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2018 CTBTO-GEM Youth International Conference in Kazakhstan

On 28 August 2018, members of the Group of Eminent Persons (GEM) and the CTBTO Youth Group (CYG) gathered in Kazakhstan’s capital city of Astana for a five-day conference aimed at reflecting on the role of nuclear disarmament and non-proliferation in building global peace and finding ways to strengthen it in the future, specifically through raising the profile of the Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty (CTBT).

The CTBTO and the Ministry of Foreign Affairs of the Republic of Kazakhstan hosted the event under the theme “Remembering the Past, Looking to the Future”. The conference was convened around the International Day against Nuclear Tests on 29 August, which was proposed by Kazakhstan and designated by the United Nations General Assembly in Resolution 64/35 (2009).

This video by IDN-INPS Multimedia Director Katsuhiro Asagiri captures the highlights of the conference including a trip to Kurchatova town in East Kazakhstan Region, once the center of operations for the adjoining Semipalatinsk Nuclear Test Site. FBポスト

Read:
Calls for Making Global Nuclear Test Ban Legally Binding by Ramesh Jaura

Test-Ban Treaty Will Produce Tangible Benefits for Humankind by Lassina Zerbo

Kudos for Kazakhstan’s ‘Leading Role’ as UN General Assembly Campaigns for Nuclear-Test-Ban Treaty

My Life Will Never be the Same Again by Ilya Kursenko

Watch Videos:

“Remembering the Past, Looking to the Future” – 2018 CTBTO GEM-Youth International Conference, 28 August to 2 September 2018 in Astana, Kazakhstan and visit to the former Nuclear Test site

Interview with CTBTO Executive Secretary Dr. Lassina Zerbo

Interview with Sérgio Duarte, former UN High Representative for Disarmament Affairs

Interview with Christine Muttonen, former President of the OSCE Parliamentary Assembly

Interview with Karipbek Kuyukov, Honorary Ambassador for The ATOM Project

Interview with Nobuyasu Abe, former UN Under-Secretary General for Disarmament

Interview with llya Kursenko, a Russian member of the CTBTO Youth Group

クリスティン・ムットネンOSCE議員会議長インタビュー

Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan

INPS Japanの浅霧勝浩理事長・マルチメディアディレクターは、包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)からの招待を受けて、中央アジアのカザフスタン共和国において5日間に亘って開催されたCTBTO青年グループと賢人会議(GEM)合同による「2018青年国際会議」プログラムを取材した。会議期間中、クリスティン・ムットネンOSCE議員会議長(核軍縮・不拡散議員連盟[PNND]共同議長)とのインタビューを収録した。

Christine Muttonen, former President of the OSCE Parliamentary Assembly talks about the importance of co-relating CTBTO and SDGs and explains the significance of 2018 CTBTO GEM-Youth International Conference hosted by the government of Kazakhstan from 28 August – 2 September 2018 in Astana

Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan

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CTBTO青年グループと賢人会議(GEM)合同による「2018年青年国際会議」を取材

セルジオ・ドゥアルテ元国連軍縮担当上級代表インタビュー

ラッシーナ・ゼルボCTBTO事務局長インタビュー

Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan

INPS Japanの浅霧勝浩理事長・マルチメディアディレクターは、包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)からの招待を受けて、中央アジアのカザフスタン共和国において5日間に亘って開催されたCTBTO青年グループ賢人会議(GEM)合同による「2018年青年国際会議」プログラムを取材した。会議期間中、国連グローバル・コミュニケーション局のマルチメディア担当記者と共に、ラッシーナ・ゼルボCTBTO事務局長とのインタビューを収録した。

On 28 August 2018, members of the Group of Eminent Persons (GEM) and the CTBTO Youth Group (CYG) gathered in Kazakhstan’s capital city of Astana for a five-day conference aimed at reflecting on the role of nuclear disarmament and non-proliferation in building global peace and finding ways to strengthen it in the future, specifically through raising the profile of the Comprehensive Nuclear-Test-Ban Treaty (CTBT). Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director and President of INPS Japan captures the highlights of the conference including a trip to Kurchatova town in East Kazakhstan Region, once the center of operations for the adjoining Semipalatinsk Nuclear Test Site. FBポスト

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セルジオ・ドゥアルテ元国連軍縮担当上級代表インタビュー

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Filmed by Katsuhiro Asagiri, Multimedia Director, President of INPS Japan

INPS Japanの浅霧勝浩理事長・マルチメディアディレクターは、包括的核実験禁止条約機関準備委員会(CTBTO)からの招待を受けて、中央アジアのカザフスタン共和国において5日間に亘って開催されたCTBTO青年グループ賢人会議(GEM)合同による「2018年青年国際会議」プログラムを取材した。会議期間中、セルジオ・ドゥアルテ元国連軍縮担当上級代表とのインタビューを収録した。

Ambassador Sérgio Duarte, former UN High Representative for Disarmament Affairs explains the importance of 2018 CTBTO GEM-Youth International Conference hosted by the government of Kazakhstan from 28 August – 2 September 2018 in Astana.

