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子どもたちのために、2021年をより公平で安全で健康的な世界に

【ニューヨークIDN=キャロライン・ムワンガ】

国際連合児童基金(ユニセフ)によれば、2021年の元旦、世界では推定37万1,504人の赤ちゃん生まれる。「子どもたちは、1年前とでさえ全く異なる世界に生まれてきます。新年は、その世界を新たに創造する機会でもあります。」と、ユニセフのヘンリエッタ・フォア事務局長は語った。

OFFICIAL PORTRAIT: On 29 December 2017, UNICEF Executive Director Henrietta H. Fore at UNICEF House. Ms. Fore, who begins her tenure on 1 January 2018, is UNICEF’s seventh Executive Director. Official portrait of UNICEF Executive Director Henrietta H. Fore at UNICEF Headquarters

新年最初の赤ちゃんは太平洋のフィジーで、最後の赤ちゃんは米国で生まれるとみられるが、この日に生まれる赤ちゃんの半数以上が以下の10カ国で生まれると推定されている。インド(59,995)、中国(35,615)、ナイジェリア(21,439)、パキスタン(14,161)、インドネシア(12,236)、エチオピア(12,006)、米国(10,312)、エジプト(9,455)、バングラデシュ(9,236)、コンゴ民主共和国(8,640)

2021年には合計で約1億4000万人の赤ちゃんが生まれ、彼らの平均余命は84歳になるとみられている。

2021年はユニセフ創立75周年の年でもある。ユニセフはパートナーとともに、紛争、病気、排斥から子どもたちを守り、彼らの生存、健康、教育の権利を擁護してきた75年間を記念してイベントや発表などを行う予定だ。

「今日生まれる子どもたちは、私たちが彼らのために作り始めた世界を受け継ぐことになります。2021年を、子どもたちのために、より公平で、より安全で、より健康的な世界の構築に着手する年にしましょう。」と、フォア事務局長は語った。

このところ、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)に罹患した人々の数は急増し続けており、これに伴い、子供たち家族のニーズも高まっている、とユニセフは述べている。

命を救うヘルスケア用品の提供から、水道・衛生施設の建設、少女や少年たちに教育と保護を提供する活動まで、ユニセフは、新型コロナウィルス感染症の蔓延を遅らせ、世界各地で子供たちへの影響を最小限にするための取組みを行っている。(原文へ

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「2021年を共に癒しの年としよう」(新年に寄せるアントニオ・グテーレス国連事務総長ビデオ・メッセージ)

皆様、

Antonio Guterres/ Public Domain
Antonio Guterres/ Public Domain

2020年は試練と悲劇、そして涙の年でした。

新型コロナウイルス感染症(COVID-19)が私たちの暮らしを一変させ、世界を苦悩と悲嘆に陥れました。

あまりにも多くの人々が大切な人たちを失いました。COVID-19の世界的大流行(パンデミック)は収まらず、何波にもわたって病人と死者が増大しています。

貧困や不平等、飢餓も広がっています。雇用は消え、債務が増えています。子どもたちも苦しみにあえいでいます。

家庭内暴力が増加し、あらゆる場所で不安が広がっています。

しかし、新しい年はやって来ます。そして、次のようなことに希望の光も見えます。

– 人々が隣人や見知らぬ人々に救いの手を差し伸べていること

– 最前線の職業に就く人々が全力で使命を果たしていること

– 科学者たちが記録的な短時間でワクチンを開発していること

– 各国が気候変動による惨禍を防ぐため、新たな公約を掲げていること

私たちが連帯し、力を合わせれば、こうした希望の光を世界中に広げることができます。

それこそが、この困難に満ちた年が与えた教訓です。

気候変動とCOVID-19パンデミックはいずれも、包摂的で持続可能な未来への移行を図る中で、すべての人がともに取り組まなければ解決できない危機です。

国連は2021年、カーボンニュートラル、すなわち温室効果ガスの正味ゼロ・エミッションを2050年までに達成するための世界連合を構築するという大きな野心をその中核に掲げています。

すべての政府、都市、企業、そして個人が、このビジョンの達成に向けて役割を果たすことができます。

人間同士、そして自然との平和を実現し、気候危機に対処し、COVID-19の蔓延を止めることで、2021年をともに癒しの年としようではありませんか。

恐ろしいウイルスによる影響から人々を癒し、壊れた社会と経済を癒し、分断を癒すとともに、地球の癒やしも始めようではありませんか。

私たちはそれを、2021年の新年の誓いとしなければなりません。

皆様の新年のご多幸と平穏をお祈りしています。(原文へ

海洋法で小島嶼国を気候変動から守れるか?

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=エリシア・ハロウド‐コリブ&マーガレット・ヤン】

本稿の初出はThe Conversationで、クリエイティブ・コモンズ・ライセンスの下に再掲載しています。

気候変動は、太平洋やその他の地域の小島嶼開発途上国に大きな被害をもたらすと考えられる。海面上昇によって水没する島もあるだろう。これらのコミュニティーは、これまで以上に異常気象、進行する海洋酸性化、サンゴの白化、漁業への悪影響に直面している。食料供給、人の健康、生計も危機に瀕している。その責任の大部分は、化石燃料を燃やしている他の国々にあることは明白である。(

とはいえ、島嶼国は才覚を備えている。彼らは、気候変動への適応策を講じるだけでなく、司法の助言も求めている。国際社会は海洋法に基づき一定の法的義務を負っている。海洋法は、海洋を海域に分けるとともに、一定の自由と義務を認める規則や慣習である。

そこで島嶼国は、気候変動に対処する義務が国連海洋法条約に含まれ得るのではないかと問うている。国際的な気候交渉において海洋に関する問題にはしかるべき注意が向けられていないため、これは特に重要な動きである。

海洋環境にダメージをもたらす温室効果ガス汚染を抑制する具体的義務を各国が有するのであれば、これらの義務に対する違反には法的結果が生じることになる。いずれ、小島嶼国が受けた損害に対して賠償を受けることもあり得る。

なぜ勧告的意見を求めるのか?

国際海洋法裁判所は、国連海洋法条約によって設立された独立司法機関である。同裁判所は、条約の解釈または適用に関する紛争、および裁判所に回答を要請されるある種の法的質問に対して管轄権を有する。これらの質問に対する回答は、勧告的意見として知られている。

勧告的意見は法的拘束力を持つものではなく、法的問題に関する権威ある声明である。それらは、国家や国際機関に対し、国際法の実施について指針を与える。

同裁判所は、これまでに二つの勧告的意見を出している。深海底における採掘違法、無報告、無規制の漁業活動に関するものである。これらの手続きでは、国家、国際機関、そして世界自然保護基金(WWF)のような非政府組織から陳述書の提出があった。

2022年末、新たに設立された「気候変動と国際法に関する小島嶼国委員会」は、同裁判所に勧告的意見の要請を提出した。海洋環境への影響を含む気候変動に対処する国家の義務に関する要請である。

同裁判所には、国家や機関から、彼らがどのような対応を取るべきかに関する見解を述べる50件以上の陳述書が提出された。これらの陳述書、なかでもオーストラリアニュージーランドによる陳述書が、近頃公開された。

