取っていない。EUは、「中国はパートナーであり、競争相手であると同時に、体制的ライバルである」というここ数年広められてきた定式を固く守っていた。欧州全体でこの概念を掲げたうえで、各国は三つの側面のうちどれを優先すべきかについては独自の解釈をすることができた。そのため、G7グループもEU加盟27カ国も、説得力のある共通の対中戦略と言える政策を打ち出せなかった。

どうやら今では、G7の残り6カ国が米国を説得し、強硬な「デカップリング」政策を放棄させることができたようだ。少なくとも書面上では。広島でのG7会合の最終コミュニケには、文字通り、G7は「デカップリングではなく、パートナーシップの多様化と深化、そしてデリスキングに基づく経済的強靭性と経済安全保障へのわれわれのアプローチを調和させるため、具体的な措置」を講じると記されている。目的はリスク低減であり、デカップリングではない。コミュニケにはさらに、いっそう明白な文言がある。「われわれの政策アプローチは、中国に害を及ぼすことを目的としておらず、また、中国の経済的進歩と発展を阻止しようともしていない。中国が成長を遂げつつ国際ルールに従って行動することは、世界的な利益となるだろう。われわれはデカップリングせず、内向きにもならない。同時に、経済的強靭性にはデリスキングと多様化が必要であることをわれわれは認識している。われわれは個別に、そして集団的に、われわれ自身の経済的活力に投資するための措置を講じる。重要なサプライチェーンにおける過度な依存を削減する」。

「デリスキング」という言葉はもともと国際金融の分野で使われていたが、欧州委員会のフォン・デア・ライエン委員長が、北京訪問に先立って2023年3月に行った基調講演で「デリスキング」という言葉を数回にわたって口にしたことから大人気となった。「中国からのデカップリングは、実行可能ではなく、欧州の利益にもならないと考える。われわれの関係は白か黒かではなく、われわれの対応も白か黒ではない。だからこそ、デカップリングではなくデリスキングに焦点を当てる必要がある」。

G7の「デリスキング」アプローチは、中国に対処するための実質的に新しい戦略だろうか? 3月の演説でフォン・デア・ライエンは、重要分野、特にマイクロエレクトロニクス、量子コンピューター、ロボット工学、人工知能、バイオテクノロジーなどのハイテク分野において「新たな防衛手段を開発する」必要があるとはっきり述べた。英国と日本の政府はこの方針を採用し、米国も今や「デリスキング」を口にしている。かくして、米国と欧州の立ち位置は一致しつつある。これが、輸出、輸入、投資政策に具体的な変化をもたらすかどうかは、今後を見守る必要がある。

中国政府は即座に反応した。中国を中傷し、内政に干渉するものだとして、G7各国、とりわけ米国の経済圧力を非難した。北京は、英国のリシ・スナク首相の「中国は、グローバルな安全保障と繁栄の時代における最大の課題だ」という発言に言及し、「英国側は他人の言葉をおうむ返しにしているに過ぎず、それは事実を無視した悪意ある中傷だ」と言い返した。その一方で、中国政府は、なおも経済協力に前向きであるとほのめかしている。G7サミットの直後、中国政府は、中国で半導体を製造する米国企業マイクロン・テクノロジーにサイバーセキュリティ審査を実施した。この措置の目的は「情報インフラ・サプライチェーンの安全を確保する」ことである。言い換えれば報復であり、「目には目を、歯には歯を」ということだ。

G7のデリスキング政策の何が新しいのか? デリスキングから連想されるネガティブなイメージは、デカップリングよりも少ないかもしれない。リスク低減のほうが、強硬なデカップリングよりも少しうまいやり方に聞こえるだろう。「リスク低減を嫌がる人などいるだろうか?」と、中国専門家で元SIPRI所長のベイツ・ギルは述べた。「要は、やらなければならないことに対する、レトリック的にはるかに巧妙な考え方だ」。しかし、安全保障上の課題や中国とG7各国の将来的な経済関係の構造は、このリスク低減戦略があったからといって変化することはほとんどないだろう。相反する立場に変わりはない。

ハルバート・ウルフは、国際関係学教授でボン国際軍民転換センター(BICC)元所長。現在は、BICCのシニアフェロー、ドイツのデュースブルグ・エッセン大学の開発平和研究所(INEF:Institut für Entwicklung und Frieden)非常勤上級研究員、ニュージーランドのオタゴ大学・国立平和紛争研究所(NCPACS)研究員を兼務している。SIPRI(ストックホルム国際平和研究所)の科学評議会およびドイツ・マールブルク大学の紛争研究センターでも勤務している。

