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ホワイトハウス首脳会談:欧州は団結、ウクライナは屈服を拒否

【ニューヨークATN=アハメド・ファティ】

ホワイトハウスは数々の緊張した外交の舞台となってきたが、月曜の会談は大陸全体の不安と一国の存亡を背負う重みを持っていた。ドナルド・トランプ大統領は、ウクライナのウォロディミル・ゼレンスキー大統領を迎え、フランスのエマニュエル・マクロン大統領、ドイツのフリードリヒ・メルツ首相、英国のキア・スターマー首相、イタリアのジョルジャ・メローニ首相、フィンランドのアレクサンデル・ストゥッブ大統領に加え、欧州委員会のウルズラ・フォン・デア・ライエン委員長、北大西洋条約機構(NATO)のマルク・ルッテ事務総長らが出席した。

Ahmed Fathi, ATN
Ahmed Fathi, ATN
欧州の断固たる団結

欧州諸国は連帯を示す決意で臨んだ。スターマー首相は会談を「有意義で建設的」と表現し、マクロン大統領は「安全保障の保証は欧州大陸全体の安全に関わる」と強調した。さらにメルツ首相は、ロシアの領土要求を米国がフロリダを譲渡するのに等しいと例え、その不当さを浮き彫りにした。メッセージは明白だった──ウクライナは孤立していない、そしてモスクワの条件は和平の基礎にはなり得ない。

プーチンの要求:和平か、それとも降伏か

共同声明の背後には、クレムリンの姿勢が重くのしかかっていた。報じられた提案には、クリミアのロシア領としての承認やドネツク、ルハンスクの割譲が含まれる。これは真の和平提案ではなく、最後通牒である。筆者の見解では、外交に見せかけた降伏条件にほかならない。

ゼレンスキー大統領自身も断固として譲らなかった。「領土の問題は私とプーチンの間のことだ」と語った。これは虚勢ではなく、生存のための決意である。譲歩すれば戦争は終わらず、ウクライナの主権そのものが消え去るからだ。

可能性と危険の狭間で

今回の会談では停戦も突破口となる合意も生まれなかった。しかし今後の進路が示された。

  • 一つは、ウクライナが領土を譲らずに、欧州資金で支えられる約900億ドル規模の米国製兵器パッケージに基づくNATO型の安全保障保証を確保する可能性。これは危ういながらも名誉ある勝利だ。
  • もう一つは、ゼレンスキー大統領が妥協を拒み、欧州が断固とした姿勢を崩さず、戦争が長期化し民間人の苦難が続くシナリオ。
  • 第三の道は、まず停戦で信頼を築くというものだが、ロシアが依然としてウクライナ都市を攻撃している状況では、その信頼性は疑わしい。
  • そして常に背景にあるのが、米国の方針転換リスクだ。もしワシントンが支援を縮小すれば、欧州は長年避けてきた規模で負担を単独で担わざるを得なくなるかもしれない。
問題の核心

今回の首脳会談は、勝利や条約の場ではなく、決意を示す場だった。欧州はウクライナと肩を並べ、ワシントンは選択肢を残し、キーウは妥協に見せかけた屈辱を拒絶した。

空襲警報で目覚める日々を送る一般のウクライナ市民にとって重要なのは、それが恥辱なき安全をもたらすかどうかである。彼らは都市を約束と引き換えに差し出すために戦っているのではない。自らの土地で尊厳を持って生きるために戦っているのだ。

ホワイトハウスでの会談は一つのことを明らかにした──平和は可能である。しかしそれは降伏ではなく、正義の上に築かれたものでなければならない。(原文へ

INPS Japan

Original URL: https://www.amerinews.tv/posts/white-house-summit-europe-unites-ukraine-rejects-capitulation

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米国は“ブラックリスト”で国連創設80周年サミットから政治指導者や代表を排除するのか?

【国連IPS=タリフ・ディーン】

193加盟国からなる国連総会が9月中旬、創設80周年を記念するハイレベル会合を開催するにあたり、1947年の米国・国連本部協定が存在するにもかかわらず、どれだけの政治指導者や代表団が米国への入国を拒否されるのだろうか。

米国のドナルド・トランプ大統領は6月、「外国人の入国を制限し、外国テロリストやその他の国家安全保障上の脅威から米国を守る」と題する大統領布告を発表した。ホワイトハウスのこの布告は、実質的な「ブラックリスト」として19か国からの国民に米国ビザを発給しないというものである。

UN Secretariate Building. Photo: Katsuhiro Asagiri
UN Secretariate Building. Photo: Katsuhiro Asagiri

このリストには、アフガニスタン、ミャンマー、ブルンジ、チャド、コンゴ共和国、キューバ、赤道ギニア、エリトリア、ハイチ、イラン、ラオス、リビア、シエラレオネ、ソマリア、スーダン、トーゴ、トルクメニスタン、ベネズエラ、イエメンが含まれており、さらにエジプトも審査対象となっている。

だが、この措置は国連代表や政治指導者の入国禁止につながるのだろうか。ビザの発給拒否は、加盟国代表や国連職員らが本部地区に支障なくアクセスできることを保証した本部協定第11~14条の違反となる。協定はまた、国連関連の渡航に必要なビザを米国が円滑に発給することを義務付けている。

この協定および「国連の特権および免除に関する条約」は、米国における国連の存在と運営の法的枠組みを定めており、代表や職員、その家族の特権と免除、紛争処理などの実務的事項を網羅している。

Stéphane Dujarric/ UN Photo/Evan Schneider
Stéphane Dujarric/ UN Photo/Evan Schneider

これまでに米国は、イスラエルに批判的な報告を行ったパレスチナ人権状況担当国連特別報告者フランチェスカ・アルバネーゼ氏に制裁を科している。これについて国連報道官ステファン・ドゥジャリック氏は7月、特別報告者への制裁は「危険な前例」を作ると警告した。

「特別報告者やその他の国連専門家に対する一方的制裁は受け入れられない」と述べ、各国が報告に異議を唱える権利はあるものの「国連の人権制度と建設的に関与すべきだ」と強調した。

フォルカー・テュルク国連人権高等弁務官も、米国に制裁撤回を求め、アルバネーゼ氏や他の人権理事会任命者に対する攻撃と脅迫は「直ちにやめるべきだ」と訴えた。

一方で米国は、イスラエルとの和平努力を妨害したとしてパレスチナ自治政府やPLOの幹部にも制裁を科している。西側諸国の一部がパレスチナ国家承認に動く中での措置である。

こうした経緯から、米国が本部協定を順守するのか、それとも無視するのかが問われている。

ニューヨーク大学グローバル問題センターの元国際関係学教授アロン・ベン=メイル氏はIPSに対し「トランプ氏は話題の中心に居座るためなら制度や法律を操作することをいとわないだろう」と述べた。彼は米国内で権威主義的統治を押し付けるだけでなく、世界の指導者として外国首脳に頭を下げさせようとしている、と指摘する。