海洋法は気候変動を規制するメカニズムとして作られたものではないが、その権限は、気候と海洋の関連性を検討するには十分なほど幅広い。これを立証するためには、この40年の歴史を持つ枠組み合意を、公海におけるレジリエンスを強化する義務など、世界情勢の変化や法の変化という観点から解釈しなければならない。これを実現する一つの方法が、同裁判所による勧告的意見の発行である。

国際海洋法裁判所に提出された質問

同裁判所に提出された質問は、以下のために締約国が負う具体的な義務は何かというものである。

(a) 大気中への人為的な温室効果ガスの排出に起因する海洋の温暖化、海面上昇、海洋酸性化などの気候変動から生じる、または生じる可能性のある有害な影響に関連して、海洋環境の汚染を防止、軽減、規制するため。

(b) 海洋温暖化、海面上昇、海洋酸性化などの気候変動の影響に関連して、海洋環境を保護および保全するため。

この質問には、国連海洋法条約の具体的文言が用いられている。それらは、裁判所がその意見において条約のいずれの条項を参照すれば良いか、手掛かりとなる。

この質問では、条約の「海洋環境の保護および保全」と題する部分に明示的に言及している。この部分は、海洋環境を保護および保全するという締約国の一般的義務と、「汚染を防止、軽減、規制する」措置を定めている。また、締約国に対し、損害や危険を移転してはならず、ある類型の汚染を別の類型に変えてはならないと求めている。

海洋環境の汚染は、条約で次のように定義されている。

人間による海洋環境(三角江を含む)への物質またはエネルギーの直接的または間接的な導入であって、生物資源及び海洋生物に対する害、人の健康に対する危険、海洋活動(漁獲およびその他の適法な海洋の利用を含む)に対する障害、海水の水質を利用に適さなくすること、ならびに快適性の減殺のような有害な結果をもたらし、またはもたらす恐れのあるものをいう。

締約国が義務を果たさない場合はどうなるか?

国際海洋法裁判所は、海洋法に対する重大な問いに答える必要がある。「海洋法条約は、気候変動の促進要因や影響に言及するものとして理解され得るか? もしそうであるなら、同条約は、締約国がそれらに対してどのように対処することを求めているか?」という問いである。

小島嶼国委員会の質問で問われていないことは、締約国がその義務を果たさない場合はどうなるかということである。その答えは小島嶼国にとって特に重要であり、彼らは、気候変動の影響に伴う損失と損害への対処に関する現在継続中の交渉に不満を抱いている。

気候変動に関連する義務は、国連気候変動枠組条約パリ協定といった他の条約や規則において定められている。小島嶼国は、これらの義務を明確にするため、さまざまな裁判所に助言を求めている。

国際司法裁判所は、2024年に、気候変動に関する義務についてより幅広い法的課題を検討する予定である。

国際司法裁判所がこの別個の勧告的意見要請に小島嶼国委員会が参加することを承認したという事実は、国連の主要な司法機関が国際海洋法裁判所の意見を考慮に入れるつもりがあることを示唆している。また、最初に国際海洋法裁判所が海洋法に関する見解を述べ、大気汚染の責任を取ることについて国際法をより幅広く解釈する素地を作ると見込まれることも、注目すべき点である。

小島嶼国による継続的圧力により、気候変動に対処する各国の義務に関するわれわれの理解が進んでいる。

エリシア・ハロウド‐コリブは、メルボルン大学で海洋ガバナンスの講師、リサーチフェロー。また、東フィンランド大学法科大学院の博士研究員。
マーガレット・ヤンは、メルボルン大学教授。

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イランが中国・ロシア・EU・フランス・ドイツ・英国と共に核合意の有効性を再確認

【ブリュッセルIDN=ジャヤ・ラマチャンドラン】

イランの有名な核科学者モフセン・ファクリザデ氏が11月27日にテヘラン近郊の街頭で暗殺された事件に対するイランの反応についての憶測が広がる中、イラン核合意(JCPOA)の当事国は、合意を尊重するとの意向を改めて表明するとともに、それぞれの責任ある関与を維持し続ける必要性を強調した。

この意向表明は12月21日、E3/EU+2(中国・フランス・ドイツ・ロシア・英国・欧州連合外務・安全保障政策上級代表)とイランとの間で行われたオンライン形式の閣僚会合で確認された。会合の議長はジョセップ・ボレルEU外務・安全保障政策上級代表が務めた。

閣僚らは、すべての当事国によるJCPOAの完全かつ効果的な履行が依然として重要であることに合意し、核拡散の防止や、制裁解除の約束など、合意履行をめぐる問題に対処する必要性を強く主張した。

Killing of Mohsen Fakhrizadeh/ By Fars News Agency, CC BY 4.0

ドイツ外務省によると、閣僚らは、JCPOAにおける核不拡散に関するコミットメントの履行を監視・検証するよう国連安保理に義務付けられた唯一の公正かつ独立の国際組織として国際原子力機関(IAEA)が持つ重要な役割を強調し、IAEAと誠実に協力し続けることが重要であると述べた。

閣僚らは、国連安保理決議第2231号(2015)で承認されたJCPOAは、世界の核不拡散の取り決めの主要な要素であり、地域と国際の平和に貢献する多国間外交の重要な成果であると述べた。

閣僚らは、米国が合意から離脱したことへの深い遺憾の意を繰り返し表明し、国連安保理決議第2231号は完全に有効であると述べた。米国は、「イラン核合意」あるいは単に「イラン合意」として知られるJCPOAからの離脱を2018年5月8日に表明していた。

閣僚らは、米国をJCPOAに復帰させるように対話を継続することに合意し、この問題に対して前向きに共同で取り組んでいく用意があることを強調した。

専門家らは、ファクリザデ氏の死がイランの核開発プログラムに与える影響について確信を持てずにいる。ファクリザデ氏は、2000年代前半にイランが秘密裏に行っている核兵器開発を主導したとされる。最近では、イラン国防省・軍兵站部門における准将であり、同省の国防技術革新研究機関(DRIO)のトップの地位にあった。また、イスラム革命防衛隊と関係のあるイマム・ホセイン大学で物理学を教えていた。

ファクリザデ氏は、何らかの立場で核合意交渉に関わり、その仕事ぶりによってイランで最高の勲章を授与されたとされている。しかし、彼がイランの核計画において生前に何らかの積極的な役割を果たしていたとしても、それがどんなものであったのかは判然としない。

Mohsen Fakhrizadeh/By Tasnim News Agency, CC BY 4.0

ムハマド・サヒミ氏によると、イランの先進的な防衛開発研究を監督する立場にあるDRIOにファクリザデ氏の死が与える影響は、彼自身の役割と、同機関の人材状況について把握できない限り、どの程度のものになるかわからないという。しかし、研究開発プロジェクトの性質や、イランの軍産複合体における知識の制度化、DRIOが比較的豊かな人材を擁していたことを総合すると、ファクリザデ氏の死は限定的な意味合いしか持っていない、とサヒミ氏は外交専門ニュースサイト「Responsible Statecraft」に記している。