INPS Japan

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インド・カルナタカ州があらたな飢餓対策へ

【マニパル(インド)IDN=マンジュシュリー・ナイク】

インドで穀物不足の兆しが現れる中、インド南部のカルナタカ州政府が、穀物購入資金を貧困層に提供することで選挙公約を果たすあらたなアプローチに踏み出そうとしている。

カルナタカ州政府の最も野心的なプログラムアナバギャ・ヨジャナは、家族の貧困レベルを示すBPL(アントヨダヤ・カードとも呼ばれる)を持っている恵まれない人々に、毎月一人当たり10キログラムの米を支給するものである。

Map of India
Map of India

アナバギャ制度はインド国民会議派の公約であり、2023年5月の州選挙で勝利を収めると、今度はその約束を果たす責務を負うことになった。

アナバギャ制度立ち上げの主目的は、家族を養うのに苦労している貧しい人々に無償で穀物を供与することにある。貧困層の人々だけがこの制度の下でコメを手に入れることができる。

受給できる家族の人数に制限はない。各人は毎月1人あたり5キロのコメを受け取ることになる。国民会議派は(社会階層の最下部に位置する)アントヨダヤの家族にそれぞれコメを無償で5キロ配るとの公約を行った。2013年以来、国家食料安全保障省によって供与されている5キロに上乗せされる。

カルナタカ州の190万人のアントヨダヤ・カード保有者、4420万人に対して5キロのコメを配るには22万9000トンが必要となる。インド食料公社(FCI)はこの分量のコメを州政府に売ることを拒絶した。

FCIの拒絶によって、州政府は7月1日のアントヨダヤ・ヨジャナの無償コメ配布計画の開始までに必要量のコメを準備することができなかった。

そのためカルナタカ州政府は、公約していた5キロのコメに替えて、7月1日から一時的に一人当たり毎月170ルピー(2.05米ドル)を支給している。制度開始以来、州政府はこれまでに78万4000人の受給者に4560万ルピーを支給した。

配給金は、世帯主のアアダアル・ナンバー(生体認証ID番号)に関連する銀行口座に振り込まれる。同州には1280万人の配給カード保有者がいるにもかかわらず、現在この制度の対象者は約970万人に過ぎない。

食料・民間供給局の職員(匿名希望)によると、過去3か月間にこの制度を利用しなかったおよそ87万人のカード保有者が受給対象者から外れることになるという。加えて、約210万人のカード保持者は、Aadhaarを銀行口座とリンクさせておらず、銀行口座を持っていない者もいるため、対象外となっている。

この職員によると、銀行口座を持たないか、あるいは、口座があってもそれがアアダアル・ナンバーと紐づいていないカード保有者の場合、その名前が公定価格店の店頭に張り出されることになるという。また州政府は、アアダアル・ナンバーの取得や郵便局での口座開設も支援するという。

主要なコメ産地であるカルナタカ州は40年にわたって食料自給を実現してきたが、だからと言って食料安全保障が確保されているわけではない。食料が多くても、飢餓は続いている。

2019年から21年にかけての全国家族健康調査(NFHS)によると、インドの子どものうちかなりの部分が食料不足に直面しており、その発達と将来の健康が危ぶまれている。インドが持続可能な開発目標の第2目標(飢餓の撲滅)を達成するには、食料不足を解消し、すべての人々が栄養充分な食べ物を安価で入手できるような戦略的な取り組みを進めねばならないと専門家らは指摘している。

カルナタカ北部バガルコットのバサマ・ゴウダーさんは、アナバギャ制度によって家族を飢餓から救うことができた。バサマと夫は2人の子を抱え日雇い仕事に従事しているが、この制度によって夫婦は生活費を浮かすことができた。降雨量が十分でないため、小さな土地を所有しているこの夫婦は十分な収穫を得ることができなかった。その結果、二人は不安定な日雇いの仕事に毎日出かけている。

「アナバギャ制度によって、1日2回の食事をするためのコメが手に入る。」とバサマ・ゴウダーさんはIDNに語った。コメ購入の補助金は有益であり、コメの品質を選ぶことができるようになったと感じている。「以前は配給システムでコメを手に入れるだけだったので、他に選択肢がなかった」。