「誤った関税政策を含む多くの行動は、他の指導者より優位に立つことを示すための権力行使の一環だ。9月の国連総会でも問題を引き起こす可能性がある。」とベン=メイル氏は警鐘を鳴らした。

トランプ氏はイスラエルを批判する安保理決議やパレスチナ国家承認に関する決議を阻止するだろうとも付け加えた。

ただし同氏は、大統領令には外交ビザ保持者を対象外とする例外規定がある点を指摘。「特段の介入がない限り、19か国の外交官が国連総会などのために米国を訪れる際、この入国禁止措置の影響を受けることはない。」と述べた。

世界市民社会連合(CIVICUS)のマンディープ・S・ティワナ事務総長も「米国は国連本部をニューヨークに置くことで莫大な経済的・政治的利益を享受している。政府代表や市民社会代表の入国を制限すれば極めて不合理だ」と警告した。

インスティテュート・フォー・パブリック・アキュラシー事務局長でルーツアクション・ドットオーグ全国代表のノーマン・ソロモン氏は「国連に対する米国の軽視は目新しいものではない」と指摘。歴代政権も国連を自国の意向に従わせようとしてきたが、一定の誠意を持って関与した大統領もいたと述べた。

「現政権は国連原則への軽蔑を隠そうとせず、国連を弱体化させることしかしていない。外交官を国連会議から締め出すことは傲慢の極みであり、国連の基本理念を踏みにじる行為だ」とソロモン氏は強調した。

ATN
ATN

同氏はさらに、リストから外れているイスラエルについて「パレスチナ人民に対するジェノサイド的戦争を展開しており、その背景には米国からの絶え間ない武器供与がある」と指摘した。

米国は安保理で拒否権を行使できる一方、総会では各国の不信と反発が高まるだろうと同氏は述べている。

過去にも米国は国連外交官に不当な渡航制限を課してきた。2000年8月にはロシア、イラク、キューバが「差別的扱い」に抗議。いわゆる「テロ支援国家」とされた国の外交官には、ニューヨーク市から25マイル圏外への移動に国務省の許可が必要とされた。

2013年9月、戦争犯罪で起訴されていたスーダンのオマル・アル=バシール大統領が国連総会出席のための米国ビザを拒否された際、スーダン政府は国連法務委員会に強く抗議した。

1988年にはPLOのヤセル・アラファト議長が米国ビザを拒否され、総会は異例にもジュネーブで開催された。アラファト議長は演説冒頭で「1974年以来2度目の総会演説が、友好的なジュネーブで行われるとは思わなかった」と皮肉った。(原文へ)

本記事は、国連を題材にした著書『No Comment - and Don’t Quote on That』からの抜粋を含む。同書はIPS国連局シニアエディターで元国連職員、スリランカ代表団元メンバーであるタリフ・ディーン氏の著作で、Amazonで入手可能(著者サイト経由:https://www.rodericgrigson.com/no-comment-by-thalif-deen/)。

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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「スタートアップ・ネーション・フォー・グッド」:イスラエルのテクノロジー革新がSDGsに沿って世界的課題に挑む

イスラエルは「スタートアップ・ネーション」と呼ばれ、特に水不足や再生可能エネルギーの必要性といった喫緊の地球規模課題に対して、革新的な技術的解決策を見出す世界的リーダーのひとつであり、国連持続可能な開発目標(SDGs)の複数分野に大きく貢献している。

【テルアビブINPS Japan=ロマン・ヤヌシェフスキー】

Roman Yanushevsky
Roman Yanushevsky

イスラエルが「スタートアップ・ネーション」と称されるのは、その活気あるイノベーション・エコシステムのためである。しかし近年、多くのイスラエル発ベンチャーは世界の最重要課題の解決に軸足を移している。単なる利益追求型技術にとどまらず、国連の持続可能な開発目標(SDGs)に照準を合わせ、水不足、食料安全保障、再生可能エネルギーといった地球規模課題に取り組むスタートアップが増えている。これは、イスラエルの起業精神が国境を超えて世界に影響を拡大していることを示している。

Watergen

水技術は注目分野のひとつである。Watergenのように、大気から安全な飲料水を生成する装置を開発した企業は、SDGs 6「安全な水とトイレを世界中に」に直接貢献している。

SDGs Goal No. 6
SDGs Goal No. 6

2009年、起業家アリエ・コハビ氏により設立されたWatergenは、1リットルあたり250ワット時の電力で空気から飲用水を生成できる「大気水生成機(AWG)」を開発した。当初は軍隊への供給を想定していたが、現在では災害地域やアメリカ大陸、アジア、アフリカの遠隔地など、水不足に苦しむ民間地域にも広がっている。

こうしたソリューションは、安全な水へのアクセスが限られている地域で即効性のある救済策を提供し、長期的な強靭性の構築にも貢献している。2020年には、Watergenがガザ地区の小児病院に現地の水道事業者と協力して機器を設置し、人道危機下での有効性を示した。

NETAFIM

1965年にネゲブ砂漠で設立されたNetafimは、近代的な点滴灌漑技術のパイオニアとして世界的に知られている。水不足に直面した農業者と技術者が、最小限の資源で効率的に作物を栽培する方法を探す中で誕生した。

根元に必要な水と養分を直接届ける点滴灌漑は、従来の方法と比べて最大60%の節水を実現しながら収量を大幅に増やした。蒸発や流出による水の損失を抑え、一滴の水も無駄にしない農法は、干ばつや気候変動に直面する地域で特に重要である。

SDGs Goal No. 2
SDGs Goal No. 2

現在Netafimは110か国以上で事業を展開。インドでは政府と協力して数百万人の小規模農家に安価な点滴灌漑システムを普及させ、食料増産に寄与。アフリカではケニアや南アフリカで食料安全保障プロジェクトに技術を提供し、半乾燥地でも栽培を可能にしている。

ラテンアメリカではブラジルやメキシコでコーヒーやサトウキビ、野菜生産に導入され、オーストラリアや米国ではブドウ園や果樹園に活用されている。こうした取り組みにより、作物の品質向上と水資源の保全を両立させている。

同社はSDG2「飢餓をゼロに」とSDG6「安全な水とトイレを世界中に」に直結する取り組みを推進し、農業の未来を形づくる世界的リーダーとなっている。

Tethys Solar Desalination(TSD)

TSDは太陽エネルギーを利用して海水を低コストかつ持続可能に淡水化する画期的技術を開発した。従来の化石燃料依存型の淡水化施設に比べ、維持費が低く、温室効果ガス排出を削減できる。

同社の技術は、太陽熱で海水を蒸発させ、凝縮して真水を得る自然の蒸発・凝縮プロセスを模倣したもの。完全に再生可能エネルギーで稼働するため、送電網が未整備の沿岸部や乾燥地でも利用できる。

TSDのソリューションは、従来型の施設を持つ余裕がない途上国に特に有効であり、小規模な漁村から大都市まで規模を柔軟に調整できる。アフリカやアジアでの試験導入では、家庭や農業に不可欠な水供給を実現した。

