ホーム ブログ ページ 163

延期されたNPT再検討会議成功への予期せぬ可能性とは

【ニューヨークIDN=セルジオ・ドゥアルテ】

NPT加盟国は、2020年NPT再検討会議の議長内定者による忍耐強い調整努力と、多くの国々、とりわけ非同盟諸国(NAM)による慎重な状況判断、さらに国連軍縮局からの支援を得て、再検討会議を延期し「状況が許し次第、2021年4月までに」開催することを決定した。

Sergio duarte
Sergio duarte

新型コロナウィルス感染症の急速な拡大を受けて、延期は不可避であった。この決定により、手続き的な問題、とりわけ会議の日程と開催地をさらに協議する余地が生まれた。一部の加盟国は再検討会議をできるだけ早く開催することを望み、適切な開催地に関する意見も割れていたが、結局は常識が勝った。延期の決定は、不必要な対立を避けることを念頭に再検討会議にいかに最良のアプローチをするかという問題について検討を加える数カ月の猶予を与えることになった。

世界が新型コロナウィルス感染症の破壊的な影響を緩和しようと努力する中、NPTが避けようとしている、核戦争を含もより危険な大惨事について、私たちはじっくり考えざるをえないだろう。核兵器の使用がもたらす影響についてはよく知られており、改めて強調する必要はないだろう。つまり核爆発の影響は国境で留まることがなく、既存のリソースでは人道上の影響に十分に対処できず、人的被害の重大さと規模は、不可逆的な環境破壊と相まって、地球上の生息環境に終わりを告げるものとなるかもしれないのである。

従って、現在のパンデミックによる被害の拡大は、あらゆる人々に影響を及ぼし、結果として共通の解決策を必要とするリスクと問題に対処するために諸国間のより深い理解と協力が不可欠という教訓にすべきだろう。NPT再検討会議によって条約の効果を強め、平和と安全への不可欠の貢献を強めることは、以前にもましてタイムリーかつ緊急の課題となっている。

実質的な側面を見ると、2021年のNPT再検討会議で円滑に望まれる結果をもたらすために、今後数カ月で建設的な話し合いを進めていかねばならない議題がある。昨年の準備委員会は、それ以前の4回の会議と同様に、最終文書を全会一致で採択することなく終わった。

核軍縮・不拡散をめぐる現在の全体状況を見ると、2005年再検討会議の準備段階で支配的であった雰囲気に近いものが感じられる。2004年に開かれた第3回準備委員会では、加盟国間の相互不信と強い敵意を背景にした厳しい意見対立によって、必要な手続き的決定に至ることができなかった。

これにより2005年再検討会議では、会期の大半以上が議題の設定という手続きをめぐる対立に浪費され、意味のある実質的な作業を始めることすらできなかった。しかしこの失敗から、同様の事態が繰り返さることは避けたいという政治的気運が高まり、2010年再検討会議において意欲的な最終文書(行動計画)が採択される大きな要因となった。

その後、核爆発によって引き起こされる「壊滅的な帰結」に対する重大な懸念が、「核兵器の人道的影響に関する会議」が各国や専門家らが集って3回にわたって開催される原動力となった。そしてこれらの会議の結論が、のちの核兵器禁止(核禁)条約の交渉と採択に必要な推進力を与えた。核禁条約のNPTとの関係性やその目標への貢献については、政治的隔たりを超えて理解されねばならない。

Applause for adoption of the UN Treaty Prohibiting Nuclear Weapons on July 7, 2017 in New York. Credit: ICAN
Applause for adoption of the UN Treaty Prohibiting Nuclear Weapons on July 7, 2017 in New York. Credit: ICAN

また、差し迫った実質的な問題は、来るべき2021年再検討会議に向けた準備において、緊急の検討を必要とする。2015年再検討会議が最終文書に合意できず失敗に終わった原因は、中東非大量破壊兵器地帯の創設に関する国際会議の開催を巡る対立であった。中東諸国は、中東情勢の悪化や、主要プレーヤーによる無関心をよそに、この問題を国際的な関心の最前線に留まらせるべく、2019年11月にニューヨークで会合を開いた。

2021年再検討会議が、このデリケートで、しかし極めて重要な問題にどうアプローチするのか、特別な関心が払われねばならない。なぜなら、中東から核兵器を含むすべての大量破壊兵器を撤去し、中東を非大量破壊兵器地帯とするという、いわゆる中東決議が全会一致で採択された1995年NPT再検討・延長会議以来、この問題で何の前進も見られないことが各国を悩ませ、NPTへの信頼性を毀損しているからである。

この5年間、国際的環境は改善してこなかった。それどころか、世界はより予測不能で不安定になり、さらには、自己中心的な態度や政策に傾く危険な兆候を示している。主要な核兵器国、とりわけ最大の核保有国間でのハイレベル協議が再開されることが、2021年再検討会議の成功に必要な信頼を取り戻すうえで肝要になってくる。

新戦略兵器削減条約(新START)が来年の2月に失効する前に(すなわちNPT再検討会議以前に)、同条約の延長の合意が得られれば、既存の核戦力削減に向けた二大核保有国の意思を示すよいシグナルとなるであろう。

しかし、そうした核削減はそれ自体が目的とみなされてはならない。むしろそれは、NPT第6条(締約国による核軍縮交渉義務)の公約と明確に調和したしたものとみなされ、実行に移されねばならない。同じように、他の核兵器国も、抑制的な措置を強化し、地域の対立を回避し、核兵器の完全廃絶という目標を支持・前進させるべく協働しなくてはならない。

事故や計算違いによって引き起こされる核戦争のリスクを下げる建設的な提言が様々な方面からなされている。例えば、NPT上の5つの核兵器国は、「核戦争に勝者はなく、けっして戦われてはならない」とする、ロナルド・レーガン大統領とミハイル・ゴルバチョフ書記長による分別のある声明を2021年再検討会議で再確認することを支持すべきだ。