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|視点|人生ががらりと変わる経験だった(イリヤ・クルシェンコCTBTO青年グループメンバー)

最新の報告書が地球を脅かす「ホットハウス(温室化)」現象について警告

【ベルリンIDN=リタ・ジョシ】

地球は、転換点となるしきい値を超え、危険な温室状態が永続する「ホットハウス」状態に突入する地点に向かって少しずつ進んでいる。その地点を超えると、各河川は氾濫し、海岸線が消滅。沿岸地域は暴風雨に晒され、サンゴ礁は消滅、多くの人々が食糧不足や逃れられない致命的な猛暑で命を落としていくことになる。

たとえ気候変動を食い止める国際条約(パリ協定)のもとで温室効果ガスの削減目標が達成された場合でも、こうした状況が今世紀末或いはもっと早い時期に現実のものになる可能性があると、独ポツダム気候影響研究所コペンハーゲン大学、ストックホルム・レジリエンス・センター、オーストラリア国立大学の科学者らが警告した。

SDGs Goal No. 13
SDGs Goal No. 13

科学者らが米国科学アカデミー紀要(PNAS)に発表した研究報告書によると、世界的な平均気温上昇を産業革命以前に比べて1.5度~2度に抑えることは以前考えられていたよりも困難な可能性があるという。「ホットハウス・アース(温室化した地球)」状態に突入した気候の下では、世界の平均気温は、やがて産業革命以前に比べて4度~5度上昇したところで安定化し、海面は現在よりも10~60メートル上昇する、と報告書は指摘している。

報告書の執筆者らは、結論として環境保護と経済成長を両立させるグリーン経済への転換を地球規模で早急に実現する必要があると訴えている。

「人間が経済活動の中で排出する温室効果ガスのみが、地球温暖化を決定づけている唯一の要因ではありません。私たちの研究から分かったことは、地球温暖化が産業革命以前に比べて2度上昇すると、しばしば『フィードバックス』と呼ばれる地球上の重要な転換要素が活性化され、その時点でたとえ人類が温室効果ガスの排出を停止できたとしても、地球全体がさらに高温になっていく可能性があるのです。」と、報告書の主執筆者でオーストラリア国立大学のウィル・ステフェン教授は語った。

「このシナリオを回避するには、人間の行動を、地球の生態系を搾取する存在から適切に管理する存在へと生活スタイルを転換していかなければなりません。」とステフェン教授は付け加えた。

現在、世界の平均気温は産業革命以前に比べて既に1度上昇しており、10年間で0.17度ずつ上昇し続けている。

報告書の執筆者らは、突然の変化につながるいくつかの「転換要素」を含む10種類の自然システム(永久凍土の融解、海底からのメタン水和物の減少、陸上や海中での二酸化炭素吸収量の減少、海中におけるバクテリアの増殖、アマゾン熱帯雨林や北方林の立枯れ、北半球の積雪の減少、北極圏・南極圏の海氷や極域氷床の減少)を「フィードバック・プロセス」と名付けて検討している。そして、これらの自然システムは、温暖化が一段と進んだ世界では、今のように二酸化炭素を吸収する「人類の友」である存在から、一転して無制限に二酸化炭素を排出する「人類の敵」になる可能性があると指摘した。

「平均気温が2度上昇すると、こうした重要な転換要素が活性化され、気温がさらに上昇します。そうなると、他の転換要素がドミノのように次々と活性化されていき、地球全体がさらに高温になっていきます。こうしたドミノ現象は、一度始まってしまうと、止めることはほとんど不可能でしょう。『ホットハウス・アース(温室化した地球)』が現実のものになれば、地球は人が住める場所ではなくなってしまいます。」と、報告書の共同執筆者であるストックホルム・レジリエンス・センター所長で次期独ポツダム気候影響研究所共同所長のヨハン・ロックストローム氏は語った。

Trajectories of the Earth System in the Anthropocene/ PNAS
Trajectories of the Earth System in the Anthropocene/ PNAS

次々と起こる出来事が地球の生態系そのものを揺るがしかねない

Portrait Prof John Schellnhuber/ Foto Hollin
Portrait Prof John Schellnhuber/ Foto Hollin

「私たちは、産業化時代の温室効果ガスの排出が、いかにして気候変動を引き起こし、究極的には地球の生態系そのもののバランスを崩しているかを示しました。とりわけ、地球の自然システムに内包されている諸要素の中で、ある一定のストレスがかかれば、次から次へと、急速かつ恐らく不可逆的に変質する転換要素について研究に取り組みました。こうした連鎖が起きるようになれば、地球というシステムの全体が新たなモードに入ることになりそうです。」と、報告書の共同執筆者でポツダム気候影響研究所の所長を務めるハンス・ヨアヒム・シェルンフーバー氏は語った。

