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一部の勢力を除き、世界の指導者らは多国間主義を支持

【ニューヨークIDN=ラメシュ・ジャウラ】

新年が明けようとする中、世界に蔓延る「信頼欠乏症」の問題に対処しようとのアントニオ・グテーレス国連事務総長のアピールと、国連総会を「世界の主要な平和構築機関」にしようとのマリア・フェルナンダ・エスピノサ・ガルーセ国連総会議長の訴えは、国際社会による緊急の行動を世界に呼びかけるものとなるだろう。2018年の国連総会第73会期が、単独行動主義の台頭と大規模な移住が発生する中で開催されただけに、これらの訴えには一層切実なものがある。

国連総会に出席した各国政府首脳らは、国連をすべての人々にとって意義あるものにするとういうテーマのもとでまとまり、国際社会はルールに基づく多国間の秩序を通じてのみ変化する諸問題に対応できるという考えを強調していたが、この圧倒多数のコンセンサスは、米国やハンガリー、イスラエルによる反対意見によって損なわれた。

Antonio Guterres/ Public Domain
Antonio Guterres/ Public Domain

グテーレス事務総長は、国連総会第73会期一般討論の開会演説で、両極化とポピュリズムが台頭し、世界は重度の「信頼欠乏症」にかかっていると警告した。さらに、「多くの人々の生活水準は向上したが、それを当たり前のこととして受け止めてはならない」と指摘したうえで、「多国間主義は、それが最も必要とされている時期に批判にさらされている。」と述べた。

グテーレス事務総長は、「民衆と地球に対する大規模な生存上の脅威に直面し、しかし同様に、共通の繁栄に向けた機会が強まっている時期にあって、共通善に向けた集団的で常識的な行動を前進させる以外に方法はありません。そうすることで、私たちは信頼を再び構築できるのです。」と述べ、各国の指導者らに対して、国連を中心としながらルールに基づく秩序を守り抜いていくよう呼びかけた。

グテーレス事務総長は、「世界は混乱と混沌の中にあるが、希望の風も吹いている」と述べ、エリトリアの近隣諸国との和平の動きや、南スーダンでの対立集団間での和平協定の調印、北朝鮮や米国、韓国の首脳による会談を挙げた。

国連総会のエスピノサ議長(エクアドル出身で、国連史上4人目の女性議長)は、多国間主義は国際社会が直面している諸問題に対する唯一の現実主義的な対応であると指摘したうえで、「誰も人間の苦しみを無視することはできません。戦争や紛争、経済危機、環境の悪化は、あらゆる人々に平等に悪影響を及ぼしています。」と語った。

権利を奪われ、居住地を追われ、仕事を失った数多くの人々の声に耳を傾けるよう加盟国に訴えたエスピノサ議長は、「この会場で議論されていることは自分たちの日常生活に影響を及ぼすものとして理解されなくてはなりません。」と指摘し、自身の任期中に、ジェンダー平等を推進し、「移住に関するグローバル・コンパクト」を履行し、女性や若者、障害者への雇用機会提供に力を入れていく、と強調した。

エスピノサ議長は加盟国に対して、女性に対する暴力と闘い、地球を破壊する政策を反転させ、国連総会を「世界の主要な平和構築機関」と位置付けるよう呼びかけるとともに、「気候変動や生物多様性の棄損、人身売買、環境汚染、移民・難民の大規模な強制移動、テロリズム、民族紛争の脅威は、いまや国連の優先課題となっています。」と強調した。

国連総会第73会期の総括討議にみられたように、世界の指導者らは、一般討論を通じて、気候変動から核不拡散、長引く紛争、大規模な移民、経済的不平等、「持続可能な開発に向けた2030アジェンダ」を通じた極度の貧困の削減といった、国際社会が直面している様々な火急の問題について、それぞれの見方を共有した。

トランプ大統領がイランを批判、ロウハニ大統領は「経済テロ」に言及

米国のドナルド・トランプ大統領はこうした高邁な理念に対して明らかに不快感を示した。トランプ大統領は国家主権の重要性を訴え、諸国は隣国を尊重し国民の利益を擁護してはじめてより良く協力し合えると論じた。さらに、「道義的現実主義という米国の政策は、過去のドグマや、信用できないイデオロギー、そして何年も何度も間違っていることが証明されてきたいわゆる専門家たちに囚われない事を意味する。」と述べた。

President Donald Trump poses for his official portrait at The White House, in Washington, D.C., on Friday, October 6, 2017.
President Donald Trump poses for his official portrait at The White House, in Washington, D.C., on Friday, October 6, 2017.

トランプ大統領は、イランの指導者らは混乱と死と破壊をもたらし、国境、国家の主権を尊重せず、国の資源を略奪していると非難し、「世界で最もテロ支援をしている国が世界で最も危険な兵器を持つことを許すことはできない。」と断じたうえで、「イランとの核合意(包括的共同作業計画:JCPOA)からの米国の脱退と、イランに対する核関連制裁を再導入するという自らの決定を改めて表明した。

しかし、イランのハサン・ロウハニ大統領は、米国政府はあらゆる国際機関を機能不全に陥らせる決意を持っているかのようだ、と反論した。国際原子力機関(IAEA)が確認しているように、イランはそのあらゆる公約を遵守していると強調したロウハニ大統領は、米国は核合意からの撤退を正当化し、他国に対してその違反を強要するための説得力のない言訳に頼ろうとしている、と批判した。

「違法な一方的制裁は、それ自体『経済テロ』に他なりません。」とロウハニ大統領は述べ、米国による「いじめ」行為に対する反対を表明した。いかなる国も強制されて交渉のテーブルにつくことはありえず、「倫理と国際法の原則を否定する威嚇と不当な制裁」が終われば対話は再開されるだろう、と付け加えた。

外交関係の打開

また、外交関係の打開や、政治的進展を伺わせる発表もあった。北朝鮮の李容浩外相は、朝鮮半島の新たな平和に向けてなされている努力を強調した。

李外相はまた、「金正恩委員長は、朝鮮半島を核兵器のない平和な土地に転換するとの目標をもって積極的な外交活動を展開しており、南北朝鮮間と米朝間で進展が見られる。」と指摘したうえで、「世界で最も紛争が懸念されてきた朝鮮半島は、平和と繁栄の揺りかごへと変わることだろう。」と付け加えた。