彼女は、米の代用品として支給されるお金が役に立ち、米の品質も選べるようになったと信じている。「以前は、他に選択肢がなかったため、公共配給システムを通じて配給される米の質に甘んじていました」と彼女は付け加えた。

カルナタカ州のM・T・レジュ食料農業長官は、この制度によって貧困層を飢餓から救うことができたと語った。「食料安全保障の目標は達せられた」。7月の制度創設以来、州政府は補助対象者の8割に対して支援を行い、8月末には100%に達する見込みであるという。

初の食料購入支援金

これは、穀物購入のために現金が支給された初めてのケースではない。しかし、食料購入のための資金移転に関して言えば、南アジアでは初のケースだ。データクリーニングや認証によって透明性を向上させる多くの取り組みがなされている。レジュ長官はさらに、国家食料安全保障法に規定されているように、資金移転が女性の名において行われている点が重要だと述べた。「制度の捕捉率はきわめて高く、官民ともに受け要られている証拠だ」とレジュ長官は語った。

カルナタカ州政府のラクシミ・ヘバルカー長官は、州政府は詐欺口座やその他の違法行為を探知するソフトウェアを稼働する一方、受給者は配給カードの情報をアップロードして支援を得るようになっている、と述べた。

クダラサムガマのギータ・ヒーレムットさんは、以前は義理の両親と共同生活をしていたという。彼女と夫は仕事を求めてウドゥピに移住した。しかし彼女は、義理の家族と共同の配給カードを持っていたためにその情報をアップロードすることができず、無償のコメを手に入れられなかった。そのため彼女は、夫と自らの収入の中から食費を捻出せざるを得ない。

また、カルナタカ州バタカルの別の住民ラクシミ・ナイクさんは、個々人がもらえるコメの量に満足している。彼女は、自身と夫、息子、義理の娘、娘の5人家族で月に50キロのコメを手に入れることができるが、これは生活するのに十分な量だ。「コメは満足のいく品質で、調理には最適。時には、余ったコメを使ってドサやイドリ(インドのよくある朝食メニュー)を作る」とナイクさんは語った。

SDGs Goal No. 2
SDGs Goal No. 2

石工の助手として働くシヴァンナ・コテカルさんは、自分と妻、2人の子供、そして母親全員が給付金を受け取ったと語った。「残りの5キロの米を、食料品店で買うために使っています。この制度は非常に役立っています」と彼は付け加えた。

アナバギャ制度のためのコメ供出を拒絶されたとカルナタカ州政府から非難された「ユニオン・フード」社のサンジーブ・チョプラ氏は、コメであろうと小麦であろうと余剰の穀物はカルナタカ州だけではなくすべての州で共有されるべきものだと声明で反論した。

「およそ3600万トンのコメが(受益者に無償でコメを配給する改正国家食料安全保障法を意味する)マントリ・ガリーブ・カルヤン・アン・ヨジャナ(Mantri Gareeb Kalyan Ann Yojana)によって配給されている。すべての州が、公的配給システムのために、中央が供給する以上の米を要求し始めたら、その総量は7200万トンになるが、穀物の備蓄は5600~5700万トンしかない。」とチョプラ氏は指摘した。(原文へ

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 トカエフ大統領、国連総会で安保理の緊急改革を訴える

【アスタナINPS Japan/The Astana Times=アッセル・サツバルディナ】

シム・ジョマルト・トカエフ大統領は9月19日、第78回国連総会の一般討論で演説を行い、国際法を強化し、国連安全保障理事会の包括的な改革を緊急に行うことの重要性を強調した。

大統領は演説の中で、国連憲章に謳われている国際法の基本原則が相次いで侵食されていることから、世界の平和と安全に対する脅威が増大していることを強調した。

大統領はまた、世界は紛争や対話の欠如など多面的な課題に直面しており、そのすべてが国連創設の基盤となった原則と価値への新たなコミットメントを必要としていると強調した。そしてなかでも最も破壊的な課題は、核兵器使用の脅威だと指摘した。

UNSC/ UN photo
Photo Credit: UNSC/ UN photo

また、中国、フランス、ロシア、英国、米国の5常任理事国が拒否権を持つ国連安全保障理事会を改革する必要性を指摘した。国連改革を支持する国々は、以前から15カ国からなる国連安保理事会における代表権を改革するよう求めてきた。

「安全保障理事会の包括的な改革なくして、これらの諸課題に取り組むことはできないだろう。これは、人類の大多数の利益を合致させる、現代における緊急の課題です。」とトカエフ大統領は述べ、中堅国やすべての発展途上国の声を国連安保理の場に一層反映させることの重要性を強調した。

