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長崎からウィーンへ:核兵器のない未来を目指す若者たち

【ウィーンIDN=髙橋光宣】

2026年NPT再検討会議第1回準備委員会が、7月31日から8月11日まで、オーストリアのウィーン国際センターで開催されました。国連でこのような国際会議に出席するのは初めてでした。命がけで声を上げてきた多くの長崎の被爆者の思いと、核兵器のない世界の実現に向けて、たゆまぬ努力を続けてきた多くの人々の願いを胸に、私はウィーンに到着しました。

The Preparatory Committee for the 2026 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT) took place from 31 July to 11 August at the United Nations in Vienna. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.
The Preparatory Committee for the 2026 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT) took place from 31 July to 11 August at the United Nations in Vienna. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

過去2回のNPT再検討会議では、締約国間の意見の相違から最終文書を採択できなかったため、今回の準備委員会は、現在の議論の流れを変えるための重要な節目となることが期待されていました。しかし、2週間にわたる熱心な議論の末、議長総括を国連の公式文書として採択する合意が得られないまま、第1回準備委員会は終了しました。

私は、グローバル・ヒバクシャや若者の声を、もっと世界に広めるべきだと感じました。

準備委員会2日目、私はカザフスタンのセメイ市(旧:セミパラチンスク)の出身で、核実験被害者3世であるドミトリー・ヴェセロフ氏と出会いました。カザフスタンがソビエト連邦(ソ連)の一部だった頃、セミパラチンスク核実験場では、450回以上の核実験が行われ、150万人が影響を受けています。ヴェセロフ氏と会った際、私は固く握手を交わしました。彼は私の手を自分の肩に置き、骨が欠けていること、生まれてくる子供に影響が及ぶことを心配して、父親になることを諦めたことなどを話してくださいました。

核実験の被害者と会って話をしたのは初めてでした。大きな苦しみを強いられながらも、核兵器廃絶に向けて自らの体験を国際社会に伝え続けようとする、彼の決意に心を動かされました。私は彼との出会いを通して、核兵器の開発・使用によって被害を受けた「グローバル・ヒバクシャ」の経験や思いを、私が住む長崎の地域から、もっと広く伝えていかなければならないという強い責任を感じました。

From L to R: Mitsunobu Takahashi, Dmitriy Vesselov, a third-generation victim of nuclear testing in Semey City, and Alimzhan Akhmetov, the Founder-Director of the Center for International Security and Policy. Credit: SGI.

8月7日、SGIは、「グローバルユースとの対話:被爆体験の継承」と題した関連行事を、青年に焦点を当てている他団体とともに開催。はじめに、参加者は被爆者である小倉桂子さんの英語による証言を視聴。(※小倉さんの被爆証言映像は、こちらよりご覧になれます。)

次に、地域や背景の異なる若者たちとのパネルディスカッションに参加させていただきました。ディスカッションでは、特に若い世代の間で、核兵器問題に対する認識を高めるにはどうすれば良いかについて意見を交わしました。他地域の若者たちが、核兵器の廃絶への責任感を元に、様々工夫して取り組んでいることが、とても印象的でした。

広島・長崎の被爆者の平均年齢が85歳を越え、直接話を聞く機会が減ってきています。その意味で、被爆の実相や被爆者の証言を次の世代に伝えていくことが難しくなっています。

Group photo of speakers at the Side Event. Photo Credit: SGI
Group photo of speakers at the Side Event. Photo Credit: SGI

私が所属する創価学会長崎平和委員会では、1974年から2020年までに計10冊の被爆証言集を発行し、計314名の証言を収録。また、87名の被爆証言映像の撮影も行いました。これらの証言を集めるために、中学生、高校生などの若い世代が中心となり、インタビューを行いました。当初、被爆者の方々は、自分が体験した惨禍を思い出したくないと、証言することをためらっていました。しかし、若者たちの真摯で真剣な態度に、やがて被爆者の方々は、自分の体験を語るようになっていったのです。この取り組みは、若い世代への平和教育の重要な機会となりました。

ほかにも、長崎創価学会青年部として、”ピースウォーク “という教育活動を行っています。この活動は、子どもたちが親と一緒に被爆遺構や平和公園、長崎原爆資料館を訪れる機会を提供することを目的としています。また、大学生の有志が集まり、人類のゴミである核兵器をなくすため、まずは身近なゴミを無くそうと、長崎平和公園周辺の清掃活動も実施しています。

私の魂を揺さぶった被爆証言のひとつは、長崎で被爆された橋本トヨミさんのご証言です。1982年6月、橋本さんは、国連総会第2回軍縮特別総会に出席するためニューヨークを訪れました。その際、核兵器開発に携わった科学者たちと出会い、マサチューセッツ工科大学(MIT)のバーナード・T・フェルド教授に、アメリカ人を恨んでいるのかと問われ、橋本さんは、次のように答えました。 「それはそれは怨みました。こんなに苦しいことはないというくらい苦しみました。でも今は、どこの国の人にも、あなたたちアメリカ人にも、あんな思いはさせたくないと思って行動しとります」と。こうした被爆者の方達の思いに触れ、私も核兵器の廃絶を訴えるようになりました。

今日の若者たちは、広島と長崎の被爆者の高齢化のため、直接、被爆体験を聴くことができる最後の世代です。現在でも、核兵器の開発と使用によって引き起こされた、永続的な影響に苦しんでいる被害者がいます。私は世界中の若者と連帯し、(広島・長崎の)被爆者やグローバル・ヒバクシャの精神を受け継ぎ、継承していくために、周囲の人々との対話、長崎の若者たちとの取り組みを続けていきたいと思います。(原文へ

2026年NPT(核兵器不拡散条約)再検討会議第1回準備委員会の関連行事で、長崎県の髙橋光宣氏が講演した。タイトルは、「グローバルユースとの対話:被爆体験の継承」。 この関連行事は、核兵器廃絶国際キャンペーン(ICAN)、核戦争防止国際医師会議(IPPNW)、核時代平和財団(NAPF)、ニュークリア・ユリカ、リバース・ザ・トレンド、創価学会インタナショナル(SGI)、Youth for TPNWが共催した。

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ヘイトスピーチとジェノサイドの衝撃的な関連性

【東京INPS/UN News】

大量虐殺は銃弾やナタで始まるのではなく、ヘイトスピーチから始まる。ホロコーストはガス室から始まったのではなく、ヘイトスピーチから始まったのだ。1994年のルワンダにおけるツチ族に対する大量虐殺は、数十年にわたるヘイトスピーチが民族間の緊張を悪化させたことから始まった。ボスニア・ヘルツェゴビナにおけるスレブレニツァの虐殺は、党に支配されたメディア・チャンネルを通じて、ボスニアのイスラム教徒を悪者にする絶え間ない民族主義的プロパガンダから始まった。

近年、世界はいくつかの大量残虐行為を目撃してきた。これらの事件の多くで、ヘイトスピーチは「ジェノサイドを含む残虐犯罪の前兆」として認識されている。憎悪を広めるためにソーシャルメディアやデジタル・プラットフォームが使われるようになったのは比較的最近のことだが、政治的利益のために公論が武器化されるのは、残念ながら新しいことではない。歴史が示し続けているように、偽情報と結びついたヘイトスピーチは、汚名、差別、そして大規模な暴力につながる可能性がある。

The Shocking Link Between Hate Speech and Genocide/ UN Story

国連ジェノサイド防止特別顧問のアリス・ンデリトゥが、ヘイトスピーチが現実にもたらす影響と、今後の発生を防ぐために私たち全員ができることについて語った。(原文へ

INPS Japan

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カザフスタンの不朽の遺産: 核実験場から軍縮のリーダーへ

【アスタナINPS Japan/Jibek Joly(Silk Way)TV Channel=浅霧勝浩、クンサヤ・クルメット・ラキモヴァ】

32年前のこの日(1991年8月29日)、セミパラチンスク核実験場は当時ソ連の一部を構成していたカザフスタンで大統領令が出されたことで、モスクワのソビエト連邦政府の立場に反して、永久に閉鎖された。その後ソ連から独立したカザフスタンは、当時世界第4位の核戦力の全廃とロシアへの撤去を実施し、自らの意思で核兵器国から非核兵器国となった世界で最初の国となった。

The “Humanitarian Impact of Nuclear Weapons and the Central Asian Nuclear-Weapon-Free Zone” regional conference held in Astana on Aug 29, 2023. Filmed and edited by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan.

それから18年後の2009年、カザフスタンの主導で国連総会はこの核実験場が閉鎖された8月29日を「核実験に反対する国際デー」とする決議案を採択した。再び核兵器が使用される脅威が現実味を帯びている現在、果たして核なき世界を実現することは可能なのだろうか?核兵器の使用や核実験がもたらす脅威について私たちは何を知っておくべきなのだろうか?ジベク・ジョリ(シルクウェイ)テレビとINPSジャパンは、カリプベク・クユコフ氏と、今年の「核実験に反対する国際デー」を記念してカザフスタンの首都アスタナで開催された「核兵器の人道的影響と中央アジア非核兵器地帯」地域会議(カザフスタン外務省、赤十字国際委員会、同国NGOの国際安全保障政策センター、核兵器廃絶国際キャンペーンと創価学会インタナショナル(SGI)が共催)の参加者を取材した。

Kazakhstan’s First Deputy Minister of Foreign Affairs Kairat Umarov delivered a opening speech. Photo credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan.

