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|平和首長会議|核兵器は安全を保証しない

【ウィーンIDN=ジャムシェッド・バルーア】

原子爆弾が広島・長崎に投下された1945年以来、核兵器は実戦で使用されていないが、1万5000発近いこの大量破壊兵器は依然として存在し、無視できないほどに大きなリスクをもたらしている。こうした脅威を及ぼす現実を視野に入れつつ、平和首長会議は、北朝鮮による度重なる核実験の事例にも明らかなように、核拡散の危険性は依然として現実のものであると警告している。

ウィーンで5月2日から12日の日程で開かれた2020年NPT運用検討会議第1回準備委員会会合で演説した広島の松井一實市長は、世界の7200都市以上が加盟する平和首長会議を代表して、核兵器国とその同盟国が核抑止の意義を強調し続けていることへの懸念を示した。松井市長は、核兵器不拡散条約(NPT)、とりわけ核軍縮を誠実に交渉する義務を定めた同第6条への強い支持を表明した。

松井市長は、「最大の非人道兵器である核兵器に依存するいかなる安全保障体制も根本的な欠陥を抱えており、仮に核抑止が短期的な問題を解決したように見える場合があったとしても、一時しのぎのやり方にすぎません。」と語った。

松井市長は5月3日の会合で、「国際社会は今後時間をかけて、この嫌悪すべき非人道的な兵器と、その保有・使用を正当化するドクトリンをますます拒絶するようになるだろう。」と語った。

Vienna International Center/ K.Asagiri of INPS

「こうした兵器は核拡散という、より複雑な危険を招きかねないとすでに広く認識されているところです。また、核兵器の存在自体が、意図せずとも、誤解、誤作動、事故により核兵器が使われる危険性や、核テロの危険性も無視できないことも認識すべきです。」

松井市長はまた、世界の為政者に対して、その鋭敏な責任感を信頼し、人々に対して信頼性のある安全保障を提供するよう強く促した。「私たちは、相互不信と脅しに基づく核抑止から脱却するよう訴えます。私たちは彼らに、相互理解や同胞意識を促進しうる新たな安全保障枠組みを追求するよう求めたい。」

そうした努力にはもちろん、長期的でグローバルな視野が必要となる。「世界の指導者の方々には、『まず隗より始めよ-何事もまず手近なことから、自ら着手せよ-』の精神のもと、核軍縮の誠実交渉義務を果たし、果断なリーダーシップを発揮していただきたい。私たちは、そうした大胆なリーダーシップによって、核抑止に頼らない、より信頼性が高く永続性のある安全保障体制をともに作り上げることができると信じています。」と松井市長は語った。

平和首長会議は、今年始まった核兵器禁止条約交渉を支持している。「本交渉は核保有国や核の傘の下にある国々が不参加のまま開始されました、これらの国々は、なぜ市民社会や多くの非核保有国が今回の核兵器の法的禁止交渉を先導しているのかを認識すべきです。」と指摘したうえで、「この問題に関する最近の世界の論調に現れているように、核抑止に依存しない大多数の国々は、事故や誤算による核兵器使用の危険性やその非人道的影響を深く認識しています。」と松井市長は論じた。

Mayors for Peace

これらの国々は、誰もが核爆発の犠牲者になりうるという現実を直視している。これだけ多くの非核兵器国が交渉を主導しているのはそのためだ。第1会期は3月27日から31日に開催された。そして第2会期は6月15日から7月7日にニューヨークの国連本部で開催が予定されている。

松井市長はさらに、「非核保有国は NPT 全締約国が負う誠実交渉義務のみならず、(核兵器の犠牲者になりうる)利害関係の当事者としての交渉参加の権利に基づいてこの交渉を主導しているのです。」と付け加えた。

平和首長会議は、この交渉によってまとめられる法的文書が現在核抑止に依存している国々にも開かれたものとなるよう期待している。また、条約に普遍的な加盟を促す具体的な提案も行っている。それは、この条約が、核兵器に依存する国が後からでも参加できるものにならなければ、核兵器の廃絶に道をひらく、実効性のある条約とならない恐れがあるからだ。

松井市長は、「この条約が将来核保有国をも拘束する、検証可能で包括的な核兵器禁止の法的枠組みへと進展していくことを心から期待しています。」と述べ、さらに「核保有国及び核の傘の下にある国々の代表の皆様には、6月・7 月の交渉会議には是非参加していただきたい。今は法的禁止の交渉に参加されないにしても、NPT 第 6 条の義務を履行する観点から、具体的な取組を大きく進展させていただきたい。」と付け加えた。

松井市長は別の重要な問題にも触れて、NPTのすべての締約国が核兵器なき世界のビジョンを共有している一方で、「残念ながら、核軍縮に向けたすべての具体的な措置は長年停滞し、大きな結果を残せずにいます。例えばCTBTの発効、核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)の採択、世界の核備蓄の9割以上を占める米ロ両国の核の大幅な削減等です。」と語った。

CTBTとは包括的核実験禁止条約のことであり、世界のほとんどの国が締約しているにも関わらず、未だ発効していない。183カ国が署名し、そのうち、核保有国の英仏露を含めた164カ国が批准している。しかし、CTBTが発効するには、核技術を持った特定44カ国(=附属書2諸国)の全てが署名・批准を済ませねばならない。

その中で、中国・エジプト・インド・イラン・イスラエル・北朝鮮・パキスタン・米国の8か国がまだ締約していない。インド・北朝鮮・パキスタンは署名さえしていない。附属書2諸国の中で最後に条約を批准したのはインドネシアである(2012年2月6日)。