またサヒミ氏の分析は「イラン・レビュー」に転載されている。このサイトは、「非国家・非党派の主要な独立系ウェブサイトで、イランの政治、経済、社会、宗教、文化、外交政策、地域・国際問題に対する科学的・専門的なアプローチを代表して分析を提供するもの。」である。

サヒミ氏は南カリフォルニア大学ロサンゼルス校の教授で、この20年間、イラン政治と核計画に関する論文を多数発表してきた。

今回の襲撃の首謀者は、任期が残り数週間となったドナルド・トランプ政権の間にイラン政府を米国との軍事紛争に引きずり込みたかったのかもしれないが、イランの意向が変化した兆しはない、とサヒミ氏は述べている。

イランの指導層や政界各派が復讐を呼びかけているが、イランは、「戦略的忍耐」政策の下で2018年5月以来の米国の「最大の圧力」攻勢に耐えてきた、とサヒミ氏はいう。近年では最も厳しい制裁、激しいサイバー攻撃、核施設を含めたイランの重要インフラに対するサボタージュ攻撃、政府幹部の暗殺などが、この攻勢の中で行われてきた。

イスラエルと米国が、イランの核・ミサイル計画を遅らせる目的をもった秘密戦争の一環として、ファクリザデ氏を少なくとも15年間に亘って追い続けてきたという見方で、専門家らは一致している。イスラエルは、イランが核兵器とその運搬手段の製造を実際に目指していると主張してきた。しかし、欧州連合が「犯罪的」とみなし、「司法外執行に関する国連特別報告者」のアグネス・カラマード氏が非難した複数回に及ぶ暗殺は、その目的を達したのだろうか。

答えはノーだ。なぜなら、「科学者が一人、また一人といなくなっても、イランの核計画は前進し続いているからだ。」

電磁気学とその核開発への応用に関する権威であるアルデシール・ホセインプル博士は2007年1月15日に、暗殺された初の主要なイラン人科学者となった。イランの核開発に関するIAEAの最新の報告書は、暗殺のちょうど2か月前にあたる2006年11月15日に発表されていた。

報告書は、イランは濃縮ウランを製造しておらず、濃縮に必要な数の遠心分離機も建設していないと確認していた。その後、2010年1月から2012年1月までの間に、4人のイラン人科学者が暗殺された。

サヒミ氏は、しばしば無視されている事実を指摘している。それは、①イランがJCPOAの規定に従って、低濃縮ウランの97%をロシアに輸出したこと、②1万3000基以上の遠心分離機を非稼働状態にしたこと、③フォルドウ施設から遠心分離機を撤去したこと、④アラクの研究炉を破壊したこと、⑤NPTの追加議定書の履行を開始し、それにより、イランのNPT順守を確認するために同国の核施設へのより積極的な査察を行う権利がIAEAに与えられたことである。

こうしたイラン側の努力にもかかわらず、「トランプ政権は2018年、国連安保理決議第2231号に違反してJCPOAから離脱し、イランに対する最も厳しい経済制裁を課した。」とサヒミ氏は記している。

Photo: Trump ending U.S. participation in Iran Nuclear Deal. Credit: White House.

それに加えて、この20年間、米国とイスラエルは、あらゆる手段を使ってイランのミサイル計画を妨害しようとしてきた。イランには、近代的な空軍がなく、ミサイル計画が唯一の通常兵器による防衛手段となっている。

イランの核濃縮施設の破壊を狙ったマルウェアを含む「スタックスネット攻撃」を例外として、イラン関係者の暗殺やサボタージュの攻撃ははどれとして「イランのミサイル・核計画を遅らせることができなかった。」実際のところ、イランの科学は自力で前進しており、あるプログラムの指導者が殺害されても、他にそれを引き継ぐ者が多くいるのである。

「イランの戦略的な重要性を考えるならば、米国やイスラエルに対するイラン民衆の態度の変化が、こうしたサボタージュや殺害行為の最も考えられる帰結であろう。しかし、そうした行為は、将来的に何も生み出さない。」とサヒミ教授は警告した。

『ニューヨーク・タイムズ』紙のデイビッド・E・サンガー氏は、ファクリザデ氏暗殺の別の側面に着目して、今回の暗殺は「ジョセフ・バイデン次期大統領が、対イラン外交を開始すらしていない段階で、イラン核合意を復活させる努力を座礁させかねないものだ。」と警告した。しかしそれこそが、今回の作戦の主要な目標だったのかもしれない。

Joe Biden in his West Wing Office at the White House/ By The White House from Washington, DC – V011013DL-0556, Public Domain

サンガー氏は、諜報筋の話として、イスラエルが今回の暗殺の裏で糸を引いていることはほぼ間違いないと記している。イスラエルのスパイ機関モサドは、その正確にタイミングを計った活動で有名だからだ。「そのうえ、イスラエル側は、こうした見方を否定していない。」とサンガー氏は指摘している。

実際、ベンヤミン・ネタニヤフ首相は、イランはイスラエルの生存上の脅威であり、今回暗殺されたファクリザデ氏は、人口800万のイスラエルを脅威にさらす爆弾を製造できるイスラエル最大の敵だと名指してきた経緯がある。

「しかし、ネタニヤフ氏にはまた別の目論見もあった。」とサンガー氏は記している。「決して過去の核合意へと回帰させてはならない。」まさにイラン核合意への回帰を公約していたジョー・バイデン氏が次期大統領になることが明らかになった直後に、ネタニヤフ氏が名言にしていたことである。

他方で、ジョナサン・パワー氏のような専門家は、イランの第13回大統領選挙が来年6月18日に予定されていることに着目している。穏健派のハサン・ロウハニ大統領が退任し、核合意回帰への交渉に熱心でない強硬な保守派が新大統領に就任する可能性が高い。

パワー氏は、新たな核合意は1か月もあればまとめることが可能であるという。「トランプ大統領が反故にした前の状態に即時回帰するという主張を双方が尊重できれば、それは可能だ。それにより、中東はより安全で平穏になる。そして、同じような誠実さをもって、より対立の大きい別の問題に関して交渉をすることで、中東をより安全な場所にすることができるだろう。」と、ジョナサン・パワー氏は記している。(原文へ

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軍縮に向けた議会の行動に関する新たなハンドブック発行

【ジュネーブIDN=ジャムシェッド・バルーア】

国連のアントニオ・グテーレス事務総長が2018年5月に「私たち共通の未来を守る:軍縮へのアジェンダ」を発表してから約1年半、安全保障と持続可能な開発に向けた軍縮を促進する新たなハンドブックが出された。そのアプローチと焦点は主に「軍縮アジェンダ」を基礎としたものである。「私たち共通の未来を確実にする」と題されたこのハンドブックは、4つの国際的な議会組織と2つの国際的な政策団体が11月5日に発行したもので、軍縮の広範な問題に関する効果的な政策や議会の行動について、その背景と事例を示したものである。

そうした軍縮問題には、大量破壊兵器、通常兵器、小型武器、未来の兵器技術、宇宙やサイバー空間における軍縮問題などが含まれる。そのことは、軍縮問題が、持続可能な開発の問題や、新型コロナウィルス感染症のようなパンデミックの問題といかにつながっているかを示している。