シェルンフーバー氏はまた、「私たちにもまだ分かっていないのは、パリ協定が思い描いたように、はたして地球の気候が産業革命前から2度上昇のぎりぎり手前で安全に『留まっていられるか』という点です。たとえ留まることができても、ある転換要因が限界値を超えて活性化してしまえば、容易に『ホットハウス・アース(温室化した地球)』状態に転落していく危険性があります。私たち科学者は、この点のリスクを早急に評価しなければなりません。」と付け加えた。

温室効果ガスの削減のみでは不十分

 『ホットハウス・アース(温室化した地球)』状態に陥るリスクを最大限に回避するには、二酸化炭素やその他の温室効果ガスの排出を削減するだけではなく、新たな生物学的炭素貯蔵の場を拡充する、例えば、森林の再生を図ったり、農業や土壌管理を拡充したり、大気中から炭素を取り除き地中に蓄える技術を開発するといったことにも労力を割いていかなければならない、と報告書は述べている。

さらに報告書は、これらの施策は、地球の平均気温を産業革命前の2度以下に保った「安定化させた地球」を維持するために必要な、根本的な社会変化に裏打ちされたものでなければならない、と強調している。

A stability landscape, the current position of the Earth System is represented by the globe at the end of the solid arrow in the deepening Anthropocene basin of attraction./ PNAS
A stability landscape, the current position of the Earth System is represented by the globe at the end of the solid arrow in the deepening Anthropocene basin of attraction./ PNAS

「気候変動など地球規模の変化は、人類が地球規模で地球のシステムに影響を及ぼしていることを示しています。つまり、国際コミュニティーが地球との関係を管理し、未来の惑星の状態に影響を与えられることを意味していいます。この研究では、そのために利用できるいくつかの手段を特定しました。」と、報告書の共同執筆者でコペンハーゲン大学に所属するキャサリン・リチャードソン教授は結論付けた。(原文へ

INPS Japan

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日本で関心呼んでいるカードゲーム「2030SDGs」

【ベルリン/東京IDN=ラメシュ・ジャウラ、浅霧勝浩】

アルベルト・アインシュタインがまだ5才で、ベッドに寝かしつけられていた時、父親から遊び用の磁気コンパスを渡された、という話がある。アインシュタインはコンパスを傾けたりひっくり返してみたりして、針がなぜいつも北を向くのかを不思議がっていたという。

稲村健夫氏と福井信英氏も同様に、世界の指導者らが2015年9月の歴史的な国連サミットで採択した「持続可能な開発のためのアジェンダ」の17項目の持続可能な開発目標(SDGs)が、いかにして世界を変えうるのかについて深い関心を持っている。

SDGs icon wheel
SDGs icon wheel

あらゆる形態の貧困を根絶し、不平等と闘い、気候変動に対処しながら、誰も置き去りにしないようにするというSDGsの壮大なビジョンを実現する「魔法の杖」など存在しないことを、一般の人びとに実感してもらうには、どのような方策があるだろうか。

両氏は、17の目標の背後にある論理を説明し、個人や地域社会の行動を促すようなシンプルなゲームが、物事を前に動かす重要な動機づけになるのではないかと強く確信した。稲村氏はIDNの取材に対して、「互いに知恵を絞って『イマココラボ』という日本のNGOの下でカードゲーム『2030SDGs』を開発しました。」と語った。

「イマココラボ」は「イマ」「ココ」「ラボ」の3つの言葉から成り立っている。ココは「ここ」を意味し、コラボは、「(ラボ的な試みを)コラボレーションで」を意味する。したがって、このNGOのモットーは、「わたしたちは皆行動する必要がある。いつかではなく『イマ』から。どこかでではなく『ココ』から。インパクトを与えるには、だれかと『コラボ』して行動しなくてはならない。」というものだ。

稲村氏と村中剛志氏はNPO法人「イマココラボ」の共同創設者である。稲村氏は福井氏とともにこのカードゲームを共同開発した。福井氏はビジネスゲーム開発のプロである。

ルールはいたってシンプルで、各プレイヤーが、与えられたお金と時間を使って、「黄(=社会)」「青(=経済)」「緑(=環境)」のプロジェクト活動を行うことで、最終的にゴールを達成するというものだ。それぞれのプロジェクトは、現実の世界と同じように、さまざまに異なる関心や価値観をもった人達を対象としている。

例えば、「大いなる富」というお金が一番大事という価値観を持った人は、ゲーム終了時までに1200ユニットのお金を集めている必要がある。なぜなら、「大いなる富」を求める人は、「十分に豊かな世界」があってはじめて「獲得した富」を使えるからだ。