核分裂性物質生産禁止条約(FMCT)は、核兵器あるいはその他の爆発装置のための核分裂性物質のさらなる生産を禁止する国際条約として提案されているものだ。条約はまだ交渉されておらず、いかなる内容が設定されるかも決まっていない。

平和首長会議はしたがって、核保有国に対して、この停滞を打破するために新しく革新的な措置を採ることによって、実質的な進展を達成するよう「一層努力する」ことを求めた。「そしてこの文脈において、核兵器の法的禁止の交渉に参加することが現実的な選択肢として浮かび上がってくるかもしれない。」

松井市長は、リスクを低減し核戦力を削減する具体的なステップを踏むことは、過去のNPT運用検討会議でも合意されたように、NPT第6条の軍縮義務の不可欠の一部を成していることを核兵器国に対して訴えた。「もしそうした基本的な義務を果たそうとしないなら、国際社会はさらに不安定なものになってしまうでしょう。」と松井市長は言明した。(原文へ)

翻訳=INPS Japan

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希望と絶望の間で揺れる非核スローガン

国連事務総長、新型コロナウィルス感染症対策について宗教指導者らの協力を求める

【ニューヨークIDN/UN News】

「現在世界的大流行(パンデミック)を引き起こしている新型コロナウィルス(COVID-19)に誰もが罹患しかねないという現実は、私たち人類が共通に抱えているリスクにほかなりません。」と、アントニオ・グテーレス国連事務総長は、COVID-19の被害を抑えるうえで宗教界が果たせる役割について協議するオンライン会議で、宗教指導者らに語った。

5月12日に開催された会議で、グテーレス事務総長は、「私たちには、パンデミックに対する対応の基礎として、あらゆる人々の人権と人間の尊厳に配慮した連帯を促進していく責務があります。…そうした活動は、皆さんのコミュニティー内外において宗教指導者が果たす重要な役割を浮き彫りにします。」と語った。

ユダヤ教、キリスト教、イスラム教の指導者らが参加した会議で、グテーレス事務総長は後天性免疫不全症候群、エボラ出血熱等これまでに発生した公衆衛生危機を例に挙げ、その際、宗教指導者らによる精神的なリーダーシップがいかにコミュニティーの価値観や態度、行動にポジティブな影響をもたらしたかについて言及した。

Photo: UN Secretary-General António Guterres speaks at the University of Geneva, launching his Agenda for Disarmament, on 24 May 2018. UN Photo/Jean-Marc Ferre.
Photo: UN Secretary-General António Guterres speaks at the University of Geneva, launching his Agenda for Disarmament, on 24 May 2018. UN Photo/Jean-Marc Ferre.

グテーレス事務総長は、「皆さんが持つ影響力には、宗教の違いを乗り越えて共通の価値観を行動につなげ、協力し合う責任が伴います。」と強調し、宗教指導者らがパンデミックを逆転させ復興を支援するうえで重要な以下の4つの方策を訴えた。

まず1点目として、外国人敵視、人種差別、そして「あらゆる形態の不寛容」を拒否するとともに、「不正確で有害なメッセージに対して積極的に異議を申し立てる」よう、宗教指導者らに呼びかけた。

次に2点目として、ウイルス流行のこの時期に女性や少女への暴力が増加していることを「断固として非難する」ことが重要であり、女性とのパートナーシップ、平等、尊敬、思いやりといった共通の原則を支持する」よう、事務総長は訴えた。そして、「パートナーシップとは、どの領域でも女性の声が平等に届き、人々を代表するようにすることにほかなりません。」と語った。

3点目として、宗教指導者は各々のネットワークを通じて、ソーシャルディスタンス(社会的距離)など諸政府による公衆衛生政策を支持するとともに、礼拝や葬儀などの宗教的活動においても、世界保健機関(WHO)が定める対策の遵守を後押しするよう要請した。

最後に4点目として、パンデミックにより世界中の学生が学校に通えなくなっていることを振り返り、宗教指導者らに、教育が中断しないように「教育の継続を後押しするよう」呼びかけた。

絶望に希望をもたらす

ティジャニ・ムハンマド=バンデ国連総会議長は、「宗教は不安な時期に『絶望に希望』をもたらし、人々の癒しやコミュニティーのレジリエンス(抵抗力)の重要な源泉になり得ます。」と述べ、宗教が果たすユニークな役割を強調した。

バンデ議長は、「この『未曽有の脅威』に直面している期間を通じて、宗教指導者や信仰を基盤とした団体(FBO)には、人命を救い感染症の拡大を緩和するうえで、一層重要な役割があります。」「私たちは宗教指導者やFBOを仰いで信頼できる情報を共有したり、噂や暴力、憎しみを煽る扇動に立ち向かったり、弱い立場にある人々のニーズのために行動することができるのです。」と強調した。

道徳的権威を駆使して

バンデ議長は、貧困や、社会の片隅に追いやられた人々の苦難が増し、子どもたちの教育が寸断され、COVID-19による死者が絶えない現状について、「残念ながら、このパンデミックについては、未だに出口が見えていません。」と警告した。

バンデ議長は、「つまり、これからやらねばならないことが山積しています。」と指摘したうえで、「勇気とビジョンを備えたFBOや宗教指導者ら」に対して、道徳的権威を駆使して、引き続き女性のエンパワーメントを擁護し、教育、医療施設へのアクセスを確保するよう要請した。