それに関して、これまでも議論の俎上に上ってきたことは、核兵器先制不使用の約束であり、あるいは、核戦力の戦略的即応態勢を合意によって弱めるということである。これらの措置はとりわけ理性的かつ責任感のある提言であり、真剣な検討を加えるに値する。

NPT内には諸国やグループ間の激しい対立があるが、NPT体制を維持することについては共通の利益との認識がある。つまりNPT体制を維持することで各国は、核エネルギーの平和利用を促進しつつ、新たな国々が核兵器を取得することを予防し、核兵器の廃絶を推進するうえで、引き続き主要な役割を果たすことができるからである。

しかし、NPTは「解決済の話」ではない。NPTは、それが掲げる3つの目標を達成するうえで、最適であると見なされて初めて生き残れるダイナミック構造である。核兵器の水平的な拡散(他国への拡散)を抑えることができたという認識のみでもって、NPTの「ミッションを達成」したという身勝手な主張が罷りとおってはならない。残り2つの目標である、原子力の平和利用や、効果的かつ法的拘束力のある核軍縮措置の進展においても、同様の成果が望まれているのである。

過去の再検討会議では、多くの加盟国が、条約の成果に対する不満をたびたび表明してきた。このパターンが悪化すれば、一部の加盟国が条約第10条1項に認められた権利を行使して条約から離脱することにつながりかねない。これは重大な危機を引き起こす。なんとしても防がねばならない。しかし、それに対する答えは、条約に規定された脱退条件を厳格にすることではなく、NPTが例外なくすべての条項に関して誠実に成果をもたらすとの信頼感を高め、すべての加盟国の利益に資すると証明することである。

1960年代半ばには、核兵器を取得する国の数を抑えようという、NPTの元々の推進者(米ソ両国)の利益が共通していたため、両国は相互不信と敵意をいったんは脇に置き、18カ国軍縮委員会と国連総会を通じた共同の条約起草を取り仕切るために協力したのである。

当初、かなり多くの国々がNPTをすぐに批准することに抵抗を示していたが、次第に、核兵器開発を放棄することが自らの真の利益になるのだという理解が広がっていった。こうした国々は、条約を遵守するために、取り引きのもう片方の条件である核軍縮が実行される限りにおいて、自らの義務を法的拘束力あるものとして受け入れた。しかし、核軍縮という目標が長きにわたって回避され遅らされるにつれて、NPTへの不信感はますます高まってきた。

この5月でNPTが発効してから50周年を迎える。条約発効以来、NPTは、軍備管理分野で最も加盟国の多い条約となり、核不拡散体制の礎石であるとの正当な認識が広がってきた。しかし、現在までのところ、核兵器の存在による脅威を廃絶するという点において、NPTは期待された効果を挙げてきていない。第6条の軍縮義務があるにも関わらず、核兵器国は継続的に核戦力を強化し、新型でより性能のいい破壊兵器を製造してきている。彼らは、必要な限りにおいてこうした核戦力を維持し、適切な場合においてそれを使用するとの決意を繰り返し口にしている。

NPTの非核兵器国が、核軍縮義務が無視されてきたことについて、ますます苛立ちを露わにしていることは無理もない。こうした不満は、2017年に国連で採択され、核兵器の廃絶を最終的に目指す核禁条約の交渉と採択の成功につながっている。この新条約は、核兵器のいかなる使用であっても、それが人間や社会、環境に与える帰結は国際法の下で容認できるものではなく、諸国間の文明的な行動基準に反するという、国連の大多数の国々の確信を表明したものであった。

Jayantha Dhanapala
Jayantha Dhanapala

画期的な1995年のNPT再検討・延長会議の議長であったジャヤンタ・ダナパラ大使は、その著書『多国間外交とNPT:あるインサイダーの回顧』でこう述べている。「究極的には、自己満足を打破する最善の方法は、条約の基本的な正当性あるいは公正さに対する加盟国間の信頼のうちに見て取ることができる。[…]多くの加盟国の中には、NPTの基本的な取引構造は、多くの論者が長年指摘してきたように、結局のところ差別的なものであるとの考えが根強い。ならば、ようやく勝ち取られてきたこの取引構造が劣化してしまわないように、加盟国は何ができるであろうか?」

これこそが、NPTの全ての加盟国が直面している緊急の課題なのである。(原文へ)

※著者は、元国連軍縮問題上級代表で、現在はパグウォッシュ会議議長。

INPS Japan

This article was produced as a part of the joint media project between The Non-profit International Press Syndicate Group and Soka Gakkai International in Consultative Status with ECOSOC.

関連記事:

|視点|核不拡散条約と軍縮の将来に不確実性漂う(タリク・ラウフ元ストックホルム国際平和研究所軍縮・軍備管理・不拡散プログラム責任者)

仏教指導者が核兵器なき安全保障の実現を呼びかける

再び非大量破壊兵器地帯への軌道に乗る中東諸国(セルジオ・ドゥアルテ元国連軍縮問題担当上級代表、パグウォッシュ会議議長)

|新型コロナウィルス|市民運動の要求受け、ブラジルでベーシック・インカム実現

【サンパウロIDN=ペドロ・テレス】

僅か3週間でブラジル全土に広がった草の根運動に呼応して議会が可決した法律により、新型コロナウィルスがもたらす経済的影響に対処することを目的としたベーシック・インカムを数千万人のブラジル国民が受け取り始めた。

新型コロナウィルスの感染拡大は、多くの危機と同じく、世界中で、しばしばより苛烈な形で、社会的・経済的不平等を際立たせている。4月13日時点の公式統計で感染者2万727人、死亡者1124人を記録しているブラジルでは(実際の数値はこの12倍に上ると見られる)、最も貧しく社会の主流から取り残された人々が最悪の影響を受けている。自らの健康と生活を守るための富と資源に欠けているからだ。