アフリカの複数の首脳からは、民主主義拡大と持続可能な開発の進展に向けた努力を強調するとともに、多国間協力の強化と安保理改革が呼びかけられた。

シエラレオネのジュリアス・マアダ・ビオ大統領は、同国における現政権から野党への平和的な権力移譲は同国の民主的なガバナンスに対するコミットメントを示すものだと語った。ビオ大統領は、包括的な安保理改革を呼びかけるなかで、アフリカは安保理に唯一恒久的な議席を有せず、非常任理事国においても少ない代表しか出していない大陸であると指摘した。

UN General Assembly Hall/ Wikimedia Commons
UN General Assembly Hall/ Wikimedia Commons

アフリカの角」諸国の閣僚らは、20年に及ぶエチオピア・エリトリア間の紛争の終結や、エリトリア・ソマリア間の外交関係の再確立など、同地域における和解の機運について指摘した。

「アフリカでもっとも紛争の激しい地域の一つである『アフリカの角』は、アフリカの希望になりつつあります。」とエチオピアのウォックナー・ゲベイョウ・ネゲウォ外相は述べ、対エリトリア制裁の解除を真剣に考慮するよう安保理に求めた。

同様に、ジブチのマフムッド・アリ・ユスフ外務・国際協力相は、同国とエリトリアの大統領が最近「この2つの兄弟国」間の新しい1ページを開くことに合意した点を想起した。

グローバル・コンパクト:対立する声

安全で秩序ある正規移住のためのグローバル・コンパクト」の採択にあたって、発言者らは移民を支援する努力を強化するよう呼びかけた。ブラジルのミシェル・テメル大統領(当時)は、「移民は長引く危機により追い詰められ、故郷を離れるというリスクのある決断を取らざるを得なくなっている。」と指摘したうえで、「国際社会には、移住のためのグローバル・コンパクトを通じて、彼らを保護する義務があります。」と語った。

メキシコのエンリケ・ペニャ・ニエト大統領は、「この2年間、すべての移民の人権の尊重、責任の共有、主権国家の完全尊重といった『コンパクト』の基本原則を確立するために取り組んできました。マラケシュでこの『コンパクト』が採択されたことで、国連加盟国は、移住を国際的に管理する際の基本的な文書を手にしたことになります。」と語った。

しかし、これに反対する意見もあった。一部の加盟国はこうした見方に対抗し、例えばハンガリーのシーヤールトー・ペーテル外相は、「コンパクト」が同質的な社会ではなく多文化社会を促進する立場であることから、ハンガリー政府がそれに署名することはないだろうとの見解を示した。

シーヤールトー外相は、「ハンガリーの観点からすれば、移住は社会を不安定化させるものです。とりわけ、異なる文化圏からの移民を多数抱える国にとって、移民はあらゆる人の利益になるとは限らない。」と語った。また、「国境の侵犯は権利とはみなせません。」と強調したうえで、「移住は基本的人権などではないのです。」と語った。

ハイレベル会合

国連総会はまた、会期中にテーマ毎のハイレベル会合を複数開催した。一般討論の前日にあたる9月24日には、元南アフリカ共和国大統領である故マンデラ氏の指導力と人類への貢献を称えるネルソン・マンデラ平和サミットを開催した。

世界の指導者らは、全会一致で採択した政治的宣言(文書A/73/L.1)により、2019年から2028年までを「ネルソン・マンデラ平和の10年」と定めることを決定した。加盟国の首脳・代表らは、あらゆる国家の主権平等の原則を支持し、諸国の領土的主権と政治的独立を尊重し、武力の使用およびその威嚇を控える義務を果たすとのコミットメントを再確認した。

9月26日、エスピノサ国連総会議長は「核兵器の全面的廃絶のための国際デー」を祝い促進するハイレベル会合を招集した。一日を通じて、50カ国以上の首脳や政府高官、オブザーバー国家の代表、市民社会の代表らが集い、大国による既存の核戦力の近代化から、危険な核技術がテロリストの手に落ちるリスクに至るまで、核兵器がいかにして人類を危機に陥れているかについて論じた。

国連総会はまた「結核を終わらせるための連帯:世界的流行への緊急グローバル対策」と題する政治宣言を、史上初となった「結核に関するハイレベル会合」で採択した。加盟国は、2030年までに結核を撲滅するとのコミットメントを再確認し、各国および世界レベルでの行動を加速し、この予防可能な疾病と闘うために投資と革新を進めていくことを約束した。

各国首脳らは、結核が開発途上の地域や国々に偏って悪影響を及ぼす依然として世界の死因トップ10に入る深刻な感染症であり、多剤耐性結核の存在がこれまでの取り組みを台無しにしかねない現状を踏まえて、撲滅に向けたリーダーシップを発揮していくことを誓った。

また翌日に「持続可能な開発のための2030アジェンダの文脈における非感染性疾病の予防と制御に向けて複数の利害関係者とマルチセクターによる取り組みを強化する」というテーマで開催されたハイレベル会合で、国連総会は、これらの取り組みを強化し、全政府的な取り組みを通じて政策の一貫性を強化することを世界の指導者らが約束する宣言を採択した。

SDGs logo
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重要なことは、すべての人々が、より安価で安全、効果的かつ良質の医薬品と診察を受けられる方向に、保険制度の充実が図られなければならないといということである。

10月10日、国連総会は、結核と非感染性疾病に関する宣言を含む2本の決議を採択した。12月4日には、「持続可能な開発に向けた2030アジェンダ」の履行において中所得国が直面しているギャップと阻害要因に関する別のハイレベル会合を開催した。

一日がかりの会合で、発言者らは、富裕国によって形作られてきた開発モデルに疑問を呈した。エスピノサ国連総会議長は、「中所得国が直面している阻害要因に適切に対処しない限り、これらの国々が持続可能な開発目標(SDGs)を達成することはないだろう。」と強調した。