「悠々自適」という時間がゆったりたっぷりあるのが幸せだという人は、獲得した時間を楽しむ余裕を持つために、ゲーム終了時にまでに15の時間ユニットを保持していなくてはならない。また、環境を守りたいという「環境保護の闘士」は、納得のいく世界を実現して生きていくために、ゲーム終了時までに「緑の意思」を10ユニット以上必要とする。

SDGs 2030 Game Cards/ Katsuhiro Asagiri | INPS Japan
SDGs 2030 Game Cards/ Katsuhiro Asagiri | INPS Japan

「カードゲーム『2030SDGs』は、世界がいかにしてこの17の強力な目標を現在から2030年までの間に達成しうるかを発見する実験的な旅にあなたを誘ってくれます。」と村中氏は説明した。

ゲームプレイとゲーム後の解説と振り返りを通じて、プレイヤーは「持続可能な開発」が何であるかを知るだけではなく、個人や地域社会の経験を通じて社会変革に必要な重要な要素について理解することになる。

このゲームのアプローチには3つの目標がある。そのひとつは、持続可能な世界をともに作り上げることに参加する直接的な経験を人々に与えるということだ(「私にもできる。」「自分の行動で変化を生み出せる。」という感覚。)

ゲームは、(SDGsという)極度に複雑な事象を単純化しわかりやすくして、プレイヤーである一般の人々の理解・浸透に資すると同時に、もっと知りたいという自然の欲求を高めることをめざしている。

さらに、ゲームはプレイヤーのやる気を刺激して、各々にとってやりがいのある目標を設定させると同時に、自信を持たせ、楽しく遊べるよう工夫されている。また、実際の世界において行動を取ることをプレイヤーたちに促し動機づける役割も果たしている。

「2030SDGs」は複数のプレイヤーで遊べる体験型のカードゲームであり、「現実の世界」を2030年に導く様子をシミュレーションするものである。参加人数は最小5人から50人程度だが、世界を複数同時に走らせパラレルワールドを作ることで最大で200人程度まで同時プレイできるように設計されている。

ゲームのプレイ時間はおおよそ1時間程度だが、その後に解説と振り返りの時間がある。最短で90分から、通常全体で2時間半程度を想定している。

日本では、200人以上の公認ファシリテーターがゲームを取り仕切り、企業や政府、学校、地域など日本各地で多くのイベントが開かれている。参加者一人ひとりの意識を変革し行動へとつなげていくことを意図している。

「『2030SDGs体験』は日本で大きな社会的現象になりつつあります。メディアでも頻繁に取り上げられ、2017年には1万2000人以上がゲームに参加しました。」と村中氏はIDNの取材に対して語った。

村中氏はまた、「このゲームを日本以外の世界各地でプレイしたいという要望に応えて、ゲームの英語版を作成し、海外で広めようとしています。」と語った。

稲村氏は、「『2030SDGs』ゲームを開発した当初、10~15人の友人とプレイしようと思い、フェイスブックでイベント情報を流したところ、驚くべきことに800以上の『いいね!』が付き、その多くが友達の友達だったのです。」と感慨深げに振り返った。

「初めて開催したゲームの評判がよく、20人の参加者の中から数人の方々が、各々の知り合いを呼んでプレイしたらどうかと提案してくれました。それからゲームをするたびに、2、3人の参加者がそれぞれの知り合いに紹介してくれたのです。結果的に、ゲームの存在は瞬く間に広がっていきました。」

稲村氏はさらに、「『ゲームを購入したい』という要望がたくさん寄せられました。私たちは、ゲームのセットを単純に販売するか、あるいは、クラウドファンディングで資金を調達してカードは基本的に無料配布するか、検討を加えました。」と語った。

一般にカードゲームやボードゲームとして販売されているものの多くは、ルールが明確で、誰がどのようにナビゲートしても最低レベルの運営は保たれるものが多い。それに対して、「2030SDGs」は、本質的にはプレイヤーの判断、行動、関わりによって無限に変化するシミュレーションゲームだ。そのためファシリテーションに適切なスキルがなければ、ゲームはもともとの目的から大きく外れて、うまくいかなくなる可能性もある。

「私たちは、ファシリテーターの訓練コースを設けて、皆がゲームを自らファシリテートできるようにと考えました。これまでに、200人以上のファシリテーターを日本で公認し、国内各地でゲームが楽しまれています。」

ファシリテーターがゲームの世界と現実の世界を上手く紐づけることができれば、ゲームはより魅力的なものになり、プレイヤーは、自らの経験を他人と共有しようという気になります。」と村中氏は語った。