TSDはSDG6(安全な水)、SDG7(エネルギーをみんなに)、SDG13(気候変動対策)に寄与し、脆弱地域における気候レジリエンスを高めている。

Solaredge
SDGs Goal No. 13
SDGs Goal No. 13

2006年創業のSolaredgeは、スマートエネルギー技術の世界的リーダーであり、革新的なソーラーインバーターとエネルギーマネジメントシステムで知られる。同社が導入したDC最適化インバーターシステムは、各ソーラーパネルが独立して最大効率で稼働できるようにし、発電損失を大幅に低減した。

その後、エネルギー貯蔵、電気自動車(EV)充電、バックアップ電源、スマートホーム統合へと事業を拡大。世界130か国以上で導入され、欧州や米国の大規模発電所から、アジア・アフリカの住宅屋根、途上国の農村電化プロジェクトまで広がっている。

Solaredgeは電力網の安定化と再生可能エネルギーの統合にも貢献し、SDG7(エネルギーをみんなに)とSDG13(気候変動対策)を支援している。

H2PRO

2019年にテクニオン(イスラエル工科大学)からスピンオフしたH2Proは、グリーン水素の製造効率を飛躍的に高める「E-TAC(電気化学―熱活性化化学分解)」技術を開発した。水を水素と酸素に同時分解する従来の電解法と異なり、段階を分けることで効率を改善し、消費電力とコストを削減、安全性も高めた。

SDGs Goal No. 7
SDGs Goal No. 7

この技術により、化石燃料由来と競合可能なコストで水素を供給でき、輸送・製造・エネルギー貯蔵分野の脱炭素化を促進する。水素はトラックや船舶、航空機の燃料、あるいはグリーンスチールや肥料生産に活用可能である。

H2ProはBILL GATES、HYUNDAI、ARCELORMITTALなどの投資家から支援を受け、欧州、アジア、北米で実証実験を進めている。SDG7(エネルギー)、SDG13(気候変動対策)、SDG9(産業と技術革新)に寄与している。

まとめ

イスラエルには約1300の気候関連企業があり、そのうち946社はクリーンエネルギー、水インフラ、エコ農業、持続可能な移動、革新的素材などに特化したスタートアップである。政府の助成、PLANETechのようなプログラム、1億3000万ドル以上の学術投資が、持続可能なイノベーションをさらに後押ししている。

イスラエルのスタートアップは、空気から水を取り出し、マイクログリッドを稼働させ、グリーン水素や新たな蓄電技術を提供することで、SDG6(安全な水とトイレ)やSDG7(エネルギーをみんなに)に資する実践的かつ拡張可能な技術を生み出している。こうして「スタートアップ・ネーション」は、世界的課題に意味ある解決策を提示し、持続可能な未来への道を切り開いている。(原文へ

This article is brought to you by INPS Japan in partnership with Soka Gakkai International, in consultative status with UN ECOSOC.

INPS Japan

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カザフスタンと日本、戦略的パートナーシップ深化を誓う

【アスタナThe Astana Times】

カザフスタンのカシム=ジョマルト・トカエフ大統領は8月25日、日本の岩屋毅外相と会談し、両国間の拡大戦略的パートナーシップの強化について協議した。

アコルダの発表によると、両者は貿易、投資、輸送・交通、さらに文化、人道、国際多国間分野における協力について意見を交わした。

トカエフ大統領は、岩屋外相の訪問が二国間関係に新たな弾みを与えるとの期待を表明した。
「日本はアジアにおける我々の信頼できる緊密なパートナーです。日本政府との包括的な協力の深化を重視しています。石破茂首相に私の温かい挨拶をお伝えください。カザフスタンへの公式訪問を楽しみに準備しています。我々の関係は着実に発展していると言えます。」とトカエフ氏は述べた。

岩屋外相は温かい歓迎に謝意を表し、日本が緊密な協力に取り組む姿勢を改めて示した。
「カザフスタンと日本は、国際秩序の強化に関心を寄せる戦略的パートナーです。今回の訪問が二国間関係のさらなる発展への道を開くと確信しています」と述べた。

会談では、国際的および地域的な課題についても議論が行われた。(原文へ

INPS Japan/ The Astana Times

Original URL: https://astanatimes.com/2025/08/kazakhstan-japan-pledge-to-deepen-strategic-partnership/

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ミャンマーにおける「組織的拷問」を国連報告書が暴く

【国連IPS=オリトロ・カリム】

ミャンマーの治安状況は著しく悪化している。昨年3月に発生した大地震の被害からいまだ立ち直れない中、内戦の長期化に伴う軍事攻勢が続いている。2025年には人道危機が重大な転換点に達し、国連は軍と武装勢力による深刻な人権侵害の数々を指摘した。

8月12日、国連のマンデートに基づき設置された「ミャンマー独立調査メカニズム(IIMM)」は年次報告書を発表し、人権侵害の立証と加害者特定において大きな進展があったと明らかにした。報告書は、軍管理下の拘置施設での組織的拷問、学校・病院・住宅に対する空爆、さらにロヒンギャ難民に対する民族浄化の継続を詳述している。

「ミャンマーの拘置施設で組織的な拷問が行われていることを示す目撃証言などの重要な証拠を確認した」と、メカニズム責任者のニコラス・クムジャン氏は述べた。「施設を統括する指揮官を含む加害者の特定が進んでおり、訴追に踏み切れる司法当局を支援する用意がある。報告書は、残虐行為の頻度と深刻さが一層高まっていることを強調している」

報告は2024年7月1日から2025年6月30日までの期間を対象とし、1300件以上の証拠を収集。600件の目撃証言、膨大な写真や映像、法医学的資料を含んでいる。2021年のクーデター以来、軍は市民を大量に拘束し、多くを恣意的に逮捕、拷問にかけてきた。国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の2024年の統計によれば、2021年以降の市民の犠牲者は約6000人にのぼり、そのうち約2000人は軍の拘禁下で死亡している。

アムネスティ・インターナショナルのジョー・フリーマン研究員は「数千人のミャンマー人拘束者が、医療も法的支援も食料も不十分なまま、尋問施設や刑務所で苦しんでいる」と警告。「拷問や虐待は常態化しているが、訴えれば報復として暴行、独房監禁、性的暴力を受ける危険がある」と述べた。

目撃者の証言によれば、2歳ほどの子どもまでが「親の代理」として拘束されている事例もある。被拘束者は殴打、電気ショック、絞殺、爪の剥ぎ取りといった拷問を受け、殺害される例もある。さらに、強姦や集団性的暴行、異物挿入、性器の焼灼、強制的な全裸や侵襲的検査、生理用品・産後ケア用品の拒否など、性暴力が広範に行われている。加えて、同性愛嫌悪や女性蔑視の罵声、暴力の脅迫も横行している。

Map of Myammar
Map of Myammar

報告書は、こうした行為の加害者に多数の高位指揮官が含まれると明言。これに対し、ミャンマー軍は「平和と安定の確保」を優先事項と強調し、最近の戦闘を「テロリスト」のせいにした。