アンティグア・バーブーダのガストン・アルフォンソ・ブラウン首相もこれを受けて、「持続可能なグローバル開発に向けた協力の転換的なモデルを構築するために協力していくことが人類の利益になります。」と語った。

国連総会は12月18日、世界人権宣言ウィーン宣言及び行動計画、「人権擁護者に関する宣言」を祝った。また、一連のハイレベル会合をとおして、人権と基本的自由を促進して擁護し顕著な貢献をした国連人権賞の受賞者らを称えた。

ミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官は、あらゆる人々の人権を擁護することこそが平和を実現する唯一可能な道だとの見方を示した。そして、「基本的人権と人権宣言に謳われた自由への攻撃は、宣言の失敗によるものではなくむしろその成功に由来するものだ。」と指摘したうえで、加盟国に対して、全ての人々の平和と正義の実現に向けて努力するよう求めた。

会期の主要部分において、国連総会が人権理事会の報告を取り上げ、安保理枠の拡大について検討する中で、恣意的な選択と二重基準への懸念が再び浮上した。

また国連総会は第20回全体会議において、オブザーバー国家であるパレスチナに対して2019年のG77プラス中国(国連における最大の途上国連合グループ)の議長国就任時に国連総会に参加する追加の権利と特権を付与することを決定した。

さらに、国連総会は初めて、ガザ地区におけるハマスの活動を非難する決議案を審議した。記録付き投票において過半数の支持を得たが、採択に必要な3分の2の得票には至らなかった。

コフィ・アナン氏を偲ぶ

第73会期ではまた別の重要なイベントもあった。9月21日、国連総会は、8月18日に死去した元国連事務総長の故コフィ・アナン氏を追悼した。加盟国や元同僚、家族らが、アナン氏は「平和と全人類の世界一の擁護者となったアフリカが誇る息子」であり、国連職員から昇進し、そのままトップに上り詰めた初の事務総長であったと振り返った。

エスピノサ議長は、「アナン氏は平和や安全、人権のために尽力した偉大な指導者として記憶されるだろう。子どもらが平等に教育を受けられるよう努力し、HIV/AIDSやマラリアと闘った人物だった。」と振り返った。グテーレス事務総長は、アナン氏は「家族だった」と述べ、潘基文前事務総長は、「アナン氏は明確なビジョンを持った謙虚な人だった。」と表現した。

Surrounded by family, former Secretary-General Kofi Annan’s widow Nane pays final respects to her late husband in Accra, Ghana on 13 September 2018. Credit: UN Photo/Ben Malor
Surrounded by family, former Secretary-General Kofi Annan’s widow Nane pays final respects to her late husband in Accra, Ghana on 13 September 2018. Credit: UN Photo/Ben Malor

アフリカ諸国を代表して発言したマダガスカル代表は、「アナン氏は常に人類に奉仕する熱情を見せた。」と述べた。アジア太平洋諸国を代表して発言したスリランカ代表は、数多くの人々を貧困から救ったミレニアム開発目標へのアナン氏の貢献を想起した。

息子のコジョ・アナン氏は、「父は『悪が勝利するために必要なたった一つのことは、善良な人たちが何もしないことである。』という信念と共に生きた人だった。」と語った。(原文へDPF

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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異なる解釈で外交攻勢を強める北朝鮮

【ワシントンIDN=ケスリー・ダベンポート】

独立系シンクタンク軍備管理協会(ACA)で、イラン・北朝鮮・インド・パキスタンの核・ミサイル計画の分析・研究を担当しているケルシー・ダヴェンポート氏による視点。米韓同盟がぎくしゃくする一方(米韓同盟重視だったマチス国防長官の抗議辞任、トランプ政権の韓国に対する米軍駐留費負担増要求等)、北朝鮮は米国とは異なる「朝鮮半島の非核化解釈」に基づく外交攻勢を強めている。(原文へ)

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|書評|セミパラチンスク核実験場の真実(アルマス・ディシュコフ元カザフスタン外務省外交官、筑波大学大学院博士後期課程)

【東京IDN=アルマス・ディシュコフ】

本書はカザフスタンのアケルケ・スルタノヴァという新世代の学者によって書かれたものです。

多くの日本国民は、冷戦の歴史と、米国とソ連の二大国間の対立の歴史を知っています。また、これらの国が致命的な核兵器を造り、近代化するために絶えず努力し続けていることをよく認識しています。広島長崎第五福龍丸の悲しい物語で、核兵器の力がどれほど破壊的で危険なのかを世界に知らせました。

Chagan Nuclear Test/ Wikimedia Commons

一方で、ソビエト連邦の住民は、「核兵器国」の地位がもたらす問題や不幸を認識していなかった。カザフスタンの東部に位置する元セミパラチンスク核実験場は、ソ連の最大の核実験場であり、最初の核実験場でした。広島に投下された原子爆弾の2500発に相当する威力をもつ約500発の核弾薬の実験がおこなわれたカザフスタンでのソビエト連邦による核実験の40年間は、カザフスタンの国民に極めて衝撃的な影響を残し、現在も残しつづけています。核実験とそれにより発生した放射能により、150万人の人びとの生活が破壊され、そして広大な地域が汚染されました。

核実験場の閉鎖へ

27年前の1991年8月29日、この状況に終止符がうたれ、ヌルスルタン・ナザルバエフ・カザフスタン大統領により大統領令が出されたことで、セミパラチンスク核実験場は、モスクワの当時のソビエト連邦政府の立場に反して、永久に閉鎖されました。今まで多くの国際機関、各国政府や科学者の努力のおかげで、国際社会はソ連の核実験の実際の規模について知ることができました。

セミパラチンスクの目撃者

核実験地に住む/ Amazon.com

これまでに出版された本の内容以上にアケルケ自身の研究により現在ではたくさんの新情報が見つかっています。これは、著者が核実験の新しい側面、すなわち人間の運命の歴史を示すことを試みている、という事実によるものです。それは彼女が聞き取った数々の証言によっても裏つけられます。

セミパラチンスク核実験場がある地域に彼女の家族が住んでいることがわかります。したがって、彼女は核実験場内埋立地のひどい遺産を直接認識している数少ない目撃者です。

アケルケは当時まだ若く、核実験と実験場に隣接する地域の住民の苦しみについて理解できる年齢ではなかったが、それでも環境の悪化は周りの家族、住人から察することができました。