大統領はまた、「行き詰まりから脱することができないように見える国連安保理委をより開かれたものに改革し、カザフスタンを含む他の国々が平和と安全の維持においてより大きな役割を果たす機会を与えるべきです。」と語った。

南アフリカ共和国のシリル・ラマポーザ大統領とトルコのレジェップ・タイップ・エルドアン大統領も、同様の改革を求めた。

カザフスタンの極めて重要な役割

「一言で言えば、カザフスタンは平和を愛する国であり、自国の国益を追求すると同時に、懸案となっている国際問題の平和的解決策を絶えず模索しています。」とトカエフ大統領は語った。

その顕著なイニシアチブの一つが、アジア地域における平和、安定、協力の促進を目的とした多国間フォーラムであるアジア協力信頼醸成措置会議(CICA)である。1992年に設立され、現在28カ国が加盟している。

昨年10月にアスタナで開催された第6回CICA首脳会議でキックオフされたCICAの本格的な組織化は、「アジア大陸における調停と平和構築」に貢献することにつながるだろう。

トカエフ大統領は、上海協力機構(SCO)の議長国として、「公正な平和と調和のための世界統一イニシアチブ」を提唱した。同大統領は、新しい安全保障パラダイム、公正な経済環境、クリーンな地球という3つの重要分野からなるイニシアチブに参加するよう、世界の指導者らに呼びかけた。そして、「グローバルサウスとグローバルノースの間の開かれた対話こそが、その中心的な柱です。」と語った。

Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri
Semipalatinsk Former Nuclear Weapon Test site/ Katsuhiro Asagiri

大統領はまた、ソビエト連邦下で460回近い核実験を経験し、独立後にソ連から継承した当時世界第4位の規模の核兵器を自主的に放棄した国として、カザフスタンの核兵器禁止条約(TPNW)への「継続的なコミットメント」を再確認した。

「核兵器のない世界への道を歩む核保有国間の相互信頼と協力のみが、世界の安定を生み出すことができる。…私たちは、軍縮・不拡散の分野における新たなメカニズムの構築を支持します。2045年までに核兵器を完全に放棄するための戦略的計画は、この世代の指導者たちにとって、世界の安全保障に対する最も重要な貢献となりうるでしょう。」とトカエフ大統領は語った。

しかし、平和の追求は、軍縮や正式な合意にとどまらない。諸宗教間の対話は、「平和の文化」を育む上で極めて重要である。

トカエフ大統領は、最近見られた聖典に対する冒涜行為について懸念を表明した。「イスラム教やその他の宗教に対する冒涜行為は、自由、言論の自由、民主主義の表現として受け入れることはできない。コーランを含むすべての聖典は、破壊行為から法的に保護されるべきです。」と指摘した。

大統領はまた、国連事務総長と国連総会議長に対し、生物学的安全性に関する国際機関の設立プロセスを開始するよう求めた。この構想は、国際社会が新型コロナウィルスのパンデミックで苦しんでいた最中の2020年9月の国連総会演説で初めて提案したものだ。

この特別な多国間機関は、1972年の生物兵器禁止条約に基づき、国連安全保障理事会に対して説明責任を負うものと期待されている。

トカエフ大統領はまた、アルマトイに中央アジアとアフガニスタンを管轄する国連SDGs地域センターを設立するというカザフスタンのイニシアチブを改めて表明した。トカエフ大統領は、中央アジアが「結束し独立した」国際社会の一部として重要性を増していることについて述べ、地域アジェンダにはアフガニスタンも含まれ、同国が安定し繁栄する国家となり、信頼できる貿易パートナーとなるべきだと強調した。

食料安全保障

国際社会はより良い世界規模の食料安全保障システムを必要としている。トカエフ大統領は、昨年、世界人口の10%近くが飢餓に直面したというデータに言及した。

「食料の生産量や輸出入量など、食料安全保障に関する自主的な情報交換を強化しなければなりません。また、食糧危機に対応するための国際社会からの資金について、透明性のある追跡体制を確保しなければなりません。」とトカエフ大統領は語った。

大統領はさらに、カザフスタンが地域の食料供給ハブとして機能する可能性を示唆し、同国はこの目的のために必要な資源、インフラ、ロジスティクスがすべて整っていると語った。カザフスタンは、穀物の中でもとりわけ小麦と大麦の世界最大の生産国のひとつである。