また、ラカイン州では軍とアラカン軍の衝突により戦闘が激化。アラカン軍による斬首や拷問、即決処刑などの人権侵害も確認された。一方、軍とその関連組織も女性、子ども、高齢者を含む民間人の無差別殺害や空爆を繰り返している。特に州都シットウェでは出入り口を封鎖し、住民の移動や人道支援物資の供給を妨げている。

さらに報告書は、2016年と2017年の「浄化作戦」に関する調査も行った。この作戦で複数のロヒンギャ集落が破壊され、数千人がバングラデシュに逃れ、深刻な治安不安と性暴力が発生した。国連難民高等弁務官事務所(UNHCR)によると、2025年の新たな戦闘により15万人以上のロヒンギャ難民がバングラデシュへ流入している。

IIMMは、難民キャンプや被害の大きな村で証言を収集し、生存者の体験を全面的に記録するとともに、具体的な加害者の特定を目指している。現在も市民団体、NGO、メディア、各国政府と連携し、責任追及と不処罰の終結に取り組んでいる。

ただし治安上の障害に加え、国連予算削減が活動を脅かしている。2025年の予算は27%削減され、2026年には正規職員を20%削減せざるを得ない見通しとなった。特に証人保護や性暴力・児童犯罪の調査資金は年内に枯渇する恐れがある。

「加害者が『誰かが見ている、証拠を集めている』と信じることが極めて重要です」とクムジャン氏は強調した。「そうした認識こそが、犯罪の記録と訴追に資する証拠収集を継続するうえで大きな効果を持つのです」(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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4年を経てもなお不明確 WHO報告が浮き彫りにした国際協力の欠如

新型コロナウイルスの起源はいまだ謎に包まれ、秘密主義、停滞した研究、そして国際的な不作為が進展を阻んでいる。

国連IPS=シュレヤ・コマール】

世界を一変させた新型コロナウイルスの発生から4年以上が経過したが、その起源はいまだ解明されていない。SARS-CoV-2は動物から人間へ自然に感染したのか、それとも研究所からの偶発的な流出なのか。世界保健機関(WHO)の最新報告書は新たな明確さを欠き、国際協力と科学的透明性に深刻な疑念を投げかけている。

WHOの「新興病原体起源に関する科学諮問グループ(SAGO)」は2025年6月27日、第2次報告書を公表した。しかし数年にわたる調査にもかかわらず、その成果は大きく批判され、目新しい発見に欠けるとされた。最大の問題は「含まれていないもの」にある。中国から求められていた重要データが提供されず、調査に大きな空白を残したのである。

WHO
WHO

『Viral: The Search for the Origin of Covid-19』の共著者であるリドリー卿は次のように語った。
「この報告書は、数年前に少数の独立研究者が明らかにした内容以上のものをほとんど付け加えていない。5年をかけ、23人もの人員を動員して『ほとんど役に立たない』文献を出すに至ったのは、率直に言って恥ずべきことだ。」

新型コロナの起源解明は単なる学術的関心にとどまらない。ウイルスがどのように人間社会に入り込んだかを理解することは、次なるパンデミックを防ぐ上で不可欠である。科学者たちは、今後も新たなコロナウイルス流行の可能性は高いと見ている。野生動物市場からの自然な感染か、研究所事故かを突き止めることは、将来の備えを大きく左右する。

SAGO報告書は動物由来説と研究所流出説の両方を依然として「可能性あり」としつつ、さらなる証拠が必要だと指摘する。しかし、その証拠はいまだ得られない。

「中国が当初から透明性を保っていれば、すでに原因を特定できていたはずだ」と、2020~2021年にホワイトハウスの新型コロナ対策調整官を務めたデボラ・バークス博士は語った。

大多数のウイルス学者はいまも自然起源説を支持している。2025年7月15日に公開されたドキュメンタリー『Unmasking COVID-19’s True Origins』でも専門家が「ウイルスは自然起源であると理解する研究者が圧倒的多数だ」と述べている。しかし初期サンプルや完全な記録にアクセスできない以上、両説は科学的に排除できず、政治的緊張も調査を曇らせ続けている。

今回の報告書は、世界的保健政策の大きな節目の直後に出された。2025年5月20日、世界保健総会は「WHOパンデミック協定」を採択した。これは将来の感染症流行に備えるための法的拘束力を持つ条約であり、コロナ禍で露呈した深刻な欠陥――協調の遅れ、データ共有の停滞、ワクチンや治療への不平等なアクセス――を是正することを目的としている。

同協定は、病原体情報の迅速な共有、疾病監視における協力強化、ワクチンなど医療ツールの公平な分配を加盟国に義務付ける。ただし国家主権は尊重され、公衆衛生の決定権を譲渡することは求められない。病原体サンプルとその利用利益の共有に関する条項などは、2026年に最終調整される予定である。

WHOが2022年6月9日に出した第1次SAGO報告も、両説を「あり得る」とし、中国当局に追加データ提供を求めていた。その後も透明性が欠如したまま時間が経過し、科学者たちの苛立ちは一層強まっている。協力の呼びかけは、このウイルスだけでなく次なる脅威への備えでもある。

一方で、新型コロナや将来の呼吸器疾患に対抗するための重要研究は停滞している。2024年、オハイオ州立大学はSARS―CoV―2や長期的後遺症に関する新治療法を研究するため、1,500万ドルの助成を受けた。その一環で低酸素性呼吸不全の治療薬を試験する有望な臨床研究が進んでいたが、米国立衛生研究所(NIH)は資金を突然打ち切った。

SDGs Goal No. 3
SDGs Goal No. 3

打ち切りにより50万ドルの節約にはなったが、すでに150万ドルが投入された後であり、研究は中止を余儀なくされた。その結果、毎年約100万人が新型コロナやインフルエンザなどで入院する呼吸不全に対し、有効な治療法が遅れる事態となった。オハイオ州立大学のある研究者は次のように嘆いた。

「これは私たち全員にとって大惨事だ。いつ残りの助成金を失うか分からない状況で、皆、不安と絶望の中にいる。私たちは人々の健康を良くするために懸命に働いてきただけなのに、攻撃されていると感じる。次のインフルエンザ・パンデミックは必ず来る。家畜で起きていることは本当に恐ろしいのに、私たちにあるのは酸素と希望だけだ。」

科学界の指導者たちは、今起きていることとは逆に「研究投資を増やすべきだ」と強調する。停滞や資金不足に陥った研究を復活・拡充し、特に中国のようなホットスポット地域の研究者と国際的な連携を深めなければならない。そうして初めて、次なる脅威に備えられる。

WHO自身も「SARS-CoV-2の起源解明作業は未完である」と認めている。だが透明性、資金、政治的意思が欠ける限り、この状況は長く続くだろう。そのとき世界は、次のパンデミックに対しても再び無防備なままにされる可能性が高い。(原文へ)