地域会議では、開会の挨拶でカザフスタンのカイラト・ウマロフ第一外務副大臣は、核実験に反対する規範と核実験の防止は、核兵器のない世界の実現に向けた努力を進める上で不可欠であると強調した。

また、CISPアリムジャン・アフメートフ所長、赤十字国際委員会中央アジア地域のビルジャナ・ミロシェビッチ代表、寺崎広嗣SGI平和運動総局長が開会の辞を述べた。


午前中の、核兵器使用の「人道的影響」を検証するセッションでは、冒頭、核実験被害者の第3世代であるディミトリー・べセロフ氏が登壇し、核実験が世代を超えて人々の健康に甚大な悪影響を及ぼしてきた実態や、政府の努力にも関わらず被爆者の多くが未だに救済されていない社会状況について力強く証言した。

Credit: Jibek Joly (Silk Way) TV Channel

核兵器に断固反対する

米軍が日本の広島、長崎に原子爆弾を投下してから4年後の1949年8月29日、ソビエト連邦政府が今日のカザフスタン北東部に設置したセミパラチンスク核実験場(日本の四国或いはベルギーの大きさ)で初の核爆発実験が行われ、セミパラチンスク(現在のセメイ市)の住民をはじめすべてのカザフ人の生活が一変することとなった。カザフ人が伝統的に神聖と考えている大地で、実に、地上 25回、空中86 回を含む、456回のもの核実験が40年間に亘って繰り返され、風に乗って周辺に降り注いだ放射性降下物により、推定で150万人以上のカザフ人が影響を受けたとみられている。

Karipbek Kuyukov is an armless painter from Kazakhstan, and global antinuclear weapon testing & nonproliferation activist. Photo Credit: Jibek Joly TV Channel.

しかし核実験は今日まで被害者の生活に深刻な影響を及ぼしている。母親の胎内で被爆し両手がない状態で生まれた著名な画家カリプベク・クユコフ氏も、核実験場周辺の広大な地域で放射線に晒され、遺伝子レベルで引き起こされた多くの健康被害に苦しんできたひとりだ。クユコフ氏は核実験場の閉鎖を決めた大統領令に決定的な影響を与えたネバダ・セミパラチンスク運動に初期の段階から参加したほか、作品を通して核実験の恐ろしさを伝えている。クユコフ氏が筆を口や足の指を使って描く肖像画は、いずれも核実験を生き延びた被害者だ。「核実験で亡くなった方々に思いを馳せながら、自分に課した使命を果たせるよう、祈りながら絵を描いています。」とクユコフ氏は語った。

Dmitriy Vesselov, a third-generation victim of nuclear testing made a powerful testimony at the regional conference. Photo credit: Jibek Joly TV Channel.

地域会議で被爆証言をしたディミトリー・ヴェセロフ氏は、セミパラチンスク出身の被爆3世だ。祖母は胃がんで他界している。彼は鎖骨がないのが特徴の肩鎖関節異骨症を患っており、彼の手はわずかに筋肉と靭帯でのみつながっている状態で、本格的な作業ができない。また骨と頭蓋骨の発達にも異常があり、気管支肺系の病気や関節症にもかかりやすい。「私は頸椎の非癒合症で、直立の姿勢を長く続けていると、脳や神経末端に供給している血管が圧迫され始め、水平の姿勢をとる必要があります。自分の子供たちにこの病気で苦しんでほしくありません。このため、医学が飛躍的に発展して健康な子供が生まれる保証がない限り、私は意図的に子供を作らないことにしています。」とヴェセロフ氏は語った。

Nuclear explosion at Semipalatinsk Nuclear Test Site. Photo credit: Jibek Joly TV Channel.

40年に亘ってセミパラチンスク核実験場で爆発した核兵器の威力は、広島・長崎に投下された原爆の2500倍と推定されている。核対立により、核使用や核実験が及ぼした歴史的な悲劇を繰り返さないことと、今日の被害者への支援の重要性が、地域会議で議論された。

Mr. Hirotsugu Terasaki, Director General of Peace and Global Issues of SGI which co-organized the regional conference with Kazakh Ministry of Foreign Affairs, CISP, ICAN and ICRC to commemorate the International Day against Nuclear Testing at Kazakh Capital on Aug 29.Photo credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan.
Mr. Hirotsugu Terasaki, Director General of Peace and Global Issues of SGI which co-organized the regional conference with Kazakh Ministry of Foreign Affairs, CISP, ICAN and ICRC to commemorate the International Day against Nuclear Testing at Kazakh Capital on Aug 29.Photo credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan.

この地域会議を共催した創価学会インタナショナル(SGI)の寺崎広嗣平和運動総局長は、地域会議について、「核兵器の脅威というものがかつてなく高まっている中で、改めて核兵器のない世界へどのようなプロセスを進めることができるか。5か国の代表が集まって出発点となる新たな節目だと思っています。」と語った。

また、カザフスタン外務省との協力関係について、「SGIは広島・長崎の被爆経験を持つ日本に本部を置く国際団体ですが、カザフスタンとは核問題について様々な国際会議の場での接点ができ、この数年来、NPT(核不拡散条約)やTPNW(核兵器禁止条約)の場でサイドイベントを共催したり、様々な連携が実現しました。」と説明した。

Interview with Mr Hirotsugu Terasaki, Director General of the Soka Gakkai International (SGI). Filmed and edited by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS Japan.

また、被爆者支援の経験を持つ日本として、カザフスタンが核実験の被害者に対してどのような支援が可能かという質問に対して、「広島・長崎で起こった出来事の後、日本政府や国際社会の協力がどのような形で行われたかという日本の経験は、カザフスタンにとっても参考になる基準があるかと思います。しかし、一つ一つの科学的な根拠がどうしても要請されますので、そのプロセスを丁寧に進めながら、しかし、迅速に今苦しんでいる人たちに手当を国民の支持を得ながらどのようにして合理的な判断を進めることができるか、これは大いにチャレンジすべきだと思います。カザフスタンもその方向でチャレンジを進められるものと期待しています。」と語った。そして、地域会議でも議論された、核兵器の使用・実験による被害者への援助と環境修復とそのための国際協力を定めたTPNWの第6条と第7条の規定について、現在国際社会でこれらの規定を前進せるための議論が行われており、その作業部会の中心である議長にカザフスタンが就任していることを指摘したうえで、「その意味でも、カザフスタンの自国での挑戦が、国際社会の中でもその経験が生かされながら、相乗効果をあげていく方向で進むことを、私たちは全力で支援していきたいと考えています。」と語った。

ヴェセロフ氏は、カザフスタンでは核実験の被災者に対する国の支援として、国家から特別な医療保険や給付金が支給されているが、身体障がい者として認定されるか、放射線が原因の病気で亡くなった人の家族の一人のみが対象とされているため、彼のように核実験の影響を受けた犠牲者と認定されても、身体障害者として認定されなかった人々は支援の対象にならないなど、多くの核実験の被害者が支援を必ずしも受けられていない現状を訴えた。

ヴェセロフ氏は今後について、「私の苗字『ヴェセロフ』は『楽しい』という意味を持っています。こうした問題を抱えていても、人生は続くのですから、今後も絶望することなく、前を向いて生きていきます。」と語った。また、国際社会に対して訴えたいことはという質問に対して、「私の証言が核兵器の危険性を伝える実例として、そして、小型核兵器の使用や限定的な核戦争について語る人たちへの非難を込めた警鐘として活かされることを希望します。核兵器の被害者の願いは、恐ろしい惨劇が地球上のどこであっても二度と繰り返されないことです。」とヴェセロフ氏は語った。

The 2nd meeting of state parties to TPNW will take place at the United Nations Headquarters in New York between 27 November and 1 December this year.
The 2nd meeting of state parties to TPNW will take place at the United Nations Headquarters in New York between 27 November and 1 December this year.

昨年、カシム・ジョマルト・トカエフ大統領は「核爆発はカザフの国土に深刻な被害をもたらしました。このような悲劇は二度と起こしてはならなりません。わが国は核セキュリティの原則を堅持します。」と語った。地域会議の参加者は、カザフスタンが第3回TPNW締約国会議の議長に指名されたことに注目した。今回の地域会議に参加したセミパラチンスク(セメイ)条約加盟国は、11月27日から12月1日にかけてニューヨークの国連本部で開催される第2回TPNW締約国会合に、少なくともオブザーバーとして出席すること、また早い機会にTPNWに署名・批准することを通じ、中央アジア地域を代表して核軍縮への貢献に取り組むカザフスタンを支援するよう奨励された。(英語版へ

Jibek Joly Logo.