「カザフスタンはすでに、アジアと欧州を結ぶ陸路輸送の80%近くを担っています。カスピ海横断国際輸送ルート、いわゆる中東回廊は、東西間の連携を大幅に強化することが可能となります。このルートは、重要な市場間の貿易のペースを上げ、海上ルートでの輸送に必要な時間をほぼ半分に短縮することができます。」とトカエフ大統領は語った。

Credit: United Nations

気候変動への取り組みには適切な資金が不足している

トカエフ大統領は、カザフスタンで「公正なエネルギー移行パートナーシップ(JETP)」を立ち上げ、開発途上国の気候変動に対処するための公平な資金を確保することを提案した。

JETPは、先進国と開発途上国間の国主導のパートナーシップであり、公平で包括的な方法でクリーンエネルギー経済への移行を加速させることを目的としている。JETPは、途上国が石炭火力発電所を廃止し、再生可能エネルギーを開発し、移行によって影響を受ける労働者や地域社会に新たな経済機会を創出することを支援するよう設計されている。

「石炭から徐々に、持続可能で、社会的責任のある形でシフトしていくことは、世界の気候変動目標にとって大きな恩恵となるでしょう。アルマトイに中央アジア気候変動・グリーンエネルギープロジェクト事務所を開設するカザフスタンのイニシアチブは、この問題をリードすることができます。」とトカエフ大統領は語った。

JETPはグラスゴーで開催された国連気候変動枠組条約第26回締約国会議(COP26)で初めて発表され、南アフリカ共和国はフランス、ドイツ、英国、米国、欧州連合から85億ドルの融資を約束された。

A comparison of the Aral Sea in 1989 (left) and 2014 (right)./ Public Domain
A comparison of the Aral Sea in 1989 (left) and 2014 (right)./ Public Domain

2026年にカザフスタンが国連主催で開催する地域気候サミットでは、これらの課題にスポットが当てられる。

来年、カザフスタンは、1993年に始まった中央アジア諸国の共同イニシアチブである「アラル海を救うための国際基金(IFAS)」の議長国にも就任する。トカエフ大統領は、ニューヨーク訪問の2日前、9月15日に関係国首脳らとドゥシャンベで会談し、IFASにおける地域協力の強化について話し合った。

「私たちは、かつて地球上で4番目に大きな湖であったアラル海周辺の環境がさらに悪化し周辺住民の生活に悪影響を及ぼす事態を防ぐ努力を今後も続けていきます。」とトカエフ大統領は付け加えた。(原文へ

INPS Japan

この記事は、The Astana Timesに初出掲載されたものです。

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|視点|”核兵器禁止条約: 世界を核兵器から解放する道”(寺崎広嗣創価学会インタナショナル平和運動総局長)

以下は今年の「核実験に反対する国際デー(8月29日)」に合わせて中央アジアのカザフスタン共和国で開催された「核兵器の人道的影響と中央アジア非核兵器地帯」地域会議(同国外務省、赤十字国際委員会、同国NGOの国際安全保障政策センター、核兵器廃絶国際キャンペーンと創価学会インタナショナルが共催)の開会式で共催団体を代表して行ったスピーチ内容である。

【アスタナINPS Japan=寺崎広嗣】

尊敬する皆様、おはようございます。創価学会インターナショナル(SGI)の寺崎広嗣と申します。本日、アスタナにおけるこの重要な会議に参加させて頂き光栄に存じています。カザフスタンのウマロフ第一外務副大臣、ICRCのミロセビック代表をはじめ、各国外交団の皆様、共催団体の皆様に心より感謝申し上げます。

創価学会という日本語は、価値創造の団体という意味です。私達は仏法が説く生命の尊厳観を基調に、啓発活動、草の根活動、国連でのアドボカシー活動を通じて平和の文化を推進していますが、特に、核兵器のない世界を目指す取り組みは、戦後一貫した主要な活動であります。中央アジアにおいては、キリギス、タジキスタン、ウズベキスタン各国とは、これまで文化・教育を通した交流を重ねてまいりました。今日の会議を通して、5ヵ国すべての皆様との対話が一段と広がりいくことを願っています。

Side event “The Catastrophic Consequences of Atom Bomb Testing—A First Person’s Testimony” Credit: INPS Japan

先月ウィーンで行われた第11回NPT再検討会議に向けた第1回準備委員会では、在ウィーン国際機関カザフスタン政府代表部、ならびに国際安全保障政策センターとともに、核実験の人道的影響をテーマにサイドイベントを開催させていただきました。会場には50名を超える方々にお越しいただき、この問題における関心の高さがうかがえました。