真実つづる物語

私はこの本がアケルケの卒業論文をさらに深めたものであったことを知ってうれしく驚いていました。これは、アケルケの自身の民族の歴史について非常に関心が高いという事を意味し、このトピックは現在の研究においても重要な題材となっています。

アケルケは10代のころに広島に留学しています。明らかに、彼女は核兵器の致命的な危険を理解し、人類と自然のための恐ろしい力を認識していました。アケルケの本は哲学的な本ではありません。これは、カザフスタンの被爆者の運命に関する本物の物語です。 カザフスタンの女性の話は深い印象を与えます。最も近い人を失った数十人の母親、妻、姉妹、娘の話がその150万人の代表として残るでしょう。

Almas Dissyukov
Almas Dissyukov

この本は、核の脅威は関連性があり、依然として危険であることを再び強調しています。アケルケ自身も、在日カザフスタン共和国大使館と在カザフスタン日本国大使館で仕事の経験があります。したがって、私はこの本は若い政治家や外交官、学者に深く関係していると信じています。

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アルマス・ディシュコフ。カザフスタン共和国生まれ。同国外務省元職員。現在、筑波大学大学院 人文社会科学研究科 国際日本研究専攻 博士後期課程。

アケルケ・スルタノヴァさんのプロフィール

カザフスタン共和国セミパラチンスク市(現セメイ市)生まれ。2000年から1年間「ヒロシマ・セミパラチンスク・プロジェクト」の支援により広島の山陽女学園高校に留学。カイナル大学卒業後、一橋大学院博士課程退学。在カザフスタン日本大使館、在日カザフスタン共和大使館等勤務。

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尾崎を学ぶ伊勢と九州の学生さんたち(石田尊昭尾崎行雄記念財団事務局長)

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【東京IDN=石田尊昭

毎年、伊勢の咢堂記念館で開催されている「尾崎咢堂生誕祭」。今年は12月8日に開催されました。主催は、2019年に25周年を迎えるNPO法人咢堂香風です。同団体は1994年に、前身となる「咢風会・香風」として発足しました。

咢堂香風は、尾崎行雄の業績と咢堂精神の普及に向け、伊勢を中心に積極的に活動しています。生誕祭をはじめ、小中学生を対象とした「咢堂読書感想文コンクール」「さくらの写生コンクール」といった青少年育成事業、また、「花みずきの女王」選出や「全米さくらの女王」の伊勢招聘、そして「全米さくら祭り」への参加といった国際交流事業など、土井孝子理事長を中心に様々な事業を展開しています。

去る8日の咢堂生誕祭では、読書感想文コンクールの授賞式が行われ、優秀者に市長賞、議長賞、教育委員会賞、尾崎記念財団賞などが授与されました。

また、受賞した子供たちと、地元の地方議会議員の皆さんが輪になって「地域の未来について語り合う」という企画も、例年に引き続き行われ、大変好評でした。

この生誕祭に、ここ数年お招き頂き、小中学生(と親御さんたち)を対象に講演をさせて頂いています。今回は「尾崎行雄の信念と生き方に学ぶ」という演題でお話ししました。

お上任せ・他人任せにせず、この国・社会がどうあるべきかを自分の頭でしっかりと考える――当事者としての自覚・責任を持つことの大切さを有権者に厳しく訴え続けた尾崎。その尾崎が残した「人生の本舞台は常に将来に在り」という言葉――私利私欲ではなく、世のため人のためという思いで行動し続けた尾崎の生き方に学んでこそ、この言葉は意義を増し、われわれにより大きな力を与えてくれる。そんなお話をさせて頂きました。

例年、伊勢に一泊して、翌朝東京に帰るのですが、今回はそのままトンボ返り。

翌9日の朝、憲政記念館で、「バッカーズ九州寺子屋」の小中学生の皆さんに、尾崎の生き方、一票の価値、民主主義の精神についてお話しさせて頂きました。

バッカーズ寺子屋は、10歳から15歳の小中学生が、企業訪問、体験学習、セミナー・合宿等を行い、人としての生き方を学び、「志」を養うことを目的としています。

12月8日と9日、それぞれ伊勢と九州の小中学生の皆さんに尾崎の話をさせて頂いたわけですが、いずれの学生さんたちも最後まで真剣に聴いてくれて、その力強い眼差しに大変勇気づけられました。

Statue of Yukio Ozaki/ Ozaki Yukiop Memorial Foundation
Statue of Yukio Ozaki/ Ozaki Yukiop Memorial Foundation

今回、こうした機会を作って頂いた主催者の皆様に、改めて感謝申し上げます。

これからも、次代を担う若い皆さんに、尾崎の信念・生き方を伝えていきたいと思います!

INPS Japan

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相馬雪香さんに学ぶ「心の力」(石田尊昭尾崎行雄記念財団事務局長)

Japanese Parliamentarians Commemorate 160th Birth Anniversary of Ozaki Yukio

「世界と議会」2018年秋冬号(第581号)

特集:尾崎行雄と憲政史

代表的議会人 ―記憶に留めたい六人の政治家たち/高橋大輔

■自由民権運動と海外留学 ―尾崎行雄を例として/高島笙

■尾崎行雄の思想と行動
 ―今の日本政治にどう生かすか/石田尊昭

特別寄稿
 大規模災害における地方行政と自衛隊との連携についての提言
 /盛田武

■INPS JAPAN
 UNウィメン(UN Women)
 ―女性に対する暴力とという予防可能な悲劇を終わらせる


■連載『尾崎行雄伝』
 第十一章 初期議会のころ

■財団だより

1961年創刊の「世界と議会では、国の内外を問わず、政治、経済、社会、教育などの問題を取り上げ、特に議会政治の在り方や、
日本と世界の将来像に鋭く迫ります。また、海外からの意見や有権者・政治家の声なども掲載しています。
最新号およびバックナンバーのお求めについては財団事務局までお問い合わせください。

|世界人権宣言70周年|青年フォーラム、人権の今日的意義を問う

【東京IDN=浅霧勝浩

1948年12月10日に国連総会がパリで世界人権宣言を採択した際、第二次世界大戦の恐ろしい経験を踏まえた、人権の歴史において画期的な文書が作成された。

戦争が終わり国際連合が創設されると、国際社会は、第二次世界大戦のような残虐行為が二度と繰り返されることがないよう固く約束するとともに、史上初めて、基本的人権の普遍的保護を誓い合った。