普遍的なベーシック・インカムに関する数十年に及ぶ議論を反映し、世界でも最も不平等な国ブラジルにおける感染拡大の影響を受けて、同国の160以上の市民団体が、3月に「私たちの望むベーシック・インカム」という運動を立ち上げて、理論を実践に移したのである。

SDGs Goal No. 1
SDGs Goal No. 1

3月20日に立ち上げられた同運動は、すぐさま50万人以上の市民と影響力のある3000人のSNS発信者の支持を得た。また、「ブラジル・ベーシック・インカム・ネットワーク」「黒人人権連合」「経済・社会的責任を求めるエートス研究所」「ノッサス」「社会経済研究所」の主要5団体からの支持も得た。

キャンペーンでは、ブラジルの国会議員に詳細な政策提言がなされ、これを受けて彼らが法案を提出した。法案は3月30日までに、一部修正を受けたのち、上院・下院において全会一致で可決した。その3日後にジャイル・ボルソナーロ大統領が署名した。大統領はそれ以前、最も脆弱な立場にある市民の収入補填に関して、今回の法案よりはるかに限定的な政策を提案していた。

4月9日までに、ブラジルの最低賃金の半分超に相当する600レアルの第一陣の支払いが始まった。最大5900万人の低所得層のブラジル国民が直接に、さらにその2倍の人々が間接的に利益を受けることになるが、全体では国民の半数以上が受益者になる。ベーシック・インカムの支払いは少なくとも3カ月は続くが、成立した法案によれば、延長も可能だ。

100 Brazilian reals/ Wikimedia Commons
100 Brazilian reals/ Wikimedia Commons

「ブラジル・ベーシック・インカム・ネットワーク」のレアンドロ・フェレイラ代表は「明確かつ効果的なベーシック・インカムを訴える私たちのキャンペーンが、議会が可決し現在実行されている決定に強く影響を与えたことは疑いの余地がありません。」と語った。

フェレイラ代表はまた、「ベーシック・インカムは、最もそれを必要とする人々を直接的かつ無条件に支援することで、実行に移されました。当初は現在の危機に対処する政策的オプションとして登場しましたが、その後どうなろうとも、政策として保持されるべきです。」と語った。

Coronaviruses are a group of viruses that have a halo, or crown-like (corona) appearance when viewed under an electron microscope./ Public Domain
Coronaviruses are a group of viruses that have a halo, or crown-like (corona) appearance when viewed under an electron microscope./ Public Domain

多くの活動家や専門家、政治家らは今や、緊急措置としてのベーシック・インカムは、新型コロナウィルスの感染拡大が収まったとしても恒久的なものになるものと期待している。また、現在の法律で規定された基準を満たす人にだけ限定されるのではない普遍的な制度になることも期待されている。重要なことは、新法ができたことで、ベーシック・インカムがブラジルにおいてひとつの権利として確立し、いくら政府がそれを望んだとしても、その権利を取り上げることが難しくなったということだ。

数千万人のブラジル国民を貧困から救うこの画期的な成果は、危機がなければ達成が困難あるいはほぼ不可能であったはずの政策変化を市民社会が推進する政治的空間を現在の危機が押し広げたことを示している。不平等やその帰結をめぐる緊急行動の必要性に人々の目が向けられた時、政治家は大胆な行動を求める民衆の呼びかけを無視できなくなる。

ブラジルの新たなベーシック・インカム法は、極右政権の下ですら、不平等と闘う政策を要求する民衆の力をまざまざと見せつけた。またこれは、新型コロナウィルス危機の最中にあって、ベーシック・インカムだけではなく、普遍的な医療政策や、平等をめざすその他の主要な政策を要求することで、社会の基本的な方向性を見出す機会を市民社会が見つけうることを明確に示した事例でもある。今後も不平等との闘いは続いていく。(原文へ)

※著者のペドロ・テレス氏は、活動家を政治家として当選させることを目指すブラジルの独自政治運動「活動家集団」の共同創設者であり、運動の協同活動である「国会代理」任務の事務局長をサンパウロで務める。計14万9000票を得て選出された8人の活動家が、同国最大の州議会において共同事務所を構えている。

INPS Japan

関連記事:

ノーベル平和賞受賞団体、軍事費を医療に回すことを提言

世界が直面している緊急の保健課題

|国連|「新たな大分岐」を引き起こす格差の拡大に警告

|新型コロナウィルス|生物多様性と野生動物の保護につながる可能性も

【シドニーIDN=カリンガ・セレヴィラトネ】

新型コロナウィルス感染症の世界的な大流行(パンデミック)がもたらした前向きな結果があるとすれば、生物多様性の保護と、食用野生動物の世界的な売買禁止に関する理解が高まることかもしれない。新型コロナウィルス感染症が、野生動物が食用に売られていた中国・武漢の「ウェット・マーケット」から始まったと考えられていることから、中国政府が野生動物の売買を禁止し、これを執行可能な国際法にすることを目指す国際的なキャンペーンが勢いを増している。

武漢をはじめ、中国やベトナム各地に無数にある「ウェット・マーケット」では、オオカミの子どもやサンショウウオ、ワニ、サソリ、ネズミ、リス、キツネ、ハクビシン、カメなどが生きたまま食用に売られている。

SDGs Goal No. 3
SDGs Goal No. 3

しかし、国際メディアが使用している「ウェット・マーケット」という言葉には危険が潜んでいる。なぜなら、清潔な衛生管理で知られるシンガポールをはじめアジア全土に点在する実際には野生動物が売られていない市場も、同様の名称で呼ばれているからだ。そもそもウェット・マーケットの語源は、店主が衛生上の理由から毎朝食材を陳列する前に市場の屋台を洗浄したことに由来している。