国連軍縮部の協力を得て作られた同書は、軍縮の重要性を再確認し、効果的な軍縮政策を策定し、監視・履行する上で議員が果たすきわめて重要な役割について述べている。

ガイドブックは「議会と議員には、軍縮協定を批准し、国の履行措置を採択し、軍縮を支援する予算を割りあて、政府の軍縮履行義務を監視し、模範的な政策と実例に焦点を当てて広め、地域及び世界において議員・議会間の協力を構築する責任がある」と指摘し、「議会の行動は、国家安全保障の優先事項を、軍事安全保障に主眼を置いたものから、協力と人間の安全保障に重点を置いたものへとシフトさせる上で、極めて重要である。」と付け加えている。

中満泉 国連事務次長・軍縮担当上級代表は、「議員らは、国連事務総長の『軍縮アジェンダ』を履行していくための重要なパートナーです。このハンドブックは、豊富な実例を通じて議員らに指針となる原則を示すことで、『私たち共通の未来を確保する』ための議会の行動に向けた貴重な資料を、議員や有権者に提供している。」と語った。

ハンドブックは、国連事務総長の「軍縮アジェンダ」に沿って、次のような内容を盛り込んでいる。

人類を救う軍縮核兵器、生物兵器、化学兵器、宇宙兵器に焦点。

命を救う軍縮人道主義的で、安全保障や法的側面に関わる原則を基礎とした兵器の規制に焦点を当て、通常兵器や小型武器、非人道的兵器(地雷やクラスター弾など)、人口密集地での爆発性兵器の使用、適用可能な国際法の概要について記述。

将来世代のための軍縮自立型兵器システムやサイバー空間での戦力の使用など、新たな兵器技術に焦点を当てる。

パートナーシップの強化軍縮における様々な有権者や利害関係者について、議員が軍縮に関するイニシアチブに関していかに彼らと連携できるかに焦点を当てる。

ハンドブックにはまた、軍縮や気候変動、持続可能な開発、パンデミックと軍縮、公衆衛生、経済的な持続可能性に関連した議会の行動に関する内容も盛り込まれている。

全体で53項目にのぼる議会による行動のための提言と、85項目の効果的な政策や議会による行動例が紹介され、リスト化されている。これらの事例は世界のすべての地域をカバーしており、この問題が包摂的で党派を超えたアプローチを必要とすることを反映している。

ハンドブックの作成に際して、「核不拡散・軍縮議員連盟」(PNND)と「列国議会同盟」(IPU)は、議員や軍縮専門家、国連軍縮部関係者、包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)などの条約機関の関係者、国連加盟国の代表、主要な市民団体関係者などと、オンラインや対面を通じて協議している。これらの協議を通じたフィードバックが、効果的な政策や議会の行動の実例など、ガイドブックの内容に反映されている。

ハンドブックは「ジュネーブ安全保障政策センター」「列国議会同盟」「地球規模問題に取組む国際議員連盟」「核不拡散・軍縮議員連盟」「小型武器に関する議員フォーラム」「世界未来評議会」の共同の取り組みとして、国連軍縮局からの後援を得て出版された。

これらの組織のリーダー等が、以下のような言葉をハンドブックに残している。

マリア・エスピノーサ(世界未来評議会メンバー、第73回国連総会議長)

「軍縮に関する必携のハンドブック。各国で効果的な軍縮政策・軍縮法を前進させ、地域・国際レベルで協力を促進しようという議員にとって貴重な資料です。」

マーティン・チャンゴン(列国議会同盟事務局長)

「さまざまな政治的立場の政治家を巻き込むことが、世界中の人々にとっての平和・安全・民主主義・経済的幸福を高め、地球を守るための軍縮措置を前進させる上で肝要だ。軍縮の重要性は、新型コロナウィルスの感染拡大に照らしても明らかになってきている。よい公衆衛生システムや科学、エビデンス重視の政策、国際協力、知識を蓄えた市民社会、平和は、銃や爆弾などとはまた違った意味で、パンデミックと闘う『武器』になる。」

ナビード・カマール議員(「地球規模問題に取組む国際議員連盟」国際の平和・安全プログラム責任者、パキスタン元国防相)

「『安全と持続可能な開発のための議員軍縮ハンドブック』の発行を強く支持する。このハンドブックは、主唱者でもあり立法者でもある議員が、軍縮目標を前進させる決定的かつ媒介的な貢献を成すための数多くの方法を紹介したすばらしい資料だ。」

デイジー・リリアン・トルネ・バルデス(「小型武器に関する議員フォーラム」議長)

「国連事務総長が2018年に発表した『軍縮アジェンダ』は、今日の世界にとって極めて重要かつ必要とされているものだ。議会の行動が、軍縮や平和、持続可能な開発を世界で推進し、小型兵器の野放図な移転を防ぐうえで決定的だ。このハンドブックは、議員が今後進めていく軍縮への取り組みを刺激する歓迎すべき書である。」

フィル・トワイフォード議員(ニュージーランド軍縮・軍備管理相、元PNNDニュージーランド支部議長)

「人間の安全保障や外交、国際的な紛争解決、法と強い結びつきを持った適切な軍縮措置は、武力紛争を減らし、命を救い、世界全体で1兆9000億ドルに上る軍事予算を削減するのに役立つ。これによって、気候保護や公衆衛生を促進し、持続可能な開発目標(SDGs)を達成するためのさらなる予算を捻出することができる。」

クリスチャン・ダシー大使(「ジュネーブ安全保障政策センター」所長)

「ジュネーブに集まる各種国際機関のひとつとしての『ジュネーブ安全保障政策センター』が、軍備管理と軍縮に関する議会の行動に関するこの有益なハンドブック作成のパートナーになれたことを喜ばしく思う。この分野で大いに必要とされている進展を可能ならしめるエネルギーと革新的な思考を私たちは必要としている。」

アレクサンドラ・ワンデル(「世界未来評議会」事務局長)

「政策決定者には、現在及び将来世代に対する責任がある。このハンドブックは、より平和的な世界の構築に向けて議員らが取り組むための完璧なツールだ。」(原文へ

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サバクトビバッタ大発生:「アフリカの角」地域への脅威続く

【ローマIDN/FAO】

国連食糧農業機関(FAO)は、2020年を通じて実施されてきたサバクトビバッタ防除への集中的な取り組みにもかかわらず、サバクトビバッタの新たな世代の成虫の群れが、「アフリカの角」地域とイエメンの何百万ものの農家と牧畜民の生計と食料安全保障を脅かしている、と発表した。

国際的な支援とFAOの調整による、これまでにない大規模な対応活動により、今年1月以来10か国において130万ヘクタール以上の被害地域で駆除作業が行われた。

防除作戦により、すでに急性食料不安と貧困により大打撃を受けている国々で、推定270万トンの穀物(約8億ドル相当)の損失が免れた。これは年間1800万人の人々を養うのに十分な量である。

Cyclonic Storm Gati on November 22, 2020/ By The National Aeronautics and Space Administration (NASA) – EOSDIS Worldview, Public Domain