SDGs 2030 Game in session/ Katsuhiro Asagiri | INPS Japan
SDGs 2030 Game in session/ Katsuhiro Asagiri | INPS Japan

10才から80才までの幅広い人々がゲームに参加できる。学校だけではなく、老人ホームでもプレイされている。しかし、このゲームの最適なのは、中学生から成人までの年齢層だ。

「英語圏でのこのゲームに対する反響は、日本の初期の頃と同じくらいの手ごたえがありました。私たちは10月に米国、11月に欧州に渡る予定です。」と村中氏は語った。(原文へPDF

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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|タンザニア|土地収奪を狙う投資家と闘う先住民族社会

【ダルエスサラームIPS=キジト・マコエ】

ヘレナ・マガフさんは、係争の対象になっていた土地が自分のものであると認める文書を手に、笑顔を見せた。文書が彼女の手に渡され、隣人との激しい紛争が解消されたのだ。

「とてもうれしいです。これで、ここが自分の土地と言い張る人間はもう出てこないと思います。」とマガフさんは語った。

タンザニア南西部モロゴロ州キロンベロ地区のサンジェ村に住むマガフさんは53歳の未亡人だ。夫の死後、彼女の30ヘクタールの土地を奪おうとする隣人との係争に8年間も巻き込まれてきた。

しかし、土地部門の透明性と効率向上をめざしたタンザニア政府のイニシアチブにより、マガフさんは土地の正当な所有者と認められた。

SDGs Goal No.10
SDGs Goal No.10

農場でトウモロコシやコメ、ヒマワリ、野菜を栽培しているマガフさんは、「慣習的占有権証明書」(CCRO)と呼ばれる文書を発行された。

マガフさんにとって、土地所有権の確認を得れたことは重要な節目であり、これでようやく農業に専念できる心の平静と安心を取り戻すことができた。

年間所得がおよそ450万タンザニアシリング(約2000ドル)のマガフさんは、「一生懸命働いて子どもを育てていく、やる気と熱意が出てきました。」と語った。

タンザニアは、広大な土地と安い労働力ゆえに、農業の大規模な投資先として大きな注目を集めてきた。農民たちは、作農や漁業、畜産のための土地を有しているが、所有権を証明するための文書はほとんどもっていない。

地域コミュニティーにとっては、土地の所有権を持つということは、永年使用権を確保する文書証拠を持つということであり、この文書はまた、銀行からの融資を受けるための担保としても利用できる。

かつて村の土地を保護していた法律が弱体化し、先住民族や農民は、専門家らが「外国人投資家が進めている大規模な土地収奪」と指摘する行為によって、広大な土地を失ってきた。

適切な土地所有権、あるいは土地の所有を示す証書がない状態で、村の土地はしばしば、村の腐敗した指導者らと結託した外国企業による奪取に対して脆弱になっていた。

土地取得に関するタンザニアの法制は、公的な投資監視機関である「タンザニア投資センター」を通じて土地を取得するよう企業に指示しているが、実際には村の人間との直接交渉に及ぶ投資家もいる。

Map of Tanzania
Map of Tanzania

この状況は紛争を引き起こすだけではなく、信頼を損ね、投資家が政府からの保護を受けれる可能性も弱めてきた。

しかし、地域コミュニティーはこうした動きを座視していたわけではない。抗議活動を行ったり、裁判所に提訴したり、土地を地図に正確に記して監視するなど、様々な工夫を凝らして、共有地の保護と失われた土地を取り戻す取り組みを行ってきた。

地域の慈善団体や村の議会、地域当局からの支援も得ながら、タンザニア各地の地域コミュニティーが、共有地に関してより強力な法的保護を得るために、地図製作と文書化を進めている。

2015年、タンザニア北部ロリオンド村のマサイ族の畜産家らが地元の裁判所で国を訴えた。野生動物のための通り道を作るとの名目で2014年に立ち退きを迫られた際に収用された村の土地の法的所有権を確認する際、証人に脅迫が加えられた、というのだ。

トランスペアレンシー・インターナショナルの「2014年度版グローバル腐敗バロメーター」によると、タンザニアの土地登録は、複雑なプロセスで、しばしば腐敗と非効率さを伴うものだという。

米国際開発庁(USAID)は、農村における土地所有権への理解を深めるために、2014年以来、「タンザニア土地所有権確認支援プロジェクト」を590万ドル規模の予算で進めている。タンザニア南部高地で地元農民に土地所有権を確保させ、「慣習的占有権証明書」(CCRO)の発行を促進させよう、というものだ。

この取り組みでは、地元の土地計画関係者が土地の評価や記録の保存に関する訓練を受け、紛争解決のスキルを身につけた。

アクションエイド」の上級政策分析担当ダグ・ヘルツラー氏は、土地の権利を強化し貧しいコミュニティーを保護する動きは、貧困と闘う上で重要だと指摘した。「土地所有権に関するプログラムは地域の長期的な権利を保護し、投資家による土地収奪を阻止する点できわめて重要です。」とヘルツラー氏は語った。