こうした「ウェット・マーケット」で売られている食品はスーパーよりも価格が安く、時として新鮮であるため、貧困層が日々の買い物のために訪れている。「国際環境開発研究所」(IIED)は最近のブログ投稿で、「ウェット・マーケット」を名指しで批判するよりも、急増している野生生物の取引に目を向けるべきだと指摘した。「畜産された動物よりも野生動物の方がウィルスの宿主になりやすい」とエリック・フェーブル氏とセシリア・タコーリ氏はブログで述べている。

食用を目的とした野生動物の合法・違法取引は、数十億ドル規模の利益を生む産業となっており、生物多様性に対する最大の脅威の一つに数えられる。新型コロナウィルス感染症が拡大する以前から、環境保護活動家やウィルス学者は、生物多様性の破壊と新型ウィルス出現の危険性について警告してきた。なぜなら、「開発」を口実に森林を破壊して、道路や鉄道建設、農場や居住地の拡大が推し進められた結果、人間が野生生物に直接触れることが多くなってきているからだ。

2008年、ユニバーシティ・カレッジ・ロンドン生態系・生物多様性学部の研究チームが1960年から2004年の間に発生した335の病気を確定したが、そのうち少なくとも6割が動物由来のものであった。

Coronaviruses are a group of viruses that have a halo, or crown-like (corona) appearance when viewed under an electron microscope./ Public Domain
Coronaviruses are a group of viruses that have a halo, or crown-like (corona) appearance when viewed under an electron microscope./ Public Domain

この30年にパンデミックに発展したほぼ全ての感染症は、動物から人間に感染した病原菌を原因とするものであった。1996年のエボラ出血熱、2003年の重症急性呼吸器症候群(SARS)、2012年の中東呼吸器症候群(MARS)、2013年の鳥インフルエンザはすべて、動物や鳥から人間に感染したウィルスが原因である。

2月2日、中国共産党の最高意思決定機関である、習近平国家主席が率いる中央政治局常務委員会は、野生動物を食用に販売することを中国全土で禁止する声明を発表した。

「我々は市場の管理を強化し、違法な野生生物取引に対する厳格な禁止と取り締まりを行い、公衆衛生上のリスクを元からコントロールしなくてはならない」と声明は述べた。しかし、国際メディアの報道によると、こうした野生動物市場の一部が再開されていることから、中国政府がこうした禁止命令をどこまで徹底させる意思があるのか疑問視する声も上がっている。

他方、野生動物市場を禁止する国際的なキャンペーンが勢いを増している。米国を本拠とし、植物由来の予防的医薬を促進する団体である「責任ある医薬品を求める医師委員会」(医師会員1万2000人)は米国政府と世界保健機関(WHO)に対して、野生動物市場を禁止すべきとの署名運動を開始した。

米国で菜食主義を訴えるニュースサイト「リブカインドリー・メディア」によると、署名にはすでに、イエール大学医学部の心臓医で脂質学が専門のエリック・J・ブラント氏、ハーバード大学医学部のミシェル・L・オドノヒュー教授ら225人が賛同しているという。

請願書の署名賛同者らは、野生動物市場は、欧州や米国にも存在し、中国にだけあるのではないと指摘している。医師らは請願書のなかで、「野生動物市場はコロナウィルスにとっては『赤じゅうたん(=手厚く歓迎する環境』のようなものだ」と指摘したうえで、「たった一つの野生動物市場(=湖北省武漢市の華南海鮮市場)を中国で閉鎖できなかったことが、世界中で無数のビジネスを閉鎖に追い込み、膨大な数の死者と経済的大混乱を引き起こす事態につながった。」と述べている。

『ガーディアン』紙(ロンドン)によると、国連生物多様性条約事務局のエリザベス・マルマ・ムレマ事務局長代理もまた、パンデミックを将来的に防ぐために野生動物の売買を世界的に禁止するよう訴えている。ただし同時に、意図しない帰結ももたらすと警告を発している。

Photo: Downtown Johannesburg is deserted. Credit: Kim Ludbrook/EPA
Photo: Downtown Johannesburg is deserted. Credit: Kim Ludbrook/EPA

ムレマ事務局長代理は、「とりわけアフリカにおいては、低収入の農村地帯などの地域があることを忘れてはなりません。これらの地域では、野生動物の売買が数多くの人々の生活を支えています。従って、これらの地域にとっては、代替策がない限り、野生動物の違法な取引が始まってしまう危険性があるのです。…いかにバランスをとり、いかにして将来的な違法取引の抜け穴を塞ぐかを考える必要があります。」と述べている。

2019年10月、米国の『サイエンス』誌の記事が、生物が多様な熱帯地域において野生動物の取引が拡大しており、そのために最大8775種が絶滅の危機に瀕していると指摘した。記事は、野生動物の売買を止めるために、事後的は対応ではなく、先回りした積極的な措置を求めている。

米国のメディアが中国での野生動物の販売再開を報じる中、リンゼー・グラム米上院議員が中国に対して野生動物の売買禁止を求めている。同議員は4月初め、「世界全体の安全のために、これらのウェット・マーケットを閉鎖するよう中国政府に求める」書簡に賛同するよう他の上院議員らに呼び掛け、駐米中国大使に送付した。

オーストラリアのスコット・モリソン首相は4月3日のラジオ・インタビューで、野生動物を売買する問題の市場を「中国のウェット・マーケット」と呼び、全面的な禁止と世界的な取り締まりを行うよう呼びかけた。モリソン首相の呼びかけは、2カ月にわたったウィルス撲滅のための封鎖措置を経て、中国各地で野生動物の売買が再開されたと豪州メディアが広く報じたことに応じたものであった。

『スピルオーバー:動物の感染と次なるパンデミック』の著者であるデイビッド・クアメン氏は、「食用の野生動物の売買を世界的に食い止めるようとするならば、何よりも人間の行動と生物多様性の破壊というより大きな状況に注目しなくてはなりません。」と語った。