しかし、バッタにとって好条件な気候と広範囲にわたる季節的降雨により、エチオピア東部とソマリアでは大規模な繁殖の発生が確認されている。先月、ソマリア北部に洪水をもたらしたサイクロン「ガティ」によって、この状況は悪化しており、今後数か月でバッタの発生をさらに拡大させる模様。新たな成虫の群れがすでに形成されており、ケニア北部に再び侵入する恐れが高まっている。同時に、紅海をはさんだ両岸で繁殖が広まりつつあり、エリトリア、サウジアラビア、スーダン、イエメンに新たな脅威をもたらしている。

FAOの屈冬玉事務局長は、「私たちは多くを成し遂げたものの、この執拗な害虫との闘いはまだ終わっていません。」と指摘したうえで、「私たちは見放してはいられません。バッタは昼夜を問わず成長を続けており、被害地域全域の脆弱な家庭の食料不安の悪化が懸念されます。」と語った。

FAOは政府やその他のパートナー機関に対して、監視と調整、技術的アドバイス、物資と設備の調達を支援している、被害国の食料生産を保護し、食料不安の悪化を防ぐためには、取り組みをさらに強化する必要がある。

これまでにドナー国とパートナー機関から得た防除活動への資金援助額は、2億ドル近くに上る。このおかげで、FAOと各国政府は、過去何世代もの間、この規模でのバッタの大発生に直面していなかった地域においても、バッタへの対応能力を迅速に拡大することが可能となっている。地上偵察・防除要員1500人以上に対して訓練が実施され、現在、地上噴霧器搭載車両110台と航空機20機が稼働している。

FAOは現在、最も被害を受けている国(エチオピア、ケニア、ソマリア、スーダン、イエメン)での監視・防除活動を強化するため、さらに4000万ドルの呼びかけをしている。これら5か国では、すでに3500万人以上が急性の食料不安に陥っている。 今期の発生に対する制御活動がなされなければ、この数値はさらに350万人増加する可能性がある、とFAOは推定している。


農村の生計を守ることは必須

FAOは、政府やパートナー機関と協力して防除活動を実施しているだけではない。FAOは、被害を受けた生産者には栽培パッケージ、牧草地が不足している地域では家畜への獣医療や飼料、作物を損失した家庭には、次の収穫期までの期間を乗り越えるための資金を提供することで、農村部の生計保護の活動を行っている。

Desert locust (Schistocerca gregaria) laying eggs during the 1994 locust outbreak in Mauritania/ Christiaan Kooyman – public Domain

すでに20万世帯以上の家庭が生計支援を受けており、この数値はさらに増えると予想されている。 FAOは、2012年初頭にさらに9万8000世帯を支援し、主に人道対応計画を通して、継続的な支援を呼びかけている。

追加資金がなければ、防除への取り組みは2021年1月末から減速または停止せざるをえない状況が予想され、作物を食い尽くす害虫数が急増する地域も出てくる可能性がある。 生計への被害を受ける農家は一層の支援を必要とし、各国のバッタの監視・対応能力もさらに強化する必要がある。

これまでに、ベルギー、カナダ、中国、デンマーク、フランス、ドイツ、イタリア、オランダ、ノルウェー、ロシア連邦、サウジアラビア、スウェーデン、スイス、アラブ首長国連邦、イギリス、アメリカ合衆国、アフリカ開発銀行、アフリカ連帯信託基金、ビル・アンド・メリンダ・ゲイツ財団、ルイ・ドレフュス財団、マスターカード財団、国連人道問題調整部(OCHA)内の中央緊急対応基金(CERF)、および世界銀行グループから資金提供をいただいている。

サバクトビバッタの監視、予測、防除は、FAOの任務の中核の一つである。サバクトビバッタ情報サービスは約50年間、運用され続けている。FAOは、現在の東アフリカでの危機などのバッタ大発生への対応において、現場での確固たる存在、各国政府の連携を図る能力、サバクトビバッタ管理の専門知識により、主要な役割を果たしている。(原文へ

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|ポルトガル|EU議長国として食料システムを主流化する議論をリード

【ブリュッセルIDN=パウロ・カルーソ・ディアス・デ・リマ】

来年は国連食糧システムサミットやCOP26で食料システムの改革が国際議論の中心になるとみられる中、2021年EU議長国(1月~6月)としてEUグループの議論をリードしていくことになるポルトガルの実績と戦略を解説した国連食糧農業機関(FAO)EUリエンゾンオフィサーによる寄稿文。新型コロナ下で世界的に飢餓が広がっているなかで、年間10億トンもの食糧が廃棄される現状を改革するには、かつてない規模の協力体制を構築できるか否かにかかっている。(原文へ

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宇宙は本当に平和目的にだけ使われているのか

【ベルリン/ニューヨークIDN=ラメシュ・ジャウラ

ソ連の宇宙船ソユーズ19号と米国の宇宙船アポロ18号が地球の周回軌道上でドッキングした1975年7月17日、米ソの飛行士が地球上のはるか高い上空で握手を交わした。

ソ連の指導層は「ソ連と米国の宇宙船の共同飛行」は、「宇宙空間の平和的な探査協力に関して多くの国に可能性を拡げた、ソ米間の科学技術協力の発展における大きな一歩」だとして、歓迎の意を示した。

Portrait of ASTP crews/ By NASARestoration by Adam Cuerden -, Public Domain

同じ日の夜、米国では、CBSのニュースキャスターであるウォルター・クロンカイト氏が「宇宙での握手は、未知なるものに向けた人類の前進における新しい時代の到来を告げるものかもしれない。」と語った。

この歴史的な瞬間を振り返って、ゲナディ・ゲラシモフ氏は、1983年10月にノーボスチ通信社に寄稿した書簡の中で、「当時私たちは、その日は忘れられない一日になるだろうと思ったが、今では、そんなことはなかったように思えてくる。」を記している。実際、この宇宙のロマンスは、束の間のものに終わった。

あれから45年。公式の核兵器5大国のうち、米国・ロシア・中国の3カ国が宇宙司令部を設置し、宇宙兵器・対宇宙兵器を保有している。他方で、1967年の宇宙条約は大量破壊兵器を宇宙空間に置くことや天体における軍事活動を禁止し、宇宙の平和的探査と使用に関する法的拘束力のあるルールを規定している。

宇宙条約は1967年10月10日に発効し、110カ国が加盟しているが、その他の89カ国が条約に署名しながらも批准手続きを済ませていない。条約は「核兵器あるいはその他のいかなる種類の大量破壊兵器」も宇宙空間に配備することを禁止している。

「軍備管理協会」のダリル・キンボール事務局長が指摘するように、「大量破壊兵器」(WMD)の語は定義されていないが、通常は、核兵器・化学兵器・生物兵器を含むものと解されている。他方で、WMDの弾頭を搭載した弾道ミサイルを宇宙空間を経由して発射することは、条約上禁じられていない。

宇宙条約は、宇宙は平和目的のために使用されるものであると繰り返し強調しているため、WMDだけではなくあらゆる種類の兵器システムが宇宙空間においては禁止されていると解釈する専門家もいるほどだ。