Photo: Downtown Johannesburg is deserted. Credit: Kim Ludbrook/EPA
Photo: Downtown Johannesburg is deserted. Credit: Kim Ludbrook/EPA

バンデ議長は、COVID-19対策の規制により教会、シナゴーグ、モスクが世界中で閉鎖されるなか、多くの宗教指導者らがオンライン礼拝に切り替え、いち早く変化に適応した点に言及した。また、彼らが感染症の予防策に対する理解を普及させるために、効果的なパートナーとして若者たちとともに、ソーシャルメディア上でメッセージを作成している取り組みを称賛した。

最前線に立つ宗教指導者たち

国連「文明の同盟」(UNAOC)の上級代表を務めるミゲル・モラティノス氏は、世界的な連帯を訴えたグテーレス事務総長の呼びかけについて言及し、COVID-19に関連して各地に広まる社会的スティグマやヘイトスピーチの問題のみならず、脆弱な人々や社会から取り残されたコミュニティーにも思い起こす必要があると強調した。

「人々が従来の生活から切り離され追い込められるという、人生を変えてしまうような危機において、信仰はしばしば安らぎと希望を見出すための心の拠り所となってきました。これこそ宗教指導者らの役割が求められる時なのです。」と、モラティノス氏は語った。

モラティノス氏は、「多くの宗教指導者やFBOが迅速に行動を起こし、コミュニティーに様々な有益なサービスを提供する最前線に身を置いているのを見て心強く思いました。」と述べ、信仰者らが、自らのコミュニティーに深く根差し、危機に際してしばしば最初に対応する人々となっている点について説明した。

モラティノス氏はまた、今日世界が都市封鎖措置(ロックダウン)の下でキリスト教の復活祭、ユダヤ教の過ぎ越し祭、イスラム教のラマダンを迎えているなかで、各国政府と医療機関が宗教指導者らと密接に連携していることに謝意を述べた。

閉会に当たってモラティノス氏は、5月末に「宗教指導者と信仰者らがCOVID19に対処できる分野や具体的な結果志向のイニシアチブを特定する会議を開催します。」と発表した。

Miguel Ayuso Guixot/ Por Christoph Wagener – Obra do próprio, CC BY 3.0

カトリック教会のミゲル・アンヘル・アユソ・ギクソット枢機卿(教皇庁諸宗教対話評議会議長)は、「パンデミックは私たちが友情と友愛の懸け橋を築く推進力となりました。この難題に立ち向かっていくために、引き続き協力し合っていきましょう。」と語った。

パークイーストシナゴーグ(ニューヨーク)のラビでUNAOC大使のアーサー・シュナイアー師は、パンデミックの先を見据えて、「あらゆる危機や紛争には必ず終わりがあります。」と語った。

かつて第二次世界大戦時のホロコーストを生き延びたシュナイアー師は、「国連は、人類の破壊と荒廃、人命の喪失、再建、復興の歴史を象徴する典型例として、また『究極の再生』ともいえる共同行動の結果として、75年前に創設されました。」と語った。

「私たちは、信仰と祈りと行動により、子どもたちのための明るい未来、平和で愛情と親切心に溢れた世界を築くことができます。」とシュナイアー師は強調した。

またこのオンライン会議では、イスラム教を代表して、アフメッド・アバディ・モロッコ・ウラマー協会事務総長が発言した。

オンライン会議を主催したオマル・ヒラール国連大使(モロッコ)は、「COVID-19の猛威がもたらした世界規模の影響に国際社会が対処していくには、これまで以上に、結束した責任あるメッセージが必要とされています。」と語った。

ヒラール大使はまた、「とりわけ困難な時期にあっては、人類の兄弟愛を守り、より包摂的で結束力があり、安全かつ強靭で、より調和した社会を構築するためには、宗教指導者らが果たすべき役割は大きい。」と語った。(原文へ)

INPS Japan

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我々は同時に2つの敵と戦っている:死を招くウィルスとより致命的な飢餓だ

【ニューヨークIDN=ベア・コルディア】

新型コロナウィルス感染症(COVID-19)対策は、命を奪うウィルスに加えて、飢餓との戦いでもある。とりわけ、対策に有効とされるソーシャルディスタンス(社会的距離)は、紛争地や難民キャンプ、スラムなどの貧困地では、非現実的な話だ。この記事では、紛争+エボラ出血熱+Covid-19に直面しているコンゴをはじめ、シリア、ロヒンギャ難民、ウクライナ東部等、ウィルスと飢餓に直面している人々の現状に焦点を当てている。(原文へ)

INPS Japan

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新型コロナウィルスの世界的流行(パンデミック)がもたらした感染リスクの諸相

|ケニア|知恵と革新で取り組む新型コロナウィルス対策

【ブシア(ケニア)IDN=ジャスタス・ワンザラ】

ケニア西部ブシア州ナンバレ。ムンガツィ市場のバスセンターは暑い午後を迎えていた。多くの人々や旅人たちが、手を洗うために列を成す。手を洗い、それぞれの目的地に向かうためにバスに乗り込む人々は、他人から一定の距離を保っている。

公共交通機関に乗る前に手を洗い他人と距離を取ることは、ケニアで人々が実行するよう求められている新しい慣行である。新型コロナウィルス感染症の拡大を防ぐ措置として、保健当局から義務付けられている。

Coronaviruses are a group of viruses that have a halo, or crown-like (corona) appearance when viewed under an electron microscope./ Public Domain
Coronaviruses are a group of viruses that have a halo, or crown-like (corona) appearance when viewed under an electron microscope./ Public Domain