UDHR 70 years Logo
UDHR 70 years Logo

世界人権宣言採択70周年を記念して、世界各地で多種多様な記念行事が行われた。そうしたなか、日本では12月9日に世界人権宣言70周年記念ユース・フォーラム「みんながもってるヒューマンライツ」が、同フォーラム実行委員会(アムネスティ・インターナショナル日本創価学会平和委員会、反差別国際運動、ヒューマンライツ・ナウ、ヒューマン・ライツ・ウォッチ)の主催、国連広報センターの後援により東京で開催された。

憲法に世界最高水準の人権の保障を謳っている日本は、2016年10月に国連人権理事会の理事国(任期:2017年1月~2019年末)に選出されている。

ユース・フォーラムでは、アントニオ・グテーレス国連事務総長がビデオメッセージのなかで、「この70年間,世界人権宣言は、尊厳、平等そして幸福に光を照らし、暗闇に希望をもたらす世界の灯し火となってきました。」と述べて、人権宣言の意義を強調した。続いて、世界中の紛争や貧困、人権問題を写真と言葉で伝えているフォトジャーナリストの渋谷敦志氏が登壇し、世界人権宣言の絵本「みんなたいせつ」(世界人権宣言の日本語翻訳条文と自身の関連写真で構成)を使用して基調講演を行った。

渋谷氏は、「世界人権宣言は『同じ・平等(=みんないっしょ)』と、『違い・個性(=みんなそれぞれ)』という2つの価値を実現するために強力な後押しをしてきました」と指摘したうえで、「それぞれの価値観の限界を知りつつ、どちらかではなく双方を組み合わせた新たな道筋をきりひらくことが大切だと思います。」と語った。

Atsushi Shibuya Credit: Yukie Asagiri | IDN-INPS
Atsushi Shibuya Credit: Yukie Asagiri | IDN-INPS

「それは言い換えれば、『みんないっしょ』を縦の糸にして、『みんなそれぞれ』を横の糸にして、新たな価値を創造していく。私はその答えとして『みんなたいせつ』というタイトルを考えています。」と、渋谷氏は説明した。

その後のパネルディスカッションで、根本かおる国連広報センター所長は、国連の「持続可能な開発目標(SDGs)」の169のターゲットのうち、3分の1以上が青年の果たす役割に焦点を当てている点を指摘したうえで、「こうした状況を背景に、2020年から始める国連の人権教育世界プログラムの第4段階の重点対象を『青年』とすることが決まりました。」と語った。

Kaoru Nemoto Credit: Yukie Asagiri | IDN-INPS
Kaoru Nemoto Credit: Yukie Asagiri | IDN-INPS

ヒューマンライツ・ナウの伊藤和子事務局長は、人権とは、人が生きていくうえで不可欠なものであり、「自分らしく人間としての尊厳をもって、生きていく権利だと思っています。」と語った。そして人権問題を長期的な視野に立って考えるよう促した。

伊藤事務局長はまた、「短期的には物事が進んでいないと思えたとしても、長い目で見ると確実に良い方向に進んでいます。その代表例として、セクハラに対する人々の捉え方の変化や、1994年のルワンダ大虐殺を契機とした国際刑事裁判所の設立を挙げることができます。」と指摘した。

ルワンダ虐殺は、1990年に始まったルワンダ内戦中に勃発したツチ族に対する大量殺戮のことである。この殺戮は、多数派のフツ系政府の指示のもとに4月7日から7月中旬の100日間にわたって行われた。

ヒューマン・ライツ・ウォッチアジア局上級プログラムオフィサーの吉岡利代氏は、「人権とは『血液』のようなもの、つまり、すべての人の体の中を流れ、生きていくうえで欠かせないもの。」と述べたうえで、世界人権宣言の今日的な意義について、「キラーロボットや気候変動といった(70年前には想定されていなかった)新たな脅威に直面している中で、世界人権宣言の大切さを改めて感じています。」と語った。

反差別国際運動(IMADR)小森恵事務局長代行は、人権とは「否定されたり踏みにじられたりしたときに初めて気付くもの」と指摘したうえで、人権を守っていくためには、「人権侵害を受けている人たちに対する『共感』と人権擁護のために一歩踏み出す『連帯』が大切です。」と語った。

IMADRは、インドで「不可触民」とみなされている「ダリット」のコミュニティーに対する支援活動を行ってきた。小森事務局長代行は、「差別に関しては、(世界人権宣言が採択されてから70年が経過した今も)依然としてたくさんの問題があります。」と指摘したうえで、「科学技術の発達には良い側面もあります。一例がインターネット技術の進展で、ダリットの人々はインターネットを通じて弁護士やパラリーガルに救いを求めるなど、自らの苦境を世界に発信できるようになりました。」と語った。

小森事務局長代行はさらに、「一方で、負の側面はインターネット空間における差別発言に見られると思います。こうしたヘイトスピーチの方が投稿されると瞬く間に広がり、人権を促進させようとする声よりも大きいと思っています。」と、語った。

SDGs Goal No. 4
SDGs Goal No. 4

アムネスティ・インターナショナル日本の中川英明事務局長は、「人権が守られていない人々の立場に自分を置き換えて想像してみることが、人権を促進するうえで重要なステップになります。」と語った。アムネスティ・インターナショナルは、世界各地で、人権を踏みにじられている人たちのために声を上げる人権擁護者を守るための活動を中心にしてきた。

掘り下げた議論が展開されたユース・フォーラムの会場では、パネル展示「変革の一歩‐人権教育の力」が催された。25枚のパネルで構成するこの展示は、人権教育および研修に関する国連宣言の採択5周年を記念して2016年に製作されたものである。

この展示は、「国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)の協賛を得て、SGIがHRE2020(人権教育国際市民社会ネットワーク)、「人権教育学習NGO作業部会」、「人権教育と研修プラットフォーム9か国」との共同で開催したものだ。