*Jibek Joly(SilkWay) TVチャンネル(カザフスタン共和国大統領テレビ・ラジオ複合体NJSCが所有。)は、2022年9月1日にカザフ語とロシア語で放送を開始。国内ではSilkWayTVチャンネルのファミリー向けエンターテイメント版としてカザフ語に吹き替えられた世界の映画、人気シリーズ、アニメ映画のほか、シルクウェイアーカイブからのベストプロジェクトも放送している。傘下のSilkWayTVチャンネルは同国初の国営衛星テレビチャンネルで3つの人工衛星(HotbIRD 13B、Galaxy 19、Measat 3A)を通じて4大陸118カ国に放送しており、現在の総視聴者数は3億人。同チャンネルはまた、カザフスタンと中央アジアに重点を置いた最新ニュースを5か国語(カザフ語、ロシア語、英語、キルギス語、ウズベク語)で毎日放送している。今回INPS Japanが共同取材した報道ニュースは、カザフ語版ロシア語版英語版が118カ国に放送された。

8月29日のイベントに関する共同報道は、トグジャン・イェッセンベイ元カザフスタン共和国大統領テレビ・ラジオ複合体(NJSC)国際関係部長の協力により実現した。

INPS Japan/Jibek Joly(Silk Way)TV Channel

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「核実験に反対する国際デー」記念行事を取材(2019)

近代のシルクロードはラオスに発展をもたらすか

【ビエンチャンIDN=パッタマ・ビライラート】

中国が建設した高速鉄道が2021年12月に開通したことで、ラオスはアジア全域の貿易と観光の機会に開かれた現代のシルクロード・プロジェクトに加わった。しかし、内陸国のラオスがその果実を十分に享受しているか国内では疑問視する声も少なくない。

「ラオス・中国鉄道が開通してから、ラオスへの観光客は増加しています。特にタイ人とベトナム人はラオスへの主要な旅行者であり、中国人は旅行やビジネスのためにラオスを訪れています。」と観光局職員のソムポン・タマヴォン氏はIDNの取材に対して語った。

しかし、ラオスのNGO職員サンフェット・マニヴォン氏はやや懐疑的だ。「中国人観光客がラオスに来ると、中国人が経営するホテルに泊まり、レストランで食事をする。その結果、収入はラオスの人々には行き渡らないのです」と彼は苦言を呈した。

Map of Laos
Map of Laos

「また、中国国境の街ボーテンのように、中国人がカジノやホテルを所有している地域では、人民元が主要な取引通貨となっている。この問題を解決するために、ラオスと中国は今年1月、以前のように他の通貨を経由して両替するのではなく、ラオス・キップと中国元の直接交換を促進することで合意した。

高速鉄道は外国からの乗客を連れてくるだけではなく、ラオス国民の旅行時間も短縮した。これまでタイ国境部の一部を除き鉄道が存在しなかったラオス人の間では、列車旅行に対する憧れが強い。

「以前はヴァンヴィエンまでバスで4時間かかりましたが、今はビエンチャンから電車で55分で着きます。」と、国境を越えてタイのウドンタニで学ぶ看護学生3年生のヴィライポン・ポムチャン氏はIDNの取材に対して語った。彼女の唯一の不満は、列車の出発45分前にしか切符の販売が開始されないため、駅で並ばなければならないことだった。

この鉄道は、中国の習近平国家主席が2013年に打ち出した「一帯一路構想(BRI)」の一環で、東アジアから東南アジア、中央アジア、中東、欧州を陸上と海上の2ルートでつなぐものだ。全体で147カ国が参加している。

2017年5月、ラオスと中国は7つの協力分野(インフラ、農業、能力開発、工業団地、文化・観光、金融・銀行、マーケティング)に焦点を当てた「一帯一路マスタープラン」に署名した。

「ラオス・中国鉄道」は両国間の一帯一路の協力の中では最も優先順位が高い。この鉄道は全長1035キロメートル、時速160キロでラオスの首都ビエンチャンと中国南西部雲南州の州都昆明をつないでいる。かたや同線は中国の全国鉄道網に接続し、もう一方の端では(メコン川の橋を渡る鉄道路線が確立された後)汎アジア鉄道網の一環としてタイやマレーシア、シンガポールに接続する。

ラオス国内の線路は全長422.4キロメートルで、北方の国境の街ボーテンとルアンプラバン、人気の観光地ヴァンヴィエン、首都のビエンチャンを接続する。LCRは、市場や資源へのアクセスを改善し、雇用を創出し、貧困を削減することで、地域に経済・社会的発展をもたらすものと期待されている。

中国ラオス鉄道を有する中国鉄路昆明局集団とラオス中国鉄路によると、2023年4月までにこの国境を越える鉄道の旅客輸送量は1443万人、貨物輸送量は1880万トンに達したという。今日、地元と外国の乗客が席を埋めている。

しかし、プロジェクトによってラオスの債務負担が増えたのではないかという国内外からの批判は絶えない。「東南アジアの水力電力源」になることを目指しているラオスは、電源開発のために多額の債務を抱えており、この鉄道プロジェクトはさらに60億ドルの借金を増やしたと推定されている。

この債務の半額は中国向けで、米国の研究機関「エイドデータ」によると、国営企業による債務としてバランスシート外の扱いになっているものも含めると、ラオスの対中国債務はGDPの65%にも達し、世界的にもかなり高いレベルになっているという。

「ラオスの債務は重く、自らに有利なように交渉を進められていない。一部の果物や野菜、その他のモノが中国から鉄道でラオスに流入している程度です。」と先述のNGO職員のマニヴォン氏はIDNの取材に対して語った。

他方、世界銀行が2023年5月に発表した報告書によると、ラオス-中国間の鉄道路線と新しいドライポートにより、乗客の移動と貿易の流れが促進され、天然資源の輸入が産業活動を活発化させたが、マクロ経済の不安定さと外部要因によって回復が遅れているという。

多額の対外債務を返済する必要性、輸入物価の高騰、外貨の制限により、キップの価値は急落し、高インフレを引き起こし、収入・消費・投資の低迷を招いている。

ラオスの民間組織「中小企業センター」の共同創設者ノイ・マリワン氏は、「熟練労働者の多くがラオスを離れてタイなどで働いています。また、ラオスで設立された多くの外国企業が自国人の専門家を雇用しています。」と指摘したうえで、「中国系農場の非熟練労働に関してすら中国人が雇用されています。ラオスの労働法では、このような場合ラオス人を雇用しなくてはならないと定めていますが、外国企業はラオス人労働者はレベルが低いからと主張しているのです。」と語った。

マニヴォン氏は、「ラオスで中国人はしばしばある種の特権を与えられていると言って差し支えありません。中国人男性が土地を取得する目的でラオス人女性と結婚しているケースもあります。中国系経営者がラオスのバナナ農園に投資し、現在、6万6000エーカーもの農場があります。バナナはラオス・中国鉄道で中国に送られますが、農場で働くラオス人やその家族は残留駆除剤の被害にさらされています。」と付け加えた。

マリワン氏は、「列車の運行により農業分野の中小企業の数が増えました。しかし、それらは資本がないためラオス人が所有しているのではなく、中国の投資家が所有しています。ラオス人にとって、中国人と共同投資できる貴重な機会なのです。」と語った。

マリワン氏はまた、「コロナ禍以前の経済はそれほど悪くなかったが、債務返済時期が訪れてキップの価値が下がり、ラオス経済は脆弱になっています。」と指摘した。加えて、鉄道網によって中小企業が利益を得られるかどうかについても懐疑的な見方を示した。

「農業に携わるラオスの中小企業の多くは、地元市場で製品を販売しています。」とマリワン氏は指摘した。「彼らはまた、列車で製品を輸出したいと考えています、政府の支援は一部の中小企業にしか利用できないため、資本が不足しています。」

ラオスの別の中小企業経営者バウンサビー・インサヴォン氏(仮名)も同じ見方だ。「現在、ラオスの生活費はとても高い。世界銀行やアジア開発銀行が政府を通じて借款をしているが、資金を受けられるだけの条件を満たせる者は多くない。」

ラオス国立大学の学者ホンマラ・フェンシサナヴォン氏は鉄道網が長期的にラオスに経済発展をもたらす可能性についてより楽観的だ。「ラオス・中国鉄道がラオスにもたらすものはあります。」と語るフェンシサナヴォン氏は、中国から靴やかばん、化粧品などを鉄道で取り寄せてオンラインで販売する学生らの存在を指摘した。

China in Red, the members of the Asian Infrastructure Investment Bank in orange. The proposed corridors and in black (Land Silk Road), and blue (Maritime Silk Road)./ By Lommes - Own work, CC BY-SA 4.0
China in Red, the members of the Asian Infrastructure Investment Bank in orange. The proposed corridors and in black (Land Silk Road), and blue (Maritime Silk Road)./ By Lommes – Own work, CC BY-SA 4.0