しかし、人々が手を洗う様子を観察してみると、新しいことに気づく。彼らは、ペダルを踏んで衛生器具を使い、手を洗っているのである。ペダルを踏むと、金属製のバケツの中から水と液体せっけんが直接出てくる。これで、器具に触れることなく手を洗うことができる。

この器具は地元出身の2人の若者が考案したものだ。手を安全に洗うための器具を急ごしらえで作り出したのである。その2人、ベルナード・ディンディさんとクリストファー・ブツンズさんは、高校教育以外に特別な訓練は受けていない。新型コロナウィルス感染症の拡大により衛生状態をいかに維持するかが問題になっているのを見て、この器具を考えついたという。

彼らはインターネットで調べ、新型コロナウィルス感染症の拡散を抑える手洗い器を発明した。

彼らがその作業を進める中、ケニアでは3月13日に初の感染事例が報告され、その後感染が急拡大した。4月21日には感染者296人、回復者74人と、飛躍的に増えている。

先の2人は、この器具によって人々が通常の衛生器具を使うことで直面するリスクを下げることができると語る。「手を洗ったり消毒したりしようとする場合、通常は液体石鹸のボトルや蛇口に触れざるをえません。そこにウィルス感染拡大のリスクがあることに注目しました。」と、彼らは語った。

この器具の場合、下に付けられた片方のペダルを踏むだけで液体せっけんが出てきて、もう一方のペダルを踏むと水が出てくる。

ディンディさんは、乗客に無料で使ってもらおうと、最初の器具を地元の市場にあるバスセンターに設置することにした。感染の危険がある人が多く出入りしていると見られたからだ。「ここは人の往来が多いので、器具を置くことが有効だと考えました。多くの人々が使い勝手がいいと言ってくれています。」とディンディさんは語った。

ムンガツィ市場で行商をするアン・ネケサさんは「設置されてから毎日使っています。とても便利です。」と話す。「若い人たちが開発した革新的な技術に感心しています。とても印象的で満足しています。安心して手を洗えますからね。」と語るのはバス運転手のジョン・ワンデラさんだ。

SDGs Goal No. 3
SDGs Goal No. 3

製作者の2人によれば、この器具の製作に少なくとも1万ケニアシリング(100米ドル)と数日を要したという。

好意的な反応に気をよくした2人は、さらに増産してケニア全土に配置したいと考えている。

「資金の制約からこれまで数台を製作するのがやっとでした。でも資金面の支援があればもっと作れます。」と2人は強調する。

一般の人々もブシア州当局もこの器具を歓迎している。

ブシア州の保健・衛生部門の責任者イサーク・オメリ氏は、新型コロナウィルスとの闘いにこの器具が非常に役立つと歓迎し、「これは手洗い時にウィルスとの接触を最小限にしてくれるとてもユニークな器具です。」と語った。

すでにオメリ氏は器具を6台購入し、州内の保健所で使用されることになるという。

ケニアでは新型コロナウィルスの感染拡大を阻止するための様々な措置を講じているなかで、創意工夫に重点がおいているようだ。

4月初め、ケニアの首都ナイロビ近くにあるケニヤッタ大学は、新型コロナウィルス感染者の命を救う人工呼吸器の開発に成功したと発表した。

人工呼吸器は呼吸困難を発症した新型コロナウィルス感染症患者に有効だ。しかし、ケニア国内には数えるほどしか機材がない。

そこでケニヤッタ大学の学生が「ティバ・ベント」と呼ばれる人工呼吸器を試作した(「ティバ」はスワヒリ語で「治療」)。

複数の学部の16人の学生が作ったこの機材では、硬い銀色のプラスチック部品でできた立方体の部分がパイプを通じて酸素タンクにつながれ、別の2本のパイプが空気を送り込む。また、コンピューターモニターにもつながれている。大学のポール・ワイナイナ副学長によれば、大学としては週に50台は製作可能であるという。

さらに、ケニア医療研究所(KEMRI)は4月初め、新型コロナウィルスの検査を加速するための検査キットの製造を開始した。同研究所には、検査キットと手指洗浄剤を生産する生産部門がある。

一部の企業は、一般市民や医療関係者向けのマスクや、数か月前には輸入に依存していた個人防護具(PPEs)の製造を始めている。

加えて、政府は、数多くの措置を盛り込んだ多面的な新型コロナウィルス抑制戦略を実施している。入域のあらゆるポイントや医療施設、各地域における監視を強化している。国内47州のうち4州からの人の出入りを禁止し、ウィルス感染者の多い地域で対象を絞った大規模検査も開始された。

Map of Kenya
Map of Kenya

一般市民に対しても、依然として高いリスクがあることに鑑み、注意を怠らないよう警告がなされ、呼吸衛生を保ち、食事を安全にとり、他人との距離を保ち、急性の感染症状を起こしている人との接触を避けるなどの予防的措置を引き続き自主的に取るよう助言がなされている。

他方、公の場でマスクを着けることが義務化され、あらゆる教育機関が閉鎖されている。また、人が密集する集会を持つことは、公的にも私的にも禁じられている。

すでに20億ケニアシリング(2億米ドル)が新型コロナウィルス対策に充てられている。全47州に患者の対策センターが設置されているが、必要な装備はまだ足りていない。(原文へ)

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

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世界が直面している緊急の保健課題

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フェイクニュースは生命を危険に晒す「インフォデミック」

【ニューヨークIDN=リサ・ヴィヴェス】

今年も国際報道自由デー(5/3)を迎えた。米国ではフェイクニュースの問題が盛んに議論されているが、アフリカやその他の国々では、「報道の自由」を巡る理論と実際を振り返る機会となった。国際連合教育科学文化機関(ユネスコ)が掲げたこの記念日の今年のテーマは「公平なジャーナリズム(Journalism without Fear or Favour)」である。

