【ジュネーブIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】
沖縄県の玉城デニー知事が、中国に脅威を与えるミサイルを沖縄に配備する計画を拒否した。この計画は明らかに、中国に対抗し、沖縄から500キロ離れた台湾の重要性を引き上げようとするドナルド・トランプ大統領の方針の一環である。玉城知事は、ミサイルを沖縄に配備する計画が進むようであれば、「沖縄住民からの激しい反対にあうことは容易に予想できる。」と語った。
沖縄は台湾と本州の間、東シナ海に浮かぶ150以上の島々からなる日本最南端の県だ。熱帯の気候、広い砂浜とサンゴ礁、さらには第二次世界大戦の激戦地としても知られている。
沖縄は、第二次世界大戦終結以来、米軍にとって戦略的に重要な位置を占めている。島には、在日米軍全体のおよそ半分にあたる約2万6000人の米兵が、32の基地と48カ所の訓練地に分かれて在留している。
最大の沖縄本島には、1945年の連合国軍による大規模な侵攻(沖縄戦)を記念する沖縄県平和祈念資料館と、ホワイトシャークとマンタがいる美ら海水族館がある。
米国が沖縄に配備することを予定しているミサイルは、米国とソ連(1991年のソ連崩壊後はロシア連邦)との間で締結された1987年の中距離核戦力(INF)全廃条約で禁止されているタイプのものである。
米国のロナルド・レーガン大統領とソ連のミハイル・ゴルバチョフ書記長(当時)は、射程500キロから5500キロまでの範囲の核弾頭、及び通常弾頭を搭載した地上発射型の弾道ミサイルと巡航ミサイルを全廃することに合意した。
INF全廃条約は、特定のカテゴリーの兵器の全廃に合意した初めての軍備管理条約であった。加えて、同条約の2つの議定書により、互いの軍隊の装備(ミサイルの破壊状況)について、双方がオブザーバーとして査察できる前例のない手続きが確立された。
INF全廃条約によって、米ロ合計で2692基の核弾頭及び通常弾頭を搭載した地上発射型の弾道ミサイルと巡航ミサイルが廃棄された。米国のドナルド・トランプ大統領は2019年8月2日、ロシアが条約に従っていないことを理由として、条約から脱退することを正式に表明した。米国防総省は同年8月と12月、INF全廃条約で禁止されている種類のミサイルを2基、発射実験した。
米国の条約脱退以来、オーストラリア・日本・フィリピン・韓国は、米国の地上発射型ミサイルの配備を新たに認めるよう要請されてもいないし、配備を検討することもないと公に述べている。マーク・エスパー米国防長官は、中国に対抗するために欧州と、とりわけアジアにそうしたミサイルを配備したいと示唆していた。
国防総省筋は『ロサンゼルス・タイムズ』紙の取材に対して、国防総省は「我々の同盟国の懸念には多大なる注意を払っており、こうした国々の政治的課題については認識している。」と指摘したうえで、「メディアで報じられていることが、必ずしも非公開で協議されている全てではない。」と語った。
ワシントンのシンクタンク「軍備管理協会」が6月26日に報じたように、北大西洋条約機構(NATO)のイェンス・ストルテンベルグ事務総長が6月17日、NATO防衛閣僚会議を受けて、NATOは「欧州に地上発射型核ミサイルを新たに配備する意図はない。」と語った。
中国は、アジア太平洋地域への同ミサイルの配備に激しく反発している。中国国防部の呉謙報道官は6月24日、「もし米国が配備を強行するなら、中国の戸口における挑発だとみなす。」「中国はこれを座視することなく、必要なあらゆる対抗措置を取る。」と語った。
他方、トランプ政権は、引き続き中国が米ロとともに三国間の軍備管理協定に参加すべきと主張しており、米ロの核戦力を制限している最後の軍備管理協定である2010年新戦略兵器削減条約(新START)に関する6月22日の協議(ウィーン協議)に中国が不参加であったことを非難した。
ウィーン協議の開始前、米代表団を率いたマーシャル・ビリングスリー大統領特使(軍縮担当)は、空席に中国国旗を乗せたテーブルの画像をツイッターに上げ、「ウィーン協議が間もなく開始。中国は姿を見せない…それでも、ロシアと話を進めていく。」と書き込んだ。
中国外交部の傅聡軍縮局長はこれに対して「奇妙な光景だ…新START延長をお祈りしています! 一体どれだけ減らせるだろうか。」と応答した。米ロはそれぞれ約6000発の核兵器を保有していると推定されている。これに対して中国はおよそ300発だ。
軍備管理協会によると、ウィーン協議終了後の6月23日、中国外交部の趙立堅報道官は、空席に中国の国旗を置いた米国の行為は、「もし人々の関心を集めようとしているのならば、不真面目で、プロのやり方ではなく、アピール力もない。」と語った。
趙報道官はまた、「テーブルに置かれた国旗のデザインも不正確であった。」と指摘したうえで、「もう少し勉強して、笑いのタネにならないように一般常識を増やしてもらいたいものだ。」と語った。
トランプ政権は、中国が密かに資金をつぎ込んで核戦力を強化しており、今後の軍備管理協議には中国が参加しなくてはならないと主張している。
しかし、中国は、米ロ中の三国間協議にも、米中二国間協議にも参加を拒否している。
ビリングスリー特使は、ウィーン協議開始前の6月8日に中国を協議に招待したが、外交部の華春瑩報道官は次のように述べて、招待を断っていた。「中国は、米国・ロシアとのいわゆる三国間軍備管理協議に参加する意思はない。この立場は明確だ。」
ビリングスリー特使は中国政府に再考を促した。「強国の地位を得るためには、強国としての責任で行動すべきだ。」「中国は依然として、核増強を『秘密の万里の長城』の後ろに隠している。」と6月9日にツイートした。
マイク・ポンペオ米国務長官は6月18日、中国の楊潔篪外交部長とハワイで会談した。軍備管理がどの程度話題に上ったかは明らかにされていない。会談後、デイビッド・スティルウェル国務次官補(東アジア・太平洋担当)は記者団に、米国政府は「三国間協議への(中国の)積極的な参加を求めている…不幸な結果を防ぐためのこうした協議に参加してほしいと思っている。」と語った。
エスパー国防長官も、6月18日のNATO防衛閣僚会議で同様の見解を示した。米国防総省が読み上げた資料によると、エスパー長官は「ロシア・中国との意味のある三国間軍備管理協議に緊急に関与する件について触れた。」という。
ロシアは、米国からの圧力にも関わらず、中国の態度を変えさせて協議に参加させることを拒否している。
ロシアのアナトリー・アントノフ駐米大使は6月20日、「協議が国益にかなうものかどうかは、中国側の判断だ。」「ロシア政府は、中国の友人に無理強いすることはしない。」と語った。
アントノフ大使はまた、もし中国が協議に加わることがあれば、米国の同盟国であるフランスや英国も参加すべきだとの長年の見解を繰り返した。
ビリングスリー特使は、「『多国間主義』に関する米国の定義は異なっているかもしれないが、原理は同じことだ。」という認識を示したうえで、「中国の核軍拡は、フランスや英国の核戦力よりもはるかに大きな脅威である。」と主張した。
トランプ政権は、中国との軍備管理協議で何を目標とするのか、三国間協議でロシアと中国に対してどのような妥協案を提示するつもりなのかについて、具体的な内容を明らかにしていない。(原文へ)
INPS Japan
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