農業はタンザニア経済の中心であり、人口の8割以上が農業に生計を依存している。しかし、タンザニア国家統計局によると、同国には農業生産に適した土地が4400万ヘクタールもあるにも関わらず、わずか1080万ヘクタールしか耕作の対象になっていないという。

最新の調査によれば、世界的に見れば、先住民族と地域コミュニティーは、地球の土地の半分以上を伝統的な仕組みの中で管理しているが、法的な面からみると保有割合はわずか10%であり、さらに低い割合の土地しか、登録されたり所有権が確認されたりしていないという。

2018年版「世界資源研究所」の調査によると、地域コミュニティーと先住民族は、共有地が強力な商業的利益によってますます土地収奪のターゲットにされる中で、自らの土地の所有権を主張しなければならないという厳しい闘いを強いられている。

Image credit: UN Women.
Image credit: UN Women.

この調査によれば、先住民や地域コミュニティーが土地の所有権を確保するために長年苦しい闘いを強いられてる一方で、政界に強力なコネクションを持つ裕福な企業が政府の官僚機構と巧みに渡りをつけ、わずか30日で土地の所有権を取得することもあるという。

「世界資源研究所」のアナリストであるローラ・ノーテス氏は「タンザニアでは、企業が村の土地を取得する際には地域コミュニティーと協議することとされています、実際には『一般的用途地』と分類された土地の権利を取得することが可能で、これについては、協議する必要はないとされています。」と語った。

共有地に関する慣習的な土地所有の枠組みが弱体化するなかで、地域コミュニティーは自らの土地の登録と文書確認作業を進めるうえで、様々な障害に直面している。時には数年もかかる面倒な手続きを余儀なくされることもある。

南アフリカ貧困地・農業研究所」に在籍するタンザニア人の研究者エマニュエル・スレン氏は、「政府当局から様々な文書や承認を得るために、貧しい村々や個人に相当な負担がかかっています。このプロセスはしばしば、ただでさえ蓄えが乏しい村々の資源が枯渇するほどの危機に追いやっています。」と語った。

諸政府や企業は、天然資源を採掘したり、バイオ燃料農産物を育てたり、あるいは単に投機目的で土地を取得することに熱心だが、先住民族社会にとってみれば、それはしばしば、生活や収入、社会的アイデンティティーの基盤となる先祖代々の土地を失うことを意味する。

「村の境界を確定する行為は、しばしば村落住民との間に熾烈な係争を引き起こす火種となります。なぜならこうした紛争には、膨大な時間とカネがかかることになるからです。」とスレン氏は語った。

多くの国では法律で慣習的権利を認めているが、法的保護はしばしば脆弱で、ほとんど履行もされていない。共有地はより強力な主体による収奪に対して脆弱な立場に置かれている。

マサイ族やハッザ族といった牧畜や狩猟を主とする先住民族社会は、長年にわたって土地を追われてきたが、伝統的な土地利用の慣行よりも外国投資家を優先する政策に対抗して行動をとるようになってきている。

Edward Loure/Ujamaa Community Resource Team

地元のNGO「ウジャマー地域リソースチーム」の支援を得て、自分たちの土地と従来の生活様式を喪失する危険に常に直面しているグループが、土地を守るための闘いを繰り広げている。

2003年以来、同NGOは、先住民族集団のために20万ヘクタール以上の土地を確保してきた。今後、北部タンザニアにおいて97万ヘクタール以上の土地を保護することが目標だ。

この取り組みの先駆者であるエドワード・ルール氏は、「計画通り目標を達成する自信があります。土地は先住民族にとってきわめて重要なものなのです。」と語った。(原文へ

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「世界と議会」2018年夏号(第580号)

特集:日本の課題と政治の未来

■咢堂塾設立20周年記念・特別講演会
「これからの『政治』の話をしよう」/勝谷誠彦

■特別論文
外務省医務官としての25年間
 -邦人支援の現状と課題/仲本光一

■連載『尾崎行雄伝』
 第十章 亡命の客

■INPS JAPAN
 決して広島と長崎の悲劇を繰り返してはならない
 /アントニオ・グテーレス 国連事務総長


■財団だより

1961年創刊の「世界と議会では、国の内外を問わず、政治、経済、社会、教育などの問題を取り上げ、特に議会政治の在り方や、
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「憲政の父・尾崎に学ぶ 」(石田尊昭尾崎行雄記念財団事務局長)