多くのメディア専門家らによると、ジャーナリズムは世界の大半の地域で不安定な状況に直面している。

Image credit: Pixabay

国際ジャーナリスト組織「国境なき記者団」(RSF、本部パリ)が先月21日に発表した「世界報道自由度ランキング2020」は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的な流行により、信頼できる情報を得る権利を阻害する要因が明確になってきており、さまざまな危機を抱えるジャーナリズムの将来にとり、今後10年が決定的な意味を持つ」と述べている。

アフリカでは、記者たちが、権力者に対して真実を語ることを恐れざるを得ない状況に直面している。ニューヨークに本部を置く民間団体、ジャーナリスト保護委員会(CPJ)によると、例えばエスワティニ王国(旧名スワジランド)では、現地の記者らがムスワティ3世国王について批判的な報道をしたとして嫌がらせや反逆罪に問うという脅迫を受けていた。

ソマリアでは、ラジオジャーナリストのモハメド・アブディワハブ・ヌール氏が3月7日以来、アルシャバブとの繋がりが疑われて(本人は否定している)投獄されている。

ナイジェリアでは、記者たちは、新たに法制化された「新型コロナウィルス及びその他の感染症に関する法律」により、報道内容が「誤った或いは有害な情報」と当局が判断した場合は投獄されるリスクに直面している。ナイジェリアはCPJが発行している「免責番付」(Impunity Index)で最下位近くに位置している。オンラインニュースサイト「サハラレポ―ターズ」創立者で人権活動家のソウォレ・オモイェレ氏は裁判所が昨年12月に釈放命令を出しているににもかかわらず未だに投獄されたままである。

ユネスコのオードレ・アズレ事務局長は国際報道自由デーに寄せて、「私たちが新型コロナウィルス感染症の蔓延により将来の不安と心配に苛まれているなかで、自由な情報は、私たちがこの危機に正面から対峙し、理解し、克服していくうえで欠かすことのできないものです。」と指摘したうえで、「そこでユネスコは、他の国連諸機関と協力して、パンデミックを悪化させ人々の命を危機に晒す噂や偽情報といった『インフォデミック』と闘う取り組みを進めています。」と語った。

Didier Plowy/Ministère de la Culture et de la Communication, CC BY-SA 3.0

メディアは、政府による抑圧に加えて、資金難による経営危機にも直面している。ニューヨークタイムズ紙は、かろうじて活動を続けている地方の報道機関に対する支援を求める特別な呼びかけを行った。米国では新型コロナウィルス感染症のパンデミックに伴い約36000人の報道関係者が一時解雇か自宅待機を余儀なくされている。

「広告収入が激減し消費者の消費志向が変化するなかで、ジャーナリズムの重要な部分を占める地域の新聞社がますます厳しい局面に立たされています。あなたの近くの新聞社が存立の危機にあるのです。地元の新聞を購読或いは寄付をお願いします。」と同紙は支援を呼びかけている。

アントニオ・グテーレス国連事務総長とユネスコのアゾレ事務局長、ミシェル・バチェレ国連人権高等弁務官は、5月3日に開催された報道の自由と新型コロナウィルスへの取り組みをテーマにしたオンライン会議に参加し、自由・独立で事実に基づくジャーナリズムを断固として守っていく決意を語った。国連は毎年「国際報道自由デー」にあわせて特別行事を開いているが、今年はこのオンライン会議が中心的なイベントであった。

このオンライン討議では、新型コロナウィルス危機を口実に報道の自由や市民権を制限した政権に対する非難の声が上がった。その他の主な参加者としては、カナダのフランソワ・フィリップ・シャンパーニュ外務大臣、ヨネス・ムジャヒド国際ジャーナリスト連盟会長、フィリピンラップラ―ニュース創立者で調査ジャーナリストのマリア・レッサ氏、国境なき記者団のクリストフ・ドロワール事務局長、そしてフェイスブックを代表したモニカ・ビッカート氏が挙げられる。また、オランダ、ノルウェー、欧州委員会の代表がビデオメッセージを寄せた。

Photo: UN Secretary-General António Guterres speaks at the University of Geneva, launching his Agenda for Disarmament, on 24 May 2018. UN Photo/Jean-Marc Ferre.
Photo: UN Secretary-General António Guterres speaks at the University of Geneva, launching his Agenda for Disarmament, on 24 May 2018. UN Photo/Jean-Marc Ferre.

グテーレス事務総長は、ユネスコが発表した昨年世界で57人の記者が殺害されたとする数値をあげ、報道の自由が直面している深刻な現状を強調した。「私たちは、新型コロナウィルスの世界的蔓延という新たな試練とともに、有害な健康アドバイスから狂気じみた陰謀説に至るまで、様々な虚報が爆発的に拡散しているのを目の当たりにしています。これに対抗できるのは、科学的に検証された事実に基づくニュース解説に他なりません。そしてそれを実現するには、メディアの自由と独立した報道が保証されなければなりません。つまり、ユネスコが正しくも指摘している通り、「公平なジャーナリズム」の存在が不可欠なのです。これは人の生死に関わる問題であることから、単なるスローガンに留まる問題ではありません。」とグテーレス事務総長は語った。