INPS Japan

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フィジーの真実和解委員会、数十年の政治危機を経て信頼と平和の回復へ

【シドニーIPS=キャサリン・ウィルソン】 

トンガ西方の中部太平洋に位置するフィジーは、豊かな自然とビーチリゾートで名高い一方、38年間にわたり、民主的に選ばれた政権が転覆され、人権が損なわれる政治的混乱を繰り返してきた。これまでに4度の武装クーデターが発生している。

しかし、2022年の総選挙で平和的な政権交代を果たしたシティベニ・ラブカ首相と連立政権は、過去と向き合い、より平和で強靭な未来を築くため、「真実和解委員会(TRC)」の設置を進めている。

ラブカ首相(第1回目のクーデターを主導した人物)は昨年12月に成立した関連法案を支持する議会演説で、この委員会が「クーデター期の政治的激変に関する真実を、自由かつ率直に語り合う場をつくり、生存者に癒やしと決着を促す」役割を果たすと説明。現在は、国の和解と民主的規範への回帰を監督することを誓っている。

TRCの任務は、1987年、2000年、2006年に起きたクーデター、その際の人権侵害、そしてフィジーの先住民とインド系住民の間で権力闘争を絶え間なく引き起こしてきた不満を調査することにある。焦点は真実の共有と再発防止であり、加害者の訴追や被害者への賠償は行わない。

今年1月、委員長に就任したマーカス・ブランド博士(国連や欧州連合で要職を歴任し、移行期司法の分野で豊富な経験を持つ)は、「この委員会はフィジー国民が自らの歴史と向き合うためのものです…目的は責任を追及して傷を深めることではなく、より良い未来に向けて前進することです」と語った。委員には他に、元高等法院判事セコベ・ナキオレブ氏、元テレビ記者ラチナ・ナス氏、元フィジー航空機長ラジェンドラ・ダス氏、リーダーシップ専門家アナ・ラケレタブア氏の4人が加わる。

首都スバに拠点を置くNGO「太平洋平和構築センター」のフローレンス・スワミ事務局長は、IPSに対し、TRCは国民の間に信頼を築くために重要だと述べた。「第一歩として、人々が自分の体験を安心して語れる安全な場をつくることが大切です」と強調する。

The Fiji Parliament, Suva, Fiji. Credit: Josuamudreilagi

フィジーの政治的混乱は過去に根を持つ。19世紀のイギリス植民地支配期、先住民の土地権を強化し、収奪を防ぐ政策が取られた。これらの権利は1970年の独立時に制定された最初の憲法でも再確認された。

一方で、砂糖プランテーションでの労働と植民地開発促進のため、インドからの計画的移民が進められた結果、社会構造は大きく変化。20世紀半ばには、インド系人口が先住民人口を上回り、平等な権利を求める声が高まった。

Fiji’s capital city Suva. Credit: Maksym Kozlenko
Fiji’s capital city Suva. Credit: Maksym Kozlenko

こうして政治は権力闘争に巻き込まれ、1987年、当時軍将校だったラブカ氏が初のインド系政権(ティモシ・ババドラ首相)を転覆。ラブカ氏は1992年から1999年まで首相を務めた後、マヘンドラ・チョードリー首相率いるインド系政権が誕生したが、2000年に民族主義者ジョージ・スペイト氏が第2次クーデターを起こし、国会で政府要人を数週間拘束した。さらに2006年にはフランク・バイニマラマ陸軍司令官が第3次クーデターを実行し、当時のカラセ首相政権を汚職と分断政策の是正を名目に打倒。以後8年間、軍事政権を率い、2014年の総選挙まで続いた。

クーデターは大きな人的被害をもたらした。特に2006年以降、無法状態、民族間暴力、軍・警察の暴力、体制批判者の逮捕や拷問が頻発。2009年に政府が施行した非常事態令は、加害に関与した国家当局者に免責を与えた。アムネスティ・インターナショナルは翌年、恣意的逮捕や脅迫、ジャーナリストや批判者への暴行など全ての人権侵害の即時停止を求めた。

現在、人口約90万人のうち、メラネシア系が約56%、インド系は海外流出の影響で約33%となったが、社会の分断は根強く、過去の傷も癒えていない。

「多くのインド系移民は、より良い仕事や賃金を得られるという虚偽の口実でフィジーに連れて来られました…先住民はこの重大な決定についてほとんど意見を聞かれませんでした」と、南太平洋大学ジャーナリズム学科長のシャイレンドラ・シン博士はIPSに語る。

TRCは今後18か月間、公聴会を開く予定で、ラブカ首相は自らの関与について最初に証言すると約束している。「すべてを真実として誓って話すつもりです…少なくとも人々に、なぜそうしたのかを理解してもらいたい」と今年1月にメディアに語った。委員会は被害者と生存者を中心に据える方針で、「彼らの経験は説明責任を促し、癒やしを進め、より統一的で思いやりある社会を築く上で不可欠」としている。

一方で、対立や痛みの記憶を呼び覚ますことによるリスクや、分断の再燃防止の必要性を指摘する声もある。国内専門家は、TRCを超えて、長年の不満の原因である不平等や政治的疎外といった構造的課題に取り組み、「すべての人が生まれた国に帰属意識と忠誠心を持てるようにする」必要があると訴える。特に「先住民の政治的支配に対する不安」と「インド系住民が国家から平等に扱われていないという疎外感」への対応が求められる。

過去のクーデターで決定的役割を果たし、国内秩序維持を名目に行動を正当化してきたフィジー軍も、民主的統治の定着には不可欠だ。2023年には、軍が政治・選挙への介入を終わらせるための内部和解プロセスが始まり、今年4月にはTRCとの公式会合で「過去の過ちを繰り返さず、民族や背景、政治信条を問わず全市民に奉仕する憲法秩序の守護者であり続ける」と誓った。

委員会は約2年間の活動終了後、社会的結束を支えるための施策や政策改革に関する最終報告書を提出する予定だ。スワミ氏は「提言が紙の上だけで終わらず、実行されることが重要です。誰が責任を持って実施するのか、制度をどのように説明責任に服させるのかが問われます」と強調する。

将来について、スワミ氏は「誰もが安全を感じ、平等な機会があり…誰もが自分の可能性を最大限に発揮できる国」にフィジーがなることを願っていると語った。(原文へ

This article is brought to you by IPS Noram in collaboration with INPS Japan and Soka Gakkai International in consultative status with ECOSOC.