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【IDN東京=石田尊昭

7月29日付の中国新聞・セレクトのコラム「想」に、尾崎行雄に関する論評を掲載して頂きました。

ご存じの通り、尾崎は1912年の憲政擁護運動の際、犬養毅とともに「憲政の神様」と呼ばれ、日本に真の立憲政治・民主政治を根付かせようとした政治家です。

Map of Japan
Map of Japan

同時に彼は、1920年代から第2次世界大戦まで一貫して軍縮を唱え、戦後は「世界連邦」の建設を呼びかけた平和主義者としても知られています。しかし、それをもって尾崎を非武装・非暴力の理想主義者と捉えるのは早計でしょう。

尾崎が軍縮を唱えた背景には、あくまで日本という国の存続のために、当時の世界情勢と日本の国力を冷静に分析した上での判断があったと言えます。

また「世界連邦」も、「世界平和という高邁な理想」から導いたというよりも、日本に投下された原子爆弾の威力を目の当たりにし、このままでは日本も世界も滅ぶという危機感から考え出したものと言えます。

政治家が理想(あるべき姿)を掲げることは大切ですが、現実離れした理想論ばかりに終始したのでは意味がありません。

尾崎も、国や国民のあるべき姿を説き続けましたが、そこには常に、内外情勢を冷静に把握した上での、現実的視点からの判断がありました。

今回掲載された論評では、以上のように、理想を掲げつつも、現実的かつ世界的視点で政治判断をしていった尾崎を強調しています。

本文は以下のPDFでご覧頂けます。
中国新聞・セレクト・コラム「想」 憲政の父・尾崎に学ぶ(石田尊昭)

なお、余談ですが、私の実家・広島では中国新聞のシェアは物凄く、私もずっと同紙を読んで育ちました。発行部数も地方紙としては最大規模だそうで、今回掲載して頂けて本当に光栄です。

Ozaki Yukio Memorial Foundation
Ozaki Yukio Memorial Foundation

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咢堂香風の「尾崎行雄生誕祭

尾崎行雄と立憲主義

|視点|ヘイリー国連大使は、自らの誤った「改革」を人権団体のせいにしている(ケネス・ロス ヒューマン・ライツ・ウォッチ代表)

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【ニューヨークIDN-IPS=ケネス・ロス】

ニッキ―・ヘイリー氏は、ドナルド・トランプ政権の国連大使としてニューヨークに着任して間もなく、米国を支持しない者は「その名を書き留める(相応の対応を取る)」と述べた。当時ほとんどの人々は、ヘイリー大使は国連安全保障理事会(安保理)で米国の主張に反対した国々のことに言及しているのだと考えた。

しかし、最近になってヘイリー大使はヒューマン・ライツ・ウォッチアムネスティ・インターナショナルに対する非難を始めた。ヘリテージ財団の会合で登壇したヘイリー大使は、両人権団体が、自身が提唱している国連人権理事会の改革案に反対することで、「ロシアと中国の側についた」と述べたのだ。

Kenneth Roth/ Human Rights Watch

政府から敵意を向けられるのは、人権関連の仕事に付随する職業上の危険にほかならない。どこの政権も、自らの不正を調査で暴露されたり、その結果、変革を求める民衆のプレッシャーに晒されたくはないだろう。例えば、ヒューマン・ライツ・ウォッチが、ルワンダ政府による拷問の使用を暴露した際、ルワンダ政府は、同人権団体は「注目を得ようと必死になっている。」と非難した。また、私たちが、ベネズエラ政府の腐敗問題に端を発する弾圧事件を取り上げた際には、同政府は、「これらの人権団体は、北米帝国によるイデオロギーの武器」だと断言した。

数年前、私たちが中国政府について、個人活動家を抑圧していると表現したところ、中国政府の報道官は、「彼ら(=こうした人権諸団体)は常に視力に問題を抱えてきた…おそらくバラ色の眼鏡をつけている(=楽観的過ぎる)か、目を細めているだけのことだろう。」と皮肉混ざりの声明を出してきた。

これまで米国のいかなる歴代政権も、私たちの監視を免れることはなかった。例えば、私たちは、中央情報局(CIA)による拷問や恣意的な拘留、米国政府によるサウジアラビアへの武器輸出、飢餓に苦しんでいるイエメン人に対する爆撃、エジプト政府が、いかなる民主主義的な動きを弾圧しているにも関わらず、同国に対して安全保障上の援助をおこなっていること等も取り上げてきた。また米国内においても、大量投獄から拘留中の移民に対する取扱いまで、様々な人権問題を取り上げてきた。

これまでも、米国政府の高官が、周期的に私たち人権団体の見解と意見を異にすることはあった。しかし、(それもまさにトランプ大統領とプーチン大統領がヘルシンキで首脳会談を行っているときに)私たちが、ロシアと中国に与しているとして非難されたのは初めての経験だった。また、ヘイリー大使のように、米国の政府関係者が、(同国に対する)非難を理由に自身へのアクセスに応じないと発言した前例は思い浮かばない。