サイドイベントでは、本日もご講演を頂くドミトリー・ベセロフ氏にご自身の核実験被害についてお話頂きました。核兵器が長期にわたり、どれほど甚大な被害をもたらすのか、会場に集った多くの参加者とともに息をのむような思いでお話を伺いました。核兵器の問題を政治的、抽象的な議論で終始していては、その本質が見えなくなります。被爆また核実験被害等の実相を常に忘れることなく、人類の平和にとって、無差別に大量の殺戮・破壊を行う核兵器が本当に必要なものなのか、と問い続けなければなりません。結論は出ているのです。TPNWもNPTも「核兵器のない世界をめざす」という目標は共有されているのです。その意味で、私達は今後とも一貫して市民社会の立場で軍縮教育の取り組みを世界に広げていきたいと考えています。

核兵器を「非人道的兵器」として、その開発、保有、使用あるいは使用の威嚇を含むあらゆる活動を例外なく禁止したのが核兵器禁止条約です。「核兵器禁止条約の条文は、言い換えるならば地球全体を非核兵器地帯とする内容が規定されている」と言えます。その意味では、中央アジア非核地帯条約が批准されている中央アジアは核兵器禁止条約の理念をすでに実行されていると言えます。

本日の会議では、各国の代表の皆様と中央アジア地域の課題や現状について率直に話し合い、核軍縮また核兵器の非人道性について議論を深めていきたい。そして、核兵器禁止条約の持つ重要な価値について共有できることを強く願っております。核兵器の使用リスクが高まる中、世界を核軍縮、核廃絶の方向へ転換させるべく、有意義な議論を重ねて参りたいと存じます。(英文へ

有り難うございました。

Filmed and Edited by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan.
Regional Conference: “Humanitarian Impact of Nuclear Weapons and the Central Asian Nuclear-Weapon-Free Zone” held on Aug 29, Astana, Kazakhstan.

INPS Japan

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【ニューヨークIDN=セルジオ・ドゥアルテ】

核兵器が国際的な場面に登場したのは、国際連合憲章の署名から21日後のことである。そのため、国連憲章は核兵器について触れていない。

それにも関わらず、広島・長崎への原爆投下が世界にもたらした衝撃と恐怖ゆえに、国連総会は1946年1月に採択した創設後初の決議で、原子兵器を国家の戦力から廃棄する提案をさせる目的で委員会を立ち上げることになった。その年の後半、同総会は、核兵器や、大量破壊に応用できるその他の兵器を禁止・廃絶する喫緊の必要があることを認めた。

Photo: Sergio Duarte speaks at the August 2017 Pugwash Conference on Science and World Affairs held in Astana, Kazakhstan. Credit: Pugwash.
Photo: Sergio Duarte speaks at the August 2017 Pugwash Conference on Science and World Affairs held in Astana, Kazakhstan. Credit: Pugwash.

これが77年前の出来事である。決議第1号で創設された委員会はすぐに解散となり、関心は廃絶から核分野における「部分的措置」へと移った。この措置によって、さらなる進展への基礎が提供されるはずであった。その数十年の間に、核兵器の拡散を防止することを目的とした多国間協定が採択され、核兵器を制限する措置が合意された。

化学兵器と生物兵器という2種類の大量破壊兵器は、多国間条約によって禁止されている。 しかし、核兵器は依然として人類を悩ませている。実際、核兵器を保有する9カ国は、その速度、射程距離、破壊力を高める新技術を取り入れることで、核兵器の改良に余念がない。「技術的拡散」とでも呼ぶべき状況だ。

一国単独での決定、あるいは二国間協定によって、冷戦最盛期に存在した途方もない量の核兵器を削減することに成功した。しかし、それだけの削減があっても、依然として世界には推定1万3000発以上の核兵器が存在している。現在、米国・ロシア間の核兵器制限協定のほとんどが失効したか、放置されている。唯一残っているのは、2010年に締結された新戦略兵器削減条約(新START)であるが、ロシアが一方的に効力停止にしている。

現在、この二国間にも、またどの核兵器国に関しても、合意された核兵器制限協定というものはない。核兵器とその運搬手段の廃絶は、核兵器保有国にとっては、せいぜい遠い目標にすぎない。