INPS Japan

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岐路に立つアフリカ開発:雇用・公平性・資金調達への緊急対応なければSDGs達成は危ういと報告書が警告

【国連IPS=シェーヤ・コマール】

アフリカは持続可能な開発目標(SDGs)の3分の2以上で前進を見せているものの、「働きがいのある人間らしい雇用」「ジェンダー平等」「社会的保護へのアクセス」などの分野では、2030年目標達成には歩みが遅すぎる―。

これは、国連ハイレベル政治フォーラム(HLPF)のアフリカ・デー・セッションで発表された最新の「アフリカ持続可能な開発報告書(ASDR)」が示した中心的な警告である。

アフリカ連合(AU)の「アジェンダ2063」と国連の「アジェンダ2030」との整合性を追跡する本報告書は、希望と課題の双方を浮き彫りにした。アフリカの開発努力は着実に進展しているが、資金不足やデータ欠如、高い若年失業率やジェンダーによる排除といった構造的障害が依然として勢いを削いでいる。

世界で最も経済成長の速い国々を抱える一方で、大陸は年間最大7620億米ドルの持続可能な開発資金不足に直面している。社会的保護のカバー率は著しく低く、脆弱層のうち何らかのセーフティネットを利用できるのはわずか19%にとどまる。多くのアフリカ諸国では社会的保護への公的投資がGDPの3%未満で、世界平均を大きく下回っている。

「現在の進展ペースでは、2030年までにSDGsを達成するには不十分だ」と報告書は警告し、包摂的成長、地域統合、制度能力構築を大陸全体で加速させる戦略の必要性を訴えている。

健康分野では平均寿命や疾病対策など改善が見られる一方、妊産婦死亡率や医療アクセスの格差は依然深刻である。ジェンダー平等も、法的障壁、高い暴力被害率、無償ケア労働の負担により制約されている。

SDG8(働きがいのある人間らしい雇用と経済成長)については、生産性の低さ、非正規雇用の多さ、若年失業が課題であり、包摂的な雇用創出と経済変革の必要性が指摘されている。観光業など一部分野で回復は見られるが、1人当たりGDP成長率は2021年の2.7%から2023年には0.7%へと低下。教育・雇用・職業訓練のいずれにも属さない若者(NEET)は全体の23%を超え、女性の割合が高い。観光業のGDP寄与率も2023年で6.8%にとどまった。

経済ショック、気候変動、地政学的な不安定さが、雇用創出や持続可能な成長を妨げている。報告書は、データに基づく戦略、革新的な資金調達、統合的政策により開発格差を埋め、世界的・大陸的アジェンダ双方に沿った強靱で公平なシステムを構築する必要性を強調している。

「単に雇用を生み出すだけでは不十分で、安全な労働条件を確保しなければならない」と、アフリカ連合委員会のセルマ・マリカ・ハダディ副委員長は述べた。

国連のアミナ・モハメッド副事務総長は、アフリカ諸国が抱える不均衡な出発点に触れ、「アフリカは意思決定の場にいないことがあまりに多く、その影響を最初に受ける」と指摘。「若者たちは、私たちが与えている以上のものを受けるに値する」と述べ、若年層の教育への包摂的投資の必要性を訴えた。

議論では、技術的・財政的支援の拡充、気候資金の拡大、違法資金流出への対策、社会的・経済的不平等の是正が焦点となった。参加者らは、SDG17(パートナーシップ強化)、包摂的な社会的保護制度、若者や女性が主導するイノベーションを変革の鍵として強調した。

ASDRの発表は、各国戦略を支えるデータ駆動型の知見を提供する重要な節目となった。(原文へ

INPS Japan/IPS UN Bureau Report

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G7が動く―パレスチナ国家承認に向けた西側の外交転換

【国連INPS Japan / ATN=アハメド・ファティ】

フランスとサウジアラビアが共同議長を務めた「二国家解決に関する国連ハイレベル会議」は、例によって慎重な期待と決まり文句から始まった。だが閉幕時には、現代の外交において稀に見る明確な姿勢転換が現れた。長年棚上げにされてきたパレスチナ国家の承認をめぐり、世界の潮流が変化したのである。しかも今回の変化を主導したのはグローバル・サウスではなく、G7の一部加盟国だった。

外交のドミノ効果

Ahmed Fathi.
Ahmed Fathi.

始まりはフランスだった。エマニュエル・マクロン大統領は7月24日、フランスが9月の第80回国連総会でパレスチナ国家を正式に承認すると発表した。その5日後、英国のデービッド・ラミー外相は、歴史的なバルフォア宣言を引き合いに出し、「イスラエルがガザでの軍事作戦を停止し、真摯な二国家解決の枠組みに復帰しない限り、英国はパレスチナを国家として承認する」と表明した。彼の発言は重く、明快だった。「ベンヤミン・ネタニヤフ政権の二国家解決拒否は、道徳的にも戦略的にも誤りだ。」

さらに7月30日、カナダのマーク・カーニー首相も9月の承認を約束。条件として、パレスチナ自治政府(PA)の内部改革と、ハマスを除外した2026年の選挙計画の提示を求めた。

わずか1週間のうちに、G7諸国のうちフランス、英国、カナダの3カ国が、長年続いた西側諸国の曖昧な外交姿勢を転換した。G7のほぼ半数がパレスチナ国家の承認に踏み切る動きを見せたことになり、ポルトガルも追随の意向を示している。

亀裂の拡大:イスラエルの孤立が進む

注目すべきは、これらの承認がイスラエルの「敵対国」からではなく、長年の「友好国」からなされた点である。そしてその動機は、イスラエル現政権への失望感にある。

特に欧州でその傾向は顕著だ。イスラエルの強固な支援国だったオランダは、初めてイスラエルを「国家安全保障上のリスク」と見なし、ガザでの人道違反や極右政権を理由に、ベングビル国家安全保障相およびスモトリッチ財務相に対する制裁と渡航禁止措置を導入した。欧州連合(EU)全体での追加制裁も議論されている。

これは単なる評判の失墜ではない。EUや北大西洋条約機構(NATO)といった多国間機構において、制度的な孤立が進んでいるのである。フランス、アイルランド、スペイン、ノルウェー、ポルトガルが主導する「承認の連鎖」に加え、ドイツやベルギーも国民からの圧力を受けている。イスラエルはこれまでにないレベルで西側の支持を失いつつある。

予想外の成果を上げた国際会議

国連総会決議79/81に基づき開催された本会議は、形式的には典型的な国連会議(本会議、情熱的な演説、記念写真)だったが、次のような三つの決定的な成果を生んだ。

1. 西側主要国間の政策整合
象徴的な外交儀礼に見えたものが、フランス、英国、カナダによる具体的な政策表明へと変化した。彼らの発表は単なる理念の表明にとどまらず、期限を定めた政治的約束だった。

2. 「エルダーズ」による道徳的訴え
国連報道協会(UNCA)主催の記者会見では、メアリー・ロビンソン元アイルランド大統領、フアン・マヌエル・サントス前コロンビア大統領、ゼイド・ラアド・フセイン元国連人権高等弁務官がガザ危機について直接言及。ロビンソン氏は、イスラエル政府が「ジェノサイドを行っている」と糾弾し、B’Tselemとイスラエル人権団体Physicians for Human Rights–Israelの報告を引用。サントス氏は「ハマスという概念の消滅を目指すのは戦略的幻想」と述べ、ゼイド氏は「二国家解決はもはや理論ではなく、正義と人道の表現だ」と訴えた。