Photo: Putin gifts Trump a Telstar Mechta, the official match ball for the knockout stage of the 2018 FIFA World Cup. CC BY 4.0
Photo: Putin gifts Trump a Telstar Mechta, the official match ball for the knockout stage of the 2018 FIFA World Cup. CC BY 4.0

ヘイリー大使の辛辣な発言の背景には何があるのだろうか。トランプ政権が人権理事会を離脱した主な理由は、同理事会によるイスラエル批判だった。トランプ政権は、イスラエルの人権違反に関するいかなる批判に対して常に反対の立場をとってきたうえに、国連人権理事会は、必然的にイスラエルによる人権違反を非難することになるため、今回の米国の離脱を称賛した国はほとんどなかった。

米国政府はまた、一部の人権侵害が指摘されている国が国連人権理事会の活動を妨害すべく理事国入りしているとして、同人権理事会の構成内容も非難した。しかし人権理事会は、こうしたリスクを避けるために、国連加盟国を5つの地域に分けたうえで、国連総会の無記名投票で過半数票を得、かつ、上位(議席数内)の得票を得た国が選出される仕組みになっている。

こうした競争プロセスが機能し、一部の人権侵害が指摘されている国が理事国メンバーへの選出に失敗している。最近の例では、シリアのアレッポ東部を爆撃していたロシアが、2016年10月の理事会選挙で落選している。

しかしいくつかの地域では、理事国の割当枠と同数の立候補国を出すことで、この競争プロセスを巧みに回避して無風選挙に持ち込んでいる事例もみられる。伝統的にこの手法を繰り返してきたのが、米国が属する「西ヨーロッパとその他のグループ」だ。こうした背景から、米国政府が他の地域グループに対して同じ手法をとらないよう説得するのは難しい状況にある。

このように選挙制度を巡る問題があるものの、これまでに人権問題にコミットした多くの国々が人権理事会に選出され、シリアやイエメン、ミャンマー、北朝鮮、スーダン、ブルンジ等、世界で最も対応を必要とする多くの緊急事態について、調査を開始し、非難声明を出し、問題解決に向けた国際社会の圧力を生み出してきた。しかし、トランプ政権の一面的な人権政策にとって、これらの緊急事態は、イスラエルを擁護することに比べたら重要な問題ではないようだ。

人権活動家で、国連人権理事会の質を向上させるという目標について異論があるものはいないだろう。問題はどのようにそれを実現するかということだ。問題は多くの国が国連人権理事会の有効性を向上させたいと思っている一方で、それを妨害したい国々もあるとう現実だ。国連人権理事会の事務局があるジュネーブで改革プロセスが始まっているが、全会一致をルールとしているため、議論を前進させるのは難しいが、同時に大きな後退を回避することもできる。

この改革プロセスの中で、米国が苦情理由の一つとしてきたイスラエル占領下の領土に関する議題項目が取り除かれる可能性は低いことから、トランプ政権は、(人権理事会より)制約が少ないが一方でリスクを抱えることになる国連総会における議論を望んできだ。しかし多数決で議決をする国連総会では票が割れるため、むしろ人権問題に効果的に取り組むという「改革」は後退する可能性の方が現実的になってしまう。結果的に、米国の改革案を支持した国はなかった。ヒューマン・ライツ・ウォッチとアムネスティ・インターナショナルも、米国の改革案に反対の立場を表明したのだが、このことが、後になって、ヘイリー大使から非難を受けることにつながってきた。

米国が国連人権理事会を脱退した主な動機はイスラエルを擁護するというものだったが、異なる諸要因が、脱退のタイミングに影響を及ぼしたかもしれない。ヘイリー大使が脱退を発表したタイミングは、ザイド・フセイン国連人権高等弁務官が、米国の南部国境地帯で移民の家族を引き離していたトランプ政権の政策を「恥知らず」だと非難したのと同じ週であり、国連特別報告者が米国における極度の貧困に関する報告書を発表しようとしていた矢先だった。

Photo: Poverty in America Documentary 2017 on YouTube
Photo: Poverty in America Documentary 2017 on YouTube

このタイミングが意味するものは、米国の国連人権理事会からの脱退には、より大きな問題が潜んでいることを物語っている。多くの米国人は、米国憲法上の諸権利と市民権が自分たちを守っており、人権とは他の(=米国人以外の)人々を守っているものと、誤って認識している。しかし、国連人権理事会からの脱退は、トランプ政権の自身の活動を制限する全ての権利を幅広く拒否する姿勢を反映したものである。しかし皮肉なことに、トランプ政権の国際人権擁護団体に対する復讐は、結局は、米国人にとっても「人権」がいかに大切なものであるかを再確認することにつながる可能性がある。(原文へ

翻訳=INPS Japan

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