2008年に採択された国連安全保障理事会決議1887は、大量破壊兵器及びその運搬手段の拡散は国際の平和及び安全への脅威であることを再確認した。誰も否定しえない内容ではあるが、核兵器の存在そのものが、世界の安全への重大な脅威であることにほとんどの人が同意するのではないか。

多国間条約によって核兵器が廃棄・解体された例はない。対照的に、南極条約(1961年)、宇宙条約(1967年)、海底条約(1972年)は、核兵器が存在しない場所での核兵器を禁止した。ラテンアメリカとカリブ海諸国は、自国の領土でそのような兵器を禁止する条約を交渉することに成功した。この先駆的な取り組みは、後に113カ国が他の4つの地域(南太平洋、東南アジア、中央アジア、アフリカ大陸)とモンゴルで非核兵器地帯が創設される成果へと繋がった。

Image: Nuclear-Weapon-Free Zones (Blue); Nuclear weapons states (Red); Nuclear sharing (Orange); Neither, but NPT (Lime green). CC BY-SA 3.0
Image: Nuclear-Weapon-Free Zones (Blue); Nuclear weapons states (Red); Nuclear sharing (Orange); Neither, but NPT (Lime green). CC BY-SA 3.0

1960年代、2つの核大国は条約案の主な内容を協議し、18カ国軍縮委員会(ENDC)に提示した。委員会では最終合意に至らなかったが、国連総会がそれを採択し、核不拡散条約(NPT)となった。条約は1970年に発効した。

その後約20年ほどで多くの国々が当初の留保を撤回して、1990年代末までには大多数の国々がNPTに加入した。NPTは「不拡散体制の要」とみなされている。NPTを批准していない国は4カ国しかなく、その内、インド・パキスタン・イスラエルは核兵器国である。

NPTは、非核兵器国による核兵器取得・開発の予防に力を発揮してきた。一部の非核兵器国が条約上の義務に実際に従わなかったり、その疑いを持たれたりしたこともあったが、そうしたケースのほとんどが、国連安保理による制裁を含めた政治的・経済的圧力と外交手段の組み合わせによって解決されてきた。

しかし、NPT締約国の間には依然として深い見解の相違がある。非核保有国の多くは、核保有国がNPT第6条を履行し、核兵器廃絶に向けて断固とした行動をとることに関心がないと見ている。不満は何度も噴出し、核不拡散と軍備管理の枠組みを崩壊させる恐れもある。

10度のNPT再検討会議のうち6回までも、最終文書の採択に合意できなかった。直近の2回、2015年と2022年の会議でもそうであった。この状況は核不拡散体制の権威と信頼性にとってはマイナスであり、次の2026年再検討会議にも暗い影を投げかけている。

この冷徹な現実に、さらに不安をあおるような要素が折り重なる。あらゆる状況での核爆発実験を禁じる包括的核実験禁止条約(CTBT)は、条約14条で言及された44カ国のうち8カ国が未署名あるいは未批准であるために、まだ発効していない。署名・批准に向けた国内手続きを完了させる動きがこの8カ国内部には乏しく、この条約が意図した普遍的な禁止措置の有効性に対する信頼を低下させている。

別の不安要素は、第1回国連軍縮特別総会が権限を委託した多国間機関が依然として役割を果たせていないという点だ。1990年半ば以降、国連や軍縮委員会、国連総会第一委員会の場において、多国間で実質的な合意はなされていない。さらに、1990年代以降、ジュネーブ軍縮会議は作業内容にすら合意できていない。

国際連合憲章に基づき、過去78年にわたって構築されてきた国際安全保障システムは、世界の多くの地域で紛争予防に失敗してきた。侵略と平和の侵害は、特に発展途上地域において死と破壊を引き起こし続け、巨大な人道危機と大規模な人口移動を引き起こし、先進国における排外主義的反応を助長し、不平等を拡大させている。

安全保障理事会は、国際の平和と安全の維持に第一義的な責任を負っているが、常任理事国の特殊利害が絡む状況においては行動することができず、その結果、常任理事国が同意しないいかなる措置からも、そのような国々を事実上遠ざけてきた。実際、安保理の構成は、今日の世界の地政学的現実と1945年以降の安全保障に関する認識の変化をもはや反映していない。 国連安保理の改革は待ったなしである。

主要な核保有国の間でも、また地域的なライバルの間でも、繰り返される緊張が安定と国際の平和と安全の維持を脅かしている。核保有国は、必要と思われる状況下で核兵器を使用することを想定した軍事ドクトリンを堅持している。 つい最近まで、これらの国は、第二次世界大戦後欧州で戦争が起こらなかったのは核兵器の存在によるものだと主張していた。