クアメン氏は、最近の『ニューヨーク・タイムズ』紙によるインタビューのなかで、「我々は多くの動植物が生きる場である熱帯雨林やその他の自然を侵略しています。そして、それらの生き物の中に多くの未知のウィルスが潜んでいるのです。」と語っている。

「我々は木を切り倒し、動物を殺したり捕えたりして、市場で売りさばいています。生態系を阻害し、自然の宿主からウィルスをたたき出しているのです。そうなれば、ウィルスは新しい宿主を必要とします。そしてしばしば、人間が新たな宿主になってしまうのです。」とクアメン氏は指摘した。(原文へ)

INPS Japan

関連記事:

次なる最重要開発課題としての森林投資

|視点|新型コロナウィルス騒動に関連して、飽くなき中国叩きが再浮上する(パリサ・コホナ前国連スリランカ政府代表部大使、元外務大臣)

ノーベル平和賞受賞団体、軍事費を医療に回すことを提言

|国連報告書|新型コロナは5億人を貧困の淵に追いやるだろう

【ニューヨークIDN=J.ナストラニス】

新型コロナウイルス感染症のパンデミックから派生する、開発途上国に押し寄せかねない「巨大な貧困の波(=約5億人が貧困に陥る)」を警告するとともに、開発途上国における社会的セーフティネットを早急かつ劇的に拡大する必要性を訴えた国連最新報告書に焦点を当てた記事。今後国際社会は、気候変動と紛争予防に主眼を置きつつ、1990年以降初めて貧困が世界規模で増大する局面に対処していかなければならない。(原文へ)

INPS Japan

関連記事:

極度の貧困をなくすには年間780億ドルで十分

ノーベル平和賞受賞団体、軍事費を医療に回すことを提言

【ベルリンIDN=ジュッタ・ウォルフ】

1910年にノーベル平和賞を受賞した世界最古の平和団体ある「国際平和ビューロー」(IPB)が、医療や社会ニーズに対応するために軍事費を「大幅に削減」するよう訴えている。3月27日に署名運動が開始された請願書は、今年9月15日の国連総会初日に総会に提出される予定だ。

IPBは、請願書とベルリン本部から出された声明のなかで、「国際社会は毎年1.8兆ドルを軍事費に支出しているほか、今後20年間で新型核兵器に1兆ドルを費やす予定だ。」と述べている。

世界で行われている軍事演習だけでも毎年10億ドル以上が使われており、世界の主要経済大国では、武器の生産、輸出ともに増加傾向にある。これらの国々だけで世界の軍事支出の82%、武器輸出のほぼ全て、核兵器保有の98%を占めている。

Image source: SIPRI

これらの国々とは「G20」のことで、IPBは、「世界の軍拡競争における主要プレイヤーの利益を糾合する共通基盤」と呼んでいる。G20はまた、軍事研究にも数十億ドルにのぼる多額の費用を使っているが、IPBは、これらを医療や人間のニーズ、気候変動と闘うための研究に投じることが望ましいとしている。

世界の軍事支出は、冷戦終結時と比較して5割も増加しているうえに、北大西洋条約機構(NATO)は加盟国に対して、さらなる拠出金の増額を求めている。こうしたなかで、「G20はこうした事実を隠蔽することなどできない。」とIPBは指摘している。

G20首脳(アルゼンチン、オーストラリア、ブラジル、カナダ、中国、フランス、ドイツ、インド、インドネシア、イタリア、日本、韓国、メキシコ、ロシア、サウジアラビア、南アフリカ共和国、トルコ、英国、米国、欧州連合)は、議長国サウジアラビア主催でオンラインの首脳会合を3月26日に開き、世界的に流行している新型コロナウィルス対策について協議した。

IPBは、G20声明が「このパンデミックに取り組むには、グローバルな行動や連帯、国際協力がこれまでになく必要であり、国際社会がいかに相互に結びつきかつ脆弱であるかを改めて痛感させるできごとであったこと」を明記しながら、にもかかわらず、こうした考え方を世界平和の実現のためには適用できなかった点に注目している。

「国際社会にとって、軍備増強は誤った道である。なぜなら軍拡は緊張を煽り、戦争や紛争を引き起こす可能性を高めるほか、既に強まっている核兵器を巡る緊張をさらに悪化させるからだ。にもかかわらず、核兵器の拡張と核軍縮を管理するための政策的枠組みは、無視されるか、さらに弱体化させられている。」と声明は述べている。

IPBはこの文脈で、「原子科学者会報」が今年2月に発表した「世界終末時計」について言及している。世界終末時計は、この70年の歴史で「真夜中(=地球と人類の滅亡)」に最も近い、「真夜中まで100秒」に設定された。新型コロナウィルスの拡大で時計の針はさらに真夜中に近づけられることになろう。

Bulletin of the Atomic Scientists

IPBは世界の指導者に対して、軍縮と平和を政策決定の中心に据え、核兵器禁止条約が目指している核兵器の禁止を含めた、軍縮に向けた新たなアジェンダを策定するよう呼びかけている。

「そうしなければ、将来における感染症の世界的大流行(パンデミック)と闘い、貧困や飢餓を根絶し、教育や医療を全ての人々に提供し、持続可能な開発目標(SDGs)を2030年までに達成するための闘いにおいて、自らの手を縛ってしまうことになる。」とIPBは訴えている。

経済を大きく改革し、利益ではなく人間に最大の価値が置かれ、とりわけ気候変動の危機という生態学上の難題への対処がなされグローバルな社会正義が追求されるような経済を実現する上で、軍縮はカギを握っている。

「軍縮や、世界的な社会契約ともいえるSDGsの履行、新しいグローバルなグリーン・ピース・ディールによって、新型コロナウィルスの感染拡大という難題に対処できるようになる。」とIPBは論じている。歴史は、こうした危機にあっては民主主義が何よりも重んじられねばならず、権威主義化しつつある諸国に対して、民主主義が擁護されねばならないことを示している。