「加えて、中国語を話すスタッフへの需要も高いです。若者たちは、働く意志さえあれば大学の学位など必要なく、中国語を習うこともできます。中国語を習得したら、ラオスの中国系企業に雇ってもらいやすくなるのです。」

「農業分野への投資と成長を通じて、ラオスが自国を維持する希望があることは心強い。ラオス-中国間の鉄道は、中国への輸出を増やす貴重な機会を提供してくれます」とマリワン氏は指摘した。しかし、そのためにはラオスの考え方を変える必要がある、と彼女は主張する。

「ラオス政府と国民は、どのような製品が求められているかを知り、その製品の栽培と販売に投資する必要がある。この方向で努力を続けることで、ラオスは長期的な持続可能性と繁栄を達成することができます」と、マリワン氏は希望に満ちた声で語った。(原文へ

INPS Japan

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核武装はソウルにとって得策ではないかもしれない

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

この記事は、2023年5月5日に「ジャパン・タイムズ」紙に初出掲載され、許可を得て再掲載したものです。

核武装は、韓国の世界的地位を高めるというよりむしろ傷つける

【Global Outlook=ラメッシュ・タクール 

2023年5月2日、ペンタゴンの報道官、パット・ライダー准将は、米国のオハイオ級弾道核ミサイル搭載潜水艦が1980年代以降初めて韓国に寄港することを認めた。

この寄港は、米国のジョー・バイデン大統領と韓国の尹錫悦(ユン・ソンニョル)大統領が4月26日、両国の2国間同盟70周年を祝って調印したワシントン宣言に基づく拡大抑止強化の一環である。

この合意は、米国が韓国への「戦略資産の定期的な展開を通じて、抑止力をより可視化する」ことと、新たな核協議グループを創設し、ワシントンが朝鮮半島における脅威事態にどのように備えるかについて、韓国からのインプット拡大を促すことを定めている。これは、グローバルな核不拡散体制の枠内にとどまるために韓国が要求し、支払われた対価である。(

2023年1月、尹は現職の韓国大統領として初めて、韓国が自前の核兵器を持つ可能性を提起した。世論調査では、独自の核抑止力を持つことに賛成する韓国国民の割合が、2016年に60%、2022年に71%、そして2023年1月にはほぼ77%と、上昇の一途をたどっている。これは米国の核兵器の韓国配備より好ましいと考えられ、国民は、米国との同盟、中国との関係、北朝鮮非核化の見通しに生じ得る悪影響については気にしていなかった。

米国による核の傘の信頼性が疑問視されていることに加え、地政学的圧力が高まっていることが、核武装論の魅力を高めている。2022年10月にウラジーミル・プーチン大統領が口にした、世界は第二次世界大戦以来の最も危険な10年に直面しているという警告に異論を唱えるのは難しい。バイデンも同月、核のアルマゲドンについて警告した。一方、中国は着実に核兵器を増強し、その数は世界第3位の410発に達している。それでも、それぞれ5,000発を超えるロシアと米国にははるかに及ばない。

地域で高まるナショナリズム、海洋領土紛争、北朝鮮の核による反抗、米国の抑止力の信頼性に対する疑念は、核武装論の強力な促進剤となっている。ロシアのウクライナ侵攻、一連の核の威嚇、イランの核兵器開発再開を示唆する兆候、相次ぐ北朝鮮のミサイル実験は、「世界最大の火薬樽」としての朝鮮半島に関する懸念をいっそう高めるものにほかならない。

韓国が核武装するための技術的および物質的能力を有することを真に疑うものはいない。国立ソウル大学の原子核工学者、徐鈞烈(ソ・ギュンリョル)教授は、2017年に「ニューヨーク・タイムズ」紙に対し、ソウルはそうと決めれば6カ月で核兵器を製造することができると述べた。唯一の深刻なハードルは、政権の政治的意志だという。彼以外のほとんどの人は、それには3~5年必要だと考えている。

法的な道筋は、例えば北朝鮮が7回目の核実験を行い、ソウルがこれをきっかけとして核不拡散条約(NPT)からの脱退を宣言した場合、容易になるだろう。第10条は、「・・・・・・異常な事態が自国の至高の利益を危うくしている」場合に締約国が条約から脱退することを認めている。ソウルにとって重要な国のうち、この理由に本気で反論する国がどれだけあるだろうか?

日本、EU、米国は、核開発に踏み切った韓国に制裁を科すことはないと思われる。北朝鮮が戦術核弾頭、ICBM能力、水中核攻撃ドローンを獲得し、米中間の緊張が高まる状況において、米国人は、韓国の核抑止力を米国への直接核攻撃のリスクを低減するものと見なすようにさえなるかもしれない。中国に関するソウルとワシントンの政策の食い違いや、世界秩序を担う米国人の意志も能力も低下しているという証拠は、さらなる誘因をもたらす。しかし、韓国が核武装することによって、米国が同盟を完全解消したいという衝動を募らせたとしたら、ソウルはそれで落ち着いていられるのだろうか?

2022年の世論調査は、独自の抑止力を支持する理由について詳細に尋ねた。韓国国民は、北朝鮮を現在最大の脅威と見なしているが、10年後には中国の方が大きな脅威になると考えている。大多数の人が核兵器を望む理由は、北朝鮮以外の脅威に対する防衛のため(39%)、次いで国家の威信向上のため(26%)、北朝鮮の脅威に対抗するため(23%)、そして米国の信頼性に対する疑念のため(10%)だった。

これらの信念の一つ一つが争点となる。韓国が核武装すれば地域に核軍拡競争が勃発し、歯止めのきかないエスカレーションサイクル、誤算、誤解、あるいは事故によって破滅のリスクが劇的に高まるだろう。戦時下の苦い記憶や根強い不信の歴史を背景に持つ東アジアにとって、最も必要ないものはソウルと東京の核をめぐる緊張であり、それはすでに極めて不安定な状態にある地政学的緊張をさらに高めるものである。

韓国が核武装すれば、北朝鮮を非核化しようとする全ての努力が台無しになり、米国との同盟も破綻する恐れがあり、ソウルは中国、北朝鮮、ロシアの足並みを揃えた圧力に対していっそう脆弱になるだろう。それは、ソウルの世界的地位を高めるというよりむしろ傷つける可能性が高い。文在寅(ムン・ジェイン)前大統領の国家安全保障問題特別顧問を務めた文正仁(ムン・ジョンイン)は、さらに踏み込み、韓国の民生原子力産業が米国の1954年原子力法に基づく「123協定」にいかに大きく依存しているかを指摘する。

ラケッシュ・スードは、マンモハン・シン元インド首相の核不拡散・軍縮担当特使を務めた。彼は2022年7月、戸田記念国際平和研究所に寄稿した意見記事において、今日最も喫緊の核政策課題は78年間続いてきた核兵器使用のタブーが破られないようにすることだと論じた。2023年2月、ワシントンに本拠を置く軍備管理協会のダリル・キンボール会長は、その目標に向けたいくつかのステップを説明した。2023年4月、創価学会インタナショナルの池田大作会長は、5月に広島で開催されるG7サミットに対して「核兵器の先制不使用の誓約に関する協議を主導」するよう提言を発表した。

一方、ワシントン宣言は、韓国で盛り上がる核武装論に待ったをかけた。バイデンは、ソウルに対する米国のコミットメントは「揺るぎなく、強固」であり、米国は核兵器も含む全ての能力を用いて拡大抑止を支えると繰り返した。それに対しソウルは、「米国の拡大抑止の約束を全面的に信じ、米国の核抑止力への揺るぎない信頼の重要性、必要性、利益を認識する」と表明した。また、「グローバルな不拡散体制の基礎である」NPTへのコミットメント、そして原子力の平和利用に関する2国間協定へのコミットメントを再確認した。

しかし、2024年の大統領選挙でドナルド・トランプが米国の大統領に再び選ばれたら、韓国は再び神経を尖らせ、エスカレーションサイクルが再び始まるだろう。

ラメッシュ・タクールは、元国連事務次長補。現在は、オーストラリア国立大学クロフォード公共政策大学院名誉教授、同大学の核不拡散・軍縮センター長、および戸田記念国際平和研究所の上級研究員を務める。「The Nuclear Ban Treaty :A Transformational Reframing of the Global Nuclear Order」の編者。

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市民社会がパリ協定の履行に懸念示す

【ボン/ニューデリーIDN=リタ・ジョシ】

125以上の市民団体が、世界中の地域社会や生態系が甚大な被害を被っている一方で、大手汚染物質排出者がネット・ゼロという欺瞞に満ちた主張を隠れ蓑に排出を続けていることに懸念を表明した。化石燃料から公正かつ平等な形で段階的に撤退することに始まり、公正な負担という原則に則って、現実的かつ大規模で緊急の削減を実現することを求めた。