バチェレ国連人権高等弁務官は、「国際法の下で緊急時に市民権に制限が加えられる場合は、合理的な必要の範囲内において適切かつ相応なものでなければならない。」という事実を指摘したうえで、世界の指導者らに対して、記者とメディアの報道の自由を標的としたあらゆる攻撃をやめるとともに、そのような行為を非難するよう求めた。(原文へ)

INPS Japan

*インフォデミックは「情報の急速な伝染(Information Epidemic)」を短縮した造語で、「正しい情報と不確かな情報が混じり合い、人々の不安や恐怖をあおる形で増幅・拡散され、信頼すべき情報が見つけにくくなるある種の混乱状態」を指す。

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世界大会が核兵器廃絶と気候変動対策を呼びかけ

【ニューヨークIDN=サントー・D・バネルジー】

1月23日、『原子力科学者会報』誌は「世界終末時計」の針を「真夜中(=地球と人類の滅亡)まで100秒」にセットすると発表した。13人のノーベル賞受賞者たちによる、核兵器と気候危機の実存的危険についての劇的な警告であった。

4月25日、新型コロナ危機の中、1000人以上の平和活動家、気候変動活動家、社会運動家が集まって、「世界大会:核兵器廃絶、気候危機の阻止と反転、社会的経済的正義のために」を初めてオンラインで開催した。

Coronaviruses are a group of viruses that have a halo, or crown-like (corona) appearance when viewed under an electron microscope./ Public Domain
Coronaviruses are a group of viruses that have a halo, or crown-like (corona) appearance when viewed under an electron microscope./ Public Domain

この会議は元々、4月27日から5月22日にかけニューヨークの国連本部で開催される2020年NPT再検討会議に合わせて対面形式で開催される予定であった。しかし、再検討会議そのものが、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的大流行(パンデミック)により2021年に延期となった。「にも関わらず、対面会議を準備していた参加者のエネルギーとモチベーションは失われていなかった。」とある識者は語った。

このオンライン会議は、より平和かつ公正で、責任のある世界を希求する様々な活動を糾合する出発点になった。一連の目的に向けて「弛みなく努力し続ける」参加者のコミットメントが示されたことが、その証左である。

そうした目的には、軍備競争の停止と核兵器の廃絶を求めた核不拡散条約(NPT)第6条の即時履行が含まれている。同様に重要なのは、核兵器のない世界への重要かつ補強的措置としての核兵器禁止条約(TPNW)の早期発効である。

会議の参加者らはまた、NPT締約国が合意した中東非核・化学・生物兵器地帯の早期確立を求める動きへのコミットメントを強調した。

また、南アジア、北東アジア、欧州を含む世界のすべての地域で紛争と軍備競争を停止する地域的な緊張緩和のプロセス達成に向けた努力を、参加者らはさらに継続していく。

世界的軍縮と兵器産業労働者の正当な転職、紛争を減らし紛争の平和的解決に役立つ緊張緩和政策もまた、参加者らが自身で設定したもう一つの目標である。

参加者らは、軍事予算を世界的に大幅削減し、資金を人間のニーズを満たし環境を守るために転用するよう呼びかけた。また、「持続可能な開発目標(SDGs)を、資源を軍事中心から平和へと再配分する努力の中心に据えることは、軍縮によってのみ実現できる。」と付け加えた。

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今回の世界大会の共催団体である国際平和ビューロー(IPB)は、軍事費が増加する一方、保健関連予算は新型コロナウィルスのパンデミックに対処するのに不十分なレベルにとどまっていると指摘し、こうしたコミットメントの重要性を強調した。

ストックホルム平和研究所(SIPRI)によれば、2019年の世界の軍事費は計1兆9170億ドルで過去最高額を更新した。2018年からの増加率は3.6%で、世界の人口一人あたり252ドルを負担していることになる。

「こうした軍事費の増加は、一部の者にだけ利益を与え、世界が破滅する可能性を高めるグローバルな軍拡競争が起こっていることを示している。とりわけ欧州・北米・アジア・オセアニアにおいて軍事産業のロビー活動が効果を上げていることを浮き彫りにしている。北大西洋条約機構(NATO)の軍事費だけでも1兆350億ドルにおよび、世界全体の軍事費の54%を占めている。」とIPBは指摘した。

世界大会の参加者らはまた、いくつかの根本的な変革も要求した。国連憲章が明らかにした20世紀のビジョンを実現することもその一つだ。

「われわれは、瞬時に地球を破壊する核兵器と核戦争、気候変動により静かに進む破壊、環境の荒廃、パンデミックの脅威など、存続に関わる難題に直面している。軍事増強は欧州でも世界各地でも劇的に強まっている。」と声明は述べている。

さらに声明は以下のように続いている。広島と長崎への原爆投下と、世界に広がった「二度と繰り返すな」の叫びから75年、我々は、被爆者の警告を決して忘れてはならない。

第二次世界大戦の終結と「ファシズムを、戦争を繰り返すな」の誓いから75年、われわれは、確固としてこの決意を守り続けなければならない。

戦争に終止符を打つために国際連合を創立してから75年、国連憲章と誓約を守らなければならない。

核軍備競争の停止と核軍備撤廃の達成を目的とするNPTの発効から50年、その誓約を果たさなければならない。

数百万の人々が新型コロナウィルスに感染し、何十万の人々が亡くなるなかで、この疫病のパンデミックは各々の国の、そして国際的なシステムの脆弱さ、政策的失敗、深刻な国際協力の欠如を浮き彫りにした。

「だが、危機の中には好機も存在する。このパンデミックはまた、将来の避け難い疫病の蔓延にどう備えるか、また、核兵器や気候変動の脅威をどう逆転させるべきかを描き出している。」