展示は、オーストラリアやブルキナファソ、ペルー、ポルトガル、トルコの様々な地域において、人権教育が個人やグループの価値観や信条、態度を変革して人権を促進する前向きな取り組につながった実例を紹介している。

Photo: Youth Forum in Tokyo. Credit: Yukie Asagiri | IDN-INPS
Photo: Youth Forum in Tokyo. Credit: Yukie Asagiri | IDN-INPS

展示はまた、見る者に自身の家族やコミュニティーなど身近な環境から行動を起すよう促している。(原文へ

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This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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サウジアラビアの核武装の夢―米国の支援を受けて

【ニューヨークIDN=シャンタ・ロイ】

ドナルド・トランプ政権とサウジアラビア政府の蜜月は、核兵器取得というサウジアラビアの長年の夢を実現するために、直接的・間接的に米国がサウジを支援しているのではないか、との推測を生んでいる。

ニューヨーク・タイムズの11月23日の1面記事によれば、実に800億ドルにも上るとみられるサウジアラビアとの原子力協定に関する協議が秘密裏に進行していることで、こうした推測が強まっている。

この舞台の立役者は、全権力を掌握しているサウジのムハンマド・ビン・サルマン皇太子である。元々の計画では、今後20年で16基の原子力発電所を建てる計画だったが、現在は2基にまで縮小されている。

ニューヨーク・タイムズの記事は、サウジの計画を詳細に分析し、「皇太子は原爆開発の基礎を築こうとしているのか?」と疑問を呈した。

タリク・ラウフ元国際原子力機関(IAEA) 渉外政策調整部 検証安全保障政策課課長はIDNの取材に対して、「サウジアラビアの原発に対する関心は、湾岸協力会議(GCC)がフランスとの協力で原子力の平和利用に関する研究を始めると発表した2006年にさかのぼる。」と語った。

サウジアラビアは、今後20~25年で推定費用800億ドルで2基の大規模原子炉を建設する計画を持っているとされる。

ラウフ氏によれば、2010年4月17日、アブドラ国王原子力・再生可能エネルギー都市(KA-CARE)がアブドラ・ビン・アブドゥルアズィーズ・アル・サウード国王の勅令によって設置されたという。2017年7月、サウジ国家原子力エネルギープロジェクト(SNAEP)の開始が閣議決定された。

2016年4月、サウジアラビアは、原子力を柱とするエネルギーミックスを盛り込んだ「ビジョン2030」を発表した、とラウフ氏は語った。

SNAEPは、(1)大規模原子力発電所、(2)小型モジュール原子炉、(3)ウラン・トリウム採掘や、ウラン濃縮を通じたその後の段階を含む核燃料サイクル、を基礎とする核計画の実施を呼びかけた。

核ホールディング社(NHC)がこれらの機能を担うものとされている。

ラウフ氏によれば、サウジアラビアはアルゼンチンや中国、フランス、ロシア、韓国との原子力協力協定を締結している、という。また、チェコ共和国、英国、米国とも原子力分野の連携強化に向けて議論を進めている。

Photo: Saudi National Atomic Energy Project SNAEP. Credit: KACARE
Photo: Saudi National Atomic Energy Project SNAEP. Credit: KACARE

同様に重要な疑問は、太陽光エネルギーが豊富なサウジアラビアが、なぜ原子力エネルギーを必要とするのか、ということだ。はたして、原子力エネルギー開発は、核兵器生産の隠れ蓑になるのだろうか?

ブリティッシュ・コロンビア大学公共政策・グローバル問題大学院教授であるM・V・ラマナ博士はIDNの取材に対して、「トランプ政権の行動は、安全保障や環境の持続可能性など他の観点を置き去りにして、再びお気に入りの企業の利益を優先していることを示しています。この取引は、世界で原子力が電力源として衰退しつつあることを考えると、なおさら正当化することはできません。」と語った。

ラマナ博士はまた、「太陽光と風力で効率的に電力をつくることができるサウジアラビアの自然環境を考えれば原子力開発は意味をなさない。」と指摘したうえで、「サウジアラビアは直達日射量が世界でもっとも多い国のひとつです。したがってこの国が原発建設計画を立てトランプ政権がそれを支援するのは理解しがたい。」と語った。

他方で、10月にトルコ・イスタンブールのサウジ領事館でサウジ人ジャーナリスト、ジャマル・カショギ氏が殺害されてノコギリでバラバラにされたという疑惑が持ち上がり、トランプ大統領は煮え切らない態度を続けている。

トランプ大統領は、殺害の背後にサウジ皇太子が関与していると指摘した米中央情報局(CIA)の見方を否定して、記者団に「(皇太子が事件について)知っていたかもしれないし、知らなかったかもしれない。」と語った。

トランプ大統領はまた、サウジアラビアは経済的・戦略的パートナーであり、重要な石油供給元であり、米国製兵器の大切な顧客であり、イランとの戦いにおける「偉大な同盟国」でもあると語った。

一方、ブラッド・シャーマン下院議員(民主党、カリフォルニア選出、下院外交委員会委員)は、「ノコギリを使うような信頼できない国は核兵器に関しても信頼ならない。」と率直に批判した。

M.V.-Ramana
M.V.-Ramana

「サウジアラビアは、将来の計画に関して、ウラン濃縮や使用済み核燃料の再処理を含めた完全な核燃料サイクルを開発するため、核不拡散条約(NPT)第4条の下で同国が持つ権利を阻害あるいは制限しない原子力協定(=いわゆる『123条合意』)を米国と結ぶことをめざしていると報じられています。」とラウフ博士は語った。

これは、米国がアラブ首長国連邦(UAE)と締結した原子力協定とは異なっている。同協定でUAEは、国内で濃縮・再処理活動を行わないとの法的拘束力のある約束(=いわゆる「ゴールド・スタンダード」)をしたうえで、核燃料は世界市場から入手することとされている。

「かつてバラク・オバマ政権は、サウジアラビアに対して、いわゆる『ゴールド・スタンダード』による原子力協定を結ぶよう要求していました。しかし報道によれば、トランプ政権は、濃縮・再処理を禁じない協定を結ぼうとしていると疑われています。」とラウフ氏は語った。