3. ハマスの武装解除に関するアラブ諸国の合意
サウジアラビア、カタール、エジプトが初めて共同で「ハマスの武装解除と統治からの退場」を求める声明を発表。従来、地域内の分裂により統一見解が出なかったが、今回は異例の一致を見た。これは、パレスチナ承認には「反占領」だけでなく、統治の改革も必要であるという議論に正当性を加える。

G7が持つ力と限界

G7諸国による今回の動きは、次のような潜在力を秘めている:

  • 外交的影響力: 承認は交渉の構図を変える。パレスチナの国際的地位が向上し、イスラエルには交渉再開の圧力がかかる。
  • 国連での票の力学: G7の票が加われば、国連安全保障理事会での議論に影響を与え、米国の拒否権行使にも圧力をかける。
  • 国際法上の立場: パレスチナは国際刑事裁判所(ICC)や国際司法裁判所(ICJ)での法的根拠を強化し、占領・戦争犯罪・アパルトヘイトに関する訴追が現実味を帯びる。
  • 経済的影響: EU制裁、貿易凍結、イスラエル国債の格下げなどが現実味を帯びる。

しかし、承認だけですべてが解決するわけではない。占領が終わるわけでもなければ、ガザの再建やパレスチナ政治の統一が自動的に進むわけでもない。ただし、外交的合意の地平を変える力はある。そして、国際社会において「合意」は力なのである。

米国、トランプ、そして孤立した姿勢

ドナルド・J・トランプ氏が第47代米国大統領として復帰したことで、米国はG7の中で唯一、パレスチナ承認に明確に反対する立場をとっている。トランプ大統領はイスラエルを全面的に擁護し、ICCの調査に反対し、本会議を「テロリストを称え、同盟国を罰する国連の茶番」と切り捨てた。

トランプ政権はUNRWAなど国連機関への資金提供を打ち切り、安全保障理事会での合意を妨害し、ネタニヤフ政権への無条件支援を継続している。

だが、この姿勢は西側諸国の中でますます孤立しつつある。かつて「団結した西側」を主導していたワシントンの立場は、今や分裂し、「責任と国家承認を追求する路線」と「免責と膠着を選ぶ路線」に分かれつつある。

信頼には期限がある

この一週間が突きつけたメッセージは明確だ。イスラエルは西側民主主義諸国の間で信頼を急速に失っている。それは「反イスラエル感情」によるものではなく、現政権の政策によるものだ。

米国が国連でイスラエルを庇護し続けている一方で、道徳的合意は変わりつつある。二国家解決はもはや「口先だけの原則」ではない。それは国際社会の「誠実さの試金石」となっている。

G7によるパレスチナ承認は紛争を終わらせるものではない。だが、「無限に続く占領と、それを容認するレトリック」の時代に終止符を打つ兆しである。

そして今回、正義を訴えているのは、グローバル・サウスだけではない。

英国、フランス、カナダが声を上げた。
米国は抵抗を続けるかもしれない——
だが、歴史はどうやら、その背を向けて動き始めている。(原文へ

Original URL: https://www.amerinews.tv/posts/analysis-g7-revolts-west-turns-on-israel-over-palestine

INPS Japan

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アラブの「MAGA」リセット?

この記事は、戸田記念国際平和研究所が配信したもので、同研究所の許可を得て転載しています。

【Global Outlook=ラルビ・サディキ】

ドナルド・トランプ米大統領が世界で最も豊かな湾岸3カ国を訪問したことで、アラブのMAGA(Make the Arab world Great Again:アラブ世界を再び偉大に)の展望を再考する必要性が浮き彫りとなった。その狙いはアラブ世界をトランプ的なイメージで変革することではない。つまり、中東における「他者」についての偽りのイデオロギー的言説や、民主主義への責務に対する無関心に基づいたMAGAではない。むしろアラブのMAGAは、過去と未来を共有する共同体という共通の夢への攻撃に反撃するものでなければならない。本稿で詳述するように、アラブの連帯と民主主義の探求という価値を取り戻さなければならない。() 

ガザの悲劇に映し出されたアラブの不安定さ

アラブの栄光は遠い歴史の塵の中に永遠に埋もれてしまうのだろうか?現代の4億人のアラブ人は、連帯の希望を抱かなくなったのだろうか?アラブの団結は、超国家主義的な現代では空虚な標語になってしまったのだろうか?答えは見つからないかもしれない。いや、むしろガザがその答えなのである。ソフォクレスやエウリピデスの悲劇の書物の一葉のように、ガザはアラブの傷を再び開いた。18カ月を超えるガザでの破壊と殺戮は、アラブ大衆のパレスチナの不幸な人的状況への感情的な結びつきを強めた。

まさにガザこそ、現代アラブ世界に不安定さの亡霊が取り憑いていることを物語っていると言わざるを得ない。社会経済的な機会や民主的権利の後退において不釣り合いな経験をしていたとしても、アラブ社会はイスラエルがガザに加えた破壊と殺戮の悲劇的な結果を通じて、多様な人間的・文化的・地理的な領域において不安定さを体験している。今日のアラブ人は、ガザが飢えに苦しみ、アラブの安全のための仕組みが整備されていないため、このような不安定さを経験している。ガザの悲劇は、アラブ世界の国家や市民社会が自分たち全体にとっての危険を見落としているように見えるという教訓を示している。

まるでアラブ人が、自分たちの共同体や国家がどのように暴力的に再編されるのかも分からないまま、「格好の標的」の集まりにされてしまったかのようだ。今日はガザとパレスチナ、明日は他のアラブ地域かもしれない。パレスチナ人に対する不正義の表明により、汎アラブ機関の本質と、戦争と平和の時代におけるその有効性について、より広範な議論が喚起される。

アラブの部族やイスラム教の正義と名誉の規範は、共同体の安全に対する集団的責任を守る最低限の道徳的義務という信念に基づいている。これは、イスラム教の教えとアラブの伝統が時空を超えて伝承してきたものである。米国の外交的指導がサウジアラビアのロビー活動を強いることになり、トランプはシリアに対する長年の制裁を解除した。この正しい政策をもってしても、ガザを戦争から解放し、18年にわたるイスラエルによるガザ地区の封鎖から解放することには至らなかった。ガザに関する世論を悩ませている問題の一つは、市民社会や公的機関を含む集団的安全と責任の規範を活用できていないことである。

イスラエルのベンヤミン・ネタニヤフ首相は2024年9月、国連で地図を掲げ、中東における「祝福」と「呪い」という二元的な解釈を示したが、これは力こそが「何」が正しく「誰」が正しいかを決定するという、分割戦略を象徴している。彼の領土構想は、拡張主義的かつ植民地主義的な視点の典型であり、往年の戦略書に書かれた恐怖そのものである。黙示的にも明示的にも、ネタニヤフの地図製作はアイデンティティーを抹消する道具のように見える。この抹消の仕方は、ファノンの「地に呪われたる者」(1961年)にあまりにも明確に描かれている。ネタニヤフによるガザとヨルダン川西岸を除外したアラブ空間の再構築、あるいはヨルダン川から地中海までの領域を覆う大イスラエルの企ては、軽視してはならない。