われわれは、強権的政府の増加と極右急進主義やファシズムの脅威の伸長に直面している。

非民主的で独裁的な政治が世界中のますます多くの国で影響を強め、政治的風潮を支配し、少数民族や移民の人々の命を危険に陥れている。もっとも基本的な民主的権利さえ脅かされ、民主主義は深刻な危機のただ中にある。

声明はさらに、「政府、企業、-そして個人も- が、あたかも環境悪化が簡単に是正できるかのように、あるいは別の惑星に移住すれば済むかのように、激しく地球を貪っている現実に直面している。人間が創った気候変動は、生命と生存にとって日々の脅威となっており、その他の環境破壊がわれわれの共存や、人間、その他の動物、植物の未来の形を脅かしている。」と述べている。

Image credit: GreenBiz
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「これらの変化から恩恵を得られる者はほとんどおらず、他方で、地球に住む圧倒的多数の人々は影響を受け、苦しめられている。戦争と不正義と地球規模の環境災害によって、何百万人もの難民が生み出されている。」(原文へ)

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戦争犯罪抑止については限られた成果

【ルンドIDN=ジョナサン・パワー】

国際刑事裁判所(ICC)がどの程度戦争犯罪の抑止になっているかについて、具体的な事例を検証しながら今日直面している課題を分析した記事。今後のテストケースとして、明らかな戦争犯罪を犯している当事者を国連安保理で拒否権を持つ大国が支援している事例(シリアのアサド政権をロシアが支援、イエメン政府を米・英が支援)等が挙げられる。(原文へ)

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【マウントレイクテラス、ワシントンIDN=ラムジー・バロウド】

イスラエルの「青と白」連合の指導者、ベニー・ガンツ氏によるベンヤミン・ネタニヤフ首相が率いる政府に参加するという決定は、マキャベリ主義的な動きを意図したものだったが、今後何年にも亘って、イスラエル社会の政治的枠組みを不安定化させることになりそうだ。

衝撃的な動きの中で、ガンツ氏は3月、危険な政治的妥協案を結び、これにより、彼は、与党リクードと「青と白」連合の両党を含む挙国一致内閣を組織する序章として、クセネトの議長になることとなった。しかし、この動きは最悪であることが証明された。

Map of Israel
Map of Israel

ガンツ氏がネタニヤフ首相と手を組む意思を表明し、これにより信任されていない首相に救いの手を差し伸べるやいなや、彼が率いてきた「青と白」連合はあっという間に分裂することになった。

「青と白」連合は、2019年4月の総選挙を争うために結成されて以降、足元が揺らいできた。ガンツ氏(イスラエル回復党)やヤイール・ラピド氏(イェシュ・アティッド)、モーシェ・ヤアロン氏(テレム)など、連合の指導者らは、共通のイデオロギー的基盤ではなく、共通の敵ネタニヤフ首相を失脚させたいという、燃えたぎる願望によって主に結束していたようだ。

ネタニヤフ氏は在任期間が最も長い首相で、その期間は縁故主義や汚職の時代と無縁ではない。自身の政治的生き残りを確実にするために、極右政府連立パートナーに対していつでも譲歩できるネタニヤフ氏は、実現可能な政治的ビジョンで国に貢献することはほとんどなかった。

何年にもわたり、ネタニヤフ氏の政敵は首相の行き過ぎた行為に対する対抗勢力にはほとんどなってこなかった。ネタニヤフ首相がイスラエルの右派の有権者の支持獲得に成功した一方、いわゆる左派は、時には、イスラエルの選挙結果や世論調査で誤差の範囲を少し超える程度しか占められないほどにまで弱体化した。

これを物語る例が、イスラエルのチャンネル12が4月に行った世論調査だ。結果によると、調査日時点でイスラエル国民が総選挙で投票したとすると、この国の歴史ある労働党(同国建国時の政党)はクネセトで1議席も獲得しないことになる。

今から考えてみると、ガンツ氏と彼による連合には、自分たちを「中道派」とブランディングする以外の選択肢はなかった。1年前に連合を組んだ際、彼らは不満を抱いているイスラエル人の様々なグループに訴えかけることを目指していた。つまり、政治的行き詰りと、経済格差に幻滅した右派有権者たち、強い野党勢力として復活する上で、伝統的な左派の力には信頼を失ってしまった左翼、無党派層、中道派の有権者などだ。

ガンツ氏と彼の連合の計算は、イスラエルの有権者が1年足らずの間の3度の選挙に登場し、かつては不可能に思えたミッション、つまり、ネタニヤフ首相追放の動きに活気を与えたように、メリットがあることは証明された。

最近の3月の選挙では、「青と白」連合はクネセトで33議席を獲得し、単独で組閣するには足りないものの、クネセトを掌握し、最終的には組閣できる比較的安定した連立を組むには十分な地盤を獲得した。

この数年間で初めて、ネタニヤフ首相の政治キャリアは終わったように思えたし、重大な「汚職の嫌疑」をかけられている首相が、刑務所とは言わないまでも、裁判所に姿を見せる日が来るように思えた。

しかし、ガンツ氏はジレンマに直面し、これは結局、ネタニヤフ氏と挙国一致内閣を組むという一見奇矯な判断へとつながることになった。

リクード党を排除した政権を組むためには、「青と白」連合はクネセトの第3政治勢力、ジョイント・リスト(連帯候補)の元に結集したアラブ諸政党を取り込まなければならなかった。