2015 United Nations Climate Change Conference/ COP21
2015 United Nations Climate Change Conference/ COP21

メキシコのETCグループのシルビア・リベイロ氏は、「パリ協定の下でのメカニズムが、直接空気回収や海洋施肥といった海洋環境を変化させる技術などの気候工学的(ジオエンジニアリング:「人為的な気候変動の対策として行う意図的な惑星環境の大規模改変)手法を受け入れねばならないのは愚かなことだ。」と語った。

リベイロ氏は、これらの技術が大気中の炭素を効果的かつ恒久的に除去できるという証拠はないと考えている。さらに重要なことは、大汚染企業が排出削減を避けるための口実として利用される可能性があるということだ。多くの国連機関がこれらの技術を禁止するモラトリアムを設定しているため、国連気候変動枠組条約(UNFCC)はその決定を尊重する必要がある。

世界中で気候変動による影響がますます頻発し、激しくなっている今、気候変動関連の行動において時間の浪費は許されない。欺瞞に満ちたネット・ゼロの主張のもと、大口汚染者は排出を続け、地域社会や生態系は大きな被害を被っている。公正かつ公平な化石燃料の段階的な使用停止から始め、フェア・シェアの原則に沿って、現実的かつ深く、緊急に排出量を削減する必要がある。

TOM B.K. GOLDTOOTH

先住民族環境ネットワークのトム・ゴールドトゥース代表は、気候変動の影響緩和についてはグローバルな化石燃料からの脱却がまず優先されねばならないと語った。炭素市場やカーボンオフセット、カーボンプライシング、炭素除去などは、不当に大きな被害を受けている先住民族にとっては不十分だと彼は主張した。

ゴールドトゥース代表によると、こうした戦略は過去20年間、権利侵害や土地収奪、さらに不釣り合いな影響をもたらしただけだという。これらの戦略によって、権利の侵害や土地の奪取、さらなる不当な影響がこの20年間にもたらされてきた。したがって、彼はパリ協定第6条4項の監督機関に対し、炭素市場、オフセット、カーボンプライシングに終止符を打つよう求める彼の訴えを認めるよう求めている。

さらなる炭素市場やカーボンオフセット、炭素除去を解決策とみなしてはならない。先住民族は、これらによる権利の侵害や土地の奪取、さらなる不当な影響をこの20年間経験してきた。パリ協定第6条4項の監督機関は、炭素市場やカーボンオフセット、カーボンプライシングの時代を終わらせるべきとの我々の要求に耳を傾けねばならない。母なる大地は、化石燃料を地球に留めておくことを望んでいるのだ。

地球の友インターナショナルのリセ・マッソン氏は、「炭素除去をめぐる条項を検討している国連機関は、産業界による影響を受けてはならず、土地を基盤にした技術的な炭素除去の形態といった危険な方向に道を開くものであってはならない。」と語った。

「科学的な証拠が示しているものは明らかです。つまり、オフセットは解決策にはならないということです。オフセットは、何よりもまず、世界の開発途上国、小規模農民、先住民に害を及ぼします。時間を無駄にするのをやめ、緊急かつ大胆な、そして現実的な排出削減に取り組もうではありませんか。」とマッソン氏は付け加えた。

SDGs Goal No. 13
SDGs Goal No. 13

気候正義を要求するグローバル・キャンペーンのグローバル・コーディネーターであるギャディル・ラバデンツ氏は、直接的かつ明確な利益対立の問題を指摘した。すなわち、長年にわたって気候変動を引き起こし、対策に向けた迅速な行動を妨げてきた産業が、意思決定プロセスで役割を果たせるようにしている問題である。

監督機関による協議プロセスによって、市場戦略を指向する関係者や二酸化炭素除去(CDR)産業に、彼らが望むアジェンダをさらに強化する機会が与えられ、その結果、手続きそのものを毀損する事態となっている。UNFCCCが、CDR産業によるこの不規則な権力を放置することなく、真に民衆のための成果をもたらすために、草の根の選択に価値を置くことが不可欠である。

「気候正義を要求するグローバル・キャンペーン」のラチター・グプタ氏によるパリ協定第6条4項による監督機関委員に対する公開書簡はこちらから。(原文へ

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「虹の戦士」号、太平洋で国際司法裁判所に提出する証拠集め

【スバ(フィジー)IDN=セラ・セフェティ】

国際環境運動団体「グリーンピース」の「虹の戦士」号はいま、太平洋を航海している。「世界法廷」とも呼ばれる国際司法裁判所(ICJ)が来年ハーグで開く歴史的な公聴会に向けて証拠を集めるため各地に寄港することが目的だ。

「虹の戦士」のスタッフと乗組員に、太平洋の輝くばかりに青い海を航海してきた「パシフィカ」の活動家が加わった。気候変動問題をICJに持ち込むことが目的だ。今行われている6週間の航海は7月31日にオーストラリアのケアンズを出発し、バヌアツ・ツバル・フィジーに寄港する予定だ。

現在、船はスバに停泊している。グリーンピース豪州支部の太平洋評議会メンバーであるカトリーナ・ブロック氏は、「この航海の間に私たちがやりたいことは、気候問題に関わる世界各地のリーダーらにその経験を語り共有してもらうことだ。なぜなら、気候変動に関する経験は世界各地で違っているかもしれないからだ。」と語った。

グリーンピースのこの象徴的なキャンペーン船のスタッフやボランティアたちは、各寄港地で地元の人々、とりわけ若者を歓迎し、彼らの活動内容や、気候変動によって多くの問題に直面しているこの地域の手つかずの環境を守るために、気候正義キャンペーンがなぜ重要なのかについて、キャンペーンスタッフと話をしている。

ブロック氏は、「皆が同じ闘いをしている。だから、(豪州トレス海峡の島の先住民族である)アンクル・パバイとアンクル・ポールとともにバヌアツまでやってきて、同じように政府に責任を取らせようとしているフィリピンの活動家らと合流したのだ」と話した。

自らの土地に先祖が6万5000年も住み続けてきたというアンクル・ポールは「もし我々が気候難民になったら、家や地域、文化、経験、アイデンティティのすべてを失ってしまう。」と語った。「私たちは自分たちの物語を守り、語り継ぐことはできますが、国がなくなってしまうので、国と国とのつながりはなくなってしまいます。手遅れになる前に、自分のコミュニティとすべてのオーストラリア人を守りたいからです。」と語った。

トレス海峡の先住民族グダ・マルイリガルの2人のリーダーは、気候変動から自分たちの島を守らなかったとしてオーストラリア政府を提訴したオーストラリア気候訴訟の原告である。彼らは、自分たちの政府に責任を負わせるための活動家として、他の太平洋島嶼国の人々を訓練している。

Photo: The UN General Assembly Hall. Credit: Manuel Elias/UN.
Photo: The UN General Assembly Hall. Credit: Manuel Elias/UN.

国連総会は3月29日、気候変動に関連した国連加盟国の義務についてICJに勧告的意見を求める決議を全会一致で採択した。この意見は、気候変動とその影響、とりわけ脆弱な国々(やその市民)の権利と利益に関連して諸国にいかなる法的義務があるかを明確にすることを目的としたものだ。国連総会が全会一致でICJに勧告的意見を求めるのは史上初のことだ。

決議の背後には若者たちの活動があった。南太平洋大学バヌアツ校の法学生が運動を始め、国連への提案をバヌアツ政府に提出させることに成功した。太平洋諸国が主導したこの決議は「気候変動のターニングポイント」を画し、運動を主導した太平洋の若者にとっての勝利だとして歓迎された。

ICJは国連の基本的な法的機関で、諸国間の法的紛争を解決することを任務とし、一般的な事案と勧告的意見の要請の二種類の審理を行う。

「このICJ提訴の一環として、気候変動が太平洋に与える影響についての証言を集めている。地域の人々や活動のリーダーたちに働きかけて、その経験を共有し、地域の人々を訓練することに取り組んでいます。」とブロック氏は語った。

「虹の戦士」号はその大胆な活動と恐れを知らぬ運動によって知られる。1978年以来世界の海を航海し、さまざまな環境破壊者や汚染者と闘ってきた。1985年、初代の「虹の戦士」は、おそらくはフランスの治安当局によるものと見られる爆破テロによって、ニュージーランド・オークランドの港に沈められた。船とその乗組員が、フランスが太平洋で行っていた核実験に反対する大胆不敵な活動を繰り広げていたからだ。

現在の「虹の戦士」号は、インド・チリ・南アフリカ・オーストラリア・フィジーなど各国からの乗組員を持つ最新の船舶である。今週、彼らは、停泊地の若者や子どもたちに対して(環境破壊の)経験を伝えている。太平洋各地の人々から聞いた多くの証言もまた、彼らの闘いを力づけている。

ブロック氏によれば、島から島へと移動しながら、共有された話はトラウマと喪失感に満ちていたという。「私たちはバヌアツにいたのですが、サイクロンの後、コミュニティとして頼りにしていた漢方薬や植物をたくさん失ったことがどのようなことだったのか、そのことが彼女たちにとってどのような意味を持つのか、なぜ西洋の薬局では代用できないのか、といった経験を何人かの女性が話してくれました。」