IPBは「平和の文化」を呼びかけている。これは、世界各地の民衆に対する支援を確実にするためのグローバルな戦略、グローバルな社会契約、グローバルな協力の必要性を強調する平和的な道である。

IPBは「医療ストレス」の問題について、医療インフラへの投資を怠ってきた結果「医療システムはその限界に達し、英雄的な活動をしている前線の医療従事者は大きなプレッシャーの下に置かれている」と指摘している。世界保健機関(WHO)は、世界の医療従事者が2030年までに1800万人不足することになると警告している。

将来への教訓は、以下のように明らかだ。

・医療は、老若男女、世界のあらゆる地域に暮らす全ての人々にとっての人権である。

・医療と看護は、民営化を通じた利益追求のために予算削減や優先順位を下げる対象にしてはならない。

・全ての医療従事者にとっての、まともな労働環境と、教育・研修への継続的な投資の必要性。

IPBは「時が過ぎるにつれて、危機の全容が明らかになってきている。」と指摘したうえで、今こそグローバルな社会契約が必要な時だと主張している。国際労働機関(ILO)は2500万人の雇用が失われる可能性があるとみている。これは、2008年の金融危機を上回る規模だ。

さらに、「ワーキングプア」が相当程度増加することが見込まれる。さらに3500万人が影響を受けかねない。労働者の収入損失は3.4兆ドル規模に及ぶ可能性がある。

これこそが、雇用や収入、公共サービス、市民の福祉を守る経済措置と資源のために、世界や地域・国家レベルでの労働運動の取り組みをIPBが支持する理由である。

「人々の雇用を守るためには産業界の努力を要する。また、産業界が政府から得られると約束された支援に関しては、雇用や所得の保障に関する社会契約を彼らが遵守することが前提となるべきだ。」と国際平和ビューローは述べている。(原文へ) 

INPS Japan

関連記事:

ベルリンでの世界会議、「心の脱軍事化」を求める

第6回世界伝統宗教指導者会議:「多様性の中の調和」を謳う

|新型コロナウィルス|国連事務総長のグローバル停戦の呼びかけが支持を集める

|新型コロナウィルス|国連事務総長のグローバル停戦の呼びかけが支持を集める

【ニューヨークIDN=ラドワン・ジャキーム】

国連のアントニオ・グテーレス事務総長が3月23日、「世界のあらゆる地域における即時停戦」を高らかに呼びかけた。いまや人類全体を脅かしている共通の敵である新型コロナウィルスとの闘いという大きな目的のために武器を置くことを交戦当事者に求めたのである。

停戦によって、ウィルス感染拡大の危機にあって最も脆弱な立場に置かれた人々に人道支援を届かせることができる。新型コロナウィルスは2019年12月に中国・武漢で発生し、現在(4月4日現在)、207カ国以上での感染が報告されている。世界保健機関(WHO)によると、これまでのところ全世界で97万近くの症例、5万人以上の死亡が報告されている。

グテーレス事務総長は、国連のメリッサ・フレミング広報局長が読み上げた記者からの質問に答えて、特使が交戦当事者と協議し、今回の停戦呼びかけを実行に移していくであろうと語った。

「政治的解決研究プログラム」(PSRP)のクリスティーン・ベル代表は、3月24日のブログ記事で、「新型コロナウィルス危機は差し迫っているという意味において特異なもの」と述べ、事務総長の停戦呼びかけを歓迎した。

ベル代表はさらに、「もし紛争地域で患者が多く出たら、この呼びかけにも耳を傾けてもらえるのかもしれません。しかし、停戦には合意と外交が必要です。新型コロナウィルスと紛争の問題に同時に対処する創造的な発想が、世界で最も大きな困難を抱える地域において、疾病と戦争による不必要な死を減らす劇的な役割を果たしうる。」と語った。

グテーレス国連事務総長はさらに、交戦当事者に対して、戦闘行為から離れ、不信と敵意を捨て、銃声を消し、砲撃を停止し、空襲をやめるよう訴えた。

これによって、「救命援助を届けるための道」を確保でき、「外交に貴重なチャンス」を与えることができ、新型コロナウィルスに対して最も脆弱な人々が暮らす場所に希望を届け、世界を荒らしている「戦争という病に終止符を打ち、私たちの世界を荒廃させている疾病と闘う」ことができるようになるであろう。

グテーレス事務総長はまた、「新型コロナウィルス対策で歩調を合わせられるよう、敵対する当事者間でゆっくりとでき上がりつつある連合や対話から、着想を得ようではありませんか。」と語った。

今こそあらゆる場所で紛争を停止することで、「女性と子ども、障害をもつ人々、社会から隔絶された人々、避難民など、最も脆弱な立場に置かれた人々」が、トンネルの先の光を見出すことになるだろう。

SDGs Goal No. 16
SDGs Goal No. 16

最も脆弱な立場に置かれた人々はまた、新型コロナウィルスによる被害を受けるリスクが最も高い人々でもある。紛争地では、既に数が少なくなってきている医療関係者が、しばしば攻撃の対象になっている。難民やその他、暴力的紛争で故郷を追われた人々は、二重の意味で弱い立場に置かれている。グテーレス事務総長は、実際、「ウィルスの猛威は、戦争の愚かさを如実に示している。」と強調したうえで、「紛争を停止し、私たちの命を懸けた真の闘いに力を結集する時が来ています。」と語った。

事務総長のアピールの要点に加えて、PSRPのベル代表は、「私たちは、武力紛争と危機の関係は複雑であり、予測不可能な結果につながることを経験上知っています。しかし、この予測不可能性そのものが予測可能であれば(いわゆる「既知の未知」)、『スマートな』対応が可能なのではないか。PSRPで進行中の研究では、次の11の根本的な認識が、紛争地域における新型コロナウィルスの世界的大流行(パンデミック)に対する最も効果的な対処を考えるうえでカギを握ることを示唆しています。」と語った。