ロシアによるウクライナ侵攻を受けて、このような主張はもはや維持できなくなった。片方が核保有国である2つの欧州の国が交戦状態にあり、3つの核保有国に加えて「核同盟」である北大西洋条約機構(NATO)もこれに関与している。核兵器使用の恫喝が交戦当初からなされており、その問題を過小化すべきではない。

もし核紛争が勃発すれば、軍備管理、核不拡散、軍縮に関する国際的な制度全体が存続できなくなり、国際連合憲章が確立した秩序そのものが危うくなる可能性がある。

2010年NPT再検討会議以来の重要な動きは、多くの国々が、あらゆる核兵器使用がもたらす壊滅的な帰結について真剣に考える必要性を多くの国が強調し始めたことだ。2012年と14年の国際会議は、核兵器に伴った人道的な危機とリスクについて討論し、核兵器使用が人間にもたらす影響に効果的に対処できる国や集団は存在しないとの結論が導かれた。

これらの会議ではまた、かつての想定よりもこうしたリスクははるかに大きく広範なものであり、こうしたリスクに対抗することが、核軍縮や不拡散に関連した世界的な取り組みの中心に据えられるべきだとの結論が導かれた。

現在までのところ、こうした取り組みの最も重要な成果は、核兵器禁止条約(TPNW)の交渉と採択である。TPNWは、核軍縮に関する効果的な措置について交渉を進めるよう各締約国に求めるNPT第6条の規定に直接由来するものだ。。

The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras
The Treaty on the Prohibition of Nuclear Weapons, signed 20 September 2017 by 50 United Nations member states. Credit: UN Photo / Paulo Filgueiras

これこそ、まさに実行されたことである。この条約は、世界規模で核兵器を禁止することを目的とした、法的拘束力のある最初の国際法である。 TPNWは、核兵器の使用や使用の威嚇を禁止するだけでなく、核兵器の開発、生産、移転、保有、備蓄、第三国への配備も禁止している。

TPNWはまた、核兵器の使用や核実験の被害者に対する支援義務や、その結果汚染された地域における環境破壊の修復措置(第6条)、さらにそのための国際協力(第7条)についても定めている。大多数の非核保有国、理想的にはすべての非核保有国が、TPNWを遵守することによって、核兵器拒否を明確に示すことが不可欠である。今のところ、この条約には95カ国が署名し、そのうち68カ国がすでに批准している。

核軍縮に関する国際的な制度や協定の枠組みが危機に瀕していることは、条約がすべての当事者の利益になると認識される限り、条約が効果的で永続的なものであることを明らかにしている。信頼と信用は、国家間あるいは国家グループ間の協定を成功させるために不可欠な要素である。

軍縮枠組みのさらなる崩壊は、すべての国の安全を脅かすものであり、国際社会全体の正当な利益を考慮した協力と交渉によって阻止されなければならない。真の安全保障は、人類文明の破壊という脅威の上に成り立つものではない。(原文へ

INPS Japan

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FAWA(アジア太平洋女性連盟)が東京で創立65周年記念総会を開催

Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan.
今年65周年を迎えるFAWA(アジア太平洋女性連盟)の総会が、9月14日から19日の5日間にわたって「Women as the Key Force~For Change in the Asia Pacific Region~」をテーマに東京の国立オリンピック記念青少年総合センターで開催された。日本、アメリカ、グアム、フィリピン、シンガポール、韓国、台湾、香港、インドネシア、マレーシア、マーシャルアイランドから代表団が参加した。INPS Japanからは浅霧理事長が尾崎行雄記念財団の石田尊昭事務局長(一冊の会理事長)の招待で参加し、ドキュメンタリーの制作を担当した。

With the theme “Women as the Key Force~For Change in the Asia Pacific Region ~” the 24Th FAWA Convention in Tokyo 2023 was held at National Olympic Memorial Youth Center between Sept 14 – 19, 2023. Delegates from Japan, the U.S., Guam, the Philippines, Singapore, South Korea, Taiwan, Hong Kong, Indonesia, Malaysia, Guam, and the Marshall Islands participated in the conference. Katsuhiro Asagiri, President and multimedia director of INPS Japan filmed the convention at the invitation of the Secretary General of Ozaki Yukio Memorial Foundation, Takaaki Ishida, who is also President of ‘Issatsu no kai‘, a Japanese NGO.

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