「虹の戦士」の活動家たちは、失われつつある土地や墓地を見せてもらい、インパクトを与えるだろうと思われる多くの話を集めた。フィジーに停泊している間、学生や地域の人々は、船上でガイドツアーを行ない、公海をどのように航行するかなど、彼らの活動について説明を受けた。

そうしたグループの一つが、ナブアのバシストムニ小学校の児童や先生たちだった。彼らは「虹の戦士」の活動について知り、興奮していた。気候変動や地球温暖化について学ぶことはカリキュラムの一部になっているが、「『気候問題の戦士』たちが実際にどういうものか子どもたちに見てもらうことは大事だし、子どもたちが地域社会に戻ってから行動に移ってくれればと思います。」と先生たちは語った。

フィジーの活動家であり、地元の気候正義作業部会の中心人物あるアニ・ツイサウサウ氏にとって、こうした活動に従事するのは個人的な動機からだった。「私は常日ごろから父親の島に行っているのですが、過去と今を比べてみて、その差は歴然です。」と語る。「かつては泳げた場所も今は汚染されています。そしてもちろん海水面は上昇しています。美しい砂浜や、私が若いときに経験していたものを知らないまま子どもたちに大きくなってほしくないのです。」とツイサウサウ氏は語った。

SDGs Goal No. 13

「そのためには、発想の転換を図らねばなりません。『虹の戦士』号に乗ることは最高の機会です。太平洋で何が起きているのか、そしてそれが身近で起きていることとどう関係しているのか。そういうことに耳を傾けることができるのです。」とツイサウサウ氏は語った。

「虹の戦士」号が尋ねて回っている話には、強烈なストーリーもあり、気候変動の影響が緩和されたという話もあるが、文化や土地を喪失したという話もある。ICJで勝利を得るにあたって、そうした証言が役に立つものと彼らは考えている。

バロック氏は、5年前に「虹の戦士」号で活動し始めた時、事実を積み重ねることが発想の転換を図るうえで重要だと考えていた。「しかし今は、事実も重要ではあるが、人々の心を動かし行動に導くようなストーリーが不可欠であると考えるようになりました。」と語った。

「虹の戦士」号は8月15日、スバを出港し、ツバルとバヌアツを経由してオーストラリアに戻る予定だ。(原文へ

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【国連IPS=タリフ・ディーン

1988年に傭兵団がモルディブ政府の転覆を試みた直後、私はモルディブの外交官に、彼の国の「常備軍(Standing Army)」の戦力について尋ねた。その外交官は「常備軍?(=直訳で『立ったまま』の軍隊)?」と驚いた様子で尋ね、半ば冗談めかして「私たちには『座ったまま(Sitting)』の軍隊すらありませんよ」と答えた。

当時の人口約25万人のモルディブ共和国は、戦闘機、戦闘ヘリコプター、戦艦、ミサイル、戦車のいずれも持っていない国の一つであったため、傭兵やフリーランスの軍事冒険家に介入されやすい環境にあった。その結果、この島嶼国の脆弱な防衛体制は、1979年と88年の2回にわたって、政権の転覆を試みる傭兵や賞金稼ぎを引き寄せることとなった。

UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building/ Katsuhiro Asagiri

これらの試みはいずれも失敗に終わったが、モルディブはその後も常備軍を持たない防衛体制の構築を諦めなかった。モルディブは、世界の軍事的に脆弱な小国を守るための安全保障の傘を国連に求める提案を行い、また1989年の「傭兵の募集、使用、資金供与、訓練を禁止する条約」という傭兵を非合法化するための国際条約も支持した。

米国は傭兵を「ソルジャー・オブ・フォーチュン(個人的な利益のため、あるいは単に冒険心から、軍隊に入ったり危険な行為を行ったりする人間)」と呼ぶ。これは広く流通している雑誌のタイトルでもあり、副題は「プロフェッショナル・アドベンチャラーズのジャーナル」となっている。

こうした傭兵の冒険や災難は、『戦争の犬たち』、『太陽の涙』、『ワイルド・ギース』、『エクスペンダブルズ』、『ブラッド・ダイヤモンド』など、いくつかのハリウッド映画でも描かれてきた。

ロシアのワグネルグループが世界の新聞の見出しを飾った際、それはウクライナで戦う私設の傭兵グループとして説明された。『ニューヨーク・タイムズ』は6月30日に、ワグネルグループがアフリカの大統領に警備を提供し、独裁者を支持し、反乱を暴力で鎮圧し、拷問や市民の殺害などの非人道的な行為を行ったと報じた。

Map showing the PMC Wagner's brief mutiny during June 24, 2023./By Rr016 - Own work, derived from European Russia laea location map (Crimea disputed).svg by NordNordWest, CC BY-SA 4.0
Map showing the PMC Wagner’s brief mutiny during June 24, 2023./By Rr016 – Own work, derived from European Russia laea location map (Crimea disputed).svg by NordNordWest, CC BY-SA 4.0

しかし、ロシア本国におけるワグネルによるクーデター未遂は、一時的にこの民間軍事組織自体の存立さえも脅かした。この時、傭兵に依存しているあるアフリカの大統領の軍事顧問は、名前のワグネルをドイツの作曲家リヒャルト・ワーグナーに暗に結びつけ、「それがワーグナーではなくなったら、ベートーヴェンやモーツァルトでも送ってくれてかまいません。どちらでも受け入れます。」と語った。

7月14日のCNNの報道によると、クレムリンの情報筋は、ワグネルグループは先月ロシアのウラジーミル・プーチン大統領に対する未遂に終わった反乱を率いたが、法的実体として存在しなかったし、その法的地位はさらに検討される必要があると述べた。

 ロシアのドミトリー・ペスコフ大統領報道官は、「ロシアには民間軍事会社に関する法律がないため、ワグネルは法的には『存在しない』。ワグネルのような企業の地位は『かなり複雑』で調査する必要がある。」と語った。

ペスコフ報道官は、6月に反乱が頓挫した数日後に行われたとされる、ワグネル代表のエフゲニー・プリゴジンとプーチン大統領の会談について、それ以上の詳細を明らかにすることを拒否した。

ワグネルグループはウクライナ以外にも、中央アフリカ共和国、マリ、シリア、イエメン、イラク、リビアで戦っている。シリアでは、内戦に苦しむバシャール・アル=アサド大統領に警備を提供するスラヴォニアコープスという準軍事組織があったが、後にワグネルグループがその役割を引き継いだ。

マリ共和国では、暫定政府の転覆を企てる武装集団に対抗するため1500人以上のワグネル兵が戦っている。

皮肉なことに、かつてイラク占領時に民間軍事会社「ブラックウォーターUSA」を利用した米国は、傭兵を派遣しているアフリカのいくつかの国に制裁を課している。

The official State Department photo for Secretary of State Antony J. Blinken, taken at the U.S. Department of State in Washington, D.C., on February 9, 2021. / Public Domain]By U.S. Department of State, Public Domain
The official State Department photo for Secretary of State Antony J. Blinken, taken at the U.S. Department of State in Washington, D.C., on February 9, 2021. / Public Domain]By U.S. Department of State, Public Domain

アントニー・J・ブリンケン米国務長官は先週、米国が中央アフリカ共和国の複数の団体に対し、ワグネルグループとして知られる多国籍犯罪組織とのつながりや、「同国の天然資源の不正取引を通じて、民主的プロセスと制度を弱体化させる活動に関与している」として制裁を科すと発表した。

ブリンケン国務長官はさらに、「マリでワグネルの幹部を務めていたロシア人1名を指名手配している。ワグネルはマリでの事業を、グループとそのオーナーであるエフゲニー・プリゴジンの収益を得るためと、ウクライナでの敵対行為への関与を進めるための武器や装備を調達するために利用してきた。」と語った。

米国はさらに、サブサハラアフリカの金産業に焦点を当てた新たなビジネスリスク勧告を発行した。具体的には、ワグナルなどの非合法勢力が、いかにこの資源を悪用して収入を得、地域全体に紛争や腐敗、その他の害悪をまき散らしているかを強調している。

「ワグネルが活動してきたあらゆる場所で、死と破壊が後を絶たず、米国はワグネルの責任を追及するための行動を取り続ける。」とブリンケン国務長官は語った。

サンフランシスコ大学のスティーブン・ズーンズ教授(政治学・国際学)はIPSの取材に対して、「米国が傭兵の使用に反対するリーダーシップをとっていることは確かに良いことだ。」と語った。

ジョー・バイデン上院議員(当時)が強く支持したイラク戦争では、ブラックウォーター・グループの傭兵が多用された。同様に、冷戦時代、中央情報局(CIA)はラテンアメリカ、東南アジア、サブサハラアフリカでの軍事作戦を支援するために傭兵を使った。