1.技術的な解決の実行は常に政治的なものであり、どのような対処法であってもその効果を予測するには「紛争のレンズ」を通して見なくてはならない。

2.中間レベルの平和構築者には、国と地域社会をつなぎ信頼を構築する独自の能力がある。

3.問題含みの地域では、国をバイパスする柔軟な支援が必要なこともある。

4.危機管理には「平和の配当」がある。

5.紛争当事者は、「危機対応」の名の下で軍事的・政治的利益を得ようとする傾向がある。

6.動員し、政治的・軍事的計算を行う国と非国家武装主体の能力には違いがある。

7.新型コロナウィルスは、現在の和平プロセスに対して、物資確保上の独自の問題をもたらすことになるかもしれない。

8.外交と平和維持が「不在」になるかもしれない。

9.緊急立法は、紛争の危険を伴った対応策である。

10.選挙は特に脅威に立たされており、特定の紛争上の帰結を生む。

11.国際的な法的信頼の欠如。

フィリピン共産党は、グテーレス事務総長の呼びかけを支持する合図として、フィリピン新人民軍に対して、3月26日から4月15日にかけて武力攻撃をやめ防衛態勢に入るよう命じたと発表した。

この反乱軍は、今回の停戦は「新型コロナウィルスのパンデミックと闘うという共通の目的のために交戦当事者に停戦を呼びかけたグテーレス事務総長の訴えに直接応えるものだ。」と述べた。

1985年にノーベル平和賞を受賞した「核戦争防止国際医師会議」のドイツ支部もまた、グテーレス事務総長の世界的な停戦呼びかけを支持した。

IPPNWのスザンヌ・グラベンホースト議長は3月25日、「新型コロナウィルスは、世界的な相互依存と軍事紛争の無責任さを露わにしました。例えば、イエメンやリビア、シリア、アフガニスタンで長く続く戦争・紛争は医療システムを大幅に弱体化させ、数多くの人々を現在のパンデミックに対して脆弱な状態に晒しています。」と語った。欧米諸国が科した経済制裁の悪影響もあるという。そこでIPPNWは、経済制裁の解除を改めて呼びかけている。

中東諸国に加えて、多くのアフリカ諸国でも新型コロナウィルスの感染者数が増えている。IPPNWは、医療システムが脆弱な国々に対する財政支援と国際的連帯を呼びかけている。

The flag of the North Atlantic Treaty Organization (NATO).
The flag of the North Atlantic Treaty Organization (NATO).

WHOの推定によると、2030年までに低所得・中所得国を中心に約1800万人の医療関係者が不足するという。これまでに公約された援助を、現在のパンデミックを理由に取り消すわけにはいかない。

IPPNWは、「武器の転換」という意味合いにおいて、軍事資源を医療や平和的生活といった民生部門に振り向けることを要求している。「新型コロナウィルス問題が、危機で生じた混乱に乗じて、軍事化を進める口実に使われてはなりません。」

IPPNWは、イェンス・ストルテンベルクNATO事務総長が、コロナウィルス感染拡大にも関わらず、「2%目標」に固執していることを厳しく批判した(訳注:NATO諸国は防衛費支出を対GDP比で2%とすることを公約している)。「このお金は緊急に医療部門に投じられるべきです。なぜなら近年、ドイツにおいても、利益志向のために医療関連予算が削減され疲弊してきたのだから。」とグラベンホースト議長は語った。(原文へ)

INPS Japan

関連記事

開発財源として未開拓な軍事支出

|国連ハイレベル会合|完全核軍縮への支持、続々と

バチカン会議、「持続可能な開発」と「核兵器禁止」のネクサス(関連性)を強調

|新型コロナ|中国恐怖症が生物兵器禁止条約強化を危うくする

【シドニーIDN=カリンガ・セレヴィラトネ】

パンデミックが続く中、西側メディアに広がる「中国恐怖症」に焦点をあてた、カリンガ・セネヴィラトネINPS東南アジア総局長の記事。オーストラリアで放送された60分の報道番組は、早期における実際のWHOと中国当局による(新型コロナウィルス)対応内容を無視した陰謀説をもとにしたもので、大量破壊兵器の保有を巡って西側諸国が軍事侵攻にまで踏み込んだ2003年のイラク疑惑(実際には大量破壊兵器を保有していなかったことが明らかになっている)を彷彿とさせるものだった。事実と冷静さを失った恐怖と不信をかきたてる報道がメディアの間で「(別の意味の)感染症」のように広がりつつある問題に警鐘を鳴らしている。(原文へ)

INPS Japan

関連記事:

|視点|新型コロナウィルス騒動に関連して、飽くなき中国叩きが再浮上する(パリサ・コホナ前国連スリランカ政府代表部大使、元外務大臣)

新型コロナウィルス拡大の中で強行された北朝鮮のミサイル実験について憶測広がる

【ニューヨークIDN=サントー・D・バネルジー】

国際社会が世界的な新型コロナウィルスの感染拡大との闘いで手いっぱいになる中、北朝鮮による今年初のミサイル発射への対応が制約を受けている。国連安全保障理事会は3月5日に非公開会合を持ったが、決議案に合意できなかった。

しかし、英国・ドイツ・フランス・エストニア・ベルギーが「共同声明」を出し、「北朝鮮が3月1日に実施した弾道ミサイル実験を深く憂慮する」と述べた。

Photo credit: journal-neo.org
Photo credit: journal-neo.org

英国とフランスは安保理常任理事国の2カ国であり、ドイツ・エストニア・ベルギーは非常任理事国である。

共同声明は、「北朝鮮に関する専門家パネルは、同国が核計画及び弾頭ミサイル計画を継続してきた事実に着目してきた。」と述べ、北朝鮮が2019年5月以来、弾道ミサイル実験を14回行ってきたと指摘した。