しかし、米州兵陸軍のティム・ローソン少将は、国防総省は宇宙を陸・海・空と並ぶ戦域として見なしているという見解だ。新型コロナ感染症対策のため今年はオンラインで開催された全米防衛産業協会の「宇宙戦争産業フォーラム」でローソン少将は、「中国は既に対衛星ミサイルを実験し、ロシアは米国の衛星に脅威を与えかねないシステムを軌道上に配備している。」と語った。

Outer Space Treaty parties/ By User:Happenstance, User:Danlaycock et al. – File:Seabed Arms Control Treaty parties.svg, CC BY-SA 2.5

ローソン少将は、朝鮮半島のような地政学的なホットスポットに展開している米軍戦闘部隊に適用されてきた合言葉を引用して、「アメリカ合衆国宇宙軍(米宇宙軍)は、今夜でも戦う用意ができていなければならない。しかし、宇宙軍が完全な作戦能力を得るまでにあと数年かかるだろう。」と語った。

しかし、米宇宙軍は他方で、中国やロシアに対抗する新たな能力を開発しつつあると報じられている。

ローソン少将は、米軍の宇宙関係プログラムの大部分は「裏予算」となっており、外部の人間が内部を伺い知ることは難しいと語る。

米宇宙軍は、米国防総省の統合軍部門の戦種の一つである。宇宙での軍事作戦、とりわけ海抜高度100キロ以上の空間における作戦を担当する。

The logo of United States Space Command/ By United States Space Command – /, Public Domain

米宇宙軍は、宇宙空間におけるあらゆる軍事力を共同で指揮・管制し、他の戦種との調整を図ることを目的に、1985年9月に創設された。米宇宙軍は2002年にアメリカ戦略軍に整理統合されたが、17年間後の2019年8月29日に再び宇宙軍が立ち上げられ、戦域としての宇宙が改めて強調されることとなった。

米宇宙軍の任務は、「紛争を抑止するために、宇宙において、宇宙から、宇宙を通じて作戦を行うこと。必要ならば、攻撃を打ち破り、統合軍に対して宇宙空間での戦闘能力を提供すること。同盟国やパートナーとともに米国の死活的な権益を守ること。」と規定されている。

ロシアで米宇宙軍に相当する組織はロシア航空宇宙軍で、2011年12月1日にそれまで宇宙関連の軍事活動を担当してきた航空宇宙防衛軍とロシア空軍の一部を統合して創設された。指揮の責任範囲には、ミサイル攻撃の警戒、宇宙監視、軍事衛星の管制が含まれる。

ロシア航空宇宙軍総司令部は、航空宇宙軍の4つのセクションの一つで、その他3つは、航空・ミサイル防衛部隊、プレセツク宇宙基地、兵器庫である。航空宇宙軍総司令部の下には、3つのセンターとその補助施設が統合された。

中華人民共和国の宇宙関連プログラムは当初、人民解放軍のとりわけ第2砲兵軍(後にロケット軍に改称)の中に組織されていた。1990年代、中国軍は防衛産業再編成の一貫として宇宙プログラムの総合的な再組織化を図り、西側の防衛調達体制と似たような組織形態になった。

張克倹が委員長を務める「国防科学技術工業委員会」の一部局である中国国家航天局(CNSA)が発射を担当している。ロケット「長征」は中国キャリアロケット技術研究院が製造し、衛星は中国航天科技集団有限公司が製作している。

公社の組織は国有企業だが、関係筋によれば、中国政府は、同公社の運営に国家が積極的に関わる必要はなく、独立の組織として動かす意向であるという。中国の宇宙関連事業は、中国国家航天局(CNSA)が担当している。

宇宙は、他国への優勢を見せつける場面として働くだけではなく、軍事衛星あるいは軍民両用衛星が展開する場所でもある。2018年12月時点でそうした衛星は320基あった。そのうち半分が米国のもので、それにロシア・中国・インドが続いている。

Soyuz (TMA version) Spacecraft/ By The original uploader was Thegreenj at English Wikipedia. – Transferred from en.wikipedia to Commons., Public Domain

ウィキペディアの情報によれば、宇宙にも衛星兵器はある。通信衛星も軍事通信の用途に使える。典型的な軍事衛星は、UHF、(Xバンドとしても知られる)SHF、(Kaバンドとしても知られる)EHFの周波数帯で機能する。米軍は、さまざまな大陸に配備した地上施設と組み合わせた衛星の国際ネットワークを維持している。

衛星通信にとっては、通信の遅れが大きな問題となる。そのため、地理条件や気象条件が通信ネットワーク拠点の選択する際に重要な要素となる。米軍の主要な軍事活動は国外領土で展開されていることから、米政府は、気象条件の好ましい場所にある外国のキャリアに衛星サービスを委託する必要がある。

英国もまた、スカイネット・システムを通じた軍事通信衛星を運用している。「スカイネット5」は、英国の最新の軍事通信衛星システムである。現在、4基のスカイネット衛星が軌道上を周回しており、最近では2012年12月に打ち上げに成功している。(原文へ

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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|視点|「人種差別・経済的搾取・戦争」という害悪根絶を訴えたキング牧師の呼びかけを実行に移すとき(アリス・スレイター「核時代平和財団」ニューヨーク事務所長)

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核兵器は国際法の下で非合法となる – 国連にとって画期的な勝利(ソマール・ウィジャヤダサ国際弁護士)

EEPA(アフリカに関する欧州海外プログラム)アフリカの角地域状況報告(12月20日現在)

*エチオピア連邦政府軍による北部ティグレ州(同州政府を率いるティグレ人民解放戦線(TPLF)への軍事侵攻(11月5日)は、スーダンへの多数の難民流出(過去20年で最悪の1日当たり4000人規模の強制移動/UNHCR)やTPLFと対立関係にあるエリトリアの軍事介入を誘発しており、もはや内戦の域を超えて、「アフリカの角地域」全体に大きな影響を及ぼす国際紛争に発展しつつある。EEPA(事務局長:ミリアム・ヴァン・ライゼンINPS顧問)では、エチオピア連邦政府による厳しい情報封鎖下にある流動的な情勢の中で、国境を越えて逃れてきた難民や人道支援団体、外交筋、市民社会等から収集した最新状況報告(情勢を把握するための参考資料として、各種報道や発表と比較チェックすることを勧めている)を、11月9日以来随時IDNを通じて配信している

軍事状況

エチオピアと難民が多数流入しているスーダン間の緊張が高まっている。スーダン政府は急速支援部隊と装備をエチオピア国境地帯に派遣した。(エチオピア・エリトリア国境に近い)カッサラ州、ガダーレフ州のバニアメール族とアルハブ族が食料・資金支援を行う。現在、スーダンとエチオピア間の交渉は中断したままになっている。

Tigray Province and the map of Ethiopia/ Nationalnews.com

3人のエジプト政府関係者と欧州の外交官の証言によると、アラブ首長国連邦(UAE)がエリトリアのアッサブに保有する軍事基地からエチオピアのティグレ州に対してドローン攻撃を行ったという。ベリングキャット(ファクトチェックとオープンソースインテリジェンスを専門とする調査ジャーナリズムのウェブサイト)は、エリトリアのアッサブ基地に中国製のドローンが配備されていることを確認している。