さらに、2005年6月16日、サウジアラビアは、NPTに従ってIAEAと保障措置協定を締結した。しかしここには、サウジアラビアが核物質と核施設を保有するまでは同国を査察下に置かないとする「少量規則」が盛り込まれている。

「保障措置協定は2009年1月13日に発効したが、今日に至るまで、IAEAはサウジアラビアで保障措置の査察を行っていません。」とラウフ氏は語った。(原文へ

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|スーダン|パンの価格が高騰するなか、大統領の退陣を求める声が高まる

【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】

オマル・アル・バシール大統領が30年に亘って独裁体制を布いてきたスーダンでは、生活必需品の高騰を背景に12月下旬から大統領の退陣を求めるデモが広がっている。同大統領は、ダルフール紛争に関連して、国際刑事裁判所(ICC)から人道に対する罪および戦争犯罪の容疑で逮捕状がでている。(原文へ

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FAWA(アジア太平洋女性連盟)がマニラで創立60周年記念総会を開催

Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan.
今年60周年を迎えるFAWA(アジア太平洋女性連盟)の総会が、9月26日から30日の5日間にわたって「Our Heritage- Peace, Our Challenge - Sustainable Development」をテーマにフィリピンで開催された。日本、アメリカ、グアム、フィリピン、シンガポール、韓国、台湾、香港、インドネシア、マレーシア、マーシャルアイランド等、の地域から代表団が参加した。INPS Japanからは浅霧理事長が尾崎行雄記念財団の石田尊昭事務局長(一冊の会理事長)の招待で参加し、ドキュメンタリーの制作を担当した。FBポスト

The Federation of Asia Pacific Women’s Association (FAWA) cerebrated its 60th Anniversary when it held the 23rd Convention in Manila, the Philippines, from September 27-30, 2018 with the theme: “Our Heritage – Peace, Our Challenge – Sustainable Development”. 

Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director of INPS-IDN accompanied the Japanese delegation to cover this three day event at the invitation of the Secretary General of Ozaki Yukio Memorial Foundation, Takaaki Ishida, who is also President of ‘Issatsu no kai‘, a Japanese NGO. (INPS-IDN December 2018)

|世界人権宣言70周年|国際会議、人権教育の主流化を呼びかけ

【シドニーIDN=ニーナ・バンダリ

国連の「持続可能な開発目標」の主要な目的である不平等と持続可能性の問題に対処するために人権教育と市民社会の強化への投資がもっと必要だ。―オーストラリアのシドニーで開催されていた第9回人権教育国際会議(ICHRE2018)の主要なメッセージである。

今年70周年を迎える世界人権宣言からインスピレーションを得た今年のICHRE(11月26~29日)は、平和的共存に向けた社会的連帯のツールとして人権教育を主流化し、人権を教育カリキュラムに組み込むこととその実行との間の大きなギャップを埋める努力をするよう、すべてのステークホルダーに勧告した。

国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)国際教育局長のマンツェツァ・マロペ博士は、「人々は、人権教育を超えて、その不可侵の権利を行使し、その権利によって生き、自身と他者の権利を保持するために力を与えられねばなりません。」と語った。

マロぺ博士は、「3つの中核的要素(①よいガバナンス、②良好な健康状態、③現実の問題に直結する教育)が収斂してはじめて、人々は人権文化を創出しその中で生きていくことができるのです。これら3つの要素は至高のものです。なぜなら、他の要素に働きかけて人権の実現を促進するも阻害するも、この3つの要素にかかっているからです。」と強調した。

ユネスコの1974年勧告に関する第6回実施協議(2016年)は、人権教育を実施する教師の能力を強化する努力がもっと必要だと報告している。

教師の職務の中に人権の価値とアプローチを組み込むために教師や子ども相手の仕事をしている人々にツールや訓練を提供しているエクィタス(人権教育国際センター)は、毎年、カナダ全土の50地域で10万人の若者に支援の手を差し伸べている。

エクィタスのイアン・ハミルトン代表はIDNの取材に対して、「現在、私たちの事業は6~12才の子どもと13~18才の青年を教育することに焦点を当てています。」と語った。

Speaking Rights/ Equitas
Speaking Rights/ Equitas

私たちは「『フェアプレーをしよう』というプログラムを通じて、子どもたちに人権の考え方を紹介し、いま身近で何が起っているか、平等・尊重・包摂・排除といった人権をめぐる諸価値をいかに促進するかについて批判的に考えるためのゲームや活動を行っています。」

「たとえば、子どもたちに対して、椅子取りゲームをまずは普通にやってみてから、次に協力しながらやってみるように言います。こうすることで、包摂と排除について議論する出発点が与えられるのです。」

ハミルトン代表はさらに、「こうしたツールはまた、子ども相手の仕事をしている人々をも変容させるのです。大人も子どもと一緒に同じ内容を学びますが、それによって、自分たちも力を得たような感覚になり、こうした問題に対処する能力を得たと感じるようになるのです。」

エクィタスはまた、同じような参加型アプローチを用いて、そのヴィジュアル・フォーラムであるspeakingrights.caを通じて青年たちに支援の手を差し伸べている。

2018年9月に立ち上げられた国連の人権教育世界プログラム第4段階(2020~24年)の焦点は「青年」になることが決まっている。

創価学会インタナショナル(SGI)国連事務所の事業コーディネーターで「人権教育及び学習に関するNGOワーキンググループ」の共同議長を務めているエリサ・ガッツォティ氏はIDNの取材に対して、「私たちは語り部のテクニックを駆使して若者たちに関与し、人権教育を通じていかに彼らが人生を良い方向に変え、地域の活動に参加する担い手になっていけるかについて経験を共有しています。」と語った。

「私たちは、SGIが人権教育の世界的連合体であるHRE2020や『人権教育・学習に関するNGOワーキンググループ』と協力して、人権教育および研修に関する国連宣言の採択5周年を記念して2017年に展示『変革の一歩‐人権教育の力』を開き、その関連で今回ワークショップを開催しました。展示は、ブルキナファソやペルー、ポルトガル、トルコ、オーストラリアで人権教育がいかに人生を変えたかについて実例を紹介しています。」とガッツォティ氏は付け加えた。