この2つの常任理事国と3つの非常任理事国は「地域の安全や安定、国際の安全と平和を損ない、全会一致で採択された国連安保理決議の明白な違反となる、こうした挑発的な行為」を非難した。

共同声明は、「引き続き北朝鮮に対して、非核化に向けた米国との協議に誠実に臨み、完全、検証可能かつ不可逆な形で全ての大量破壊兵器と弾道ミサイル計画を廃棄するための具体的な措置を取り、さらなる挑発を控えることを強く求めていく」ことを確認した。

さらに共同声明は「朝鮮半島に安全と安定を達成するにはこの方法しかない。挑発し続ければ、交渉の成功に向けた見通しは損なわれる危険性がある。」と続けた。

安保理が決議案に合意できなかったという背景の下(合意できなかったのは米国・ロシア・中国から異論があったためと報じられている)、先の5カ国は「安全保障理事会がこれまでの決議を完全履行し、引き続き(対北朝鮮)制裁の実効力を維持することが重要だ。」と述べた。

ロシアと中国は、安保理制裁により北朝鮮の民間人に被害が及んでいることを懸念し、制裁の一部を解除することで米朝間非核化交渉の行き詰まりを打開できる可能性があるとの期待を表明してきた。

中ロ両国は2019年12月、北朝鮮に数億ドル規模の収入を与える産業部門に対する制裁を解除するための決議案を提出した。これらの制裁は、北朝鮮の核兵器・ミサイル開発への資金を断つために2016年から17年にかけて導入されたものだ。北朝鮮は、ミサイル開発・核開発に関して2006年以来、国連の制裁下にあり、安保理はこの間一致して、同国への制裁を強化してきた。

UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri
UN Secretariat Building/ Katsuhiro Asagiri

国連の張軍国連大使は3月2日に記者団に対して、「決議案の文面はまだ交渉の俎上に上ったままであり、様々な見解を受け入れる用意がある。朝鮮半島の状況をさらに改善するためのより良い環境を作り出すうえで、この決議は重要なステップであると私たちは認識している。」と語った。

英国・ドイツ・フランス・エストニア・ベルギーの共同声明は国際社会に対して「安保理が採択した決議に従って履行状況を報告することも含めて、これらの制裁を厳格に執行する義務に従うよう」求めた。

3月21日に北朝鮮が行った2回の弾道ミサイル実験の報に接して、ドイツ外務省の報道官は、この2発の短距離弾道ミサイル実験を「痛烈に」非難した。「今月行われた2回の実験によって、北朝鮮は国連安保理による関連決議の順守義務に再び違反した。これらの実験実施によって、北朝鮮は無責任にも国際の安全を危機に陥れている。」

ドイツ政府は北朝鮮に対して、国際法に基づく責務に従い、とりわけ、さらなる弾道ミサイル実験を控え、北朝鮮が離脱した対米交渉を再開するよう呼びかけている米国の提案を受け入れるよう求めた。

識者らは、2019年2月27・28両日にベトナムで行われた2度目の米朝首脳会談が失敗に終わって以来、北朝鮮は弾道ミサイル活動を再開し、その能力を拡大するための実験を行っているとしている。金委員長が今年の新年演説の冒頭で、「ヤクザのような」米国の制裁と圧力に対して北朝鮮の核抑止力を強化すると述べたことを、識者らは指摘している。

クリストファー・フォード米国務次官補(国際安全保障・不拡散担当)は3月19日の記者会見で、トランプ政権は、シンガポールでの第1回目の米朝首脳会談でなされた約束を「できるだけ早く」履行することを目的とした北朝鮮との作業レベルの協議を開始する「用意も意思もある」と繰り返した。

金委員長は2018年のシンガポールでの首脳会談で、朝鮮半島の完全なる非核化に向けた作業を行うとのあいまいな約束をし、両国首脳は恒久的な和平の構築に向けた関係改善に合意した。しかし、その後2回のサミットと下位レベルの会合では、これらの合意の具体化に向けた進展が見られなかった。

Coronaviruses are a group of viruses that have a halo, or crown-like (corona) appearance when viewed under an electron microscope./ Public Domain
Coronaviruses are a group of viruses that have a halo, or crown-like (corona) appearance when viewed under an electron microscope./ Public Domain

国際基督教大学のスティーブン・ナギ上級准教授によれば、北朝鮮による3月のミサイル実験は、新型コロナウィルスの被害が拡大するなか、一部の制裁解除と援助を勝ち取るためにトランプ政権の目を再び北朝鮮問題に向けさせることを狙ったものであるという。

「金外交の失敗を念頭に、世界の目は新型コロナウィルス問題に注がれるようになり、トランプ政権は北朝鮮問題を議論すらしなくなってきている。そこで北朝鮮のミサイル実験は米国に対して、北朝鮮は依然として対応が必要な破壊的な勢力であるとのシグナルを送ろうとした。」というナギ准教授の見解を共同通信は伝えている。

実際、他の外交問題の専門家らも、2期目を狙うトランプ大統領が、11月に行われる大統領選挙に向けて北朝鮮から恥をかかされたくないと思っていると金委員長が考えているはずであり、引き続きミサイル実験が行われることになるだろうと考えている。

しかし、ある外交筋は、新型コロナウィルスの拡大は既に北朝鮮経済に大打撃を与えており、米国に対する挑発を拡大することに疑問を呈している。(原文へ)

INPS Japan

関連記事:

専門家らが朝鮮半島の平和の見通しを討議

|日本|拘束を解き放って核廃絶に向かう道とは

|視点|新型コロナウィルス騒動に関連して、飽くなき中国叩きが再浮上する(パリサ・コホナ前国連スリランカ政府代表部大使、元外務大臣)