民主的アラブ連盟なくして連帯なし

偉大な反植民地主義の抵抗と意識の継承者として、アラブ人は、アルジェリアの1962年の革命や英雄オマル・アル=ムフタールの反ベニト・ムッソリーニ抵抗など、自由と平等な人間の尊厳のための歴史的な戦いを見失ってはならない。だからこそ、ガザがその答えなのだ。ガザは、アラブの独立闘争の際に、平等な自由のために団結して立ち上がった人々の、受け継がれた道徳的核心を呼び覚ます。

アラブ人にとっての自由と人間性の道徳を再考し、規範的に望ましい、連帯の集団的構造の目的と戦略を考案することは、共通の脅威(経済的、環境的、文化的、地政学的脅威)を認識し、それに備え、対応する能力の共有を可能にするに違いない。アラブの安全・連帯・安全保障の構造は、既存の資産を守るだけでなく、繁栄と集団的安全という共通の目標を実現する新たな政策と整合させるために、戦略的に再構築し、文明のレパートリーである人的・物的・技術的システムおよび相互関係の枠組みを再設計することに向けられたものでなければならない。

1945年に創設されたアラブ連盟(AL)は、今日では過去の遺物のように見える。イスラエルの空爆作戦の間、ガザに具体的な支援を提供することができなかった。ガザ戦争は、非国家主体がイスラエルと戦う際に用いる、複雑な行為の連鎖を露呈している。これらの行為は、様々な形態の対抗的な政治によって支えられている。アラブ諸国はイスラエルと新たな戦争をするつもりはない。アラブ連盟の1950年「共同防衛・経済協力条約」は、依然として絵に描いた餅にすぎない。

民主的な統治システムが必要である。硬化した組織を活性化するために、アラブ市民は例えば22の加盟国から議員を選出し、アラブ連盟に彼らの意向を反映させることが考えられる。それは、加盟国の機関や市民社会の人々が、アラブ全体の福祉、主権、安全に影響を与える決定に平等に関与するものである。

アラブ人と「富のパラドックス」

アラブの富は、いわば「要塞」を生み出したわけではない。アラブ人は、理論的には世界の多くの大国と競合し、それらを出し抜ける資産を持っているはずだ。アラブ人は、1,300万平方キロメートルを超える面積を有しており、世界で2番目に広い陸地の所有者である。ロシア人だけがより多くの領土(1,700万平方キロメートル超)を有している。強大な欧州連合(EU)は、地球の表面積の450万平方キロメートル弱を占めるにすぎない。しかし、EU諸国の総合力は驚異的である。EUは名目上で優位に立ち、世界第3位の経済規模(それぞれ米国と中国に次ぐ)を誇っている。EUの購買力平価(PPP)は中国や米国と拮抗している。

理論上は、そうすると、アラブ諸国は米国に対し優位に立っている。アラブ諸国の総面積は1,300万平方キロメートルで、米国の1,000万平方キロメートル弱よりも広い。人口統計では、3億5,000万人の米国人に対し、アラブ人は5億人近くいる。しかし、アラブ諸国のGDPを合計しても、米国の28兆米ドルに対して3.5兆米ドルを超えることはない。ドイツの4.5兆米ドルより少ない。この最小限の定量的測定の目的は、アラブ諸国の潜在力に最適化の余地がある力関係を特定することである。この簡単な分析作業では、グローバルな舞台で誰が何をどれだけ得ているのかを比較数値で検証している。この分析作業により、不安定さが原因で、本来持っている文化的・物的資産に比べて、実際には十分に活かされていない、つまり資産を下回る成果にとどまっている様子が描き出されている。

アラブ人を最も脅かしている国、イスラエルが、ガザとヨルダン川西岸、占領下のゴラン高原を除けば、数百万平方キロメートルどころか数千万平方キロメートルの土地に存在し、人口が1,000万人であることを知れば、この不安定さの真実はさらに衝撃的なものとなる。

アラブ人はかつて、「アラビア語を話す土地」という想像から自信と安心感、さらには誇りを得ていた。こうして、故エジプト人作曲家サイード・メカウィの声が1980年代から90年代にかけて高らかに響き渡った。アラビア語圏の何百万もの人々は、彼の歌に合わせて熱狂的に声を上げ、自分たち全員がコーランとイスラム教の言語であるアラビア語を話し、それを息遣いとしているという思いに高揚した。この共有された言語的・宗教的・文明的背景は、間主観性、交差性、多文化的アイデンティティーの主要な源泉である。エジプト、アルジェリア、イラク、クウェート、リビア、モロッコ、シリア、サウジアラビア、イエメンなど、かつて「アラブ国家」という想像に正統性を与えた主要国は、社会統合と正義というアラブの価値観を促進しながら、相互性と互恵性の絆を新たにしなければならない。

アラブのMAGAのリセット?

アラブ世界を再び偉大にするためには、排外主義に頼ることなく、共通の未来と野望を既存の資産と現実的に調和させることが必要である。「アラブ版BRICS」も「アラブ版NATO」も見えてこない。ここで疑問が生じる。このような戦略的地域パートナーシップの不在は、アラブ人全体にとって危険なのだろうか?40年後、50年後もアラブ人は依然として地球上の1,300万平方キロメートルの不動産を所有しているのだろうか? シリアが攻撃された場合、イラクは救援に来るのだろうか?モロッコが外部の脅威に直面した場合、リビアは支援を提供するだろうか?スーダンが新たな分裂に直面した場合、エジプトは連帯の手を差し伸べるだろうか?最近の動向を見る限り、そうではないようである。

個々のアラブ諸国の「自国第一」(「チュニジア第一」「シリア第一」「ヨルダン第一」など)という政策は、集団的な安全を高めるための積極的なアラブ諸国間の真のパートナーシップや能力構築と結びつかなければ、暗い展望しかもたらさない。アラブ人は、世界の戦略的舞台で尊敬と影響力を確立するため、グローバルな国家運営の新たな手段を獲得すべく協力する必要がある。

アラブの共同連帯の探求は、単に政治家や国家がそれを追求したり信じたりするのをやめたからといって、消えるものではない。今日のガザは、アラブ人が連帯を生み出し、政治、社会、経済、知識を民主的にリセットすることによって対抗しなければならない、不安定さの真実を示す痛ましい象徴として存在している。

ラルビ・サディキは、日本学術振興会招聘研究員として、千葉大学に在籍している。中東国際問題評議会のノンレジデント・シニアフェローであり、戸田記念国際平和研究所の「民主主義の危機と課題」プログラム中東・北アフリカグループの研究コーディネーターも担当している。また、書籍シリーズ「Routledge Studies in Middle Eastern Democratization and Government」の編者も務めている。直近の共著 「Revolution and Democracy in Tunisia: A Century for Protestscapes」 は2024年にOxford University Pressから出版されている。

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