ジョイント・リストがガンツの不安定な連合(この中には、イスラエル我が家のアヴィグドール・リーベルマン氏など、イスラエルで最も悪名高い反アラブ政治家なども含まれていた)に参加することをいとわない姿勢を示したにも関わらず、ガンツ氏はその可能性を避けるために、「青と白」連合の党首としてあらゆる手を使った。

イスラエルにおける人種差別は最悪の状況にあり、アラブ諸政党に対するいかなる政治的譲歩も、多くのイスラエル人から、2018年7月に採択された愛国主義的な新法「ユダヤ人国家法」に明記された「国のユダヤアイデンティティ」に対する裏切りとしてみなされたことだろう。

ガンツ氏は、新型コロナウィルス感染症(COVID-19)の世界的流行(パンデミック)で譲歩を強いられたかのように装った形で、ネタニヤフ氏と非常事態政府を組織し、アラブ・ジョイント・リストを除外することに同意した。

Coronaviruses are a group of viruses that have a halo, or crown-like (corona) appearance when viewed under an electron microscope./ Public Domain
Coronaviruses are a group of viruses that have a halo, or crown-like (corona) appearance when viewed under an electron microscope./ Public Domain

3月26日、ガンツ氏はクネセトの議長に指名され、突然辞任したユーリ・エデルスタイン前議長に代わるとともに、新政権の構成に関して、ネタニヤフ氏のリクード党と交渉する場を設けた。

ガンツ氏が自身の決断がもとらす副次的影響を予期していたかどうかは重要ではない。なぜなら彼は意識的に、イスラエルのアラブ社会がこの国の意思決定プロセスに参加する道筋をつけたイスラエルのユダヤ人政治家になるよりも、むしろ悪魔と取り引きする選択をしたからである。

3回連続の選挙や、ますます右傾化するこの国の中道派の政治的論調を分断しようとする必死の試みなど、ガンツ氏が取り組んできたことの全ては、大きな音を立てて崩れた。彼の「青と白」連合のパートナー、イェシュ・アティッドやテレムはクネセト準備委員会に対して正式にガンツ氏の派閥から離脱することを申請し、認められた。

もし今イスラエルで選挙が行われれば、力を取り戻したリクード党が40議席を獲得するのと比較して、ガンツ氏の党がわずか19議席しか獲得できないというのは、驚くべきことではない。

最終的に自分に有利に働くパワーバランスを利用して、ネタニヤフ首相はその政治的立場を強固なものにし、裁判官の選任を強く要求し(これにより、将来訴追されても身を守れるようになる)、首相の座に就く資格をはく奪する決定を阻止する権利を要求している。

Knesset Israel 61 years./ By צילום: איציק אדרי, CC BY 2.5

ガンツ氏とネタニヤフ首相が合意に達せなかったことを受けて、組閣作業は、今度はクネセトに移った。21日以内に組閣できなければ、イスラエルは4度目の選挙を行うことになり、与党リクード党とその連合が確実に、圧勝するだろう。

イスラエル政治の「中道派」を復活させた立役者が、最終的にこれを破壊することにもなったのは皮肉なことだ。これにより、ガンツ氏はネタニヤフ氏の政治生命を延命し、結果的にイスラエル右派による権力支配を強化してしまったのだ。(原文へ)

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【マルセイユIDN=カミール・ルスティッチ】

新型コロナウィルスのパンデミックが、中国に過度に依存してきた従来のグローバルサプライチェーンの欠陥を露呈し、欧州諸国の間で、戦略物資の独立した生産体制の再構築と、特定の国への依存回避、そしてオフショアリングからニアショアリング(生産拠点をより欧州に近い拠点に移す)へと移行する動きが出ている現状を分析した記事。(原文へ)

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世界が直面している緊急の保健課題

Special Focus on the COVID-19 Pandemic

From the Chief Editor’s Desk

IDN, the flagship of non-profit International Press Syndicate, launched an intensive journalistic coverage focussing on COVID-19 in February 2020. By the end of May 2020, we carried nearly 130 in-depth news features, analyses and viewpoints.

Contributors were from the network of INPS-IDN journalists, other professional journalists and experts from around the world.

They dealt with the impact of devastating pandemic worldwide. A growing number – running into several million – were infected. Several hundred thousand died.

The COVID-19 pandemic has had far-reaching consequences on the spread of the disease itself and efforts to quarantine it. As the SARS-CoV-2 virus has spread around the globe, concerns have shifted from supply-side manufacturing issues to decreased business in the services sector.

The pandemic caused the largest global recession in history, with more than a third of the global population being placed on lockdown. While the monetary impact on the travel and trade industry is yet to be estimated, it is likely to be in the billions and increasing.

As the pandemic spread, global conferences, including those by the United Nations, and have been cancelled or postponed.

In fact, the UN Headquarters in New York and the UN elsewhere, particularly in Vienna and Geneva, have been closed until further notice. Press conferences by the Secretary-General and briefings by his spokesman as well as other senior UN officials have been taking place online.

European leaders, in particular, have been predicting a ‘new normal’ once the COVID-19 subsides. But they have not explained whether a possible new normal would put an end to humanity’s ruthless exploitation of the planet Earth. More than one IDN analysis addresses the vital issue of restoring harmony between human beings and nature in its entirety – and this for the benefit of both. [INPS-IDN – 31 May 2020]

Please visit https://www.indepthnews.net/index.php/sustainability/covid-19 for our full coverage.

Photo: Collage by Katsuhiro Asagiri, INPS-IDN, Multimedia Director.