報道によると、エジプトはトランプ政権の仲介で9月に国交樹立したUAEとイスラエル間の関係強化の動きを憂慮している。とりわけ両国がスエズ運河に代わるルートをイスラエルのハイファから建設するのではないかと危惧している。

報道によれば、エジプトはスーダンに対してティグレ州のTPLFを支援するよう働きかけている。エジプトは、同じくエチオピアの下流に位置する国として影響を受けるスーダンに対して、グランドルネッサンスダムを巡るエチオピアとの交渉で足並みを揃えられるよう関係強化を志向している。

報道によるとスーダン当局はアムハラ人特殊部隊と共にスーダン国境地帯で戦っていたアムハラ民兵の軍服を着たエリトリア兵を捕虜にした。

外交筋によると、「数千人規模の」エリトリア兵がティグレ州内で作戦に従事している。2人の外交官が、エリトリア兵がエチオピア北部国境の街ザランベッサラマバドメの3か所からエチオピアに侵入したと述べている。

Map of Eritorea

報道によると、ティグレ州の小さな街エドガ・ハムスでエリトリア兵による住民虐殺事件が起こった。犠牲となったのは聖職者と教会に避難していた女性達を含む約150人。マリエアム・デンゲラートと周辺の村々(マイメゲルタ、デンゲラート、ツァア、ハンゴダ)は、エリトリア軍の支配下にある。兵士達は家畜を殺害し、地元民らが餓死している。

ティグレ州の州都メケレの住民と情報集に当たっている2名の外交官によると、メケレ市内でエリトリア兵が確認されており、中にはエリトリア兵の制服を着ている者もいれば、エチオピア連邦軍の制服を着ている者いたが、「いずれもエリトリア語訛りでティグリニャ語を話していたほか、ライセンスプレートがないトラックを運転していた。」

エチオピア連邦政府軍がスール社(エチオピアの建設会社)を略奪し略奪品をアジスアベパに運んでいるとする複数の報告がなされている。

アディグラトでは、アディス薬品工場を略奪から守ろうとした助祭と15人の民間人がエリトリア軍の兵士とエチオピア連邦政府軍の兵士に殺害された。

国際的な動き

コリー・ブッカー上院議員(ニュージャージー州/民主党)とトッド・ヤング上院議員(インディアナ州/共和党)は、共同声明を発表しその中で、「アビー・アハメド首相は軍事作戦は完了したと主張しているが、エチオピア紛争は未だに終結からは程遠い状態にある。我々は、ティグレ州内のエリトリア難民(難民キャンプ4か所に約96,000人が暮らしていた)がエリトリア軍によって殺害、拉致、強制送還されているという報告や、より安全な地域に逃れようとする人々が足止めされているとする痛ましい報告に、深く憂慮している。」と述べた。両上院議員はまた、「紛争の国際化は米国の利益を脅かすもの」と指摘したうえで、エチオピアに対して公約を順守するよう求めた。」

米国家安全保障会議のキャメロン・ハドソン元アフリカ担当ディレクターは、「ティグレ州におけるエリトリアの関与を公に語ることについては、戦略・戦術面の配慮から、米国政府内で意見が分かれている。」述べた。

エリトリアのイサイアス・アフェウェルキ大統領の力は弱まっており、TPLFの排除に成功すれば、将軍たちはイサイアス大統領を排除してエリトリアとエチオピアの「統合」(エチオピアに紅海の港へのアクセスを確保)に動くと分析する専門家の見方が報じられている。

欧州連合(EU)は、ティグレ州は周辺地域を不安定化する人道的大惨事の瀬戸際にあると述べた。EUはこの地域に向けた人道支援資金を12月19日に2370万ユーロ増資した。EUの人道支援はエチオピア、ケニア、スーダンに対して実施される。

アントニオ・グテーレス国連事務総長の副報道官は、ティグレ州では多くの民衆が全く支援を受けられておらず、いくつかの援助団体による支援も制限を受けていると述べた。国連は引き続き、民衆が戦闘の影響を受けているあらゆる地域に「迅速かつ自由なアクセスが確保されるよう求めている。」

ティグレ州の状況に関する報道

ティグレ州の首都メケレは、警察とTPLF不在により無法地帯と化している。特に若者らがエチオピア連邦政府軍兵士らの標的となっている。

メケレでは、電気と電話線が断続的に繋がるものの、ティグレ州の大半の地域では繋がらない。インターネットは依然として使えない状況が続いている。

公務員はティグレ州の臨時政府により職場に戻るよう指示されているが、出勤するものはほとんどいない。

ティグレ州の住民の多くが、食料、水、現金、電気、電話へのアクセスができていないと指摘する国連報告書が公開された。

アディグラトのテスファセラシエ・メディン司教は、自宅で安全が確保されていることが報じられた。駐エチオピア教皇大使であるアントワーヌ・カミレリ大司教は、教区における戦闘が激しくなったために集会を欠席していたメディン司教との連帯を表明していた。

エチオピア情勢(ティグレ州以外)に関する報道

引き続き、ティグレ人を対象にした人種選別が行われている。首都アジスアベバ在住の著名なティグレ人活動家や弁護士が19日にエチオピア警察に逮捕された。また、ティグレテレビ局の元職員やティグレ系聖職者らも逮捕されたと報じられた。先週、エチオピア航空に勤務するティグレ人1名も逮捕された。(原文へ

INPSの顧問を務めるミリアム・ヴァン・ライゼン 欧州政策アドバイザーが率いるEEPA(Europe External Programme with Africa) はベルギーを拠点とするシンクタンク。エチオピア、エリトリア、ケニア、ジブチ、ソマリア、スーダン、南スーダン、ウガンダを含むアフリカ諸国の専門家、大学、市民社会組織と協力して、アフリカの角地域における平和構築、難民保護、レジリエンス強化に取組んでいる。また、アフリカの角地域及び地球海中部ルートにおける難民の移動及び人身売買問題に関する報告書を出版している。

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グローバルサミットでバイオエコノミーへの移行を提唱

*「バイオエコノミー」とは、生物資源(バイオマス)やバイオテクノロジーを活用して、天然資源枯渇、気候変動、少子高齢化、食料安全保障など、人類が直面する地球規模の諸問題を解決し、長期的に持続可能な成長を目指す概念であり、第5次産業革命とも言われる社会構造改革の原動力である。そのアウトプットは2030アジェンダ(SDGs)のほぼ全ての項目を網羅している。

【ベルリンIDN=リタ・ジョシ】

グローバル・バイオエコノミー・サミット2020」(11月16~20日)がベルリンで開催され、参加者らは、危機的な脅威に直面している地球環境の現状や、科学の進歩が可能にした様々な機会、さらには新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的な大流行(パンデミック)がもたらした甚大な影響を踏まえて、バイオエコノミーへの移行の必要性を訴えるコミュニケ(共同声明)を発表した。同サミットは、世界各地から参画した約40人の先導的なバイオエコノミーの専門家から成る「国際諮問委員会」(IACGB)が開催したものだ。声明は、「(移行時期について)これほど緊急性を帯びている時はない。」と指摘している。