ズーンズ教授は、「ワグネルグループを対象とするこのような行動が、はたして米国の政策転換を示すものなのか、それとも単に親露組織を罰する手段なのかは、今後慎重に見極めていく必要がある。」と語った。

拷問被害者センター代表兼CEOのサイモン・アダムス博士は、「かつて反植民地闘争を抑え込もうとしたことから、冷戦期のラテンアメリカやアフリカにおける残虐行為に至るまで、歴史上、大国はしばしば傭兵を使ってきました。何も新しいことはありません。しかし、近年の大きな変化は、国際社会が、国際人道法の枠外で活動し、しばしば人権侵害を横行させる、こうした傭兵や施設軍隊に対して、より厳しい態度をとるようになったことだと思います。また、最近では、後ろ盾となっている国が、彼らの行動に対する責任を否定することが難しくなっています。」と指摘した。

「ワグネルグループは、ウクライナ、中央アフリカ共和国、その他多くの場所で数々の残虐行為に関与してきました。彼らはこうした非難に値します。今の課題は、単に制裁を加えるだけでなく、国際法の下で戦争犯罪人の責任を追及することです。そしてより大きな課題は、他の大国が、次に自分たちの党派的利益に都合のよいときに、このような極悪非道な行為に手を染めないようにすることです。」とアダムズ博士は強調した。

一方、防衛大出版局の記事によると、私設軍隊はグローバルな規模で巨大ビジネスとなっている。この非合法市場に何十億ドルが流れ込んでいるのか、本当のところは誰も知らない。

Wagner Group mercenaries deployed in the Central African Republic/ By Corbeau News Centrafrique, CC BY-SA 4.0
Wagner Group mercenaries deployed in the Central African Republic/ By Corbeau News Centrafrique, CC BY-SA 4.0

「私たちが知っているのは、このビジネスが活況を呈しているということです。近年、イエメン、ナイジェリア、ウクライナ、シリア、イラクで傭兵の活動が活発になっています。こうした営利目的の戦士の中には、現地の正規軍を凌駕し、シリアでの戦いが示すように、米軍の最精鋭部隊に立ち向かえる者さえいます。」とアダムス博士は語った。

中東には傭兵があふれている。クルディスタンは、クルド人民兵組織や、油田利権を守る石油会社、あるいはテロリストを掃討したい側で仕事を探す傭兵たちの巣窟だという。

「冒険心がある人もいれば、民間生活が無意味だと感じた元アメリカ軍の退役軍人もいる。クルディスタンの首都アルビルは、密輸業者や雇われの銃を求める人々で溢れており、映画『スター・ウォーズ』に登場する惑星タトゥイーンのバーを彷彿とさせる傭兵サービスの非公式市場となっている。」(原文へ)

INPS Japan/ IPS UN Bureau Report

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気候問題は、戦闘という軍の仕事の妨げではなく、核心である

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

この記事は、2023年4月24日に「The Conversation」に初出掲載され、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスに基づき許可を得て再掲載したものです。

【Global Outlook=マット・マクドナルド】

それは、この数十年間でオーストラリアの軍備における「最も重要な」シフトとして宣伝された。さらに重大発表の一つとして、気候変動は国家安全保障上の課題 として認められた。

しかし、2023年4月24日に発表されたオーストラリアの防衛戦略見直しは、気候変動に関してそれ以上はあまり踏み込んだ内容ではない。100ページを超える同書のうち、国防のための気候変動対策に充てられているのはわずか1ページに過ぎない。(

海外のアナリストや軍は気候変動の戦略的影響と防衛上の役割に真剣に取り組んでいるが、オーストラリアの戦略見直しは、気候変動が軍の本業である戦闘の妨げになり得るという面により重点を置いている。自然災害に対応するため軍隊の出動要請が増えていることから、戦闘への準備が以前よりおろそかになっていると同書は報告している。

このような考え方はあまりにも視野が狭い。それはまた、研究が示す結果からも、同盟国の取り組みからもかけ離れている。

気候変動と国家安全保障の間にはどのような関連があるか? 根本的なレベルで言えば、安全保障はそれが生存の条件にまで及ばない限り、それほど大きな意味を持たない。気候非常事態は、人間の安全保障生態系の安全保障の両方に対する直接的な脅威と評されている。

しかし、気候変動は、攻撃に対する防衛という伝統的な安全保障のアジェンダも脅かしている。世界中の先見性のある軍隊は、これらの影響への備えを始めている。

気候変動は、「脅威の増幅要因」として作用することにより、武力紛争を起こりやすくする恐れがある。

気候変動に起因する干ばつ、砂漠化、降雨パターンの変動、耕作可能地の喪失は、政府の崩壊や人口の流出を招く可能性がある。

潘基文(パン・ギムン)元国連事務総長と数名のアナリストは、気候変動がスーダン・ダルフール地方の武力紛争やシリア内戦に関寄していることを指摘している

気候変動が抑制されなければ、より高温になった地球で激しさと頻度が増加すると予測される自然災害に対応することが、いっそう軍に要請されると考えられる。

今回の戦略見直しは、このような要請に焦点を当てている。それもそのはず、すでに起こりつつある事態だからである。

陸軍と空軍は、過去3年間の洪水や2019~2020年の夏火災など、オーストラリアで頻発する「未曾有の災害」に対応することがますます求められている。ビクトリア州マラクータの海岸では、不気味な光のもと、海軍の船が何百人もの人々を救出した

そして、世界も同様である。軍が出動する人道支援の要請は増加している。オーストラリアの近隣諸国は、自然災害の影響を世界で最も受けやすい国々に含まれている。

難民、紛争、自然災害への対応だけでなく、軍隊の装備、訓練、資源をどのように整えるかという問題もある。

 気温の上昇、海面の上昇、自然災害の増加は、防衛のインフラと基盤を脅かす恐れがある。オーストラリア国防省は国内最大の土地所有者であるが、その多くが無防備な沿岸地域にある。

オーストラリアの軍隊は、駆逐艦から戦車まで化石燃料を燃やす機械に大きく依存しているため、「カーボン・ブートプリント」が非常に大きい。将来も十分な燃料を確保することは懸念材料となっており、温室効果ガス排出への軍の関与が大きいことにいっそう厳しい目が注がれるようになればなおさらである。

この意味では、軍がクリーンエネルギーへの移行を加速することの重要性を戦略見直しが取り上げたことはなによりだった。しかし、気候危機の緊急性に鑑みれば、軍は今、調達における検討事項や設備管理にも気候変動の要素を取り入れるべきだったといえる。これまでのところ、オーストラリアがそのような配慮をしているという証拠はほとんどない。

他の国ではどうだろうか? 米国、英国、その他多くの主要パートナー国は、オーストラリアよりはるかに進んでいる。筆者の継続的な調査において、他国の気候対応を分析し、政策立案者にインタビューを行っている。その結果から、オーストラリアが大きな後れを取っていることが窺える。

米軍は、すでに1990年代から気候変動が軍にとって何を意味するかを分析し始めた。バイデン政権は国家安全保障会議における気候変動の優先順位を高め、気候変動と安全保障を強く関連付けており、その関係をインタビュー対象者の一人は「ゲームチェンジャー」と呼んだ。

英国は、国防省内に気候変動がもたらす安全保障上の影響を検討する専門機関を設置している。この機関は2021年に戦略文書を作成し、軍の排出量削減目標のほか、その移行を可能にするための投資額を示した。

ニュージーランドは後手に回る対応から踏み出し、国内および地域の自然災害への対応において軍に積極的な役割を持たせている。インタビュー対象者の一人は、これが軍の「ソーシャルライセンス」の中心にあると述べた。

ニュージーランドの立場は、近隣の太平洋諸国の懸念に強く影響されている。ウェリントンの意思決定者らは、防衛分野も政府が義務付けたネットゼロを達成するという目標から除外されるものではないと決定している。

フランスは、海外領土とより広範なフランス語圏における人道支援と災害救援に関して同様の立場を取っている。これらのオペレーションは、妨げではなく核心的任務として提示されている。

スウェーデンとドイツは近年、国連安全保障理事会に時間を費やし、気候変動による国際安全保障上の影響に対処するうえで安保理が果たす役割について決議を行うよう要請している。そして、スウェーデンがNATOに加盟すれば、気候変動への軍の備えをさらに増強すると考えられる。近頃この分野にNATOは力を入れているからである。

 オーストラリアが追い付くことは可能か? 可能である。しかし、最初の一歩は、われわれがどこにいるか、そして世界がどこに向かっているかを認識することだ。

オーストラリアの防衛部門は、気候変動が何をもたらすかについて真剣に取り組まなければならない。この地域の著しい脆弱性と近隣の太平洋諸国の実存的懸念を考えると、なおさらである。

 残念ながら、今回の戦略見直しは、オーストラリアの国防界がこれらの懸念を完全に共有してはいないことを示唆している。

マット・マクドナルドは、クイーンズランド大学の国際関係学准教授である。オーストラリア研究会議および英国経済社会研究会議より助成を受けている。この記事のもととなった研究は、オーストラリア研究会議の助成(DP190100709)によるものである。