西シドニー大学で工学を専攻する3年生で、国連難民高等弁務官事務所グローバル青年諮問協議会議長のアラシュ・ボルドバル氏は、15才の時にイランから逃れ、マレーシアに5年間滞在した後に、2015年にオーストラリアに移住した。現在は、地域移民リソースセンターに勤め、あらたに移住してくる人々が教育を受け雇用を見つける支援を行っている。

同様に、ケニアのカクマ難民キャンプで生まれ、1997年にオーストラリアに家族とともに人道ビザで来たアパジョク・ビアール氏(23)は、非営利組織「南スーダン救援の声」の共同創設者、議長である。彼女は、シドニー・カンバーランド自治体の青年参加担当職員として、地域・全国・国際の各レベルで青年たちに影響を及ぼす決定に関して、背景にかかわらず全ての青年に発言する機会が与えられるよう、活動している。

ウエスタンシドニー大学「平等と多様性」ディレクターで会議の招集者であるセブ・オズドウスキー博士は、「これらの権利に関する知識があれば、さまざまな民族や宗教的背景をもった人々の間の関係を改善し、市民社会を育むことが可能になります。」と語った。

国連で重大な役割を与えられてきた人権教育の系譜

70th Universal declaration of Human Rights
70th Universal declaration of Human Rights

・世界人権宣言(1948年、第26条

・世界人権会議「ウィーン宣言」(1993年)

・人権擁護者に関する国連宣言(1998年)

・国連人権教育の10年(1995~2004年)

・国連人権教育世界プログラム:第1段階(2005~09年)は初等・中等教育における人権教育、第2段階(2010~14年)は高等教育における人権教育と教師・教育者・公務員・法執行官・軍人に対する人権研修、第3段階(2015~19年)は1・2段階の課題の履行強化とメディア関連者・ジャーナリストの人権研修の促進にそれぞれ焦点をあてている。国連は2018年9月に、第4段階(2020~24年)の焦点を「若者」に据えることを決定した。

・人権教育および研修に関する国連宣言(2011年)

・国連総会は、「持続可能な開発に向けた2030アジェンダ」の質の高い教育に関する「目標4」の中に、人権教育に関する特定の目標4.7を盛り込んだ。

・人権と、暴力的過激主義の予防と対抗:人権理事会が2015年10月に決議を採択。

300を超える世界的な人権団体や市民団体、教育機関、メディア、市民が、民主主義や法の支配、社会的調和や正義を促進する役割のために人権教育を促進させるべく、セブ・オズドウスキー博士が開始したICHRE2018に参加した。

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世界人権宣言は、条約や憲章、宣言、国内法といった法的枠組みによって強化され、その世界的な言説は、ジェンダー平等や、障害者、LGBTIQ[性的マイノリティの総称]などに広がってきた。一方で、最大の課題は、人権団体や人権擁護活動家が直面している脅威の問題である。

「もしこうした声を黙らせてしまったら、市民を教育し動員する私たちの能力が後退することになり、ほとんどの人々が排除されてしまうことになってしまいます。それが一番怖いことです。」とエクィタスのハミルトン代表はIDNの取材に対して語った。

多くの国で、人権擁護の優先順位はいまだに低いままである。ダラムサラ(インド)を拠点とするNGO「チベット人権民主主義センター」のツェリン・ツォモ代表は「チベットでは中国の権威主義的な体制が、世界人権宣言をチベット語に翻訳しチベット人にそれを広めようとしている人間を処罰することで、世界人権宣言そのものを違法化しています。」と語った。

「これは、世界人権宣言を宣伝したとの理由で10人のチベット僧が収監された1989年に起こったことです。中国政府が『人権デー』の存在を認知したほんの翌年のことでした。私たちは、世界人権宣言70周年と並んで、この10人の僧の収監から30周年を振り返る行事も行っています。」

世界人権宣言は、「もっとも多く翻訳された文書」としてギネスブックにも載っている。現在、500以上の言語や方言で利用できる。

「チベットでは、人権擁護に関して言葉だけが踊っていて、実行が伴っていません。それどころか、治安部隊による犯罪だけは完全に野放しにされていて、政府の国内治安対策に要する費用は、防衛予算をはるかに超えてうなぎ上りです。結果として、人権侵害が数多く起こっています。」

「国連や人権擁護機関にとっての難題は、世界的な人権擁護の言説の枠組みを変え、市民社会による批判的な声を黙らせようとする大国による経済的・政治的圧力とどう闘うか、という点にあります。」とツォモ代表はIDNの取材に対して語った。

国連人権高等弁務官事務所(OHCHR)東南アジア地域事務所(所在地:バンコク)のシンシア・ベリコ代表は、世界人権宣言から「人権教育に関する世界プログラム」への流れを説明して、「この数年で世界中の多くの国で人権に関するリーダーシップが低下していることは衝撃的だが、これは、1948年の世界人権宣言の採択以来、数十年かけて苦労して勝ち取られてきた歴史的成果に対する現実の脅威となっています。」と語った。

「世界人権宣言に盛り込まれた原則の継続的な実現は、人権教育なしで成し遂げることはできません。人権教育はまさに、思いやりのある世界を構築・維持するのに必要な人道性と正義の原則を備えた世界の指導者らを将来にわたって形成していくために不可欠な投資なのです。」とベリコ代表は付け加えた。

SDGs Goal No. 4
SDGs Goal No. 4

ICHRE2018宣言はまた、気候変動の緩和策と適応策について進展が不十分なことや、食料や水不足の拡大、海水面の上昇、大量移民の発生につながる国家間及び国内の紛争、大国間の新たな軍拡競争、(とりわけ女性・子どもに対する)暴力の拡大が、人権に及ぼす影響に対して懸念を示した。

「宣言は、新しい形態のコミュニケーションやメディアがもたらす機会とリスクに対する認識を深めるべきだと訴えている。それは、これらによって、児童や若者により関与することが可能になる一方で、人権侵害の脅威がオンラインの世界に広がることになるからである。」(文へ

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