3回目となる今年のサミットは、COVID-19の影響でオンライン開催(1000人以上が視聴した)となったが、政府・産業界・学術界などから主要な利害関係者が参加した。サミットの目的は、世界中で持続可能なバイオエコノミー政策を展開していくために、忌憚なく話し合いができるプラットフォームを構築することにあった。4日間の会期中、参加者らはバイオエコノミー政策と、世界の持続可能な開発や気候問題との密接な関連について協議した。

国際諮問委員会は当初、2015年の「第1回グローバル・バイオエコノミー・サミット」を支援するために発足し、サミットのプログラム作りを担当してきた。諮問委員会のメンバーは、帰属する政府や組織を代表するのではなく、専門家として個人資格で活動している。現在は非公式なメカニズムだが、専門家のシンクタンクとして信頼性と正当性を獲得しており、さらなる発展に向けて積極的な取り組みを行っている。

Global Bioeconomy Summit 2020

今回の声明は、「バイオエコノミーは、供給サイドでは産業や製造部門で、また、需要サイドでは消費の変革や廃棄物の削減といった分野において、影響力が強い変革の力として頭角を現してきた。」と強調している。実際、近年、世界各国において、地域の実情に応じてバイオエコノミーの実現に向けた産業育成が政策的取り組みとして進められている。

また、バイオエコノミーが人間や地球にもたらす全般的な貢献を3つ指摘している。第一は、コロナ禍、さらにポストコロナの時代において社会を復活させるための主たる要素として、人間の健康や幸福に貢献するバイオエコノミーの側面。第二に、持続可能なバイオエコノミーを前進させる科学的・技術的なブレイクスルー(躍進)。第三に、持続可能なバイオエコノミーに伴い、それをめざす気候関連の行動や生態系、生物多様性の保護である。

さらに声明には、「グローバルで持続可能なバイオエコノミーへのビジョン」という文書が付属している。ビジョンでは、「バイオエコノミーは、持続可能な経済成長を基盤とした経済システムを追求し、資源の消費を減らし、生態系を保護し再生することで、人間や地球の状態をよりよいものにする。生物資源や生物学的プロセスに価値を与えるべく科学を利用することで、バイオエコノミーは、再生可能性や循環性といった原則を取り込む。」と強調している。

さらに、バイオエコノミーは、人間と自然のニーズを調和させることも目的としており、今日の経済システムよりも遥かに優れたシステムを追求する。すなわち、「持続可能な開発のための2030アジェンダ」や17項目の持続可能な開発目標の達成を目指すシステムであり、人間の幸福や社会的不平等を改善し、資源消費を減らして生態系の回復を図ることを目的とした、持続可能な経済成長を基盤とするシステムである。

「ビジョン」は、バイオエコノミーの活動は経済・社会・生態系のレジリエンスを高め、都市と農村社会がたとえ経済危機に見舞われても、苦境を切り抜けることを可能にする、と明言している。グローバルで持続可能なバイオエコノミーは社会のあらゆるレベルを包含し、全ての人々の生活の質を向上させる一方、経済成長に対する生物物理的な限界を尊重するものである。

Sustainable Development Goals affected by bioeconomy activities. Blue arrow: socioeconomic targets; green arrow: ecological targets; red arrow: clean industry and economic targets./ by Tobias Heimann

また、自然はバイオエコノミーにおける最大のインスピレーション源であると指摘している。生物は、貴重な再生可能な物質であり、エネルギー源となるだけではなく、自然のサイクルやシステム、プロセスに関する重要なノウハウを提供する。生命科学は、新たな高価値の解決策や応用策を生み出すために、自然界の生物のこうした特徴や能力、機能を探求する学問である。

「現在、多くのバイオイノベーションが依然として初期段階にあるが、すでに、社会や健康、生態系に明確な利益をもたらす前途有望な解決策を示しつつある」とビジョンは指摘している。

ヘルスケア部門における先進的な事例としては、例えば、がん免疫療法や生分解性インプラントやセンサー、バイオプリンティング器官など、生物学的療法がなされている。

繊維・ファッション業界では、バイオイノベーションが持続可能な素材とプロセスに貢献している。例えば、バイオ技術を用いて大量生産が可能となったクモ由来の新素材「スパイダーシルク(柔らかくしなやかで、鋼のように強い)」や、バイオ技術による防水加工、染色、洗濯プロセスなどである。

IT部門では、高度に効率的なデータ貯蔵のためのDNAテスト(DNAストレージ)がすでに成功しているし、大気汚染を測定する装置に培養細胞が組み込まれるようになった。食料・飼料産業におけるバイオイノベーションは、善玉菌を含んだ健康食品や、菜食主義者向けに開発されたタンパク質オプション(大豆由来の代替肉等)、廃棄食品から生まれた高価値の産品(農業廃棄物由来のバイオプラスチック)を生み出している。さらに、微生物を使った肥料のように、農業に対する解決策、動物の飼料となり人間の健康にも貢献することを目的とした、肥満と非感染性疾患対策の解決策も開発されている。

産業部門では、合成生物学や微生物工学がプラスチックや鉄に替わる生体材料につながるだけではなく、より持続可能な製造プロセスを刺激してきた。バイオテクノロジーとそれに関連した技術の収斂が、持続可能な開発を推し進め、革新的なスタートアップ企業の立ち上げや、グローバルなパートナーシップを通じた雇用創出を加速する潜在能力を大いに発揮している。

今回のサミットでは、ドイツのアンヤ・カルリツェク教育・研究相が冒頭で登壇し、同じくドイツのユリア・クロックナー食料農業相が、持続可能なバイオエコノミーにおける農業と食料システムの重要な役割を強調した。

国連食糧農業機関(FAO)屈冬玉事務局長は、技術と社会的インパクト、倫理を結びつける必要性と、複数の利害関係者から構成されるプラットフォームとしての「グローバル・バイオエコノミー・サミット」の意義を強調した。

Joachim von Braun/ Global Bioeconomy Summit 2020

ドイツ政府がサミットを主催・支援し、東アフリカ、ASEAN(タイが代表)、EU委員会、ラテンアメリカ・カリブ海地域、日本が公的パートナーとなった。これらの地域や国々の同サミットへの貢献は、この動きがいかに世界的なものであるかということ、そしてバイオエコノミーがいかに多様なものであるかを示していた。

「バイオエコノミーは、地域で応用され、グローバルにつながっているものです。人々がバイオエコノミーを地域のニーズと状況に応用していることには感心させられます。」と国際諮問委員会の共同議長であるホアキム・フォン・ブラウン教授は語った。

バイオエコノミーが持つ多様な側面は、サミットのサイドイベントとして開催された「バイオエコノミー若者大使ワークショップ」にもよく表れていた。このワークショップは、若い世代がそれぞれの国で地域のバイオエコノミーの概念をいかにして形成するか、それを成功に導くのに必要な前提条件は何かについて活発に話し合う出発点となった。

8人の「バイオエコノミー若者大使」の一人である米国のロニット・ランガー氏は「より良い未来を実現するために優れた政策が必要であることを若い参加者が深く理解していること、そして、今日我々がいる場所から未来へ向かってどう進んでいくかについて人々がビジョンを持ち寄ったことに感銘を受けました。」と語った。(原文へ)|フランス語 |

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