INPS Japan

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核軍縮運動はジェンダー平等問題を避けている

【国連IDN=タリフ・ディーン

国連は長らく、政治・社会・経済におけるジェンダー平等を強力に推進してきた。その一つの表れが、貧困や飢餓の根絶、質の良い教育、人権、気候変動などに関する17項目の持続可能な開発目標である。

しかし、圧倒的に男性主導で進められてきた核軍縮運動における根深いジェンダー不平等について、国連は沈黙を保ってきた。

ロータリークラブの平和研究員で核軍縮・不拡散議員連盟(PNND)の代表であるバネッサ・ランテーニュ氏は、「ジェンダー包摂とNPT再検討プロセス強化へのアプローチ」と題された7月23日の発表で、2019年においてNPTへの代表団のトップの76%が男性であり、2000年以来、NPT再検討会議準備委員会のすべての議長が男性、NPT再検討会議本体では女性議長がわずか1人いただけだったと指摘した。

彼女は、列国議会同盟が各国議会に課しているのと同じ条件で、男女バランスが悪いNPT代表団に対して制裁を課す案を提案した。

ランテーニュ氏はまた、ジェンダー平等が完全に実現するには、安全保障の枠組みの中で、「男らしさ」や「女らしさ」に関連する問題、見解、アプローチを完全に表現することが必要だと指摘した。

ランテーニュ氏は、アイルランドが提出した作業文書「核不拡散条約におけるジェンダー」の中で、「NPT再検討プロセスは、優先される問題という点で、核兵器に対処するための一次元的な安全保障アプローチを採用してきた」という評価を引用し、ジェンダーや平和、外交、紛争解決、国際法を織り込んだ共通の人間の安全保障という広い枠組みで核不拡散やリスク低減、軍縮を追求する補助機関をNPT内に立ち上げるよう提案した。

Jacqueline Cabasso, Executive Director, Western States Legal Foundation. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, INPS Japan.
Jacqueline Cabasso, Executive Director, Western States Legal Foundation. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, INPS Japan.

西部諸州法律財団のジャクリーン・カバッソ事務局長は、「女性や性的少数者はNPTプロセスにおいてほとんど代表されていません。」とIDNの取材に対して語った。

「そして核兵器の将来のような重大な決定を下す際には、あらゆる性別の人々が対等なパートナーであるべきというのは、常識の問題なのです。」とカバッソ事務局長は語った。

核兵器廃絶・アボリション2000グローバルネットワークの共同創設者でもあるカバッソ氏は、「列国議会同盟と同様に、NPTの各国代表団にジェンダーバランスに関する目標を設定して、必要であれば投票制裁によってそれを強制することで、代表団の母国におけるジェンダー平等の改善につながる可能性もあります。」と語った。

「しかし、世界を支配する道具としての核の恫喝という一見したところ揺るぎなき役割に挑戦する方法を考えるにあたって、すべての性別の人々が平等に議論に参加することだけでは、問題が解決できるわけではありません。」と、カバッソ氏は指摘した。

「必要なのは、普遍的な『人間の安全保障』の必要性がますます高まっているにもかかわらず、『国家安全保障』という建前を優先させ続ける組織の考え方、価値観、慣行を根本的に変革することです。」とカバッソ事務局長は語った。

ワシントンウィットマン大学でティモシー・A・ポール判事夫妻記念政治学教授を務めるシャンパ・ビスワス氏は、「2023年にもなっていまだにジェンダー平等を論じているとは驚きだ!」と語った。

 J. Robert Oppenheimer/ public Domain.
J. Robert Oppenheimer/ public Domain

「クリストファー・ノーラン監督の最近の映画『オッペンハイマー』の特徴を一つ挙げるとすれば、核の分野は初めから男性中心であったということだ。」とビスワス氏は指摘した。

しかし、ポストコロニアル理論と核政策を専門とする国際関係論者であるビスワス氏は、「多くの分野でジェンダー包摂に向けた前進が見られますが、核政策立案の分野ではまだ大きく遅れをとっています。」と指摘したうえで、「核軍縮に真剣に取り組むのであれば、核兵器の危険性に様々な視点から注意を喚起し、その男性主義的で軍事主義的な意味合いから離れたところで安全保障の意味を再定義するための声を包摂すべく、実質的に軍縮分野を多様化していくことが必須です。」と語った。

ビスワス氏はまた、「女性の声はこの取り組みにおいて極めて重要な意味を持ちます。私は代表団の男女バランスを変える目標を立てるとの提案に賛成ですが、罰則よりもインセンティブによってできないものかと思います。」と語った。

7月23日に行われたNPT再検討プロセスのさらなる強化に関するプレゼンテーションの中で、ランテーニュ氏は、「ジェンダーの包摂とアプローチを高めることによって、NPT再検討プロセスはより豊かになり、強化され、より効果的になるだろう。」と語った。

ジェンダーの包摂とアプローチとは第一に、様々な性(男性、女性、不確定な性)を持つ人が、安全保障部門における意思決定プロセスと指導的なポジションに平等に配置されていることを意味する。

そして第二に、より多様で包摂的かつ全体的な安全保障の枠組みを利用するために、平和と安全保障に対する多様なジェンダーの視点・問題・アプローチを有意義に取り入れることである。これら2つの原則を統合することは、女性の平等な参加と全面的な関与の重要性と、紛争予防と解決に関する意思決定における(女性の)役割を増やす必要性を強調した、「女性・平和・安全に関する国連安保理決議1325」を支持することになる。

SDGs Goal No. 5
SDGs Goal No. 5

他方、持続可能な開発目標の第5目標は、ジェンダー平等と女性・女児のエンパワーメントに焦点を当てている。

加盟国がジェンダー平等や包摂に関する認識を高め、行動する意思を持つだけではなく、自らそれを積極的に参照し、促進している兆しがある。

「2019年のNPT再検討会議準備委員会会合では、60カ国以上を代表した20本以上の声明が、NPTへのジェンダー視点導入の重要性について触れていました。その内、核問題とジェンダーについて直接触れた作業文書が3本、そのつながりに言及したものが8本ありました。」と、ランテーニュ氏は指摘した。

参加への平等なアクセスを支援するための政策を見直すことは、創造的な解決策や持続可能な発展をもたらすより多様な専門知識を含むことによる組織の効率と革新的能力の向上につながることから重要である。

しかし、ジェンダーを包摂するアプローチは、ジェンダーを多様化する分析によっても補完されるべきである。ジェンダーの平等のためには、安全保障の枠組みの中で、「男らしさ」や「女らしさ」に関連する問題や見解、アプローチが完全に代表されることが必要である。

「タフであること」「真剣さ」「リスクを取る姿勢」「軍事訓練的な発想」など、男性と一般的に結び付けられるような性質や専門能力、経験が高く評価されていると、核軍縮交渉に携わる人々が捉えていることが、これまでの研究で明らかにされている。

「そうした交渉は、柔軟さや妥協、多面的な問題解決、共感、(問題だけではなく関わっている人々に焦点をあてる)人間同士の相互作用といった『女性的な』アプローチを取り入れて『外交の引き出し』を増やすことで、より強化され、成功の可能性が増すはずです。」と、ランテーニュ氏は主張した。

NPT再検討プロセスにとって教訓となりうるジェンダー包摂的アプローチの例として、列国議会同盟ジェンダーパートナーシップグループが挙げられる。同グループは、ジェンダーに多様な観点が取り入れられ、女性を含めることが単に数の面での代表性の向上にとどまらず、女性と関連することが多い安全保障のアプローチを総合的に代表することをめざして、設立されたものだ。

The Preparatory Committee for the 2026 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT) took place from 31 July to 11 August at the United Nations in Vienna. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.
The 1st Preparatory Committee for the 2026 Review Conference of the Parties to the Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons (NPT) took place from 31 July to 11 August at the United Nations in Vienna. Photo Credit: Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of IDN-INPS.

ジェンダーを包摂する原則やアプローチの例は、カナダやドイツ、アイルランド、スウェーデンなどが採用している男女平等的な外交政策にも見られる。

しかしこれらの政治的な前進は、スウェーデンの例にみられるように後継政府によって後退させられる危険性をはらんでいる。同国では、国際機関や手続きにおけるジェンダーの重要性を制度化する必要性を歴代の政権が重視してきた。

「我々は、ジェンダーや平和、外交、紛争解決、国際法を織り込んだ共通の人間の安全保障という広い枠組みで核不拡散やリスク低減、軍縮を追求する補助機関をNPT内に立ち上げるよう提案します。この共通かつ人間の安全保障の広範な枠組みは、包摂的な政策が完全かつ実質的に履行され、象徴的な形骸化が回避されるようにするために、紛争解決と安全保障の分野に多様なジェンダーの視点を取り込んだ参加の機会を増やすうえで、意義を持つでしょう。」と、ランテーニュ氏は語った。(原文へ

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